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準確定申告とは|必要なケース・期限4か月・やり方

最終更新日:2026年8月6日|監修:司法書士・行政書士 久留慎一郎先生・安心実家じまい事務局

司法書士・行政書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 不動産の名義変更
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理

この記事の結論

  • 準確定申告は、亡くなった人に代わって相続人が行う確定申告で、対象期間は1月1日から死亡した日までです。
  • 期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内。通常の確定申告のような固定日ではなく、相続人ごとの起算日で数えます。
  • 必要になるのは、生前に事業所得・不動産所得があった人、給与2,000万円超の人、給与所得者で副収入20万円超の人、公的年金400万円超の人など、もともと確定申告が必要だった(必要になるはずだった)人です。死亡保険金・死亡退職金はみなし相続財産として扱われ、原則として対象に含めません。
  • 相続人が複数いる場合は連署または各別提出+通知が必要で、提出先は被相続人の死亡当時の納税地を管轄する税務署です。
  • 期限を過ぎると延滞税・無申告加算税の対象になり得ますが、具体的な税額計算や控除の適用判断は税理士の領域です。この記事は司法書士監修のもと制度の全体像を整理したもので、個別の申告内容は税理士にご確認ください。
目次

準確定申告とは何か

所得税は本来、1月1日から12月31日までの1年間の所得を計算し、翌年2月16日から3月15日までの間に本人が申告・納税するものです。しかし年の途中で亡くなった場合、本人はもう申告できません。そこで相続人等(遺言によって財産を受け取る包括受遺者を含みます)が代わりに、1月1日から死亡した日までに確定した所得金額と税額を計算し、申告・納税を行います。これが準確定申告です(国税庁タックスアンサーNo.2022「納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」より)。

「準」という字がついていますが、簡易な手続きという意味ではありません。申告書の様式自体は通常の確定申告書とほぼ同じで、対象期間が死亡日までに区切られる点と、申告する人が本人ではなく相続人になる点が異なります。実家の相続や片付けを検討し始めた段階で、この手続きの存在を知らずに時間が過ぎてしまう相続人は少なくありません。相続税の申告期限(10か月)はよく知られていますが、準確定申告の4か月という期限は見落とされやすい期日です。

通常の確定申告との違い

準確定申告と、生前に本人が行う通常の確定申告の違いを整理すると、次のとおりです。

項目 通常の確定申告 準確定申告
申告する人 納税者本人 相続人等(包括受遺者を含む)
対象期間 1月1日〜12月31日 1月1日〜死亡した日
申告期限 原則、翌年3月15日 相続の開始を知った日の翌日から4か月以内
提出先の税務署 本人の納税地の所轄税務署 被相続人の死亡当時の納税地の所轄税務署
添付書類の特徴 各種控除証明書など 上記に加え、相続人全員の氏名・住所・続柄等を記載した付表が必要
振替納税 事前登録した口座から自動引落しが可能 被相続人名義の振替納税契約は本人の死亡で終了するため、通常は利用できない

納税の方法についても注意が必要です。生前に振替納税を利用していた場合でも、その契約は本人限りのものです。準確定申告分の税額は、金融機関の窓口納付やダイレクト納付、クレジットカード納付などで、相続人があらためて手続きする必要があります。

所得税だけでなく消費税にも「死亡した場合の申告」がある

被相続人が個人事業主で消費税の課税事業者だった場合、所得税の準確定申告とは別に、消費税及び地方消費税についても相続人が代わって申告する仕組みがあります。この場合の申告期限も、所得税の準確定申告と同じく相続の開始を知った日の翌日から4か月以内です。事業用の実家で店舗や事務所を営んでいた、賃貸経営の規模が大きく消費税の課税事業者になっていたといったケースでは、所得税だけでなく消費税の要否もあわせて税理士に確認してください。

準確定申告が必要なケース・不要なケース

準確定申告が必要かどうかの基本的な考え方は「生前にその年分の確定申告が必要だった人、あるいは必要になるはずだった人」です。国税庁の基準(タックスアンサーNo.2020「確定申告」ほか)をもとに、代表的なケースを整理すると次のとおりです。

