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空き家買取業者の選び方|仲介との違い・相場・注意点

最終更新日:2026年8月6日|監修:司法書士・行政書士 久留慎一郎先生・安心実家じまい事務局

司法書士・行政書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 不動産の名義変更
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理

この記事の結論

  • 空き家買取は現金化までの早さが最大の利点ですが、価格は仲介での想定成約額より6〜8割程度に下がる傾向があります。急ぐ理由がなければ、まず仲介での査定額と比較してから選んでください。
  • 買取業者には専門の買取再販業者・地元不動産会社・大手仲介会社系列・空き家特化型があり、それぞれ価格の付け方と対応物件が異なります。宅建業の免許番号と自社買取かどうかの確認が最初の一歩です。
  • 相続した空き家を売却する場合、要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があり、税額が0円になるケースもあります。
  • 登記簿の名義が故人や先代のままでは契約自体ができません。査定と並行して相続登記の準備を進めておくことが、良い条件を逃さないコツです。
目次

空き家買取と仲介、何が違うのか

実家が空き家になったとき、売却の窓口となる不動産会社の対応方法には大きく分けて「仲介」と「買取」の2種類があります。この違いを理解しないまま業者に相談すると、想定していた金額やスケジュールと実際の話が食い違い、後になって後悔することがあります。まず両者の仕組みを整理します。

仲介は、不動産会社が売り手と買い手の間に立ち、個人や法人の買い手を探して契約を成立させる方法です。不動産会社自身は物件を購入せず、成約時に仲介手数料を受け取ります。買い手が見つかるまでの期間は物件や価格次第で数週間から半年以上かかることもありますが、市場に広く情報を出す分、条件が合えば相場に近い価格での成約が期待できます。

買取は、不動産会社が物件を直接購入する方法です。買い手を探す工程がないため、査定から契約・決済までを数週間〜1か月程度で終えられる場合があります。ただし、買い取った後に不動産会社がリフォームや解体をして再販するため、そのコストとリスクを見込んだ分だけ、提示価格は仲介での想定成約額より低くなる傾向があります。

仲介 買取
買い手 市場で探す個人・法人 不動産会社自身
価格の傾向 相場に近い価格を狙える 仲介想定額より下がりやすい
現金化までの期間 数週間〜半年以上(買い手次第) 数週間〜1か月程度が目安
契約不適合責任 個人間売買でも一定期間免除されないことが多い 「契約不適合責任免責」での契約が一般的
内覧・近隣対応 複数回の内覧対応が必要になりやすい 内覧は少なめで済むことが多い
仲介手数料 売買価格に応じて発生(法定上限あり) 発生しないことが一般的
向いているケース 時間に余裕がある・価格を優先したい 早く現金化したい・修繕せず手放したい

「早さを取るか、金額を取るか」という単純な二択に見えますが、実際には空き家の状態によって選択の幅が変わります。再建築不可物件や倒壊のおそれがある建物は、そもそも仲介での買い手が見つかりにくく、実質的に買取一択になることも珍しくありません。逆に、駅近で状態の良い戸建てであれば、多少時間をかけても仲介のほうが総額で有利になるケースが多く見られます。まずは仲介の査定額と買取の査定額を両方取り、差額と時間のどちらを優先するかを家族で話し合うことをおすすめします。

もう一つ知っておきたいのが「買取保証」という仕組みです。これは、まず一定期間は仲介で売り出し、期限までに買い手が見つからなければあらかじめ決めた金額で不動産会社が買い取る、という併用型の契約です。仲介での高値売却にチャレンジしつつ、期限を過ぎたら確実に現金化できる安心感があります。相続税の申告期限や、実家の管理コストを気にしている場合に検討する価値があります。

仲介手数料の目安(参考)

買取では発生しないことが多い仲介手数料ですが、仲介を選ぶ場合の目安として、宅建業法で定められた上限額の速算式を紹介します。実際の手数料は、この上限の範囲内で不動産会社と合意した金額です。

売買価格の区分 仲介手数料の上限(速算式・税別)
200万円以下の部分 売買価格×5%
200万円超400万円以下の部分 売買価格×4%+2万円
400万円超の部分 売買価格×3%+6万円

たとえば売買価格1,000万円であれば、上限額は「1,000万円×3%+6万円=36万円」に消費税を加えた金額です。低廉な空き家等については、現地調査などにかかる費用を上乗せできる特例が設けられており、通常の速算式より上限が緩和される場合があります。正確な金額と特例の適用可否は、依頼先の不動産会社に確認してください。

空き家買取の価格相場と査定の考え方

買取価格がどう決まるかを知っておくと、提示された金額が妥当かどうかを判断しやすくなります。買取業者は、次の要素を積み上げて査定額を算出します。

  • 再販予定価格の見込み——立地・築年数・間取りから、リフォームまたは解体・更地化後にいくらで売れそうかを見積もります。
  • リフォーム・解体費用——建物を活かして再販するならリフォーム費用、更地にして売るなら解体費用を、見込み売却価格から差し引きます。
  • 諸経費・利益——登記費用、保有期間中の固定資産税、金利負担、そして業者の利益分を上乗せして原価を算出します。
  • リスク調整——再建築不可、境界未確定、権利関係が複雑といった要素があるほど、業者はリスク分を差し引いた金額を提示します。

この積み上げ方式のため、買取価格は「仲介での想定成約価格からリフォーム・解体費用と業者利益を差し引いた金額」に近づく構造になっています。業界で一般的に語られる目安は、仲介での想定成約価格の6〜8割程度ですが、建物の傷み具合や再建築の可否によって幅があり、一律の数字ではありません。正確な金額は、複数の買取業者と仲介の査定を実際に取って比較する以外に把握する方法がないという点は、正直にお伝えしておきます。

ケース別に見る「買取向き」「仲介向き」の目安

すべての空き家に同じ判断基準を当てはめることはできませんが、次のような傾向は参考になります。あくまで一般的な傾向であり、個別の物件は現地査定で確認してください。

物件の状態 傾向 理由
駅近・築浅・状態良好 仲介向き 個人の買い手が見つかりやすく、時間をかける価値がある
築40年超・老朽化が進む戸建て 買取向きが多い 住宅ローン審査が通りにくく個人の買い手が付きにくい
再建築不可物件 買取向き 個人向け仲介市場が極めて狭い
相続人が複数で早期に現金化したい 買取が現実的 遺産分割協議を早く終わらせたい事情と相性が良い
特殊清掃が必要な事故物件 買取向きが多い 個人への告知義務や心理的負担から仲介が難航しやすい
相続税の納税資金が必要 買取または買取保証 申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月)に間に合わせやすい

実家の売却を検討する段階では、まず仲介での想定価格を把握しておくと、買取の提示額が妥当かどうかを判断しやすくなります。査定の受け方や必要書類の詳細は実家売却の査定の受け方で解説しています。

都市部と地方で異なる買取の考え方

買取価格の考え方は、物件が都市部にあるか地方にあるかでも変わります。都市部・郊外の駅近物件では、解体して更地にしたうえでの再販(建売用地としての活用)を前提に査定されることが多く、土地の相場そのものが査定額のベースになります。一方、地方や山間部の実家では、そもそも次の買い手を見つけにくいことが査定額を押し下げる要因になります。同じ延床面積・築年数でも、地方の物件は「解体費用を差し引いても再販できるか」という採算ラインの見極めがより厳しくなる傾向があります。

参考として、想定される仲介成約価格別に、買取価格がどの程度の幅になりやすいかを示します。以下はあくまで説明のための試算で、実際の金額は個別の査定によって決まります。

仲介での想定成約価格 買取価格の目安(6割の場合) 買取価格の目安(8割の場合)
500万円 約300万円 約400万円
1,000万円 約600万円 約800万円
1,500万円 約900万円 約1,200万円
2,000万円 約1,200万円 約1,600万円

この差額が同じ物件でも数百万円単位で変わり得ることを把握したうえで、「早さを取ってこの差額を許容できるか」を検討することが、後悔しない選択につながります。

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空き家買取業者の種類と選び方

「買取業者」とひとくちに言っても、実態はいくつかのタイプに分かれます。それぞれ得意分野と価格の付け方が異なるため、自分の実家の状態に合ったタイプを知っておくと、無駄な問い合わせを減らせます。

