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マンションの実家じまい|戸建てとの違い・管理費・売却手順

最終更新日:2026年8月6日|監修:司法書士・行政書士 久留慎一郎先生・安心実家じまい事務局

司法書士・行政書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 不動産の名義変更
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理

この記事の結論

  • マンションの実家は戸建てと違い解体が不要で、多くの場合は売却がもっとも現実的な選択肢です。庭木の手入れや境界確定といった戸建て特有の手間もありません。
  • 一方で管理費・修繕積立金は所有している限り発生し続け、滞納があれば相続人がその債務ごと引き継ぎます。相続発生後は早めに管理組合・管理会社へ連絡してください。
  • 空き家の3,000万円特別控除は分譲マンション(区分所有建物)には使えません(国税庁の要件で明記)。譲渡所得税は特例なしで計算されることを前提に、事前のシミュレーションが要ります。
  • 相続登記(名義変更)が済んでいないと売却契約は結べません。家財の片付けと登記の準備は並行して進めるのが現実的です。
目次

マンションの実家じまい、戸建てとの違いをまず整理する

「実家じまい」というと戸建てを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、分譲マンションを実家として相続するケースも増えています。マンションと戸建てでは、片付けから処分までの進め方に共通する部分と、大きく異なる部分の両方があります。最初に全体像を比較表で整理します。

項目 マンション 戸建て
解体の要否 不要(区分所有部分のみの権利のため) 老朽化していれば検討対象になる
管理費・修繕積立金 所有している限り毎月発生する 基本的に発生しない(固定資産税等は別)
庭・外構の管理 不要(専有部分に庭がない場合が多い) 庭木の伐採・雑草処理などが必要になりやすい
境界確定・測量 不要(敷地は共有持分のため測量の対象にならない) 売却前に隣地との境界確認が必要な場合がある
粗大ごみの搬出 エレベーターの有無・共用廊下の養生が必要になる トラック接道・駐車スペースの確保が課題になりやすい
空き家3,000万円特別控除 対象外(区分所有建物は要件から除外) 要件を満たせば利用できる場合がある
相続土地国庫帰属制度 対象外(建物のある土地は制度の対象外) 建物を解体し更地にすれば申請できる場合がある
売却のしやすさ 立地・築年数次第で流動性が高い場合が多い 再建築不可・接道条件などで売りにくい場合がある

この表からわかるとおり、マンションは解体や庭の管理といった戸建て特有の負担がない一方で、税制上の優遇の多くがそもそも対象外になるという特徴があります。とくに空き家の3,000万円特別控除と相続土地国庫帰属制度は、実家じまいの相談でよく話題に上る制度ですが、いずれもマンションには使えません。この2点を知らずに戸建て向けの情報だけを参考にしてしまうと、譲渡所得税の見込みが大きく狂うことがあるため、記事の後半で詳しく解説します。

マンションの実家が生まれやすい背景

1970年代から2000年代にかけて分譲された郊外型・都市型のマンションに、親世代が長く住み続けているケースは全国的に見られます。当時30代・40代で購入した世代が高齢期を迎え、施設への入居や、同居のための住み替え、あるいは相続によって、空室となったマンションを子世代が引き継ぐ場面が増えています。戸建てと違って庭の管理が不要な分、空室のまま放置されやすい面がある一方、管理費・修繕積立金は誰も住んでいなくても請求され続けるため、対応を先延ばしにするほど負担が積み上がっていきます。

マンションのタイプによって売却のしやすさが変わる

ひと口にマンションといっても、タワーマンション、中層の分譲マンション、団地型の集合住宅では、管理体制や売却のしやすさに違いがあります。実家がどのタイプに当てはまるかで、想定すべき期間や費用感が変わってきます。

タイプ 管理費・修繕積立金の傾向 売却のしやすさ
タワーマンション(20階以上) 共用施設が多く高めになりやすい 立地次第で需要が高いが、相続税評価の補正の影響を受けやすい
都市部の中層マンション(築浅〜中古) 物件ごとの差が大きい 駅距離や築年数によって差が出やすいが総じて流動性は高め
郊外の団地型・大規模団地 比較的抑えめな場合が多いが、築古だと修繕積立金の値上げが起きやすい エリアの人口動態次第で売却に時間がかかることがある
旧耐震基準の物件(1981年5月31日以前に建築確認) 築年数相応 買主の住宅ローンが組みにくく、耐震基準適合証明書の要否を確認する必要がある

とくに郊外の大規模団地では、住民の高齢化とともに空室が増え、将来的な建て替えや大規模修繕の合意形成が難しくなっている物件も見られます。管理組合の総会議事録や、直近の修繕積立金の値上げ履歴を確認しておくと、今後の負担の見通しが立てやすくなります。

マンションの実家を処分する4つの選択肢

マンションの実家をどうするかは、大きく分けて4つの方向性があります。それぞれの向き・不向きを整理します。

1. 売却する

もっとも選ばれる方法です。誰も住む予定がなく、管理費・修繕積立金の負担を早めに切り離したい場合に向いています。仲介による売却は時間がかかる代わりに市場価格に近い金額で売れる可能性が高く、買取は数週間程度で現金化できる代わりに仲介より価格が下がる傾向があります。急いでいるかどうか、価格を優先するかどうかで選び方が変わります。両者の違いを整理すると、次のとおりです。

仲介(一般の買主に売る) 買取(不動産会社が直接買う)
売却までの期間 3か月〜半年程度が目安(市況・立地による) 数週間〜1か月程度が目安
価格の傾向 市場価格に近い金額が期待できる 仲介より1〜2割程度低くなる傾向がある
仲介手数料 売却価格の3%+6万円+消費税が上限の目安 不要な場合が多い(直接取引のため)
内見対応 複数回の内見対応が必要になりやすい 基本的に不要(会社の担当者が現地確認のみ)
向いているケース 時間に余裕がありできるだけ高く売りたい場合 相続の期限が迫っている、遠方で対応が難しい場合