被相続人の生前の状況 準確定申告の要否の考え方
個人事業を営んでいた(事業所得がある) 原則、必要
賃貸アパート・駐車場などの不動産所得があった 原則、必要
給与収入が2,000万円を超えていた 必要
給与所得者で、給与・退職所得以外の所得(副業・雑所得など)が死亡日までに20万円を超えていた 必要
公的年金等の収入が死亡日までに400万円を超えていた、または年金以外の雑所得が20万円を超えていた 必要
土地・建物・株式等を生前に売却し、譲渡所得が生じていた 必要
給与収入のみで年末調整の対象になる範囲に収まっていた(年の途中で退職した場合を除く) 原則、不要
公的年金等の収入が400万円以下で、年金以外の所得も20万円以下だった 原則、不要

注意したいのは、この判定を1年分の金額ではなく「1月1日から死亡した日まで」の金額で行う点です。たとえば公的年金の受給者が9月に亡くなった場合、1月から9月までの受給額で400万円を超えているかどうかを見ます。年間ベースでは超えていなくても、月割りの実額で判断が変わることがあるため、源泉徴収票や振込明細で死亡日までの実際の受取額を確認してください。

死亡保険金・死亡退職金は準確定申告に含めない

被相続人が亡くなったことをきっかけに支払われる死亡保険金や死亡退職金は、「みなし相続財産」として相続税の課税対象になるものであり、原則として被相続人の所得税(準確定申告)の対象には含めません。混同しやすいのは、被相続人が生前に受け取っていた保険金です。満期保険金や解約返戻金など、死亡前に本人が受け取った一時金は一時所得として扱われ、受取額から支払った保険料の総額と特別控除額(最高50万円)を差し引いた残額がある場合は、準確定申告の対象になり得ます。「死亡後に振り込まれた保険金」と「生前に受け取った一時金」を分けて考えることが、判定を誤らないポイントです。

準確定申告の要否チェックリスト

次の項目のうち、一つでも当てはまるものがあれば、準確定申告が必要になる可能性があります。源泉徴収票や通帳、確定申告の控えを手元に用意して、一つずつ確認してみてください。

  • 亡くなった年の1月1日から死亡日までに、個人事業(自営業・フリーランス等)の収入があった
  • 亡くなった年に、賃貸物件(実家を含む)や駐車場からの家賃収入があった
  • 亡くなった年の給与収入が、死亡日までの実績で2,000万円を超えていた
  • 会社員・公務員で、給与以外の副業収入や雑所得が死亡日までに20万円を超えていた
  • 公的年金等の受給者で、死亡日までの受給額が400万円を超えていた
  • 亡くなった年に、不動産・株式・投資信託などを売却して利益(譲渡所得)が出ていた
  • 生前に満期保険金や解約返戻金を受け取り、差引額が50万円を超えていた
  • 前年分の確定申告をしないまま、翌年の申告期限(原則3月15日)を待たずに亡くなった
  • 多額の医療費を支払っていた、または住宅ローン控除・寄附金控除などの適用を受けていた(還付につながる可能性がある)

最後の項目のように、準確定申告が義務ではなくても、申告すれば源泉徴収された税金の一部が還付されるケース(還付申告)もあります。年の途中まで給与から所得税が天引きされていた人が死亡した場合、死亡日までの所得控除を反映すると納めすぎになっていることは珍しくありません。義務がないからと申告を省略してしまうと、本来戻ってくるはずの税金を相続人が受け取れないまま終わることがあるため、源泉徴収票の金額だけは早めに確認しておく価値があります。還付を受けるための申告は、確定申告の義務がない人でも、その年の翌年1月1日から5年間提出できるとされています。4か月の期限内に判断が難しい場合でも、還付申告に限っては時間をかけて検討する余地がある点は知っておいて損はありません。