業者タイプ 特徴 向いている物件
買取再販の専門業者 自社で買い取りリフォームして再販売する。全国対応や再建築不可物件専門の会社もある 老朽化物件・再建築不可・訳あり物件
地元の不動産会社(自社買取) 地域の相場と再販ルートに詳しい。買取と仲介の両方を扱う会社も多い 地方の戸建て・地元での需要が読める物件
大手仲介会社の買取窓口 大手不動産会社のグループ会社が買取を担当。ブランドの信頼感がある 都市部の物件・スピードより安心感を重視したい場合
空き家・古家特化型の買取業者 解体前提での土地としての価値を重視。倒壊リスクのある家屋も対象になりやすい 長期間放置された空き家・倒壊の危険がある建物

問い合わせ先を選ぶ際は、対応エリアも確認しておいてください。ウェブサイトに「全国対応」と書かれていても、実際には特定の地域に強い提携業者を紹介する形になっている場合があります。実家がある市区町村での取引実績があるかを尋ねると、対応エリアの実態を把握しやすくなります。

どのタイプに相談する場合も、最初に確認しておきたいのが宅地建物取引業の免許です。免許は「国土交通大臣(ロ)第◯◯号」または「◯◯県知事(ロ)第◯◯号」のように表示され、カッコ内の数字は更新回数を示します。数字が大きいほど営業年数が長い目安になりますが、それだけで信頼度が決まるわけではないため、あわせて実績や口コミも確認してください。

「自社買取」なのか「仲介の紹介」なのかを見極める

問い合わせ窓口によっては、自社で買い取るのではなく、提携する買取業者を紹介するだけの仲介的な立場のところもあります。この場合、紹介料が価格に反映されて提示額が下がったり、交渉の窓口が分かりにくくなったりすることがあります。「御社が直接買い取るのですか、それとも他社を紹介するのですか」と最初に尋ねておくと、後の話がスムーズです。

囲い込みのリスクも知っておく

仲介を選んだ場合に注意したいのが「囲い込み」と呼ばれる行為です。売主が仲介を依頼した不動産会社が、他社からの買主紹介を意図的に断り、自社で買い手も見つけて両手の仲介手数料を得ようとするケースが指摘されています。専任媒介契約や専属専任媒介契約では、レインズ(不動産流通標準情報システム)への登録が宅建業法で義務付けられており、専属専任媒介は契約から5営業日以内、専任媒介は7営業日以内に登録することとされています。登録後の状況をレインズの「取引状況」欄で確認できるほか、担当者に「他社からの問い合わせ状況」を定期的に尋ねることも、囲い込みを防ぐ手段になります。

買取業者選びで確認したい5つのポイント

  • 宅建業の免許番号——免許の実在を都道府県や国土交通省のネガティブ情報等検索システムで確認できます。
  • 自社買取か仲介の紹介か——契約の相手方が誰になるかを明確にしておきます。
  • 査定額の根拠——近隣の取引事例や再販計画など、金額の裏付けを説明できるかを確認します。
  • 契約不適合責任の扱い——買取では免責が一般的ですが、契約書の条文で明記されているかを確認します。
  • 決済までの期間——「最短◯日」という宣伝文句だけでなく、実際のスケジュールを書面で確認します。

たとえば「査定額の根拠」を尋ねたときに、「周辺相場から見てこのくらいです」といった曖昧な回答しか得られない場合は注意が必要です。信頼できる業者であれば、「近隣の類似物件が過去にいくらで成約したか」「解体費用をいくらと見込み、再販想定価格から逆算したか」といった、具体的な数字の積み上げを説明できます。この説明ができるかどうかは、そのまま業者の誠実さを測る指標になります。

査定から契約までにかかる日数の目安

業者タイプによって、査定から契約までの標準的なペースにも違いがあります。急ぎの事情がある場合は、問い合わせの時点で目安の日数を確認しておくと、スケジュールの見通しが立てやすくなります。

業者タイプ 簡易査定〜現地調査 現地調査〜契約 契約〜決済
買取再販の専門業者 数日〜1週間程度 1〜2週間程度 2週間〜1か月程度
地元の不動産会社(自社買取) 1週間程度 1〜2週間程度 2週間〜1か月程度
大手仲介会社の買取窓口 1〜2週間程度 2〜3週間程度 1か月前後

(いずれも一般的に語られる目安で、名義変更の状況や物件の複雑さによって前後します)相続登記が未了の場合や、境界確定測量が必要な場合は、この目安より長くなることを見込んでおくと安心です。

用途地域・都市計画による違い

同じ広さの土地でも、都市計画法上の用途地域によって建てられる建物の種類や規模が変わるため、査定額にも影響します。第一種低層住居専用地域のように建物の高さや用途が厳しく制限されている地域は、戸建て需要が中心になり、商業地域や近隣商業地域に近いエリアはアパートや店舗としての活用も視野に入るため、買取業者の評価軸が異なります。市街化調整区域に指定されている土地は、原則として新たな建築が制限されており、買い手が限られる傾向があります。実家がどの用途地域にあるかは、市区町村の都市計画課の窓口やホームページで確認できます。

地方の空き家に特有の論点

山林や田畑が付随する実家、接道条件を満たさない集落内の家屋、人口減少が進む地域に近い立地の実家は、都市部とは異なる論点が加わります。山林部分は宅地と切り離して評価されることが多く、買取業者によっては宅地のみを買い取り、山林部分は別途、相続土地国庫帰属制度や地元の森林組合への相談を勧められることもあります。接道のない家屋は再建築不可物件と同様の扱いになりやすく、専門業者への相談が現実的です。地方の空き家は、都市部を拠点とする買取業者では対応エリア外となることも多いため、地元の不動産会社や、全国対応をうたう空き家特化型の業者に早い段階で相談しておくと、選択肢を狭めずに済みます。

契約前に確認したいチェックリスト

複数の買取業者と話をしていると、提示条件の違いを比較しきれなくなることがあります。次の項目を、業者ごとにメモしておくと比較がしやすくなります。印刷してそのままお使いいただけます。

確認項目 チェックの視点
宅建業の免許番号 番号が実在するか、更新回数はいくつか
査定額とその根拠 近隣の成約事例や再販計画を説明してもらえるか
自社買取か紹介か 契約の相手方が誰になるかが明確か
手付金・決済のスケジュール 契約から決済までの期間、支払いのタイミング
契約不適合責任の条文 免責の範囲が契約書に明記されているか
解体・残置物の扱い 家財が残った状態での買取が可能か、別途費用が発生するか
境界の確定状況 境界確定測量が必要かどうか、費用負担はどちらか
抵当権など登記の状態 抹消が必要な権利が残っていないか
相続登記の完了時期 契約までに名義変更が間に合うか
解約時の違約金条項 契約後に取りやめる場合のペナルティの有無

各社から受け取った査定書は、金額だけメモして原本を処分してしまいがちですが、内訳・有効期限・担当者名まで含めて保管しておくと、後から条件を比較したり、他社との交渉材料にしたりする際に役立ちます。口頭で聞いた説明も、可能であればメールなど文字に残る形でもらっておくと、「言った言わない」のトラブルを防ぎやすくなります。

とくに見落とされやすいのが「残置物の扱い」です。遺品整理が終わっていない状態でも買取に応じる業者はありますが、その場合は片付け費用が査定額から差し引かれることが一般的です。先に家財を片付けておいたほうが総額で有利になるかどうかは、業者に両方のパターンで見積もりを出してもらうと判断しやすくなります。片付けの費用感は実家じまい代行サービスでご案内しています。

契約不適合責任とは何か

契約不適合責任とは、引き渡した物件が契約内容と異なっていた場合(雨漏り、シロアリ被害、給排水管の故障、土壌汚染など)に、売主が買主に対して負う責任です。個人間の仲介売買では、この責任を免除しない、または短期間(引き渡しから3か月程度)に限定して契約するのが一般的です。一方、買取では不動産会社がプロとして物件を精査したうえで購入するため、「契約不適合責任免責」、つまり引き渡し後に不具合が見つかっても売主は責任を負わない条件での契約が広く行われています。これは買主が不動産会社であることによるリスク分担の違いであり、免責になっている分だけ、査定額に安心料が織り込まれていると理解しておくと納得しやすくなります。契約書にこの条項が明記されているかどうかは、契約前に忘れず確認してください。

査定時に渡すと話が早くなる資料

初回の問い合わせや現地調査の際、次の資料を用意しておくと、査定の精度が上がり、やり取りの回数を減らせます。すべて揃っていなくても相談は可能ですが、手元にあるものだけでも先に伝えておくと当日の確認事項が減ります。

  • 登記事項証明書、または権利証(登記識別情報通知)
  • 固定資産税納税通知書(直近のもの)
  • 建築確認済証・検査済証(保管している場合)
  • 過去の測量図・境界確認書(保管している場合)
  • 建物の外観・室内・敷地全体が分かる写真
  • 接道状況が分かる写真(前面道路の幅員が確認できるもの)

