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再建築不可物件とは|売却相場・活用法・買い手の探し方

最終更新日:2026年8月6日|監修:司法書士・行政書士 久留慎一郎先生・安心実家じまい事務局

司法書士・行政書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 不動産の名義変更
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理

この記事の結論

  • 再建築不可物件とは、建築基準法の接道義務(幅員4m以上の道路に2m以上接すること)を満たさず、今の建物を解体すると新しい建物の確認申請が下りない土地です。
  • 売却相場に公式な指標はありませんが、実務上は近隣の再建築可能物件の5〜7割程度が目安とされることが多く、仲介では買い手が見つかりにくいのが実情です。
  • セットバック・隣地の買取や賃借・43条2項許可などの方法で再建築可能な状態に変えられる場合があります。可否は敷地ごとに個別判断のため、自治体の建築指導課への確認が最初の一歩です。
  • 相続した実家であれば、空き家に係る譲渡所得の特別控除(最大3,000万円)が使える場合があり、要件を満たせば税額が大きく下がります。
目次

再建築不可物件とは何か

再建築不可物件とは、現在建物が建っていても、それを取り壊して更地にした場合に、法律上新しい建物を建てることができない土地のことです。建物がすでに存在していること自体は問題にならず、「今の建物が老朽化して建て替えたい」「解体して売却しやすい状態にしたい」と考えたときに、確認申請が下りないという形で問題が表面化します。

再建築不可になる最大の原因は、建築基準法が定める「接道義務」を満たしていないことです。接道義務とは、建築基準法43条1項に定められたルールで、建物を建てる敷地は、同法42条が定める道路に2m以上接していなければならないというものです。ここでいう「道路」は、単に人や車が通れる通路という意味ではなく、原則として幅員4m以上であることなど、法律上の要件を満たしたものに限られます。私道や細い路地に面していても、それが建築基準法上の道路として認定されていなければ、接道義務を満たしたことにはなりません。

この規定ができたのは1950年(昭和25年)の建築基準法制定時です。それより前に建てられた住宅街や、区画整理がされないまま宅地化が進んだ古い市街地では、幅4m未満の路地や、そもそも道路に接していない「旗竿地」「囲繞地(いにょうち)」の奥にある家が数多く残っています。こうした土地は現在の基準に照らすと接道義務を満たしておらず、再建築不可物件として扱われます。都市計画区域・準都市計画区域の外では建築確認自体が不要な場合もあり、再建築不可という概念は主に都市計画区域内・準都市計画区域内で問題になります。

接道義務を満たさない典型パターン

  • 道路に全く接していない(無接道)——敷地の四方を他人の土地に囲まれ、道路と接する部分がない土地です。通行のための通路(囲繞地通行権)はあっても、建築基準法上の接道要件は別問題です。
  • 道路との接道幅が2m未満——旗竿地で、道路から敷地までの通路(竿の部分)の幅が2mに満たないケースです。1.8mや1.5mなど、わずかに足りない土地は珍しくありません。
  • 接している道が建築基準法上の道路ではない——見た目は道路でも、法律上の道路指定を受けていない私道や、農道・水路敷などに接しているだけの土地です。
  • 接している道の幅員が4m未満——42条2項道路(みなし道路)に該当すればセットバックで対応できますが、該当しない単なる細い私道の場合は、そのままでは再建築できません。

実家が再建築不可かどうかは、登記簿や固定資産税の課税明細だけでは分かりません。自治体の建築指導課(建築確認を担当する部署)で「道路種別証明」や「建築計画概要書」の閲覧・交付を申請し、敷地に接する道が建築基準法上の何号道路にあたるかを確認するのが確実な方法です。次の章で、自分で確認する手順をチェックリストにまとめます。