還付につながりやすい代表的なパターンを挙げると、次のようなケースがあります。

ケース 還付が生じやすい理由
年の途中で退職し、その後は収入がなかった 年末調整を受けられず、給与から天引きされた税額が納めすぎのままになっている
死亡した年に多額の医療費を支払っていた 医療費控除を適用すると課税所得が下がり、納付済みの源泉徴収税額が還付される
住宅ローン控除の適用を受けていた住宅があった 控除額が所得税額を上回っていた場合、天引き分の還付につながることがある
ふるさと納税など寄附金控除の対象となる寄附をしていた 寄附金控除により課税所得が下がる

準確定申告における所得控除の考え方

準確定申告で使える所得控除にも、通常の確定申告とは異なるルールがあります。医療費控除の対象になるのは、死亡日までに被相続人自身が支払った医療費のみで、死亡後に相続人が支払った医療費や葬儀関連の費用は含められません。社会保険料控除・生命保険料控除・地震保険料控除・小規模企業共済等掛金控除も同様に、死亡日までに被相続人が支払った金額が対象です。配偶者控除や扶養控除の適用の有無は、死亡日時点の現況で判定し、1年分を月割りするような計算はしません(国税庁タックスアンサーNo.2022より)。

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準確定申告の期限は4か月|起算日と延長できない理由

準確定申告の期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内」です。多くの場合、被相続人が亡くなったことと、自分がその相続人であることを知った日が起算日になります。同居していた家族であれば死亡当日、遠方に住んでいて後日連絡を受けた相続人であれば、その連絡を受けた日が起算日になるのが一般的です。

たとえば、8月10日に死亡の連絡を受けた場合、翌日の8月11日から数えて4か月後の12月11日が期限の目安になります(実際の期日は暦の数え方や土日祝日の扱いによって前後するため、正確な期日は税務署または税理士に確認してください)。相続税の申告期限が10か月であるのに対し、準確定申告は4か月しかありません。相続税の期限だけを意識していると、準確定申告の期限を過ぎてしまうことがあるため、両方の期日を最初の段階で書き出しておくことをおすすめします。

なお、確定申告をしなければならない人が、翌年1月1日から本来の確定申告期限(原則3月15日)までの間に申告をしないまま死亡した場合、前年分・本年分のいずれについても、準確定申告の期限は同じく「相続の開始を知った日の翌日から4か月以内」です(国税庁タックスアンサーNo.2022より)。年をまたいで申告が滞っていた場合は、2年分をまとめて確認する必要が生じることもあります。

相続人が複数いる場合の連署・付表・通知義務

相続人等が2人以上いる場合、原則として各相続人が連署して1通の準確定申告書を提出します。ただし、他の相続人の氏名を付記したうえで、各人が別々に申告書を提出することも認められています。この場合、申告書を提出した相続人は、その申告した内容を他の相続人へ通知しなければならない義務があります。いずれの方法をとる場合も、相続人全員の氏名・住所・被相続人との続柄などを記載した「死亡した者の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表」の添付が必要です。相続人の中に遠方在住者や連絡が取りにくい人がいる場合は、早い段階で連絡を取り、連署か個別提出かの方針を決めておくとスムーズです。還付金の受領を代表者一人に委任する場合は、付表とは別に委任状(準確定申告書用)の提出も必要になります。

期限を過ぎるとどうなるか

正当な理由なく期限を過ぎて申告した場合、納付すべき税額に応じて無申告加算税がかかります。税務署からの調査の事前通知の前に自主的に期限後申告をした場合は、納付すべき税額の5%です。事前通知の後、調査による決定を予知する前に申告した場合は、納付すべき税額のうち50万円までの部分が10%、50万円を超え300万円までの部分が15%、300万円を超える部分が25%(令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するものに適用される税率)。税務署の調査を受けたあとに申告した場合は、50万円までの部分が15%、50万円を超え300万円までの部分が20%、300万円を超える部分が30%となります(国税庁タックスアンサーNo.2024「確定申告を忘れたとき」より)。これに加えて、納付が遅れた日数に応じた延滞税も発生します。延滞税の割合は年によって変わるため、最新の率は国税庁のウェブサイトまたは税務署で確認してください。

