
久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士
東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。
■経歴
- 1966年鹿児島県生まれ
- 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
- 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
- 2013年司法書士試験合格
- 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
- 2017年司法書士法人コスモ退職
- 2018年事務所開設
- 2021年司法書士法人設立
■得意領域
- 相続登記・相続手続き
- 不動産の名義変更
- 相続放棄
- 簡易裁判所の訴訟代理
この記事の結論
- 古家付き土地は、建物を解体せず「土地」として売り出す方法です。解体費用(30坪の木造で目安90万〜150万円程度)をかけずに売却できる点が最大のメリットです。
- 解体すべきかどうかは、再建築の可否・立地の需要・解体費用と価格上昇分の比較で判断します。再建築不可物件や、更地の引き合いが強いエリアかどうかで結論が変わります。
- 相続した空き家を売る場合、要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります(適用期限は2027年12月31日まで、国税庁タックスアンサーNo.3306より)。
- 古家付き土地は契約不適合責任のトラブルが起きやすく、特約や引き渡し条件を契約前に明確にしておく必要があります。
- 売却の前提として相続登記(2024年義務化)を済ませておくことが欠かせません。
相続した実家を売却しようと不動産会社に相談すると、「古家付き土地として売り出しますか、それとも解体して更地にしますか」と尋ねられる場面があります。ここでどちらを選ぶかによって、初期費用・固定資産税・売却までの期間・税金の扱いが大きく変わります。多くの人にとって、実家の解体や売却は初めての経験であり、不動産会社の提案をそのまま受け入れるしかないと感じがちです。この記事では、判断材料になる数字と手続きを整理し、不動産会社に相談する前に自分でも見当をつけられる状態を目指します。
古家付き土地とは何か
古家付き土地とは、経済的な価値をほとんど持たない古い建物をそのまま残した状態で、土地として売りに出す不動産の取引方法です。相続した実家が空き家になったとき、解体してから更地で売るか、建物を残したまま土地として売るかは、多くの人が最初に迷う判断のひとつです。不動産の広告表現としては「古家あり」「現況古家」などと書かれ、価格は基本的に土地の値段のみで設定されます。
古家として扱われる家屋の目安
法律上「古家」という明確な築年数の定義があるわけではありません。実務上は、建物の資産価値がゼロに近いとみなされる目安として、木造住宅の法定耐用年数(22年)を大きく超えた物件や、リフォームをしなければ住み続けるのが難しい状態の建物が古家として扱われます。具体的には、築30年〜40年以上が経過した木造の実家が典型例です。鉄骨造・鉄筋コンクリート造は法定耐用年数が長いため、木造よりも古家として扱われるまでの年数が長くなる傾向があります。構造別の法定耐用年数は次のとおりです。
| 構造 | 法定耐用年数(住宅用) | 古家とみなされやすい築年数の目安 |
|---|---|---|
| 木造 | 22年 | 築30年前後〜 |
| 木骨モルタル造 | 20年 | 築25年前後〜 |
| 軽量鉄骨造(厚さ3mm以下) | 19年 | 築25年前後〜 |
| 軽量鉄骨造(厚さ3mm超4mm以下) | 27年 | 築35年前後〜 |
| 重量鉄骨造 | 34年 | 築40年前後〜 |
| 鉄筋コンクリート造(RC) | 47年 | 築50年前後〜 |
法定耐用年数はあくまで税務上の減価償却の基準であり、実際の建物寿命や資産価値をそのまま示すものではありません。ただし、金融機関の担保評価や不動産会社の査定でも参考にされる数字のため、自分の実家がどのあたりに位置するかの目安として確認しておくと、査定額の妥当性を判断しやすくなります。
「古家付き土地」は不動産広告のテクニックでもある
古家付き土地という表現には、買主の意識を「古い建物」ではなく「土地」に向けさせる狙いがあります。中古住宅として売り出すと、買主は建物の状態や間取りをまず気にしますが、古家付き土地として売り出すと、土地を探している層にも訴求できます。建て替えやリフォームを前提に土地を探している買主にとっては、更地より価格が抑えられる古家付き土地は選択肢のひとつになります。
古家付き土地という売り方が増えている背景
近年、古家付き土地としての売却が選ばれやすくなっている背景には、解体費用の上昇があります。人件費や産業廃棄物の処分費が上がり続けていることに加え、建材の中にアスベストが含まれている場合は事前調査や除去の費用が上乗せされるため、以前より解体にかかる総額が大きくなる傾向があります。あわせて、固定資産税の住宅用地特例により、建物を残しておくほうが税負担を抑えられる期間を長く取れることも、解体を急がない判断につながっています。相続した実家をどうするか決めきれないまま数年が経過している家庭が多いのも、こうした費用面の負担感が背景にあります。
