
久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士
東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。
■経歴
- 1966年鹿児島県生まれ
- 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
- 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
- 2013年司法書士試験合格
- 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
- 2017年司法書士法人コスモ退職
- 2018年事務所開設
- 2021年司法書士法人設立
■得意領域
- 相続登記・相続手続き
- 不動産の名義変更
- 相続放棄
- 簡易裁判所の訴訟代理
この記事の結論
- 生前整理は「財産と持ち物の現状把握」→「優先度づけ」→「モノ・デジタルの整理」→「意思表示(遺言書・エンディングノート)」の順で進めると、後戻りが少なくなります。
- やることは大きく財産・書類、デジタル、モノ、人間関係・意思表示の4分野に分かれます。分野ごとの優先度をつけたチェックリストを本文にまとめました。
- 年代や世帯状況(現役世代・退職前後・独居・施設入居予定)によって、最初に手をつける項目は変わります。ケース別の目安を紹介します。
- すべてを自分で抱え込む必要はありません。体力の要る作業だけ業者に任せる部分利用という選び方もあります。
生前整理でやることは全部で何がある?全体像を先につかむ
生前整理と聞くと、まず「モノを捨てること」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。しかし実際にやることは、部屋の片付けだけにとどまりません。生前整理でやることは、大きく分けると次の4つの分野に整理できます。
| 分野 | 主な内容 | 後回しにするとどうなるか |
|---|---|---|
| 財産・お金 | 預貯金、保険、不動産、有価証券、負債の棚卸しと一覧化 | 家族が資産の全体像をつかめず、相続の話し合いが長引く |
| 書類・デジタル | 権利証、年金手帳、通帳、印鑑、SNS・サブスクのID/パスワード | 解約手続きが進まず、無駄な支払いが続く |
| モノ(家財) | 衣類、家具、家電、写真、着物、骨董品、仏壇仏具 | 体力が落ちてから量が減らせず、負担が家族に回る |
| 人間関係・意思表示 | 遺言書、エンディングノート、葬儀や供養の希望、形見分けの意向 | 本人の意向が分からないまま、家族が判断に迷う |
この4分野を一度に終わらせようとすると、途中で息切れしてしまいます。生前整理の基本的な考え方やメリット・デメリットについては生前整理とは?メリットと進め方の完全ガイドで詳しく解説していますので、まずは全体像を掴みたい方はそちらもあわせてご覧ください。この記事では「結局、具体的に何をどの順番でやればいいのか」という実務面に絞って、印刷してそのまま使えるチェックリストと、進める順番の考え方をまとめます。
生前整理と遺品整理・老前整理はどう違うか
生前整理は本人が元気なうちに自分の意思で行う整理で、遺品整理は本人が亡くなったあとに遺族が行う片付けです。老前整理は「老後に備えて元気なうちに整理する」という意味で使われることが多く、生前整理とほぼ同じ意味で使われる場合もあります。どの言葉を使うにせよ、本人の判断力があるうちに着手できることが最大の利点です。判断に迷うものを本人に直接確認できる、財産の使い道を自分で決められる、家族に負担を残さずに済む。この3点は、亡くなったあとの遺品整理では実現できません。
【印刷用】生前整理やることリスト・優先度つきチェックリスト
ここからが本題です。生前整理でやることを、分野ごとに具体的なタスクへ分解し、優先度をつけました。優先度は「最優先(すぐに着手)」「優先(数か月以内)」「余裕があれば(数年かけて)」の3段階です。印刷してチェックボックス代わりに使ってください。
財産・お金まわりのやることリスト
| 優先度 | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 最優先 | 預貯金口座(銀行名・支店名・口座種別)を一覧にする | 通帳・キャッシュカードを集めて記録するだけで半日程度 |
| 最優先 | 生命保険・医療保険の証券番号と受取人を確認する | 証券を保管場所ごとまとめておく |
