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相続放棄の手続き・費用・期限|自分でやる方法と必要書類

最終更新日:2026年8月6日|監修:司法書士・行政書士 久留慎一郎先生・安心実家じまい事務局

司法書士・行政書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 不動産の名義変更
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理

この記事の結論

  • 相続放棄の期限は、自己のために相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内(熟慮期間)です。期限内に家庭裁判所へ申述しないと、原則として単純承認したものとみなされ、借金も含めて相続することになります。
  • 自分で手続きする場合の実費は数千円〜1万円程度(収入印紙800円・郵便切手・戸籍謄本等の取得費用)が目安です。司法書士に依頼すると3〜5万円程度、弁護士に依頼すると5〜10万円程度(いずれも実費別)が目安になります。
  • 必要な戸籍謄本の範囲は、申述人が被相続人の配偶者・子か、父母か、兄弟姉妹かで変わります。続柄が遠くなるほど書類も費用も増えます。
  • 相続放棄をする前に遺品や預金を処分すると法定単純承認とみなされ、後から放棄できなくなることがあります。着手前の判断が重要です。
目次

相続放棄とは|単純承認・限定承認との違い

相続が始まると、相続人は被相続人(亡くなった方)の財産と借金をどう引き継ぐか、次の三つの方法から選ぶことになります(民法第915条)。

方法 内容 手続き
単純承認 プラスの財産もマイナスの借金も、すべてそのまま引き継ぐ 原則として特別な手続き不要(何もしなければ自動的にこれになる)
相続放棄 プラスもマイナスも、一切引き継がない 家庭裁判所への申述が必要
限定承認 プラスの財産の範囲内でのみ、借金の負担を引き継ぐ 相続人全員が共同で家庭裁判所へ申述する必要がある

相続財産の内容が分からないまま実家の片付けだけを先に進めてしまう方もいますが、借金の有無や資産価値の見込みを確認してから方針を決めるのが本来の順序です。実家の資産価値が低く、維持費や解体費のほうが負担になりそうな場合は、相続放棄も現実的な選択肢のひとつになります。

相続放棄をするとどうなるか

相続放棄が家庭裁判所に受理されると、その相続に関しては「初めから相続人とならなかったもの」とみなされます(民法第939条)。プラスの財産を一切受け取れなくなる代わりに、被相続人の借金や保証債務を負う義務からも解放されます。相続放棄は、単独でできる点が限定承認との大きな違いです。相続人が複数いても、他の相続人の同意なく自分の判断だけで申述できます。

限定承認という選択肢もある

被相続人にプラスの財産とマイナスの借金の両方があり、どちらが多いか分からない場合は、限定承認という方法もあります(民法第922条)。相続で得た財産の限度でのみ債務を弁済すればよいため、想定外の負債を抱えるリスクを避けられます。ただし限定承認は相続人全員が共同で申述する必要があり(民法第923条)、一人でも反対すると利用できません。手続きも相続財産の清算という形をとるため、通常の相続放棄より複雑になります。実務上、限定承認が選ばれる件数は相続放棄に比べてかなり少なく、財産状況が複雑な場合に司法書士や弁護士と相談しながら検討するケースがほとんどです。

相続放棄の期限は3ヶ月「熟慮期間」

相続放棄でもっとも重要なのが期限です。民法第915条は「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」に承認または放棄をしなければならないと定めています。この3ヶ月間を実務上「熟慮期間」と呼びます。

起算点はいつか|ケース別に確認する

「知った時」がいつを指すかで、実際の期限は人によって変わります。

ケース 起算点
被相続人が亡くなったことをすぐに知った場合 死亡した日(または死亡を知った日)
先順位の相続人が全員放棄し、自分に相続権が回ってきた場合 先順位者の放棄によって自分が相続人になったと知った日
疎遠だった親族の死亡を後から知った場合 自分が相続人であることを知った日(死亡日そのものではない)
相続人が未成年者・成年被後見人の場合 法定代理人が本人のために相続の開始を知った日(民法第917条)

