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数次相続とは|放置された実家の相続手続きと登記の書き方

最終更新日:2026年8月6日|監修:司法書士・行政書士 久留慎一郎先生・安心実家じまい事務局

司法書士・行政書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 不動産の名義変更
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理

この記事の結論

  • 数次相続とは、最初の相続(一次相続)の遺産分割協議が終わらないうちに相続人が亡くなり、その人の相続(二次相続)が重なって発生することです。相続開始時点で相続人がすでに死亡している「代襲相続」、承認・放棄の選択前に死亡した「再転相続」とは発生のタイミングが異なります。
  • 実家の名義が祖父母のまま放置され、その間に親も亡くなっているケースは数次相続にあたる可能性が高く、相続人の人数が増え戸籍収集の範囲も広がるため、通常の相続より時間がかかりやすくなります。
  • 一次相続の相続人が一人だった場合などは、登記実務上、祖父母から現在の相続人へ直接名義を移す中間省略登記ができるとされています。共有のまま二次相続が発生した場合は、原則として登記を2回に分けて申請します。
  • 相続放棄・準確定申告・相続税申告は、一次相続と二次相続のそれぞれで期限を別々に数える必要があります。相次相続控除など数次相続特有の税務論点は税理士への相談が要ります。
目次

数次相続とは何か|代襲相続・再転相続との違い

数次相続とは、ある人が亡くなって相続が始まった(一次相続)あと、その遺産分割協議がまだ終わらないうちに、相続人の一人がさらに亡くなり、その人についての新たな相続(二次相続)が発生することをいいます。短期間に相続人が続けて亡くなった場合は、一次相続・二次相続で終わらず、三次相続、四次相続と続くこともあります。

典型的なのは、次のような流れです。祖父が亡くなり、相続人は妻(祖母)と子(父)の2人だったとします。祖父の遺産分割協議がまとまらないまま、あるいは協議自体に着手しないまま数年が経ち、その間に父も亡くなってしまう。この場合、父の相続人(父の配偶者や子)は、父自身の遺産だけでなく、父がまだ受け取っていなかった祖父の遺産についての相続人としての地位も、あわせて引き継ぐことになります。これが数次相続です。

実家じまいの相談では、名義が祖父母のままの土地・建物が、何十年も未整理で残っているケースにたびたび出会います。「相続登記をしないまま放置していたら、次の世代が亡くなってしまい、関係者がねずみ算式に増えていた」という状況は、数次相続が原因になっていることがほとんどです。相続登記は2024年4月1日から義務化されており、放置期間が長いほど数次相続が発生しやすくなる点は、相続登記の義務化とは|期限・過料・実家を相続したらやることでも詳しく解説しています。

数次相続の典型的な発生パターン

実務でよく見られるパターンを整理すると、次のようなケースに大別できます。

  • 祖父母の遺産分割前に親が死亡する——祖父母の相続が発生したものの、遺産分割協議に着手しないまま、あるいは協議中に相続人である親(子の立場)が亡くなるパターンです。実家の相続で最も多く見られます。
  • 兄弟姉妹での協議中に一人が死亡する——親の相続で、兄弟姉妹が遺産分割協議を進めている最中に、その中の一人が病気などで亡くなるパターンです。亡くなった人の配偶者や子が、協議に加わる立場を引き継ぎます。
  • 相続登記を放置したまま複数世代が亡くなる——名義変更をしないまま数十年が経過し、その間に二世代、三世代にわたって相続が重なるパターンです。相続人の人数が数十人規模に膨れ上がることもあります。

代襲相続との違い

数次相続とよく混同されるのが代襲相続です。代襲相続は、被相続人が亡くなった時点で、本来相続人になるはずだった人がすでに死亡している、あるいは相続欠格・相続人廃除によって相続権を失っている場合に、その人の子が代わって相続人になる制度です(民法887条2項)。ポイントは「相続が始まった時点で、すでに相続人がいない」という点にあります。