| 最優先 | 不動産の権利証(登記識別情報)の保管場所を確認する | 名義が先代のままでないかも合わせて確認 |
| 優先 | 有価証券(株式・投資信託)の口座を一覧にする | 証券会社ごとの口座番号を控える |
| 優先 | ローンやクレジットカードなど負債の有無を確認する | 資産だけでなく負債もリスト化しておく |
| 優先 | 財産目録を作成し、家族が見られる場所に保管する | 金額まで書けなくても一覧があるだけで家族の負担は大きく減る |
| 余裕があれば | 生前贈与の要否を家族・税理士と相談する | 暦年贈与の基礎控除など制度の詳細は税理士に確認する |
書類・デジタルまわりのやることリスト
| 優先度 | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 最優先 | 実印・銀行印・印鑑登録証の保管場所を家族に共有する | 場所だけ伝え、暗証番号は本人のみが管理してもよい |
| 最優先 | 健康保険証・年金手帳・マイナンバーカードの保管場所を整理する | 紛失に気づきやすくなる副次効果もある |
| 優先 | スマホ・パソコンのログインパスワードを書き残す | 紙に書いて封をする、家族に一部だけ預けるなど方法は複数ある |
| 優先 | サブスク・会員サービスを解約または一覧化する | 年会費のかかるサービスから優先的に見直す |
| 優先 | SNSアカウントの扱い(削除・追悼アカウント化)の希望を書き残す | 各サービスの規約により対応方法が異なる |
| 余裕があれば | 写真・動画データをクラウドや外部ストレージに整理する | SDカードやHDDが複数ある場合は集約しておくと後が楽 |
モノ(家財)のやることリスト
| 優先度 | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 優先 | 着ていない衣類・使っていない寝具を仕分ける | 1年着ていない服から手をつけると判断が早い |
| 優先 | 使っていない家電(予備の炊飯器・扇風機など)を処分する | 製造から5年以内の家電は買取に出せる場合がある |
| 優先 | 賞味期限切れの食品・調味料を整理する | 台所は判断に迷いにくく着手しやすい |
| 余裕があれば | 写真・アルバムを整理し、残す物を選ぶ | 時間がかかるため、日々少しずつ進める前提で計画する |
| 余裕があれば | 着物・骨董品・貴金属を査定に出す | 価値が分からないまま処分しないよう、先に査定を挟む |
| 余裕があれば | 大型家具・使わない家電を計画的に減らす | 体力があるうちに搬出まで含めて進めておくと安心 |
人間関係・意思表示のやることリスト
| 優先度 | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 優先 | エンディングノートに考えを書き始める | 市販のノートでも、白紙のノートに項目を立てても構わない |
| 優先 | 形見分けしたい物と、渡したい相手を書き残す | 家族の意見も聞きながら、迷う部分は保留にしてよい |
| 優先 | 葬儀・お墓・供養の希望を家族に伝える | 費用感を含めて話しておくと、家族が判断に迷わない |
| 余裕があれば | 遺言書の作成を検討する | 財産の分け方に希望がある場合は法的効力のある形式で残す |
| 余裕があれば | 家族・親族に生前整理を進めていることを伝える | 共有しておくことで、途中経過を見てもらいやすくなる |
このリストは一度にすべて終わらせる必要はありません。次の章で、実際にどの順番で手をつけると挫折しにくいかを説明します。
やることの「順番」はどう決めるか
生前整理でつまずきやすいのは、順番を決めずに「気になった場所から」始めてしまうケースです。押し入れの整理から始めて、途中で古い通帳や権利証が出てきて手が止まる、という経験がある方も少なくないはずです。次の順番で進めると、判断に迷う場面を減らせます。
- 現状把握(財産・持ち物の棚卸し)——最初にモノを減らし始めるのではなく、何がどこにあるかを一覧にすることから始めます。金額まで正確に出す必要はありません。「ある」ということが分かるだけで十分です。
- 優先度づけ——一覧にした項目を、上の章のチェックリストを参考に「最優先・優先・余裕があれば」に振り分けます。すべてを同じ熱量で進めようとすると、途中で疲れてしまいます。
- 書類・お金まわりの整理——通帳や保険証券など、判断に迷いにくく、かつ家族にとって重要度が高いものから着手します。ここを先に済ませておくと、後の作業で見つかった重要書類にも慌てず対応できます。