兄弟姉妹や甥・姪など第三順位の相続人は、被相続人が亡くなった時点ではまだ相続人になっていないことがあります。配偶者や子(第一順位)、父母等の直系尊属(第二順位)が全員相続放棄をして初めて相続権が回ってくるため、この場合の起算点は「先順位者が放棄したことを知った日」になります。祖父母の代から名義や相続関係が整理されていない実家では、思いがけず自分に相続権が回ってきたと後から気づくケースも珍しくありません。

期限を過ぎるとどうなるか|法定単純承認

熟慮期間内に限定承認も相続放棄もしなかった場合、民法第921条2号により単純承認をしたものとみなされます。いったんこの状態になると、被相続人の借金や保証債務も含めてすべて引き継いだことになり、後から「知らなかった」と主張しても原則として覆りません。期限管理は相続放棄の手続きの中でもっとも重視すべきポイントです。

期限に間に合わないときは「期間伸長」の申立て

相続財産の調査に時間がかかり、3ヶ月以内に承認するか放棄するかを判断できない場合は、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てることができます(民法第915条ただし書)。申立ては熟慮期間が満了する前に行う必要があり、期限が過ぎてから慌てて申し立てても原則として認められません。財産や借金の全容がつかめない、相続人の一部と連絡が取れないといった事情がある場合は、期限内にひとまず伸長の申立てをしておくと安心です。

3ヶ月を過ぎても放棄が認められる例外

期限を過ぎた場合でも、一律に相続放棄の道が閉ざされるわけではありません。最高裁判所の判例(昭和59年4月27日判決)では、相続人が相続財産の全部または一部の存在を認識しておらず、そう信じたことに相当な理由があると認められる場合には、財産の存在を認識した時、または通常認識できたはずの時から熟慮期間を起算できるとされています。たとえば「実家に資産価値はないと思っていたら、後から多額の借金の督促が届いた」といったケースがこれにあたり得ます。ただし、この例外が認められるかどうかは個別事情の丁寧な説明が必要で、家庭裁判所への上申書の作成など通常より対応が難しくなります。心当たりがある場合は、早めに司法書士や弁護士へ相談してください。

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相続放棄の費用はいくらかかるか

費用は「自分で手続きする場合の実費」と「専門家に依頼する場合の報酬+実費」で大きく変わります。まずは実費の内訳から確認します。

自分で手続きする場合の実費内訳

費用項目 金額の目安 備考
収入印紙 800円(申述人1人につき) 全国一律(裁判所公式サイトより)
連絡用の郵便切手(予納郵券) 数百円〜1,000円未満 申述先の家庭裁判所ごとに額面・枚数が異なる
申述人本人の戸籍謄本 450円 全国一律
被相続人の死亡記載のある戸籍・除籍謄本・改製原戸籍 1通450〜750円 本籍の変更が多いと複数通必要
被相続人の住民票除票または戸籍附票 200〜400円程度 自治体により手数料が異なる

(裁判所公式サイト「相続の放棄の申述」、各種公的資料をもとに作成)配偶者や子が申述する単純なケースであれば、実費の合計はおおむね数千円で収まります。注意したいのは、2024年10月1日の郵便料金改定により、多くの家庭裁判所で予納郵券の額面や枚数の指定が変更されている点です。以前の記事や案内をそのまま参考にすると、指定と異なる切手を提出してしまい、追加提出を求められて手続きが遅れる原因になります。申述前に、申述先の家庭裁判所の公式サイトで最新の郵便料金の内訳を確認してください。

続柄別・必要書類と費用の目安(独自比較表)

相続放棄で必要になる戸籍謄本の範囲は、申述人が被相続人からみてどの続柄にあたるかで大きく変わります。裁判所が公開している標準的な添付書類の一覧をもとに、続柄別の傾向を整理しました。

