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相続放棄するなら遺品整理はどこまでできる?触ってはいけないものと単純承認

最終更新日:2026年8月6日|監修:司法書士 久留慎一郎先生・安心実家じまい事務局

司法書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士。

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 不動産の名義変更
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理

この記事の結論

  • 相続放棄をする可能性が少しでもあるなら、現金・預貯金・貴金属・自動車など経済的価値のある遺品には触らないのが基本です。処分すると民法921条の「法定単純承認」とみなされ、相続放棄ができなくなるおそれがあります。
  • 通帳や書類を確認する財産調査は民法915条2項で認められており、処分せずに中身を見るだけなら問題ありません。「触る」と「調べる」は分けて考えてください。
  • 相続放棄には自己のために相続の開始を知った時から3カ月という期限があります。期限に間に合わない場合は、満了前に家庭裁判所へ期間伸長を申し立てる方法があります。
  • 相続放棄をした後も、実家などの財産を現に占有していた場合は次の相続人や相続財産清算人に引き渡すまで保存義務が残ることがあります(民法940条)。
目次

相続放棄と遺品整理――なぜ「触ったら終わり」と言われるのか

親や親族が亡くなり、多額の借金が見つかった、あるいは実家の管理を続ける見通しが立たない。そうした事情から相続放棄を考え始めたとき、多くの方がまず気にするのが「実家の片付けはどこまで進めていいのか」という点です。結論からいうと、相続放棄をする可能性が少しでもあるなら、価値のある遺品を処分することは避けなければなりません。理由は、遺品を処分する行為が「相続する意思がある」とみなされる場合があるからです。

この考え方の根拠は民法921条にあります。法律の条文はやや読みにくいので、まずは条文そのものを確認したうえで、日常の言葉に言い換えてみます。

民法921条(法定単純承認)
次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二 相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。

単純承認とは、普通の言葉で言うと

単純承認とは、亡くなった方のプラスの財産もマイナスの財産も、条件をつけずにすべて引き継ぐことを認めた状態を指します。相続放棄をしたいのに、その前後で財産を処分してしまうと、法律上は「相続することを選んだ人」として扱われてしまい、借金も含めてすべてを背負うことになりかねません。しかも、いったん単純承認とみなされると、後から「知らなかった」「片付けただけのつもりだった」と説明しても、覆すのは容易ではありません。

なぜ「遺品整理」がその引き金になりやすいのか

遺品整理は、家具・家電・衣類・貴金属・車など、亡くなった方名義のあらゆる財産に触れる作業です。テレビや冷蔵庫を運び出す、古い着物を処分する、通帳を解約する。こうした一つひとつの行為が「相続財産の処分」にあたる可能性があり、しかも本人に相続する意思がなくても、客観的に見て処分行為と評価されればアウトになり得ます。だからこそ、相続放棄を検討している段階では、遺品整理そのものを保留にしておくことが勧められているのです。

一方で、亡くなった方の財産状況がわからないまま相続放棄の判断だけを迫られるのも現実的ではありません。次の章では、遺品ごとに「触ってよいか」を整理していきます。

「触ってよいもの」「触ってはいけないもの」品目別チェック表

相続放棄を検討している段階で最も知りたいのは、「結局、何に触っていいのか」という具体的な線引きだと思います。ここでは、実際によく相談される品目を、判断の傾向とあわせて一覧にしました。あくまで一般的な考え方の整理であり、個別の事情によって結論が変わることもあるため、迷う品目が出てきた場合は処分する前に専門家へ相談してください。

