
久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士
東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。
■経歴
- 1966年鹿児島県生まれ
- 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
- 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
- 2013年司法書士試験合格
- 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
- 2017年司法書士法人コスモ退職
- 2018年事務所開設
- 2021年司法書士法人設立
■得意領域
- 相続登記・相続手続き
- 不動産の名義変更
- 相続放棄
- 簡易裁判所の訴訟代理
この記事の結論
- 実家を隣地の人に売ると、買主側の土地の価値が上がる「増分価値」の分だけ、一般的な仲介での査定額より高く売れることがあります。ただし相手に購入の意思がなければ成立せず、断りにくさや近所付き合いへの影響という心理的な負担も伴います。
- 声をかける前に、独立した不動産会社の無料査定で市場相場を把握しておくことが、価格交渉の出発点になります。相手の言い値や情に流されて安請け合いすると、後から取り返しがつきません。
- 境界確定・越境物の扱い・契約書は、相手が顔見知りでも省略しないでください。口約束や好意だけで進めた売買はトラブルの元になりやすい分野です。
- 相続した実家を売る場合、空き家の3,000万円特別控除は「特別の関係がある人」への売却では使えませんが、通常の隣人はこの対象に含まれないため、要件を満たせば活用できます。相続登記が済んでいないと、そもそも契約自体ができません。
実家を隣地の人に売るとはどういうことか
実家の隣に住む人から「土地を譲ってほしい」と声をかけられる、あるいは自分から隣の人に「実家を手放すので、もし関心があれば」と相談を持ちかける。どちらも、不動産会社の店頭に並ぶ通常の売却とは違う、当事者同士の相対取引です。古くから不動産業界では「隣地は借金してでも買え」と言われるほど、隣り合う土地は買い手にとって特別な価値を持つことがあります。自分の土地と一体化させることで、使い勝手や資産価値が単純な合計以上に上がる場合があるためです。
この記事では、実家を隣地の人に売る際の価格の決め方、声のかけ方、契約前に確認すべき境界や書面の注意点、譲渡所得税の計算方法までを順番に解説します。相続した実家を今後どうするか迷っている方だけでなく、隣人から突然声をかけられて戸惑っている方にも役立つ内容です。
隣地売却のメリット
最大のメリットは、相場より高い金額で合意できる可能性があることです。隣地を取得することで、旗竿地や無道路地が接道条件を満たす、狭小地が整形地になる、駐車スペースを確保できるといった買主側のメリットが生まれる場合、買主はそのメリットの一部を上乗せした価格を受け入れる余地を持っています。加えて、買い手を探す期間が要らないため、一般公開での仲介に比べて短期間で話がまとまりやすい点も利点です。内覧のための広告掲載や、不特定多数への公開を避けたいという事情がある実家では、この点が特に有効に働きます。
隣地売却で心づもりしておきたいこと
一方で、金銭以外の負担も存在します。長年の近所付き合いがある相手だと、価格交渉がしにくくなったり、逆に情に流されて相場より安く応じてしまったりすることがあります。断る場合も、今後も顔を合わせる関係が続くため、一般の買い手に断るときとは違う気の遣い方が要ります。また、隣人に購入の意思や資金の余裕がなければ、そもそも話が進みません。相手の事情次第という不確実性は、通常の仲介による売却にはない特徴です。
こんな実家は隣地売却が向いている
次のような条件に当てはまる実家では、隣地への売却を検討する価値があります。
- 接道が狭い、または道路に接していない旗竿地・無道路地で、一般の買い手が付きにくい
- 隣地と一体化させると、駐車場や庭の拡張など、明確な用途改善が見込める
- 敷地が狭小で、単独では建て替えの自由度が低い
- 不特定多数への広告公開を避けたい事情がある(近隣との関係、プライバシーへの配慮など)