2. 賃貸に出す

立地が良く、賃貸需要が見込める場合の選択肢です。ただし、賃貸経営には確定申告や入居者対応、設備故障時の修繕といった継続的な手間が伴います。遠方に住んでいる場合は管理会社への委託が前提になり、その分の管理委託手数料(家賃の5%前後が一般的な目安とされます)もかかります。将来的に売却する可能性がある場合、賃貸中は買主が見つかりにくくなる(入居者がいる状態のまま売る「オーナーチェンジ」になる)点も踏まえて判断してください。

賃貸契約には、更新のある「普通借家契約」と、期間満了で契約が終了する「定期借家契約」の2種類があります。将来的に自分で使う可能性を残しておきたい場合は、契約期間を区切れる定期借家契約のほうが扱いやすい面があります。一方で、定期借家契約は借り手にとって選ばれにくい面もあり、家賃を相場よりやや下げないと入居者が決まりにくいことがあります。賃貸収入は不動産所得として確定申告が必要になり、青色申告を選べば一定の要件のもとで特別控除を受けられる場合もあるため、事前に税理士へ相談しておくと安心です。

3. 空き家のまま維持する

思い出の品が多く残っている、将来的に自分が住む可能性がある、市況が悪く今は売り時ではないといった事情がある場合に選ばれます。ただし管理費・修繕積立金・固定資産税は住んでいなくても発生し続け、長期間空室にすると室内の劣化や漏水事故のリスクが上がります。「とりあえず維持」を選ぶ場合も、管理組合への連絡と定期的な換気・通水だけは怠らないようにしてください。

4. 相続放棄する

マンションの資産価値より、滞納管理費や住宅ローンの残債(団体信用生命保険で完済されない場合)などの負債のほうが大きいと見込まれるときの選択肢です。ただし相続放棄は、遺品の一部でも売却・処分すると単純承認とみなされ、後から撤回できなくなることがあります。放棄を検討している段階では、家財に手をつける前に司法書士や弁護士へ相談してください。

もう一点、意外と知られていないのが、相続放棄をしても管理義務が完全になくなるわけではないという点です。2023年4月に施行された改正民法により、相続放棄をした人は、放棄の時点でその不動産を現に占有していた場合に限り、次の相続人や相続財産清算人に引き渡すまでの間、自分の財産と同程度の注意をもって保存する義務を負うとされています。実家のマンションに同居していた、または鍵を管理していたなど「現に占有」していた事情がある相続人は、放棄をしても水漏れなどの事故防止に一定の配慮を続ける必要がある点を理解しておいてください。

四つの選択肢のうち、実際の相談では売却を選ぶ方が大半を占めます。理由は単純で、管理費・修繕積立金という固定費が、住んでいなくても毎月発生し続けるためです。次の章では、この管理費の扱いを詳しく見ていきます。

親が元気なうちに動く「生前整理」という選択肢

ここまでは相続が発生した後の話を中心に進めてきましたが、親がまだ元気なうちに、マンションの将来をどうするか話し合っておくという選択肢もあります。本人の意思で生前に売却する、あるいは子への生前贈与を検討することで、相続開始後の遺産分割協議や名義変更の手間を減らせる場合があります。生前贈与には別途贈与税がかかるため、税理士を交えたシミュレーションが欠かせませんが、判断能力が明確なうちに本人の希望を反映できる点は、相続後の対応にはない利点です。家財の生前整理から進めたい場合は生前整理サービスもあわせてご検討ください。

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管理費・修繕積立金の扱いと相続後の注意点

マンションを所有していると、専有部分の持分割合に応じて管理費・修繕積立金を負担する義務が生じます。これは区分所有法に基づく区分所有者としての義務で、住んでいるかどうかは関係ありません。実家が空室になった時点から、誰かがこの支払いを続ける必要があります。

滞納は相続人が引き継ぐ

見落とされがちな点として、親が管理費を滞納したまま亡くなっていた場合、その滞納分は相続人が支払う義務を負います。区分所有法は、管理費などの債務について、区分所有権を承継した人(特定承継人)に対しても請求できると定めています。つまり「滞納していたのは親であって自分ではない」という理屈は通らず、相続によって区分所有権を取得した以上、滞納分も含めて引き継ぐことになります。管理組合によっては、長期滞納者に対して先取特権に基づく競売手続きを検討する場合もあるため、相続が発生したら早い段階で滞納の有無を確認しておくことが重要です。

相続発生後にまず確認すべきこと

実家がマンションだった場合、片付けに着手する前に次の点を管理組合・管理会社に確認しておくと、後のトラブルを防げます。

確認項目 確認先 確認する理由
管理費・修繕積立金の滞納有無と金額 管理組合・管理会社 相続人が承継する債務のため。滞納が続くほど遅延損害金も増える
大規模修繕の実施予定・計画 管理組合・管理規約・重要事項調査報告書 近く一時金の徴収予定があると売却価格や引き継ぎ費用に影響する
管理規約・使用細則の内容 管理組合・管理会社 ペット飼育やリフォーム、退去時の原状回復ルールを確認するため
駐車場・トランクルームの契約状況 管理組合・管理会社 別契約になっている場合、退去や名義変更の手続きが別途必要になる
専有部分の履歴(リフォーム歴・給排水管の状態) 管理会社・過去の書類 売却時の重要事項説明や、買い手からの質問に備えるため
火災保険・地震保険の加入状況 保険証券・保険会社 空室期間中の水漏れ等の事故に備えるため、解約時期を検討する

とくに大規模修繕の実施予定は見落としやすい項目です。築30年前後のマンションでは大規模修繕に伴う一時金の徴収が行われることがあり、売却を検討している時期と重なると、支払い義務が誰にあるか(引き渡し前か後か)をめぐって調整が必要になります。仲介する不動産会社を通じて、売買契約時にこの点を明記してもらうと安心です。