品目 触ってよいか 理由・注意点
現金・預貯金通帳 触らない 引き出す・使うと処分行為。通帳の中身を確認するだけの財産調査はOK
株式・投資信託などの有価証券 触らない 売却はもちろん、名義変更も処分行為とみなされる可能性が高い
貴金属・宝石・高級腕時計 触らない 換価価値が高く、形見分けであっても単純承認と判断されやすい
骨董品・絵画・書画 触らない 価値の判断が難しく、無許可で処分すると取り返しがつかない
自動車・バイク 触らない 資産価値がなければ処分行為に該当しないという見方もあるが、価値の有無の判断が難しい
動作する家電(冷蔵庫・洗濯機など) 触らない 買い替え直後などで資産価値が残っている場合は処分行為とされやすい
家具・什器(一般的な中古品) 基本は触らない 市場価値がほぼないと判断できる場合は処分行為にあたらないとする説もあるが、判断が難しい
生活ゴミ・消費期限切れの食品 専門家に確認のうえで判断 明らかに無価値なものの処分は単純承認にあたらないとする専門家が多いが、統一された基準はない
写真・手紙・日記 触ってよいことが多い 第三者から見て換価価値がないものは形見分けの対象になりやすい
仏壇・位牌・墓石 常識的な範囲なら触れることがある 相続財産から通常の範囲の費用で購入した場合は処分にあたらないと判断された裁判例があるとされる。個別の金額感は専門家に確認するのが安全
権利証・保険証券・年金手帳などの書類 見るのはよいが処分しない 財産調査の一環として確認するのは問題ないが、破棄や提出は避ける

経済的価値の有無だけでは判断できないケースがある

この表を見て、「うちの実家にはほとんど価値のあるものがないから大丈夫」と思う方もいるかもしれません。ただし、注意したいのは、価値の有無は本人の主観ではなく、第三者から見た客観的な評価で判断される点です。古いブランド品のバッグ、動作するかどうかわからない家電、年式の古い車。こうしたものは「価値がない」と思い込んでいても、査定に出せば数万円の値がつくこともあります。相続放棄をする可能性が残っている限りは、自己判断で「これは無価値だから大丈夫」と処分するのではなく、迷うものはそのままにしておくことが、後悔しない一番の近道です。

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ケースで考える遺品整理の判断

実際の相談では、「うちの場合はどうすればいいのか」という個別の状況を知りたい方がほとんどです。ここでは、よくあるケースを取り上げ、判断の考え方を紹介します。いずれも一般的な傾向の説明であり、最終的な判断は個別の事情によって変わるため、実際に行動する前には弁護士や司法書士への確認をおすすめします。

ケース1 実家の中身はほとんど生活ゴミや古い日用品しかない

市場価値のないものが中心であれば、処分しても単純承認にあたらないと考える専門家は少なくありません。ただし、押し入れの奥や納戸に、価値のある骨董品や現金が紛れていることもあります。片付けを始める前に、まず全体をひと通り確認し、価値の判断がつかないものを取り分けておくと安全です。

ケース2 自宅の中から現金や通帳が見つかった

見つけた現金を使ってしまう、通帳を解約してしまうといった行動は避けてください。中身を確認して財産状況を把握するところまでは民法915条2項で認められた調査ですが、それを使う・動かすことは処分行為にあたります。見つけた現金は手をつけずに保管し、相続放棄をするかどうかの判断材料として記録しておきましょう。

ケース3 賃貸住宅で、管理会社から部屋の明け渡しを求められている

賃貸借契約の解約は、故人の「賃借権」という財産を処分したとみなされる可能性があります。管理会社から急かされても、相続放棄を検討している間は自分から解約を申し出ないほうが無難です。事情を説明し、方針が固まるまで待ってもらえないか相談してみてください。どうしても対応が必要な場合は、先に専門家へ相談することをおすすめします。

ケース4 孤独死で発見が遅れ、特殊清掃が必要な状態になっている

近隣への影響や衛生面から、一刻も早く対応したい気持ちになるのは当然のことです。それでも、相続放棄をする可能性があるなら、清掃や片付けに着手する前に専門家へ連絡することを強くおすすめします。緊急性の高さと法的なリスクが両立しにくい難しい場面であり、自己判断で進めてしまうと、後から相続放棄が認められなくなるおそれがあります。管理会社や近隣には「専門家に相談しながら進めている」ことを伝え、時間を確保してください。

ケース5 仏壇や位牌、お墓の扱いに困っている

仏壇や位牌は、経済的な価値というより慣習や信仰の対象としての性格が強く、常識的な範囲での供養やお焚き上げの手配であれば、これまでの裁判例でも処分行為にあたらないと判断された例があります。ただし、金箔や貴金属が使われた高価な仏具など、換価価値が高いと見られるものは慎重な判断が必要です。迷う場合は、供養の手配だけを先に進め、処分の判断は専門家に相談してから行うとよいでしょう。