- 早期の現金化を優先したいが、買取業者の査定額には納得できていない
逆に、駅近で使い勝手の良い整形地であれば、一般公開の仲介のほうが多くの買い手の目に触れ、結果的に高値で売れることも珍しくありません。隣地売却が万能な手段というわけではなく、実家の条件によって向き不向きがある点は押さえておいてください。
売却価格はどう決まるか——増分価値の考え方と計算例
隣地への売却で最も戸惑うのが「いくらで話を持ちかければいいのか」という点です。相場を知らないまま安く応じてしまう、逆に高すぎる金額を提示して話が壊れる、といった失敗を避けるための考え方を整理します。
出発点は独立した査定
価格交渉の土台になるのは、まず実家単体の通常の査定額です。隣人に声をかける前に、複数の不動産会社から無料査定を受け、市場価格のおおよその水準をつかんでおいてください。査定額を知らないまま交渉に入ると、相手の言い値をそのまま受け入れてしまったり、逆に相場感のない金額を提示して信頼を損ねたりします。査定は無料で依頼できる会社がほとんどで、複数社を比較することで金額の妥当性も判断しやすくなります。
増分価値とは何か
不動産の実務や鑑定評価の考え方では、隣り合う二つの土地が一つにまとまることで生まれる価値の上乗せ分を「増分価値」と呼びます。たとえば接道条件を満たさない土地(無道路地)が隣地を取得して道路に接続すると、単独では建物を建てられなかった土地が建築可能になり、価値が大きく跳ね上がります。狭小地が隣地と合わさることで、より効率の良い建物を建てられる整形地になる場合も同様です。増分価値は「一体化後の土地全体の価値」から「元の二つの土地それぞれの価値の合計」を差し引いた金額として捉えられます。
増分価値の配分の考え方
増分価値が生まれる場合、その金額をどちらがどれだけ受け取るかは、当事者同士の交渉次第です。一般的な考え方としては、増分価値の一部を売主(実家側)に上乗せし、残りを買主(隣人側)の取り分として、双方にメリットが残る形で価格を決めることが多いとされています。全額を売主が受け取ろうとすると、買主にとって隣地を買うメリットがなくなり、交渉がまとまりません。逆に増分価値をまったく反映しない金額では、売主が相場より安く手放すだけになってしまいます。適正な配分の目安をつかむには、増分価値の算定に慣れた不動産会社や不動産鑑定士に相談するのが確実です。
価格帯シミュレーション
増分価値がどの程度価格に影響するか、簡単な数値例で確認します。以下はあくまで考え方を示す仮の試算で、実際の金額は立地や土地の形状、地域の相場によって大きく変わります。
| 前提条件 | 内容 |
|---|---|
| 実家の単独査定額 | 1,500万円(接道が狭く、単独では建築確認に制約がある想定) |
| 隣地と一体化した場合の土地全体の価値 | 3,200万円 |
| 隣地(買主側)の単独評価額 | 1,400万円 |
| 増分価値(3,200万円-1,500万円-1,400万円) | 300万円 |
| 増分価値を折半した場合の売却価格の目安 | 1,500万円+150万円=1,650万円程度 |
このように、単独査定額そのままではなく、一体化によって生まれる増分価値の一部を上乗せする形で、実家側に有利な価格を提示できる可能性があります。ただし増分価値は常に発生するとは限らず、隣地同士を合わせても用途上の改善が乏しい場合は、通常の査定額に近い水準で落ち着くこともあります。
売却方法によって想定される価格や手間がどう変わるか、三つの選択肢を比較しておきます。
| 一般公開の仲介売却 | 隣地への相対売却 | 不動産会社の買取 | |
|---|---|---|---|
| 想定価格の目安 | 市場相場が基準 | 相場〜相場+増分価値(条件次第で相場超も) | 仲介での想定成約価格の6〜8割程度が目安 |
| 買い手を探す期間 | 数か月〜半年程度かかることが多い | 相手が決まっていれば短期間 | 査定から数週間〜1か月程度で現金化しやすい |
| 仲介手数料の目安 | 売買価格×3%+6万円(+消費税)が上限 | 仲介を入れる場合は同上、直接契約なら発生しない | 買取業者との直接契約のため原則不要 |