管理費が払えない・払いたくない場合

相続した実家のマンションについて「住む予定もなく、管理費だけがかさんでいく」という相談は少なくありません。この場合、放置するほど滞納額が増え、将来の売却時に滞納分の精算で手取りが減ってしまいます。早期に売却を決断するか、賃貸に出して収入で管理費を賄うか、資産価値が低く負債が大きい場合は相続放棄を検討するか、早い段階で方針を決めることが、結果的に負担を抑える近道になります。

相続登記とマンションの名義変更で気をつけたいこと

マンションも戸建てと同じく不動産である以上、相続登記の対象です。2024年4月1日から相続登記は義務化されており、不動産の取得を知った日から3年以内に申請する必要があります。正当な理由なく期限を過ぎると10万円以下の過料の対象になり得ます。制度の詳しい期限や過料の考え方は相続登記の義務化とは|期限・過料・実家を相続したらやることで解説しています。

借地権付きマンションの場合の注意点

マンションの中には、敷地が所有権ではなく借地権(定期借地権を含む)になっている物件もあります。この場合、専有部分の建物は相続の対象になりますが、敷地の権利は所有権ではなく借地権の相続として扱われ、地主に対する相続の通知や、地代の支払い義務の承継が必要になることがあります。定期借地権付きのマンションは、契約で定められた借地期間の満了時に建物を取り壊して更地で返還する取り決めになっているのが一般的で、期間の残りが少ない場合は資産価値の評価や売却のしやすさに大きく影響します。実家が借地権付きのマンションかどうかは、登記事項証明書や購入時の重要事項説明書で確認できます。該当する場合は、通常の所有権マンションとは相続・売却の進め方が異なるため、早めに司法書士や地主側の窓口に確認しておくことをおすすめします。

区分所有建物ならではの登記の特徴

分譲マンションの登記には、専有部分の登記と、敷地権(敷地利用権)の登記が一体として扱われる「敷地権化」という仕組みがあります。多くの分譲マンションではすでに敷地権化されているため、専有部分の相続登記をすれば、原則として敷地の持分も一体で名義変更されます。ただし古い分譲物件の中には敷地権化されていない「旧法マンション」もあり、その場合は建物と土地の持分を別々に登記する必要があるため、通常より書類と手間が増えます。登記事項証明書を取得すれば、敷地権化されているかどうかを確認できます。

名義変更が済んでいないと売却も賃貸もできない

名義が故人のままでは、不動産会社に売却の媒介を依頼することも、賃貸借契約を結ぶこともできません。契約の主体は登記簿上の所有者である必要があるためです。「まず片付けを終えてから名義変更を考える」という順序だと、いざ売却しようとした段階で戸籍の収集からやり直すことになり、数か月単位で計画が遅れることがあります。家財の片付けと並行して、相続人の確定・戸籍の収集・遺産分割協議を進めておくと、片付けが終わった時点で売却の準備も整った状態を作れます。

住宅ローンが残っている場合の抵当権抹消登記

親がマンションの購入時に住宅ローンを組んでいた場合、団体信用生命保険(団信)に加入していれば、死亡によってローン残債が保険金で完済される仕組みが一般的です。ただし完済されるのは自動ではなく、遺族が金融機関に死亡の事実を届け出て、団信の保険金請求手続きを行う必要があります。手続きが遅れると、口座引き落としが続いてしまう場合もあるため、相続開始後は早めに金融機関へ連絡してください。完済が確認できたら、抵当権抹消登記も忘れずに行う必要があります。相続登記と同時に司法書士へ依頼すると、まとめて手続きできます。団信に加入していなかった、あるいは保険金だけでは完済に届かないケースでは、相続人がローンの残債を引き継ぐことになるため、売却によって完済できる見込みがあるかどうかを早い段階で確認しておくべきです。

相続人が複数いる場合の分け方——マンションは現物分割ができない

相続人が複数いる場合、実家の分け方には「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有」の4つの方法があります。戸建てであれば土地を分筆して現物分割できる場合もありますが、マンションの一室は物理的に分けられないため、現物分割は基本的に選べません。現実的には次の3つのいずれかを選ぶことになります。

方法 内容 注意点
代償分割 一人の相続人がマンションを取得し、他の相続人へ代償金を支払う 取得する相続人にまとまった現金が必要になる
換価分割 マンションを売却し、売却代金を相続人間で分配する 売却まで名義は相続人の共有登記になることが多い
共有 相続人全員の共有名義のまま保有する 売却・賃貸に全員の同意が必要になり、将来の意思決定が難しくなりやすい

実務では、誰も住む予定がなく現金化を優先する場合は換価分割、特定の相続人が住み続けたい・投資用に残したい場合は代償分割が選ばれることが多い傾向にあります。共有名義のまま先送りにすると、将来相続人がさらに増えて権利関係が複雑になる「二次相続」のリスクが高まるため、できるだけ早い段階で方針を決めておくことをおすすめします。遺産分割協議がまとまらない場合、法務局への相続人申告登記で登記の義務だけを先に果たし、時間をかけて話し合いを続けるという方法もあります。

代償分割の金額イメージ

具体的な数字でイメージすると分かりやすくなります。仮に評価額2,400万円のマンションを、長男・次男・長女の3人で法定相続分どおりに分ける場合を考えます。長男がマンションを単独で取得し、住み続けるか賃貸に出すことを希望したとします。この場合、次男・長女の相続分(3分の1ずつ)にあたる各800万円、合計1,600万円を、長男が代償金として二人に支払う形になります。代償金は現金での用意が原則のため、長男に十分な自己資金がない場合は、マンションを担保にした借り入れや、売却を前提とした分割払いの取り決めを検討することになります。評価額をいくらとするか(相続税評価額か、市場での想定売却価格か)で代償金の水準が変わるため、この点も事前に相続人間ですり合わせておく必要があります。

マンションの相続税評価で知っておきたい変更点

そもそも相続税の申告義務が生じるのは、遺産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合です。たとえば法定相続人が2人であれば基礎控除額は4,200万円になります。マンションの評価額に加えて預貯金や他の財産も合算した総額で判定するため、マンションの評価額単体では申告要否を判断できません。実家のマンション以外にどのような財産があるかもあわせて確認しておく必要があります。