ケース6 相続人が自分しかおらず、実家の管理者が誰もいない

このケースでは、相続放棄をしても管理義務が残ることがあります。詳しくは次の章で説明しますが、「誰も管理しなくてよい」わけではない点に注意してください。

相続放棄の手続きと期限――遺品整理より先に押さえておきたいこと

遺品整理をどうするか判断するためにも、相続放棄そのものの手続きと期限を理解しておくことが欠かせません。相続放棄には「自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内」という期限があります(民法915条1項)。この3カ月は「熟慮期間」と呼ばれ、相続人が単純承認・限定承認・相続放棄のいずれを選ぶかを考えるための期間です。

手続きは、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続放棄の申述書」と必要書類を提出して行います。申述には収入印紙800円分と、申述先の家庭裁判所ごとに金額が異なる郵便切手代が必要です。書類の準備や記載に不安がある場合は、弁護士や司法書士に依頼することもできます。専門家に依頼する場合の費用は事務所や事案の複雑さによって幅があるため、相談時に見積もりを確認することをおすすめします。

時期の目安 やるべきこと 注意点
相続開始を知った直後 遺品には触れず、通帳・書類などの財産調査を始める 家探しをするだけなら民法915条2項で認められている
1カ月前後 資産と負債の全体像を把握する 金融機関への残高照会、信用情報機関への開示請求などを検討
2カ月前後 単純承認・限定承認・相続放棄のどれにするか方針を固める 判断がつかない場合は早めに専門家へ相談する
3カ月以内(熟慮期間満了まで) 方針が決まったら家庭裁判所へ申述する 間に合わない場合は満了前に期間伸長を申し立てる
申述後・受理後 受理されるまで遺品には触れない。受理後も現に占有する財産の保存義務が残ることがある 受理されても、後から相続放棄の有効性が争われる余地は残る

期限に間に合わなさそうなときは「期間伸長」の申立てを

財産状況の調査に時間がかかり、3カ月では判断がつかないこともあります。その場合は、熟慮期間が満了する前に、家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てることができます(民法915条1項ただし書)。期限を過ぎてから慌てて相談するのではなく、間に合わないと感じた時点で早めに申し立てることが大切です。

相続放棄は、いったん受理されると撤回できない

民法919条1項により、相続の承認・放棄は熟慮期間内であっても撤回することができません。後から高価な遺品が見つかったとしても、原則としてやり直しはききません。だからこそ、遺品整理を急いで進める前に、財産の全体像を把握してから判断することが重要になります。

借金の一部だけを引き継ぎたい場合は「限定承認」という選択肢もある

相続財産の中にプラスの財産とマイナスの財産が混在していて、どちらが多いか判断がつかない場合には、限定承認という方法もあります。限定承認は、相続財産の範囲内でだけ借金を引き継ぐ制度で、たとえば評価額1,000万円の実家とその他の資産があり、借金が500万円だったケースでは、資産の範囲内で借金を清算したうえで残りの財産を引き継ぐことができます。ただし、限定承認は相続人全員が共同で行う必要があり(民法923条)、申述の期限も相続放棄と同じ3カ月以内です(民法924条)。相続人が複数いる場合は、早い段階で足並みをそろえる必要があります。

三つの選択肢を、同じ財産状況(実家などの資産評価額1,000万円・借金500万円という仮の例)で比べると、次のようなイメージになります。実際の税金や手続き費用は含めていない簡易な比較ですので、目安としてご覧ください。

選択肢 引き継ぐプラスの財産 引き継ぐ借金 遺品整理はどうなるか
単純承認 1,000万円分すべて 500万円すべて 相続人として通常どおり進めてよい
限定承認 相続財産の範囲内(借金清算後の残額) 相続財産の範囲内でのみ負担 相続人全員の申述後、清算手続きの中で進める
相続放棄 引き継がない 引き継がない 原則として着手しない。現に占有する財産のみ保存義務が残る場合がある

限定承認は、実家のように「手放したくないが借金も心配」という財産がある場合に検討される制度ですが、相続人全員の同意と、財産目録の作成という手間がかかります。実務ではあまり選ばれる件数が多くない制度でもあるため、利用を検討する場合は早い段階で弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。

支払いや解約で判断に迷う場面

遺品そのものだけでなく、亡くなった方に代わって何かを支払う・解約するという場面でも、単純承認にあたるかどうかの判断に迷うことがあります。相談で特によく聞かれる項目を整理します。

