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生前整理とは?やることリスト・進め方5ステップ・費用相場・親への切り出し方

最終更新日:2026年8月5日|監修:司法書士 久留慎一郎先生・安心実家じまい事務局

司法書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士。

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 不動産の名義変更
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理

この記事の結論

  • 生前整理とは、ご本人が元気なうちにモノ・お金と契約・情報とデジタル・想いの4つを自分の意思で整理しておくことです。
  • 始める時期は思い立った今が最適。
  • 迷ったら捨てず、1部屋ずつ分割して進めます。
  • 業者に頼む場合の相場は1R・1Kで3〜8万円、4LDK以上で22〜60万円。
  • エンディングノートに法的効力はないため、財産の分け方を決めたいなら遺言書を別に用意します。

遺品整理の現場で最も多く聞く言葉は、「どこに何があるのか、まったく分からない」です。通帳の場所、保険の有無、スマホのパスコード。本人に聞けば10分で済んだことを、残された家族は何週間もかけて探すことになります。生前整理は、この負担を先回りしてなくす準備です。この記事では、何を・いつから・どう進めるかを、費用と家族への伝え方まで含めて解説します。

目次

生前整理とは——遺品整理・老前整理との違い

生前整理とは、本人が元気なうちに、持ち物・財産・情報を整理し、死後や介護時に家族が困らないよう備えることです。似た言葉との違いを整理しておきます。

誰が行う いつ 目的
生前整理 本人(家族と一緒に) 年齢を問わず元気なうち 死後・介護時に家族が困らない準備
老前整理 本人 老後を迎える前(50〜60代が中心) 身軽で安全な老後の暮らし
遺品整理 遺族 亡くなった後 遺品と住まいの整理

3つの中で生前整理だけが持つ強みは、本人の意思を反映できることです。何を残したいか、誰に譲りたいか、財産がどこにあるか。本人にしか分からないことを本人の言葉で残せます。逆に遺品整理では、遺族が推測で判断するしかありません。この違いが、後述する費用と心の負担の差につながります。遺品整理側の実情は遺品整理とは?いつから・費用・捨ててはいけないもので詳しく書いています。

生前整理のメリット4つ

本人にとってのメリットと、家族にとってのメリットを2つずつ挙げます。

1. 自分の意思で決められる(本人)

遺品整理では、価値ある着物も趣味の道具も、家族には「よく分からない物」として扱われがちです。生前整理なら、譲り先も手放し方も自分で選べます。大切にしてきた物の行き先を自分で決められることは、片付け以上の意味を持ちます。

2. もしもの入院・介護に備えられる(本人)

生前整理は死の準備ではなく、暮らしの備えでもあります。急な入院のとき、保険証や通帳の場所が分かる家は、家族がすぐ動けます。床の物が減れば転倒のリスクも下がります。判断力があるうちに情報を整理しておくことは、介護が始まってからでは難しくなる作業です。

3. 遺品整理の負担が大きく減る(家族)

遺品整理でいちばんつらいのは、物の量ではありません。「本人の気持ちが分からないまま、捨てる判断を代行すること」です。生前整理で意思と情報が残っていれば、家族は迷わずに済みます。物量が減れば、片付けの費用そのものも下がります。

4. 相続のもめごとを防ぎやすくなる(家族)

相続トラブルの多くは、財産の全体像が見えないことから始まります。口座の一覧、保険の受取人、不動産の権利証の所在。これらが1枚にまとまっているだけで、相続手続きの負担は大きく変わります。分け方まで決めておきたい場合は、後述する遺言書の出番です。

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いつから始めるか——「元気なうち」が唯一の条件

結論は、思い立った今です。生前整理は体力と判断力を使う作業で、どちらも待ってはくれません。実際のご相談では、定年退職、古希や喜寿などの節目、住み替えや施設入居の検討開始をきっかけにする方が多いです。