相続税を計算する際、不動産は原則として路線価や固定資産税評価額をもとに評価します。近年、タワーマンションを中心に、この相続税評価額が実際の市場価格(時価)を大きく下回るケースが問題視され、国税庁は令和6年1月1日以後に相続・遺贈・贈与により取得した居住用の区分所有財産(分譲マンション)について、評価額を補正する新しい算定方法を導入しました。高層階や立地の良いマンションほど、評価額と市場価格の乖離が大きくなりやすく、この補正によって従来より相続税評価額が高くなるケースが出てきています。

補正の要否や具体的な計算は、築年数・総階数・所在階・敷地の持分割合など複数の要素をもとに算出され、個々の物件によって結果が大きく異なります。実家がタワーマンションや高層階の住戸である場合、従来の感覚より相続税評価額が高く算定される可能性があるため、相続税の申告が必要になりそうな場合は、早い段階で税理士に評価額の試算を依頼しておくことをおすすめします。低層階や築年数の古いマンションでは影響が小さい、またはほとんど影響がない場合もあります。

小規模宅地等の特例は使える場合がある

空き家の3,000万円特別控除(譲渡所得税の特例)はマンションに使えませんが、相続税の計算段階では「小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)」を使える可能性があります。これは、被相続人が住んでいた宅地について、一定の要件のもとで評価額を最大80%減額できる制度で、マンションの敷地権にも適用対象になり得ます。ただし要件は単純ではなく、被相続人と同居していた親族が相続する場合と、別居していた親族が相続する場合とで扱いが異なります。別居していた場合は、いわゆる「家なき子特例」の要件(相続人本人やその配偶者が、相続開始前3年以内に自己または配偶者の持ち家に住んでいないことなど)を満たす必要があり、持ち家がある子が実家のマンションを相続するケースでは適用できないことも多いのが実情です。譲渡所得税の空き家特例とは別の制度である点を混同しないよう注意し、相続税の申告が必要な場合は税理士に適用可否を確認してください。

譲渡所得税の仕組みと計算例——空き家特例が使えない理由

マンションを売却して利益(譲渡所得)が出た場合、譲渡所得税・住民税がかかります。戸建ての実家じまいでよく紹介される「空き家の3,000万円特別控除」は、分譲マンションには使えません。この章では、その理由と、実際の税額をどう見積もればよいかを整理します。

空き家の3,000万円特別控除が使えない根拠

国税庁のタックスアンサーNo.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」では、対象となる「被相続人居住用家屋」の要件の一つとして「区分所有建物登記がされている建物でないこと」が明記されています。分譲マンションの専有部分はまさにこの区分所有建物登記がされた建物にあたるため、要件の時点で対象外となります。戸建ての実家であれば、昭和56年5月31日以前に建築されているなど一定の条件を満たせば最大3,000万円(相続人が3人以上の場合は2,000万円)を譲渡所得から控除できますが、マンションの実家ではこの特例を前提にした資金計画は立てられません。

譲渡所得税の基本的な計算式

譲渡所得税は、次の式で計算します。

項目 内容
譲渡所得 譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)
取得費 購入時の価格から減価償却分を差し引いた額。不明な場合は譲渡価額の5%を概算取得費として使える
譲渡費用 仲介手数料・印紙税・測量費用など売却にかかった費用
税率(長期譲渡所得) 所有期間5年超(譲渡した年の1月1日時点で判定):20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)
税率(短期譲渡所得) 所有期間5年以下:39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)

相続した不動産の所有期間は、被相続人が取得した時期から通算されるため、親が長く所有していたマンションであれば、多くの場合は長期譲渡所得(20.315%)に該当します。取得費については、購入時の売買契約書が残っていれば実額を使えますが、数十年前に購入した実家では契約書が見当たらないことも珍しくありません。その場合は譲渡価額の5%を概算取得費として使うのが一般的な取り扱いです。

ケース別シミュレーション

実際にどの程度の税額になるか、パターン別に目安を示します。いずれも取得費が不明で概算取得費(譲渡価額の5%)を使うケースと、購入時の契約書が残っており実額の取得費が分かるケースの両方を試算しています。仲介手数料は速算式(売却価格×3%+6万円)+消費税で概算しています。実際の税額は個々の事情で変わるため、最終的には税理士にご確認ください。

ケース 譲渡価額 取得費の扱い 譲渡所得税・住民税の概算
A:取得費不明、築古マンションを2,000万円で売却 2,000万円 概算取得費100万円(5%)+仲介手数料等約72万円 約(2,000−100−72)万円×20.315%=約371万円
B:契約書が残っており取得費1,200万円、2,000万円で売却 2,000万円 実額取得費1,200万円+仲介手数料等約72万円 約(2,000−1,200−72)万円×20.315%=約148万円
C:取得費不明、駅近マンションを3,500万円で売却 3,500万円 概算取得費175万円(5%)+仲介手数料等約121万円 約(3,500−175−121)万円×20.315%=約651万円

AとBを比べると分かるとおり、取得費の実額を証明できるかどうかで税額が2倍以上変わることがあります。購入時の売買契約書や重要事項説明書が実家に残っていないか、片付けの早い段階で確認しておく価値があります。見つからない場合は、当時の住宅ローンの金銭消費貸借契約書や、購入時期の分かる領収書などが補完資料になることもあるため、司法書士や税理士に相談してみてください。

取得費加算の特例は使える場合がある

空き家の3,000万円特別控除は使えませんが、相続税を納めている場合は「相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例」を使える可能性があります。相続開始から3年10か月以内に売却することなど一定の要件を満たせば、納めた相続税額のうち、その不動産に対応する部分を取得費に加算でき、譲渡所得税を抑えられます。相続税の申告が必要だった場合は、この特例の対象になるかどうかを税理士に確認してみてください。