申述人の続柄 追加で必要になりやすい書類 戸籍取得費用の目安
配偶者・子(第一順位) 被相続人の死亡記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本 1,000〜1,500円程度
子の代襲者(孫・ひ孫) 上記に加え、本来の相続人(被代襲者)の死亡記載のある戸籍 1,500〜2,500円程度
父母・祖父母等の直系尊属(第二順位) 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍。被相続人の子で死亡している方がいる場合はその戸籍も 5,000〜1万円程度
兄弟姉妹・甥姪(第三順位) 上記に加え、被相続人の父母の死亡記載戸籍、代襲者(甥姪)の場合は被代襲者の死亡記載戸籍 1万〜2万円程度

(裁判所公式サイト「相続の放棄の申述」の標準的申立添付書類一覧をもとに事務局が作成。実際の通数・費用は本籍の変更歴などにより前後します)第一順位の申述人であれば数枚の書類で済むことが多い一方、兄弟姉妹や甥姪が申述人になる第三順位のケースでは、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍をすべて集める必要があり、本籍を何度も変えている方だと取得だけで数週間かかることもあります。実家が祖父母の代からの名義で、相続関係が複雑になっている場合は、早めに戸籍の収集に着手することをおすすめします。

司法書士・弁護士に依頼する場合の費用相場

費用の目安(実費別) 対応できる範囲
司法書士 1人あたり3〜5万円程度 戸籍の収集代行、申述書の作成、照会書への回答方法のアドバイス
弁護士 1人あたり5〜10万円程度 戸籍の収集・書類作成に加え、代理人として裁判所とのやり取りや債権者対応まで一任できる

司法書士は書類作成の専門家として申述書の作成や戸籍収集を代行できますが、依頼者本人の代理人として裁判所や債権者とやり取りする権限はありません。照会書が届いた場合の回答は、司法書士のアドバイスを受けながら申述人自身が行う形になります。一方、弁護士は代理人として債権者への受任通知を送付できるため、貸金業者などからの直接の取り立てを法令上止められる点が大きな違いです。他の相続人との間に対立がある場合や、債権者からの督促にストレスを感じている場合は、弁護士への依頼が向いています。

費用が高くなりやすいケース

次のような事情があると、通常より費用が上乗せされることがあります。

  • 熟慮期間を経過してから申述する場合——家庭裁判所を納得させるための事情説明書(上申書)の作成が必要になり、司法書士報酬に3〜5万円程度の特別手数料が上乗せされることが一般的です。
  • 相続人が海外に居住している場合——印鑑登録証明書の代わりとなる署名証明(サイン証明)や在留証明書(1通1,200円相当)の取得、国際郵便のやり取りなど、数千円〜1万円超の追加費用が生じます。国際郵便には数日単位のタイムラグがあるため、期限が迫っている場合は早めの着手が欠かせません。
  • 不動産や取引先が複数の市区町村にまたがる場合——戸籍を複数の役所へ請求する必要があり、取得費用と時間の両方が増えます。

相続放棄の手続きの流れと必要書類

実際の手続きは、次の5ステップで進みます。

  1. 相続財産の概要を確認する——預貯金・不動産・借金の有無をざっと把握します。通帳や郵便物、督促状の有無が手がかりになります。
  2. 必要書類を集める——申述人本人の戸籍謄本、被相続人の死亡が記載された戸籍謄本などを取得します。続柄によって必要な範囲が変わる点は前述のとおりです。
  3. 相続放棄申述書を作成する——裁判所公式サイトの書式・記載例を使って作成します。被相続人との関係、放棄の理由、相続財産の概略などを記入します。
  4. 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申述する——窓口への持参または郵送で提出します。管轄外の家庭裁判所に提出しても受理されません。
  5. 照会書に回答し、受理通知書を受け取る——申述後、多くの場合は家庭裁判所から照会書(質問状)が届きます。回答を返送すると、1〜2週間程度で相続放棄申述受理通知書が送られてきます。

必要書類チェックリスト(続柄別・そのまま使える版)

裁判所が示す標準的な添付書類をもとに、実務でよく使う組み合わせをチェックリストにまとめました。申述前の書類収集にご活用ください。

共通で必要な書類

  • 相続放棄申述書(裁判所所定の書式)
  • 収入印紙800円分(申述書に貼付)
  • 連絡用の郵便切手(申述先の家庭裁判所に確認)
  • 被相続人の住民票除票、または戸籍附票
  • 申述人(放棄する方)本人の戸籍謄本

