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小規模宅地等の特例とは|実家の相続税評価額が8割減になる要件とシミュレーション

最終更新日:2026年9月12日|監修:司法書士・行政書士 久留慎一郎先生・安心実家じまい事務局

司法書士・行政書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 不動産の名義変更
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理

この記事の結論

  • 小規模宅地等の特例を使うと、実家の敷地(特定居住用宅地等)は330㎡まで相続税評価額が80%減額されます。税額そのものが8割減るのではなく、土地の評価額が8割下がる制度です。
  • 適用できるのは原則として配偶者・同居していた親族・一定の要件を満たす別居親族(いわゆる「家なき子」)のいずれかが実家の敷地を相続した場合です。誰が相続するかで結果が大きく変わります。
  • 特例を使って税額が0円になる場合でも相続税の申告は必要です。申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)までに遺産分割を終えておくのが原則です。
  • 同居親族・別居親族が適用を受けるには申告期限まで実家の敷地を持ち続ける保有継続要件があります。実家じまい(売却)を予定している場合は、売却のタイミングに注意が必要です。
目次

小規模宅地等の特例とは|「相続税が8割減」の正確な意味

小規模宅地等の特例とは、亡くなった方(被相続人)が自宅や事業のために使っていた土地について、一定の要件を満たす場合に、相続税を計算するときの土地の評価額を最大80%減額できる制度です。正式には「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例」といい、租税特別措置法第69条の4に定められています(出典:国税庁タックスアンサー No.4124)。

よく「実家の相続税が8割減になる」と言われますが、正確には減るのは税額ではなく、実家の敷地の相続税評価額です。たとえば評価額5,000万円の実家の敷地に特例を適用できれば、相続税の計算上は1,000万円の土地として扱われます。土地は相続財産の中で大きな割合を占めることが多いため、評価額が8割下がることで、結果として相続税が大幅に減ったり、そもそも課税されなくなったりするケースが少なくありません。

この制度が設けられている背景には、「自宅の土地に満額の相続税をかけると、残された家族が住む家を売って納税しなければならなくなる」という事情への配慮があります。つまり、亡くなった方の生活の基盤だった土地を、家族が引き継いで使い続けることを守るための制度です。そのため、後述するとおり「誰が相続するか」「相続後も住み続ける・持ち続けるか」が適用の分かれ目になります。

実家を相続する予定がある方にとって、この特例を使えるかどうかは納税額に数百万円単位の差を生むことがあります。まずは制度の全体像を押さえたうえで、ご自身のケースで使えるかどうかを順番に確認していきましょう。

対象となる宅地は3種類|限度面積と減額割合【比較表】

小規模宅地等の特例の対象になる宅地は、使われ方によって大きく3つに分かれます。それぞれ限度面積と減額割合が異なります(出典:国税庁タックスアンサー No.4124)。

区分 土地の使われ方 限度面積 減額割合
特定居住用宅地等 被相続人(または生計を一にする親族)が住んでいた自宅の敷地 330㎡ 80%
特定事業用宅地等 被相続人が事業(貸付事業を除く)に使っていた土地 400㎡ 80%
貸付事業用宅地等 賃貸アパート・貸駐車場など貸付事業に使っていた土地 200㎡ 50%

親が住んでいた実家の敷地は、このうち「特定居住用宅地等」にあたります。330㎡(約100坪)までの部分について評価額が80%減額されるため、一般的な戸建ての敷地であれば、多くの場合は敷地全体が減額の対象に収まります。330㎡を超える広い敷地の場合は、330㎡までの部分だけが減額され、超えた部分は通常の評価額のまま課税対象になります。

実家の敷地は「特定居住用宅地等」で確認する

この記事では、実家じまいを控えた方に関係の深い「特定居住用宅地等」を中心に解説します。なお、実家の1階で親が商店を営んでいた、敷地の一部を月極駐車場として貸していた、といった場合は、特定事業用・貸付事業用の区分が関係することもあります。複数の区分にまたがる場合の限度面積の計算は複雑になるため、該当しそうな方は税理士への相談をおすすめします。

実家の敷地の評価額をざっくり把握する方法

「そもそもうちの実家はいくらの評価なのか」が分からないと、特例を使うべきかどうかの判断もつきません。相続税における土地の評価は、市街地では国税庁が毎年公表する路線価(道路ごとに付けられた1㎡あたりの価額)に面積を掛けて計算する路線価方式、路線価が付いていない地域では固定資産税評価額に一定の倍率を掛ける倍率方式で行います。路線価と評価倍率は、国税庁の路線価図・評価倍率表のサイトで誰でも確認できます。まずは毎年春に届く固定資産税の納税通知書(課税明細書)で敷地の面積と固定資産税評価額を確認し、路線価図と照らし合わせれば、概算の評価額がつかめます。この概算と「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除を比べることが、相続税対策の第一歩です。