買取業者との査定・交渉を有利に進める方法

同じ物件でも、聞き方や進め方によって提示される条件は変わることがあります。相談の中で実際に効果があった進め方を紹介します。

複数社に同時に査定を依頼する

1社ずつ順番に問い合わせるのではなく、同じ時期に3社程度へ同時に査定を依頼すると、条件を横並びで比較しやすくなります。物件情報や写真を使い回せるため、依頼側の手間もそれほど増えません。査定の有効期限(多くは1〜2週間程度)も業者ごとに確認しておくと、比較のタイミングを揃えやすくなります。

査定額の内訳を開示してもらう

「総額でいくら」という提示だけでなく、再販想定価格、解体・リフォーム費用の見込み、諸経費の内訳を尋ねてみてください。内訳を出せる業者は、査定の根拠がしっかりしている傾向があります。内訳の開示を渋る、または口頭でのおおまかな説明にとどまる業者は、金額の妥当性を検証しにくいという点で注意が必要です。

他社の査定額を伝えるときの注意

他社の査定額を伝えて交渉材料にすることは一般的に行われていますが、具体的な業者名や金額をそのまま伝える前に、伝えてよいかを一度考えてみてください。業者によっては、他社より高い金額を提示することよりも、契約条件の緩和(残置物ありでも買取可能にする、決済までの期間を短縮するなど)で応じてくることもあります。金額だけでなく、総合的な条件で比較する視点を持っておくと、交渉の幅が広がります。

値下げ交渉をされたときの対処

現地調査後に「詳細調査の結果、当初の査定額から減額したい」と言われるケースがあります。地中埋設物や配管の劣化など、外観からは分からなかった要因での減額は実務上あり得ますが、理由が曖昧なまま大幅な減額を提示された場合は、その場で即答せず、他社の査定額と照らし合わせて妥当性を検討してください。減額の根拠を書面で示せない場合は、契約を見送る判断も選択肢に入れておくべきです。

査定額に納得できないときの最終手段

複数社の査定額がいずれも想定より低い場合、時期を空けて再度査定を依頼すると評価が変わることがあります。近隣で新しい成約事例が出た、周辺の再開発計画が進んだなど、市況の変化が査定額に反映されるためです。急ぎでなければ、半年〜1年ほど時間を置いてから改めて相談する、という選択肢も持っておいてください。逆に、時間を置くほど建物の劣化が進み査定額が下がる可能性もあるため、待つことが常に有利とは限らない点も踏まえて判断する必要があります。

やり取りの記録を残しておく

電話でのやり取りは、日時・担当者名・話した内容を簡単にメモしておくだけでも、後から「言った言わない」を防ぐ助けになります。可能であれば、重要な条件はメールやメッセージアプリなど、文字として残る手段でも確認を取ることをおすすめします。査定書や見積書は、契約するかどうかにかかわらず、決済が終わるまで保管しておいてください。

空き家の状態が査定額に与える影響

買取業者はプロとして物件を精査するため、個人向け内覧のように第一印象だけで価格が大きく動くことは多くありませんが、それでも建物の状態は査定に直結します。査定前にやっておく価値があること、やらなくてよいことを整理します。

やっておく価値があること

  • 換気・通水——長期間閉め切った家は湿気とカビが進みやすく、査定時の印象にも影響します。可能であれば定期的な換気や、水道を通しての通水を行っておくと、劣化の進行を抑えられます。
  • 庭木の最低限の手入れ——敷地境界や接道状況が確認しやすくなり、査定の精度が上がります。大掛かりな剪定までは不要ですが、境界標や前面道路が見える程度には整えておくと親切です。
  • 動物の侵入経路の把握——長期空き家では、屋根裏や床下に動物が侵入しているケースがあります。気づいている範囲は査定時に伝えておくと、後から追加費用として指摘されるリスクを減らせます。

ハザードマップも事前に確認しておく

洪水・土砂災害・地震の揺れやすさといった災害リスクは、市区町村が公開しているハザードマップで事前に確認できます。浸水想定区域や土砂災害警戒区域に該当する土地は、重要事項説明でも説明義務の対象になっており、査定額に影響することがあります。売主自身が事前に把握しておくことで、査定の場での説明もスムーズになり、後から「聞いていなかった」というトラブルを避けられます。

無理にやらなくてよいこと

買取が前提であれば、内装のリフォームや大規模な清掃を売主側で行う必要は基本的にありません。買取業者はその後の再販に向けてリフォームや解体を行う前提で価格を組んでいるため、売主側の追加投資が査定額にそのまま上乗せされるとは限りません。リフォームや修繕にお金をかける前に、「やった場合と、やらない場合で査定額はどう変わるか」を業者に確認してから判断することをおすすめします。

主要設備の劣化状況も査定時に伝えておく

給湯器や屋根、外壁といった主要設備には、一般的な交換・修繕の目安時期があります。給湯器はおおむね10〜15年、屋根材は種類によって15〜20年程度、給排水管は20〜30年程度が交換の目安として語られることが多い水準です。実家の設備がいつ設置・修繕されたものか記憶にある範囲で構わないので、査定時に伝えておくと、業者側の劣化見積もりと実態のズレを減らせます。伝えなかったことで契約後に大きな相違が見つかると、契約不適合責任免責の範囲をめぐって話がこじれる原因にもなりかねません。

解体して売るか、そのまま売るか

老朽化した実家では、「解体してから土地として売るか」「建物を残したまま売るか」の判断も、手取り額を左右する大きな要素です。どちらが有利かは、建物の傷み具合と地域の土地需要によって変わります。

解体費用の目安

解体費用は構造・延床面積・立地条件によって幅がありますが、一般的な目安として、木造住宅で坪あたり3万〜5万円程度、鉄骨造で坪あたり4万〜6万円程度、鉄筋コンクリート造で坪あたり6万〜8万円程度が語られることが多い水準です。これに加えて、前面道路が狭く重機が入れない場合の手作業費用、アスベスト含有建材の調査・除去費用、庭木の伐採やブロック塀の撤去費用などが別途発生することがあります。正確な金額は、解体業者に現地を見てもらったうえで見積もりを取る以外に把握する方法がありません。

解体してから売るか、そのまま売るか

解体してから売る 建物を残したまま売る
買い手の広がり 更地は個人・建売業者の双方に需要がある 再建築不可物件などは買い手が限られる
初期費用 解体費用を売主が先に負担する 負担なし(買主または買取業者が負担)
固定資産税 住宅用地特例が外れ、翌年度から税額が上がる場合がある 特例が維持される(特定空家等指定がなければ)
売却までの期間 解体工事の分だけ長くなる 現況のまま早く動ける

自治体によっては老朽空き家の解体費用を補助する制度を設けています。多くの制度は、申請前に工事を契約・着工すると対象外になるため、解体を決めたら先に自治体の窓口へ確認し、補助金の申請手続きを済ませてから業者と契約する順序を守ってください。予算の上限に達すると年度途中で受付が終了することもあるため、早めの相談が有利です。

更地にすると、固定資産税の住宅用地特例(小規模住宅用地は課税標準が6分の1、一般住宅用地は3分の1に軽減される制度)が外れ、翌年度から税負担が増える点は見落とされがちです。解体を決める前に、解体費用・税負担の増加分・買取価格の上昇分を突き合わせて、総額で有利かどうかを試算しておくことをおすすめします。買取業者に「解体前」と「解体後」の両方の査定額を出してもらい、解体費用を差し引いた手取り額で比較するのが実務的な進め方です。実家の解体と売却の順序については実家の解体と売却、どちらを先にすべきかで詳しく解説しています。

空き家を売ったときにかかる税金

買取・仲介にかかわらず、空き家を売却して利益(譲渡所得)が出た場合は、所得税・復興特別所得税・住民税がかかります。ここを知らずに契約すると、手元に残る金額が想定より少なくなってしまうことがあるため、契約前に概算を把握しておくことが重要です。

譲渡所得税の基本的な計算方法

課税対象になる金額は、次の式で計算します。

課税長期譲渡所得金額 = 譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額

取得費が分からない場合(相続で取得した古い実家では珍しくありません)は、譲渡価額の5%を「概算取得費」として計算できます(国税庁タックスアンサーNo.3258)。譲渡費用には、仲介手数料、印紙代、建物を取り壊して売る場合の解体費用などが含まれます。