これに対して数次相続は、相続が始まった時点では相続人は生きていて、その後、遺産分割が終わる前に亡くなるという違いがあります。相続の開始と相続人の死亡の前後関係が逆になる、と考えると整理しやすくなります。代襲相続では孫が「祖父の直接の相続人」として遺産分割協議に加わりますが、数次相続では亡くなった相続人の相続人が「亡くなった相続人の地位を引き継ぐ人」として協議に加わる点も異なります。

再転相続との違い

もう一つ紛らわしいのが再転相続です。再転相続は、相続人が「相続を承認するか放棄するか」を決める前(熟慮期間中)に亡くなった場合に、その相続人の相続人が、承認・放棄の選択をする権利そのものを引き継ぐことをいいます(民法916条)。数次相続は遺産分割協議が終わる前に亡くなった場合を広く指す概念で、再転相続はそのうち「承認・放棄の意思表示をしないまま亡くなった」という特定の局面を指す、より狭い概念です。実務上は「再転相続は数次相続の一種」と整理されることが多く、再転相続にあたる場合は、承認・放棄の判断についてさらに独自のルールが適用される点に注意が必要です。

数次相続 代襲相続 再転相続
発生のタイミング 遺産分割協議が終わる前に相続人が死亡 相続開始時点ですでに相続人が死亡・欠格・廃除 承認・放棄の選択(熟慮期間中)に相続人が死亡
引き継ぐ立場 亡くなった相続人の相続人としての地位全体 孫が祖父母の直接の相続人になる 承認・放棄を選択する権利そのもの
相続人の人数 増えやすい(両方の相続の相続人を兼ねる) 代襲者が入れ替わるだけで人数は大きく変わらない 数次相続の一部として人数が増えることが多い
根拠となる民法の規定 明文の定義規定はなく解釈・実務で運用 887条2項・889条2項 916条

(民法の条文番号はe-Gov法令検索の民法(明治二十九年法律第八十九号)に基づく)自分のケースがこの3つのどれにあたるかによって、必要な戸籍の範囲や手続きの進め方が変わってきます。判断に迷う場合は、司法書士に戸籍一式を見せて確認してもらうのが確実です。

三次相続・四次相続まで重なった場合の考え方

まれなケースですが、一次相続の遺産分割が終わらないうちに二次相続の相続人まで亡くなり、三次相続、四次相続と続くこともあります。考え方の基本は二次相続と変わらず、亡くなった人が持っていた相続分を、その相続人がさらに引き継いでいくだけです。ただし、代を重ねるごとに関係者の人数が幾何級数的に増えていく点には注意が必要です。たとえば一次相続の相続人が3人、二次相続でそのうち1人が亡くなり相続人が2人に分かれ、三次相続でさらにその1人が亡くなり相続人が2人に分かれた場合、最終的に協議へ参加する人数は当初の3人から5人に増えます。世代を重ねた実家ほど、相続人の名簿づくりだけで数か月を要することも珍しくありません。名義変更を先送りにするほど、この人数は増える一方になりやすいため、気づいた時点で着手することが結果的に負担を抑えることにつながります。

うちは数次相続に当てはまるか|確認チェックリスト

実家の相続で数次相続が起きているかどうかは、次の項目を確認すると判断しやすくなります。一つでも当てはまる場合は、通常の相続より必要書類が増える可能性があります。

確認項目 チェックの仕方
実家の登記名義が祖父母や、さらに前の代のままになっている 法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得して確認する
名義人の死亡後、その相続人であった親(叔父・叔母を含む)もすでに死亡している 親族の死亡日と、名義人の死亡日の前後関係を確認する
祖父母の遺産分割協議書が作成・保管された形跡がない 実家の書類や、他の相続人に協議書の有無を確認する
相続人の中に、面識のない親戚(叔父・叔母の配偶者や子など)が含まれる可能性がある 戸籍を集めて相続人の範囲を確認する(司法書士への依頼が現実的)
固定資産税の納税通知書が、亡くなった人宛てに届いている、または代表者が誰か分からない 市区町村の税務課に、納税義務者の登録状況を確認する

