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実家が空き家になったらどうする?売る・貸す・残すの判断基準と維持費

最終更新日:2026年9月29日|法務監修:司法書士・行政書士 久留慎一郎先生|執筆・編集:安心実家じまい事務局

司法書士・行政書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。

監修の範囲:相続・登記・法務に関する記述(司法書士・行政書士の業務範囲)。片付け・買取・費用相場などの記述は安心実家じまい事務局が編集しています。監修者プロフィール

税金について:税額の計算や特例を使えるかどうかの判断は税理士の業務で、監修の範囲に含みません。申告の前に、税理士または所轄の税務署でご確認ください。

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 不動産の名義変更
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理

監修範囲:久留慎一郎先生(司法書士・行政書士)の監修は、相続・登記・法務に関する記述です。税額の計算や税の特例に関する記述は、国税庁の公表資料と法令をもとに事務局が作成しており、監修の対象外です。監修者プロフィール

この記事の結論

  • 実家が空き家になったら、最初の1〜3か月は「止める・守る・届く先を変える」(ライフラインの整理、防犯、火災保険の確認、固定資産税の通知先の変更)を済ませ、方針は急がずに決めて構いません。
  • 選択肢は売る・貸す・住む・持ち続ける・解体・国庫帰属の6つ。誰も住む予定がなく遠方なら、多くの家庭で「売る」が最も負担の少ない選択になります。
  • 持ち続けるだけでも固定資産税・保険・基本料金・交通費などで年間十数万〜数十万円かかり、管理が行き届かず市町村から勧告を受けると、土地の固定資産税の軽減(住宅用地特例)が外れます。
  • 相続した旧耐震(1981年5月31日以前の建築)の実家は、空き家の3,000万円特別控除が使える可能性があります。期限は「相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日」と「制度自体の期限(現行法で2027年12月31日の譲渡まで)」の早いほうで、貸すと原則使えなくなる点に注意が必要です。
  • 迷ったら、この記事の判定フローで方向性を決め、細部は各テーマの記事や無料の実家まるごと診断で確認してください。

親が亡くなった、施設に入った、兄弟の誰も戻る予定がない――。こうして実家が空き家になると、「とりあえずそのまま」にしがちです。しかし空き家は、誰も住まなくなった瞬間から傷みが進み、税金や保険料は変わらず届き、期限つきの手続きや税の特例も同時に動き始めます。

この記事は、実家が空き家になった直後から「どうするか」を決めるまでの入口ガイドです。最初の数か月でやることのチェックリスト、6つの選択肢の比較表、持ち続けた場合の年間維持費の試算、放置したときの法律上のリスク、そして判定フローと逆算スケジュールを1本にまとめました。売却・解体・賃貸などの細かな手順は、それぞれの専門記事にリンクしています。

なお、総務省「令和5年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家は900万2千戸と過去最多、空き家率は13.8%で過去最高でした。そのうち賃貸用・売却用・別荘などを除いた「使い道の決まっていない空き家」は385万6千戸で、一戸建ての空き家では約8割(80.9%)がこの「使い道の決まっていない空き家」です。実家の空き家は、珍しい話ではありません。統計の詳しい読み解きは空き家の統計から読む実家リスクで解説しています。

目次

実家が空き家になった直後にやることチェックリスト

まず押さえたいのは、方針を決める前にやるべきことと、方針が決まってからでよいことを分けることです。直後に必要なのは「家を傷めない」「事故や犯罪を起こさない」「郵便物や税金の通知を取りこぼさない」の3点です。印刷してそのまま使えるよう、時期別に整理しました。

