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空き家の3,000万円特別控除(相続空き家特例)とは?要件・必要書類・税額シミュレーション【2027年12月期限】

最終更新日:2026年9月12日|監修:司法書士・行政書士 久留慎一郎先生・安心実家じまい事務局

司法書士・行政書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 不動産の名義変更
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理

この記事の結論

  • 相続した実家(空き家)を売ったとき、要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。譲渡所得3,000万円なら税額約609万円がゼロになる計算です(相続人3人以上の場合は最高2,000万円)。
  • 対象になるのは昭和56年5月31日以前に建築された家屋で、相続直前に被相続人(亡くなった方)が一人で住んでいたことなどが条件。マンションなど区分所有建物は対象外です。
  • 売却期限は二重にあります。相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ制度自体の期限である令和9年(2027年)12月31日までの譲渡が対象です。
  • 適用には市区町村の「被相続人居住用家屋等確認書」の取得と確定申告が必須。家財が残ったままでは売却も解体も進められないため、遺品整理から逆算した段取りが重要です。
目次

空き家の3,000万円特別控除(相続空き家特例)とは

空き家の3,000万円特別控除とは、相続または遺贈によって取得した被相続人の自宅(空き家)やその敷地を売却したとき、一定の要件を満たせば譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除できる制度です。正式には「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といい、通称「相続空き家特例」「空き家特例」と呼ばれます。根拠は租税特別措置法35条で、制度の詳細は国税庁タックスアンサーNo.3306で公表されています。

不動産を売って利益(譲渡所得)が出ると、通常は所得税・住民税がかかります。所有期間5年超の長期譲渡所得の場合、税率は所得税15%+住民税5%で、さらに令和19年までは復興特別所得税(所得税額の2.1%)が加わるため、合計で約20.315%です(国税庁タックスアンサーNo.3208)。相続した不動産の所有期間は被相続人の取得時から通算されるため、親が長年住んだ実家はほとんどの場合この長期譲渡に該当します。

ここで効いてくるのが3,000万円の特別控除です。たとえば譲渡所得が3,000万円だった場合、特例がなければ約609万円(3,000万円×20.315%)の税負担ですが、特例が適用できれば課税対象がゼロになり、税額もゼロになります。実家の売却では取得費(親が買ったときの価格)が分からないケースが多く、その場合は売却代金の5%しか取得費にできないため(概算取得費)、譲渡所得が大きく計算されがちです。だからこそ、この特例が使えるかどうかで手取りが数百万円単位で変わります。

対象となる譲渡の期間は、平成28年4月1日から令和9年(2027年)12月31日までです。また、令和6年1月1日以後の譲渡では、対象の家屋・敷地を相続または遺贈により取得した相続人が3人以上いる場合、控除額の上限は一人あたり2,000万円に引き下げられています。きょうだいが多い場合は控除枠が変わる点に注意してください。

適用要件を3つのブロックで整理【セルフチェックリスト】

この特例は節税効果が大きい分、要件が細かく定められています。「家屋の要件」「売り方の要件」「取引の要件」の3ブロックに分けて確認すると整理しやすくなります。まずは以下のチェックリストで、ご自身のケースが当てはまりそうか確認してください。印刷して、売却の打ち合わせや税務署・税理士への相談時にお使いいただけます。