一方で、期限後申告であっても、法定申告期限から1か月以内に自主的に申告し、かつ期限内に納付すべき税額の全額を納めているなど一定の要件をすべて満たす場合は、無申告加算税がかからない救済もあります。期限を過ぎたことに気づいたら、放置せずすぐに動くことが、加算税を抑える最も確実な方法です。無申告加算税の税率を整理すると、次のとおりです。

申告のタイミング 50万円までの部分 50万円超300万円までの部分 300万円超の部分
調査の事前通知の前に自主的に期限後申告 一律5%
事前通知の後、調査による決定を予知する前に申告 10% 15% 25%
税務署の調査を受けたあとに申告 15% 20% 30%

(国税庁タックスアンサーNo.2024「確定申告を忘れたとき」より・令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するものに適用される税率)これに加え、納付が遅れた日数分の延滞税が別途発生します。延滞税の割合は年によって変動するため、最新の率は税務署または国税庁のウェブサイトで確認してください。

相続放棄をした場合、準確定申告の義務はどうなるか

相続放棄をした人は、民法上、はじめから相続人でなかったものとみなされます(民法939条)。そのため、有効に相続放棄が成立した人には、原則として準確定申告の義務は生じません。すでに相続放棄をしている場合、他の相続人(または次の順位の相続人)が申告を行うことになります。ただし注意したいのは、相続放棄を検討している段階で、被相続人の預金を引き出して使ったり、遺品や財産の一部を売却・処分したりすると、法定単純承認とみなされ、後から相続放棄ができなくなる可能性がある点です。準確定申告のために必要な資料(源泉徴収票や通帳の確認など)を集める行為自体は財産の処分にはあたりませんが、判断に迷う場合は、着手する前に司法書士や弁護士に相談しておくと安心です。

期限管理カレンダー:準確定申告・相続税申告・相続登記の期日を並べて確認する

実家を相続すると、期限の異なる複数の手続きが同時に動き出します。混同を避けるため、代表的な三つの期限を並べて整理しました。起算日がそれぞれ異なる点に注意してください。

手続き 起算日 期限の目安 期限を過ぎた場合
準確定申告 相続の開始があったことを知った日の翌日 4か月以内 無申告加算税・延滞税の対象になり得る
相続税の申告・納税 相続の開始があったことを知った日の翌日 10か月以内 無申告加算税・延滞税の対象になり得る
相続登記の申請 不動産の取得を知った日(施行前の相続は制度施行日) 3年以内 10万円以下の過料の対象になり得る

三つとも起算日は「相続の開始(または取得)を知った日」を基準にしていますが、猶予期間はまったく異なります。もっとも短い準確定申告の4か月を最初のマイルストーンとして意識し、そのあと相続税の申告、さらに時間をかけて相続登記へと進めていくのが実務上の流れです。相続登記の義務化については相続登記の義務化とは|期限・過料・実家を相続したらやることで詳しく解説しています。

準確定申告のやり方・必要書類・提出先

実際に準確定申告を進める場合の大まかな流れは、次の5ステップです。

  1. 死亡日までの所得を把握する——給与所得の源泉徴収票、事業所得・不動産所得であれば帳簿や通帳の記録、公的年金等の源泉徴収票などを集め、1月1日から死亡日までの収入を確定させます。
  2. 使える所得控除を確認する——死亡日までに被相続人が支払った医療費、社会保険料、生命保険料、寄附金などの控除証明書を集めます。死亡後に相続人が支払った分は対象外です。
  3. 申告書と付表を作成する——通常の確定申告書に準じた様式を使い、表題部分に「準確定申告」である旨を付記します。相続人が2人以上の場合は付表に全員の氏名・住所・続柄・相続分などを記載します。申告書の対象期間欄には「令和○年1月1日から令和○年○月○日(死亡日)まで」と記入し、住所欄・氏名欄には被相続人の情報を記載したうえで、提出する相続人の氏名も明記します。国税庁の確定申告書等作成コーナーでも、準確定申告に対応した入力ができます。
  4. 被相続人の死亡当時の納税地の税務署に提出する——窓口への持参、郵送、電子申告(e-Tax)のいずれかの方法で提出します。相続人の住所地の税務署ではなく、被相続人が生前に確定申告をしていた税務署である点に注意してください。
  5. 期限内に納税する——振替納税は通常利用できないため、金融機関の窓口納付、税務署への現金納付、ダイレクト納付、クレジットカード納付などで、期限内に納めます。還付になる場合は、指定した相続人の口座に還付金が振り込まれます。