このうち複数が当てはまる場合は、想定より相続人の人数が多くなっている可能性があります。戸籍の収集だけで数か月かかることもあるため、実家の片付けや売却を考え始めた時点で、早めに確認に着手することをおすすめします。

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数次相続の相続人は誰になるか|家族構成別の計算例

数次相続が起きると、亡くなった相続人の立場を、その相続人自身の相続人(配偶者や子)が引き継ぎます。言葉で説明するより、具体的な数字で見たほうが分かりやすいため、実家じまいの相談でよくある家族構成を例に計算してみます。

ケース1:祖父の遺産を、父の相続人である母と子が引き継ぐ場合

祖父が死亡(一次相続)。相続人は妻(祖母、すでに死亡)と、子である父・叔父の2人という設定で、法定相続分は父2分の1、叔父2分の1です。ところが、祖父の遺産分割協議がまとまる前に父が死亡(二次相続)。父の相続人は、父の妻(母)と子(あなた)の2人だったとします。

この場合、父が持っていた「祖父の遺産に対する2分の1の相続分」を、母と子が父の法定相続分(配偶者2分の1、子2分の1)に従って引き継ぎます。結果として、祖父の遺産全体に対する持分は次のようになります。

相続人 祖父の遺産に対する最終的な持分 内訳
叔父(祖父の子) 2分の1 祖父の相続人として直接取得
母(父の配偶者) 4分の1 父の持分2分の1 × 母の法定相続分2分の1
あなた(父の子) 4分の1 父の持分2分の1 × 子の法定相続分2分の1

祖父の遺産分割協議には、叔父・母・あなたの3人が当事者として参加することになります。母とあなたは、父が持っていた「協議に参加する立場」をそのまま引き継ぐ形になるため、叔父から見れば話し合う相手が1人増えたことになります。

ケース2:兄弟3人のうち1人が協議中に死亡した場合

親が死亡し、相続人は子3人(長男・次男・三男)で、法定相続分は各3分の1という設定です。遺産分割協議がまとまる前に次男が死亡し、次男の相続人が配偶者と子1人だったとします。この場合、次男が持っていた3分の1の相続分を、次男の配偶者(法定相続分2分の1)と子(法定相続分2分の1)が引き継ぎます。

相続人 最終的な持分 内訳
長男 3分の1 直接の相続人として取得
三男 3分の1 直接の相続人として取得
次男の配偶者 6分の1 次男の持分3分の1 × 配偶者の法定相続分2分の1
次男の子 6分の1 次男の持分3分の1 × 子の法定相続分2分の1

いずれのケースも、法定相続分どおりに遺産分割する前提での計算です。実際には遺産分割協議によって、各人の取得割合を法定相続分と異なる形で決めることもできます。持分の計算だけを見ると単純な掛け算ですが、相続人が増えるほど話し合う相手も増えるため、協議の難易度は人数に比例して上がっていきます。

数次相続の遺産分割協議書の書き方

数次相続が起きている場合の遺産分割協議書は、通常の協議書と基本的な形式は変わりませんが、亡くなった相続人の扱い方に注意が必要です。押さえておきたいポイントは次のとおりです。

  • 亡くなった相続人の氏名と、その相続人が誰かを明記する——「亡○○(次男)の相続人 ○○(配偶者)」「亡○○の相続人 ○○(子)」のように、誰の地位を引き継いで協議に参加しているかが分かるように記載します。
  • 一次相続と二次相続を1通の協議書にまとめられる場合がある——一次相続の相続人がすでに全員そろって協議できる状態であれば、一次相続分の遺産分割協議書を1通作成し、その中で数次相続人としての署名・押印をしてもらう形が一般的です。一次相続と二次相続をそれぞれ別の協議書にする方法もあり、どちらが適切かはケースによって異なります。
  • 署名・押印は実印で行い、印鑑証明書を添付する——通常の協議書と同様、相続人全員(数次相続人を含む)の実印での押印と、印鑑証明書の添付が必要です。
  • 不動産の表示は登記事項証明書のとおりに正確に書く——地番・家屋番号・地目・面積などを、登記事項証明書の記載と一致させます。誤りがあると、後の登記申請で訂正が必要になります。

