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農地・山林の処分方法|売れない土地の手放し方と相続の注意

最終更新日:2026年8月6日|監修:司法書士・行政書士 久留慎一郎先生・安心実家じまい事務局

司法書士・行政書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 不動産の名義変更
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理

この記事の結論

  • 農地・山林を手放す方法は主に7つあります。仲介での売却が難しい場合は、農地バンクや森林組合を通じたあっせん、費用を払って引き取ってもらう有償引き取り、相続放棄、要件を満たせば相続土地国庫帰属制度による国への引き渡しまで、状況に合わせて選べます。
  • 相続で農地・山林を取得したときは、農地は農業委員会へ「遅滞なく」、山林は市町村長へ90日以内に届出が必要です。届け出ないと10万円以下の過料の対象になり得ます(農地法第69条・森林法第10条の7の2、2026年8月時点・条文および林野庁公式資料より)。
  • 相続土地国庫帰属制度には却下・不承認の要件があり、建物がある土地、境界不明の土地、荒れた森林などは対象外です。審査手数料は土地一筆14,000円、負担金は原則20万円ですが農地・森林は面積に応じて変動します(2026年8月時点・法務省公式サイトより)。
  • 農地・山林を売却すると譲渡所得税がかかります。空き家の3,000万円特別控除は建物がある不動産が対象で、農地・山林単体には使えません。持ち続けた場合の固定資産税・草刈り費用と、処分費用とを比べて判断することが大切です。
目次

なぜ農地・山林は「売れない」と言われるのか

実家を相続したとき、家屋や宅地とは別に、離れた場所にある田畑や裏山がついてくることは珍しくありません。相続人の多くは、まず家屋の片付けや名義変更に気を取られ、農地や山林の存在を後回しにしがちです。しかし、農地・山林は宅地に比べて処分の難易度がはっきり高く、対応を先延ばしにするほど選択肢が狭まっていく資産でもあります。まず、なぜ売れないと言われるのか、理由を整理します。

農地は買い手が農業者に限られる

農地をそのまま農地として売買・貸借する場合、買主・借主は農地法第3条に基づく農業委員会の許可を受ける必要があります。この許可を得られるのは、原則として耕作の事業に必要な農作業に常時従事する見込みがある人や法人に限られます。つまり、農地を欲しいと思っても、農業を営む予定のない個人がそのまま買うことはできません。2023年4月の法改正で、取得後に耕作する農地面積の下限(下限面積要件)は廃止されましたが、耕作者としての実態が求められる点は変わっていません。買い手の母数がもともと少ないうえに、後継者不足で農業者自体が減っている地域では、農地としての売却はさらに難しくなります。

農地を農地以外の用途に転用して売る方法もありますが、こちらも農地法第4条・第5条に基づく都道府県知事等(市街化区域内では農業委員会への届出)の許可・届出が必要です。市街地に近い農地なら宅地への転用が認められやすい一方、農業振興地域内の農用地(青地)に指定されている農地は、原則として転用が認められません。実家の農地がどちらに該当するかは、農業委員会や市区町村の農政担当窓口で確認できます。

山林は境界不明・搬出路なしで買い手がつきにくい

山林の場合、農地法のような権利移動の許可制度はありませんが、別の理由で売却が難しくなります。代表的なのが、境界が明確でないことです。山の斜面は隣地との境界標が失われていることが多く、代替わりを重ねるうちに、どこまでが自分の土地か誰も分からなくなっているケースが少なくありません。境界が確定していない山林は、買い手側が測量や境界確認の手間を負うことになるため、購入をためらう要因になります。

もう一つの要因は、搬出路や造林の状態です。作業道が整備されていない、間伐や下刈りが長年されず荒れている山林は、木材としての価値も、太陽光発電用地などへの転用価値も見込みにくくなります。傾斜が急で災害リスクが高い土地は、購入後の管理コストを見込んだ買い手にはさらに敬遠されます。宅地であれば「立地が悪くても安くすれば売れる」余地がありますが、山林は無償でも引き取り手がつかない、あるいは引き取り側が費用を要求する「逆有償」の状態になりやすい点が、宅地の売却とは根本的に異なります。

