
久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士
東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。
■経歴
- 1966年鹿児島県生まれ
- 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
- 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
- 2013年司法書士試験合格
- 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
- 2017年司法書士法人コスモ退職
- 2018年事務所開設
- 2021年司法書士法人設立
■得意領域
- 相続登記・相続手続き
- 不動産の名義変更
- 相続放棄
- 簡易裁判所の訴訟代理
この記事の結論
- 50代の生前整理は早すぎるどころか「ちょうどいい時期」です。体力・判断力が保たれているうちに、モノ・お金・不動産を自分のペースで棚卸しできます。
- 年代が上がるほど生前整理の負担は重くなりやすい一方、50代は子どもの独立や親の高齢化と重なる節目でもあり、家族の状況も含めて考えるきっかけになります。
- 最初にやるべきは、断捨離よりも重要書類の所在確認と、判断に迷わないモノの整理です。財産の全体像が見えてから、生前贈与や遺言書の要否を検討する順番が無理がありません。
- 自分の生前整理と、親の実家じまいが同時進行になりやすい年代でもあります。抱え込まず、任せられる部分は専門家や業者に切り分けることが結果的に早道です。
50代の生前整理は、早すぎるどころか「ちょうどいい時期」である理由
「生前整理なんて、まだ早いのでは」という声を50代の方からよく聞きます。生前整理という言葉に、人生の終わりを連想させる響きがあるためかもしれません。しかし実際に作業内容を分解してみると、50代のうちに動き始めたほうが結果的に楽になる理由がいくつも見えてきます。
体力・判断力が保たれているうちに動ける
生前整理は、頭の中で「これはいる」「これはいらない」と判断し続ける作業です。重い家具や大量の本を運び出す場面もあり、思いのほか体力を使います。加齢とともに判断力や記憶力に変化が生じると、何を持っているか自体を把握しづらくなり、整理の難易度が上がっていきます。50代は、こうした体力・判断力の両方がまだ十分に働く年代であり、焦らず自分の意思で進められる最後のまとまった期間と捉えることができます。
親の介護・実家の片付けと重なりやすい年代
50代は、自分の親が70代後半から80代に差し掛かる時期と重なることが多く、介護や実家の管理について考え始める人が増える年代でもあります。親の入院や施設入居をきっかけに実家の片付けを検討する中で、「自分自身はどうするべきか」と我が身を振り返るケースは少なくありません。親の生前整理・実家じまいに向き合う経験は、自分自身の生前整理を具体的にイメージするきっかけにもなります。
定年・退職・住み替えという「節目」が近づく
50代後半になると、定年や役職定年、退職金の受け取り、住み替えやリフォームの検討など、暮らし方の見直しにつながる節目が視野に入ってきます。こうした節目のタイミングでモノや財産を棚卸ししておくと、退職後の生活設計や住まいの選択肢を具体的に考えやすくなります。何も整理しないまま節目を迎えると、限られた時間の中で判断すべきことが一度に押し寄せ、負担が大きくなりがちです。
生前整理そのものの定義や進め方の全体像は生前整理の完全ガイドで詳しく解説しています。本記事では、50代という年代に絞って、今から何をどう進めればよいかを具体的に見ていきます。
年代別に見る生前整理の重点【40代・50代・60代・70代】
生前整理に「正しい開始年齢」はありませんが、年代によって生活状況や優先すべきことは変わります。同じ「生前整理」という言葉でも、40代と70代とでは取り組む中身がかなり異なります。次の表は、一般的なライフイベントの目安と、その年代で重点を置くとよい生前整理の内容をまとめたものです。
| 年代 | ライフイベントの目安 | 生前整理で重点を置くこと |
|---|---|---|
| 40代 | 子育てや仕事が忙しい時期。親はまだ元気なことが多い | 本格的な断捨離より、重要書類の保管場所を決める習慣づくり。デジタルID・パスワードの記録 |
| 50代 | 子どもの独立、親の高齢化、定年が視野に入る | モノ・お金・不動産の棚卸し。生前贈与や遺言書の要否の検討開始。エンディングノートの下書き |