数次相続人が複数いる場合、遺産分割協議書の当事者欄が長くなり、誰がどの立場で署名しているのか分かりにくくなりがちです。相続関係説明図(家系図のような一覧表)を別途作成し、協議書に添付しておくと、後から見返したときや、金融機関・法務局への提出時に説明の手間が減ります。書式に不安がある場合は、司法書士に文案の作成を依頼するのが確実です。実家の遺産分割全体の進め方は実家の遺産分割の進め方もあわせてご覧ください。

相続人が音信不通・行方不明の場合の対処法

数次相続で相続人が増えると、その中に長年連絡を取っていない親戚が含まれることがあります。まずは戸籍の附票を取得し、現在の住民票上の住所を確認するところから始めます。住所が判明すれば、事情を説明する手紙を送り、返信を待つのが一般的な進め方です。手紙を送っても応答がない、あるいは住民票の住所に実際には住んでいないことが分かった場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる方法があります。不在者財産管理人が選任されれば、その人が本人に代わって遺産分割協議に参加できます。生死が長期間(原則7年以上)不明な場合は、失踪宣告の申立てによって、法律上死亡したものとみなす手続きも選択肢になります。いずれも家庭裁判所での手続きが必要なため、該当する相続人がいる場合は早めに司法書士や弁護士へ相談することをおすすめします。

数次相続と相続放棄|期限はいつから数えるか

数次相続が起きている場合でも、相続放棄という選択肢はそれぞれの相続について独立して残されています。一次相続だけを放棄する、二次相続だけを放棄する、両方を放棄するといった選び方が可能です。ただし、期限(熟慮期間)の数え方には注意が必要です。

熟慮期間の基本ルール

相続放棄をするかどうかを判断できる期間は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内です(民法915条1項)。この期間内に家庭裁判所へ相続放棄の申述をしなければ、原則として相続を承認したもの(単純承認)とみなされます。

数次相続では起算日がずれることがある

数次相続の場合、一次相続について自分が相続人になったことを知った日と、二次相続について相続人になったことを知った日が、同じ日とは限りません。たとえば、父が亡くなった時点(二次相続の発生)では当然それを知りますが、父が祖父の遺産についてまだ相続人としての手続きを終えていなかったこと(一次相続への関与)を、あとになって初めて知るケースもあります。この場合、一次相続に関する熟慮期間は、その事実を知った時点から改めて起算されると考えるのが実務上の整理です。自分の状況がどちらの起算点にあたるかは、事実関係によって判断が分かれるため、期限が近いと感じたら早めに家庭裁判所や司法書士・弁護士へ相談することをおすすめします。

期間内に判断できない場合は伸長の申立てができる

相続財産の調査に時間がかかる、相続人の人数が多く話し合いがまとまらないといった事情で、3か月以内に承認・放棄を決められない場合は、家庭裁判所に相続の承認又は放棄の期間の伸長を申し立てる制度があります(民法915条1項ただし書)。申立ては期間が満了する前に行う必要があり、認められれば期間を延ばすことができます(裁判所ウェブサイト「相続の承認又は放棄の期間の伸長」より)。数次相続で相続人の確定に時間を要する場合は、この制度の利用も選択肢に入れておくと安心です。

一部の遺産に手をつけると相続放棄ができなくなる

相続放棄を検討している段階で、実家の家財を処分したり、預貯金を引き出して使ったりすると、法定単純承認とみなされ、後から相続放棄ができなくなることがあります(民法921条)。数次相続では、一次相続・二次相続のどちらについて放棄を考えているのかを整理しないまま片付けを進めてしまうと、意図せず承認したことになってしまう場合があるため、放棄を迷っている間は、家財の処分に着手する前に専門家へ相談しておくことが重要です。