保安林に指定されていると、さらに制約が加わる

相続した山林が「保安林」に指定されている場合、処分・活用のハードルはもう一段上がります。森林法第34条第1項により、保安林内で立木を伐採するには、原則として都道府県知事の許可が必要です。また、地域森林計画の対象となっている民有林で一定規模を超える開発行為(土石の採掘、開墾など土地の形質を変更する行為)を行う場合も、都道府県知事の許可を要します(森林法第10条の2)。保安林に該当するかどうかは、市町村や都道府県の林務担当窓口で森林簿・地域森林計画図を確認すれば分かります。指定を受けている土地は、買い手にとって用途の自由度が下がるため、売却の候補からも外れやすくなります。相続した山林が保安林かどうかは、処分方法を検討する前に確認しておきたいポイントです。

比較項目 農地 山林
権利移動の規制 農地法3条の許可制(買主は原則、耕作の実態が必要) 権利移動そのものへの許可制度はない
買い手の層 農業者・農業法人・農地バンクなど 森林組合・林業事業体・投資目的の買主など
境界の明確さ 耕作地として管理されていれば比較的明確 放置期間が長いほど境界標の滅失・不明が多い
転用のハードル 農業振興地域の農用地区域内は原則不可 保安林指定があると伐採・形質変更に知事許可が必要
放置時の主なリスク 荒廃農地化、鳥獣害の発生源になる 倒木・土砂流出、隣地への越境

このように、農地と山林では「売れにくい理由」の中身が異なります。処分方法を検討する前に、自分の土地がどちらの事情に近いか、まずは大まかに把握しておくと、以降の判断がしやすくなります。

農地・山林を手放す7つの方法

売却にこだわらず視野を広げると、農地・山林を手放す方法は大きく7つに整理できます。実現しやすさやコストは方法ごとに大きく異なるため、複数を並べて比較することをおすすめします。

方法 内容 費用の目安 向いているケース
①仲介・あっせんでの売却 不動産会社、または農地バンク・森林組合を通じて買主を探す 売却時に仲介手数料(成約価格に応じて算定) 立地・条件が比較的良く、需要が見込める土地
②専門業者への直接買取 山林専門業者や不動産会社が自ら買主となる 無料(買取価格から相殺) 早く現金化したい、仲介より確実性を優先したい場合
③有償引き取り 専門業者に処分費用を支払って引き取ってもらう 数万円〜数十万円程度(土地の状態による) 買い手がつかない・急いで手放したい土地
④近隣・隣接地所有者への譲渡 隣接する土地の所有者に無償・低価格で譲る 登記費用程度 隣地所有者が土地の一体活用を望んでいる場合
⑤相続放棄 家庭裁判所への申述で相続財産全体を受け継がない 収入印紙800円程度+戸籍取得費用 まだ相続していない・財産全体が負担超過の場合
⑥相続土地国庫帰属制度 要件を満たす土地を国に引き渡す 審査手数料14,000円+負担金(原則20万円〜) 売却先がなく、要件を満たす見込みがある土地
⑦そのまま維持し管理を委託 草刈り・巡回などを業者や地域に委託して所有を続ける 年間数万円程度の管理委託費 将来の活用や価格上昇を見込みたい場合

①と②は「売れる土地」であることが前提です。立地が良い、面積がまとまっている、境界が明確といった条件がそろえば、農地バンク(農地中間管理機構)や森林組合、山林専門の不動産会社を通じて買い手が見つかる可能性があります。農地バンクは都道府県ごとに設置された組織で、出し手の農地を借り受け、担い手農家にまとめて貸し付ける仕組みです。売却よりも貸借を軸にした制度ですが、将来的な売却の橋渡し役として相談する価値はあります。

③の有償引き取りは、売却先が見つからない土地の受け皿として近年広がっているサービスです。処分費用の相場は土地の状態によって大きく変わり、数万円で済む場合もあれば、造成や伐採の必要な山林では数十万円から百万円規模になることもあります。複数の業者から見積もりを取り、内訳を比較することが欠かせません。

④の隣接地所有者への譲渡は、見落とされがちですが実務上は有効な選択肢です。山林や農地は一筆単位では小さくても、隣接地とまとめれば管理や活用がしやすくなるため、隣接地の所有者にとっては魅力的な話になり得ます。実家の周辺に長く住んでいる親族や近隣住民がいる場合は、正式な処分方法を検討する前に、一度声をかけてみる余地があります。