- モノ(家財)の整理——衣類や台所用品など判断しやすい物から始め、写真や着物など時間のかかる物は後半に回します。物量が多い場合は、部屋単位よりも品目単位で区切ったほうが進めやすいという声もよく聞かれます。
- デジタル整理——パスワードの書き残しやサブスクの見直しは、財産・モノの整理が一段落してから着手しても遅くありません。ただし年会費のかかるサービスだけは早めに見直すと、無駄な支出を早く止められます。
- 意思表示(エンディングノート・遺言書)——財産と持ち物の全体像が見えた段階で、初めて「誰に何を残すか」を具体的に書けるようになります。全体量が分からないまま意思表示だけを先に固めようとすると、後から書き直しが必要になることがあります。
この順番はあくまで目安です。健康上の理由で急ぐ必要がある場合は、意思表示(遺言書)を先に進めることもあります。逆に時間に余裕がある場合は、モノの整理から気持ちを軽くして、財産整理に取りかかるという進め方も間違いではありません。大切なのは「全体のどこに今いるか」を意識しながら進めることです。
年代・世帯状況別に見る、優先すべきこと
生前整理でまず何を優先するかは、年代や世帯の状況によって変わります。上のチェックリストをすべて同じ優先度で進める必要はありません。ここでは、よくある5つのケースについて、最初に着手すべき項目と進め方の目安をまとめます。
ケース1:50代・現役世代で、実家に一人暮らしの親がいる
本人自身の生前整理よりも先に、離れて暮らす親の状況把握が課題になりやすい時期です。まずは親の財産・書類の保管場所を、本人の負担にならない範囲で少しずつ聞いておくことをおすすめします。いきなり「財産目録を作って」と切り出すと身構えられてしまうため、「もしものときに困らないように、通帳がどこにあるかだけ教えておいて」といった軽い切り出し方が現実的です。並行して、自分自身のデジタル資産(ネット証券、暗号資産、サブスク)の棚卸しを始めておくと、将来の二度手間を防げます。
ケース2:60代・退職前後で、夫婦二人暮らし
時間に余裕ができるタイミングであり、生前整理を本格的に始めるのに向いた時期です。財産の棚卸しと、夫婦それぞれのエンディングノート作成を並行して進める世帯が多く見られます。子どもが独立して部屋が空いている場合は、その部屋から家財の整理を始めると、生活動線に影響を与えずに進められます。この時期に不動産の名義(登記)が先代のままになっていないかも確認しておくと、将来の相続手続きがスムーズになります。名義の確認方法や義務化の詳細は相続登記の義務化とは|期限・過料・実家を相続したらやることで解説しています。
ケース3:70代・独居で、子は遠方に住んでいる
体力面での負担を考慮し、大型家具の移動や高所の片付けなど、身体に負担のかかる作業は早めに家族や業者へ相談したほうが安全です。書類・お金まわりの整理は本人が主体で進められますが、進捗を電話やビデオ通話で子世代と共有しておくと、もしものときに家族が状況をすぐ把握できます。エンディングノートには、緊急連絡先とかかりつけ医の情報もあわせて記載しておくと安心です。
ケース4:80代以降、施設入居を検討中
施設入居までに期限が決まっている場合、優先度は大きく変わります。まず必要なのは「施設に持って行く物」「家族に預ける物」「処分する物」の3分類です。この場合、モノの整理を最優先にせざるを得ないケースが多くなります。判断力があるうちに本人の意向を確認しながら進め、時間が足りない場合は搬出作業だけを業者に依頼するという分担も選択肢です。財産・書類の整理は、施設入居の手続きと並行して進めることになるため、家族のサポートが特に重要になる時期です。
ケース5:持ち家と賃貸で変わるポイント
持ち家の場合は、不動産の名義確認と将来の売却・解体の方針まで視野に入れた整理になります。賃貸の場合は、退去時の原状回復を意識した家財整理が中心になり、大型家具の処分計画を早めに立てておくと、退去時期が急に決まった場合にも慌てずに済みます。持ち家・賃貸のいずれであっても、「今後この家に住み続けるか、いずれ引き払うか」という方針を先に家族と話し合っておくと、モノを残す・残さないの判断基準が明確になります。
| ケース | 最初に着手すべきこと | 特に注意したい点 |
|---|---|---|
| 50代・現役/親が実家に一人暮らし | 親の書類・財産の保管場所を軽く確認 | 切り出し方に配慮し、急がせない |
| 60代・退職前後/夫婦二人暮らし | 財産棚卸しとエンディングノート | 不動産名義の確認もこの時期に |
| 70代・独居/子は遠方 | 体力を要する作業から早めに着手 | 進捗を家族と定期的に共有する |