ブロック チェック項目 確認のポイント
家屋の要件 □ 昭和56年5月31日以前に建築された家屋か 登記事項証明書の「新築年月日」で確認。旧耐震基準の建物が対象
□ 区分所有建物登記がされていないか 分譲マンションは対象外。二世帯住宅も区分所有登記があると対象外
□ 相続開始の直前、被相続人が一人で住んでいたか 同居人がいた場合は対象外。老人ホーム入所中の場合は別要件あり(後述)
□ 相続から売却まで空き家のままか 事業用・貸付用・居住用に使った時点で対象外
売り方の要件 □ 耐震リフォームをして家屋ごと売る、または 譲渡時に一定の耐震基準を満たすこと。耐震基準適合証明書等が必要
□ 家屋を全部取り壊して敷地だけを売る、または 取壊しから譲渡まで建物等の敷地に使っていないこと
□ 売却後、翌年2月15日までに買主側で耐震改修か取壊しを行う 令和6年1月1日以後の譲渡から認められた方式。現況のまま引き渡せる
取引の要件 □ 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却か 例:2024年6月相続開始なら2027年12月31日まで
□ 令和9年(2027年)12月31日までの売却か 制度自体の適用期限。3年ルールと両方を満たす必要がある
□ 売却代金は1億円以下か 分割売却分・他の相続人の売却分も合算して判定
□ 親子・夫婦など特別の関係がある人への売却ではないか 生計を一にする親族、同族法人などへの売却は対象外
□ 取得費加算の特例など他の特例を受けていないか 同じ資産について併用不可。どちらが有利か試算して選択する

特につまずきやすいのは「昭和56年5月31日以前の建築」と「区分所有建物でないこと」の2点です。昭和56年6月以降に建てられた実家や、分譲マンションの相続では、そもそもこの特例は使えません。一方、要件を満たす戸建ての実家であれば、空き家のまま維持してきた期間が長くても、相続から3年ルールと制度期限に間に合えば適用の可能性があります。

売り方3パターンの比較——どれを選ぶかで費用と段取りが変わる

売り方の要件は3パターンあり、どれを選ぶかで売主が負担する費用も、用意する書類も変わります。それぞれの特徴を比較表で整理します。

売り方 売主側の主な費用 向いているケース 注意点
①耐震改修して家屋ごと売る 耐震診断・耐震改修工事の費用 建物の状態が良く、リフォーム前提の買い手が見込める場合 旧耐震の建物を現行基準に適合させる工事は費用が大きくなりやすい。譲渡日前2年以内の調査による耐震基準適合証明書等が必要
②取り壊して敷地だけを売る 解体費用(譲渡費用に算入可) 建物の老朽化が進んでいる場合。更地は買い手がつきやすい 取壊しから引き渡しまでの間、駐車場など建物・構築物の敷地に使うと対象外になる。固定資産税の住宅用地特例が外れる時期にも注意
③現況のまま売り、買主が翌年2月15日までに耐震改修または取壊しを行う 原則なし(解体・改修は買主負担) 売主が解体費用を立て替えたくない場合。遠方で工事の管理が難しい場合 令和6年1月1日以後の譲渡のみ。譲渡年の翌年2月15日までに実施される必要があり、契約書への明記と、実施を証明する書類(耐震基準適合証明書または取壊し後の閉鎖事項証明書等)の入手が必要

実務では、老朽化した実家は②の更地売却が最も一般的でしたが、③の買主側対応方式が使えるようになってからは、売主が先行して解体費用を負担せずに済む選択肢として広がっています。ただし③は、買主が期限内に工事を実施しなかった場合に特例を受けられなくなるリスクを売主側が負う構造です。売買契約書に実施義務と期限、書類の交付義務を明記しておくことが欠かせません。不動産会社と税理士の双方に、この方式を使う前提であることを最初に伝えておくとスムーズです。

「3年ルール」と「制度期限」は両方カウントする

期限の考え方は間違いやすいポイントです。第一に、相続開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。たとえば2024年10月に相続が開始した場合、3年を経過する日は2027年10月で、その年の12月31日、つまり2027年12月31日が期限です。第二に、制度そのものの期限が令和9年(2027年)12月31日と定められています。2026年に相続が開始したケースでは、3年ルール上は2029年まで余裕があるように見えても、現行制度の期限である2027年12月31日までに売却しなければ適用できません。相続から時間が経っている方も、これから相続を迎える方も、逆算での段取りが必要です。