| 60代 | 定年前後、体力や気力の変化を感じ始める | 自宅の整理を本格化。財産目録の作成。遺言書の作成、相続時精算課税など税制の具体的な検討 |
| 70代 | 判断力の低下リスクが高まる。相続対策の実行期 | 贈与・遺言の実行段階。任意後見や家族信託など、判断力低下に備える制度の検討 |
この表からわかるのは、50代は「本格的な実行」と「準備」の橋渡しにあたる年代だということです。60代・70代になってからいきなり財産目録や遺言書の作成に着手するより、50代のうちにモノとお金の全体像を把握しておくほうが、後の判断はずっと軽くなります。逆に40代のうちから断捨離を急ぐ必要はなく、書類の置き場所を決めるといった土台づくりで十分です。年代はあくまで目安であり、健康状態や家族構成によって前後することも珍しくありません。自分の状況が表のどのあたりに近いかを確認する材料として使ってください。
50代からの生前整理チェックリスト【分野別・そのまま使える】
50代の生前整理は、いきなりモノを捨てることから始める必要はありません。むしろ最初にやるべきは「何がどこにあるかを把握すること」です。分野ごとに、確認しておきたい項目をチェックリストにまとめました。印刷して手元に置き、済んだ項目から線を引いていく使い方を想定しています。
モノの整理
- 1年以上着ていない衣類、サイズが合わなくなった衣類を候補として分けておく
- 重複して持っている食器・調理器具・タオル類を数えてみる
- 読み返す予定のない本・雑誌・カタログをまとめる
- 写真・アルバムは「すぐに減らす」対象ではなく、後回しでよい項目として先送りする
- 使わなくなった家電・家具のうち、処分に人手や費用がかかりそうなものを把握しておく
お金・保険
- 預金口座(休眠口座を含む)の一覧を作る
- 生命保険・医療保険の証券を1か所にまとめ、保険会社と連絡先を記録する
- 加入したまま忘れている共済・団体保険がないか確認する
- クレジットカードや電子マネーの保有状況を書き出す
- 年金の見込額を「ねんきん定期便」やねんきんネットで確認する
不動産・住まい
- 自宅と実家、それぞれの権利証(登記識別情報)の保管場所を確認する
- 固定資産税の納税通知書から、おおよその評価額を把握する
- 住宅ローンの残債と完済予定時期を確認する
- 実家が空き家になった場合の管理・処分方針について、家族と話す機会を作る
デジタル資産
- ネット銀行・証券口座のログイン情報の保管場所を決める
- サブスクリプションサービスの契約一覧を作る(解約忘れの防止にもなる)
- SNSアカウントを、万一のときにどう扱ってほしいか整理しておく
- スマートフォンやパソコンのロック解除方法を、信頼できる家族に伝える手段を検討する
家族との対話・エンディングノート
- 介護が必要になったときに希望する対応(在宅か施設かなど)を書き出してみる
- 延命治療についての考えを、家族に伝える機会を持つ
- 葬儀やお墓についての希望があれば書き留めておく
- エンディングノートの下書きとして、ここまでの項目を1冊にまとめておく
すべてを一度に終わらせる必要はありません。まずは「モノ」と「お金」の現状把握から始め、家族との対話やエンディングノートは、気持ちの整理がついたタイミングで少しずつ進めるのが無理のない順番です。
50代のケース別シミュレーション
50代と一口に言っても、家族構成や住まいの状況によって、生前整理で優先すべきことは変わります。ここでは代表的な3つのケースを取り上げ、それぞれで意識したいポイントを整理します。金額や期間はあくまで目安であり、実際の状況によって前後します。
ケースA:50代夫婦・持ち家・子どもは独立済み
子どもが独立し、夫婦二人の生活になったタイミングは、自宅の見直しに向いた時期です。子ども部屋として使っていた部屋の荷物を整理すると、それだけで空間にも気持ちにも余裕が生まれます。この段階で意識したいのは、自宅を将来どうするか(住み続ける・住み替える・将来的に子どもへ引き継ぐ)という方向性です。方向性が決まれば、モノを「残す前提で整理する」のか「いずれ手放す前提で整理する」のかがはっきりし、判断のスピードが上がります。夫婦のどちらか一方が家計や資産の管理を主に担っている場合は、この時期に口座や保険の情報をもう一方と共有しておくことも大切です。
ケースB:50代・独身・賃貸暮らし
独身の場合、自分の判断がそのまま反映されやすい一方で、万が一のときに家族へ状況を伝える手段をあらかじめ用意しておく必要があります。賃貸住まいであれば不動産に関する整理の負担は軽いものの、預金口座や保険、緊急連絡先といった情報を誰も把握していない状態は避けたいところです。信頼できる親族や友人に、いざというときの連絡先や重要書類の保管場所だけでも伝えておくと安心です。おひとりさまの場合は、任意後見制度や死後事務委任契約といった仕組みも将来的な選択肢になり得ます。