葬儀費用・仏具の購入

お通夜やお葬式は日本の慣習として広く行われており、裁判例でも、社会通念上相当と認められる範囲の葬儀費用であれば、相続財産から支払っても処分にあたらないと判断される傾向があります。仏壇や墓石についても、常識的な範囲の支出であれば同様に扱われた例があります。ただし「相当な範囲」がどこまでかは事案ごとの判断になるため、高額になりそうな場合や判断に迷う場合は、支払い前に専門家に確認しておくと安心です。

入院費・医療費の請求

亡くなった後に病院から入院費の請求が届くことがあります。相続財産の中から支払ってしまうと単純承認にあたる可能性があるため、支払いは避けてください。どうしても支払う必要がある場合は、相続財産からではなく、相続人自身の資産から支払うようにします。なお、保証人になっていた場合や、日常家事債務として連帯して責任を負う場合(民法761条)は、相続放棄をしても支払い義務が残ることがあります。

税金や借金の返済

固定資産税や住民税の未納分、消費者金融などへの借金の返済も、相続財産から行うと処分行為とみなされるおそれがあります。督促状が届いても、相続放棄を検討している間は相続財産から支払わないでください。滞納分の固定資産税についても、支払わずに放置して問題ないケースがほとんどです。

公共料金・携帯電話の解約

電気・ガス・水道や携帯電話の契約解除についても、無駄な支払いを防ぐ「保存行為」として許されるという考え方がある一方、明確な基準が定まっているわけではありません。解約する・しないのどちらであっても不安が残る場合は、解約せずに保留し、専門家に確認してから対応することをおすすめします。

生命保険金・死亡退職金は受け取れるか

相続放棄をすると、預貯金や不動産など亡くなった方名義の財産は一切引き継げなくなりますが、生命保険金や死亡退職金は扱いが異なる場合があります。受取人として特定の個人が指定されている生命保険金は、受取人固有の財産とされ、相続放棄をしても受け取れることが一般的です。ただし、保険契約の内容や約款、退職金に関する規定によって扱いが異なることもあるため、受け取る前に保険会社や勤務先へ確認しておくと安心です。この点は、相続放棄を考える際に経済的な不安を和らげる材料のひとつになります。

相続放棄したのに遺品整理が必要になるケース

「相続放棄をすれば、実家のことは一切関わらなくてよくなる」と思われがちですが、実際にはそう単純ではありません。民法940条は、相続放棄をした時点でその財産を現に占有していた場合、次の相続人または相続財産の清算人に引き渡すまで、自分の財産と同じ注意をもって保存しなければならないと定めています。この規定は2023年4月の民法改正で見直され、管理義務の対象が「現に占有している財産」に絞り込まれる形で明確になりました。

つまり、実家で親と同居していた、あるいは鍵を預かって管理していたといった事情がある場合、相続放棄をしても、家の保存に必要な最低限の対応は続ける必要があるということです。庭木が伸びて近隣に迷惑がかかっている、雨漏りで建物が傷んでいるといった状態を放置してよいわけではありません。

次の相続人がいない場合は「相続財産清算人」が管理を引き継ぐ

相続人全員が相続放棄をした場合や、そもそも相続人がいない場合は、家庭裁判所が利害関係人や検察官の請求により「相続財産の清算人」を選任します(民法952条)。清算人が選任されて財産を引き渡せば、それまで管理義務を負っていた人はその義務から解放されます。選任の申立てには家庭裁判所への予納金が必要になることが多く、金額は事案によって数十万円程度からと幅があります。正確な金額や申立ての進め方は、申立て先の家庭裁判所や専門家に確認してください。

孤独死・連帯保証人だったケースは特に注意

故人が孤独死し発見が遅れた場合や、賃貸住宅の連帯保証人になっていた場合は、相続放棄の有無にかかわらず対応が必要になることがあります。連帯保証人としての立場は相続放棄によって消えるものではなく、家主や管理会社からの請求に応じなければならない場合があります。こうした複雑な事情が重なるケースほど、自己判断で動かず、早めに専門家に相談することが結果的に負担を減らします。

どうしても急いで片付けなければならないときは

相続放棄を検討していても、近隣からの苦情や賃貸の明け渡し期限など、現実には「待ったなし」の事情が重なることがあります。安心実家じまいにも、こうした切迫した状況でのご相談が寄せられます。現場で意識しているのは、次のような進め方です。