古家付き土地・更地・中古住宅の違い
似た言葉と混同しやすいため、三つの売り方の違いを整理します。
| 古家付き土地 | 更地 | 中古住宅 | |
|---|---|---|---|
| 建物の扱い | 残したまま売却 | 解体してから売却 | 住める状態で売却 |
| 解体費用 | 売主負担なし(買主が負担する場合が多い) | 売主が事前に負担 | 不要 |
| 固定資産税の住宅用地特例 | 引き渡しまで継続 | 解体した年から特例が外れる | 継続 |
| 買主の層 | 建て替え・リフォーム目的が中心 | 建て替え目的が中心 | そのまま住みたい人 |
| 契約不適合責任のリスク | 建物部分で発生しやすい | 建物起因のリスクは少ない | 設備・雨漏り等で発生しやすい |
この三つのうち、実家じまいの相談で最も多いのが「古家付き土地」と「更地」のどちらで売り出すかという判断です。次の章で、メリット・デメリットの両面から整理します。
古家付き土地のまま売るメリットとデメリット
建物を解体せずに売る方法には、費用面での利点がある一方、買主側から見た不安要素も残ります。両方を把握したうえで、自分の実家に当てはめて考えることが大切です。
メリット
- 解体費用がかからない——木造30坪で90万〜150万円程度かかる解体費を、売主が事前に負担せずに済みます。まとまった現金が用意しにくい相続直後には大きな利点です。
- 固定資産税の住宅用地特例が引き渡しまで続く——建物が建っている土地には、固定資産税を軽減する住宅用地特例が適用されます。解体すると翌年からこの特例が外れ、税額が上がる仕組みのため、売却までの期間が長くなりそうな場合は古家を残しておくほうが税負担を抑えられます。
- 買主が建物の要否を選べる——古家をそのまま住めるように直す買主もいれば、解体して新築を建てる買主もいます。売り出す側が用途を決めつけずに済む分、需要の幅が広がる場合があります。
- 解体のタイミングを買主の計画に合わせられる——買主が住宅ローンの実行と解体工事のタイミングを揃えたいケースもあり、その場合は古家付きのまま引き渡すほうが都合がよいことがあります。
デメリット
- 買い手が限られやすい——建物の状態を確認しないと購入を決めにくいと感じる買主も多く、更地に比べて検討期間が長引く傾向があります。
- 契約不適合責任のトラブルが起きやすい——シロアリ被害、雨漏り、給排水管の劣化、地中埋設物(浄化槽や井戸など)は、引き渡し後に発覚しやすい問題です。売買契約書での取り決めが不十分だと、引き渡し後に責任を問われることがあります。
- 住宅ローンの審査が通りにくい場合がある——建物に資産価値がないとみなされると、金融機関によっては土地のみの評価で融資額が制限されることがあります。買主の資金計画に影響し、契約が流れる一因になり得ます。
- 老朽家屋である間の管理責任が残る——売却が決まるまでの間、倒壊や外壁の落下といったリスクの管理責任は売主側にあります。空き家の期間が長くなるほど、この負担は増えます。
契約不適合責任を回避するための実務
古家付き土地の売買では、契約不適合責任を負う期間や範囲をあらかじめ限定する特約を結ぶのが一般的です。「引き渡し後にシロアリ被害や雨漏りが見つかっても、売主は責任を負わない」といった不適合責任免責の特約を契約書に盛り込む、あるいは建物の価値をゼロとみなし、実質的に土地のみの取引として条件を整理する方法があります。特約の内容は個々の契約によって異なるため、仲介する不動産会社と事前にすり合わせ、書面に明記してもらうことが欠かせません。
買主から見た古家付き土地の見え方
売主側の事情だけでなく、買主がどう受け止めるかを知っておくと、売り出し方の工夫につながります。土地を探している買主の多くは、更地の価格から解体費用の目安を差し引いた金額を頭の中で計算し、それが売り出し価格と釣り合っているかを見ています。古家の写真や図面を公開し、解体を前提とした概算費用の目安まで示しておくと、買主が検討しやすくなり、問い合わせから成約までのスピードが上がることがあります。逆に、建物の内部が見えない、劣化状況が分からないといった情報不足は、買主の不安を増やし、指値交渉が強まる一因になります。
解体して更地にすべきかの判断
古家付きのまま売るか、解体して更地で売るかは、次の三つの視点で比較すると判断しやすくなります。一つ目は「その土地に再建築できるか」、二つ目は「更地の需要がどれだけあるか」、三つ目は「解体費用と、更地にしたことで見込める価格上昇分のどちらが大きいか」です。この三つは互いに関連しており、たとえば再建築ができない土地であれば、更地にしても需要が見込めず、価格上昇分より解体費用のほうが大きくなりがちです。逆に再建築ができて更地の引き合いが強い立地なら、解体費用をかけても回収できる可能性が高くなります。まずは自分の実家がどちらの条件に近いかを、次の項目で確認してください。
更地にしたほうがいいケース
- 再建築が可能な立地で、周辺エリアで更地の引き合いが強い場合