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いくら安くなる?ケース別の税額シミュレーション

特例の効果を具体的な数字で確認します。譲渡所得の計算式は「譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額」です。取得費が分からない場合は譲渡価額の5%(概算取得費)で計算します。建物の取壊し費用や仲介手数料は譲渡費用に含められます(国税庁タックスアンサーNo.3208)。税率は長期譲渡所得の合計約20.315%(所得税15%+復興特別所得税+住民税5%)で試算しています。

ケース 前提 特例なしの税額 特例ありの税額 差額
A:敷地2,500万円で売却 取得費不明(概算取得費125万円)、取壊し費用等の譲渡費用250万円 約431万円 0円 約431万円
B:敷地5,000万円で売却 取得費不明(概算取得費250万円)、譲渡費用300万円 約904万円 約294万円 約609万円
C:相続人2人で共有、合計4,000万円で売却 取得費不明(概算取得費200万円)、譲渡費用300万円、各人が特例適用 約711万円(2人合計) 0円 約711万円

ケースA:実家を取り壊して敷地を2,500万円で売却

親が数十年前に取得した実家で購入時の資料が残っておらず、取得費は概算取得費の125万円(2,500万円×5%)を使います。解体費用や仲介手数料などの譲渡費用が250万円かかったとすると、譲渡所得は2,500万円-125万円-250万円=2,125万円。特例がなければ税額は約431万円(2,125万円×20.315%)ですが、特例を適用すれば2,125万円から3,000万円を控除して課税所得はゼロ。税額もゼロになります。

ケースB:立地が良く5,000万円で売却できた場合

譲渡所得は5,000万円-250万円-300万円=4,450万円。特例なしなら税額約904万円のところ、3,000万円控除後の課税所得は1,450万円となり、税額は約294万円。差額は約609万円です。売却額が大きいほど控除しきれない部分は残りますが、それでも効果は数百万円規模になります。

ケースC:きょうだい2人で相続し共有のまま売却

相続人が2人の場合、控除は一人あたり最高3,000万円ずつ使えます。合計4,000万円で売却し、譲渡所得が2人合計で3,500万円(一人あたり1,750万円)だった場合、それぞれが特例を適用すれば両者とも課税所得ゼロ。特例なしの税額約711万円がまるごとゼロになります。ただし前述のとおり、相続人が3人以上の場合は一人あたりの上限が2,000万円に下がります。また、売却代金1億円以下の判定は全員の売却分を合算して行う点にも注意してください。

取得費の資料が残っているかで結果が大きく変わる

シミュレーションの前提とした「概算取得費5%」は、あくまで購入時の資料が見つからない場合の最後の手段です。親が実家を購入したときの売買契約書や領収書が見つかれば、実額を取得費にでき、譲渡所得そのものを圧縮できます(建物部分は減価償却費相当額を差し引いて計算します)。特に都市部で地価が上がった実家では、実額取得費と概算取得費で課税所得が数千万円変わることもあります。遺品整理の際には、権利証や登記関係書類とあわせて、購入時の契約書・住宅ローンの資料・増改築の領収書を必ず探し、処分せずに保管してください。

マイホーム特例(3,000万円控除)との違い

よく似た名前の制度に「マイホームを売ったときの3,000万円特別控除」(居住用財産の特例)があります。こちらは自分が住んでいた家を売るときの制度で、空き家特例とは対象がまったく別です。親の家に自分も同居していて相続後に売る場合はマイホーム特例側の検討になり、空き家特例は「相続直前に親が一人で住んでいた家」が対象という整理です。どちらに当てはまるかで要件も書類も変わるため、入口で取り違えないようにしてください。

なお、これらはあくまで前提を単純化した試算です。実際の税額は取得費の資料の有無、譲渡費用の範囲、他の所得との関係などで変わります。具体的な金額の判断は税理士または税務署に確認してください。