なお、土地の売買代金には原則として消費税がかかりません。建物についても、個人が自宅として使っていた不動産を売る場合は消費税の課税対象外です。買取業者が事業として建物を購入する場合でも、売主が個人であれば、売主側で消費税を納める必要は基本的に生じません。査定額に「消費税込み」といった表記がある場合は、何に対する消費税なのか(仲介手数料などの役務提供部分にかかる税か)を確認しておくと誤解を防げます。

税率は所有期間によって異なります。売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」として、所得税15%・復興特別所得税0.315%(所得税額の2.1%)・住民税5%をあわせて20.315%です。5年以下の場合は「短期譲渡所得」として、所得税30%・復興特別所得税0.63%・住民税9%をあわせて39.63%と、税率がほぼ倍になります(国税庁タックスアンサーNo.3208、No.3211より)。相続した不動産の所有期間は、被相続人が取得した日から通算されるため、親が長く住んでいた実家であれば、多くの場合は長期譲渡所得に該当します。

空き家の3,000万円特別控除

相続した空き家を売却する場合、要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円(相続人が3人以上の場合は2,000万円)を控除できる特例があります(国税庁タックスアンサーNo.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」)。主な要件は次のとおりです。

  • 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
  • 区分所有建物登記がされている建物(分譲マンションなど)でないこと
  • 相続の開始直前まで被相続人が一人で住んでおり、他に居住者がいなかったこと
  • 相続から譲渡まで、事業用・貸付用・居住用に使われていないこと
  • 譲渡時に一定の耐震基準を満たしているか、家屋を取り壊してから土地を売ること
  • 相続開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
  • 売却代金が1億円以下であること

この特例は平成28年4月1日から令和9年12月31日までの譲渡が対象で、期限が区切られています。適用には確定申告と、家屋の所在地を管轄する市区町村から交付を受ける「被相続人居住用家屋等確認書」の添付が必要です。要件が細かいため、該当しそうな場合は早めに税理士または税務署へ確認することをおすすめします。

相続税の申告要否をあわせて確認する

譲渡所得税とは別に、そもそも相続税の申告が必要かどうかも確認しておく価値があります。相続税には基礎控除があり、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」までの遺産総額であれば、原則として相続税はかからず申告も不要です。たとえば法定相続人が2人であれば基礎控除は4,200万円、3人であれば4,800万円になります。実家の評価額に預貯金など他の相続財産を合算した金額が基礎控除以下であれば、取得費加算の特例を使う場面自体がない、ということになります。逆に基礎控除を超えて相続税を納めている場合は、取得費加算の特例が使えないか確認する価値があります。

取得費加算の特例(相続税を払った場合)

相続税を納めた人が、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに不動産を売却した場合、納めた相続税額のうち、その不動産に対応する金額を取得費に加算できる特例もあります(国税庁タックスアンサーNo.3267)。空き家の3,000万円特別控除とは併用できないため、どちらが有利かはケースによって異なります。相続税を納めている場合は、この特例の利用可否もあわせて税理士に確認してください。

計算例で確認する

実際の数字で見ると理解しやすくなります。以下はいずれも説明のための試算で、実際の税額は個別の状況によって変わります。

ケース1:空き家の3,000万円特別控除が使える場合
昭和55年築の実家(要件を満たす)を2,000万円で売却。取得費が不明なため概算取得費(譲渡価額の5%)100万円、譲渡費用(解体費用・仲介手数料など)80万円とすると、課税譲渡所得は「2,000万円-(100万円+80万円)-3,000万円」で計算上マイナスになり、課税譲渡所得は0円です。譲渡所得税はかかりません。

ケース2:特例の要件を満たさない場合
耐震基準を満たさず取り壊しもしないまま売却するなど特例の対象外だった場合、譲渡価額1,500万円、概算取得費75万円、譲渡費用100万円とすると、課税長期譲渡所得は「1,500万円-(75万円+100万円)」で1,325万円です。税率20.315%をかけると、税額はおよそ269万円になります。特例が使えるかどうかで、税負担が数百万円単位で変わることが分かります。

この差は決して小さくありません。「古い家だから」と要件を確認せずに売却を急いでしまうと、本来使えたはずの特例を逃す可能性があります。契約を急ぐ買取業者の中には、こうした税務面の説明まで踏み込まないところもあるため、税金の試算は不動産会社任せにせず、税理士にも別途相談することをおすすめします。

ケース3:取得費加算の特例を使う場合(説明用の簡易試算)
相続税を800万円納め、そのうち今回売却する不動産に対応する相続税額が200万円だったとします。譲渡価額1,800万円、概算取得費90万円、譲渡費用120万円とすると、取得費加算の特例を使わない場合の課税長期譲渡所得は「1,800万円-(90万円+120万円)」で1,590万円です。ここに取得費加算の特例で200万円を上乗せすると、課税譲渡所得は1,390万円まで圧縮され、税額は20.315%をかけて約282万円になります。特例を使わない場合の税額(約323万円)と比べ、約41万円の差が生まれる計算です。実際の加算額は算式に基づいて個別に計算されるため、この数字はあくまで仕組みを理解するための一例です。

固定資産税・都市計画税の日割り精算

売却時には、決済日を基準に固定資産税・都市計画税を売主・買主で日割り精算するのが一般的な商慣習です。年の途中で売却した場合、すでに納めた税額のうち決済日以降の分を買主から受け取る形になります。この精算金は譲渡所得の計算上、譲渡価額に含めて申告する必要がある点にも注意してください。

売って損が出た場合の扱い

マイホームを売って譲渡損失が出た場合に他の所得と損益通算できる特例がありますが、これは主に「現に住んでいる、または住まなくなってから一定期間内のマイホーム」を対象とした制度です。相続後に空き家となった実家をそのまま売却して損失が出た場合、この損益通算の特例が使えるかどうかはケースによって判断が分かれます。買取業者や不動産会社の説明だけで判断せず、損失が見込まれる場合こそ税理士に個別相談することをおすすめします。

確定申告のスケジュール

譲渡所得税は、売却した年の翌年に確定申告をして納めます。申告期間は原則として翌年2月16日から3月15日までです。空き家の3,000万円特別控除や取得費加算の特例は、いずれも確定申告をしなければ適用を受けられません。「特例の対象になるはずだから税額は0円」と思い込んで申告自体を忘れると、特例が適用されないまま扱われる可能性があるため注意してください。決済が年末に近い場合、書類の準備期間が短くなりやすいので、契約段階から必要書類のめどを付けておくと安心です。

買取業者に依頼するときの流れと必要書類

実際に買取を依頼する場合の大まかな流れは、次のとおりです。物件の状態や名義の状況によって前後することがあります。

  1. 問い合わせ・簡易査定——所在地、築年数、間取り、現況(居住中・空き家・家財の有無)を伝え、概算の査定額を出してもらいます。
  2. 現地調査——建物の傷み具合、境界の状況、接道条件などを業者が実際に確認します。この段階で買取金額がより具体的になります。調査員は屋根や外壁のひび割れ、雨漏りの跡、床の傾き、給排水設備の稼働状況、床下・屋根裏の状態、境界標の有無、前面道路の幅員や勾配などを確認するのが一般的です。立ち会いが難しい場合でも、事前に撮影した写真を渡しておくと調査がスムーズです。
  3. 正式な査定額の提示——査定額と契約条件(決済時期、契約不適合責任の扱いなど)が書面で提示されます。
  4. 売買契約の締結——重要事項説明を受けたうえで契約書に署名・押印し、手付金を受け取ります。
  5. 決済・引き渡し——残代金の受け取りと同時に、鍵や関係書類を引き渡します。所有権移転登記もこの日に行うのが一般的です。

決済前後に済ませておきたい手続き

売買の手続きと並行して、電気・ガス・水道の停止手続き、固定資産税の納税義務者の変更(決済日以降は買主に移ります)、火災保険を契約している場合は解約手続きも進めておく必要があります。空き家のまま契約に至った場合、決済日までは引き続き所有者としての管理責任があるため、決済日の直前まで最低限の見回りや近隣への配慮を続けることをおすすめします。近隣に長年お世話になった実家であれば、引き渡し前後にひとこと挨拶をしておくと、後々のトラブルを避けやすくなります。

決済時にかかる諸費用の目安

売却代金がそのまま手元に残るわけではなく、決済時にはいくつかの諸費用がかかります。あらかじめ目安を把握しておくと、手取り額のイメージがつかみやすくなります。

費目 目安 備考
売買契約書の印紙税 契約金額に応じて数千円〜数万円 契約金額が高いほど税額も上がる
抵当権抹消登記の登録免許税 不動産1個につき1,000円 住宅ローンが残っている場合に必要
司法書士報酬(抵当権抹消・相続登記) 案件により数万円〜十数万円 相続登記が未了の場合はあわせて発生
譲渡所得税・住民税 課税譲渡所得金額に応じて変動 特例適用の有無で大きく変わる