確定申告が必要かどうかの判断

売却によって譲渡所得(利益)が出た場合は、翌年に確定申告が必要です。申告期間は原則として翌年2月16日から3月15日までで、譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)や、取得費・譲渡費用を示す領収書、登記事項証明書などを添付します。逆に、売却価格より取得費・譲渡費用のほうが高く譲渡損失(赤字)になった場合は、原則として確定申告の義務はありません。ただし取得費加算の特例など、他の特例を利用する場合は、譲渡所得がゼロやマイナスであっても申告が必要になることがあるため、利用する特例がある場合は事前に必要書類を確認しておいてください。なお、マンションの譲渡損失は、給与所得など他の所得と損益通算できないのが原則です(住宅ローンが残る自宅の買い替え等、特定の要件を満たす場合を除く)。相続した実家の売却で損失が出た場合、この損益通算の特例が使えるケースは限定的である点も知っておくとよいでしょう。

マンション売却の流れ・必要書類・費用

実際に売却を進める場合の大まかな流れは、次のとおりです。

  1. 相続人の確定と遺産分割協議——誰がマンションを相続するかを決めます。共有名義にすると将来の売却で全員の同意が必要になるため、単独名義にできないか検討する価値があります。
  2. 相続登記(名義変更)——法務局へ相続登記を申請します。売却前に完了させておく必要があります。
  3. 管理組合への確認——滞納の有無、大規模修繕の予定、管理規約の内容を確認します。
  4. 家財の片付け・遺品整理——査定・内見に備え、家財を仕分けて搬出します。
  5. 不動産会社への査定依頼——複数社に査定を依頼し、価格と対応を比較します。
  6. 媒介契約・売却活動——媒介契約を結び、内見対応や価格交渉を経て買主を決めます。
  7. 売買契約・引き渡し——契約書を取り交わし、決済・引き渡しを行います。管理費・修繕積立金・固定資産税の日割り精算もこの時点で行います。
  8. 確定申告——譲渡所得が出た場合は、翌年の確定申告で申告・納税します。

引き渡し時の精算では、管理費・修繕積立金・固定資産税・都市計画税を、引き渡し日を基準に日割りで按分するのが一般的な商習慣です。たとえば年間の管理費・修繕積立金が18万円(月1.5万円)で、6月30日に引き渡す場合、1月1日から6月30日までの181日分(約8万9千円)を売主が負担し、残りの184日分は買主が負担するといった形で精算されます。固定資産税・都市計画税も同様の考え方で日割り計算されるのが一般的ですが、起算日を1月1日にするか4月1日にするかは地域の慣習によって異なるため、契約書の条項を事前に確認しておくと安心です。

マンション売却でかかる主な費用は、仲介手数料(売却価格×3%+6万円+消費税が上限の目安)、印紙税、司法書士への登記関連費用、譲渡所得税・住民税です。売却によって利益が出なかった場合は譲渡所得税はかかりませんが、管理費や修繕積立金の未収分の精算、引っ越し・遺品整理の費用は別途必要になります。実家の売却査定の進め方は実家の売却査定の流れで詳しく紹介しています。

売却に必要な主な書類

不動産会社への査定依頼や契約の段階で求められる書類を整理しておくと、手続きがスムーズです。相続登記が完了していることが前提になる書類も多いため、まずは名義変更を済ませてから準備を進めてください。

書類 取得先・保管場所 用途
登記識別情報通知(または登記済権利証) 相続登記完了後に法務局から交付 売主が所有者本人であることの証明
固定資産税評価証明書・納税通知書 市区町村窓口・自宅の保管書類 登録免許税や固定資産税精算額の算出
マンションの管理規約・使用細則 管理会社・管理組合 買主への重要事項説明で使用
重要事項調査報告書 管理会社に発行を依頼(有料の場合が多い) 管理費・修繕積立金・大規模修繕計画の開示
本人確認書類・実印・印鑑証明書 相続人本人が用意 売買契約・決済時の本人確認
購入時の売買契約書・重要事項説明書(あれば) 被相続人の遺品の中から探す 取得費の実額証明、譲渡所得税の圧縮

旧耐震基準のマンションを売る場合の注意点

1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認を受けた「旧耐震基準」のマンションは、新耐震基準の物件に比べて買主が住宅ローンを組みにくい、住宅ローン控除の適用要件を満たしにくいといった制約が生じることがあります。耐震基準適合証明書を取得できれば、旧耐震基準の建物でも住宅ローン控除の対象になる場合があるため、築年数の古いマンションを売却する際は、耐震診断や証明書取得の要否を不動産会社に相談しておくと、買主が見つかりやすくなることがあります。証明書の取得には数万円程度の費用がかかりますが、売却のしやすさとのバランスで検討する価値があります。

マンションは解体しないが、老朽化した戸建てとの判断基準は異なる

戸建ての実家じまいでは「売却か解体か」がよく論点になりますが、マンションでは専有部分だけを解体するという選択肢がそもそも存在しません。老朽化が進んだマンションであっても、個人が区分所有部分を取り壊すことはできず、建物全体の建て替えやマンション敷地売却制度(マンション敷地売却事業)は、区分所有者全員による集会での特別多数決が必要な別の枠組みになります。実家のマンションが老朽化していて将来の建て替え計画があるかどうかも、売却時期を判断する材料の一つです。管理組合の総会議事録に建て替え検討の記載がないか、確認しておくとよいでしょう。戸建ての解体を検討する場合の判断材料は実家の解体費用と進め方で解説しています。

家財・遺品の処分——マンションならではの制約

マンションの遺品整理・生前整理には、戸建てにはない制約がいくつかあります。事前に把握しておくと、当日の作業がスムーズに進みます。まず費用の目安から見ていきます。

マンションの遺品整理費用の目安

費用は間取りと物量でおおむね決まりますが、マンションの場合はエレベーターの有無と搬出経路が金額を左右します。同じ間取りでも、エレベーターがあり建物前まで車が横付けできる物件と、階段のみの中層マンションとでは、作業人数と時間が変わるため、目安には幅があります。