数次相続の相続登記の書き方|中間省略登記とは

相続登記は2024年4月1日から義務化されており、不動産の取得を知った日から3年以内の申請が必要です。この義務は数次相続が起きている不動産にも同じように適用されます。制度全体の詳細は相続登記の義務化とは|期限・過料・実家を相続したらやることで解説していますので、ここでは数次相続に特有の登記の進め方に絞って説明します。

中間省略登記ができる場合とできない場合

数次相続で最も実務上の関心が高いのが「登記を何回申請する必要があるか」という点です。登記実務では、次のように扱いが分かれます。

一次相続の状況 登記の進め方
一次相続の相続人が最初から一人だけだった 祖父母(一次被相続人)から現在の相続人へ、直接1件の登記で移転できるとされています(中間省略登記)
遺産分割協議によって、一次相続の時点で特定の一人が不動産を取得したことが確定している その一人(=二次被相続人)を経由したことにして、現在の相続人へ直接1件の登記で移転できるとされています
一次相続で複数の相続人による共有のまま二次相続が発生した 原則として、一次相続分の登記(祖父母→複数の相続人)と、二次相続分の登記(亡くなった相続人の持分→その相続人)を分けて2件申請する必要があります

(登記実務上の一般的な扱いであり、個別の不動産の状況によって判断が分かれることがあります。申請前に法務局または司法書士へご確認ください)中間省略登記が使える場合は、登録免許税や必要書類の面でも負担を抑えられる可能性があります。逆に、一次相続の時点で共有状態が続いていた不動産は、登記申請の件数が増える分、戸籍の準備や登録免許税の計算も複雑になります。

登記申請書に書く「原因」の考え方

相続登記の申請書には「登記の原因」として、相続が発生した年月日を記載します。数次相続で中間省略登記を行う場合も、原因の日付は「一次相続が発生した日(祖父母の死亡日)」を記載するのが基本的な考え方です。二次相続を経由していることは、添付する戸籍謄本や相続関係説明図で確認できるようにしておきます。中間省略登記ができない場合は、一次相続分の登記の原因は祖父母の死亡日、二次相続分の登記の原因は亡くなった相続人の死亡日と、それぞれ別の日付になります。

登記申請書の記載イメージ

中間省略登記ができる場合の、登記申請書に記載する主な項目のイメージは次のとおりです。実際の申請書は不動産の状況によって記載内容が変わるため、あくまで全体像をつかむための一例としてご覧ください。

記載項目 記載内容の例
登記の目的 所有権移転
原因 令和◯年◯月◯日相続(一次相続=祖父母の死亡日)
相続人 被相続人 祖父〇〇  亡父〇〇 相続人 〇〇(申請人)
添付情報 登記原因証明情報(戸籍謄本一式・遺産分割協議書等)、住所証明情報
課税価格・登録免許税 固定資産評価額に基づき算出(税率0.4%)

「相続人」欄に「亡父〇〇 相続人 〇〇」のように記載することで、二次相続の被相続人(父)を経由して申請人へ持分が移ったことを示します。この書き方や添付書類の組み合わせは不動産の権利関係によって変わるため、実際の申請前には法務局の窓口または司法書士に確認することをおすすめします。

必要書類は通常の相続登記より増える

数次相続の登記では、一次相続・二次相続の両方について、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、遺産分割協議書(協議による場合)、印鑑証明書が必要です。祖父母の代から名義変更をしていない実家では、戸籍の本籍地が何度も変わっていることも多く、複数の市区町村へ請求する手間がかかります。相続人申告登記のような簡易な制度もありますが、これは義務を先に果たすための措置であり、正式な名義変更そのものではない点は、数次相続でも変わりません。

数次相続の相続税申告と相次相続控除

数次相続では、税務上の手続きも一次相続・二次相続のそれぞれについて必要になります。税額計算そのものは税理士の専門領域ですが、期限と大まかな仕組みを知っておくと、専門家に相談するタイミングを逃さずに済みます。