相続登記がまだの場合は、この段階で司法書士報酬がまとまって発生することになります。売却の話が具体化した早い段階で、相続登記の見積もりも合わせて取っておくと、決済時の資金計画が立てやすくなります。

売却前に準備しておきたい書類

書類 取得先・備考
登記事項証明書(登記簿謄本) 法務局。名義人が被相続人のままなら相続登記が先に必要
固定資産税納税通知書・評価証明書 市区町村。譲渡所得の計算にも使う
建築確認済証・検査済証 ある場合は査定・再建築可否の判断材料になる
境界確認書・測量図 ある場合は提示。ない場合は業者と相談
本人確認書類・実印・印鑑証明書 契約時・決済時に必要

相続した実家の場合、これらの書類に加えて、相続登記が完了していることが契約の前提になります。名義変更が終わっていないと、買取業者との契約自体を進められません。相続登記の要否や手続きの流れは、司法書士へ早めに相談しておくと、査定から契約までの期間を短縮できます。

契約書で読み込んでおきたい条項

売買契約書は分量が多く、細部まで目を通すのは骨が折れますが、次の条項だけは署名前に内容を確認しておいてください。

  • 手付解除の条項——契約後、決済までの間に契約を取りやめる場合の条件と、手付金の扱いが定められています。
  • 危険負担の条項——契約後、決済までの間に火災や自然災害で建物が損傷した場合、どちらが責任を負うかを定めています。
  • 公租公課の精算条項——固定資産税・都市計画税の日割り精算の基準日と計算方法が明記されているかを確認します。
  • 契約不適合責任免責の範囲——免責の対象がどこまで及ぶか(付帯設備を含むかなど)を確認します。
  • 違約金・損害賠償の条項——契約解除時のペナルティの上限額を確認します。

分からない条項があれば、その場で署名せず、持ち帰って司法書士や家族に確認する時間を求めても差し支えありません。信頼できる業者であれば、こうした確認の申し出を嫌がることはないはずです。

悪質な業者・トラブルを避けるために

空き家買取の分野は取引額が大きく、相続直後で判断力が落ちている売主に付け入る悪質な業者も一部に存在します。次のようなパターンには注意してください。

  • 相場より極端に高い査定額を提示して契約だけ急がせる——契約後に「詳細調査の結果」として減額を切り出す手口が報告されています。査定額の根拠を書面で説明できない業者は避けてください。
  • 「今日契約すれば特別価格」といった即決を迫る営業——他社との比較検討をさせない目的であることが多く、冷静な判断を妨げます。
  • 手付金の金額が不自然に高い——手付金は売買代金の5〜20%程度が一般的です。相場から大きく外れる場合は契約内容を慎重に確認してください。
  • 重要事項説明を省略・簡略化しようとする——宅建業法上、宅地建物取引士による重要事項説明は義務です。省略を提案する業者とは契約しないでください。
  • 免許番号を教えたがらない、または実在しない——免許の実在は国土交通省の「宅地建物取引業者情報検索システム」や都道府県の窓口で確認できます。
  • 複数の買主に同じ物件を紹介し、二重に契約を進めようとする——手付金を受け取った後に別の買主とも交渉が進んでいると分かった場合は、契約の優先順位や解除条件を書面で確認してください。

訪問販売や電話勧誘で契約した場合、宅地建物取引業法上、事務所等以外の場所で契約した買主には一定条件下でクーリングオフが認められることがあります。ただし売主側からの申込みや、売主の自宅・勤務先での契約など、適用対象外となる条件も多いため、該当するか迷う場合は消費者庁や国民生活センターの窓口へ早めに相談してください。強引な勧誘を受けた、契約を急かされたと感じた場合は、支払いや署名の前に一度立ち止まることをおすすめします。

口コミ・評判の見方

業者選びの参考にインターネット上の口コミを見る方も多いと思いますが、極端に良い評価と極端に悪い評価が同数ほど並んでいる場合は、投稿の信ぴょう性を割り引いて見る必要があります。参考にしたいのは、査定から決済までの具体的なやり取りが書かれている口コミです。「対応が早かった」といった抽象的な評価だけでなく、「査定額の根拠を説明してくれた」「契約条件の交渉に応じてくれた」といった具体的な記述があるかを確認してください。国民生活センターの公式サイトでは、不動産取引に関する相談件数や事例の傾向が公表されており、業界全体でどのようなトラブルが起きやすいかを事前に把握する参考になります。

買取業者に相談する前に、自分でできること

不動産会社に行く前に、自分で確認・準備しておける項目もあります。事前準備が整っているほど、査定の精度が上がり、余計な減額交渉を防ぎやすくなります。

  • 登記事項証明書を取得して名義を確認する——法務局窓口やオンラインで取得できます。名義が故人や祖父母のままであれば、相続登記の準備を並行して進めておきます。
  • 固定資産税の納税通知書を確認する——評価額の目安と、日割り精算に必要な情報が分かります。
  • 境界の状況を確認する——過去の測量図や境界標の有無を確認しておくと、査定時のやり取りがスムーズです。
  • 複数社から査定を取る——買取と仲介、両方の査定額を比較したうえで、どちらが自分の状況に合うか判断します。
  • 解体や修繕をしてから売るべきか判断する——古い家屋は、解体して更地にしたほうが買い手が付きやすい場合と、そのままのほうが良い場合の両方があります。解体費用と売却価格の見込みを比較検討する材料は実家の解体と売却、どちらを先にすべきかで解説しています。

不動産会社によっては、こうした事前準備がなくても対応してくれますが、名義や境界が未確認のまま話を進めると、契約直前になって手続きが止まることがあります。時間の余裕があるうちに、できる範囲で準備しておくことをおすすめします。

貴重品と処分してよい物を先に仕分けておく

査定や契約を急ぐあまり、通帳・印鑑・権利証・保険証券といった貴重品を家財と一緒に処分してしまう例が見られます。買取業者へ相談する前に、まずは貴重品と思い出の品を先に取り分けておくと、後になって「あの書類はどこに行ったか」と探し回る事態を避けられます。仏壇や位牌がある場合は、閉眼供養の要否も家族で話し合っておくと、片付けと売却のどちらのタイミングでも判断に迷いません。残置物の仕分けから片付けまでを依頼したい場合は、実家じまい代行サービスで相談を受け付けています。

空き家のまま放置するリスクも踏まえて判断する

「まだ決めきれないから」と空き家を放置していると、雨漏りやシロアリによる建物の傷み、庭木の繁茂による近隣トラブルが進みます。加えて、空家等対策の推進に関する特別措置法にもとづき、自治体から「特定空家等」に指定されるリスクも高まります。特定空家等とは、そのまま放置すれば倒壊等により著しく保安上危険となるおそれがある、または著しく衛生上有害となるおそれがあると市区町村長が認めた空き家です。指定を受けると助言・指導、勧告、命令という段階を経て、勧告の段階で固定資産税の住宅用地特例が解除され、税負担が増える可能性があります。命令に従わない場合は行政代執行によって強制的に解体され、費用を所有者が請求されることもあります。

同法は2023年の改正で、特定空家等になる前段階にあたる「管理不全空家等」という区分も新設しました。放置すれば特定空家等に該当するおそれがあると市区町村長が判断した空き家が対象で、指導や勧告の対象になり得ます。特定空家等ほど状態が悪化していなくても、管理不全の兆候があれば自治体から連絡が来る可能性がある、という点は知っておいてください。売却を急ぐ必要がない場合でも、管理の手間とリスクは早めに把握しておくと安心です。空き家管理の具体的な方法は空き家管理の方法と費用で紹介しています。

空き家を持ち続けるコストと売り時の判断

「もう少し考えてから」と判断を先延ばしにする間も、空き家を維持するコストは発生し続けます。判断材料として、年間でかかる主な費用の目安を整理しました。

費目 年間の目安 備考
固定資産税・都市計画税 評価額に応じて変動 住宅用地特例が外れると税額が上がる場合がある
火災保険(空き家向け) 数万円程度 居住用より保険料が高めに設定される傾向がある
水道光熱の基本料金 契約状況による 通水・換気のために契約を残す場合に発生
庭木の剪定・除草 依頼する場合は数万円〜 放置すると近隣トラブルの要因になりやすい
管理代行サービス 依頼する場合は月数千円〜 遠方在住で定期的に通えない場合に検討