間取り 相場 エレベーターの有無による違い
1R・1K 3〜8万円 階段のみの上層階は上限寄りになりやすい
1DK〜1LDK 5〜20万円 同上
2DK〜2LDK 9〜30万円 共用廊下の養生が必要な物件は加算されることがある
3DK〜3LDK 15〜50万円 大型家具の搬出経路確認が特に重要になる

マンションは戸建てに比べて4LDK以上の大きな間取りが少ないため、上表は3LDKまでの目安を中心に示しています。エレベーターの定格荷重によっては、冷蔵庫や食器棚など大型の家具・家電を階段で運ばざるを得ないケースもあり、その場合は人数を増やして対応することになります。見積もり依頼の際は、エレベーターのサイズ(間口・奥行き)と、建物入口から住戸までの動線も伝えておくと、当日の追加見積もりを防ぎやすくなります。

エレベーター・共用廊下の養生と搬出時間の制限

大型家具や家電を運び出す際、共用廊下や壁、エレベーターの内壁を傷つけないよう養生(保護シート等の設置)が必要です。管理規約で、搬出作業ができる曜日や時間帯が制限されているマンションもあります。エレベーターの利用に予約が必要な物件、養生の実施が管理規約で義務付けられている物件もあるため、作業を依頼する業者には事前にマンション名を伝え、管理規約の確認を依頼しておくと安心です。

管理組合・管理会社への事前連絡

大量の搬出作業を行う場合、管理組合や管理会社への事前連絡を求められることが一般的です。トラックの駐車スペース確保や、他の居住者への配慮(作業時間帯の周知)も必要になります。戸建てであれば近隣への挨拶で済むところ、マンションでは管理組合というワンクッションが入る点を踏まえて、余裕を持った日程で進めてください。

粗大ごみの搬出ルール

粗大ごみの収集ルール自体は自治体ごとに定められており、戸建てとマンションで制度上の違いはありません。ただし、マンション内にごみ置き場や一時保管スペースがある場合、粗大ごみをそこに置いてよいかどうかは管理規約によって異なります。無断で共用部分に粗大ごみを置くと、他の居住者とのトラブルにつながることがあるため、管理会社に確認してから作業を進めてください。

収納スペースの少なさが物量に与える影響

マンションは戸建てに比べて収納スペースが限られるため、押し入れやクローゼットに物が密に詰め込まれているケースが多く見られます。床面積の割に作業に時間がかかることもあるため、見積もり時には各収納の写真を業者に共有しておくと、当日の見積もりとのずれを防ぎやすくなります。仏壇や大型家具がある場合、エレベーターに入るサイズかどうかも事前に確認しておくべき点です。

退去・売却前の原状回復ルール

賃貸ではなく所有物件であっても、売却前にリフォームや設備の撤去を行う場合は、マンションの管理規約に定められたルールに従う必要があります。多くのマンションでは、フローリングの張り替えや間仕切りの変更といった専有部分の工事について、事前に管理組合への届出や承認を求めています。エアコンの室外機や給湯器の交換も、設置できる場所や機種に制限がある場合があります。売却前に大掛かりなリフォームを検討している場合は、着手前に管理会社へ確認しておくと、工事のやり直しを避けられます。実際には、売却前提であれば大規模なリフォームをせず、クリーニングと軽微な補修にとどめて、値引き交渉の材料として買主に判断を委ねるケースも多く見られます。

空き家のまま放置するリスク

マンションは戸建てのように雨漏りや倒壊のリスクは低いものの、空室のまま放置すると別の問題が生じます。

  • 水漏れ事故——給排水管の劣化や、締め切ったままの水回りの不具合に気づかず、階下の部屋まで水漏れが及ぶことがあります。発見が遅れるほど損害賠償の対象が広がるおそれがあります。
  • 管理費・修繕積立金の未収が続く——居住の有無にかかわらず請求され続けるため、放置期間が長引くほど負担が積み上がります。
  • 火災保険の契約条件——空室であることを保険会社に申告していないと、事故発生時に補償が受けられない場合があります。契約内容を確認し、必要に応じて空室用の契約に切り替えることを検討してください。
  • 資産価値の目減り——長期間換気をしないことで室内にカビや臭いが発生し、内見時の印象や査定額に影響することがあります。

戸建てと異なり、庭木の繁茂や外壁の劣化が近隣トラブルに直結する場面は少ないものの、水漏れという固有のリスクがある点は意識しておく必要があります。定期的な換気・通水と、管理会社への連絡先の登録だけは、方針が決まるまでの間も続けておくことをおすすめします。空き家全般の管理リスクについては空き家管理の方法とリスクもあわせてご覧ください。

空室期間が延びるほど積み上がる固定費の目安

方針を決めかねているうちに、管理費・修繕積立金・固定資産税は待ってくれません。仮に管理費・修繕積立金の合計が月1.5万円、固定資産税・都市計画税が年間8万円程度のマンションを空室のまま維持した場合、累計負担額は次のように積み上がります。

空室期間 管理費・修繕積立金の累計 固定資産税等の累計(概算) 合計の目安
6か月 9万円 4万円 約13万円
1年 18万円 8万円 約26万円
2年 36万円 16万円 約52万円
3年 54万円 24万円 約78万円

(管理費・修繕積立金月1.5万円、固定資産税等年8万円と仮定した場合の試算例。実際の金額は物件によって異なります)誰も住まない実家に、年間20〜30万円前後の固定費が発生し続けるとイメージすると、方針を先延ばしにすることの機会損失が具体的に見えてきます。売却するにしても賃貸に出すにしても、決断が早いほど、この累計負担を抑えられます。