自分で再建築不可かどうかを確認する手順

不動産会社に相談する前に、次の手順で自分でも大まかな見当をつけることができます。相続した実家の状況把握や、業者への説明の準備として役立ちます。

手順 内容 確認先
①登記簿・公図の取得 敷地の地番・形状・隣接地との関係を確認する 法務局(オンライン申請可)
②固定資産税の課税明細確認 地目・地積・家屋の建築年を確認する 自宅に届く納税通知書、または市区町村の資産税課
③前面道路の幅員を実測・目視確認 道の広さ、行き止まりか通り抜けかを確認する 現地
④道路種別の照会 前面道路が建築基準法上の道路か、何号道路かを確認する 自治体の建築指導課(建築確認担当)
⑤建築計画概要書の閲覧 過去に建築確認を取った記録があるか確認する 自治体の建築指導課
⑥42条2項道路の該当有無を確認 セットバックで対応できる可能性の有無を確認する 自治体の建築指導課
⑦専門家への相談 再建築可能にする方法の費用感・実現可能性を相談する 建築士、または訳あり物件専門の不動産会社

④〜⑥は電話でも概要を教えてもらえる自治体が多いですが、正式な判断には窓口での書面確認が必要です。地番と住所(住居表示)は一致しないことがあるため、問い合わせの際は登記簿の地番を用意しておくとやり取りがスムーズです。

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建築基準法42条の道路の種類と43条2項の許可・認定

再建築の可否を左右する「道路」は、建築基準法42条で次のように区分されています。前面道路がどの号にあたるかによって、その後取れる対応が変わります。

区分 内容 再建築不可への影響
42条1項1号 道路法上の道路(国道・都道府県道・市区町村道)で幅員4m以上 接していれば問題なし
42条1項2号 都市計画法等の開発行為でできた幅員4m以上の道路 接していれば問題なし
42条1項3号 建築基準法施行時(1950年)に既に存在した幅員4m以上の道 接していれば問題なし
42条1項5号 位置指定道路(特定行政庁が指定した私道) 接していれば問題なし
42条2項 施行時に既に建物が立ち並んでいた幅員4m未満の道(みなし道路) セットバックで対応できる可能性あり
上記いずれにも該当しない道・通路 建築基準法上の道路ではない 原則として再建築不可。43条2項の許可・認定などが必要

前面の通路が42条に定めるどの道路にも該当しない場合や、該当していても幅員・接道長さが足りない場合に、43条2項の許可・認定という例外規定が検討対象になります。43条2項は2018年(平成30年)の建築基準法改正で整理され、現在は次の2種類に分かれています。

区分 内容 手続き
43条2項1号(認定) 敷地が幅員4m以上の道(省令で定める基準に適合する道)に2m以上接し、利用者が少数である用途・規模としてあらかじめ定められた基準に該当する場合 特定行政庁による認定(建築審査会の同意は不要)
43条2項2号(許可) 敷地の周囲に広い空地を有するなど省令で定める基準に適合する建築物で、個別に交通上・安全上・防火上・衛生上支障がないと認められる場合 特定行政庁の許可(建築審査会の同意が必要)

2号の許可は建築審査会の同意を要するため、申請から結果が出るまでに数か月単位の時間がかかることが一般的です。売却や解体の計画を立てる際は、この審査期間も見込んでスケジュールを組む必要があります。制度の名称や運用の詳細は自治体によって異なるため、実際に検討する場合は物件所在地の特定行政庁(都道府県または政令市・中核市などの建築主事を置く自治体)へ事前に確認してください。

旗竿地・囲繞地との違いに注意する

「旗竿地」は、道路に接する部分が細い通路(竿)でつながっている土地の形状を指す言葉で、それ自体が再建築不可を意味するわけではありません。竿の部分の幅が2m以上あり、その道が建築基準法上の道路であれば、旗竿地でも再建築は可能です。一方「囲繞地」は、周囲を他人の土地に囲まれて道路に全く接していない土地を指し、こちらは接道義務を満たす方法が限られるため、再建築不可になりやすい形状です。民法上の囲繞地通行権(他人の土地を通行できる権利)はあくまで通行の権利であり、建築基準法上の接道要件を満たすものではない点を混同しないよう注意してください。

再建築不可物件のリスクと注意点

再建築不可であること自体は違法状態ではありません。今建っている建物に住み続ける分には、通常の家と同じように利用できます。ただし、次のような制約があることは把握しておく必要があります。