⑦の「維持しながら管理を委託する」については、山林であれば市町村が窓口となる「森林経営管理制度」も選択肢の一つです。これは、手入れが行き届いていない森林について、市町村が所有者から経営管理の委託(経営管理権の設定)を受け、林業経営に適した森林は地域の林業経営体に再委託し、林業経営に適さない森林は市町村が公的に管理する仕組みです。所有権を手放すわけではありませんが、管理の実務を市町村側に委ねられるため、遠方に住んでいて自分では手入れができない山林の受け皿になります。制度の対象になるかどうかや手続きの窓口は、山林が所在する市町村の林務担当課に相談すると確認できます(2026年8月時点・林野庁公式サイトより)。

⑤の相続放棄と⑥の相続土地国庫帰属制度は、それぞれ次の見出しで詳しく説明します。⑦のように、あえて処分せず維持を続けるという判断も、将来の地域開発や太陽光発電用地としての需要を見込む場合には合理的です。ただし、維持を選ぶ場合も固定資産税と管理コストは発生し続けるため、「いつまで持ち続けるか」の見通しを立てておくことをおすすめします。

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ケースで見る判断の分かれ道

7つの方法のどれが向いているかは、土地の状態と相続人の事情によって変わります。相談窓口でよく聞かれる3つのパターンをもとに、判断の流れを紹介します。ご自身の状況に近いケースがないか確認してみてください。

ケース1:実家の裏に小さな畑(3畝ほど)が残っている

実家の宅地に隣接する形で、亡くなった親が家庭菜園として使っていた程度の小さな農地が残っているケースです。面積が小さく、耕作放棄地としての届出や課税上の扱いも軽微であることが多いものの、農地である以上、農地法の規制自体は面積の大小にかかわらず及びます。まず農業委員会で農用地区域内かどうかを確認し、区域外であれば宅地への転用も選択肢に入ります。隣接地の所有者が畑として使い続けたい意向を持っていれば、譲渡の相談も現実的です。買い手も借り手も見つからない場合は、実家の宅地と切り離して単独で処分するより、実家全体の売却時にセットで扱ったほうが、買主にとっての説明もしやすくなります。

ケース2:山あいに1,000坪規模の山林があり、境界が分からない

先々代から受け継いだ山林で、面積は大きいものの境界標が失われ、隣地との境界がどこにあるか相続人自身も把握していないケースです。このまま売却しようとしても、買い手側が境界確定を求めるため、測量費用(山林の測量は数十万円規模になることもあります)が壁になります。まずは森林組合や地元の土地家屋調査士に相談し、簡易な現況測量で境界のおおよその見当をつけられるかを確認します。境界確定が難しく、造林状態も荒れている場合は、有償引き取りサービスへの相談と並行して、相続土地国庫帰属制度の要件(境界がある程度特定できること、間伐等が実施されていること)を満たせるかどうかを法務局の相談窓口で確認するのが現実的な進め方です。

ケース3:相続人が3人おり、山林の扱いで意見が割れている

実家の宅地は売却する方針で一致しているものの、付随する山林については「将来使うかもしれないから残したい」「早く手放したい」で意見が分かれているケースです。このような場合、無理に一つの結論を急ぐより、まず全員で維持コスト(固定資産税・管理委託費)と処分費用を試算表として共有し、判断材料をそろえることが有効です。遺産分割協議がまとまらない間も、森林の土地の届出は相続開始から90日以内に法定相続人の共有物として済ませておく必要があります。届出を済ませたうえで、時間をかけて活用方針を話し合うという進め方であれば、期限を守りながら合意形成を急がずに進められます。

相続したら期限内にすべき届出(農地・山林で異なる)

農地・山林を相続で取得した場合、家屋や宅地とは別に、それぞれ固有の届出義務があります。相続登記そのものは2024年4月から義務化されていますが、農地・山林にはこれに加えて、農地法・森林法に基づく届出義務がある点に注意が必要です。届出の相手先・期限・過料の有無が、農地と山林とで異なります。

農地(農地法3条の3) 森林の土地(森林法10条の7の2)
届出先 農地の存する市町村の農業委員会 土地の存する市町村の長
期限 「遅滞なく」(明確な日数の定めはない) 所有者となった日から90日以内
面積基準 該当する権利取得であれば面積を問わず対象 面積基準なし(小さな土地でも対象)
遺産分割前の扱い 個別の運用に従う 未分割でも相続開始日から90日以内に法定相続人の共有物として届出が必要
違反時の過料 10万円以下(農地法第69条) 10万円以下(届出をしない、または虚偽の届出をした場合)