時期の目安 やること ポイント・窓口
空き家になってすぐ〜2週間 戸締まり・貴重品の持ち出し 通帳・印鑑・権利証(登記識別情報)・保険証券・年金関係の書類は先に回収
〜2週間 冷蔵庫の中身・生ごみの処分 腐敗・害虫の発生源になるため最優先。ごみ収集日が合わない場合は自治体の臨時収集を確認
〜1か月 ライフラインの整理(電気・ガス・水道・ネット・新聞) ガスは止めて、電気・水道は「管理と片付けが終わるまで残す」のが一般的。詳しくはライフライン手続きの記事
〜1か月 郵便の転送 日本郵便の転居届で、旧住所宛ての郵便を届出日から1年間新住所へ転送できます(期間満了後は再度届出)。故人宛ての郵便の扱いは窓口で確認
〜1か月 防犯・近所へのあいさつ 雨戸・センサーライト・郵便受けの封鎖、隣家への連絡先の共有。詳しくは実家の防犯対策
〜1か月 火災保険・地震保険の確認 「住宅」として契約している保険が、空き家になっても同じ条件で続くかは保険会社・約款しだい。空き家になった旨を保険会社に連絡して、補償が続くか確認。詳しくは空き家の火災保険
〜3か月 固定資産税の納税通知書の送付先 相続人が複数なら「相続人代表者指定届」を市区町村へ(地方税法9条の2)。所有者死亡の場合、市区町村は現所有者に申告を求めることができます(同法384条の3)
〜3か月 相続放棄するかの判断 相続を知った時から3か月以内(民法915条)。借金がある・実家以外に財産がない等なら先に検討。空き家の相続放棄と管理義務
〜3年 相続登記(名義変更) 相続で取得したことを知った日から3年以内の申請が義務。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象。売るにも貸すにも名義変更が前提です。相続登記の義務化/相続登記の相談
月1回程度(継続) 通風・通水・郵便受けの確認・草木の手入れ 自分で通えないなら管理代行も選択肢。空き家の管理方法と代行費用

親が施設に入った・入院したケースで、家の名義がまだ親本人のままなら、相続の手続きは発生しません。その場合の管理は親の入院中の実家の管理、施設入居を機に家をどうするかは老人ホーム入居が決まったら実家はどうするを参照してください。親が認知症で判断能力が落ちていると、親名義の家は売却などの契約が難しくなるため、早めの検討が必要です(認知症の親の家の管理)。

実家の空き家の選択肢は6つ:売る・貸す・住む・持ち続ける・解体・国庫帰属

空き家になった実家の行き先は、大きく6つに分かれます。費用・手間・お金が入るか出ていくかを並べると、次のとおりです。

選択肢 お金の流れ 主な費用 手間・期間 向いているケース 注意点
売る(仲介) 入る 仲介手数料・登記費用・譲渡所得税(利益が出た場合) 数か月〜1年程度。内覧対応あり 立地がよく、時間に余裕がある 売れるまで維持費がかかる
売る(買取) 入る(仲介より低めになりやすい) 登記費用・税金。仲介手数料は不要のことが多い 短期間で現金化。片付け前でも相談可のことが多い 遠方・古い・家財が多い・早く手放したい 価格は仲介の相場より下がりやすい
貸す 入る(家賃)が出費も続く リフォーム・修繕・管理委託・固定資産税 入居者募集・修繕対応が続く 需要のある立地で、将来家族が使う可能性がある 貸すと空き家の3,000万円控除が原則使えない
住む(家族が移り住む) 出る(修繕・引越し) リフォーム・耐震改修 引越しと家財整理 相続人の誰かが住む予定がある 兄弟間の公平(代償金など)の調整が必要
持ち続ける 出る 固定資産税・保険・基本料金・管理費・交通費 定期的な管理が続く 数年以内に住む・使う計画がはっきりしている 放置すると特定空家などのリスク
解体して更地に 出る(解体費)→売れば入る 解体費(構造・規模・地域で大きく変わる) 1〜2か月程度+補助金申請 建物が危険・更地のほうが売れる立地 更地にすると住宅用地特例が外れ、翌年度から土地の固定資産税が上がる
相続土地国庫帰属 出る(負担金) 審査手数料1筆1万4,000円+負担金(原則20万円〜)+解体費 申請から審査まで時間がかかる 売れない・誰も引き取らない土地 建物がある土地は申請できない(解体が前提)

国庫帰属の負担金は、政令で定められています。市街化区域外の宅地などは一律20万円ですが、市街化区域内の宅地は面積で変わり、たとえば200㎡なら「200㎡×2,450円+30万3,000円=79万3,000円」です(相続土地国庫帰属法施行令5条)。処分方法ごとの費用と税金の詳細は空き家の処分方法4つを比較、実家全体の処分方法は実家の処分方法5つを比較にまとめています。

売る:仲介と買取の違い

「売る」には、不動産会社が買主を探す仲介と、不動産会社が自ら買い取る買取があります。仲介は相場に近い価格を狙える一方、売れるまでの期間が読めません。買取は価格が下がりやすい代わりに、家財が残ったまま・古いまま・遠方のままでも話を進めやすいのが特徴です。違いは空き家の仲介と買取の違いで詳しく比べています。