建て替え・大規模な増改築ができない

建物を全部解体して新築することはもちろん、既存不適格建築物の主要構造部の過半にわたる大規模な修繕・模様替えも、原則として建築確認が必要になるため、接道義務を満たさない敷地では実質的に行えません。10㎡を超える増築も原則確認申請の対象で、防火地域・準防火地域では10㎡以下でも申請が必要です。台風や火災で建物が大きく損壊した場合、同じ規模での再建築ができない可能性がある点は、住み続ける家族にとって現実的なリスクです。

ここでいう「既存不適格建築物」とは、建てた時点では合法だったものの、その後の法改正(今回でいえば接道義務の新設・強化)によって、現行の基準には適合しなくなった建物のことです。違法建築ではありません。今のまま使い続けることは認められていますが、建築確認を要する規模の工事をしようとすると、現行基準への適合が求められ、そこで再建築不可という制約に突き当たります。

リフォームでできること・できないことの目安

再建築不可物件でも、建築確認を必要としない範囲の工事であれば行えます。どこまでが「できる」範囲かは建物の構造や既存の状態にもよりますが、一般的な目安は次のとおりです。

工事の種類 可否の目安
クロス・床材の張り替え、内装リフォーム 可能
キッチン・浴室・トイレなど設備の交換 可能(配管の位置変更が大がかりな場合は要相談)
屋根の部分補修・外壁の塗り替え 可能
屋根の全面葺き替え、外壁の全面張り替え(模様替えの規模による) 建物の構造・規模により確認申請が必要になる場合がある
10㎡を超える増築 原則不可(防火・準防火地域は10㎡以下でも申請要)
主要構造部(柱・梁・壁など)の過半に及ぶ耐震改修 大規模な模様替えとみなされる場合は原則不可
建て替え(全部解体しての新築) 不可

「内装のリフォームまでは大丈夫だが、骨組みに手を入れる工事や増築は難しい」という理解が実務上の目安です。工事の規模や建物の状態によって判断が分かれるため、着手前に建築士や自治体の建築指導課に確認しておくと、後から工事を止められるといった事態を避けられます。

住宅ローン・火災保険での扱い

金融機関は住宅ローンの担保評価において、再建築不可物件を「担保価値が低い」または「担保として取れない」と判断することが多く、フラット35を含む多くの住宅ローンの利用が難しいのが実情です。一方で、リフォーム目的の融資やノンバンクの不動産担保ローンなど、住宅ローン以外の資金調達手段が使える場合があります。取扱いは金融機関ごとに差があるため、購入や借り換えを検討する場合は複数の金融機関に事前相談することをおすすめします。火災保険については、建て替えができないこと自体は加入の可否に直結せず、通常どおり契約できるのが一般的です(保険会社の引受基準によります)。

資産価値と売却の難しさ

買い手にとっても住宅ローンが組みにくい物件は購入のハードルが上がるため、一般の仲介市場では買い手が見つかりにくく、売却まで時間がかかりやすい傾向があります。放置期間が延びるほど建物の老朽化が進み、特定空家等に指定されるリスクや、近隣とのトラブルに発展するリスクも高まります。「いずれ何とかしよう」と先送りにせず、早い段階で選択肢を整理しておくことが実家じまい全体の負担を軽くします。空き家のまま放置した場合のリスクと管理方法は空き家管理の注意点で詳しく解説しています。

再建築可能にする方法と費用の目安

接道義務を満たしていない土地でも、条件によっては再建築可能な状態に変えられる場合があります。代表的な方法と、実現の難易度・費用感の目安をまとめました。実際の費用は土地の形状や自治体、依頼する専門家によって幅があるため、あくまで検討の出発点としてご覧ください。

方法 使える条件 費用目安 難易度
セットバック 前面道路が42条2項道路(みなし道路)に該当する場合 測量・分筆・後退部分の整備で15万〜40万円程度 比較的容易
隣地の一部を買い取る 隣地所有者が譲渡に応じる場合 土地代(相場次第)+測量・分筆・登記費用で数十万〜数百万円 相手の意向次第
隣地の一部を借りる(通行地役権等) 隣地所有者が賃貸・使用貸借に応じる場合 契約書作成・測量で10万円前後+賃料 相手の意向次第
43条2項の許可・認定 特定行政庁が交通上・安全上・防火上支障がないと認める場合 建築士への相談・申請図書作成で20万〜50万円程度 個別審査で不確実
位置指定道路の申請 周辺の複数地権者と共同で私道を道路として指定する場合 測量・造成・関係者調整を含め高額になりやすい 難易度が高い