- 建物の傷みが激しく、買主が現況のままでは購入をためらう見た目・状態である場合
- 解体費用が比較的安く済む構造・立地(木造・平屋・搬出しやすい前面道路)である場合
- 売却までに時間の余裕があり、解体してから売り出しても資金繰りに支障がない場合
古家付きのまま売ったほうがいいケース
- 再建築不可の土地である場合(後述)
- 解体費用が高額になりやすい構造・立地(RC造、狭小地で重機が入りにくい、残置物が大量にある)の場合
- 建物に古民家としての価値やリノベーション需要が見込める場合
- 相続直後で、解体費用を事前に用意するのが難しい場合
再建築不可物件は要注意
建築基準法では、原則として幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接していない土地には、新しく建物を建てられません(接道義務)。この条件を満たさない「再建築不可」の土地に建物が建っている場合、解体して更地にしてしまうと、次に建物を建てられなくなります。再建築不可の土地は更地にすることでかえって買い手が減ることがあるため、解体前に自治体の建築指導課や不動産会社に接道状況を確認しておく必要があります。古い実家ほど、現在の基準では再建築不可になっているケースが少なくありません。
解体費用の相場【構造別・坪単価表】
解体費用は建物の構造によって坪単価が変わります。以下は一般的に示される目安で、実際の金額は前面道路の幅、重機の搬入可否、残置物の量、アスベスト含有建材の有無によって上下します。
| 構造 | 坪単価の目安 | 30坪(約99㎡)の総額目安 |
|---|---|---|
| 木造 | 3万〜5万円 | 90万〜150万円 |
| 軽量鉄骨造 | 4万〜6万円 | 120万〜180万円 |
| 重量鉄骨造 | 5万〜7万円 | 150万〜210万円 |
| 鉄筋コンクリート造(RC) | 6万〜8万円 | 180万〜240万円 |
上記に加えて、ブロック塀や庭木の撤去、井戸や浄化槽の埋め立て、残置物の処分費用が別途かかる場合があります。実家に大量の家財や粗大ごみが残っている場合、解体前に遺品整理・生前整理で減らしておくと、処分費用を抑えられます。築年数が古い建物では、解体前にアスベスト(石綿)含有建材の事前調査が法令で義務付けられており、調査費用と、含有が判明した場合の除去費用が追加でかかることも見込んでおく必要があります。
解体業者を選ぶときの注意点
- 建設業許可または解体工事業の登録——一定規模以上の解体工事には建設業許可(土木工事業・建築工事業・解体工事業のいずれか)または解体工事業の登録が必要です。無登録の業者に依頼すると、後の手続きでトラブルになることがあります。
- 見積書の内訳——本体解体費・付帯工事費(塀や庭木の撤去など)・廃棄物処分費・整地費が分かれて記載されているかを確認します。「一式◯◯万円」だけの見積書は比較が難しくなります。
- マニフェスト(産業廃棄物管理票)の発行——解体で出た廃棄物が適正に処理されたことを確認できる書類です。発行の可否を契約前に確認しておきます。
- 近隣への挨拶・養生の範囲——解体工事は騒音・振動・粉じんが伴います。近隣への事前挨拶や防音・防塵シートの設置範囲まで確認しておくと、工事後のトラブルを避けやすくなります。
解体費用を抑える工夫
解体費用そのものを下げる方法もいくつかあります。まず、家財や庭木をあらかじめ自分たちで減らしておくと、処分費用の分だけ見積もりが下がります。次に、自治体によっては老朽危険家屋の除却費用を補助する制度があり、対象になれば数十万円規模の補助を受けられることがあります。制度の有無と要件は市区町村ごとに異なるため、解体を決める前に自治体の窓口へ確認しておくと、申請のタイミングを逃さずに済みます。多くの補助制度は「着工前の申請」が条件になっており、解体業者と契約したあとでは申請できないケースが一般的なので、順番には注意してください。また、複数の解体業者から相見積もりを取ることも、費用を適正な水準に抑えるうえで欠かせない手順です。
固定資産税の住宅用地特例と更地化のシミュレーション
解体すべきかどうかを判断するとき、見落とされがちなのが固定資産税への影響です。建物が建っている住宅用地には、固定資産税の課税標準額を引き下げる住宅用地特例があり、200㎡以下の部分(小規模住宅用地)は課税標準額が6分の1に、200㎡を超える部分は3分の1に軽減されます。建物を解体すると、翌年からこの特例が外れ、更地としての課税標準額(原則そのままの評価額)に戻ります。
固定資産税評価額1,000万円・200㎡以下の土地を例に、税額の差を試算します(固定資産税率1.4%で計算。実際の税率は自治体によって異なる場合があります)。
| 古家付き(住宅用地特例あり) | 更地(特例なし) | |
|---|---|---|
| 課税標準額 | 1,000万円×1/6=約167万円 | 1,000万円 |
| 固定資産税額(年額) | 約2.3万円 | 約14万円 |
| 差額 | 年間 約11.7万円 | |