これらの費用は、実家を売却しない限り毎年発生し続けます。数年間迷っているうちに、維持費の累計が売却で得られる差額を上回ってしまうケースも珍しくありません。「いつか決めよう」と先延ばしにする前に、年間の維持費と、売却によって得られる金額・回避できるリスクを一度書き出して比較してみることをおすすめします。査定を受けること自体に費用はかからないため、判断材料を集める第一歩として、早めに複数社へ相談することに大きなデメリットはありません。

空き家特有の事故リスクにも備える

空き家では、配管の劣化による水漏れ、台風による屋根材の飛散、不審者の侵入といった事故が、居住中の家より起こりやすくなります。水漏れは階下や隣家への被害につながることもあり、発見が遅れるほど被害額が大きくなりがちです。空き家向けの火災保険には、こうした事故への補償が含まれるプランもあるため、加入している保険の補償範囲を一度確認しておくと安心です。定期的な見回りが難しい場合は、月に一度でも管理を代行してもらう、あるいは近隣の親族に見守りを頼んでおくといった対策で、被害の早期発見につなげられます。

売らずに活用するという選択肢

買取業者への相談を進める前に、そもそも売らずに活用する道がないかも一度検討しておく価値があります。代表的な選択肢を紹介します。

賃貸に出す

建物の状態が良ければ、賃貸住宅として貸し出す方法もあります。売却と違って所有権を維持したまま収益を得られる一方、入居前のリフォーム費用、空室時の維持費、入居者対応の手間が継続的に発生します。借地借家法により、いったん賃貸契約を結ぶと貸主側の都合だけでは解約しにくくなる点も踏まえておく必要があります。将来的に売却や解体を考えている場合は、定期借家契約(更新のない賃貸契約)を選ぶと、契約期間終了後に確実に明け渡してもらえるという利点があります。

更地にして駐車場として活用する

解体して更地にしたうえで、月極駐車場やコインパーキングとして活用する方法もあります。管理会社に一括で貸し出せば手間は少なく済みますが、住宅用地の特例が外れるため固定資産税は上がり、収益性は立地条件(人口密度・駅からの距離・周辺の駐車場料金相場)に大きく左右されます。管理会社に事前に収支シミュレーションを依頼し、解体費用を回収できる見込みがあるかを確認してから判断してください。

賃貸・駐車場のいずれも、継続的な管理や収支の変動リスクを引き受ける前提の選択肢です。「管理の手間をかけずに、今の状況から早く抜け出したい」という場合は、買取や仲介による売却のほうが目的に合っていることが多くあります。どちらが自分の状況に合うかは、想定される収益と、かけられる手間・時間を照らし合わせて判断してください。

買取業者と実家じまい代行、どちらに頼むか

買取業者は不動産の売却に特化した窓口です。一方で、実家には家財の片付け、仏壇の供養、相続登記といった売却以外の手続きも並行して発生します。それぞれを別々の業者に依頼すると、日程調整や情報共有の手間がかかることがあります。自治体が運営する「空き家バンク」も選択肢の一つとしてよく比較されるため、3つを並べて整理します。

買取業者に直接依頼 空き家バンク 実家じまい代行を通じて依頼
対応範囲 不動産の売却のみ 売り手と利用希望者の登録・マッチングのみ 片付け・供養・相続手続きの連携・売却/解体の手配まで
現金化の速さ 数週間〜1か月程度 成約時期は未確定(買い手が見つかるまで) 片付けと並行して見通しを立てやすい
交渉・手続き 不動産会社が主導 基本的に当事者間で交渉 提携業者・司法書士が連携して対応
費用 仲介手数料は基本的に発生しない 登録・掲載は無料〜低額な自治体が多い 片付け・売却・解体を一括で見積もり
向いているケース すでに片付けが終わっており、売却だけを進めたい場合 時間に余裕があり地域とのつながりを重視したい場合 片付けから売却まで、まとめて相談したい場合

空き家バンクは、自治体が運営する登録制度で、掲載自体の費用がかからないことが多い一方、専任の担当者が価格交渉や契約手続きを代行してくれるわけではありません。成約するかどうかも保証されないため、急いで現金化したい場合には不向きです。すでに家財の片付けが済んでいて、売却だけを進めたい場合は、買取業者や仲介会社に直接相談するのが早道です。片付け・供養・相続手続きがまだ手つかずの場合は、実家じまい代行サービスのように、片付けから売却・解体の手配までを一つの窓口で相談できるサービスを使うと、段取りの手間を減らせます。提携する司法書士と連携しながら、相続登記の見通しを立てたうえで売却を進められる点も、個別に業者を探す場合との違いです。

片付けから売却まで一括で進める場合の流れ

片付けと売却をまとめて相談する場合、一般的には次のような順序で進みます。

  1. 実家の状況(家財の量、名義の状況、売却の希望時期)をヒアリング
  2. 片付け・遺品整理の見積もりと、不動産の概算査定を並行して案内
  3. 相続登記が未了の場合は、提携司法書士による名義変更の見通しを提示
  4. 片付け・供養の実施と並行して、正式な不動産査定・売却先の選定を進行
  5. 片付け完了後、売却または解体の契約・決済へ移行

別々の業者に依頼する場合と比べて、進捗状況の共有や日程調整をひとつの窓口に集約できる点が利点です。とくに遠方に住んでいて何度も現地に足を運べない場合、この一括対応の有無が実務上の負担に大きく影響します。

買取業者の再販方法による違い

買取業者は、買い取った物件をどう再販するかによっても評価軸が変わります。建物を活かしてリフォームし個人向けに再販するタイプ、更地にして建売業者やハウスメーカーに分譲用地として卸すタイプ、賃貸住宅として運用するために買い取るタイプなど、業者ごとに得意な再販方法が異なります。査定額に納得がいかない場合、「どのような再販方法を想定しているか」を尋ねてみると、業者との相性や、その物件に合った売却方法が見えてくることがあります。

特殊な条件の空き家はどうなるか

実家の状態によっては、通常の買取とは異なる進め方が必要になる場合があります。代表的なケースを紹介します。

再建築不可物件

建築基準法上の接道義務(幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接していること)を満たしていない土地は、現状の建物を解体すると新しい建物を建てられません。個人の買い手にはローンが付きにくく、仲介での成約が難航しやすいため、再建築不可物件を専門に扱う買取業者への相談が現実的な選択肢になります。隣地の買い手候補(隣接地所有者)に打診する方法もあわせて検討する価値があります。

借地権付きの建物

実家が借地の上に建っている場合、土地の所有権はなく、建物だけが相続財産になります。借地権付き建物を売却するには、原則として地主の承諾が必要で、承諾料が発生することが一般的です。買取業者の中には、地主との交渉窓口の代行や、借地権に強い業者への取り次ぎまで対応できるところもあります。地主との関係が良好でない場合や、承諾を得られる見通しが立たない場合は、早い段階で司法書士や借地権専門の不動産会社に相談しておくと、後の交渉がスムーズです。

隣地との越境がある場合

古い実家では、ブロック塀や庭木の枝、屋根の一部が隣地にはみ出している「越境」が見つかることがあります。境界確定測量を行った際に越境が判明した場合、買取業者との契約に「越境に関する覚書」を締結することを条件にされるケースがあります。覚書は、越境物の存在を隣地所有者と相互に確認し、将来の建て替え時に是正することを取り決める書面です。隣地所有者との関係が良好であれば作成の負担は大きくありませんが、連絡が取りにくい、関係が良くないといった事情がある場合は、司法書士や土地家屋調査士に早めに相談しておくと、契約直前になって手続きが滞ることを避けられます。

共有名義になっている場合

相続人が複数いて法定相続分どおりに登記した場合、不動産は共有名義になります。共有物の売却には、原則として共有者全員の同意が必要です。共有者の一人だけが単独で持分を売却することも制度上は可能ですが、買い手が付きにくく価格も下がりやすいため、まずは共有者間で足並みを揃えることをおすすめします。話し合いが難航する場合は、司法書士や弁護士への相談も検討してください。

共有者の中に、長期間音信不通で連絡先が分からない人がいる場合、民法改正により2023年4月から利用できるようになった「所在等不明共有者の持分取得・譲渡制度」を使える可能性があります。これは、裁判所の決定を得たうえで、所在が分からない共有者の持分を他の共有者が取得したり、第三者への譲渡に同意したものとみなしたりできる制度です。手続きには一定の期間と裁判所への申立てが必要になるため、該当しそうな場合は早めに司法書士や弁護士へ相談してください。