手続きの流れと必要書類

この特例は、確定申告をして初めて適用されます。申告を忘れると、要件をすべて満たしていても控除は受けられません。全体の流れは次のとおりです。

ステップ やること ポイント
1. 相続登記 実家の名義を相続人に変更する 名義変更をしないと売却できない。相続登記は現在義務化されている
2. 遺品整理・家財の搬出 家の中を空にする 家財が残ったままでは解体も引き渡しもできない
3. 売り方の決定 耐震改修して売るか、取り壊して売るか、現況で売って買主側で対応するかを決める 費用と買い手のつきやすさを比較して判断
4. 売却(媒介契約・売買契約・引き渡し) 不動産会社を通じて売却する 親族など特別の関係がある人への売却は特例対象外
5. 被相続人居住用家屋等確認書の申請 物件所在地の市区町村に申請する 交付まで日数がかかるため確定申告期に余裕をもって申請
6. 確定申告 売却した年の翌年2月16日〜3月15日に申告する 必要書類を添付。申告しなければ特例は適用されない

ステップ1の相続登記は2024年4月から義務化されており、正当な理由なく放置すると過料の対象になり得ます。売却の前提にもなるため、まだの方は早めに済ませてください。手続きの詳細は相続登記の義務化と手続きの解説ページ相続登記の義務化とは|期限・過料・実家を相続したらやることにまとめています。

確定申告に添付する主な書類

売り方によって添付書類が変わります。国税庁タックスアンサーNo.3306に基づく主な書類は次のとおりです。

書類 入手先 備考
譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書) 税務署・国税庁サイト 土地・建物用
売った資産の登記事項証明書等 法務局 相続取得・昭和56年5月31日以前建築・非区分所有の確認用。不動産番号の記載で添付省略も可
被相続人居住用家屋等確認書 物件所在地の市区町村 被相続人が一人で居住していたこと等を市区町村長が確認した書類
耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し 建築士・指定確認検査機関等 家屋ごと売る場合。譲渡日前2年以内の調査によるもの
売買契約書の写し等 手元の契約書類 売却代金が1億円以下であることを示す

このうち「被相続人居住用家屋等確認書」は、この特例に固有の書類です。申請には被相続人の住民票の除票や電気・ガスの閉栓証明など、空き家であったことを示す資料の提出を求められるのが一般的で、市区町村によって必要書類が異なります。国土交通省が制度の概要と様式を公表しているので(空き家の発生を抑制するための特例措置)、あわせて物件所在地の市区町村の案内を確認してください。

老人ホームに入所していた場合も対象になり得る

「亡くなる前は施設に入っていて、実家は空き家だった」というケースは非常に多くあります。この場合も、一定の要件を満たせば特例の対象になります。具体的には、被相続人が要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所したこと(特定事由)、入所から相続開始の直前まで実家が物品の保管などに使われていたこと、その間に事業用・貸付用・他人の居住用に使われていないこと、などの要件が定められています(詳細は国税庁タックスアンサーNo.3307)。

ポイントは「要介護認定等を受けてからの入所」であることと、入所後の実家を貸したり誰かが住んだりしていないことです。たとえば入所後に実家を賃貸に出していた場合は対象外になります。逆に、家具や荷物を置いたままにしていた通常の空き家状態であれば、要件を満たす可能性が高いといえます。施設入所のタイミングや要介護認定の時期が微妙なケースは、確認書を申請する市区町村や税務署に早めに相談してください。

老人ホーム入所ケースでは、確認書の申請時に確認される事項も増えます。国税庁タックスアンサーNo.3306によれば、特定事由により入所したこと、入所から相続開始の直前まで実家が物品の保管その他の用に供されていたこと、その間に事業用・貸付用・被相続人以外の者の居住用に使われていないこと、被相続人の居住用家屋が2つ以上ある場合には老人ホーム等が主たる居住用家屋であったこと、などを市区町村長が確認します。介護保険の被保険者証や施設の入所契約書など、通常のケースより多くの資料が求められるのが一般的です。施設入所の経緯が分かる書類は、遺品整理の際に処分せず残しておいてください。