| 80代以降/施設入居検討中 | 持って行く・預ける・処分するの3分類 | 時間が限られるため搬出は業者活用も検討 |
| 持ち家/将来売却・解体を想定 | 不動産名義の確認と方針の共有 | 相続登記の要否も早めに確認 |
| 賃貸/退去を想定 | 大型家具の処分計画を先に立てる | 退去時期が急に決まる可能性も想定しておく |
品目別・処分方法の選び方
生前整理でモノを減らす際、すべてを同じ方法で処分しようとすると効率が落ちます。品目ごとに向いている処分ルートを知っておくと、判断のスピードが上がります。
| 品目 | 向いている処分方法 | ひと言メモ |
|---|---|---|
| 衣類・古着 | 資源ごみ回収、寄付、買取 | 状態が良い物は買取、それ以外は資源回収へ |
| 着物・帯 | 買取、供養 | 状態や柄によって査定額に差が出やすい |
| 家具(大型) | 粗大ごみ、買取、リサイクルショップ | 自治体の粗大ごみは事前申込制が一般的 |
| 家電(製造5年以内) | 買取 | 動作確認が取れる物は査定対象になりやすい |
| テレビ・冷蔵庫・洗濯機・エアコン | 家電リサイクル法に基づく処分 | 粗大ごみには出せず、リサイクル料金がかかる |
| 書籍・雑誌 | 古紙回収、買取 | まとまった量があれば出張買取も選べる |
| 貴金属・骨董品 | 査定・買取 | 価値が分からないまま処分しない |
| 仏壇・位牌・仏具 | 閉眼供養のうえで処分 | 菩提寺や専門業者に相談してから動く |
| 写真・アルバム | 選別のうえデータ化・保管 | 全部残すのではなく厳選する前提で進めると進みやすい |
| パソコン | 認定リサイクル事業者への引き渡し | データ消去を済ませてから手放す |
迷ったときの基本方針は「価値が分からない物は先に査定へ」「判断に迷わない物から先に減らす」の2つです。仏壇や位牌のように宗教的な意味合いを持つ物は、通常のごみとして扱う前に、菩提寺や専門の供養先に相談することをおすすめします。
生前整理でやってはいけないこと・注意したい落とし穴
やることリストと同じくらい大切なのが、避けるべき進め方です。事務局に寄せられる相談の中でも、次のようなパターンは繰り返し見られます。
- 家族に無断で他人の持ち物を処分する——本人以外の家族(親や配偶者)の持ち物を、本人の同意なく処分すると、後々のトラブルに発展しやすくなります。判断に迷う物は保留にして、本人に確認する時間を作ってください。
- 相続放棄を検討している家族の財産に手をつける——法律上、相続財産の一部でも売却・処分すると「単純承認」とみなされ、相続放棄ができなくなる場合があります。放棄を迷っている段階では、家財の処分に着手する前に司法書士や弁護士へ相談してください。
- 価値の分からない物をまとめて処分する——骨董品や古い着物、貴金属は、見た目だけでは価値が判断できません。処分前に一度、査定に出す習慣をつけると、後悔を減らせます。
- 一度にすべて終わらせようとする——生前整理は数か月から数年かけて進めるものです。短期間で終わらせようとすると、判断力が落ちた状態で重要な決定をしてしまうリスクが高まります。
- デジタル資産の存在を誰にも伝えない——ネット銀行や暗号資産、ポイント資産などは、存在を知らせておかないと家族が把握できないまま失われてしまうことがあります。パスワードそのものを共有できなくても、「どのサービスを使っているか」だけでも書き残しておくと違います。
財産の分け方に希望がある場合は、エンディングノートだけでなく法的効力のある遺言書の作成も検討してください。法務局に自筆証書遺言を預けられる自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、紛失や改ざんのリスクを抑えられます。制度の詳しい要件は法務局または司法書士に確認することをおすすめします。生前贈与を検討する場合も、税制は改正されることがあるため、具体的な金額や制度の適用可否は税理士など専門家に確認したうえで進めてください。
自分でやる部分と、業者に任せる部分の線引き
生前整理のすべてを自分や家族だけで完結させる必要はありません。判断が必要な作業と、体力・車両が必要な作業を分けて考えると、無理なく進められます。
| 作業内容 | 向いている担当 | 理由 |
|---|---|---|
| 財産・書類の仕分け、財産目録づくり | 本人・家族 | 本人の意思確認が欠かせない判断作業のため |
| エンディングノート・遺言書の作成 | 本人(専門家のサポートを受けても可) | 本人の意思そのものを記録する作業のため |