(2026年8月時点・農地法条文および林野庁公式資料より)農地の届出は、農地法第3条第1項の許可を受けて権利を取得した場合など一部の例外を除き、相続などによって農地の所有権その他の権利を取得したすべての人が対象です。条文上は「遅滞なく」と定められており、日数による明確な期限は示されていませんが、実務では相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)を一つの目安として、早めに済ませておくことが推奨されています。届出をしなかった場合、または虚偽の届出をした場合は、10万円以下の過料の対象になり得ます。

森林の土地の届出は、より明確に期限が定められています。個人・法人を問わず、売買・相続・贈与・合併などによって森林の土地を新たに取得したときは、所有者となった日から90日以内に、市町村長へ届け出なければなりません。相続の場合、遺産分割協議がまだ終わっていなくても、相続開始の日(被相続人の死亡日)から90日以内に、法定相続人の共有物として届出をする必要がある点は見落とされやすいポイントです。「遺産分割が終わってから届け出ればいい」という理解は誤りで、分割協議が長引きそうな場合ほど、先に共有名義での届出を済ませておくことが求められます。届出書には、土地の位置を示す図面と、登記事項証明書など権利取得を証明する書類の添付が必要です。届け出ない場合、または虚偽の届出をした場合は、10万円以下の過料の対象になり得ます。

実家の敷地に隣接する形で農地や山林がある場合、相続登記の手続きと一緒に、これらの届出も進めておくと二度手間になりません。相続登記そのものの期限や過料については、不動産の名義変更全般に関わるテーマとして別途整理が必要ですが、農地・山林特有の届出義務は見落とされがちなので、相続財産に農地・山林が含まれていないか、早い段階で確認しておくことをおすすめします。

相続土地国庫帰属制度は農地・山林でも使えるか

売却先が見つからず、有償引き取りの費用も負担に感じる場合、2023年4月27日に始まった「相続土地国庫帰属制度」が選択肢になります。相続や遺贈によって土地の所有権を取得した人が、一定の要件を満たす土地に限り、法務大臣(窓口は法務局)の承認を受けて国に引き渡せる制度です。ただし、どんな農地・山林でも使えるわけではなく、法務省が定める要件に該当すると、申請の段階で却下されるか、審査の結果不承認となります。

却下要件(申請の時点で対象外になる土地)

次のいずれかに該当する土地は、そもそも承認申請ができません(2026年8月時点・法務省公式サイトより)。

要件 内容
A 建物がある土地 納屋・作業小屋なども含め、建物が存在する土地は対象外
B 担保権や使用収益権が設定されている土地 抵当権、地上権、賃借権などが設定されている土地
C 他人の利用が予定されている土地 現に道路・水路・ため池として使われている土地、墓地内の土地など
D 土壌汚染がある土地 法務省令で定める基準を超える特定有害物質による汚染がある土地
E 境界不明・所有権に争いがある土地 隣接地との境界が明らかでない、所有権の存否や範囲に争いがある土地

不承認要件(審査の結果、対象外と判断される土地)

要件 内容
A 一定の崖がある土地 勾配30度以上・高さ5メートル以上の崖があり、管理に過分な費用・労力を要する土地
B 管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地 放置車両、倒木のおそれがある枯木、補修が必要な旧工作物など
C 除去が必要な有体物が地下にある土地 産業廃棄物、古い水道管、浄化槽、井戸など
D 隣接地所有者との争訟によらなければ管理・処分できない土地 袋地で通行が妨げられている土地、不法占拠者がいる土地など
E その他、管理に過分な費用・労力がかかる土地 災害の危険がある土地、鳥獣害のある土地、造林・間伐・保育が実施されていない森林など

(2026年8月時点・法務省公式サイトより)農地・山林の相談で特に関係が深いのは、C要件とE要件です。現に耕作されている農地や、水路・ため池として使われている土地はC要件に該当する可能性があり、間伐や下刈りが長年行われず荒れた森林はE要件に該当し得ます。逆にいえば、境界が明確で、通常の管理が行き届いている農地・山林であれば、対象になる余地は十分あります。なお、果樹園の樹木や、定期的な伐採管理がされている山林の立木は、直ちに不承認要件に当たるわけではありません。土地の形状・性質によって、有体物があっても通常の管理を阻害しないと判断される場合があるためです。

審査手数料と負担金

承認申請には、土地一筆当たり14,000円の審査手数料がかかります(収入印紙で納付)。この手数料は、申請を取り下げた場合や、却下・不承認となった場合でも返還されません。事前に法務局の相談窓口で対象になりそうかを確認しておくと、手数料を無駄にするリスクを減らせます。