準確定申告(4か月以内)

二次相続で亡くなった人(父など)に、まだ済んでいない所得税の確定申告義務が残っていた場合、相続人は相続の開始を知った日の翌日から4か月以内に、その人に代わって準確定申告をする必要があります(国税庁タックスアンサーNo.2022より)。もし一次相続の被相続人(祖父母など)の準確定申告も済んでいなかった場合は、二次相続の相続人が両方の準確定申告義務を引き継ぐことになり、期限管理がより煩雑になります。相続人が2人以上いる場合は、連署で提出するか、他の相続人の氏名を付記して各人が別々に提出する方法があります。

相続税の申告期限(10か月以内)

相続税がかかる場合の申告・納税期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内です(国税庁タックスアンサーNo.4102より)。数次相続では、一次相続と二次相続のそれぞれについて、この10か月のカウントが別々に進みます。二次相続の申告期限のほうが先に到来することもあれば、逆になることもあり、実家に複数の相続が絡んでいる場合は、カレンダーで期限を並べて確認しておくと管理しやすくなります。

相次相続控除の考え方と計算例

短期間に相続が2回続くと、同じ財産に対して相続税が重ねてかかる負担が生じやすくなります。これを緩和するのが相次相続控除です。今回の相続開始前10年以内に、被相続人が別の相続(今回でいう一次相続)で財産を取得し、その際に相続税を課されていた場合、その被相続人から財産を取得した人の相続税額から、一定の金額を控除できます(国税庁タックスアンサーNo.4168より)。計算式は次のとおりです。

記号 意味
A 今回の被相続人が、前の相続(一次相続)で課された相続税額
B 今回の被相続人が、前の相続で取得した純資産価額
C 今回の相続で、財産を取得したすべての人の純資産価額の合計額
D 今回、その相続人が取得した純資産価額
E 前の相続から今回の相続までの期間(1年未満は切り捨て)

控除額 = A ×【C/(B-A)】× (D/C)×(10-E)/10 という式で計算します。数字を当てはめた例を示します。

項目 設定した金額・年数
A(一次相続で父が課された相続税額) 200万円
B(一次相続で父が取得した純資産価額) 6,000万円
C(二次相続で全員が取得した純資産価額の合計) 4,000万円
D(そのうちあなたが取得した純資産価額) 2,000万円
E(一次相続から二次相続までの期間) 8年

この場合、B-A=5,800万円、C/(B-A)=4,000万÷5,800万≒0.69、D/C=2,000万÷4,000万=0.5、(10-8)/10=0.2ですから、控除額はおよそ200万円×0.69×0.5×0.2=約13万8,000円という計算になります。実際の申告では、純資産価額の算定方法や端数処理、他の税額控除との適用順序によって金額が変わるため、この数字はあくまで計算の流れを示す一例です。正式な金額は税理士に確認してください。

実家が数次相続になっていたときの実務対応(事務局視点)

安心実家じまいの相談窓口では、「実家を片付けようとしたら、名義が祖父母のままだった」「相続人を確認したら、会ったこともない親戚が10人以上出てきた」といった相談が一定数寄せられます。ここでは、現場でよく見られるパターンと、その対応の考え方を紹介します。

パターン1:片付けを先に終えてから名義の問題に気づく

家財の片付けだけを先に終わらせ、いざ売却しようとした段階で名義が祖父母のままだったと分かるケースです。売却や解体の契約は、登記簿上の名義人でなければ結べないため、そこから戸籍収集を始めることになり、売却までの期間が数か月単位で延びることが珍しくありません。片付けと並行して、実家の登記事項証明書だけでも早めに取得しておくと、こうした手戻りを避けやすくなります。