相続放棄を検討している場合

実家の資産価値が低く、維持費や解体費のほうが負担になりそうな場合、相続放棄という選択肢もあります。ただし相続放棄は、遺品の一部でも売却・処分すると単純承認とみなされ、後から撤回できなくなることがあります。買取業者への査定依頼自体は問題になりにくいとされますが、売却や処分の一歩手前で判断に迷う場合は、着手前に司法書士や弁護士へ相談しておくと安心です。

相続土地国庫帰属制度という選択肢

買取業者に依頼しても値段が付かない、あるいは山林や崖地を含む複雑な土地で買い手が見つからない場合、土地だけを国に引き渡す「相続土地国庫帰属制度」という選択肢もあります。相続や遺贈によって土地の所有権を取得した個人が対象で、法務局を窓口に法務大臣の承認を得たうえで、審査手数料14,000円と、10年分の土地管理費に相当する負担金を納付する必要があります。建物が建ったままの土地は対象外のため、利用する場合は解体して更地にしてからの申請になります。担保権が設定されている土地、境界が明らかでない土地など、対象外となる要件も細かく定められているため、検討する場合は事前に法務局へ相談してください。買取と国庫帰属のどちらが総額で有利かは、解体費用・負担金・売却できた場合の金額を比べて判断することになります。

特殊清掃が必要な場合

孤独死や長期の空き家放置により特殊清掃が必要な物件は、個人向けの仲介市場では買い手が見つかりにくく、告知義務への配慮も必要です。買取業者の中には、特殊清掃や残置物処理までまとめて対応できる会社もあります。査定の段階で、清掃や残置物の状況を正直に伝えておくことが、後のトラブルを避けるうえで重要です。

ケーススタディ:3つの実家パターンで見る売却判断

状況によって「買取が向くか、仲介が向くか」「解体すべきか」の判断は変わります。相談でよくある3つのパターンをもとに、考え方の道筋を紹介します。金額はいずれも説明のための試算です。

パターン1:築45年・駅から徒歩25分・相続人1人

建物の傷みが進み、耐震基準も満たしていない戸建て。相続人が1人で、遠方に住んでおり通える回数が限られている場合です。仲介では個人の買い手が付きにくく、内覧対応のたびに帰省するのは現実的ではありません。このケースでは、まず複数の買取業者から査定を取り、解体前提の価格を比較するのが現実的です。相続開始から3年以内であれば、空き家の3,000万円特別控除の要件も確認し、売却時期の目安を立てておくと税額まで含めた比較がしやすくなります。

パターン2:築25年・最寄り駅まで徒歩10分・相続人3人

建物の状態は比較的良好で、駅からの距離も近いケースです。相続人が3人いる場合、遺産分割協議がまとまるまで名義変更が進まず、売却の話が停滞しがちです。このケースでは、まず相続人申告登記などで登記義務を先に果たしつつ遺産分割の話し合いを進め、方向性が固まった段階で仲介と買取の両方から査定を取ることをおすすめします。3人共有の状態で急いで持分だけを売却すると価格が下がりやすいため、足並みを揃える時間を確保する価値があります。

パターン3:築60年・再建築不可・相続税の納税資金が必要

接道条件を満たさない再建築不可物件で、相続税の申告期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月)までに納税資金を確保する必要があるケースです。再建築不可物件は個人向け仲介市場が狭いため、買取が現実的な選択肢になります。申告期限が迫っている場合は、買取保証や、再建築不可物件を専門に扱う業者への早期相談が有効です。取得費加算の特例(相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までの譲渡が対象)の適用可否もあわせて確認しておくと、納税資金と手取り額の両方を見通しやすくなります。

パターン4:相続人の一人だけが遠方在住で連絡が取りにくい

共有名義になった相続人のうち、一人だけが遠方に住んでいて連絡や書類のやり取りに時間がかかるケースです。売却には共有者全員の同意が必要なため、代表者を一人決めたうえで、他の相続人には委任状を用意してもらい、契約や決済の一部を代理できるようにしておくと手続きが進めやすくなります。オンラインでの重要事項説明や、書類の郵送でのやり取りに対応できる業者を選ぶことも、遠方の相続人がいる場合の実務的なポイントです。

3つのパターンに共通するのは、「相続人の状況」「登記の状況」「税務上の期限」という3つの軸を同時に把握したうえで、買取か仲介か、解体するかどうかを決めている点です。どれか一つだけを見て判断すると、後から手戻りが生じやすくなります。自分の実家がどのパターンに近いかを一度整理してから、業者への相談に臨むことをおすすめします。

相談でよく見られる失敗パターン

売却の相談を受けていると、繰り返し見られる失敗のパターンがあります。自分の状況が当てはまらないか、事前に確認してみてください。

  • 1社だけの査定額を鵜呑みにして契約し、後から他社に相談したところ、より条件の良い提示があったと分かる
  • 相続登記を後回しにしたまま買取業者と条件交渉を進め、いざ契約という段階で名義変更が終わっておらず、決済が数か月遅れる
  • 解体してから売る前提で話を進めていたところ、更地にした後で固定資産税の住宅用地特例が外れることを知らず、翌年度の納税額に驚く
  • 相続放棄を検討していたにもかかわらず、査定のための現地立ち会いで家財の一部を処分してしまい、単純承認とみなされる可能性が生じる

共通しているのは、売却・登記・税金・相続方針のそれぞれを別々のタイミングで考えてしまい、後から手戻りが生じている点です。査定を依頼する早い段階で、名義の状況と全体のスケジュールをあわせて整理しておくと、こうした手戻りを避けやすくなります。

問い合わせ時に聞かれること・答え方の準備

初めて買取業者に問い合わせる際、何を聞かれるか分からず身構えてしまう方も少なくありません。一般的に聞かれる項目と、その場で分からなくても問題ない項目を整理しておきます。

  • 所在地・築年数・間取り——固定資産税納税通知書や登記事項証明書があれば、その場でスムーズに答えられます。
  • 現在の居住状況——居住中か空き家か、家財がどの程度残っているかを伝えます。正確な数字でなくても、おおまかな状況で構いません。
  • 相続の状況——相続人が何人いるか、遺産分割協議が済んでいるか、相続登記の状況を聞かれることがあります。分からない場合は「確認中」と答えて問題ありません。
  • 売却を検討している理由・時期——「早く現金化したい」「まず金額の目安を知りたいだけ」など、温度感を伝えておくと、業者側も提案の仕方を調整しやすくなります。
  • 他社への相談状況——聞かれても正直に答えて差し支えありません。他社と比較検討していることを伝えることが、不利になることはむしろ少ないと考えられます。

分からないことを聞かれても、無理にその場で答えを作る必要はありません。「確認して折り返します」と伝えれば十分です。曖昧な情報のまま契約を急がせる業者がいれば、それ自体が注意すべきサインです。

買取査定を依頼する前によくある誤解

買取に関する相談では、いくつかの思い込みがそのまま契約条件の不利につながっているケースが見られます。契約前に一度確認しておいてください。

  • 「買取は仲介よりいつも早く終わる」——名義変更が済んでいない、境界が未確定といった事情があると、買取でも決済までに数か月かかることがあります。早さを前提に予定を組む場合は、名義と境界の状況を先に確認してください。
  • 「家財が残っていると買い取ってもらえない」——残置物ありでも買取に応じる業者はありますが、片付け費用が査定額から差し引かれるのが一般的です。査定の段階で残置物の状況を伝え、片付けありなしの両方の金額を確認すると比較できます。
  • 「1社に相談すれば十分」——査定額は業者の再販戦略によって数百万円単位で変わることがあります。2〜3社からの査定取得が、不利な条件を避ける基本です。
  • 「相続登記が終わっていなくても契約できる」——査定の依頼はできますが、実際の売買契約には登記簿上の名義人が当事者になる必要があります。名義変更の見通しを先に立てておくことが重要です。

自治体の空き家相談窓口も選択肢に入れる

買取業者への相談と並行して、実家がある市区町村の空き家相談窓口を利用する方法もあります。多くの自治体には空き家対策の担当課があり、空き家バンクの案内のほか、解体費用の補助制度、改修費用の補助制度、専門家(司法書士・土地家屋調査士・建築士など)への無料相談会を実施しているところもあります。制度の有無や条件は自治体ごとに大きく異なり、予算の上限に達すると年度途中でも受付が終了することがあるため、利用を考えている場合は早めに問い合わせておくことをおすすめします。買取業者だけでなく、自治体の窓口も含めて情報を集めておくと、選択肢を狭めずに判断できます。