承認された場合は、10年分の土地管理費用相当額として負担金を納付する必要があります。宅地・農地・雑種地などのうち、市街化区域外・農用地区域外にある土地は原則として20万円です。一方、市街化区域内・用途地域内の宅地、農用地区域内の農地、そして森林は、面積に応じた算定式で負担金額が決まります。算定式は法務省が公開している自動計算シート(Excelファイル)で試算できるため、申請を検討する段階で概算を確認しておくと安心です。隣接する2筆以上の土地をまとめて申請する場合、同じ種目であれば面積を合算して負担金を一本化できる特例もあります。負担金は、承認の通知が届いた日の翌日から30日以内に納付しないと、承認自体が失効し、最初から申請をやり直すことになる点にも注意してください。

国庫帰属を検討する前のチェックリスト

申請の可否をおおまかに見極めるため、次の項目を確認してみてください。

  • 建物・廃屋・放置車両など、地上に構造物や工作物が残っていないか
  • 抵当権など、登記簿上に担保権や使用収益権の設定が残っていないか
  • 隣接地との境界が、書類や現況からある程度特定できるか
  • 山林の場合、直近で間伐・下刈りなどの管理が行われているか
  • 農地の場合、現に耕作されているか、水路・ため池等として使われていないか
  • 土地に産業廃棄物や古い浄化槽・井戸など、地下埋設物の心当たりがないか
  • 負担金(自動計算シートでの概算)を納付する資金の見通しが立っているか

いずれか一つでも当てはまる場合は、そのままでは申請が通らない可能性があります。境界確定や樹木の伐採など、事前に対応できる部分があるかどうか、法務局の相談窓口や司法書士に相談してみることをおすすめします。

農地・山林を売却した場合の税金

買い手が見つかり売却できた場合も、譲渡益が出れば税金がかかります。農地・山林の譲渡は、宅地と同じく分離課税の譲渡所得として扱われるのが基本ですが、山林を伐採・譲渡する場合は「山林所得」という別の区分になる点が特徴です。誠実な判断のためには、税金を差し引いた手取り額で比較することが欠かせません。

土地としての譲渡所得税の計算方法

農地・山林を土地として売却した場合の譲渡所得は、次の計算式で求めます。

譲渡所得金額 = 譲渡価額(売却代金)-(取得費+譲渡費用)-特別控除額

取得費が分からない場合、または実際の取得費が譲渡価額の5%より少ない場合は、譲渡価額の5%を「概算取得費」として計算できます。相続で取得した土地は、被相続人が取得した時点から所有期間を通算するため、先代・先々代から長く受け継いできた農地・山林ほど、長期譲渡所得に該当しやすくなります。所有期間が譲渡した年の1月1日時点で5年を超えるかどうかで、税率が次のように変わります(2026年8月時点・国税庁タックスアンサーより)。

区分 所有期間 税率
長期譲渡所得 5年超 所得税15%+住民税5%(別途、復興特別所得税として所得税額の2.1%)
短期譲渡所得 5年以下 所得税30%+住民税9%(別途、復興特別所得税として所得税額の2.1%)

評価額別の税額シミュレーション

実際にどの程度の税負担になるか、取得費が不明で概算取得費(譲渡価額の5%)を使うケースを例に試算します。譲渡費用(仲介手数料等)は譲渡価額の3%と仮定し、いずれも所有期間5年超の長期譲渡所得として計算しています。

譲渡価額 概算取得費(5%) 譲渡費用(3%) 課税譲渡所得 税額の目安(所得税15%+住民税5%)
100万円 5万円 3万円 92万円 約18万4,000円
300万円 15万円 9万円 276万円 約55万2,000円
800万円 40万円 24万円 736万円 約147万2,000円

(復興特別所得税は別途、所得税額の2.1%が加算されます)売却額が小さい農地・山林でも、取得費が不明なままだと課税譲渡所得の割合が大きくなり、税負担が重く感じられることがあります。相続時に取得費を証明できる資料(先代の購入時の契約書や領収書)が残っていないか、一度確認しておく価値があります。