空室中の保険と防犯対策

実家が空室になったことを、火災保険会社に伝えていますか。居住用として契約している火災保険は、空室になった時点で契約内容と実態が合わなくなり、水漏れや火災などの事故が起きたときに告知義務違反を理由に補償を受けられない可能性があります。空室になったタイミングで保険会社に連絡し、必要に応じて空き家向けの契約に切り替えるか、少なくとも空室である旨を告知しておくことをおすすめします。防犯面では、郵便受けに郵便物が溜まっていると空き家であることが外から分かりやすくなるため、郵便物の転送手続きや、管理会社が提供している定期巡回・報告サービスがあれば活用を検討してください。照明のタイマー設置や、窓・玄関の施錠状態の定期確認も、基本的ですが効果のある対策です。

事務局の相談窓口でよく見られるパターン

マンションの実家じまいに関する相談では、次のようなパターンが繰り返し見られます。自分の状況が当てはまらないか確認してみてください。

  • 片付けを先に終えて売却しようとしたところ、管理費が数か月分滞納されていたことが分かり、精算のために引き渡し時期が後ろ倒しになる
  • 戸建て向けの情報をもとに空き家の3,000万円特別控除を使えるつもりで資金計画を立てていたが、区分所有建物のため対象外だと分かり、確定申告直前に納税額の見直しが必要になる
  • 相続人の一人が賃貸に出したい、もう一人は早く現金化したいという意見の相違があり、方針が決まらないまま管理費だけが積み上がっていく
  • 住宅ローンの団信手続きを後回しにしていたため、完済後も抵当権抹消登記が残ったままになっており、売却の直前になって司法書士へ駆け込みで依頼する

これらに共通するのは、管理組合への確認・税制の違い・相続人間の合意形成・ローン関連の手続きを、それぞれ別のタイミングで動かしてしまい、後から手戻りが生じている点です。相続が発生した早い段階で、管理費の状況・税制の見込み・相続人間の方針をまとめて整理しておくと、こうした手戻りを避けやすくなります。

不動産会社・専門業者を選ぶときの注意点

マンションの売却を依頼する不動産会社を選ぶ際は、次の点を確認してください。

確認項目 ポイント
マンション売却の実績 戸建てより取扱件数が多い会社かどうかを尋ねる
査定根拠の説明 同じマンション内・近隣の成約事例を提示できるか
媒介契約の種類 専任媒介・一般媒介の違いと、それぞれのメリットを説明できるか
管理組合とのやり取り経験 重要事項調査報告書の取得や大規模修繕情報の確認に慣れているか
両手仲介の説明 売主・買主双方の仲介をする場合、その旨を事前に説明しているか

複数社に査定を依頼し、金額だけでなく査定の根拠や対応の丁寧さを比較することをおすすめします。「早く売れる」ことだけを強調し、査定根拠を説明しない会社には注意が必要です。遺品整理・生前整理を依頼する業者については、一般廃棄物収集運搬の許可、古物商許可、損害保険への加入状況を確認する点は戸建ての場合と共通です。業者選びの詳しい基準は遺品整理サービスのページでもご案内しています。

机上査定と訪問査定、どちらを使うべきか

不動産会社の査定には、周辺の成約事例や公示地価をもとに概算を出す「机上査定(簡易査定)」と、実際に担当者が現地を確認して算出する「訪問査定」の2種類があります。遠方に住んでいてすぐに現地へ行けない場合、まず複数社に机上査定を依頼して大まかな相場感をつかみ、候補を絞り込んだうえで訪問査定に進むという二段階の進め方が効率的です。マンションは戸建てに比べて同じ棟内・近隣の成約事例が集めやすいため、机上査定の精度が比較的高く出やすい傾向があります。ただし、リフォーム歴や眺望、日当たりといった個別要因は訪問しないと正確に反映されないため、最終的な売り出し価格を決める段階では訪問査定を受けることをおすすめします。

不動産会社選びで知っておきたい「囲い込み」の問題

正直にお伝えすると、不動産会社の中には「囲い込み」と呼ばれる営業手法を行う会社が存在します。専任媒介・専属専任媒介契約を結ぶと、不動産会社はレインズ(不動産流通標準情報システム)への登録が義務付けられますが、他社から「その物件を紹介したい」という問い合わせがあっても、自社で買主も見つけて売主・買主の双方から仲介手数料を得る「両手仲介」を狙い、あえて他社の紹介を断ってしまうケースがあります。結果として、本来もっと早く・高く売れたはずの物件が、売れ残ってしまうことがあります。

対策としては、レインズへの登録証明書(登録済証)を発行してもらい、実際に登録されているか確認すること、販売状況の報告を定期的に受け、問い合わせ件数や内見件数を具体的に聞くことが挙げられます。一般媒介契約であれば複数社に同時に依頼できるため、囲い込みのリスク自体を避けられますが、各社の販売活動への熱心さにばらつきが出やすい面もあります。専任媒介と一般媒介のどちらが良いかは一概には言えず、担当者との信頼関係や、売却を急ぐかどうかによって選び方が変わります。契約前に、囲い込みをしない方針かどうかを直接尋ねてみることも一つの方法です。

依頼から作業完了までの流れ

安心実家じまいでは、マンションの実家じまいについても、片付けから売却・解体(戸建ての場合)の手配までを一つの窓口でお受けしています。マンション特有の管理組合対応や、譲渡所得税の見通しについても、提携する司法書士・税理士と連携しながらご案内します。

  1. 問い合わせ・写真の送付——電話またはLINEで問い合わせ、各部屋と収納の写真を送ります。
  2. 概算見積もりの提示——写真や間取りをもとに、家財の片付け費用の概算を提示します。
  3. 管理組合情報の確認(必要な場合)——搬出条件や管理規約について、必要に応じて事前確認をサポートします。
  4. 正式見積もりとご契約——内訳を明示した見積書を提示し、内容にご納得いただいたうえで契約します。
  5. 仕分け・搬出・供養・買取——貴重品と形見を仕分けたうえで搬出し、必要に応じて供養や買取の手配を行います。
  6. 売却・賃貸の相談——ご希望があれば、提携不動産会社への査定依頼や、相続登記の手配もあわせてご案内します。