ケースC:50代で親の実家じまいも同時進行
50代でもっとも負担が大きくなりやすいのが、自分自身の生前整理と、親の実家じまいが同時期に重なるケースです。親の入院や施設入居をきっかけに実家の片付けが必要になると、平日の休みや週末を使って実家に通う生活が始まり、自分自身の整理まで手が回らなくなりがちです。この場合は、実家の片付け・処分は業者に任せる部分を早めに切り分け、自分自身の生前整理は「重要書類の所在確認」など負担の軽い作業に絞って並行させる進め方が現実的です。役割を分けずに一人ですべて抱え込もうとすると、どちらも中途半端なまま時間だけが過ぎてしまうことがあります。実家の片付け方の具体的な手順は実家じまいのチェックリストで確認できます。
3つのケースに共通するのは、「全部を一度に自分でやろうとしない」という考え方です。判断が必要な部分と、手を動かせば済む部分を分けて、後者は家族や専門家、業者に任せる選択肢を持っておくと、生前整理そのものが長続きしやすくなります。
知っておきたいお金の制度|生前贈与・相続時精算課税・遺言書保管制度
50代のうちにモノと財産の棚卸しが進むと、次に「子や孫にどう財産を渡すか」という選択肢が具体的に見えてきます。ここでは代表的な制度の概要を紹介します。実際の適用にあたっては、個々の資産状況によって有利・不利が変わるため、税理士や司法書士など専門家への相談をおすすめします。
暦年贈与と生前贈与加算の基礎控除110万円
個人が1年間に受け取る贈与財産のうち、基礎控除額110万円までは贈与税がかかりません(暦年課税)。ただし、被相続人が亡くなる前一定期間内に行われた贈与は、相続財産に加算して相続税を計算する「生前贈与加算」というルールがあります。2024年1月1日以後の贈与については、この加算対象期間が段階的に延長されており、相続開始日が2026年(令和8年)12月31日までであれば加算対象期間は相続開始前3年以内、2027年(令和9年)1月1日から2030年(令和12年)12月31日までの相続では2024年1月1日から死亡日までの期間、2031年(令和13年)1月1日以降の相続では相続開始前7年以内が加算対象になります(国税庁タックスアンサーNo.4161より)。早めに贈与を始めておくほど、加算対象期間の影響を受けにくくなる仕組みです。
相続時精算課税制度
相続時精算課税は、原則として60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫へ財産を贈与する場合に選択できる制度です。選択すると、特別控除額2,500万円までの贈与について贈与税がかからず(超えた部分は一律20%課税)、加えて2024年1月1日以後の贈与からは、暦年課税とは別に年110万円の基礎控除も設けられています。この基礎控除の範囲内であれば、贈与税の申告が不要なうえ、相続財産にも加算されません(国税庁タックスアンサーNo.4103より)。一度選択すると同じ贈与者からの贈与について暦年課税へ戻すことはできないため、将来の贈与予定や財産の種類を踏まえて選択する必要があります。
自筆証書遺言書保管制度
自分で書いた遺言書(自筆証書遺言)を法務局が原本ごと保管してくれる制度です。自宅で保管する場合に起こりがちな紛失・改ざん・発見されないといったリスクを防げるほか、家庭裁判所での検認手続きが不要になる利点があります。法務局が公表している利用者の声にも、50代で「遺言書を書くにはまだ早いかもしれないが、万が一のときに悔いを残さないように」と利用を決めた例が紹介されています(法務省「自筆証書遺言書保管制度」より)。手数料や必要書類の詳細は、最寄りの法務局(遺言書保管所)の窓口で確認してください。
これらの制度はいずれも「早く動いた人ほど選択肢が広い」という共通点があります。60代・70代になってから慌てて検討するより、50代のうちに概要だけでも把握しておくと、実際に動くタイミングでの判断がスムーズになります。
事務局が見てきた、50代の生前整理でつまずきやすいポイント
実家じまいや生前整理のご相談を受ける中で、50代の方に共通して見られる傾向がいくつかあります。ご自身に当てはまらないか、確認してみてください。
- 「まだ元気だから」と先延ばしにして、結局着手が親の介護と重なる——体力に余裕があるうちに動けるはずが、親の介護や実家の片付けが同時に発生し、時間の確保が難しくなるパターンです。着手のきっかけを「体調の変化」に置くと遅くなりがちなので、「子どもの独立」「定年」といったカレンダー上の節目をきっかけにするほうが動きやすくなります。