貸す:収入より「出費と縛り」を先に見る

賃貸に出すと家賃収入が入る一方、入居前のリフォーム、設備故障の修繕、管理会社への委託費がかかり、入居者がいる間は自由に売れなくなります。住宅宿泊事業法による民泊は、年間の宿泊日数が180日を超えない範囲に限られ、届出や管理の義務も課されます。加えて、相続した空き家を一度でも貸すと、後で売るときに空き家の3,000万円特別控除の要件(相続の時から譲渡の時まで貸付けの用に供していないこと)を満たさなくなります。収支の立て方は実家を貸すという選択肢、駐車場やトランクルームなど土地としての活用は実家の土地活用で解説しています。

住む・持ち続ける:期限を決めておく

家族の誰かが住む、あるいは「数年後に子どもが使うかもしれない」と持ち続ける選択もあります。問題は、目的や期限のないまま「とりあえず持つ」状態が長引くことです。持ち続けるなら、いつまで・誰が管理し・費用を誰が負担するかを相続人の間で書面にしておくと、後のもめごとを防げます。

空き家バンク・無償譲渡・相続放棄という道も

地方で買い手が見つかりにくい場合は、自治体の空き家バンクへの登録や、隣地の所有者への売却(実家を隣の人に売る方法)、費用を払って引き取ってもらう有料引き取りも検討できます。相続放棄は実家だけを放棄することはできず、預貯金なども含めてすべての相続を手放す手続きです。また放棄しても、放棄の時に実家を現に占有していた人は、次に管理する人へ引き渡すまで保存の義務が残ります(民法940条)。

相続した実家の空き家特例(3,000万円控除)がいつまで使えるかは、相続空き家の3,000万円控除 期限チェックで、相続開始日から期限と残り日数を確認できます。

ここまで読んで「うちの場合はどうなる?」と思ったら

売る・貸す・残すのどれが合うか、いくつかの質問に答えるだけで整理できます。

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空き家を持ち続けたときの年間維持費の試算

「住んでいないから費用はかからない」と思われがちですが、空き家にも毎年お金がかかります。ここでは、地方の一戸建て(土地180㎡・木造2階建て・築45年)を例に、自分の家の数字に置き換えられる形で試算します。税額は法令の計算式に沿って出し、それ以外の費用は幅のある仮定値です。

固定資産税・都市計画税の計算例

固定資産税は1月1日時点の所有者に課され(地方税法359条)、標準税率は1.4%です(同法350条)。住宅が建っている土地(住宅用地)は課税標準が軽減され、200㎡以下の部分(小規模住宅用地)は6分の1、200㎡を超える部分は3分の1になります(同法349条の3の2)。都市計画税(市街化区域などで課税、税率の上限0.3%=同法702条の4)も、住宅用地はそれぞれ3分の1・3分の2に軽減されます(同法702条の3)。

以下の評価額・税率・各費用は、計算方法を示すための仮定の数字で、特定の物件や統計の実データではありません。

項目 評価額(仮定) 課税標準 税額
土地の固定資産税 1,200万円 1,200万円×1/6=200万円 200万円×1.4%=2万8,000円
土地の都市計画税(税率0.3%と仮定) 1,200万円 1,200万円×1/3=400万円 400万円×0.3%=1万2,000円
建物の固定資産税 150万円 150万円 150万円×1.4%=2万1,000円
建物の都市計画税 150万円 150万円 150万円×0.3%=4,500円
合計 6万5,500円/年

実際の税額は、負担調整措置や自治体の税率で上下します。手元の納税通知書(課税明細書)に書かれた「評価額」「課税標準額」を使えば、自分の家の数字がすぐにわかります。固定資産税の詳しい計算は空き家の固定資産税はいくら?で解説しています。

税金以外も含めた年間維持費

費目 年間の目安(仮定) 金額が変わる要因
固定資産税・都市計画税 6万5,500円(上の試算) 評価額・面積・市街化区域かどうか
火災保険・地震保険 数万円 建物の構造・補償内容・空き家の扱い
電気・水道の基本料金 1万〜3万円程度 契約容量・口径・地域の料金体系
草刈り・庭木の剪定・小修繕 数万〜10万円程度 敷地の広さ・樹木の量・建物の傷み
管理代行サービス(利用する場合) 月額数千円〜1万円程度×12か月 巡回頻度・室内確認の有無
交通費(自分で通う場合) 往復2万円×年6回=12万円(仮定) 距離・回数・宿泊の有無
合計の目安 おおむね年15万〜40万円(上の仮定での目安)。10年持てば150万〜400万円になり、その間も建物の価値は下がり続けます