誰が相続するかで決まる適用要件【配偶者・同居親族・別居親族】

特定居住用宅地等として80%減額を受けられるかどうかは、実家の敷地を「誰が」相続するかでほぼ決まります。取得者ごとの要件を表に整理しました。

取得する人 適用の要件 ハードル
配偶者 要件なし。取得するだけで適用できる 低い
同居していた親族 相続開始の直前から申告期限まで引き続きその家に居住し、かつ、その宅地を申告期限まで保有していること 中程度
別居していた親族(いわゆる「家なき子」) 配偶者も同居相続人もいないことに加え、持ち家に住んでいないことなど6つの要件をすべて満たすこと 高い

ポイントは3つあります。第一に、配偶者は無条件で適用できます。父が亡くなり母が実家を相続するようなケースでは、要件を気にする必要はありません。第二に、同居していた子などの親族は、申告期限まで住み続け、かつ持ち続けることが条件です。相続してすぐに売却したり引っ越したりすると適用できなくなります。第三に、別居の子が相続する場合は「家なき子」と呼ばれる厳しい要件をすべて満たす必要があります。

別居親族(家なき子)の6つの要件

親と同居していなかった子が実家の敷地を相続して特例を受けるには、次の要件をすべて満たす必要があります(出典:国税庁タックスアンサー No.4124)。

  • 居住制限納税義務者または非居住制限納税義務者のうち、日本国籍を有しない者ではないこと
  • 被相続人に配偶者がいないこと
  • 相続開始の直前に、被相続人と同居していた法定相続人がいないこと
  • 相続開始前3年以内に、自分・自分の配偶者・三親等内の親族・特別の関係がある一定の法人が所有する日本国内の家屋に住んだことがないこと
  • 相続開始時に住んでいる家屋を、過去に一度も所有したことがないこと
  • その宅地を相続開始時から相続税の申告期限まで保有していること

簡単に言えば、「両親ともすでに亡くなっているか配偶者がおらず、実家に同居の相続人もいない状態で、賃貸住まいの子が実家を相続する」ような場合が典型です。逆に、自分名義の持ち家に住んでいる子や、配偶者名義の家に住んでいる子は対象外です。「3年以内に親族の持ち家に住んでいないこと」という要件もあるため、形式的に賃貸へ引っ越して要件を作る、といった対策は通用しにくい仕組みになっています。

親が老人ホームに入所していた場合

「亡くなる前は施設に入っていて、実家には住んでいなかった」というケースでも、あきらめる必要はありません。被相続人が要介護認定・要支援認定または障害支援区分の認定を受けて、特別養護老人ホーム・有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・介護老人保健施設・介護医療院・障害者支援施設などに入所していた場合は、入所前に住んでいた実家の敷地を「居住用」として扱うことができます(出典:国税庁タックスアンサー No.4124)。ただし、入所後にその家を他人に貸したり、事業に使ったりした場合は対象外になるなどの条件があります。施設入所後の実家の使い方も、特例の可否に影響することを覚えておいてください。

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相続税はいくら変わる?ケース別シミュレーション

特例を使った場合と使わなかった場合で、相続税がどれくらい変わるのかを具体的な数字で見てみましょう。前提として、相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除があり、課税価格の合計がこの金額以下なら相続税はかかりません(出典:国税庁タックスアンサー No.4152)。税額の計算には次の速算表を使います(出典:国税庁タックスアンサー No.4155)。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

以下のシミュレーションは、計算の仕組みを分かりやすくするため、建物の評価額やその他の財産・債務・葬式費用などを省略し、土地と預貯金だけで計算した簡略版です。実際の税額は財産の全体像によって変わるため、正確な計算は税理士に依頼してください。

ケースA:同居の長男が実家を相続(評価額5,000万円・200㎡)

母が亡くなり(父は既に他界)、相続人は長男・二男の2人。実家の敷地(評価額5,000万円・200㎡)は同居していた長男が相続し、預貯金2,000万円は2人で分けたとします。基礎控除は3,000万円+600万円×2人=4,200万円です。

項目 特例なし 特例あり
実家の敷地の評価額 5,000万円 1,000万円(80%減)
課税価格の合計(土地+預貯金2,000万円) 7,000万円 3,000万円
基礎控除後の課税遺産総額 2,800万円 0円(基礎控除4,200万円以下)
相続税の総額 約320万円 0円