申述人が被相続人の配偶者の場合

  • 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本

申述人が被相続人の子、またはその代襲者(孫・ひ孫等)の場合

  • 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
  • (代襲相続人の場合)本来の相続人の死亡の記載のある戸籍謄本

申述人が被相続人の父母・祖父母等の直系尊属の場合

  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいる場合、その戸籍
  • 相続人より下の代の直系尊属で死亡している方がいる場合、その死亡記載の戸籍

申述人が被相続人の兄弟姉妹、またはその代襲者(甥・姪)の場合

  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいる場合、その戸籍
  • 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本
  • (代襲相続人の場合)本来の相続人(おい・めいの親)の死亡の記載のある戸籍謄本

(裁判所公式サイト「相続の放棄の申述」の標準的申立添付書類をもとに作成。同じ書類は1通で足り、入手が間に合わない戸籍は申述後の追加提出も可能です)

申述後の流れ|照会書から受理証明書まで

申述書を提出すると、多くの家庭裁判所では申述人に「照会書(回答書)」を送付し、相続の事実を知った時期や、財産を処分していないかなどを確認します。回答内容に問題がなければ、相続放棄申述受理通知書が届き、これで手続きは完了です。金融機関や債権者に相続放棄した事実を正式に証明する必要がある場合は、別途「相続放棄申述受理証明書」を家庭裁判所に申請します。証明書の交付には申請1通ごとに手数料(収入印紙)がかかるため、必要な通数を事前に見積もっておくと二度手間になりません。

戸籍集めを効率化する「広域交付制度」

2024年3月1日から、本人・配偶者・直系尊属・直系卑属であれば、最寄りの市区町村窓口で本人確認書類を提示するだけで、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍を一括請求できる「戸籍の広域交付制度」が始まっています。本籍地が遠方にある場合や、何度も転籍している被相続人の戸籍を集める場合に、郵送でのやり取りを省略できる利点があります。ただし請求できるのは本人・配偶者・直系尊属・直系卑属に限られ、代理人による請求はできません。兄弟姉妹の戸籍やコンピュータ化されていない一部の古い戸籍も対象外です。第三順位の相続人が申述するケースなど、広域交付だけでは書類が揃わない場合は、司法書士に収集を依頼したほうが確実です。

相続放棄で気をつけたい注意点

法定単純承認とみなされる行為

民法第921条は、相続放棄をする前後で次のいずれかに該当すると、単純承認をしたものとみなすと定めています。

  • 相続財産の全部または一部を処分したとき(保存行為や、一定期間を超えない賃貸は除く)
  • 熟慮期間内に限定承認・相続放棄をしなかったとき
  • 限定承認・相続放棄をした後であっても、相続財産の全部もしくは一部を隠匿し、消費したり、悪意で財産目録に記載しなかったりしたとき

実務でとくにトラブルになりやすいのが一つ目です。被相続人名義の預貯金を生活費のために引き出す、形見として自動車や貴金属を持ち帰る、実家の遺品を売却するといった行為は、財産の「処分」とみなされる可能性があります。相続放棄を検討している段階では、遺品や預貯金には手を付けず、まず司法書士や弁護士へ相談することをおすすめします。実家の片付けと相続放棄の判断がどう関係するかは、相続放棄と遺品整理の関係でも詳しく解説しています。

相続放棄した財産の保存義務(民法第940条)

相続放棄をしても、それで一切の責任がなくなるわけではありません。民法第940条は、放棄をした人が、放棄の時点で相続財産に属する財産を現に占有している場合には、次の相続人や後述の相続財産清算人に引き渡すまでの間、自己の財産と同じ程度の注意をもって保存しなければならないと定めています。2023年4月施行の改正により、この義務は「現に占有している財産」に限定され、以前より範囲が明確になりました。実家に一人で住んでいた親が亡くなり、その家に住んでいない相続人が放棄した場合は、この保存義務を負わないのが原則です。一方、被相続人と同居していた相続人が放棄する場合は、実家の管理をどうするかを次順位の相続人と早めにすり合わせておく必要があります。