| 大型家具・家電の搬出 | 業者(または家族+レンタカー) | 体力・車両・搬出経路の確保が必要なため |
| 大量の不用品の処分 | 業者 | 分別・運搬・処分先の手配に時間がかかるため |
| 仏壇・仏具の供養・処分 | 菩提寺または専門業者 | 宗教的な手続きの知識が必要なため |
| 骨董品・貴金属の査定 | 買取専門店・古物商許可を持つ業者 | 適正な価値を見極める専門知識が必要なため |
業者に見積もりを依頼する際に確認したいポイント
生前整理を業者に依頼する相談の中で、事務局が特に確認をおすすめしている点は次の4つです。
- 人件費・処分費・買取額の内訳が分かる見積書を出してくれるかどうか
- 一般廃棄物収集運搬の許可、または許可業者との提携の有無
- 買取を行う場合は古物商許可を持っているかどうか
- 搬出時の事故に備えた損害保険への加入状況
この4点は、遺品整理でも共通して確認すべき事項ですが、生前整理では本人が存命で立ち会えるからこそ、その場で質問し、納得したうえで契約できるという利点があります。焦って即決を迫る業者には注意し、複数社を比較検討することをおすすめします。
部分的な依頼、たとえば「大型家具の搬出だけ」「仏壇の供養だけ」といった単発の相談にも対応している業者もあります。すべてを一括で頼む必要はなく、自分たちで進められる部分は自分たちで、体力的に難しい部分だけを切り出して依頼する、という使い方も現実的な選択肢です。
生前整理にかかる期間の目安とスケジュール例
「生前整理は何日で終わるのか」という質問もよく寄せられます。結論から言うと、部屋の片付けのように数日で終わるものではなく、数か月から数年かけて進めるのが一般的です。分野ごとの目安期間をまとめると、次のようになります。
| 分野 | 想定期間の目安 | ポイント |
|---|---|---|
| 財産・書類の現状把握 | 2週間〜1か月 | 通帳・証券を集めて一覧にするだけなら短期間で終わる |
| 財産目録の作成 | 1〜2か月 | 不動産の評価額確認など、外部への問い合わせが挟まると長引く |
| モノ(家財)の整理 | 3か月〜1年 | 物量と判断の速さによって大きく変動する。写真や思い出の品は特に時間がかかる |
| デジタル整理 | 2週間〜1か月 | サブスクの解約だけなら数日、パスワード整理まで含めると1か月程度 |
| エンディングノート・遺言書 | 1〜3か月 | 財産の全体像が固まってから書き始めたほうが手戻りが少ない |
目安として、60代夫婦二人暮らしで物量が標準的な世帯であれば、財産の現状把握からエンディングノートの完成まで、半年から1年程度を見込んでおくと無理がありません。次に、6か月で一通り終える場合のスケジュール例を示します。
| 期間 | 取り組む内容 |
|---|---|
| 1か月目 | 通帳・保険証券・権利証など財産関連書類の在りかを確認し、一覧化する |
| 2か月目 | 財産目録を作成し、負債の有無もあわせて確認する |
| 3〜4か月目 | 衣類・家電・台所用品など判断しやすいモノから順に減らしていく |
| 5か月目 | 写真・着物・骨董品など判断に時間がかかる物を仕分ける。並行してサブスクを見直す |
| 6か月目 | エンディングノートを完成させ、家族と内容を共有する。必要に応じて遺言書の作成を検討する |
この期間はあくまで目安であり、体調や家族の協力度合いによって前後します。大切なのは期限を厳格に守ることではなく、途中で止まってしまわないよう、月に一度でも手を動かす習慣を作ることです。
エンディングノートに書いておきたい項目
やることリストの中でも「意思表示」にあたるエンディングノートは、何をどこまで書けばよいか迷う方が多い項目です。市販のノートには様々な様式がありますが、最低限押さえておきたい項目は次のとおりです。
- 基本情報——本籍地、健康保険証・年金手帳の番号、かかりつけ医と持病、服用中の薬
- 財産情報——預貯金口座の一覧(暗証番号は書かず、保管場所のみ記載する方法が安全)、不動産、有価証券、負債
- デジタル情報——利用しているサービスの一覧、パスワードの保管場所(パスワード自体を書く場合は保管方法に注意する)
- 医療・介護の希望——延命治療についての考え方、介護が必要になった場合に希望する施設や在宅介護の意向
- 葬儀・供養の希望——葬儀の規模感、宗派、お墓の有無、費用感についての考え方
- 形見分けの意向——特定の品を渡したい相手がいる場合はその旨
- 家族へのメッセージ——義務的な項目ではないが、家族にとって最も心に残る部分になりやすい