山林の立木を伐採・譲渡した場合は「山林所得」

山林を伐採して譲渡したり、立木のままで譲渡したりする所得は、土地の譲渡所得とは別の「山林所得」として扱われます。ただし、山林を取得してから5年以内に伐採・譲渡した場合は、山林所得ではなく事業所得または雑所得になります。また、山林を土地付きで譲渡する場合、土地の部分は譲渡所得として別に計算します。山林所得の金額は、総収入金額から必要経費と特別控除額(最高50万円)を差し引いて求め、税額は他の所得と合算せず、課税山林所得金額を5分の1にしてから税率を掛け、その税額を5倍にする「5分5乗方式」で計算します。譲渡した年の15年前の12月31日以前から所有していた山林であれば、譲渡費用を除いた収入金額の50%相当額に譲渡費用を加えた金額を必要経費とできる概算経費控除の特例もあります(2026年8月時点・国税庁タックスアンサーより)。立木の売却額が大きい場合は、事前に税理士へ試算を依頼することをおすすめします。

空き家の3,000万円特別控除は農地・山林単体には使えない

実家の売却関連の記事でよく紹介される「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」は、譲渡所得から最高3,000万円(相続人が3人以上の場合は2,000万円)を控除できる制度ですが、対象となるのは昭和56年5月31日以前に建築された被相続人居住用家屋、またはその家屋を取り壊した後の敷地に限られます(2026年8月時点・国税庁タックスアンサーより)。家屋が建っていない農地や山林を単体で売却する場合は、この特例の対象になりません。「実家と一緒に処分するのだから空き家特例が使えるはず」と思い込んでいると、確定申告の段階で想定外の税額になることがあるため、あらかじめ切り分けて考えておくことをおすすめします。

持ち続けた場合の維持コストと、処分にかかる費用を比べる

「処分するにも費用がかかるなら、今のまま持っていたほうがいいのでは」と考える方もいます。ただし、持ち続ける場合も固定資産税や管理の手間はゼロにはなりません。判断のためには、維持コストと処分費用を同じ土俵で比較する必要があります。

農地・山林の固定資産税評価額は、宅地に比べて低く設定されていることが一般的です。とはいえ、面積が広い農地・山林では、評価額が低くても税額が積み上がることがあります。加えて、耕作放棄地化した農地には草刈りや害虫対策の手間、山林には倒木や境界紛争への対応といった、金銭に換算しにくい管理負担がのしかかります。委託する場合は、草刈り業者や森林組合への管理委託費が年間数万円程度かかることが目安です。

比較項目 10年間持ち続けた場合の目安 有償引き取りで処分した場合の目安
固定資産税 数万円〜数十万円(評価額・面積による) 処分後は発生しない
管理委託費(草刈り・巡回等) 年間数万円×10年=数十万円規模になることも 処分後は発生しない
一時的な費用 境界紛争や倒木対応が発生すれば別途負担 処分費用(数万円〜百万円規模、土地の状態による)
将来の不確実性 相続人がさらに増え、権利関係が複雑化するリスク 権利関係は処分時点で確定する

この比較はあくまで目安であり、実際の金額は土地の評価額・面積・地域によって大きく変わります。大切なのは、「今は動かない」という選択も、将来の相続人にコストと手間を先送りしているだけかもしれない、という視点を持つことです。次の相続人がさらに複数に枝分かれすれば、境界確認や意思決定はより難しくなります。維持を選ぶ場合も、いつまでにどう判断するかの目安を家族内で共有しておくことをおすすめします。

不動産会社に行く前に知っておきたいこと

農地・山林の処分を考えたとき、多くの人がまず地元の不動産会社に相談します。ここで正直にお伝えしておきたいのは、不動産会社の得意分野は宅地や建物の仲介であり、農地・山林の取り扱いに慣れていない会社も少なくないということです。査定を依頼しても「うちでは難しい」と断られたり、専任媒介契約を結んだまま長期間動きがなかったりするケースは珍しくありません。