この表は「空欄に自分の家の数字を入れる」使い方をおすすめします。とくに遠方の実家では交通費と時間の負担が大きく、持ち続けるかどうかの判断材料になります。

空き家を放置するとどうなる?法律上の3つのリスク

1. 空家法の「管理不全空家」「特定空家」に指定される

空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)は、所有者に「周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努める」ことを求めています(5条)。2023年12月13日施行の改正で、段階が2つになりました(条文はe-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」)。

  • 管理不全空家等:放置すれば特定空家になるおそれがある状態。市町村長は指導し、改善されなければ勧告できます(13条)。
  • 特定空家等:倒壊など著しく保安上危険、著しく衛生上有害、景観を損なっている等の状態(2条2項)。助言・指導→勧告→命令と進み(22条)、命令に違反すると50万円以下の過料(30条)、最終的には行政代執行で解体され、その費用は所有者の負担になります。

指定の流れや対処法は特定空き家に指定されたらどうなる?、管理不全空家については管理不全空き家は固定資産税が6倍に?で詳しく解説しています。

2. 勧告を受けると住宅用地特例が外れ、土地の固定資産税が上がる

地方税法349条の3の2は、空家法の勧告を受けた管理不全空家等・特定空家等の敷地を住宅用地から除くと定めています。小規模住宅用地の「6分の1」の軽減がなくなるため、「固定資産税が6倍になる」と言われます。

また勧告がなくても、総務省の通知では、使用の見込みがなく取壊しを予定している家屋や、居住に必要な管理を怠っていて今後人が住む見込みがないと認められる家屋などは、特例の対象となる「住宅」に当たらないとされています(国土交通省「改正空家法について 第2部 補助制度・税制等」)。

ただし、住宅用地でなくなった宅地は「商業地等」として負担調整措置の対象になり、課税標準は評価額の70%が上限です(地方税法附則18条5項・25条5項。現行の規定は令和6〜8年度分)。前年度の課税標準額の水準によっては60〜70%の範囲で据え置かれたり、段階的に引き上げられたりするため、実際の上がり方は土地ごとに異なり、6倍にはなりません。上の試算の土地(評価額1,200万円)で、課税標準が上限の70%まで上がった場合と比べてみます。

住宅用地特例あり 特例が外れ、課税標準が上限(評価額の70%)になった場合
固定資産税の課税標準 200万円 1,200万円×70%=840万円
固定資産税 2万8,000円 11万7,600円
都市計画税(0.3%) 1万2,000円 2万5,200円
土地の税額合計 4万円 14万2,800円(最大で約3.6倍)

固定資産税だけで見ると2万8,000円→11万7,600円(4.2倍)、都市計画税を含めた土地の税額では最大で約3.6倍です。この例では、上限まで上がると毎年10万円以上の負担増になります。個別の税額は、実家のある市区町村の資産税課で確認してください。なお、自分で解体して更地にした場合も「住宅の敷地」ではなくなるため、同じように土地の税額が上がります。解体してから売るか、建物付きのまま売るかは実家は売却と解体どちらが得かで比較しています。

3. 瓦や塀が落ちてケガをさせたら、所有者が賠償責任を負う

民法717条は、建物や塀など「土地の工作物」の設置・保存に欠陥(瑕疵)があって他人に損害を与えたとき、まず占有者が、占有者が必要な注意をしていた場合は所有者が賠償すると定めています。所有者の責任は、過失がなくても免れられない重い責任です。空き家で住んでいる人がいなければ、所有者が直接責任を問われる場面が想定されます。庭木(竹木)の倒木なども同じ扱いです(同条2項)。台風・地震時の考え方は空き家の所有者責任で解説しています。