特例なしの場合、課税遺産総額2,800万円を法定相続分(2分の1ずつ)で分けた1,400万円それぞれに速算表を当てはめると、1,400万円×15%−50万円=160万円。2人分で相続税の総額は320万円です。特例を適用すると課税価格が基礎控除を下回るため、相続税は0円になります。ただし後述のとおり、0円でも申告は必要です。

ケースB:賃貸住まいの長女が実家を相続(評価額8,000万円・300㎡)

一人暮らしの父が亡くなり、相続人は長女・二女の2人。どちらも別居ですが、長女は10年以上賃貸住まいで「家なき子」の要件をすべて満たすとします。実家の敷地(評価額8,000万円・300㎡)を長女が相続し、預貯金3,000万円は2人で分けたとします。基礎控除は4,200万円です。

項目 特例なし 特例あり
実家の敷地の評価額 8,000万円 1,600万円(80%減)
課税価格の合計(土地+預貯金3,000万円) 1億1,000万円 4,600万円
基礎控除後の課税遺産総額 6,800万円 400万円
相続税の総額 約960万円 約40万円

特例なしでは、6,800万円×2分の1=3,400万円ずつに速算表を当てはめ、3,400万円×20%−200万円=480万円、総額960万円。特例を適用すると、400万円×2分の1=200万円×10%=20万円ずつ、総額約40万円まで下がります。その差は約920万円。都市部の実家では、この特例が使えるかどうかで納税額が桁違いに変わることが分かります。

ケースC:330㎡を超える広い実家(評価額6,000万円・400㎡)

母が亡くなり、相続人は同居していた長男1人。実家の敷地は400㎡・評価額6,000万円、預貯金は2,000万円とします。基礎控除は3,000万円+600万円×1人=3,600万円です。

この場合、減額されるのは330㎡までの部分です。減額される金額は、6,000万円×(330㎡÷400㎡)×80%=3,960万円。敷地の評価額は6,000万円−3,960万円=2,040万円になります。課税価格の合計は2,040万円+2,000万円=4,040万円、基礎控除後は440万円で、相続税は440万円×10%=44万円です。特例なしの場合の約680万円と比べて、600万円以上の差になります。限度面積を超える敷地でも、超えた部分が課税されるだけで特例そのものは使えるという点を押さえておきましょう。

「とりあえず配偶者に相続させる」前に考えたい二次相続

相続税には、配偶者が実際に取得した正味の遺産額のうち「1億6,000万円」か「配偶者の法定相続分相当額」のどちらか多い金額までは配偶者に相続税がかからない、配偶者の税額軽減という制度もあります(出典:国税庁タックスアンサー No.4158)。このため、父が亡くなった一次相続では「実家も預貯金も全部母に相続させれば税金はかからない」という選択をしがちです。

ただし、その母が亡くなる二次相続では、配偶者の税額軽減が使えないうえ、法定相続人が1人減るぶん基礎控除も600万円小さくなります。さらに、子が誰も実家に同居しておらず持ち家もある場合、二次相続では小規模宅地等の特例も使えず、実家の敷地が満額評価で課税されることになります。一次相続の時点で「二次相続のときに実家を誰がどう引き継ぐか(または売却するか)」まで見通して分け方を決めることが、家族全体の税負担を抑えるうえで重要です。一次・二次をまたいだ分け方の設計は、税理士に両方のシミュレーションを依頼して比較するのが確実です。実家を共有名義にする分け方のリスクについては実家の遺産分割|共有名義のリスクと4つの分け方で詳しく解説しています。

適用を受けるための手続き|申告期限・必要書類チェックリスト

小規模宅地等の特例は、自動的に適用されるものではありません。相続税の申告書に特例の適用を受ける旨を記載し、計算明細書や遺産分割協議書の写しなど一定の書類を添付して申告することが要件です(出典:国税庁タックスアンサー No.4124)。特例を使った結果、税額が0円になる場合でも申告は必要です。「税金がかからないから何もしなくてよい」と思い込んで申告しないと、特例の適用が受けられません。

相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。この期限までに、誰がどの財産を相続するかを決める遺産分割協議を終えておくのが原則です。申告期限までに実家の敷地の取得者が決まっていないと、いったん特例を使わない状態で申告・納税することになります(「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておき、その後分割がまとまった段階で特例を適用して税金の還付を受ける手続きはありますが、一時的に多額の納税資金が必要になります)。分割協議を先延ばしにしないことが、この特例を確実に使う一番のポイントです。