この試算のとおり、建物を解体すると翌年から固定資産税が大きく上がる可能性があります。都市計画税が課される地域では、同様に軽減割合が異なる形で上乗せされるため、さらに負担が増えます。「更地にすれば早く売れるはずだから」という理由だけで解体を決めると、売却が長引いた場合に税負担がかさむ点に注意してください。売却までの見込み期間が数か月以内であれば影響は限定的ですが、1年以上かかりそうな場合は、解体のタイミングを慎重に検討する価値があります。
固定資産税は1月1日時点の状態で決まる
固定資産税・都市計画税は、その年の1月1日時点の登記状態・現況で課税されます。解体のタイミングをどうしても年内に決める必要がある場合、年内に解体を終えてしまうと、翌年1月1日時点で「更地」として扱われ、その年の税額が住宅用地特例なしで計算されます。逆に、年明けの1月2日以降に解体すれば、その年は1月1日時点でまだ建物があった扱いとなり、住宅用地特例が適用されたまま1年分の固定資産税を抑えられます。解体を年末年始をまたいで計画する場合は、この1日の違いが数万円〜十数万円の差になり得る点を、解体業者との日程調整の材料にしてください。
古家付き土地の売却でかかる費用と税金
売却時にかかる費用は、解体の有無にかかわらず共通してかかるものと、譲渡所得に応じて発生する税金に分けて考えると整理しやすくなります。
売却時にかかる費用一覧
| 費用項目 | 目安・計算方法 |
|---|---|
| 仲介手数料 | 売買価格が400万円を超える部分は「価格×3%+6万円」+消費税が上限 |
| 印紙税 | 売買契約書に貼付。1,000万円超5,000万円以下の契約は軽減後1万円が目安 |
| 抵当権抹消登記費用 | 不動産1件につき登録免許税1,000円+司法書士報酬1万円前後 |
| 相続登記費用 | 登録免許税は固定資産税評価額の0.4%+司法書士報酬(数万円〜十数万円) |
| 測量費用(境界が未確定の場合) | 確定測量で数十万円〜100万円程度が目安 |
| 解体費用(更地で売る場合) | 前章の坪単価表を参照 |
仲介手数料は宅地建物取引業法で上限が定められています。売買価格の帯ごとの速算式は次のとおりです。
| 売買価格 | 仲介手数料の上限(速算式) |
|---|---|
| 200万円以下の部分 | 価格×5%+消費税 |
| 200万円超400万円以下の部分 | 価格×4%+2万円+消費税 |
| 400万円超の部分 | 価格×3%+6万円+消費税 |
たとえば売買価格2,800万円の場合、仲介手数料は「2,800万円×3%+6万円=90万円」に消費税を加えた約99万円が上限の目安です。低廉な空き家(400万円以下)の売買では、現地調査費用を含めた特例の手数料上限が別途定められている点も知っておくと安心です。
譲渡所得税の計算方法
不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、譲渡所得税がかかります。計算式は次のとおりです。
譲渡所得=譲渡価額−(取得費+譲渡費用)
取得費は、購入時の代金や仲介手数料、登記費用などの合計です。相続した実家では、先代が購入した当時の契約書が見つからず、取得費が分からないことも珍しくありません。取得費が不明な場合は、譲渡価額の5%を取得費とみなせる「概算取得費」というルールが使えます。譲渡費用には、売却時の仲介手数料や印紙税、解体して売る場合は解体費用も含まれます。
算出した譲渡所得には、所有期間に応じた税率がかかります。売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」として税率20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)、5年以下の場合は「短期譲渡所得」として税率39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)が適用されます。相続した不動産の所有期間は、被相続人が取得した日から通算されるため、実家のように何十年も前から所有している不動産は、多くの場合長期譲渡所得に該当します。
空き家の3,000万円特別控除の要件
相続した空き家を売却する場合、要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できる「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」があります。主な要件は次のとおりです(国税庁タックスアンサーNo.3306より)。
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
- 区分所有建物登記がされている建物(マンション等)でないこと
- 相続の開始の直前において、被相続人以外に住んでいた人がいなかったこと
- 相続の時から譲渡の時まで、事業用・貸付用・居住用に使われていないこと
- 家屋を売る場合は一定の耐震基準を満たすこと、または家屋を取り壊してから土地を売ること
- 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
- 売却代金が1億円以下であること