- 写真や思い出の品から手をつけて、途中で止まる——感情の判断が必要な品から始めると、1枚ずつ手が止まり、作業全体の進みが遅くなります。判断に迷わない衣類や重複した日用品から着手したほうが、達成感を得やすく続けやすい傾向があります。
- 財産の全体像を把握しないまま、生前贈与や遺言の相談に行ってしまう——専門家への相談自体は早いほど良いのですが、通帳や保険証券がどこにあるかも整理できていない段階では、具体的なアドバイスを受けにくいことがあります。まずは前章のチェックリストで全体像を把握してから相談すると、限られた相談時間を有効に使えます。
- 夫婦・親子で情報を共有しないまま進めてしまう——自分の中では整理が済んでいても、家族がその存在を知らなければ、いざというときに活かされません。エンディングノートや財産の一覧は、書いた事実とおおよその保管場所だけでも家族に伝えておくことが大切です。
共通しているのは、完璧を目指しすぎて着手が遅れる、あるいは途中で止まってしまうパターンです。生前整理は一度で終わらせる作業ではなく、節目のたびに見直していくものと捉えると、気持ちの負担が軽くなります。
自分でできること・プロに頼んだほうがいいこと
生前整理のすべてを業者に任せる必要はありません。むしろ、自分でできる部分は自分で進めたほうが、費用を抑えられるだけでなく、モノや財産との向き合い方を整理する時間にもなります。一方で、次のような場合はプロの手を借りたほうが結果的にスムーズです。
| 状況 | 向いている進め方 |
|---|---|
| 時間をかけて少しずつ進められる、物量がそれほど多くない | 自分でチェックリストに沿って進める |
| 大型家具・家電の搬出や、重い荷物の移動が発生する | 不用品回収・生前整理業者への部分依頼を検討する |
| 相続税・贈与税など税金の判断が絡む | 税理士へ相談する |
| 遺言書の作成、不動産の名義や登記が絡む | 司法書士へ相談する |
| 親の実家の片付けと自分の生前整理が同時に発生している | 実家じまいの窓口へ一括で相談する |
判断に迷う場合は、まず無料相談で状況を伝えるところから始めても構いません。全てを一人で背負い込まず、任せられる部分を早めに切り分けることが、生前整理を無理なく続けるコツです。
安心実家じまいのサービス案内
安心実家じまいは、実家の片付けから売却・解体の手配までを一つの窓口でお受けする全国対応のサービスです。ご自身の生前整理のご相談はもちろん、親の実家じまいと同時に進めたい場合も、状況にあわせてご案内します。
生前整理そのもののご相談は生前整理サービスで承ります。実家の片付けから売却・解体まで含めて検討している場合は実家じまい代行パックもあわせてご覧ください。相続登記や遺言書など法律手続きが絡む場面では、提携司法書士と連携しながら進める体制を整えています。「何から手をつければいいかわからない」という段階でも、今の状況を伝えるところから一緒に整理していきます。料金の全体像は料金表をご覧ください。
よくある質問
50代で生前整理を始めるのは早すぎませんか?
50代の生前整理は何から始めればいいですか?
親の生前整理・実家じまいと、自分の生前整理を同時に進めても大丈夫ですか?
生前整理と老前整理は何が違いますか?
一人で進めるのが不安なときはどうすればいいですか?
まとめ
50代の生前整理は、体力・判断力が保たれているうちに、自分のペースでモノと財産を棚卸しできる時期です。要点を振り返ります。
- 50代は「早すぎる」のではなく、体力・判断力の両方が保たれているちょうどいい時期
- 年代別に見ると、50代は「本格的な実行」と「準備」の橋渡しにあたる年代
- 最初にやるべきは断捨離ではなく、重要書類の所在確認と判断に迷わないモノの整理
- 夫婦・独身・親の実家じまいと同時進行など、状況によって優先順位は変わる
- 生前贈与の基礎控除は年110万円、相続時精算課税は2,500万円の特別控除に加え年110万円の基礎控除がある
- 自筆証書遺言書保管制度を使えば、遺言書の紛失・改ざんリスクを避けられる
- すべてを一人で抱えず、任せられる部分は専門家や業者に切り分けることが長続きのコツ
生前整理は一度で完成させる作業ではなく、節目のたびに見直していくものです。まずはチェックリストの中から取り組みやすい項目を選び、少しずつ手をつけてみてください。生前整理の全体像は生前整理の完全ガイドを、親の実家の片付けについては実家じまいのチェックリストをあわせてご覧ください。
早いこともあります
ご本人と一緒に、1部屋単位から。お見積もりは無料です。ご相談・お見積もりは無料です。