このほか、空き巣・放火・不法投棄、湿気やカビによる建物の劣化で資産価値が下がることも、実務上は大きなリスクです(空き家を売らずに放置するリスク)。

実家の空き家をどうするか:5つの判断基準と判定フロー

「売る・貸す・残す」を決めるときに見るべきポイントは、次の5つです。

  1. 今後、誰かが住む予定があるか:相続人やその子どもに、具体的な時期を伴う予定があるか。「いつか」は予定に含めません。
  2. 実家までの距離:月1回通えるか。片道2時間以上・交通費が高い場合、持ち続けるコストは大きくなります。
  3. 建物の築年数と耐震性:1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた旧耐震の家は、そのまま貸す・住むには耐震改修費がかかりやすい一方、相続後に売るなら空き家の3,000万円特別控除の対象になり得ます。
  4. 兄弟・親族の意向:共有名義のまま持ち続けると、将来の売却に全員の同意が必要になります。
  5. 税の特例の期限:空き家の3,000万円特別控除は「相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」の売却が要件です。親の家を親自身が売る場合の居住用3,000万円控除は、「住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日まで」が期限です。

判定フロー(上から順にたどってください)

Q1. 5年以内に、相続人の誰かが住む具体的な予定がある?
→ はい:住む/持ち続ける。修繕・耐震の見積もりと、管理担当・費用負担を決める。
→ いいえ:Q2へ

Q2. 賃貸需要のある立地で、修繕費をかけても家賃で回収できる見込みがある?(空き家の3,000万円控除をあきらめてよい)
→ はい:貸すを検討。
→ いいえ:Q3へ

Q3. 建物が傾いている・雨漏りがひどいなど、倒壊や近隣被害の危険がある?
→ はい:解体(または解体前提での買取)を急ぐ。自治体の解体補助金を確認。
→ いいえ:Q4へ

Q4. 仲介で買い手がつきそうな立地で、売却まで半年〜1年待てる?
→ はい:仲介で売る。
→ いいえ(遠方・築古・家財が多い・早く手放したい):買取で売る。

Q5. 買取でも値がつかず、隣地や空き家バンクでも引き取り手がない?
→ はい:有料引き取りまたは解体して国庫帰属を検討。

フローで「売る」に進んだ場合でも、相続人全員で合意してから動くことが前提です。どこで迷っているかを整理したい方は、実家まるごと診断(無料)で状況を入力すると、売却・片付け・相続手続きの優先順位を確認できます。

空き家の3,000万円特別控除の期限から逆算するスケジュール

相続した実家を売るなら、最も大きく手取りに影響するのが被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除です。国税庁タックスアンサーNo.3306によると、主な要件は次のとおりです(令和8年4月1日現在の法令等)。

  • 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された家で、区分所有建物(マンションなど)でないこと
  • 相続開始の直前に、亡くなった親以外に住んでいた人がいないこと(老人ホーム入所などの例外あり)
  • 相続の時から売るまで、事業・貸付け・居住に使っていないこと
  • 耐震基準を満たすように改修して売るか、取り壊して土地を売ること。2024年1月1日以後の譲渡は、買主が売却の翌年2月15日までに耐震改修または取壊しをする場合も対象
  • 売却代金が1億円以下であること
  • 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
  • 控除額は最高3,000万円。2024年1月1日以後の譲渡で、家と土地を相続した相続人が3人以上なら1人あたり2,000万円まで

さらに、この特例自体の適用期間は2027年(令和9年)12月31日までの譲渡とされています。延長されるかどうかは今後の税制改正によるため、現時点では「相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日」と「2027年12月31日」の早いほうを期限として計画するのが安全です。

逆算の目安 やること
期限の12か月前まで 相続人全員で方針を合意/遺産分割協議書の作成/相続登記の申請
期限の9か月前まで 仲介・買取の査定を複数取得/家財の片付け方針を決める(残置で売るか、片付けてから売るか)
期限の6か月前まで 売り出し開始(仲介)または買取業者の選定/解体する場合は解体業者の見積もりと補助金の申請
期限の3か月前まで 売買契約の締結。「被相続人居住用家屋等確認書」の交付申請先(実家のある市区町村)と必要書類を確認
期限(12月31日)まで 引渡し(譲渡)を完了
翌年2月16日〜3月15日 確定申告で特例を適用(確認書・登記事項証明書・売買契約書の写しなどを添付)

たとえば2026年10月に親が亡くなった場合、「3年を経過する日の属する年の12月31日」は2029年12月31日ですが、現行法のままなら制度の期限である2027年12月31日が先に来ます。売却に1年前後かかることを考えると、残り時間は長くありません。要件と税額の試算は空き家の3,000万円特別控除とは、売却にかかる税金全体は空き家売却の税金で解説しています。個別の税額や適用の可否は、税理士や税務署でご確認ください。