もう一つの現実的なきっかけは、相続登記の義務化です。2024年4月から、相続した不動産は3年以内の登記が義務になり、怠ると10万円以下の過料の対象になる場合があります。実家という大きな財産をどうするかは、元気なうちに家族で話しておくほうが、選択肢が多く残ります。実家全体の整理を視野に入れる方は、実家じまいの手順7ステップもあわせてお読みください。

背景として、住まいを取り巻く状況も変わってきました。全国の空き家は約900万戸(総務省・2023年)に達し、管理不全で特定空家に指定されると固定資産税が最大6倍になる場合があります。「亡くなってから考える」では、残された家族が空き家の管理と税負担を同時に抱えることになりかねません。生前整理は、この連鎖を手前で断つ準備でもあります。

生前整理でやること——4分類リスト

生前整理は「モノ」だけの話ではありません。モノ・お金と契約・情報とデジタル・想い、の4分類で考えると抜けがなくなります。

① モノの整理

  • 「残す・譲る・手放してよい」の3つに仕分ける。迷ったら捨てないのが鉄則です
  • 思い入れの薄いジャンル(日用品・衣類・食器など)から始める
  • アルバム・手紙など心の比重が大きい物は最後に回す
  • 手放す物は、買取・譲渡・フリマ・自治体回収を使い分ける
  • 大型家具・家電は搬出の手間が大きいため、業者活用も検討する

捨てて後悔しやすい物のリストは遺品整理で捨ててはいけないものと共通です。仕分け前に一読しておくと判断が速くなります。

扱いに迷いやすいのが仏壇です。住み替えなどで手放す場合は、閉眼供養(魂抜き)をしてから引き取ってもらうのが一般的で、お布施の目安は1〜5万円です。菩提寺があるなら、供養の相談を兼ねて早めに連絡しておくと段取りが楽になります。

② お金・契約の整理

  • 銀行口座・証券口座を一覧化し、使っていない口座は解約する
  • 保険の内容と受取人を確認する
  • 不動産の権利証(登記識別情報)・固定資産税納税通知書の保管場所を確認する
  • クレジットカード・ローン・貸し借りを書き出す
  • 財産目録を1枚にまとめる(形式は自由)

この「1枚」があるだけで、相続時の手続き期間は目に見えて変わります。相続放棄の判断は3ヶ月以内、相続税の申告は10ヶ月以内と期限があるため、財産の全体像がすぐ分かることには大きな価値があります。

③ 情報・デジタルの整理

  • スマホ・PCのパスコードを信頼できる家族と共有する(封筒に入れて保管でも可)
  • ネット銀行・ネット証券の口座の存在を書き残す
  • サブスク契約(動画・音楽・アプリなど)を一覧化し、不要なものは解約する
  • SNS・メールのアカウントをどうしたいかをメモする

いま遺品整理の現場で最も難航しているのがこの領域です。通帳のないネット口座は、スマホが開けないと存在に気づくことすら難しくなります。サブスクは解約されない限り引き落としが続きます。実際の現場でも、故人のスマホが開けず、契約の全容をつかむのに何ヶ月もかかったご家族を見てきました。デジタルの整理は、紙の書類より優先度が高いと考えてください。

パスコードの共有に抵抗がある場合は、中身を見せる必要はありません。「パスコードを書いた紙を封筒に入れ、保管場所だけ家族に伝える」方法なら、日常のプライバシーを保ったまま、もしもに備えられます。

④ 想いの整理

  • エンディングノートに、医療・介護の希望、葬儀の希望、連絡してほしい人を書く
  • 形見分けの希望(誰に何を)をメモしておく
  • 写真を整理し、残したいものをデータ化して家族と共有する
  • 財産の分け方に希望があるなら、遺言書の作成を検討する