(費用は一般的な目安であり、土地の形状・地域・依頼先により変動します。実際の見積もりは土地家屋調査士・建築士・自治体窓口にご確認ください)

セットバックの考え方

前面道路の幅員が4m未満でも、建築基準法施行時(1950年)にすでに建物が立ち並んでいた道であれば、特定行政庁の指定によって「42条2項道路」(みなし道路)として扱われることがあります。この場合、道路の中心線から2m後退した線を敷地境界とみなし、後退した部分(セットバック部分)を道路として提供することで、接道義務を満たせる可能性があります。後退した部分には塀や建物を建てられなくなりますが、敷地全体を潰さずに再建築可能な状態を作れる、比較的現実的な方法です。

隣地との調整という選択肢

隣地の所有者から敷地の一部を買い取る、あるいは借りることで接道2mを確保できれば、再建築可能になります。ただし隣地所有者の協力が前提となるため、実現できるかどうかは相手次第という面があります。相続で疎遠になっていた隣家との交渉が必要になることもあり、専門家を介した打診のほうがまとまりやすいケースも少なくありません。

43条2項の許可・認定という選択肢

建築基準法43条2項には、接道義務を厳密には満たしていなくても、幅員4m以上の道に接し利用者が少数であるなどあらかじめ定められた基準に該当する場合(1号・認定)、または敷地の周囲に広い空地を有するなど個別に交通上・安全上・防火上・衛生上支障がないと認められる場合(2号・許可、建築審査会の同意が必要)に、特定行政庁が建築を可能にする規定があります。適用の可否は個別の敷地の状況に大きく左右されるため、まずは自治体の建築指導課や、この分野の実績がある建築士に相談することになります。

売却相場とケース別の試算

再建築不可物件には公式な取引指標がなく、成約事例も一般の物件より少ないため、明確な相場を示すことは困難です。ただし実務の現場では、同じ地域・同程度の面積で再建築可能な物件の価格と比べて、5〜7割程度の水準になることが多いとされています。差が生じる主な理由は、住宅ローンが使いにくく買い手の層が限られること、建て替えができないため用途が制限されること、測量・境界確定などの前提条件を整理する手間が売り手側に生じやすいことです。

下落幅は物件ごとの条件で変わります。次の要素は、相場のなかでも高め・低めのどちらに寄りやすいかの目安です。

条件 価格への影響
セットバックや隣地取得で再建築可能にできる見込みがある 上振れしやすい
接道幅が2mにわずかに足りない程度 上振れしやすい
隣地との境界が未確定 下振れしやすい(測量・確定を条件にされる)
建物の老朽化が進んでいる、または特殊清掃が必要 下振れしやすい
接道が全くない(囲繞地のみ) 大きく下振れしやすい
隣地所有者が買取に前向き 隣地への売却で相場を超えることもある

ケース別の価格イメージ

あくまで一般的な考え方の目安として、同一エリアで再建築可能な同面積の物件が2,000万円で取引されている場合を例に、条件による価格イメージの幅を示します。実際の金額は個別の査定によって決まるものであり、この数値を保証するものではありません。

条件 再建築可能物件比 価格イメージ
再建築可能にできる見込みが高い(セットバック等) 7割程度 約1,400万円
標準的な再建築不可(隣地交渉の余地あり) 5〜6割程度 約1,000万〜1,200万円
接道がほぼない・老朽化が進んでいる 3〜4割程度 約600万〜800万円