なお、売却代金が500万円以下(一定の区域では800万円以下)の都市計画区域内の低未利用地などを売る場合は、別に100万円の特別控除(低未利用土地等の譲渡の特例、2028年12月31日までの譲渡)もあります。所有期間が5年を超えていることなどの要件があります。

空き家の実家で使える公的な制度・相談先

空き家は国も自治体も対策を進めている分野で、個人が使える制度も少なくありません。どれも自治体ごとに内容や受付期間が違うため、実家のある市区町村の窓口(空き家対策担当課・建築指導課・資産税課など)に確認するのが近道です。

制度・窓口 内容 使える場面
空き家の解体補助金 老朽化した空き家の解体費の一部を自治体が補助。多くは工事の契約前の申請が条件 解体して売る・国庫帰属を申請する前
空き家バンク 自治体が空き家の情報を移住希望者などに紹介する仕組み 地方で仲介の買い手がつきにくい
空家等管理活用支援法人 2023年の空家法改正で創設。市町村長が指定したNPO法人や会社などが、所有者からの相談対応や管理・活用の支援を行う(空家法23条・24条) 何から始めればよいか、地元で相談先を探したい
低未利用土地等の100万円控除 一定の低額な土地などを売ったとき、譲渡所得から100万円を控除。市区町村の確認書が必要 地方の安い土地・空き家を売る
相続土地国庫帰属制度 相続した土地を、負担金を納めて国に引き取ってもらう制度。相談は法務局 売れない・引き取り手がない土地
法務局の相続登記の相談 相続登記の手続案内(予約制が多い) 自分で相続登記を申請したい

自治体別の補助金の探し方は空き家解体・実家じまいの補助金一覧、空き家バンクで売れやすくする条件は空き家バンクの登録方法と売れる条件、国庫帰属の要件と買取との比較は相続土地国庫帰属制度は空き家に使える?で解説しています。制度の原文は、国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律について」や法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」で確認できます。

なお、市区町村は空き家の所有者を調べるために固定資産税の課税情報を使うことができ(空家法10条)、放置された空き家の所有者には連絡が届きます。「連絡が来てから考える」ではなく、指導や勧告の前に方針を決めて動いておくと、税負担の増加や行政の措置を避けやすくなります。

兄弟・親族で意見が分かれたときの進め方

実家の方針が決まらない理由で最も多いのは、相続人の間の意見の違いです。「思い出があるから残したい」「税金を払い続けるのは困る」「自分は住まないが売るのは寂しい」など、どれも自然な感情です。

  • 先に数字を共有する:上の維持費の試算と、査定額(売った場合の手取り)を並べて見せると、感情論から離れやすくなります。
  • 共有名義で「とりあえず」登記しない:共有にすると、売るときに全員の同意と手続きへの協力が必要になります。1人が相続して他の兄弟に代償金を払う、売ってお金で分けるなどの方法を先に検討します(実家の遺産分割)。
  • 期限を共有する:相続登記の3年、空き家特例の期限を示すと「いつまでに決めるか」を合意しやすくなります。
  • 相続人の人数と控除額:2024年以降の譲渡では、家と土地を相続した人が3人以上だと空き家特例の控除は1人2,000万円までになります。誰が相続するかで税額が変わる点は、分け方を決める前に確認しておきたいところです。

兄弟で揉めやすいパターンと予防策は相続で兄弟が揉める典型パターン7つ、共有名義での売却は実家売却は兄弟の共有名義でも進められる?を参照してください。

売ると決めたときの流れと、先に片付けるかどうか

方針が「売る」に決まったら、おおまかな流れは次のとおりです。

  1. 相続登記(相続人の名義にする)
  2. 査定(仲介・買取を複数)と、売り方の決定
  3. 家財の片付け(または残置のまま売る判断)
  4. 媒介契約(仲介)または買取条件の合意
  5. 売買契約・手付金の受領
  6. 決済・引渡し(固定資産税の日割り精算など)
  7. 翌年の確定申告(特例を使う場合)

各ステップの詳細は空き家売却の流れと注意点にまとめています。

片付けは「売り方」で決まる

売り方 先に片付けるべきか 理由
仲介(一般の個人に売る) 基本は片付けてから 内覧時の印象が価格と売却期間に影響し、引渡し時には空にするのが通常の条件のため
買取(不動産会社に売る) 残したままでも相談できることが多い 家財の処分費を見込んだ価格で買い取る業者がある。その分価格は下がる
解体して更地で売る 解体前に片付けが必要 家財は解体工事とは別に処分するのが一般的で、分けないと費用が膨らみやすい