パターン2:相続人の一人が遠方または疎遠で連絡が取りづらい

数次相続では、面識のない親戚(叔父・叔母の配偶者や、その子)が相続人に含まれることがあります。連絡先が分からない、疎遠で連絡を取りづらいといった事情から、遺産分割協議が進まないまま実家だけが空き家として残っていくパターンです。この場合、まずは戸籍の附票などから現在の住所を調べ、事情を説明する手紙を送るところから始めるのが一般的です。感情的なもつれを避けるためにも、金銭的な話に入る前に、司法書士など第三者を介して連絡を取る方法も検討する価値があります。

パターン3:相続放棄を検討している段階で家財を処分してしまう

実家の資産価値が低く、維持費や解体費のほうが負担になりそうだと感じ、相続放棄を検討している最中に、遺品や家財を処分してしまうケースです。前述のとおり、これは法定単純承認とみなされ、放棄ができなくなる可能性があります。数次相続で複数の相続が絡んでいる場合、「どの相続について放棄を考えているのか」が本人の中でも整理しきれていないまま作業が進んでしまうことがあるため、片付けに着手する前の相談が特に重要になります。

片付けと名義変更、どちらを先に進めるべきか

結論としては、並行して進めるのが現実的です。片付けだけを終えても名義変更をしなければ売却や解体には進めませんし、名義変更の完了を待ってから片付けに着手すると、その間、空き家の管理不全が進んでしまいます。数次相続で相続人の確定に時間がかかりそうな場合は、家財のうち貴重品や権利証などの重要書類を先に確保したうえで、戸籍の収集や司法書士への相談を並行して進めておくと、名義変更のめどが立った時点で片付けもあわせて進められる状態を作れます。

司法書士・税理士に相談すべきタイミング

数次相続は、通常の相続に比べて確認すべき事項が多く、自分だけで判断すると見落としが生じやすい分野です。相談先の目安を整理します。

  • 相続人の範囲や戸籍の収集、遺産分割協議書の作成、相続登記の申請——これらは司法書士の専門領域です。数次相続にあたるかどうかの判断や、中間省略登記が使えるかどうかの確認も、戸籍一式を見た上での個別判断になるため、早めの相談が有効です。
  • 相続税の申告要否、相次相続控除の計算、準確定申告——これらは税理士の専門領域です。相続財産の評価額によって申告が必要かどうかが変わり、控除額の計算には専門的な判断が伴うため、金額が大きい場合や複数の相続が絡む場合は早期の相談をおすすめします。
  • 相続人同士で意見が対立している、遺言の有効性に争いがある——弁護士への相談が必要になる場面です。数次相続で相続人の人数が多い場合、意見の対立が起きやすくなる傾向があります。

安心実家じまいでは、実家の片付けや家の処分に関するご相談を窓口ひとつでお受けし、相続登記など法律手続きが絡む場面は提携司法書士と連携して進める体制を整えています。相続税に関するご相談は、必要に応じて提携先の税理士へおつなぎします。

安心実家じまいのサービス案内

安心実家じまいは、実家の片付けから家の売却・解体の手配までを一つの窓口でお受けする全国対応のサービスです。数次相続が絡み、名義変更に時間がかかりそうな実家についても、片付けと手続きの進め方をあわせてご相談いただけます。

片付けのみのご依頼は遺品整理サービスで、家の処分まで見据える場合は実家じまい代行パックで承ります。パック料金は2DKまで29.8万円、3LDKまで49.8万円、4LDK以上69.8万円〜(税別)です。相続登記や遺産分割協議書の作成といった法律手続きは提携司法書士と連携し、税務面で確認が必要な場合は税理士へおつなぎします。まずは実家の状況と、名義がどうなっているかをお聞かせください。