| 注意点 | 内覧対応や広告公開への抵抗がある場合は負担 | 相手の意思・資金力に依存する。境界確認が必須 | 価格は下がりやすいが契約不適合責任を免責できる契約が一般的 |
境界や越境物などに不安がある土地は、一般公開の仲介市場では買い手が付きにくいことがあります。そうした実家では、事情をよく知る隣人への相対売却や、専門の買取業者への相談が現実的な選択肢になります。
隣人への声のかけ方と交渉の進め方
価格の見通しが立ったら、次は実際にどう声をかけるかです。自分から持ちかける場合と、相手から言われた場合とで、気をつけるポイントが異なります。
自分から声をかける場合
いきなり訪問して用件を切り出すよりも、まずは手紙で意向を伝え、相手の都合の良いタイミングで返事をもらう方法のほうが、心理的な負担が少なく進めやすいことがあります。伝える内容は、実家を手放すことを検討していること、境界を接する土地であることから声をかけたこと、価格については市場の査定額を踏まえて相談したいことの三点で十分です。「もし関心があれば」という前提を明確にし、返事を急かさない姿勢で伝えると、相手も冷静に検討しやすくなります。共通の知人や地域の世話役がいる場合は、その方を介して打診してもらう方法も選択肢です。
相手から「譲ってほしい」と言われた場合
隣人から先に声をかけられた場合、その場で即答するのは避けてください。相場を知らないまま感情的に断ったり、逆に安請け合いしたりすることを防ぐためです。「前向きに検討したいので、少し時間をいただけますか」と伝えたうえで、まず独立した不動産会社に査定を依頼し、市場価格を把握してから返事をする流れが安全です。相手が急かしてくる場合ほど、いったん持ち帰って冷静に判断する時間を確保してください。
手紙で伝える場合のポイント
手紙を使う場合は、差出人を明記し、用件を最初の数行で簡潔に伝え、返信は義務ではない旨を添えると、相手にプレッシャーを与えずに済みます。連絡先を明記し、返事の期限は設けないか、設けるとしても余裕を持った日数にしてください。長年の隣人関係が続くことを踏まえ、断られても関係が悪化しないよう、丁寧な言葉遣いを心がけることが結果的に自分自身のためにもなります。
声をかける前に準備しておきたい項目を、チェックリストにまとめました。印刷して確認しながら進めてください。
| 確認項目 | ポイント |
|---|---|
| 独立した査定 | 不動産会社1〜2社から無料査定を受け、相場の水準を把握しておく |
| 登記事項証明書 | 自分の実家の名義・面積・境界に関する記載を確認する |
| 固定資産税評価額 | 譲渡所得税の試算に必要なため、納税通知書か市区町村の窓口で確認する |
| 相続登記の状況 | 済んでいない場合は、声をかける前に着手の見通しを立てておく |
| 越境物の有無 | 塀・庭木の枝・雨どいなどが境界を越えていないか、目視で確認しておく |
契約前に確認しておきたいこと
相手が顔見知りの隣人であっても、契約に関わる手続きを省略してよい理由にはなりません。むしろ長く付き合いが続く相手だからこそ、後からの言った言わないのトラブルを避けるための書面が重要になります。
境界確定測量の重要性
隣地同士の売買では、境界の位置がそのまま取引の対象範囲に直結します。過去の測量図がない、あるいは古い図面しかない実家では、土地家屋調査士に依頼して境界確定測量を行い、双方が立ち会って境界標を確認したうえで契約に進むことをおすすめします。境界確定測量には隣接する土地すべての所有者の立ち会いと合意が必要になるため、着手から完了まである程度の期間と費用がかかるのが一般的です。今回のように買主自身が隣地の所有者であれば、立ち会いの調整はしやすい面もありますが、それでも正式な図面を残しておく価値は変わりません。
越境物の扱い
塀や庭木の枝、給排水管などが境界をまたいで隣地に入り込んでいる「越境」は、古い住宅地では珍しくありません。売却前に越境物の有無を確認し、是正できるものは是正しておくか、是正が難しい場合は「越境物についての覚書」を取り交わしておくと、契約後のトラブルを防げます。買主が隣人であっても、将来その隣人が自分の土地を売却する際に越境の扱いを引き継ぐ必要が出てくるため、口約束で済ませず書面に残すことが双方のためになります。
契約書と重要事項説明を省略しない