思い出の品や仏壇、重要書類の捜索は、売り方にかかわらず家族が先に行う必要があります。そのうえで残った家財を「業者の片付け費用」と「買取価格の差」で比べると、どちらが手取りで得かが見えてきます(残置物はそのまま売却できる?)。

当事務局(安心実家じまい事務局)は、家財の片付けから売却相談までを窓口一つで進められる実家じまい代行パック(2DKまで29.8万円・3LDKまで49.8万円・4LDK以上69.8万円〜、税別)を用意しています。当事務局は宅地建物取引業者ではないため、売却の仲介や買取の契約実務は提携の宅建業者が、相続登記は提携の司法書士が担当します。遠方で立ち会えない方の売却相談は実家売却の相談、築年数が古い・家財が多いなどで買取を検討したい方は空き家買取の相談窓口をご利用ください。

業者に頼まなくてもよいケースと、頼んだほうがよいケース

空き家の対応は、すべてを業者に頼む必要はありません。

内容 自分でできる目安 頼んだほうがよい目安
ライフライン・郵便・保険の手続き 電話・Webでほぼ完結 ―
定期的な見回り 車で1時間以内・月1回通える 遠方・高齢で通えない・冬季に雪が多い地域
家財の片付け マンション1〜2部屋程度・家族で数回通える 一戸建てで物量が多い・期限がある・遠方
相続登記 相続人が少なく、戸籍集めや法務局への申請に時間を割ける 相続人が多い・数次相続・売却の期限が迫っている
売却 隣人や知人など買主が決まっている場合も、契約書の作成や重要事項の確認は専門家に相談するのが無難 一般の買主を探す・買取業者と交渉する

自分でやる場合の手順は実家じまいの手順7ステップや実家じまいの完全チェックリストが参考になります。相続登記を自分でやる方法と費用は相続登記の費用と自分でやる方法で解説しています。

よくある質問

実家が空き家になったら、まず何をすればいいですか?
最初の1か月で、貴重品と重要書類の回収、冷蔵庫の中身の処分、ガスの停止と電気・水道の扱いの決定、郵便の転送、防犯対策、火災保険会社への連絡を済ませます。3か月以内には固定資産税の納税通知書の送付先(相続人代表者の届出)と、相続放棄をするかどうかの判断が必要です。売る・貸すなどの方針はその後、相続人で話し合って決めても間に合います。
空き家になった実家を放置するとどうなりますか?
建物の傷みが進んで資産価値が下がるほか、管理が不十分だと空家法の「管理不全空家」や「特定空家」として市町村から指導・勧告を受けることがあります。勧告を受けると土地の固定資産税の住宅用地特例が外れて税額が上がり、特定空家で命令に違反すると50万円以下の過料、最終的には行政代執行で解体され費用を請求されることもあります。瓦や塀の落下で他人にケガをさせれば、所有者が賠償責任を負います。
空き家の固定資産税は本当に6倍になりますか?
住宅用地特例で200㎡以下の部分は課税標準が6分の1に軽減されているため、特例が外れると「6倍」と言われます。ただし住宅用地でなくなった宅地は負担調整措置により課税標準が評価額の70%を上限とするため、6倍にはなりません。記事の試算では固定資産税だけで最大4.2倍、都市計画税を含めた土地の税額で最大約3.6倍で、前年度の課税標準額しだいで上がり方は小さくなることもあります。特例が外れる主な場面は空家法の勧告を受けた場合や解体して更地にした場合で、空き家になっただけで直ちに外れるわけではありませんが、管理を怠り今後住む見込みがないと認められると対象外とされることがあります。
空き家の実家の維持費は年間いくらかかりますか?
固定資産税・都市計画税、火災保険料、電気・水道の基本料金、草刈りや修繕費、遠方なら交通費や管理代行費がかかります。記事では地方の一戸建てを仮定した試算で、税金が年6万円台、全体ではおおむね年15万〜40万円程度となりました。金額は評価額・距離・管理の頻度で大きく変わるため、納税通知書の課税明細書と実際の交通費で自分の家の数字を出してみてください。
空き家になった実家は売るのと貸すのとどちらがいいですか?
5年以内に家族が住む予定がなく、遠方で管理が難しいなら、売るほうが負担は少なくなりやすいです。貸す場合はリフォームや修繕、管理委託の費用がかかり、入居者がいる間は売りにくくなります。また相続した空き家を貸すと、売却時に空き家の3,000万円特別控除が原則使えなくなります。賃貸需要があり、家賃で修繕費を回収できる見込みがある場合に貸すことを検討するとよいでしょう。
空き家の3,000万円特別控除はいつまでに売れば使えますか?
相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。加えて、特例自体の適用期間が2027年12月31日までの譲渡とされているため、現時点ではこの2つの早いほうが期限です。1981年5月31日以前に建てられた家であることや、相続後に貸したり住んだりしていないことなどの要件もあります。個別の適用可否は税理士や税務署にご確認ください。
実家の片付けは売る前にしたほうがいいですか?
仲介で一般の買主に売るなら、内覧の印象や引渡し条件の関係で、片付けてから売るのが基本です。不動産会社の買取なら、家財が残ったままでも相談できることが多く、その分価格は下がります。思い出の品や重要書類の捜索は売り方にかかわらず家族が先に行い、残った家財は片付け費用と買取価格の差を比べて決めると判断しやすくなります。
相続登記をしないまま空き家を持ち続けてもいいですか?
2024年4月から相続登記は義務化され、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請が必要です。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。また、売るにも貸すにも相続人名義への登記が前提になるため、方針が決まっていなくても早めに済ませておくと、その後の手続きが止まりません。遺産分割がまとまらない場合は相続人申告登記という方法もあります。
売れない空き家はどうすればいいですか?
仲介で売れない場合は、不動産会社の買取、隣地の所有者への売却、自治体の空き家バンクへの登録を検討します。それでも引き取り手がない場合は、費用を払って引き取ってもらう有料引き取りや、建物を解体したうえで相続土地国庫帰属制度を使う方法があります。国庫帰属は審査手数料1筆1万4,000円と、原則20万円からの負担金が必要です。