この特例は2027年(令和9年)12月31日までの譲渡が対象です。また、2024年(令和6年)1月1日以後の譲渡で、相続人が3人以上いる場合は控除額の上限が2,000万円になる点にも注意してください。適用を受けるには、売却した不動産の所在地の市区町村長から交付を受けた「被相続人居住用家屋等確認書」など複数の書類を添えて確定申告する必要があります。要件は細かく、個別の事情によって判断が分かれる部分もあるため、適用できるかどうかは税務署または税理士に確認することをおすすめします。
税金シミュレーション:特例の有無で税額はどれだけ変わるか
相続した実家(取得費が不明、譲渡価額2,800万円、譲渡費用は仲介手数料と消費税の合計で約99万円)を例に、特例の適用有無による税額の違いを試算します。
| 特例が使える場合 | 特例が使えない場合(相続開始から3年超で売却など) | |
|---|---|---|
| 譲渡価額 | 2,800万円 | 2,800万円 |
| 概算取得費(譲渡価額の5%) | 140万円 | 140万円 |
| 譲渡費用 | 約99万円 | 約99万円 |
| 譲渡所得 | 約2,561万円 | 約2,561万円 |
| 特別控除 | 最大3,000万円(譲渡所得を全額相殺) | 適用なし |
| 課税譲渡所得 | 0円 | 約2,561万円 |
| 税額(長期譲渡所得20.315%) | 0円 | 約520万円 |
このケースでは、特例が使えるかどうかで約520万円の差が生まれます。特例の期限は「相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」であり、相続してからすぐに使える期限ではあるものの、遺品整理や名義変更に時間がかかって売却が遅れると、期限を過ぎてしまうことがあります。売却を検討し始めた時点で、期限までの残り時間を確認しておくことが重要です。
相続税の取得費加算の特例との選択
相続で取得した不動産を売却する場合、空き家の3,000万円特別控除とは別に「相続税の取得費加算の特例」という制度もあります。相続税を納めた人が、相続開始日の翌日から3年10か月以内に不動産を売却した場合、その不動産に対応する相続税額を取得費に加算できる仕組みです。取得費が増えれば譲渡所得はその分小さくなり、税額が下がります。ただし、この特例と空き家の3,000万円特別控除は同時に使うことができず、どちらか有利な方を選ぶ必要があります。一般的には、相続税を多く納めた人は取得費加算の特例、相続税がかからなかった人や少額だった人は空き家の3,000万円特別控除のほうが有利になる傾向があります。どちらが有利かは個別の試算が必要なため、確定申告の前に税理士へ相談することをおすすめします。
買主の住宅ローン控除に影響することもある
古家付き土地を買った買主が住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の適用を受けるには、取得した家屋が一定の耐震基準を満たしているか、あるいは新築・取得後に増改築等をして基準を満たす必要があります。既存の古家をそのまま利用する買主にとっては、耐震基準の証明が取得できるかどうかが購入判断の材料になることがあります。売主としては、耐震診断の記録が残っていればそれを開示しておくと、買主の資金計画の検討がスムーズになり、成約につながりやすくなります。
売却方法は3パターン:古家付き仲介・解体後仲介・買取
古家付き土地の売却方法は、大きく分けて三つあります。それぞれの特徴を比較します。
| 古家付きのまま仲介 | 解体して更地で仲介 | 買取(不動産会社が直接購入) | |
|---|---|---|---|
| 売却価格 | 相場並み〜やや低め | 相場並み〜高め(解体費用を差し引いても上回る場合あり) | 相場の6〜8割程度が目安 |
| 売却までの期間 | 数か月〜半年程度 | 解体期間+数か月〜半年程度 | 数週間程度と短い |
| 初期費用 | 基本的に不要 | 解体費用(前章参照) | 基本的に不要 |
| 契約不適合責任 | 特約で調整することが多い | 建物起因のリスクが少ない | 免責となることが多い |
| 向いているケース | 資金に余裕がなく、時間をかけて高値を狙いたい場合 | 再建築可能で更地の需要が強い立地の場合 | 早期の現金化を優先したい場合 |
時間に余裕があり、少しでも高く売りたい場合は仲介(古家付きまたは更地)が向いています。相続税の納税資金が必要、遠方に住んでいて長期間の対応が難しいといった事情がある場合は、価格は下がるものの短期間で現金化できる買取も選択肢になります。
買取を選ぶときの注意点
買取は不動産会社が直接の買主になるため、広告掲載や内見対応が不要で、契約から数週間程度での現金化も可能です。一方で、買取価格は仲介での想定売却価格より2〜4割程度低くなるのが一般的です。買取を検討する場合も、1社だけで即決せず、2〜3社から買取価格を提示してもらい比較することをおすすめします。「今日契約すれば金額を上乗せする」といった即決を迫る営業には注意し、提示条件を書面で確認したうえで検討してください。
古家付き土地でよくあるトラブルと対処法
古家付き土地の売買では、更地にはない特有のトラブルが起きやすくなります。事前に典型例を知っておくと、契約前の確認事項が具体的になります。
引き渡し後に地中埋設物が見つかる