売却を急ぐ場合や、境界確定・測量にかかる時間や費用を売り手が負いたくない場合は、訳あり物件の買取を専門とする不動産会社に相談する方法もあります。買取は仲介より価格が下がりやすい一方、契約から現金化までの期間が短く、境界確定や測量を買主側で引き受けてくれる会社もあります。仲介と買取のどちらが合うかは、査定額と希望スケジュールを照らし合わせて判断してください。実家の査定の受け方は実家売却の査定の受け方で解説しています。

譲渡所得税の計算例と空き家3,000万円特別控除

実家を売却して利益(譲渡益)が出た場合、所有期間5年超の土地・建物には、原則として所得税15%・復興特別所得税(所得税額の2.1%相当)・住民税5%、合計でおよそ20.315%の税率がかかります(国税庁タックスアンサーNo.3208より)。課税対象になるのは売却代金そのものではなく、「譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額」で計算した譲渡所得金額です。

計算例①:特例を使わない場合

相続した再建築不可の実家(土地・建物)を800万円で売却し、取得費が不明で概算取得費(譲渡価額の5%)を用い、譲渡費用(仲介手数料・測量費など)が50万円かかったケースです。

項目 金額
譲渡価額 800万円
概算取得費(5%) 40万円
譲渡費用 50万円
課税長期譲渡所得金額 710万円
所得税(15%) 約106.5万円
復興特別所得税(所得税額の2.1%) 約2.2万円
住民税(5%) 約35.5万円
税額合計の目安 約144万円

計算例②:空き家に係る譲渡所得の特別控除を使う場合

被相続人が一人で暮らしていた家屋で、昭和56年5月31日以前に建築、区分所有建物でない、相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却、譲渡代金1億円以下など一定の要件を満たすと、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」が使えます(国税庁タックスアンサーNo.3306より、令和9年12月31日までの譲渡が対象)。売却時に一定の耐震基準を満たすか、家屋を取り壊して敷地のみを売る必要があります。

再建築不可物件は、接道義務が定められた1950年より前や、接道条件の厳しい地域で古くから建っている家屋が多く、結果として建築年が昭和56年5月31日以前という要件に当てはまりやすい傾向があります。ただしこれは制度の対象要件ではなく、あくまで実態として重なりやすいという傾向にすぎません。適用の可否は個別に判定が必要です。

項目 金額
譲渡価額 800万円
概算取得費(5%) 40万円
譲渡費用 50万円
特別控除額 710万円(上限3,000万円の範囲内で譲渡益と同額を控除)
課税長期譲渡所得金額 0円
税額合計 0円

この例のように、譲渡益が3,000万円の範囲内に収まる場合は、特例の適用によって税額が0円になることもあります。ただし、令和6年1月1日以後の譲渡で、対象の家屋・敷地を相続した相続人の数が3人以上の場合は、控除の上限が2,000万円に引き下げられる点に注意してください。適用要件は複数あり、市区町村長が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」など添付書類も必要になるため、実際に適用を検討する場合は税務署または税理士に確認したうえで確定申告を行ってください。

再建築不可物件をどうするか:売却・活用・解体の判断基準

再建築不可物件を相続した場合、大きく分けて「売却する」「今の建物のまま活用する」「解体して更地として扱う」の三つの方向性があります。どれが向いているかは、物件の状態と家族の状況によって変わります。

売却する

住宅ローンが使えないという制約はあるものの、現金で購入できる個人投資家や、再建築可能にする専門知識を持つ買取業者にとっては、割安な仕入れ物件として一定の需要があります。売り急ぐ事情がある場合や、隣地の測量・境界確定に手間をかけたくない場合は、訳あり物件専門の買取業者への相談が現実的な選択肢です。

今の建物のまま活用する

建て替えができないだけで、今ある建物に住み続けたり、賃貸に出したりすること自体は可能です。大規模なリフォームはできなくても、内装の張り替えや設備交換程度であれば行えるため、賃貸需要がある立地なら、最低限のリフォームをして貸し出すという選択肢もあります。ただし、大きな修繕が必要になった際に対応できない可能性がある点は、借り手にも事前に説明しておく誠実さが必要です。