ここは急ぐ必要のない、いちばん楽しい部分でもあります。写真の整理は思い出話のきっかけになり、家族で取り組む生前整理の入口としても優れています。

進め方5ステップ

  1. 方針を決める——誰と、いつまでに、どの範囲をやるかをざっくり決めます。「年内に2階の2部屋」程度で十分です
  2. 情報から着手する——財産と重要書類の一覧化を最初に。全体像が見えると、物の整理の計画も立てやすくなります
  3. 1部屋ずつ仕分ける——残す・譲る・手放すの3分類で。迷った物は「迷い箱」に入れて先送りして構いません
  4. 手放す物を処分する——買取・譲渡・フリマ・自治体回収を使い分けます。量が多ければ業者に依頼します
  5. エンディングノートに集約する——財産目録・パスコードの保管場所・各種の希望を1冊にまとめ、保管場所を家族に伝えます

挫折の原因は、ほぼ例外なく「一気にやろうとすること」です。1部屋あたり半日〜1日、月に1部屋のペースなら、4LDKでも1年かからず一巡できます。迷い箱に入れた物は、半年後にもう一度だけ開けてください。半年間思い出さなかった物は、手放しても後悔しないことがほとんどです。

エンディングノートと遺言書の違い——法的効力の有無

ここは誤解が多く、監修の司法書士がご相談でよく訂正するポイントです。エンディングノートに法的効力はありません。「長男に家を譲る」と書いても、それだけで実現する保証はないのです。

エンディングノート 遺言書
法的効力 なし あり(法律の要件を満たす場合)
書ける内容 医療・介護の希望、連絡先、財産の一覧、デジタル情報など自由 財産の分け方など、法律で定められた事項
形式 自由。市販ノートでも自由帳でも可 自筆証書遺言(法務局の保管制度あり)または公正証書遺言が代表的
役割 情報と想いを家族に伝える 財産の行き先を法的に決める

使い分けはシンプルです。情報と想いはエンディングノートへ、財産の分け方は遺言書へ。自筆証書遺言は形式の不備で無効になることがあるため、法務局の保管制度を使うか、公正証書遺言を検討すると確実性が上がります。相続する側の手続きの流れは実家じまいの手順7ステップのステップ2で解説しています。

業者に頼む場合の費用相場

物量が多い、大型家具を運べない、体力に不安がある。そんな場合は業者への依頼が現実的です。生前整理の料金は、間取り別で遺品整理とほぼ同水準です。

間取り 相場
1R・1K 3〜8万円
1LDK〜2DK 7〜25万円
2LDK〜3DK 12〜40万円
4LDK以上 22〜60万円

ただし生前整理には、相場表に表れない下げ幅があります。本人が「これは要る、これは要らない」を判断できるため、処分量そのものを減らしやすいのです。処分量が減れば見積もりは下がります。加えて、1部屋ずつの分割依頼ができるので、1回数万円台から始められます。買取できる物があれば費用から差し引ける場合もあります。間取り別のより詳しい金額感は遺品整理の料金相場が、当事務局の料金は料金表が参考になります。

住み替えや施設入居にあわせて住まい全体をたたむ場合は、片付け単体より一括の依頼が向いています。当事務局の実家じまい代行パック(2DKまで29.8万円、3LDKまで49.8万円、4LDK以上69.8万円〜)は、生前整理としてのご利用にも対応しています。

業者選びで確認したい5つのこと

生前整理をうたう業者は増えましたが、質の差は大きいのが実情です。契約前に次の5点を確認してください。

  1. 廃棄物処理の体制——家庭の不用品の処分には自治体の許可が関わります。処理の流れを説明できない業者は避けてください
  2. 見積もりの内訳——「一式」でまとめず、作業費・搬出費・処分費が分かれているか
  3. 追加料金の条件——どんな場合にいくら追加になるのか、書面で示されるか
  4. 古物商許可——買取を頼むなら許可の有無を確認します
  5. 損害賠償保険——作業中に家財や建物を傷つけた場合の補償があるか

もう一つ、生前整理ならではの視点があります。本人のペースを尊重できる業者かどうかです。仕分けを急かされて、本人が心を閉ざしてしまったら本末転倒です。当事務局の提携業者の品質基準では、この点も審査しています。