親しい間柄だからと契約書を簡略化したり、口頭の合意だけで代金を受け渡したりすると、後から「聞いていた条件と違う」という食い違いが起きやすくなります。売買契約書には、境界の範囲、越境物の扱い、契約不適合責任の有無と期間、支払方法と決済日を明記してください。不動産会社を通す場合は重要事項説明書の交付が義務付けられており、対象不動産の権利関係や法令上の制限が説明されます。個人間だけで進める場合も、司法書士に依頼して契約書の内容を確認してもらうと、後のトラブルを大きく減らせます。
不動産会社に依頼する前に知っておきたいこと
買い手が既に決まっている隣地売却では、不動産会社に依頼する目的は「買い手を探すこと」ではなく「契約と決済を安全に進めること」に変わります。この違いを踏まえたうえで、次の点を知っておくと依頼先の選び方に役立ちます。
- 仲介手数料は上限が決まっている——宅地建物取引業法により、仲介手数料は「売買価格×3%+6万円(+消費税)」(400万円超の場合)が上限です。買い手を探す必要がないケースでも同額を請求されることに納得できない場合は、契約書作成や決済の立会いのみを担う限定的なプランを扱う会社がないか、複数社に確認してみてください。
- 個人間だけで進めるとコストは抑えられるが、リスクも増える——仲介手数料はかかりませんが、重要事項説明書がなく、契約不適合責任の範囲や境界の扱いが曖昧なまま契約してしまう可能性があります。金額の小さな取引ではないため、最低でも契約書の内容を司法書士や弁護士に確認してもらうことをおすすめします。
- 一括査定サイトへの複数登録は営業電話が増えやすい——相場を知りたいだけであれば、まず1〜2社に絞って査定を依頼し、金額の根拠を聞いてみる方法でも十分です。
契約前に確認しておきたい項目をチェックリストにまとめました。
| 確認項目 | ポイント |
|---|---|
| 境界確定測量図 | 有無を確認し、なければ実施するか、既存図面で合意する範囲を書面化するか決める |
| 越境物の是正・覚書 | 塀・庭木・配管などの越境がないか確認し、必要なら覚書を取り交わす |
| 契約不適合責任 | 責任を負う範囲と期間を契約書に明記する |
| 支払方法・決済日 | 一括か分割か、決済日と引き渡し日を明確にする |
| 相続登記の完了 | 名義が被相続人のままになっていないか確認する |
相続登記が済んでいないと契約できない
実家の名義が亡くなった親や、さらに先代のままになっている場合、原則として売買契約の当事者になれません。買主である隣人も、登記簿上の所有者と契約する必要があるためです。相続登記は2024年4月1日から義務化されており、不動産の取得を知った日から3年以内の申請が必要です。隣地への売却を考え始めた段階で、まず自分の実家の名義がどうなっているかを登記事項証明書で確認し、済んでいなければ司法書士へ相談して早めに着手してください。相続人が複数いる場合は、遺産分割協議もあわせて進めておくと、価格の話がまとまった時点でそのまま契約に移れます。
譲渡所得税はいくらかかるか
実家を売却して利益が出た場合、譲渡所得税(所得税・復興特別所得税・住民税)がかかります。隣人への売却でも税金の計算方法は一般的な売却と変わりません。ここでは基本的な計算式と、相続した空き家に使える特例を確認します。
譲渡所得税の基本(長期・短期)
譲渡所得税は「譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額」で求めた課税譲渡所得金額に、税率をかけて計算します(国税庁タックスアンサーより)。取得費が分からない場合は、譲渡価額の5%を取得費(概算取得費)とすることができます。税率は、売却した年の1月1日時点での所有期間によって次のとおり大きく異なります。
| 所有期間 | 区分 | 税率(所得税+復興特別所得税+住民税) |
|---|---|---|
| 5年超 | 長期譲渡所得 | 所得税15%+復興特別所得税(所得税額×2.1%)+住民税5%=合計約20.315% |
| 5年以下 | 短期譲渡所得 | 所得税30%+復興特別所得税(所得税額×2.1%)+住民税9%=合計約39.63% |
(国税庁タックスアンサー「長期譲渡所得の税額の計算」「短期譲渡所得の税額の計算」より)相続した実家の所有期間は、被相続人(亡くなった親など)の所有期間をそのまま引き継ぎます。親が長年住んでいた家であれば、多くの場合は長期譲渡に該当します。