e-Taxで提出する場合の注意点

準確定申告も、通常の確定申告と同様にe-Taxでの電子申告に対応しています。ただし、相続人が2人以上いる場合、代表相続人がまとめて電子送信する形になり、他の相続人の分の情報も含めて代表者が入力・送信する運用が基本です。マイナンバーカード方式で申告する場合は、実際に申告書を作成・送信する相続人自身のマイナンバーカードとICカードリーダライタ(またはスマートフォンの読み取り機能)を使います。相続人同士が離れて暮らしている場合、誰が代表して電子申告するかを早めに決めておくと、書類のやり取りに時間を取られずに済みます。紙の申告書を税務署の窓口に持参・郵送する方法も、これまでどおり利用できます。

必要書類の一覧

書類 入手先・作成者 備考
死亡した者の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表 国税庁ウェブサイトまたは税務署 相続人が2人以上いる場合は必須
被相続人の源泉徴収票(給与・年金) 勤務先・年金機構等 死亡日までの支払額が記載されたもの
被相続人の確定申告の控え(前年分) 被相続人の自宅・書類一式 事業所得・不動産所得がある場合は特に重要
医療費控除・社会保険料控除等の証明書 医療機関・保険会社等 死亡日までの支払い分に限る
相続人全員の戸籍謄本・住民票 市区町村窓口 相続人であることを証明する資料として
委任状(準確定申告書用) 国税庁ウェブサイトまたは税務署 還付金の受領を代表者に委任する場合のみ

ケース別の計算例

実際にどの程度の所得税がかかるのか、簡略化した例で計算の流れを示します。実際の税額は各種控除の適用状況や所得の内訳によって変わるため、正確な金額は税理士または税務署にご確認ください。所得税の速算表(累進税率)と、令和19年まで課される復興特別所得税(所得税額の2.1%)を用いた概算です。

ケース1:個人事業(自営業)を営んでいた場合
被相続人が1月1日から死亡した9月30日までに得た事業所得(収入から必要経費を差し引いた金額)が400万円、その間に支払った社会保険料や生命保険料などの所得控除の合計が80万円だったとします。

項目 金額
事業所得(死亡日まで) 400万円
所得控除の合計 80万円
課税所得金額 320万円
所得税額(速算表:330万円以下・税率10%、控除額9万7,500円) 320万円×10%−9万7,500円=22万2,500円
復興特別所得税(所得税額×2.1%) 約4,672円
納付額の目安(合計) 約22万7,172円

ケース2:年金収入と実家の家賃収入があった場合
被相続人が年金生活をしながら、実家の一部を賃貸に出していたケースです。死亡日までの公的年金等の雑所得(公的年金等控除後)が60万円、不動産所得(家賃収入から必要経費を差し引いた金額)が150万円、所得控除の合計が90万円だったとします。

項目 金額
公的年金等の雑所得 60万円
不動産所得 150万円
所得金額の合計 210万円
所得控除の合計 90万円
課税所得金額 120万円
所得税額(速算表:195万円以下・税率5%、控除額なし) 120万円×5%=6万円
復興特別所得税(所得税額×2.1%) 約1,260円
納付額の目安(合計) 約6万1,260円

この二つの例からもわかるとおり、事業所得や不動産所得がある場合は、収入額だけでなく必要経費や控除の反映のしかたで税額が大きく変わります。特に不動産所得は、実家を賃貸に出していた相続人が見落としやすいポイントです。空き家にせず賃貸経営をしていた実家がある場合は、家賃の入金記録と経費の領収書を早めに整理しておくと、申告作業がスムーズになります。