相続放棄すると、次は誰が相続人になるか

相続放棄は、死亡や相続欠格・廃除とは異なり、代襲相続の原因にはなりません。放棄した人の子や孫が代わりに相続人になることはなく、相続権は次の順位の血族に移ります。たとえば被相続人の子全員が相続放棄をすると、相続権は被相続人の父母(直系尊属)へ、父母もすでに亡くなっている場合は兄弟姉妹へと移っていきます。次順位の親族には、自分に相続権が回ってきたことも、被相続人の借金の状況も知らされないまま日々が過ぎてしまうことがあります。相続放棄をする際は、次順位にあたる親族へ早めに事情を伝えておくと、後のトラブルを避けやすくなります。

相続人全員が放棄したらどうなるか

法定相続人全員が相続放棄をすると、その相続財産を引き継ぐ人がいなくなります。この場合、利害関係人(債権者など)や検察官の申立てにより、家庭裁判所が「相続財産清算人」を選任します(旧制度の相続財産管理人にあたる役職で、2023年4月の改正で名称と手続きが整理されました)。相続財産清算人は、被相続人の債権者に対して財産の中から支払いを行い、清算後に残った財産があれば国庫に帰属させます。申立てに必要な収入印紙は800円ですが、これとは別に官報公告料5,582円がかかり、事案によっては相続財産の管理費用として数十万円程度の予納金の納付を求められることもあります(裁判所公式サイトより)。相続人全員が放棄しても、借金そのものが消えるわけではない点にも注意してください。相続人が連帯保証人になっている場合、相続放棄をしても保証人としての返済義務は残ります。

自分で手続きするか、専門家に依頼するか

次の項目に一つでも当てはまる場合は、自分だけで進めるより、早い段階で司法書士か弁護士へ相談したほうが安全です。

  • 被相続人が本籍を何度も変えており、戸籍の収集に時間がかかりそうである
  • 兄弟姉妹や甥・姪など、第三順位の相続人として申述する必要がある
  • 熟慮期間の3ヶ月まで残りわずかである
  • 被相続人の借金の総額や債権者が把握できていない
  • 他の相続人との間で、遺産分割や相続放棄の方針について意見が割れている
  • 相続人が海外に居住している、または長期入院中である
  • すでに熟慮期間を過ぎており、例外的な申述を検討している

費用だけを見れば自分で手続きするのが一番安く済みますが、書類の不備や期限徒過によって却下されると、同じ事案で再び申述することは原則としてできません。却下後に争うには即時抗告という別の手続きが必要になり、時間も費用も余計にかかります。「安く済ませたい」気持ちと「確実に終わらせたい」気持ちを天秤にかけ、自分の状況に当てはまる項目が多いほど、早めの専門家相談を検討してください。

ケース別シミュレーション|費用と流れの具体例

ここまでの費用データをもとに、具体的なケースでどの程度の金額になるかを試算します。実際の金額は戸籍の取得通数や依頼先によって変動するため、あくまで目安としてご覧ください。

ケースA:配偶者と子1人が、自分で手続きする場合

父が亡くなり、母(配偶者)と子1人が第一順位の相続人として、多額の借金を理由に相続放棄する場合を想定します。

費用項目 金額
収入印紙(1人800円×2人) 1,600円
郵便切手(家庭裁判所の指定額×2人分の目安) 1,000円程度
申述人2人分の戸籍謄本(450円×2) 900円
被相続人の死亡記載戸籍謄本(1通で2人分に共用可) 750円
被相続人の住民票除票 300円
合計目安 約4,500円

第一順位で必要書類が少なく、家族で同時に申述する場合は、被相続人の死亡記載戸籍などの共通書類を1通で済ませられるため、総額を抑えやすいケースです。

ケースB:兄弟姉妹3人が、司法書士に依頼する場合

独身の伯父が亡くなり、すでに父母もこの世になく、甥・姪ではなく兄弟姉妹3人が第三順位の相続人として申述するケースです。被相続人の出生から死亡までの戸籍を集める必要があり、実費も報酬も第一順位より高くなります。