解体して更地にする

解体して更地にした場合、その土地に新しい建物を建てることはできませんが、駐車場や資材置き場としての活用、隣地所有者への売却(隣地にとっては敷地拡張のメリットがあるため、相場を超える価格で売れることもあります)などの選択肢が残ります。また、一定の要件を満たせば、土地を国に引き渡す「相続土地国庫帰属制度」の対象にもなり得ます。ただしこの制度は、建物が建ったままの土地は対象外のため、利用する場合は解体して更地にすることが前提になります。審査手数料は14,000円、承認後は10年分の土地管理費に相当する負担金の納付が必要です。管理に困っている山林や農地に近い再建築不可物件では、検討する価値のある選択肢です。

解体費用は建物の構造・規模・立地(前面道路が狭いと重機が入れず手作業が増え、費用が上がる傾向があります)によって大きく変わります。再建築不可物件は接道条件が悪く、重機やトラックが敷地まで入れないケースが多いため、解体費用が同規模の一般的な家屋より割高になりやすい点は見積もり時に確認しておく必要があります。解体を含めた実家じまいの費用の考え方は実家の解体費用と進め方をご覧ください。

駐車場として活用する場合の考え方

解体して更地にした土地を月極駐車場やコインパーキングとして活用する場合、建物を建てないため接道義務や建築確認の対象外となり、再建築不可という制約を回避できます。ただし、車の出入りができる幅の通路が確保できるかどうかは、駐車場経営でも重要な条件です。竿の部分の幅が1台分の車幅(軽自動車でも全幅1.5m前後)を大きく下回る土地では、駐車場としての活用も難しくなります。収支は初期費用(整地・砂利敷き・区画線・車止めなどで小規模なら数十万円程度)と、月極であれば月々の賃料収入、コインパーキングであれば管理会社への委託を比較して検討します。立地によっては、賃料収入だけで初期費用を数年で回収できる場合もありますが、周辺の駐車場相場や需要の見込みは、地元の管理会社に相談して確認することをおすすめします。

買い手の探し方と業者選びの注意点

再建築不可物件は、一般の仲介サイトに掲載しても内見の問い合わせが少なく、掲載期間が長期化しやすい傾向があります。買い手を見つけやすくするための考え方と、業者選びで確認しておきたい点を整理します。

買い手を見つけやすくする方法

  • 隣地所有者への打診を最初に検討する——隣地にとっては敷地が広がるメリットがあるため、市場価格を上回る条件で買い取ってもらえることがあります。相続で疎遠になっている場合は、専門家を介した打診のほうが話が進みやすいこともあります。
  • 再建築可能にできる余地を先に調べておく——セットバックや43条2項許可の見込みが立てば、買い手にとっての魅力が増し、価格交渉でも有利に働きます。調査費用はかかりますが、売却価格への上乗せで回収できる場合があります。
  • 訳あり物件の買取・再生を専門にする不動産会社に相談する——再建築不可の扱いに慣れた業者は、隣地交渉や測量、43条許可の申請まで含めて仕入れ、再販するノウハウを持っていることがあります。通常の仲介会社では対応が難しい場合、専門業者のほうが早く現金化できることがあります。
  • 境界を先に確定しておく——境界未確定のままだと、買い手側で測量費用や時間を見込む必要があり、価格交渉で不利になりがちです。可能であれば売却前に確定測量を済ませておくと、話が早く進みます。

業者を選ぶときに確認したいこと

再建築不可物件は専門性が求められる分、業者による査定額の差が大きく出やすい分野です。次の点を確認したうえで、複数社を比較することをおすすめします。

確認項目 ポイント
再建築不可物件の取扱実績 過去の取扱件数や再生事例を具体的に説明できるか
査定根拠の説明 近隣の取引事例や再建築可能にできる見込みなど、根拠を示して説明できるか
買取と仲介、両方の選択肢の提示 買取価格しか提示せず、仲介の可能性を説明しない業者には注意する
境界・測量費用の負担 売主・買主どちらが負担するか、契約前に明確にする
宅地建物取引業の免許 免許番号を確認し、更新回数(免許番号末尾の数字)も参考にする