まとめ

実家が空き家になったら、最初の1〜3か月は、ライフライン・郵便・防犯・保険・固定資産税の通知先を整えることに集中し、方針は相続人で数字を見ながら決めれば十分です。一方で、相続登記の3年、空き家の3,000万円特別控除の期限(相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日と、現行法で2027年12月31日の早いほう)には、放っておくと取り返せない期限があります。

  • 誰も住む予定がなく遠方なら、持ち続ける費用(この記事の仮定では年15万〜40万円程度)と売った場合の手取りを並べて比べる
  • 貸すと空き家の3,000万円控除は原則使えなくなるため、売る可能性があるなら先に比較する
  • 管理が行き届かず勧告を受けると、住宅用地特例が外れて土地の税額が大きく上がる(この記事の試算では最大で約3.6倍)
  • 売るなら、片付けてから仲介か、残したまま買取かを手取りで比べる

「何から決めればいいかわからない」という段階でも、実家まるごと診断(無料)で状況を整理できます。LINEでの相談も受け付けていますので、ご家族で話し合う前の材料集めにご活用ください。

税金についてのご注意
本記事の税金に関する記述は、2026年9月29日時点の国税庁の公表資料と法令にもとづく一般的な説明です。特例が使えるかどうかや個別の税額は、所得や相続の状況によって変わります。個別の税額は税理士にご確認ください(所轄の税務署でも相談できます)。

出典・参考資料(2026年9月29日確認)

読むより、聞いたほうが
早いこともあります

売る・貸す・残すのどれが合うか、いくつかの質問に答えるだけで整理できます。ご相談・お見積もりは無料です。

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この記事を書いた人

安心実家じまい事務局です。実家の片付けや遺品整理、空き家になった家の処分について、はじめての方にも分かるように記事を書いています。提携している現場の業者や司法書士と一緒に、費用の相場・自治体のごみ出しルール・補助金といった、調べてもなかなか分かりにくいところを一つずつ確かめながらまとめています。「誰に頼めばいいか分からない」という段階のご相談も、LINEやお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
運営は株式会社Sora Capital(東京都渋谷区・安心実家じまい事務局)です。相続・登記・法務に関する記述は、提携の司法書士・行政書士 久留慎一郎が監修しています。税額の計算や申告の判断は、税理士にご確認ください。

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