買取を断られた場合の次の一手

複数社に相談しても「うちでは買い取れない」と断られる物件も存在します。よくある理由と、その場合の次の選択肢を整理します。

  • 既存不適格(建築時は適法だったが現行法に合わない)——増改築や再建築に制限がかかる場合があります。既存不適格物件を専門に扱う業者や、隣地所有者への打診を検討してください。
  • 倒壊のおそれがあるほど老朽化している——買取業者によっては解体費用が査定額を上回ると判断し、買取自体を見送ることがあります。この場合、自治体の解体補助金制度の利用や、相続土地国庫帰属制度(更地化が前提)も選択肢になります。
  • 権利関係が複雑(共有者が多数、担保権が残っているなど)——権利関係の整理を先に済ませる必要があります。司法書士に相談し、整理の見通しを立ててから再度査定を依頼すると話が進みやすくなります。
  • 土壌汚染や地中埋設物の存在が疑われる——過去の用途(工場・ガソリンスタンド跡地など)によっては、調査費用がかさむことを理由に買取を見送られることがあります。専門の調査会社への相談が必要になる場合もあります。

1社に断られても、他の業者では条件が合う場合があります。断られた理由を明確に聞いておき、次に相談する業者へその情報を先に伝えておくと、無駄な現地調査を減らせます。

用語をかんたんに言い換えると

ここまで登場した専門用語を、日常の言葉で言い換えて整理しました。契約書や説明の中でこれらの言葉が出てきたときの参考にしてください。

  • 契約不適合責任——引き渡した物件に欠陥があったとき、売主が負う責任のこと。買取では免責(負わない)扱いが一般的です。
  • 囲い込み——仲介を頼んだ会社が、自社だけで買い手も見つけて手数料を両取りしようとする行為のこと。
  • レインズ——不動産会社間で物件情報を共有する全国規模のシステムのこと。登録状況で囲い込みの有無を確認できます。
  • 概算取得費——不動産を買った金額が分からないときに使う、売却価格の5%を取得費とみなす計算方法のこと。
  • 単純承認——遺品や不動産の一部でも処分すると、相続人が財産も借金もすべて引き継ぐことに同意したとみなされること。相続放棄ができなくなります。
  • 相続人申告登記——遺産分割が決まっていなくても、相続人であることだけを法務局に届け出て登記義務を果たす簡易な手続きのこと。
  • 特定空家等——倒壊のおそれなどがあると自治体が認めた空き家のこと。指定されると固定資産税の軽減措置が外れることがあります。

早見表:買取を検討すべきタイミング

ここまでの内容を踏まえ、買取という選択肢を優先的に検討したほうがよい状況をまとめました。複数当てはまる場合ほど、買取が現実的な選択肢になりやすくなります。

状況 買取を優先検討すべき度合い
相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月)が近い 高い
再建築不可・接道なしの物件である 高い
建物の老朽化が進み、個人向けローンが通りにくい 高い
相続人が複数で早期に現金化して分割したい 中程度
特殊清掃が必要な状態である 中程度
駅近・築浅で個人の買い手が見込める 低い(仲介を優先検討)
時間に余裕があり、価格を最大化したい 低い(仲介または買取保証を検討)

よくある質問

空き家買取業者と仲介、どちらに頼むほうが得ですか?
現金化までの早さを優先するなら買取、金額の最大化を優先するなら仲介が向いています。買取業者は不動産会社が直接買い取るため契約から数週間〜1か月程度で現金化できますが、価格は仲介での想定成約額より下がる傾向があります。仲介は買い手を探す期間が必要な代わりに、時間をかければより高い価格での成約が期待できます。解体費用や修繕リスクを業者側が引き受ける分だけ買取価格が下がる、という関係を理解したうえで選んでください。
空き家買取の価格は仲介に比べてどのくらい下がりますか?
業界で一般的に語られる目安は、仲介での想定成約価格の6〜8割程度です。ただし建物の傷み具合、再建築の可否、立地、業者の再販戦略によって幅があり、一律の数字ではありません。正確な金額は、複数の買取業者から査定を取り、仲介での想定価格とあわせて比較することでしか分かりません。
空き家を売ったときの譲渡所得税はいくらかかりますか?
所有期間が5年を超える場合の税率は、所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%をあわせて20.315%です(国税庁タックスアンサーより)。課税譲渡所得金額は「譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額」で計算します。相続した空き家で要件を満たせば、最高3,000万円の特別控除により税額が0円になるケースもあります。
空き家の3,000万円特別控除はどんな家でも使えますか?
使えません。昭和56年5月31日以前に建築された家屋で、区分所有建物でなく、相続直前に被相続人以外が住んでいなかったことなど複数の要件があります。加えて、譲渡時に耐震基準を満たすか、家屋を取り壊してから土地を売ること、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、売却代金が1億円以下であることなどの条件も満たす必要があります(国税庁タックスアンサーNo.3306より)。適用の可否は要件が細かいため、税理士や税務署への事前確認をおすすめします。
相続登記が終わっていない空き家でも買取業者に査定を依頼できますか?
査定の依頼自体は登記が済んでいなくても可能です。ただし実際に売買契約を結ぶには、登記簿上の名義人が契約当事者になる必要があるため、名義が故人や先代のままでは契約に進めません。査定と並行して戸籍の収集や相続登記の準備を進めておくと、良い条件が出たときにすぐ契約に移れます。
買取業者を選ぶときに最低限確認すべきことは何ですか?
宅地建物取引業の免許番号、自社買取か仲介の紹介かの別、査定額の根拠、契約不適合責任の扱い、決済までの期間の4点は契約前に確認してください。免許番号の後ろにあるカッコ内の数字(更新回数)が多いほど営業年数が長い目安になります。複数社から査定を取り、金額だけでなく契約条件も比較することが、不利な条件での契約を避ける近道です。
空き家バンクに登録するのと買取業者に売るのとでは何が違いますか?
空き家バンクは自治体が運営する、空き家を売りたい人と利用したい人をつなぐ登録制度です。掲載は無料または低額な自治体が多い一方、専任の担当者が価格交渉や契約手続きを代行してくれるわけではなく、成約するかどうかも保証されません。すぐに現金化したい場合や、交渉を任せたい場合は買取業者のほうが実務的です。空き家バンクは、時間に余裕があり地域とのつながりを重視したい場合の選択肢として検討してください。
相続放棄を検討している間に買取業者へ査定だけ依頼しても問題ありませんか?
査定を受けるだけであれば、通常は問題にならないとされています。ただし査定の過程で家財を処分したり、売買契約を結んで代金を受け取ったりすると、単純承認とみなされ相続放棄ができなくなる可能性があります。放棄を迷っている段階では、査定はあくまで情報収集にとどめ、契約や処分に進む前に司法書士や弁護士へ相談してください。

まとめ

空き家買取業者を選ぶ判断は、価格だけで決めるものではありません。要点を振り返ります。

  • 買取は早さ、仲介は価格を優先する方法。まず両方の査定額を比較する
  • 買取価格は仲介想定額の6〜8割程度が目安とされるが、物件によって幅がある
  • 業者タイプは専門買取・地元業者・大手系列・空き家特化型に分かれ、自社買取かどうかを最初に確認する
  • 契約前チェックリストの10項目を業者ごとに比較し、条件を書面で確認する
  • 相続した空き家は要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例がある。期限は相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで
  • 登記簿の名義が故人や先代のままでは契約できない。相続登記の準備を査定と並行して進める
  • 再建築不可・共有名義・特殊清掃が必要な物件は、専門の業者への相談が現実的な選択肢になる
  • 強引な即決営業や免許番号を教えない業者は避け、複数社比較を基本にする
  • 空き家の維持費は毎年発生し続ける。先延ばしにするほど累計コストが積み上がる点も判断材料に入れる
  • 1社に断られても他社では条件が合う場合がある。断られた理由を次の相談先に伝えると話が早い

不動産会社に相談する前に、名義の確認、固定資産税納税通知書の準備、境界状況の把握を済ませておくと、査定の精度が上がり、契約までの手戻りを防げます。片付けや相続登記の準備からまとめて進めたい場合は、実家じまい代行サービスで窓口ひとつでのご相談を承っています。税額の試算や特例の適用可否について迷う場合は、税理士や提携司法書士への早めの相談をおすすめします。

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この記事を書いた人

安心実家じまい事務局です。実家の片付けや遺品整理、空き家になった家の処分について、はじめての方にも分かるように記事を書いています。提携している現場の業者や司法書士と一緒に、費用の相場・自治体のごみ出しルール・補助金といった、調べてもなかなか分かりにくいところを一つずつ確かめながらまとめています。「誰に頼めばいいか分からない」という段階のご相談も、LINEやお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。

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