費用項目 金額の目安
実費(1人あたり。戸籍取得費用込み) 1万5,000〜2万円程度
司法書士報酬(1人あたり3〜5万円) 3万〜5万円
1人あたりの合計 4万5,000〜7万円程度
3人分の合計目安 13万5,000〜21万円程度

被相続人の出生から死亡までの戸籍や父母の死亡記載戸籍といった共通書類は3人で使い回せるため、事務所によっては2人目以降の実費や報酬を減額する料金体系を設けているところもあります。複数人で同時に申述する場合は、見積もりの段階で共通書類の扱いを確認してみてください。

ケースC:熟慮期間を過ぎた申述で、相続人が海外在住の場合

実家に借金があると知らないまま3ヶ月が経過し、督促状が届いて初めて事情を知った、かつ相続人の一人が海外赴任中というケースです。通常の報酬に加え、期限経過後の上申書作成費用と、海外在住者特有の書類取得費用が上乗せされます。

費用項目 金額の目安
司法書士の基本報酬 3万〜5万円
期限経過後の上申書作成(特別報酬) 3万〜5万円
在留証明書・署名証明の取得 数千円程度
国際郵便(EMS等)のやり取り 数千円〜1万円超
合計目安 7万〜12万円程度

国際郵便には数日から1週間以上のタイムラグが生じることもあるため、期限が迫っている状況ではなおさら早めの着手が必要です。海外在住の相続人がいる場合は、まず国内にいる親族が状況を整理し、司法書士へ相談してから海外側の手続きを進めると、書類のやり取りを一往復で済ませやすくなります。

相続放棄と実家じまいの順序

相続放棄を選ぶ場合、実家の家財や不動産には一切手を付けないのが原則です。放棄が受理される前に遺品を処分したり、売却したりすると、法定単純承認とみなされるリスクがあります。相続放棄を検討している段階では、片付けや処分の判断を急がず、まず司法書士や弁護士に相続財産の状況を確認してもらうことをおすすめします。

一方、相続放棄をしない(単純承認する)と決めた場合や、相続放棄したのが自分だけで他の相続人が実家を引き継ぐ場合は、相続登記を済ませたうえで片付けや解体・売却へと進んでいきます。相続登記の期限や過料についての詳細は相続登記の義務化とは|期限・過料・実家を相続したらやることで解説しています。遺産分割協議がまとまらないまま実家を放置しているケースについては遺産分割と実家の関係もあわせてご覧ください。片付けから売却・解体まで一つの窓口で相談したい場合は、実家じまい代行サービスで、相続登記や相続放棄など法律手続きが絡む場面も提携司法書士と連携しながら進める体制を整えています。

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安心実家じまいは、実家の片付けから家の売却・解体の手配までを一つの窓口でお受けする全国対応のサービスです。相続放棄や相続登記など法律手続きが絡む場面では、提携司法書士と連携しながら進めます。実家の資産価値や借金の有無について整理がついていない段階でも、まずは状況をお伺いすることから始められます。

遺品整理のみのご依頼は遺品整理サービスで承ります。家の処分まで続く場合は、実家じまい代行パックが割安です。料金の全体は料金表をご覧ください。相続放棄を検討している段階でのご相談も可能です。家財や不動産に手を付ける前にご相談いただければ、法定単純承認のリスクを避けながら方針を整理できます。ご相談から作業完了までの流れはご相談の流れをご覧ください。