空き家の3,000万円特別控除
相続または遺贈で取得した被相続人の居住用家屋やその敷地を売却する場合、一定の要件を満たせば、譲渡所得の金額から最高3,000万円(相続人が3人以上の場合は2,000万円)を控除できる特例があります(国税庁タックスアンサーNo.3306より)。主な要件は次のとおりです。
- 家屋が昭和56年5月31日以前に建築されていること
- 区分所有建物登記がされた建物(分譲マンションなど)でないこと
- 相続開始の直前に、被相続人以外に住んでいた人がいなかったこと
- 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
- 売却代金が1億円以下であること
- 譲渡の時に一定の耐震基準を満たしているか、家屋を取り壊してから土地を売却すること
- 「特別の関係がある人」(親子・夫婦・生計を一にする親族など)に対する売却でないこと
- 適用期限は2027年(令和9年)12月31日までの売却分
この最後の要件が、隣地売却を考えるうえで見落とされやすいポイントです。「特別の関係がある人」に該当するのは親子や夫婦、生計を一にする親族などに限られ、一般的な隣人はこれに含まれません。つまり、実家が要件を満たす空き家であれば、隣人への売却でもこの特例を使える可能性があります。制度の詳細や自分のケースが該当するかどうかは、国税庁の案内をあわせて確認するか、税理士・税務署へ相談してください。
ケース別シミュレーション
実際にどの程度の税額になるか、条件別に試算した例を示します。取得費は不明として譲渡価額の5%(概算取得費)で計算し、譲渡費用も便宜上、譲渡価額の5%と仮定しています。実際の金額は取得費の実額や諸経費によって変わるため、目安としてご覧ください。
| ケース | 譲渡価額 | 取得費・譲渡費用 | 特別控除 | 課税譲渡所得金額 | 税額の目安 |
|---|---|---|---|---|---|
| ①長期譲渡・空き家特例あり | 2,000万円 | 各100万円(計200万円) | 3,000万円 | 0円 | 0円 |
| ②長期譲渡・特例なし | 2,000万円 | 各100万円(計200万円) | なし | 1,800万円 | 約365万7,000円 |
| ③短期譲渡(参考・所有5年以下) | 1,500万円 | 各75万円(計150万円) | なし | 1,350万円 | 約535万円 |
ケース①のように空き家の3,000万円特別控除が使えると、課税譲渡所得金額がゼロになり、税額が発生しないことも珍しくありません。一方、特例の要件を満たさない場合(区分所有建物である、相続開始から3年を過ぎて売却した、など)は、ケース②のように数百万円単位の税負担が生じます。ケース③は所有期間が5年以下の短期譲渡の場合の参考値で、相続した実家では通常あまり発生しませんが、生前に親が購入した直後の不動産を相続してすぐ売却するような例では起こり得ます。所有期間が5年を境に税率がほぼ倍近く変わる点は、売却時期を検討するうえで重要な情報です。
売りたくない・売れない隣地はどうするか
隣人に購入の意思がない、あるいは資産価値が低く売却自体が難しい実家もあります。そうした場合の代替策も知っておいてください。
相続土地国庫帰属制度という選択肢
相続や遺贈によって土地を取得したものの、活用のめどが立たず管理に困っている場合、一定の要件を満たせば土地を国に引き渡せる「相続土地国庫帰属制度」があります。申請できるのは相続などで土地の所有権を取得した個人で、法務大臣(窓口は法務局)の承認を得たうえで、審査手数料14,000円と、10年分の土地管理費に相当する負担金を納付する必要があります。建物が建っている土地や、担保権が設定されている土地は対象外となるため、利用するには家屋の解体が前提になる場合が多い点に注意してください。隣地への売却が難しい実家の土地でも、この制度を使って手放せる可能性があります。
解体してから売るかどうかの判断