準確定申告と相続税・実家じまいとの関係

準確定申告で納めた所得税及び復興特別所得税は、被相続人が本来支払うべきだった税金です。そのため、相続税の計算では「債務控除」として、相続財産の評価額から差し引くことができます。逆に、準確定申告の結果が還付になった場合は、その還付金は相続財産の一部として相続税の課税対象に含まれます。準確定申告と相続税の申告は別々の手続きですが、金額の面ではつながっているため、準確定申告の結果を相続税申告の担当税理士へきちんと共有することが大切です。

相続人に未成年者・海外居住者・認知症の方がいる場合

相続人の中に未成年者がいる場合は、親権者が法定代理人として申告手続きを行うのが基本ですが、その親権者自身も相続人であるときは利益相反にあたるため、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる必要が生じることがあります。相続人が海外に居住している場合は、日本国内に納税管理人を定めて手続きを進める方法があります。認知症などにより判断能力が十分でない相続人がいる場合は、成年後見制度の利用を検討する必要が出てくることもあります。いずれのケースも、通常の準確定申告より時間がかかりやすいため、該当する事情に気づいた時点で早めに税理士や司法書士へ相談することをおすすめします。

実家を売却・解体する年の確定申告は別の手続き

準確定申告はあくまで「被相続人本人」の死亡日までの所得についての申告です。相続後に実家を売却して譲渡所得が生じた場合や、相続人自身が実家の家賃収入を引き継いで受け取るようになった場合は、それは相続人自身の確定申告として、翌年以降に相続人の名前で申告することになります。準確定申告を終えたことで実家に関する税務手続きがすべて完了するわけではない点は、押さえておいてください。実家の売却を検討している場合、取得費や譲渡費用の計算、各種特例の適用可否は税理士に確認することをおすすめします。

現場でよくある勘違い・注意点

実家じまいの相談を受ける中で、準確定申告に関して繰り返し見られる勘違いや注意点を紹介します。

  • 相続税の10か月だけを意識してしまう——相続税の申告期限(10か月)は広く知られていますが、準確定申告の4か月はその半分以下です。相続税の準備を優先するあまり、準確定申告の期限に気づかないまま過ぎてしまう相続人が一定数います。
  • 実家の家賃収入を「うちには関係ない」と思い込んでしまう——実家の一室や離れを賃貸に出していた、駐車場として貸していたなど、本人が意識していなかった不動産所得が後から見つかるケースがあります。通帳の入金履歴を確認すると、家賃らしき定期的な振込が見つかることがあるため、片付けの過程で通帳や賃貸借契約書が出てきた場合は保管しておいてください。
  • 相続放棄を迷っている間に遺品を処分してしまう——準確定申告に必要な書類を探すつもりが、そのまま家財の処分や形見分けまで進めてしまい、結果的に単純承認とみなされるおそれが生じる相談も見られます。放棄を迷っている場合は、書類の確認と財産の処分を明確に分けて進めることが大切です。
  • 還付申告の存在を知らずに申告をしない——義務がないからと申告自体を見送り、本来戻ってくるはずだった源泉徴収税額の還付を受け取らないまま終えてしまうケースもあります。給与や年金から税金が天引きされていた被相続人であれば、還付の可能性を一度確認する価値があります。

実家の片付けと相続登記、相続税、準確定申告は、それぞれ担当する専門家が異なりますが(片付けは実家じまいの専門業者、登記は司法書士、税務は税理士)、実際には同じ実家をめぐって同時並行で進む手続きです。片付けを始める前に、必要な手続き全体のスケジュールを一度整理しておくと、あとから慌てて動く場面を減らせます。片付けと相続登記の順序については相続登記の義務化とは|期限・過料・実家を相続したらやることを、遺産分割の考え方については実家の遺産分割の進め方をあわせてご覧ください。