  • 作業前に、相続放棄を検討中かどうかを最初にお伺いする——お問い合わせの時点で相続放棄の可能性があることがわかれば、価値のある遺品には触れず、写真記録の作成にとどめるようご案内します。
  • 処分と保管を分けて進める——生活ゴミなど明らかに無価値なものと、価値の判断が難しいものを分け、後者はいったん保管して専門家の判断を待ちます。
  • 作業の記録を写真で残す——何を、いつ、どのような状態で確認したかを記録しておくことは、後から専門家に相談する際の材料にもなります。
  • 専門家への相談を先に案内する——判断に迷う場面では、作業を急がせず、弁護士・司法書士への相談を先にすすめます。安心実家じまいでは提携司法書士と連携しながら対応することも可能です。

「早く片付けてしまいたい」という気持ちと、「相続放棄の可能性を残しておきたい」という気持ちは、どちらも自然なものです。両立させるためには、片付けそのものを急ぐのではなく、記録と保管を先に進め、処分の判断はあとから行うという順番が現実的です。

遺品整理を始める前の実務チェックリスト

相続放棄を検討している段階で遺品整理に着手する場合、次の項目を順番に確認しておくと、後から判断に迷う場面を減らせます。印刷してそのままご活用ください。

確認項目 チェックのポイント
相続放棄をする可能性があるか 少しでも可能性があるなら、以下の項目をすべて確認してから着手する
財産調査は済んでいるか 通帳・証券・保険証券・権利証などの書類を確認済みか(処分はしない)
現金・預貯金に触れていないか 見つけた現金は使わず、そのまま保管しているか
価値の判断がつかない品を分けているか 貴金属・骨董品・電化製品などを「保管」の箱に分けてあるか
作業前後の写真を残しているか 部屋ごと・収納ごとに、着手前と作業後の写真を撮っているか
賃貸契約・公共料金を解約していないか 解約や名義変更を自分の判断で進めていないか
専門家に相談したか 判断に迷う品目や状況について、弁護士・司法書士に確認したか
3カ月の期限を把握しているか 熟慮期間の起算日と満了日をカレンダーに記入したか

このチェックリストは、相続放棄を確実に成立させるための最低限の目安です。個別の事情によって必要な対応は変わるため、判断に迷う項目が一つでもあれば、着手する前に専門家へ相談してください。

費用や進め方に不安があるときに知っておきたいこと

相続放棄を考える背景には、実家の管理が難しい、借金が心配、費用をかけたくないといった事情が重なっていることが多いものです。遺品整理そのものの費用感や進め方については、遺品整理の料金相場を間取り別に解説で詳しく紹介しています。相続放棄をする方針が固まった後、あるいは相続することが確定した後に片付けを進める場合の参考にしてください。

また、遺品整理全体の流れや、いつから着手すればよいかといった基本的な考え方は、遺品整理とは?いつから・費用・捨ててはいけないもの 完全ガイドにまとめています。相続放棄が絡まない一般的なケースの参考としてご覧ください。

遠方に住んでいて実家に頻繁に通えない場合、財産調査だけでも自分で行うのは負担が大きいと感じる方もいます。通帳や書類の確認を先に済ませたうえで、処分や搬出が必要な段階になってから業者に相談するという順番であれば、遠方からでも進めやすくなります。

安心実家じまいにできること

安心実家じまいは、遺品整理から実家の売却・解体の手配までを一つの窓口でお受けする全国対応のサービスです。相続放棄を検討中というご相談をいただいた場合、価値のある遺品を先に処分してしまうことのないよう、まずは状況をお伺いしたうえで、必要に応じて専門家への相談を案内しています。作業を急がせることはありません。

相続する方針が固まった後の片付けは遺品整理サービスで承ります。実家の売却や解体まで見据えている場合は、実家じまい代行パックもご検討ください。相続登記など法律手続きが絡む場合は、提携司法書士と連携して進めます。相続放棄をするかどうかで迷っている段階でも、まずは状況だけでもお気軽にご相談ください。LINEでの無料相談にも対応しています。