相談前に知っておくと役立つ点を整理します。

  • 専任媒介の期間中は他社に相談しづらくなる——一般媒介であれば複数の会社に同時に依頼できますが、専任媒介・専属専任媒介を結ぶと、契約期間中は他社への並行相談がしにくくなります。農地・山林のように売れるかどうか不確実な物件では、まず一般媒介で複数社に声をかけ、反応を見てから絞り込む進め方が現実的です。
  • 不動産会社だけが窓口ではない——農地なら農業委員会や農地中間管理機構(農地バンク)、山林なら森林組合や山林専門の買取・引き取り業者も選択肢です。地域の実情に詳しい公的な窓口のほうが、買い手の情報を持っていることもあります。
  • 「囲い込み」のリスクを理解しておく——不動産会社が自社での両手仲介(売主・買主の双方から手数料を得ること)を優先し、他社からの購入希望を意図的に取り次がない「囲い込み」が問題視されることがあります。反響状況の報告を定期的に求め、レインズへの登録状況を確認できる会社を選ぶと、こうしたリスクを避けやすくなります。
  • 「売れない」という説明の根拠を聞く——査定の結果「売却は難しい」と言われた場合、その理由が権利関係にあるのか、立地にあるのか、需要そのものがないのかを具体的に聞いてください。理由によっては、有償引き取りや国庫帰属制度など、次に検討すべき方法が変わります。

不動産会社に頼らない方法を含めて選択肢を広げておくと、「一社に断られて終わり」という状況を避けやすくなります。実家全体の売却・査定を検討している場合は、農地・山林も含めた敷地全体の状況を整理したうえで相談すると、話がスムーズに進みます。実家の売却査定の進め方は実家の売却査定の受け方で、建物の解体まで検討している場合は実家の解体費用と進め方で詳しく説明しています。

農地・山林の処分 実務チェックリスト

ここまでの内容を、処分を検討する際にそのまま使えるチェックリストにまとめました。印刷して、ご自身の土地に当てはめながらご確認ください。

確認項目 チェックの目安
登記簿・公図の確認 地目(田・畑・山林等)、面積、所有者名義、担保権の有無を確認したか
境界の把握 隣接地との境界が図面・現況で特定できるか、境界標が残っているか
農地区分の確認(農地の場合) 農業振興地域の農用地区域内かどうかを農業委員会・農政担当窓口で確認したか
保安林指定の確認(山林の場合) 森林簿・地域森林計画図で保安林等の指定を受けていないか確認したか
届出義務の履行 農地は農業委員会へ、山林は市町村長へ、それぞれ届出を済ませたか
相続登記の見通し 名義変更の準備(戸籍収集・遺産分割協議)を並行して進めているか
複数ルートでの見積もり 不動産会社・農地バンクや森林組合・有償引き取り業者など、複数の窓口に相談したか
維持コストの試算 固定資産税・管理委託費を持ち続けた場合の目安として計算したか
国庫帰属制度の該当性 却下・不承認要件に当てはまらないか、法務局の相談窓口で確認したか
税金の試算 売却・処分にともなう譲渡所得税・山林所得の見込み額を確認したか

安心実家じまいのサービス案内

安心実家じまいは、実家の片付けから売却・解体の手配までを一つの窓口でお受けするサービスです。農地・山林そのものの売買仲介は専門の農業委員会や森林組合、山林専門業者が窓口になりますが、実家の敷地に付随する農地・山林がある場合は、実家全体の整理の一環としてご相談いただけます。相続登記や届出関連の手続きが絡む場合は、提携司法書士と連携して進める体制を整えています。

実家の売却を検討している場合は、まず現況を把握するための査定から始めるのが近道です。査定の受け方や必要な準備は実家の売却査定の受け方をご覧ください。建物の解体まで見据えている場合は実家の解体費用と進め方で費用の目安を紹介しています。処分の判断がつくまで、当面は空き家・空き地として管理する必要がある場合は空き家管理の方法と注意点もあわせてご参照ください。片付けから売却・解体まで一括で相談したい方は実家じまい代行サービスのページをご覧ください。

農地・山林は、実家の宅地・建物とは異なる法律や制度が関わる資産です。判断を誤ると、相続放棄や国庫帰属といった選択肢そのものを失うこともあります。処分方法に迷ったら、抱え込まずに早い段階でご相談ください。