誰に相談すればよいかの早見表

実家の相続に関わる手続きは窓口が分かれているため、迷ったときは次の表を目安にしてください。

相談内容 主な相談先
準確定申告の要否判定・申告書の作成・消費税の扱い 税理士(または税務署の窓口相談)
相続登記・名義変更・相続放棄の要否 司法書士
相続税の申告・財産評価・債務控除 税理士
相続人間で意見がまとまらない・調停が必要 弁護士
実家の片付け・仕分け・搬出・供養 実家じまいの専門業者(安心実家じまいなど)
実家の売却・査定 不動産会社

安心実家じまいでは、片付けや売却・解体の相談を通じて、こうした専門家への橋渡しも行っています。どこに何を相談すればよいか分からない段階でも、まずは実家の状況をお聞かせください。

税理士に依頼すべきケースと安心実家じまいのサポート範囲

準確定申告は、対象期間が短く相続人自身で完結する分だけ、自分で対応できるケースもあります。一方で、次のような事情がある場合は、税理士に依頼したほうが手続きの負担とやり直しのリスクを抑えられます。

  • 被相続人に事業所得・不動産所得があり、帳簿や経費の整理が必要な場合
  • 相続人が複数いて、連署か個別提出かの調整、他の相続人への通知が必要な場合
  • 相続税の申告とあわせて、債務控除や財産評価まで一体で確認したい場合
  • 準確定申告の期限まで時間の余裕が少なく、還付・納税どちらになるか見通しが立っていない場合
  • 消費税の課税事業者だった、複数の収入源があるなど、所得の種類が多い場合

自分で対応する場合と税理士に依頼する場合を比べると、次のような違いがあります。

自分で申告する場合 税理士に依頼する場合
向いているケース 給与・年金のみで所得の種類が少なく、控除の内容も単純な場合 事業所得・不動産所得がある、相続人が多い、期限までの時間が少ない場合
必要な時間 書類収集から申告書作成まで、数日〜数週間程度を見込む 資料を渡してからの対応が中心で、拘束時間は短くなりやすい
費用 実費(証明書の発行手数料程度) 報酬が別途発生(案件の複雑さにより数万円〜が目安)
相続税申告との連携 自分で情報を整理し、相続税申告の担当者に伝える必要がある 同じ事務所が相続税申告も担当する場合、債務控除などを一体で反映しやすい

安心実家じまいは、実家の片付けから売却・解体の手配までを一つの窓口でお受けするサービスで、相続登記など法律手続きは提携司法書士と連携して進めています。準確定申告や相続税の申告そのものは税理士の専門領域にあたるため、当事務局が税額計算や申告書の作成を代行することはありませんが、片付けと並行して必要な手続きの全体像を整理するご相談や、税理士への相談が必要な場面の見極めについては、窓口でお答えしています。実家の片付けを含めた相続手続き全体をどこから手を付ければよいか迷っている場合は、実家じまい代行サービスまでご相談ください。