準備の全体像をチェックリストにまとめました。印刷して、手続きの進行管理にご活用ください。

時期の目安 やること チェックのポイント
相続開始〜1か月 相続人と相続財産の把握 戸籍の収集、実家の登記情報・固定資産税納税通知書の確認
〜2か月 実家の敷地の評価額の概算 路線価または固定資産税評価額から概算し、基礎控除と比較する
〜3か月 誰が実家を相続するかの方向決め 配偶者・同居親族・家なき子のどれに当てはまるかで税額が大きく変わる
〜6か月 税理士への相談・依頼 特例の適用可否と必要書類(住民票、賃貸借契約書など)の確認
〜8か月 遺産分割協議書の作成 実家の敷地の取得者を明記。相続人全員の実印・印鑑証明書
〜10か月 相続税の申告・納税 税額0円でも申告する。計算明細書・協議書の写しを添付
申告後すみやかに 相続登記(名義変更) 相続で不動産取得を知った日から3年以内の申請が義務

最後の相続登記は、令和6年(2024年)4月1日から申請が義務化されており、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由がない場合10万円以下の過料の対象になります。それ以前に相続した未登記の不動産も令和9年(2027年)3月31日までに登記が必要です(出典:法務省「相続登記の申請義務化について」)。実家の登記がまだの方は、相続登記の義務化と手続きの案内ページで流れを確認してください。当サイトでは提携司法書士による相続登記のサポートも行っています。

特例が使えない・注意が必要なケース

「実家だから当然使える」と思い込んでいると、思わぬところで適用できないことがあります。実家じまいのご相談でも話題になりやすい注意点をまとめます。

  • 持ち家のある子が相続するケース——自分や配偶者の持ち家に住んでいる別居の子は「家なき子」に該当せず、特例は使えません。この場合、実家の敷地は通常の評価額で課税されます。
  • 相続開始前3年以内に親族の家に住んでいたケース——賃貸住まいでも、3年以内に自分の三親等内の親族が所有する家に住んでいた期間があると要件を満たしません。
  • 申告期限より前に実家を売却したケース——同居親族・家なき子には申告期限まで宅地を保有し続ける要件があります。申告期限を待たずに売却すると、特例が使えなくなります(配偶者にはこの要件はありません)。
  • 生前贈与で実家の土地をもらっていたケース——この特例は相続または遺贈で取得した宅地が対象です。生前に贈与を受けていた土地には適用できません。
  • 誰も住んでいない別荘・セカンドハウス——被相続人の生活の拠点だった土地が対象のため、居住実態のない不動産は対象外です。
  • 老人ホーム入所後に実家を貸していたケース——入所自体は問題なくても、空いた実家を賃貸に出していた場合は「居住用」として扱えなくなることがあります(貸付事業用として別区分の検討になる場合があります)。

また、二世帯住宅の構造(区分所有登記の有無)や、敷地の一部を店舗・駐車場に使っていた場合など、判定が細かく分かれる論点も多くあります。判断に迷う場合は、自己判断で申告せず、相続税に詳しい税理士に相談してください。要件の判定を誤ると、追徴課税につながるおそれがあります。

実家じまいを予定している場合の進め方

実家を相続したあと、住む予定がなく売却(実家じまい)を考えている場合は、特例の要件と売却のタイミングの整理が重要になります。ポイントは次の3つです。

第一に、同居親族・家なき子として特例を使うなら、売却は相続税の申告期限(10か月)を過ぎてからにします。申告期限前に売ってしまうと保有継続要件を満たさなくなり、数百万円単位の減額を失うことがあります。逆に配偶者が相続する場合はこの要件がないため、売却時期の自由度は高くなります。

第二に、売却時には相続税とは別に、譲渡所得税の検討が必要です。昭和56年5月31日以前に建築された実家を相続し、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに一定の要件を満たして売却する場合、譲渡所得から最高3,000万円(令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合は2,000万円)を控除できる、いわゆる空き家特例があります(出典:国税庁タックスアンサー No.3306)。小規模宅地等の特例は「相続税」、空き家特例は「売却時の譲渡所得税」と、対象となる税金が異なる別の制度です。それぞれの期限を整理して、申告期限後〜3年以内の売却スケジュールを組むのが、両方を視野に入れた基本の進め方になります。

第三に、売却するにも解体するにも、その前に相続登記と家財の片付けが必要です。名義が親のままでは売却できませんし、前述のとおり相続登記は3年以内の申請が義務です。手続きの流れは相続登記のご案内を、そもそも「売る・貸す・残す・解体する」のどれが得かを整理したい方は、無料の実家まるごと診断をご利用ください。税金の特例が使える見込みも含めて、ご実家の状況を中立に整理したうえで、遺品整理から売却のご紹介まで一つの窓口で進められます。