解体工事や地盤調査の段階になって、古い浄化槽、井戸、コンクリートの基礎、防空壕の跡といった地中埋設物が見つかることがあります。売買契約の時点でこれらの存在が分かっている場合は、契約書に明記し、撤去費用を売主・買主のどちらが負担するかを取り決めておく必要があります。存在が不明な場合でも、「地中埋設物が発見された場合の取り扱い」について特約で触れておくと、発覚後のトラブルを避けやすくなります。
越境物をめぐる隣地とのトラブル
古い実家では、隣地の樹木の枝や、塀・屋根の一部が境界を越えて自分の土地にはみ出している、あるいはその逆のケースが少なくありません。境界確定の測量を行う際にこうした越境が判明することもあり、解消しないまま売却すると、買主とのトラブルや売却条件の見直しにつながります。相続人が複数いて実家が共有名義になっている場合、越境物の覚書や測量の立ち会いにも共有者全員の同意が必要になることがあるため、通常より段取りに時間がかかる点も見込んでおいてください。境界確定の段階で隣地所有者と越境物の取り扱いについて覚書を交わしておくと、売却後のトラブルを防げます。
売買契約で使われる主な特約
古家付き土地の売買契約では、更地の取引にはない特約が付けられることがよくあります。代表的なものを紹介します。
| 特約の種類 | 内容 |
|---|---|
| 契約不適合責任の免責特約 | 建物の不具合について売主が責任を負わない旨を定める |
| 土地のみ取引条件の明記 | 建物の価値をゼロとみなし、実質的に土地の取引として扱う |
| 地中埋設物に関する取り決め | 発見時の撤去費用の負担者をあらかじめ定める |
| 解体後引き渡しの特約 | 買主の希望で、引き渡し前に売主側が解体を行う条件を定める |
| 境界非明示の特約 | 境界確定が未了のまま取引する場合に、その旨を明示して免責とする |
どの特約を使うかは、物件の状態と買主の希望によって変わります。契約前に不動産会社へ、自分の実家にはどの特約が想定されるかを確認しておくと、契約書の内容を理解しやすくなります。
解体業者とのトラブル
見積もり時に説明のなかった追加費用を工事後に請求される、近隣への挨拶が不十分で苦情が入る、といったトラブルも見られます。契約前に見積書の内訳(本体解体費・付帯工事費・廃棄物処分費・整地費)を確認し、追加費用が発生する条件を書面で確認しておくことが対処法になります。建設業許可または解体工事業の登録を受けた業者かどうかも、契約前に確認しておくべき点です。
土壌汚染・地盤の問題が引き渡し後に発覚する
過去にクリーニング店や工場、ガソリンスタンドなど特定の用途で使われていた土地では、土壌汚染のリスクが指摘されることがあります。実家がそうした用途で使われた履歴がある場合や、地歴が分からない場合は、契約前に土壌汚染の履歴を法務局や自治体で確認し、必要であれば土壌調査を検討してください。地盤の軟弱さについても、過去に地盤改良工事を行った記録があれば、契約時に開示しておくとトラブルを防ぎやすくなります。
相続土地国庫帰属制度という選択肢
査定を取っても買い手が見込めない、あるいは売却してもわずかな金額にしかならない土地の場合、売却以外の手段として「相続土地国庫帰属制度」も検討の余地があります。相続や遺贈によって土地の所有権を取得した個人が、一定の要件を満たせば、その土地を国に引き渡せる制度です。
申請できるのは、相続などで土地を取得した個人に限られます。承認を受けるには、法務大臣(窓口は法務局)の審査を経る必要があり、審査手数料14,000円と、10年分の土地管理費に相当する負担金の納付が求められます。建物が建っている土地はそのままでは対象外のため、この制度を使う場合は先に古家を解体しておく必要があります。崖地や、担保権が設定されている土地、境界が明らかでない土地など、対象外となる条件も定められています。
古家付き土地として売り出しても買い手がつかず、更地にする解体費用すら回収が見込めないような土地では、相続土地国庫帰属制度が現実的な出口になることがあります。利用を検討する場合は、事前に法務局へ相談し、対象となる土地かどうかを確認してください。
売らずに活用するという選択肢もある
売却を急がない事情がある場合、実家を手放さずに活用する道も選択肢のひとつです。古家を解体して更地にしたうえで月極駐車場や資材置き場として貸し出す、リフォームして賃貸に出す、自治体の空き家バンクに登録して移住希望者とのマッチングを待つといった方法があります。いずれも管理の手間や初期費用がかかるため、家賃収入や利用料と、維持費・固定資産税とのバランスを見て判断する必要があります。空き家バンクは自治体が運営する移住・定住支援の枠組みであるため、売却よりも成約までの期間が読みにくい面がありますが、仲介手数料がかからない、あるいは低く抑えられている自治体もあります。地域や物件によって向き不向きがあるため、通常の仲介と並行して登録しておく方法も選択肢のひとつです。将来的に売却する可能性が残っているなら、活用しながらでも相続登記だけは先に済ませておくと、いざというときに手続きがスムーズです。
判断を先延ばしにすると「特定空家等」のリスクが高まる