家族からの切り出し方——親を傷つけない言い方3つ

「片付けたら?」「捨てなよ」という言葉は、親にとって人生の否定に聞こえることがあります。現場で効果のあった切り出し方を、実際の言い方の例とともに3つ紹介します。

1. 「捨てて」ではなく「教えて」に変える

言い方の例:「もしものとき、どこに何があるか分からないと私たちが困るから、通帳と保険の場所だけ教えてくれない?」

物を減らす話ではなく、情報を教えてもらう話から入ります。主語を「あなた」から「私たち」に変えると、責める響きが消えます。情報の整理が済むと、物の整理は自然と話題に上るようになります。

2. 写真の整理から入る

言い方の例:「昔のアルバム、一緒に見たいな。良い写真はデータにして、みんなで見られるようにしない?」

写真は「捨てる」対象ではなく「残す」対象です。思い出話をしながらの作業は楽しく、整理へ向かう心の準備が自然に整います。想いの整理から入って、モノの整理に広げる王道の順路です。

3. 自分の整理を先にやって見せる

言い方の例:「うちも先週、子どもの物を思い切って整理したんだ。部屋が広くなって気持ちよかったよ。実家も少しだけやってみない?」

人は指示では動きませんが、実例には動かされます。自分が先にやって見せることで、「やらされる片付け」が「一緒にやる片付け」に変わります。

それでも話が進まないときは、第三者を挟むのも手です。子の言葉には反発しても、専門家の説明なら聞ける、という親御さまは少なくありません。生前整理サポートでは、ご本人の気持ちに配慮した進行を心がけています。

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よくある質問

生前整理は何から始めればいいですか?
財産と重要書類の所在を1枚に一覧化することから始めるのがおすすめです。物の整理より先に情報を整理すると、全体像が見えて計画を立てやすくなります。物はその後、思い入れの薄いジャンルから手を付けます。
生前整理はどのくらい時間がかかりますか?
1部屋あたり半日〜1日が目安です。家全体を一気にやろうとすると数日がかりになり挫折しやすいため、月に1部屋ずつなど、分割して進めるのが続けるコツです。
エンディングノートに決まった書式はありますか?
ありません。市販のノートでも自由帳でも使えます。大切なのは、財産・連絡先・医療や介護の希望・デジタル情報の4項目が書かれていることと、保管場所を家族が知っていることです。なお法的効力はないため、財産の分け方を決めたい場合は遺言書が別に要ります。
親が生前整理を嫌がります。どう伝えればいいですか?
「捨てて」ではなく「教えてほしい」に言い換えるのが第一歩です。物ではなく情報の話から入る、写真の整理など楽しい作業から始める、自分の家の整理を先にやって見せる、の3つが現場でも効果のあった方法です。
生前整理を業者に頼むと費用はいくらかかりますか?
間取り別の相場は遺品整理とほぼ同水準で、1R・1Kで3〜8万円、4LDK以上で22〜60万円です。ただし本人が仕分けに関われる分、処分量を減らしやすく、実際の支払いは相場より下がることが多いです。1部屋ずつの分割依頼もできます。

まとめ——生前整理は、家族への最後の思いやりではなく「今の備え」

生前整理はモノ・お金と契約・情報とデジタル・想いの4分類で考え、情報から着手し、1部屋ずつ進める。これだけ覚えておけば、途中で止まることはまずありません。

エンディングノートには法的効力がないこと、財産の分け方には遺言書が要ること。この2点だけは、後から知ると取り返しがつかない場合があるため、早めに押さえてください。

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この記事を書いた人

安心実家じまい事務局です。実家の片付けや遺品整理、空き家になった家の処分について、はじめての方にも分かるように記事を書いています。提携している現場の業者や司法書士と一緒に、費用の相場・自治体のごみ出しルール・補助金といった、調べてもなかなか分かりにくいところを一つずつ確かめながらまとめています。「誰に頼めばいいか分からない」という段階のご相談も、LINEやお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。

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