適用できない・失敗しやすいケース7つ

要件の裏返しになりますが、実際の相談で「使えると思っていたのに使えなかった」となりやすいパターンを整理します。売却の進め方を決める前に確認しておくと、数百万円の差を防げます。

  • 相続後に賃貸へ出してしまった——相続から譲渡までの間に一度でも貸付けの用に供すると対象外です。「売れるまでの間だけ貸す」は特例を失う典型パターンです。
  • 相続人や親族が住んでしまった——居住の用に供した場合も同様に対象外です。片付けのための短期滞在と居住の線引きが不安な場合は事前に税務署へ確認してください。
  • 分譲マンションだった——区分所有建物登記がされている建物は建築年にかかわらず対象外です。
  • 親と同居している家族がいた——相続開始の直前に被相続人以外の居住者がいた場合は対象外です(老人ホーム入所の特則を除く)。
  • 取壊し前に更地の一部を駐車場などに使った——取壊しから譲渡までの間に建物や構築物の敷地に使うと対象外になります。
  • 売却代金の合計が1億円を超えた——分割して売った場合や他の相続人が売った分も合算されます。適用後に合計が1億円を超えたときは、超えた日から4か月以内に修正申告と納税が必要です。
  • 取得費加算の特例とどちらが有利か検討しなかった——相続税を納めた人は、相続税額の一部を取得費に加算できる特例(国税庁タックスアンサーNo.3267)もありますが、同じ資産について空き家特例との併用はできません。多額の相続税を納めている場合は、どちらが有利か試算してから選ぶ必要があります。

1億円判定の落とし穴——分割売却・共有売却は合算される

売却代金1億円以下の判定は、単独の取引だけで見ないのが重要なポイントです。広い敷地を2回に分けて売った場合や、共有する他の相続人が自分の持分を別に売った場合でも、相続の時から特例適用後3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却分がすべて合算されます。最初の売却時点では合計1億円以下で特例を受けていても、その後の売却で合計が1億円を超えると、超えた日から4か月以内に修正申告と納税が必要になります。都市部の広い実家や、相続人ごとに売却時期がずれる可能性がある場合は、売り出し前に全体の売却計画と想定金額をきょうだい間で共有しておいてください。

いずれも「知らずにやってしまった」が起きやすい項目です。特に賃貸活用は、空き家の維持費を考えると魅力的に見えますが、この特例との関係では慎重な判断が必要です。売却・賃貸・保有・解体のどれが得かは、実家まるごと診断(無料)で中立に整理できますので、方針を決める前にご活用ください。

特例から逆算する実家じまいの段取り

そもそもこの特例は、放置される空き家を減らすために設けられた制度です。旧耐震基準の空き家を放置すると、倒壊や景観悪化のおそれから自治体に「特定空家」と指定され、固定資産税の住宅用地特例が外れて税負担が最大6倍相当になったり、行政代執行に至ったりするリスクもあります(詳しくは特定空家に指定されるとどうなる?)。つまり、要件を満たす実家を空き家のまま持ち続けることは、特例の期限を失うだけでなく、保有コストとリスクを積み増すことにもなります。「売る」と決めたら期限内に動き切ることが、税制面でも管理面でも合理的です。

この特例を使う前提で実家じまいを進める場合、期限から逆算した段取りが重要になります。相続開始から3年ルールと制度期限(令和9年12月31日)の両方に間に合わせるには、「遺品整理→(必要なら)解体→売却→確認書申請→確定申告」という工程を、余裕をもって進める必要があります。