よくある質問

数次相続とは何ですか。代襲相続とはどう違いますか。
数次相続とは、最初の相続(一次相続)の遺産分割協議が終わらないうちに相続人の一人が亡くなり、その人の相続(二次相続)が重なって発生することです。代襲相続は、相続が始まった時点ですでに相続人が死亡・欠格・廃除になっている場合に、その子が代わって相続人になる制度で、発生のタイミングが根本的に異なります。数次相続では、亡くなった相続人の地位そのものをその相続人が承継します。
自分の家が数次相続にあたるかどうかは、どこを見れば分かりますか。
実家の登記簿(登記事項証明書)を取得し、名義人が誰になっているかを確認するのが基本です。名義が祖父母のままで、その後に相続人であるはずの親も亡くなっている場合は、数次相続が起きている可能性が高いといえます。加えて、祖父母の遺産分割協議書が作成・保管されているか、親の死亡時点で祖父母名義の不動産が残っていたかを確認すると判断しやすくなります。
数次相続の相続登記は、一回の申請で済みますか。
一次相続の相続人が一人しかいなかった場合や、遺産分割協議によって一次相続の時点でその不動産を特定の一人が取得したことが確定している場合は、登記実務上、祖父母から現在の相続人へ直接、一件の申請で名義を移す中間省略登記ができるとされています。一方、一次相続で複数人の共有状態のまま二次相続が発生した場合は、原則として一次相続分と二次相続分の登記を分けて申請する必要があります。個別の判断は司法書士への確認をおすすめします。
数次相続でも相続放棄はできますか。期限はいつから数えますか。
できます。一次相続と二次相続は別の相続なので、それぞれについて相続放棄をするかどうかを判断できます。期限(熟慮期間)は、自分がその相続の相続人になったことを知った日から3か月以内が原則です。数次相続では一次相続と二次相続で起算日がずれることがあるため、それぞれの相続について期限を別々に確認する必要があります。期限内に判断が難しい場合は、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てる方法もあります。
数次相続の相続税申告や準確定申告はどうなりますか。
二次相続で亡くなった人にまだ所得税の確定申告義務が残っていた場合、その相続人は相続の開始を知った日の翌日から4か月以内に準確定申告をする必要があります。相続税の申告期限は原則として相続の開始を知った日の翌日から10か月以内で、一次相続と二次相続のそれぞれについて期限を数えます。一定の要件を満たせば、短期間に相続が重なったことに配慮した相次相続控除が使える場合があります。具体的な税額計算は税理士に確認することをおすすめします。

まとめ

数次相続は、実家の名義変更を先延ばしにしているうちに起きやすい相続の重なりです。要点を振り返ります。

  • 数次相続とは、一次相続の遺産分割協議が終わる前に相続人が死亡し、二次相続が重なって発生すること
  • 相続開始時点で相続人がいない代襲相続、承認・放棄の選択前に死亡した再転相続とは、発生のタイミングが異なる
  • 実家の名義が祖父母のままで、その相続人であった親も死亡している場合は数次相続の可能性が高い
  • 数次相続では相続人が増えやすく、遺産分割協議書には亡くなった相続人の地位を引き継いだことを明記する
  • 相続登記は一次相続の相続人が一人だった場合などに中間省略登記ができるとされるが、共有のまま二次相続が起きた場合は登記が2件必要になることがある
  • 相続放棄・準確定申告・相続税申告は、一次相続と二次相続でそれぞれ期限を数える
  • 相次相続控除など税務の詳細な計算は税理士の領域。金額が大きい場合や複数の相続が絡む場合は早めに相談する

数次相続にあたるかどうかの判断や、必要な戸籍の範囲は、家族構成によって一件ごとに異なります。まずは実家の登記事項証明書を取得し、名義がどうなっているかを確認することが最初の一歩です。相続登記の義務化全体については相続登記の義務化とは|期限・過料・実家を相続したらやることを、実家の遺産分割の進め方は実家の遺産分割の進め方をあわせてご覧ください。

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この記事を書いた人

安心実家じまい事務局です。実家の片付けや遺品整理、空き家になった家の処分について、はじめての方にも分かるように記事を書いています。提携している現場の業者や司法書士と一緒に、費用の相場・自治体のごみ出しルール・補助金といった、調べてもなかなか分かりにくいところを一つずつ確かめながらまとめています。「誰に頼めばいいか分からない」という段階のご相談も、LINEやお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。

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