売却するか活用するかを決めきれないまま実家を放置すると、空家等対策の推進に関する特別措置法に基づき、自治体から「特定空家等」に指定されるおそれがあります。そのまま放置すれば倒壊等により著しく保安上危険となる、または著しく衛生上有害となるおそれがあると自治体が判断した場合に指定されるもので、指定を受けると固定資産税の住宅用地特例が解除され、税額が更地並みに引き上げられることがあります。改善の勧告や命令に従わない場合は、行政代執行として自治体が解体を行い、費用を所有者に請求されるケースもあります。売却・解体・活用のいずれを選ぶにしても、方針を決めずに放置する期間を長引かせないことが、結果的に負担を抑える近道です。
相続した実家を売る前に済ませておくこと
古家付き土地として売却する場合も、更地にして売却する場合も、名義変更が終わっていなければ不動産会社への売却依頼も買主との契約も進められません。相続登記は2024年4月1日から義務化されており、不動産の取得を知った日から3年以内の申請が求められます。施行日より前に発生した相続で登記が済んでいない実家も対象になり、原則として2027年3月31日までに登記を済ませる必要があります。詳しい期限や過料の扱いは相続登記の義務化とは|期限・過料・実家を相続したらやることで解説しています。
名義変更と並行して確認しておきたいのが、土地の境界です。隣地との境界が確定していない土地は、買主から見てリスクとみなされ、価格交渉や契約条件に影響することがあります。境界標が見当たらない、過去に測量した記録がないという場合は、早めに土地家屋調査士へ相談し、確定測量の要否を確認しておくと、売却の段階で慌てずに済みます。
実家が相続人複数名の共有名義になっている場合、売却には共有者全員の同意が必要です。共有者の一人でも売却に反対していると、他の共有者だけで手続きを進めることはできません。話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所での遺産分割調停や、共有物分割請求といった法的手続きに発展することもあります。共有名義のまま長期間放置している実家がある場合は、売却を具体的に検討し始める前に、共有者間で方針をすり合わせておくことが欠かせません。
建物内に家財が残っている場合は、遺品整理や生前整理で片付けておく必要があります。残置物が多いと、内見の印象が悪くなるだけでなく、解体する場合の処分費用もかさみます。逆に言えば、解体前に家財を減らしておくことは、数少ない自分でコントロールできる費用削減策のひとつです。仏壇や着物、貴金属など買取に出せる品があれば、査定に出して差し引くことで、片付け費用そのものを抑えられる場合もあります。実家じまい全体の進め方は実家じまいの進め方ガイドで、片付けから売却・解体までを窓口ひとつで進めたい場合は実家じまい代行サービスで対応しています。
売却は「実家じまい」の最終段階のひとつ
古家付き土地としての売却は、実家じまい全体の流れで見ると、片付け・名義変更のあとに来る最終段階のひとつです。片付けにかかる費用、解体にかかる費用、売却でかかる費用と税金を別々に考えると全体像がつかみにくくなりますが、まとめて見積もっておくと、実家をどう手放すかの意思決定がしやすくなります。実家じまいにかかる費用全体の目安は実家じまいの費用にまとめています。片付け・査定・登記の相談先がそれぞれ別々だと、同じ説明を何度も繰り返す手間が発生しがちです。窓口をひとつにまとめておくと、進捗の把握や日程調整がしやすくなります。
不動産会社に行く前に知っておきたいこと
売却の相談先を選ぶ前に知っておくと役立つ知識を、正直にまとめます。不動産会社に足を運ぶ前に把握しておくことで、提案内容を落ち着いて比較できるようになります。
査定は複数社に依頼する
不動産の査定額は会社によって差が出ます。1社だけの査定額を信じて媒介契約を結ぶと、相場より低い価格で売り出してしまうことや、逆に高すぎる査定額に引かれて契約したものの、実際には長期間売れずに値下げを繰り返すことがあります。2〜3社に査定を依頼し、査定額の根拠(周辺の成約事例、解体費用の見積もりの有無など)を説明してもらったうえで比較することをおすすめします。
媒介契約の種類と「囲い込み」の仕組み
不動産会社との契約には、1社だけに依頼する「専属専任媒介・専任媒介」と、複数社に同時に依頼できる「一般媒介」があります。専任系の契約は不動産会社にとって確実に手数料が入る仕組みのため、他社からの買主候補の紹介を意図的に断る「囲い込み」が起きることがあると指摘されています。囲い込みが起きると、売却の機会が狭まり、結果的に売却期間が延びたり価格が下がったりすることがあります。専任媒介を選ぶ場合は、レインズ(不動産流通機構のデータベース)への登録状況や、他社からの問い合わせ件数を報告してもらえるかを確認しておくと、囲い込みのリスクを減らせます。
解体を勧める会社との利益相反に注意する
不動産会社の中には、解体工事の紹介料を受け取る形で提携している会社もあります。すべてがそうとは限りませんが、「更地にしたほうが早く売れます」という提案が、売主にとって最善とは限らない場合もある点は知っておいてください。前章で示した固定資産税のシミュレーションや解体費用の坪単価を踏まえ、提案の根拠を自分でも確認できる状態にしておくことが、納得のいく判断につながります。