遺品整理のみのご依頼は遺品整理サービスで、家の売却手配まで含める場合は実家じまい代行パックが窓口を一本化できる分、割安です。料金の全体は料金表をご覧ください。相続登記など法律手続きが絡む場合は、提携司法書士と連携して進めます。

よくある質問

マンションの実家は戸建てより処分しやすいですか?
解体が不要で、庭木の手入れや境界確定といった戸建て特有の手間がない分、売却までの手続きは比較的シンプルです。ただし管理費・修繕積立金は所有している限り発生し続け、管理組合への連絡や滞納の有無の確認など、マンションならではの確認事項があります。立地や築年数によっては買い手が付きやすい一方、旧耐震基準の物件や高額な修繕積立金がネックになる場合もあり、一概にどちらが簡単とは言えません。
空き家の3,000万円特別控除はマンションの実家にも使えますか?
使えません。被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの3,000万円特別控除は、対象となる家屋の要件に「区分所有建物登記がされている建物でないこと」が明記されており、分譲マンションはこの特例の対象外です(国税庁タックスアンサーNo.3306より)。マンションを売却する場合は、この特例を前提にせず、取得費加算の特例など他の制度が使えるかどうかを確認する必要があります。
親が管理費を滞納したまま亡くなった場合、相続人が払う必要がありますか?
支払う必要があります。区分所有法は、滞納管理費などの債務は区分所有権を承継した人(特定承継人)に対しても請求できると定めており、相続によって区分所有権を取得した相続人は、被相続人の滞納分も含めて支払う義務を負います。相続が発生したら早めに管理組合や管理会社に連絡し、滞納の有無と金額を確認しておくことをおすすめします。
マンションの実家の名義変更をしないまま売却できますか?
できません。不動産会社は登記簿上の所有者と媒介契約を結ぶ必要があるため、名義が故人のままでは売却活動を始められません。相続登記は2024年4月から義務化されており、不動産の取得を知った日から3年以内の申請が必要です。家財の片付けと相続登記の準備は並行して進めるのが現実的です。
住宅ローンが残っているマンションを相続した場合はどうなりますか?
親が団体信用生命保険(団信)に加入していれば、死亡によってローン残債が保険金で完済される仕組みが一般的です。ただし自動的に完済されるわけではなく、遺族が金融機関に死亡の事実を届け出て保険金請求の手続きを行う必要があります。完済後は抵当権抹消登記も別途必要です。団信に未加入だった場合は、相続人がローンの残債を引き継ぐことになるため、売却で完済できる見込みがあるか早めに確認してください。
売却と賃貸、どちらを選ぶべきか迷っています。判断のポイントはありますか?
管理費・修繕積立金の負担を早く切り離したい場合や、相続人が複数いて現金で分けたい場合は売却が現実的です。立地が良く賃貸需要が見込め、当面は手放す予定がない場合は賃貸も選択肢になりますが、確定申告や設備の修繕対応、遠方なら管理委託費用が継続的にかかる点を踏まえて判断する必要があります。将来的に売却する可能性が少しでもある場合、賃貸中は買主が見つかりにくくなる点も考慮してください。
相続人の一人だけがマンションに住み続けることはできますか?
可能ですが、他の相続人との間で公平性をどう保つかを事前に取り決めておく必要があります。代表的な方法は代償分割で、住み続ける相続人がマンションを単独で取得し、その代わりに他の相続人へ評価額に応じた代償金を支払います。代償金の準備が難しい場合は、遺産分割協議で当面は共有名義のまま住み続けることを認め、将来売却した際に代金を分配する取り決めをすることもあります。いずれの場合も、後々のトラブルを避けるため、口頭ではなく遺産分割協議書に取り決めの内容を明記しておくことをおすすめします。

まとめ

マンションの実家じまいは、戸建てとは異なる論点がいくつもあります。要点を振り返ります。

  • マンションは解体不要で庭の管理も不要な一方、管理費・修繕積立金は所有している限り発生し続ける
  • 親の滞納管理費は相続人が承継する。相続発生後は早めに管理組合・管理会社へ確認する
  • 空き家の3,000万円特別控除は区分所有建物(マンション)には使えない。譲渡所得税は特例なしを前提に試算する
  • 取得費が実額で証明できるかどうかで税額が大きく変わる。購入時の契約書を探しておく
  • 相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例は、相続税を納めていれば使える可能性がある
  • 相続登記が済んでいないと売却も賃貸もできない。片付けと並行して名義変更の準備を進める
  • 住宅ローンが残っている場合、団信の保険金請求と抵当権抹消登記を早めに確認する
  • マンションは現物分割ができない。相続人が複数いる場合は代償分割・換価分割・共有のいずれかを選ぶ必要がある
  • 令和6年1月1日以後の相続からは、区分所有マンションの相続税評価額が補正される場合がある。高層階や立地の良い物件は事前に税理士へ試算を依頼する
  • 搬出時はエレベーター・共用廊下の養生と管理組合への事前連絡が必要になる
  • 老朽化しても専有部分だけの解体はできない。建て替え計画の有無も売却時期の判断材料になる

マンションの実家は、戸建てに比べて片付けそのものの負担は軽い場合が多い一方、管理費という固定費と、使えない税制優遇の見極めが判断を分けます。まずは管理組合への確認と、相続登記の見通しを立てることから始めてください。家財の片付けと並行して進めれば、方針が決まった時点で売却や賃貸への移行もスムーズになります。相続人が複数いる場合は、代償分割・換価分割・共有のどれを選ぶかによって進め方が変わるため、早い段階で家族間の意見をすり合わせておくことも欠かせません。実家じまい全体の進め方は実家じまい代行サービスをご覧ください。

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この記事を書いた人

安心実家じまい事務局です。実家の片付けや遺品整理、空き家になった家の処分について、はじめての方にも分かるように記事を書いています。提携している現場の業者や司法書士と一緒に、費用の相場・自治体のごみ出しルール・補助金といった、調べてもなかなか分かりにくいところを一つずつ確かめながらまとめています。「誰に頼めばいいか分からない」という段階のご相談も、LINEやお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。

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