よくある質問

相続放棄を考えているとき、遺品整理をしても大丈夫ですか?
相続放棄をする可能性が少しでもあるなら、遺品には触らないことが基本です。現金や貴金属など経済的価値のあるものを処分・使用すると、民法921条の「法定単純承認」にあたり、相続放棄ができなくなるおそれがあります。一方で、通帳や督促状を確認するといった財産調査は民法915条2項で認められており、遺品を処分せずに中身を見るだけであれば問題ありません。方針が決まるまでは、調査にとどめておくと安心です。
生活ゴミや価値のないものを処分しても相続放棄はできなくなりますか?
腐敗した食品のように誰が見ても財産的価値がないものについては、処分しても単純承認にあたらないと考える専門家が多いのが実情です。ただし、この点を明確に定めた法律や判例があるわけではなく、価値の有無の判断が難しい遺品も少なくありません。相続放棄をする可能性が残っている段階では、判断に迷うものにはできるだけ触れず、専門家に確認しながら進めることをおすすめします。
相続放棄をした後は、実家の管理や遺品整理をしなくてよくなりますか?
そうとは限りません。民法940条により、相続放棄をした時点で実家などの財産を現に占有していた場合、次の相続人または相続財産の清算人に引き渡すまでは、自分の財産と同じ注意をもって保存する義務が残ります。相続放棄をしても、誰も管理する人がいない状態のまま実家を放置してよいわけではない点に注意が必要です。
遠方に住んでいて相続放棄をするか迷っています。実家の片付けはどう進めればいいですか?
まずは通帳や督促状、権利証などを確認する財産調査だけを先に行い、家財の処分や搬出は相続放棄をするかどうかの方針が固まってから進めるのが安全な順番です。安心実家じまいでは、相続放棄が絡む可能性があるご相談を受けた場合、作業を急がずに専門家への相談を案内したうえで、方針が決まってからの片付けをサポートしています。
相続放棄の相談は誰にすればいいですか?費用はどれくらいかかりますか?
相続放棄の申述そのものは家庭裁判所に対して行うもので、収入印紙800円分と、申述先の家庭裁判所ごとに異なる郵便切手代がかかります。遺品整理の可否や単純承認にあたるかどうかの判断に迷う場合は、弁護士や司法書士といった専門家に早めに相談すると安心です。費用は事務所や事案の内容によって幅があるため、相談時に見積もりを確認することをおすすめします。

まとめ

相続放棄を考えているときの遺品整理は、「触ってよいか」を一つひとつ立ち止まって判断することが何より大切です。要点を振り返ります。

  • 現金・預貯金・貴金属・自動車など経済的価値のある遺品は処分しない。処分すると民法921条の法定単純承認にあたり、相続放棄ができなくなるおそれがある
  • 通帳や書類を確認する財産調査は民法915条2項で認められている。「触る」と「調べる」は分けて考える
  • 相続放棄の期限は、相続の開始を知った時から3カ月。間に合わない場合は満了前に期間伸長を申し立てられる
  • 相続放棄は一度受理されると撤回できない(民法919条)。判断は財産の全体像を把握してから行う
  • 相続放棄をしても、財産を現に占有していた場合は次の相続人や相続財産清算人に引き渡すまで保存義務が残ることがある(民法940条)
  • 孤独死や連帯保証人など、緊急性の高い事情がある場合ほど、自己判断ではなく専門家への早期相談が結果的に負担を減らす
  • 価値の判断に迷う遺品は、処分せず保管し、写真で記録を残しておく

「相続放棄をするかもしれないけれど、実家をどうしたらいいかわからない」という状況は、決して珍しいことではありません。焦って片付けを進めるよりも、まずは財産調査だけを先に済ませ、方針が固まってから作業に着手するという順番を意識してください。判断に迷う場面では、一人で抱え込まず、専門家や窓口に相談することをおすすめします。遺品整理全体の進め方は遺品整理の完全ガイドを、費用の目安は遺品整理の料金相場を間取り別に解説をあわせてご覧ください。

読むより、聞いたほうが早いこともあります

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この記事を書いた人

安心実家じまい事務局です。実家の片付けや遺品整理、空き家になった家の処分について、はじめての方にも分かるように記事を書いています。提携している現場の業者や司法書士と一緒に、費用の相場・自治体のごみ出しルール・補助金といった、調べてもなかなか分かりにくいところを一つずつ確かめながらまとめています。「誰に頼めばいいか分からない」という段階のご相談も、LINEやお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。

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