家屋の傷みが激しく、そのままでは買い手が付きにくい実家では、解体してから売却したほうが選択肢が広がることがあります。ただし、住宅が建っている土地には固定資産税の「住宅用地の特例」があり、更地にすると課税標準の軽減(小規模住宅用地は6分の1、一般住宅用地は3分の1)が外れ、翌年度から税負担が増える点は見落とされがちです。解体費用と、解体後に見込める価格の上昇分、税負担の増加分を突き合わせて、総額で有利かどうかを試算してから決めることをおすすめします。隣人に売却する場合も、解体前後どちらの状態で引き渡すかは、価格交渉に関わる重要な条件のひとつです。
事務局の相談窓口でよく見られるパターン
相談を受ける中では、隣地売却に関して次のようなパターンが繰り返し見られます。自分の状況と照らし合わせて確認してみてください。
- 隣人から「譲ってほしい」と言われてその場で口頭の了承をしてしまい、後から相場を調べたら安すぎたことに気づくが、既に約束した手前、断りにくくなっている
- 境界がはっきりしないまま長年放置されており、いざ売却を考えたときになって境界確定測量から着手する必要が生じ、想定より時間がかかる
- 相続登記が済んでいないことに気づかないまま隣人と価格の合意までしてしまい、契約直前になって名義変更の手続きが必要だと判明し、話が数か月止まる
- 隣人との関係を気にするあまり、独立した査定を取らずに交渉を進め、増分価値を反映しないまま安く手放してしまう
これらに共通するのは、価格の相場観と権利関係の確認を後回しにしたまま交渉を進めてしまっている点です。声をかける前、あるいは声をかけられた直後の段階で、査定・登記・境界の三点を確認しておくことが、後悔のない売却につながります。
安心実家じまいのサービス案内
安心実家じまいは、実家の片付けから売却・解体の手配までを一つの窓口でお受けする全国対応のサービスです。隣地への売却を検討している実家についても、査定の相談から、相続登記など法律手続きの整理まで、提携する専門家と連携してサポートします。
相続登記や境界確認など、実家の売却前に整えておきたい手続きが複数ある場合、どこから手をつければよいか分かりにくいという声をよくいただきます。実家じまい代行サービスでは、家財の片付けと並行して、必要な専門家(司法書士・土地家屋調査士など)への橋渡しを行い、隣人との交渉や不動産会社への相談を進めやすい状態に整えます。片付けが済んでいない実家でも、まずは現状のご相談から承っています。
実家をどう手放すか迷っている段階の方には、進め方の全体像をまとめた実家じまいの進め方ガイド、費用の目安を知りたい方には実家じまいの費用、具体的な手順を知りたい方には実家じまいの手順もあわせてご覧ください。
よくある質問
実家を隣の人に売ると、一般的な売却より高く売れますか?
隣地の人に売る場合も不動産会社を通したほうがいいですか?
空き家の3,000万円特別控除は、隣人に売る場合も使えますか?
境界がはっきりしないまま隣地を売ることはできますか?
相続登記が終わっていない実家を隣人に売ることはできますか?
まとめ
実家を隣地の人に売る方法は、相場観と権利関係の確認さえ押さえれば、通常の仲介売却にはないメリットを引き出せる手段です。要点を振り返ります。
- 隣地への売却は、増分価値の分だけ相場より高く売れる可能性がある。ただし相手の意思・資金力に左右される
- 声をかける前に、独立した不動産会社の査定で市場相場を把握しておく
- 増分価値は「一体化後の価値-元の二つの土地の価値の合計」で捉え、双方にメリットが残る配分で交渉する
- 境界確定・越境物の覚書・契約書は、相手が顔見知りでも省略しない
- 相続登記が済んでいないと契約自体ができない。声をかける前に名義を確認する
- 譲渡所得税は長期譲渡で約20.315%、短期譲渡で約39.63%。空き家の3,000万円特別控除は隣人への売却でも使える場合がある
- 隣人に購入意思がない・資産価値が低い実家は、相続土地国庫帰属制度や買取業者への相談も選択肢になる
隣地への売却は、価格交渉の相手が特定できているという点で心強い一方、近所付き合いが続くからこその難しさもあります。まずは実家の名義と境界を確認し、独立した査定で相場をつかんだうえで、落ち着いて話を進めてください。片付けや相続登記の準備から始めたい場合は、実家じまいの手順もあわせてご確認ください。
早いこともあります
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