よくある質問

準確定申告とは何ですか?
亡くなった人(被相続人)に代わって、相続人等が1月1日から死亡した日までの所得を計算し、所得税及び復興特別所得税の申告と納税を行う手続きです。通常の確定申告と異なり、対象期間は死亡日までに区切られ、申告する人も本人ではなく相続人になります(国税庁タックスアンサーNo.2022より)。
準確定申告はどんなケースで必要ですか?
生前に事業所得や不動産所得があった人、給与収入が2,000万円を超えていた人、給与所得者で給与・退職所得以外の所得が20万円を超えていた人、公的年金等の収入が400万円を超えていた人など、もともと確定申告が必要だった、または必要になるはずだった人が対象です。死亡保険金や死亡退職金はみなし相続財産として相続税の対象になり、原則として準確定申告には含めません。
準確定申告の期限はいつまでですか?
相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。通常の確定申告のように「翌年3月15日まで」という固定日ではなく、相続人ごとに死亡の事実を知った日を起点に数えます。期限内に確定申告をしないまま年をまたいで死亡した場合、前年分・本年分ともに同じ4か月以内が期限になります(国税庁タックスアンサーNo.2022より)。
相続人が複数いる場合、誰が準確定申告をするのですか?
相続人等が2人以上いる場合は、各相続人が連署して1通の準確定申告書を提出するのが原則です。他の相続人の氏名を付記したうえで、各人が別々に提出することも認められていますが、その場合は提出した相続人が申告内容を他の相続人へ通知する義務があります(国税庁タックスアンサーNo.2022より)。いずれの方法でも、相続人全員の氏名・住所・続柄などを記載した付表の添付が必要です。
準確定申告を忘れるとどうなりますか?
正当な理由なく期限を過ぎると、納付すべき税額に応じて無申告加算税が課される可能性があり、納付が遅れた日数に応じて延滞税もかかります。自主的に期限後申告をした場合は無申告加算税が軽減される仕組みもあるため、期限を過ぎたことに気づいた時点で、できるだけ早く税務署または税理士に相談することが負担を抑える近道です。
相続放棄をした場合も準確定申告は必要ですか?
相続放棄をした人は、民法上はじめから相続人でなかったものとみなされるため、原則として準確定申告の義務は負いません。ただし、相続放棄を検討している段階で被相続人の遺品や財産を処分すると、単純承認とみなされて後から放棄ができなくなることがあります。放棄を迷っている間は、準確定申告の要否も含めて財産の処分に着手する前に司法書士や弁護士へ相談することをおすすめします。
被相続人が個人事業主だった場合、消費税の申告も必要ですか?
被相続人が消費税の課税事業者だった場合は、所得税の準確定申告とは別に、消費税及び地方消費税についても相続人が代わって申告する必要があります。申告期限は所得税の準確定申告と同じく、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内です。事業や賃貸の規模によって課税事業者かどうかの判定が変わるため、該当するかどうかは税理士に確認することをおすすめします。
準確定申告書の付表はどこで入手できますか?
「死亡した者の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表」は、国税庁のウェブサイトから様式をダウンロードできるほか、税務署の窓口でも受け取れます。還付金の受領を代表相続人に委任する場合は、付表とは別に委任状(準確定申告書用)もあわせて用意してください。

まとめ

準確定申告は、実家の相続にかかわる手続きの中でも期限が短く、見落とされやすいものです。要点を振り返ります。

  • 準確定申告は、亡くなった人に代わって相続人が行う確定申告で、対象期間は1月1日から死亡した日まで
  • 期限は相続の開始を知った日の翌日から4か月以内。相続税の10か月より大幅に短い
  • 事業所得・不動産所得がある、給与2,000万円超、副収入20万円超、公的年金400万円超などが対象になる目安
  • 死亡保険金・死亡退職金はみなし相続財産として相続税の対象。準確定申告には原則含めない
  • 相続人が2人以上いる場合は連署または各別提出+通知が必要で、付表の添付も必須
  • 期限を過ぎると無申告加算税・延滞税の対象になり得るが、気づいた時点で早めに動けば軽減の余地もある
  • 相続放棄をした人は原則義務を負わないが、財産の処分は単純承認とみなされるリスクに注意
  • 納めた税金は相続税の債務控除の対象。具体的な税額計算や申告書の作成は税理士の領域

準確定申告そのものは司法書士の業務範囲ではなく税理士の専門領域ですが、実家の片付けや相続登記のスケジュールと密接に関わる手続きです。まずは自分がどのケースに当てはまるかをこの記事のチェックリストで確認し、必要であれば早めに税理士へ相談してください。実家の相続手続き全体の進め方は相続登記の義務化とは|期限・過料・実家を相続したらやることを、遺産分割の考え方は実家の遺産分割の進め方をあわせてご覧ください。

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この記事を書いた人

安心実家じまい事務局です。実家の片付けや遺品整理、空き家になった家の処分について、はじめての方にも分かるように記事を書いています。提携している現場の業者や司法書士と一緒に、費用の相場・自治体のごみ出しルール・補助金といった、調べてもなかなか分かりにくいところを一つずつ確かめながらまとめています。「誰に頼めばいいか分からない」という段階のご相談も、LINEやお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。

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