エンディングノートには法的な効力がありません。財産の分け方について明確な希望があり、法的な効力を持たせたい場合は、エンディングノートとは別に遺言書を作成する必要があります。
遺言書の種類と選び方
遺言書には主に3つの方式があり、それぞれ手軽さと確実性のバランスが異なります。
| 種類 | 作成方法 | 特徴 |
|---|---|---|
| 自筆証書遺言 | 全文を自筆で作成(財産目録は自筆でなくてよい) | 手軽だが形式不備で無効になるリスクがある。法務局の保管制度を使えば紛失・改ざんを防げる |
| 公正証書遺言 | 公証人役場で証人2名の立ち会いのもと作成 | 費用と手間はかかるが、形式不備のリスクが最も低い |
| 秘密証書遺言 | 内容を秘密にしたまま存在のみを公証役場で証明 | 利用件数は少なく、内容の不備リスクは自筆証書遺言と同様に残る |
財産の内容がシンプルで相続人同士の関係が良好な場合は自筆証書遺言でも対応できるケースがありますが、不動産が複数ある、相続人以外に財産を渡したいといった事情がある場合は、公正証書遺言か司法書士・弁護士への相談を検討したほうが安全です。どの方式が適しているかは、財産の内容や家族構成によって異なるため、迷った場合は早めに専門家へ相談してください。
相談窓口でよく見られる進め方のパターン
生前整理の相談を受ける中では、進め方によって結果に差が出やすいパターンがいくつか繰り返し見られます。これから着手する方は、自分の状況が当てはまらないか確認してみてください。
- モノの整理から始めて途中で止まる——押し入れや物置から手をつけ、写真や思い出の品が出てきた時点で判断に時間がかかり、そのまま数か月放置してしまうパターンです。判断に迷う品は「保留箱」を作って一旦分けておき、先に判断しやすい物から片付けを進めると再開しやすくなります。
- 財産の全体像が分からないまま遺言書を書き始める——先に遺言書の文面を考え始めたものの、後から見つかった口座や不動産の扱いが漏れてしまい、書き直しが必要になるケースです。財産目録を先に作ってから意思表示に進むと、この手戻りを避けられます。
- 家族に相談せずに一人で進めてしまう——本人だけで黙々と進めた結果、家族が生前整理をしていたことを知らず、いざという時に保管場所や意向が伝わっていなかったというケースです。進捗をすべて共有する必要はありませんが、「今こういうことを進めている」という事実だけでも伝えておくと、いざという時の混乱を防げます。
- 体力を要する作業を先延ばしにする——大型家具の移動や高い場所の片付けを後回しにし、いざ着手しようとした時には体力的に難しくなっていたというケースです。書類の整理と並行して、体力が必要な作業から早めに計画しておくことをおすすめします。
共通しているのは、順番を決めずに手近な場所から始めてしまい、途中で判断に迷う場面に当たって止まってしまう点です。本文で紹介した「現状把握→優先度づけ→財産・書類→モノ→デジタル→意思表示」という順番を意識するだけで、こうした停滞は起こりにくくなります。
よくある質問
生前整理はまず何から始めればいいですか?
生前整理はいつから始めるべきですか?年齢の目安はありますか?
生前整理でやってはいけないことはありますか?
生前整理は自分でやるべきですか、業者に頼むべきですか?
まとめ
生前整理でやることは多岐にわたりますが、順番と優先度さえ決めてしまえば、迷いなく進められます。要点を振り返ります。
- 最初にやるのはモノの片付けではなく、財産と持ち物の現状把握
- 財産・お金、書類・デジタル、モノ、人間関係・意思表示の4分野に分けて考える
- 進める順番は、現状把握→優先度づけ→財産・書類→モノ→デジタル→意思表示が基本
- 年代・世帯状況によって、最初に優先すべき項目は変わる
- 価値の分からない物は処分前に査定へ。相続放棄を検討中なら財産に手をつける前に専門家へ相談
- 判断が必要な作業は本人・家族、体力を要する作業は業者へと分担する選び方もある
- 見積もり時は、内訳・許可・古物商許可・損害保険の4点を確認する
生前整理は一度に終わらせるものではなく、時間をかけて段階的に進めるものです。まずはこの記事のチェックリストの「最優先」の項目だけでも、今週中に手をつけてみてください。全体の進め方や制度の基本については生前整理とは?メリットと進め方の完全ガイドを、家の売却・解体まで含めた実家じまい全体のチェックリストは実家じまいのチェックリストを、体力の要る作業だけでも任せたい場合は生前整理サービスをご覧ください。
早いこともあります
ご本人と一緒に、1部屋単位から。お見積もりは無料です。ご相談・お見積もりは無料です。