よくある質問

農地や山林はどうすれば処分できますか?
主な方法は7つあります。農地は農業委員会・農地中間管理機構(農地バンク)を通じたあっせんや、転用したうえでの売却、山林は森林組合や山林専門の買取業者への売却が現実的な入口です。買い手がつかない場合は、費用を払って引き取ってもらう有償引き取り、まだ相続していなければ相続放棄、要件を満たせば相続土地国庫帰属制度を使って国に引き渡す方法もあります。土地の状態によって使える方法が変わるため、複数の選択肢を並べて比較することをおすすめします。
山林は無料でも引き取ってもらえないことがありますか?
あります。搬出路がない、境界が不明確、傾斜が急、樹木の手入れがされていないといった山林は、無償はおろか業者側が費用を要求する「有償引き取り」の対象になることが珍しくありません。不動産会社への査定依頼と並行して、森林組合や山林専門の引き取りサービスにも相談し、複数の窓口で条件を比べることをおすすめします。
相続放棄をすれば、農地や山林の管理義務からすぐに解放されますか?
そうとは限りません。放棄の時点でその農地・山林を現に占有していた場合は、相続人または家庭裁判所が選任する相続財産の清算人に引き渡すまでの間、自己の財産と同一の注意をもって保存する義務が残ります(民法940条)。実家から離れて暮らしていて占有していなかった場合は、この保存義務は生じません。管理を完全に手放すには、相続財産清算人の選任を家庭裁判所に申し立てる必要があり、費用と時間がかかります。相続放棄は財産全体を受け継がない選択であって、農地・山林だけを放棄することはできない点にも注意してください。
相続土地国庫帰属制度は、どんな農地・山林でも使えますか?
使えません。建物がある土地、担保権が設定されている土地、境界が不明確な土地、一定の勾配・高さの崖がある土地、間伐や下刈りが行われず荒れた森林など、法務省が定める却下・不承認の要件に該当する土地は対象外です(2026年8月時点・法務省公式サイトより)。申請前に法務局の相談窓口で、対象になりそうかを確認しておくと手数料の無駄を防げます。
農地・山林を売却したときも譲渡所得税はかかりますか?
かかります。土地としての売却は分離課税の譲渡所得として扱われ、所有期間が5年を超える長期譲渡所得なら税率は所得税15%・住民税5%(別途復興特別所得税)、5年以下の短期譲渡所得なら所得税30%・住民税9%(別途復興特別所得税)です(国税庁タックスアンサーより)。取得費が分からない場合は譲渡価額の5%を概算取得費として計算できます。立木を伐採・譲渡した場合は山林所得という別区分になり、計算方法が異なります。
山林を手放さずに管理だけ委託する方法はありますか?
あります。手入れが行き届いていない森林について、市町村が所有者から経営管理の委託を受け、林業に適した森林は地域の林業経営体に、適さない森林は市町村が公的に管理する「森林経営管理制度」が用意されています。所有権は手放さないまま、管理の実務だけを市町村側に委ねられる仕組みです。対象になるかどうかは、山林が所在する市町村の林務担当課に相談すると確認できます(2026年8月時点・林野庁公式サイトより)。

まとめ

農地・山林の処分は、実家の片付けの中でも見落とされやすく、かつ判断を誤ると取り返しがつきにくいテーマです。要点を振り返ります。

  • 農地は買い手が農業者に限られ、山林は境界不明や搬出路のなさから、宅地よりも売却が難しい
  • 手放す方法は7つ。仲介・直接買取・有償引き取り・隣接地への譲渡・相続放棄・相続土地国庫帰属制度・維持継続から状況に応じて選ぶ
  • 相続後の届出は農地と山林で異なる。農地は農業委員会へ遅滞なく、山林は市町村長へ90日以内、いずれも違反は10万円以下の過料
  • 相続土地国庫帰属制度には却下・不承認要件があり、建物がある土地や荒れた森林などは対象外。審査手数料14,000円、負担金は原則20万円だが農地・森林は面積で変動する
  • 売却時の譲渡所得税は所有期間5年超で税率約20.315%、5年以下で約39.63%が目安。空き家の3,000万円特別控除は建物がある不動産が対象で、農地・山林単体には使えない
  • 持ち続ける場合も固定資産税・管理費はかかり続ける。維持コストと処分費用を同じ土俵で比較する
  • 不動産会社だけに頼らず、農地バンク・森林組合・有償引き取り業者など複数の窓口を比較する

農地・山林は、家屋の片付けとは別の専門知識が必要になる資産です。まずは登記簿と現地の状況を確認し、届出義務を済ませたうえで、複数の処分方法を比較することから始めてください。実家全体の片付け・売却・解体まで見据えている場合は、実家の売却査定の受け方実家の解体費用と進め方もあわせてご覧ください。

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この記事を書いた人

安心実家じまい事務局です。実家の片付けや遺品整理、空き家になった家の処分について、はじめての方にも分かるように記事を書いています。提携している現場の業者や司法書士と一緒に、費用の相場・自治体のごみ出しルール・補助金といった、調べてもなかなか分かりにくいところを一つずつ確かめながらまとめています。「誰に頼めばいいか分からない」という段階のご相談も、LINEやお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。

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