よくある質問

小規模宅地等の特例を使うと、相続税そのものが8割安くなるのですか?
税額が8割減るのではなく、実家の敷地(330㎡までの部分)の相続税評価額が80%減額される制度です。土地は相続財産の中で大きな割合を占めることが多いため、結果として税額が大幅に下がったり、基礎控除の範囲に収まって税額が0円になったりするケースはよくあります。実際にどれだけ下がるかは、財産全体の構成によって変わります。
特例を使って相続税が0円になる場合でも申告は必要ですか?
必要です。この特例は、相続税の申告書に適用を受ける旨を記載し、計算明細書や遺産分割協議書の写しなどを添付して申告することが要件とされています。申告期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。申告をしないと特例の適用が受けられないため、税額0円でも必ず申告してください。
親と同居していなかった子でも特例を使えますか?
一定の要件をすべて満たせば使えます。いわゆる「家なき子」の扱いで、被相続人に配偶者や同居の法定相続人がいないこと、相続開始前3年以内に自分・配偶者・三親等内の親族などが所有する家に住んだことがないこと、今住んでいる家を過去に所有したことがないこと、申告期限まで実家の敷地を保有することなどが条件です。持ち家に住んでいる子は対象外になります。
実家を売る予定でも特例は使えますか?
誰が相続するかによります。同居親族や別居親族(家なき子)が特例を使う場合は、相続税の申告期限(10か月)まで実家の敷地を保有し続ける要件があるため、売却は申告期限後にする必要があります。配偶者が相続する場合は保有継続の要件がありません。また、売却時の譲渡所得については、要件を満たせば最高3,000万円を控除できる空き家特例という別の制度もあるため、売却スケジュールは両方の期限を踏まえて組むことをおすすめします。
親が老人ホームに入ったまま亡くなった場合、空き家だった実家にも特例は使えますか?
使える場合があります。被相続人が要介護認定・要支援認定または障害支援区分の認定を受けて、特別養護老人ホームや有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などに入所していた場合は、入所前に住んでいた実家の敷地を居住用として扱えます。ただし、入所後にその家を他人に貸したり事業に使ったりしていた場合は対象外になることがあるため、施設入所後の実家の使い方には注意が必要です。
実家の敷地が330㎡を超えている場合はどうなりますか?
特例が使えなくなるわけではありません。330㎡までの部分だけが80%減額の対象になり、超えた部分は通常の評価額のまま課税されます。たとえば400㎡・評価額6,000万円の敷地なら、6,000万円×(330㎡÷400㎡)×80%=3,960万円が減額され、評価額は2,040万円になります。広い敷地でも適用のメリットは大きいため、面積を理由にあきらめる必要はありません。

まとめ

小規模宅地等の特例は、実家の相続で使える減額制度の中でも効果がとくに大きく、使えるかどうかで納税額が数百万円変わることもある制度です。要点を振り返ります。

  • 実家の敷地(特定居住用宅地等)は330㎡まで相続税評価額が80%減額される。減るのは税額ではなく評価額
  • 配偶者は無条件で適用可。同居親族は「申告期限まで居住・保有」、別居親族は「家なき子」の6要件が条件
  • 親が要介護認定などを受けて老人ホームに入所していた場合も、要件を満たせば適用できる
  • 税額が0円になる場合でも、10か月の申告期限内に相続税の申告が必要
  • 同居親族・家なき子は申告期限前に売却すると適用できない。実家じまいは申告期限後に進める
  • 売却時は空き家特例(譲渡所得の3,000万円控除)、名義変更は相続登記の3年以内申請義務もあわせて確認する

この記事の計算例は制度の仕組みを理解するための簡略版です。実際の適用可否や税額は、家族構成・財産の全体像・土地の使われ方によって変わるため、申告の際は相続税に詳しい税理士に相談してください。相続登記や実家の処分の段取りも含めて全体像を整理したい方は、実家の名義変更手続きの記事や、無料の実家まるごと診断もあわせてご活用ください。

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この記事を書いた人

安心実家じまい事務局です。実家の片付けや遺品整理、空き家になった家の処分について、はじめての方にも分かるように記事を書いています。提携している現場の業者や司法書士と一緒に、費用の相場・自治体のごみ出しルール・補助金といった、調べてもなかなか分かりにくいところを一つずつ確かめながらまとめています。「誰に頼めばいいか分からない」という段階のご相談も、LINEやお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。

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