最初の関門は遺品整理です。家財が残ったままでは、耐震改修も取壊しもできず、内見にも支障が出ます。実家一軒分の家財の仕分け・搬出は、ご自身でやると数か月かかることも珍しくありません。取壊して売る方針の場合、解体費用は譲渡費用として譲渡所得の計算上差し引けるため、見積書や領収書は必ず保管してください。仏壇や位牌など供養が必要な物の扱い、貴重品の捜索(権利証・通帳・登記関係書類は売却手続きでも使います)も、遺品整理の段階で済ませておくと後の工程がスムーズです。

また、売り方の選択は費用対効果で変わります。旧耐震の家屋を耐震改修して売るには相応の工事費がかかるため、実務では取壊して更地で売るか、令和6年から認められた「現況で売って買主側が翌年2月15日までに耐震改修または取壊しをする」方式が使われることが増えています。買主側方式なら売主が解体費用を立て替える必要がありませんが、契約でその旨を明確にし、期限内に実施されたことを示す書類が必要になる点に注意してください。解体するか現況で売るかの判断材料は実家は売却と解体どちらが得か|判断基準と費用シミュレーションで詳しく解説しています。

モデルスケジュール——相続発生から確定申告まで

取壊して更地で売るケースを例に、相続発生からのモデルスケジュールを示します。実際の期間は物件や地域の不動産市況によって前後しますが、「気づいたら期限が近い」を防ぐ目安としてお使いください。

時期の目安 やること 特例との関係
相続発生〜3か月 遺言書の確認、相続人の確定、相続放棄の要否判断 相続放棄には家庭裁判所への申述期限(原則3か月)がある
〜10か月 遺産分割協議、相続税の申告・納付(課税される場合) 相続税を納めた場合は取得費加算特例との有利判定の材料になる
〜1年前後 相続登記、遺品整理・家財搬出、購入時資料の捜索 登記事項証明書で建築年月日と登記の種類を確認し、特例の入口判定をする
〜1年半 不動産会社への査定依頼、売り方(更地か現況か)の決定、解体工事 解体費用の見積書・領収書は譲渡費用の証拠として保管
〜2年半 売却活動、売買契約、引き渡し 3年ルールと令和9年12月31日の制度期限の両方に収める
売却の翌年1月〜2月 市区町村へ被相続人居住用家屋等確認書を申請・取得 交付まで日数がかかるため申告期限から逆算して申請
売却の翌年2月16日〜3月15日 確定申告 申告して初めて特例が適用される

このスケジュールで最も見落とされやすいのが、最後の確認書申請です。売却が終わって安心してしまい、確定申告の直前に確認書の存在に気づくケースがあります。申請には除票住民票や売買契約書の写しなどの提出が必要で、市区町村での審査にも時間がかかるため、引き渡しが済んだら年内のうちに申請準備を始めることをおすすめします。

安心実家じまいでは、遺品整理・家財の搬出から、提携司法書士による相続登記のサポート、解体・売却の段取りまでを一つの窓口でご相談いただけます。遠方にお住まいで立ち会いが難しい場合の進め方もご案内できますので、期限が気になる方はお早めにご相談ください。