再建築不可物件は、通常の物件以上に専門知識が査定額に直結しやすい分野です。接道の状況や再建築可能にできる見込みを読み取れるかどうかで、業者ごとの査定額に開きが出やすくなります。1社だけの査定額をそのまま受け入れず、複数社を比較したうえで判断することが、結果的に手取り額を左右します。不動産会社に行く前に、この記事で挙げた確認項目を一通り把握しておくだけでも、話の内容を正しく判断しやすくなります。

用語集:再建築不可物件でよく出てくる言葉

不動産会社や自治体の窓口で使われる専門用語は、日常ではなじみのない言葉ばかりです。相談の際に意味を確認しながら進められるよう、よく出てくる用語を整理しました。

用語 意味
接道義務 建物の敷地は幅員4m以上の道路に2m以上接していなければならないという建築基準法上のルール
特定行政庁 建築確認・許可などの権限を持つ都道府県・市区町村(建築主事を置く自治体)
42条2項道路(みなし道路) 施行時に既に建物が立ち並んでいた幅員4m未満の道で、セットバックにより道路とみなされるもの
セットバック みなし道路の中心線から2m後退した位置を敷地境界とみなし、後退部分を道路として提供すること
位置指定道路 特定行政庁が指定した、建築基準法上の道路として扱われる私道
43条2項の許可・認定 接道義務を厳密には満たさなくても、安全上支障がないと認められる場合に建築を可能にする例外規定
既存不適格建築物 建築当時は合法だったが、その後の法改正で現行基準に適合しなくなった建物(違法建築ではない)
旗竿地 道路に接する部分が細い通路状になっている敷地の形状
囲繞地・囲繞地通行権 周囲を他人の土地に囲まれ道路に接しない土地、およびその土地から公道に出るために他人の土地を通行できる民法上の権利

相続と名義の確認も忘れずに

再建築不可物件であっても、売却・活用・解体のいずれを選ぶ場合も、不動産の名義が現在の所有者(相続人)になっていることが前提です。名義が故人や先代のままでは、不動産会社との媒介契約や、解体業者との請負契約を結ぶことが基本的にできません。相続登記は2024年4月1日から義務化されており、不動産の取得を知った日から3年以内の申請が必要です。施行日より前に相続した分も、原則として2027年3月31日までに登記を済ませる必要があります。再建築不可という特殊な条件がある物件ほど、売却先を見つけるまでに時間がかかりやすいため、名義変更は片付けや査定と並行して早めに着手しておくことをおすすめします。相続放棄を検討している場合は、家財の処分や売却活動が「単純承認」とみなされ、放棄できなくなることがあるため、着手前に司法書士や弁護士へ相談してください。

安心実家じまいのサービス案内

安心実家じまいは、遺品整理から実家の売却・解体の手配までを一つの窓口でお受けする全国対応のサービスです。再建築不可物件のように専門的な判断が必要なケースでも、提携する不動産会社・司法書士・解体業者と連携し、査定から名義変更、片付け、解体までの段取りをまとめてご案内します。

家財の片付けのみのご依頼は遺品整理サービスで、売却や解体まで見据えている場合は実家じまい代行パックをご利用いただけます。再建築不可物件の査定は、通常の物件よりも確認すべき項目が多いため、まずは登記簿や道路の状況が分かる資料をお持ちのうえでご相談いただくと、話がスムーズに進みます。査定の受け方は実家売却の査定の受け方、解体を含めた進め方は実家の解体費用と進め方、空き家のまま維持する場合の注意点は空き家管理の注意点をあわせてご覧ください。