よくある質問

相続放棄の期限はいつまでですか?
自己のために相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内です(民法第915条)。多くの場合、被相続人が亡くなったことと自分が相続人であることを知った日が起算点になります。遺産分割協議の結果ではなく、あくまで「相続人になったと知った日」が基準である点に注意してください。期限内に家庭裁判所への申述が難しい事情があるときは、期間伸長の申立てを検討します。
相続放棄の費用はいくらかかりますか?
自分で手続きする場合の実費は、収入印紙800円と郵便切手数百円、戸籍謄本等の取得費用(1通450〜750円程度)を合わせて数千円〜1万円程度が目安です。続柄が兄弟姉妹や甥姪など遠くなるほど必要な戸籍の通数が増え、1万円台になることもあります。司法書士に依頼する場合は3〜5万円程度、弁護士に依頼する場合は5〜10万円程度が目安です(いずれも実費別)。
相続放棄は自分でできますか?
書類を揃えて家庭裁判所に申述するだけであれば、自分で行うことができます。ただし、戸籍の収集に時間がかかって期限に間に合わない、書類の不備で補正を求められる、家庭裁判所からの照会書への回答に迷うといったリスクがあります。相続人が多い、期限が迫っている、他の相続人や債権者との間に事情があるといった場合は、司法書士や弁護士への相談を検討してください。
3ヶ月の期限を過ぎてしまったら、もう相続放棄はできませんか?
原則として期限内の申述が必要ですが、最高裁判所の判例(昭和59年4月27日判決)では、相続財産が全く存在しないと信じ、そう信じたことに相当な理由があると認められる場合には、財産の存在を認識した時点まで起算点を遅らせられるとされています。期限経過後の申述は、事情を説明する上申書の作成など通常より対応が難しくなるため、早めに司法書士や弁護士へ相談することをおすすめします。
兄弟姉妹や甥・姪が相続放棄する場合、必要書類は変わりますか?
変わります。配偶者や子(第一順位)であれば被相続人の死亡が記載された戸籍謄本があれば足りることが多いのに対し、父母などの直系尊属(第二順位)や兄弟姉妹・甥姪(第三順位)は、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍に加え、先順位の相続人がいないことを示す戸籍も必要になります。取得する戸籍の通数が増えるため、費用も時間もかかりやすくなります。
相続放棄をする前に、遺品を処分してはいけないのですか?
遺品や預貯金などの相続財産を処分すると、民法第921条の「法定単純承認」に該当し、その後の相続放棄が認められなくなる可能性があります。形見分けの範囲や、生活に必要な最低限の対応がどこまで許されるかは判断が難しいため、相続放棄を検討している段階では、家財に手を付ける前に司法書士や弁護士へ相談することをおすすめします。

まとめ

相続放棄は、期限と手順を守れば自分で進めることもできる手続きです。要点を振り返ります。

  • 期限は自己のために相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内。期限を過ぎると原則として単純承認とみなされる
  • 自分で手続きする実費は数千円〜1万円程度、司法書士は3〜5万円、弁護士は5〜10万円が目安
  • 必要書類は続柄によって異なり、第三順位(兄弟姉妹・甥姪)は戸籍の通数が増えて費用も時間もかかる
  • 相続放棄をする前に遺品や預貯金を処分すると、法定単純承認とみなされ放棄できなくなることがある
  • 相続人全員が放棄すると、相続財産清算人の選任という別の手続きに進む
  • 期限に間に合わない事情があれば、期限内に期間伸長の申立てを検討する
  • 戸籍が複雑、期限が迫っている、他の相続人と意見が割れているといった事情があれば、早めに司法書士や弁護士へ相談する

相続放棄をするかどうかは、実家の資産価値と借金の総額を照らし合わせて判断する、一生に何度もない決断です。判断に迷う場合は、家財や不動産に手を付ける前に、まず専門家へ相続財産の状況を相談することをおすすめします。実家の名義変更や片付けとの関係については相続登記の義務化とはも参考にしてください。

読むより、聞いたほうが
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この記事を書いた人

安心実家じまい事務局です。実家の片付けや遺品整理、空き家になった家の処分について、はじめての方にも分かるように記事を書いています。提携している現場の業者や司法書士と一緒に、費用の相場・自治体のごみ出しルール・補助金といった、調べてもなかなか分かりにくいところを一つずつ確かめながらまとめています。「誰に頼めばいいか分からない」という段階のご相談も、LINEやお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。

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