よくある質問

相続した実家がマンションの場合も3,000万円特別控除は使えますか?
区分所有建物登記がされている建物は対象外のため、分譲マンションには使えません。この特例の対象は、昭和56年5月31日以前に建築された戸建てなどの家屋とその敷地に限られます。マンションの場合は、取得費加算の特例など他の制度が使えないか、税理士や税務署に確認してください。
きょうだい3人で相続した場合、控除額はどうなりますか?
令和6年1月1日以後の譲渡では、対象の家屋・敷地を相続または遺贈により取得した相続人が3人以上の場合、控除の上限は一人あたり2,000万円になります。2人までなら一人あたり最高3,000万円です。なお、売却代金1億円以下の判定は相続人全員の売却分を合算して行います。
売れるまでの間、実家を賃貸に出してもいいですか?
賃貸に出すと特例は使えなくなります。相続の時から譲渡の時まで、事業の用・貸付けの用・居住の用に供されていないことが要件のためです。一時的な賃貸でも対象外になるため、特例の適用を予定している場合は空き家のまま管理し、売却を進めることをおすすめします。
被相続人居住用家屋等確認書はどこでもらえますか?
売った物件の所在地を管轄する市区町村に申請して交付を受けます。被相続人が一人で住んでいたこと、相続後に貸したり住んだりしていないことなどを市区町村長が確認した書類で、確定申告の添付書類になります。申請には住民票の除票などの資料が必要で、交付まで日数がかかるため、確定申告の期限から逆算して早めに申請してください。
いつまでに売却すれば特例が使えますか?
期限は二つあります。相続開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、そして現行制度の適用期限である令和9年(2027年)12月31日までに売ることです。両方を満たす必要があるため、相続からの経過年数にかかわらず、現行制度では2027年12月31日が最終期限になります。
実家の解体費用は税金の計算でどう扱われますか?
土地を売るために建物を取り壊した場合の取壊し費用は、譲渡費用として譲渡所得の計算上差し引くことができます。仲介手数料や測量費、売買契約書の印紙代なども同様です。見積書や領収書は確定申告まで必ず保管してください。なお、解体には自治体の補助金が使える場合もあり、当サイトの補助金一覧記事で紹介しています。
きょうだいで共有のまま売った場合、申告は誰がしますか?
共有者それぞれが自分の持分に応じた譲渡所得を計算し、各自で確定申告を行います。特例の要件を満たせば、それぞれが自分の申告で控除を適用できます。被相続人居住用家屋等確認書などの添付書類も各自の申告に必要になるため、書類の写しの共有や申告時期のすり合わせを事前にしておくとスムーズです。

まとめ

空き家の3,000万円特別控除(相続空き家特例)は、相続した実家の売却で税負担を数百万円単位で減らせる可能性のある制度です。その分、要件と期限の管理が結果を左右します。要点を振り返ります。

  • 譲渡所得から最高3,000万円を控除できる(相続人3人以上の場合は一人2,000万円)
  • 対象は昭和56年5月31日以前建築・非区分所有の家屋で、被相続人が相続直前に一人で住んでいたこと(老人ホーム入所の特則あり)
  • 相続から譲渡まで空き家のまま維持することが必須。賃貸・居住は一度でも対象外
  • 売り方は「耐震改修して売る」「取り壊して売る」「現況で売って買主側が翌年2月15日までに対応」の3通り
  • 期限は「相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日」と「令和9年(2027年)12月31日」の両方
  • 市区町村の被相続人居住用家屋等確認書を取得し、確定申告をして初めて適用される
  • 取得費加算の特例とは併用不可。相続税を納めた人はどちらが有利か試算する

2026年に実家を相続した方、これから相続を控えている方にとって、現行制度の期限である2027年12月31日は決して遠い日付ではありません。遺品整理に数か月、売却活動に半年から1年かかることを踏まえると、1年半前には動き出しておきたいところです。要件に当てはまりそうであれば、まず登記事項証明書の取得と遺品整理の見積もりから始めてみてください。

特例が使えるかどうかの入口の確認は、登記事項証明書の建築年月日と登記の種類を見るところから始まります。名義変更がまだの場合は相続登記のページを、売却・解体・保有の方針に迷っている場合は実家まるごと診断(無料)をご覧ください。税額の具体的な計算や申告の要否は、税理士または税務署への確認をおすすめします。

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安心実家じまい事務局です。実家の片付けや遺品整理、空き家になった家の処分について、はじめての方にも分かるように記事を書いています。提携している現場の業者や司法書士と一緒に、費用の相場・自治体のごみ出しルール・補助金といった、調べてもなかなか分かりにくいところを一つずつ確かめながらまとめています。「誰に頼めばいいか分からない」という段階のご相談も、LINEやお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。

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