よくある質問

再建築不可物件は本当に建て替えができないのですか?
現状のままでは、原則として建物を解体すると新築の確認申請が下りません。ただし、道路の中心線から2m後退するセットバック、隣地の一部を買い取ったり借りたりして接道2mを確保する方法、特定行政庁の許可(建築基準法43条2項)を得る方法など、条件によっては再建築可能な状態に変えられる場合があります。可否は敷地ごとに異なるため、自治体の建築指導課で個別に確認する必要があります。
再建築不可物件はいくらで売れますか?
明確な公式相場はありませんが、実務上は同じ地域・同じ面積で再建築可能な物件の5〜7割程度が目安とされることが多いです。接道の幅、間口の長さ、隣地との関係、再建築可能にできる見込みの有無によって上下します。仲介での売却が難航しやすいため、訳あり物件の買取を専門とする不動産会社に査定を依頼し、通常の仲介と金額・期間を比較したうえで判断することをおすすめします。
住宅ローンやリフォームローンは使えますか?
多くの金融機関は再建築不可物件を担保評価が低いと判断し、フラット35を含む一般的な住宅ローンの利用は難しいのが実情です。一方、増改築や修繕を目的としたリフォームローン、ノンバンクの不動産担保ローンなど、住宅ローンとは別の資金調達手段が使える場合があります。取扱いは金融機関によって異なるため、複数社に事前相談することをおすすめします。
相続した再建築不可の実家を売ったら税金はいくらかかりますか?
譲渡益(売却額から取得費・譲渡費用を差し引いた額)に対して、所有期間5年超の場合は所得税15%・復興特別所得税0.315%相当・住民税5%の合計およそ20.315%が原則です。被相続人の居住用家屋であれば「空き家に係る譲渡所得の特別控除」により譲渡益から最大3,000万円を控除できる場合があり、要件を満たせば税額が0円になるケースもあります。適用要件は個別事情により判定が分かれるため、税務署または税理士に確認してください。
解体して更地にすれば、その後の活用に制限はなくなりますか?
建物を建てないという前提であれば、更地は駐車場や資材置き場として活用でき、接道義務や建築確認の対象外になります。ただし新しい建物を建てる用途には使えないため、再建築不可という制約自体は解体しても解消されません。一定の要件を満たせば、更地にしたうえで相続土地国庫帰属制度を利用し、土地を国に引き渡すという選択肢も検討できます。
隣地の所有者が買取や賃借に応じてくれない場合はどうすればいいですか?
隣地との交渉がまとまらない場合は、特定行政庁による43条2項の許可・認定が使えないか確認する方法があります。また、再建築を前提とせず、今の建物を維持したまま賃貸に出す、または訳あり物件の買取を専門とする不動産会社に相談して現況のまま売却するという選択肢もあります。相続で疎遠になっている隣家との交渉は、当事者同士より司法書士や不動産会社を介したほうがまとまりやすいこともあります。

まとめ

再建築不可物件は、放置すると資産価値が下がり続ける一方で、正しい手順で調べれば選択肢が見えてくる分野でもあります。要点を振り返ります。

  • 再建築不可の原因は、多くの場合、建築基準法上の接道義務(幅員4m以上の道路に2m以上接すること)を満たしていないこと
  • 自分で確認するなら、法務局の登記簿・公図、自治体の建築指導課での道路種別照会が出発点になる
  • セットバック・隣地の買取や賃借・43条2項許可などの方法で、再建築可能な状態に変えられる場合がある
  • 売却相場は近隣の再建築可能物件の5〜7割程度が目安。仲介と訳あり専門の買取、両方を比較して判断する
  • 相続した実家なら、空き家に係る譲渡所得の特別控除(最大3,000万円)が使える場合があり、税額を大きく抑えられることがある
  • 解体して更地にすれば、駐車場活用・隣地への売却・相続土地国庫帰属制度など選択肢が広がる
  • 相続登記(名義変更)を済ませておかないと、売却も解体もそもそも契約に進めない
  • 業者ごとに査定額の差が出やすい分野。1社だけで判断せず、複数社に相談する

再建築不可という条件は、それだけで「売れない・使えない」と判断されがちですが、実際には接道の状況や隣地との関係次第で選択肢が変わります。まずは登記簿と道路の状況を確認したうえで、複数の専門家に相談し、ご家族にとって現実的な選択肢を比べることから始めてください。

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この記事を書いた人

安心実家じまい事務局です。実家の片付けや遺品整理、空き家になった家の処分について、はじめての方にも分かるように記事を書いています。提携している現場の業者や司法書士と一緒に、費用の相場・自治体のごみ出しルール・補助金といった、調べてもなかなか分かりにくいところを一つずつ確かめながらまとめています。「誰に頼めばいいか分からない」という段階のご相談も、LINEやお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。

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