遠方に住んでいる場合の進め方
実家から離れた場所で暮らしている相続人にとって、査定の立ち会いや解体業者との打ち合わせのために何度も現地へ足を運ぶのは大きな負担です。写真や動画でのやり取りに対応している不動産会社・解体業者を選ぶ、あるいは片付けから査定・解体・売却の相談までを一つの窓口でまとめて依頼する方法もあります。遠方から実家じまい全体を進める段取りは実家じまいの進め方ガイドで詳しく説明しています。
売却までの流れ
古家付き土地の売却は、おおむね次の手順で進みます。物件の状況によって前後することがあります。
- 名義・境界の確認——相続登記が済んでいるか、境界が確定しているかを確認します。未了の場合は司法書士・土地家屋調査士へ相談します。
- 家財の片付け——遺品整理・生前整理で室内の家財を減らします。買取や供養が必要な品があれば、あわせて整理します。
- 査定の依頼——2〜3社に査定を依頼し、古家付き・更地それぞれの想定価格と解体費用の見積もりを確認します。
- 売却方法の決定——古家付き仲介・解体後仲介・買取のいずれで進めるかを、価格と期間のバランスで決めます。
- 媒介契約・売り出し——不動産会社と契約を結び、価格を設定して売り出します。
- 売買契約・引き渡し——買主が決まったら契約を結び、代金の受領と同時に引き渡します。契約不適合責任の特約内容もこの段階で最終確認します。買主の住宅ローン実行日と引き渡し日を合わせる必要があるため、決済日はあらかじめ余裕を持って設定しておくとスムーズです。
- 確定申告——譲渡所得が発生した場合、翌年の確定申告で税額を計算し、特例の適用を受ける場合は必要書類を添えて申告します。
古家付き土地の価格相場をどう調べるか
古家付き土地の価格は「更地価格−解体費用相当額」を基準に、周辺の成約事例を加味して決まるのが一般的な考え方です。自分でおおまかな水準を把握しておくと、査定額が妥当かどうかを判断しやすくなります。
路線価・実勢価格から逆算する方法
国税庁の路線価図は、毎年7月頃に更新され、誰でもインターネットで閲覧できます。路線価は相続税評価の基準であり、実勢価格(市場で実際に取引される価格)のおおむね8割程度の水準とされています。路線価を0.8で割り戻すと実勢価格の目安が計算でき、そこから前章の解体費用相場を差し引くと、古家付き土地としての売却価格の大まかな見当がつきます。
近隣の成約事例を確認する
国土交通省が運営する「不動産情報ライブラリ」では、実際に取引された不動産の成約価格を、地域・築年数・面積などの条件で検索できます。実家と似た条件の成約事例を確認しておくと、査定額との差が大きい場合に、その理由を不動産会社に質問しやすくなります。
査定額に納得できない場合の対処法
複数社の査定額に大きな開きがある場合、金額だけで判断するのではなく、その根拠を確認することが大切です。極端に高い査定額は、専任媒介契約を取るための「とりあえずの高値」であることがあり、実際には売り出し後に値下げを重ねる結果になりがちです。逆に極端に低い査定額は、買取を前提にした価格提示である場合があります。査定書に周辺の成約事例や、古家付き・更地それぞれの想定価格の根拠が示されているかを確認し、口頭の説明だけで終わらせないようにしてください。
判断パターン別のシミュレーション例
古家付き土地の相談でよくある三つのパターンをもとに、判断の分かれ目をシミュレーションとして紹介します。特定の実例ではなく、典型的な条件を組み合わせた仮想のケースです。個別の状況によって最適な選択は変わるため、あくまで考え方の参考としてご覧ください。
パターン1:都市部・再建築可の木造住宅(築45年)
駅から徒歩圏内の住宅地で、前面道路の幅も十分にある実家を想定します。周辺で更地の引き合いが強いエリアであれば、解体費用(木造30坪で目安120万円程度)を差し引いても、更地にしたほうが売却価格が上回る見込みが立ちやすくなります。相続人が複数いて遺産分割協議自体は早期にまとまっても、家財の量が多いと片付けに時間がかかりがちです。売却までに数か月の余裕があるなら、遺品整理で家財を片付けたあとに解体し、更地として売り出す方針が選択肢になります。解体を年明け1月2日以降に着手すれば、解体した年の固定資産税は住宅用地特例が適用されたままの水準に抑えられます。
パターン2:郊外・再建築不可の敷地(築50年)
前面道路の幅が建築基準法上の要件を満たしておらず、再建築不可の土地を想定します。このケースで更地にしてしまうと、買主は建物を新たに建てられず、資材置き場や駐車場としての利用に限られ、かえって買い手が減る可能性があります。「古い家は解体してから売るもの」という思い込みがあっても、再建築不可であることが分かった段階で方針を見直す価値があります。古家付きのまま、契約不適合責任を免責する特約を付けて売り出し、リノベーション目的の買主を対象に販売する方針であれば、更地化にかかる100万円超の費用をかけずに売却を進められる可能性があります。
パターン3:相続から3年以内・空き家特別控除の適用が見込めるケース
昭和50年代築の木造住宅で、被相続人が亡くなる直前まで一人で住んでいた実家を想定します。相続人が遠方に住んでいると、当初は名義変更も片付けも後回しになりがちですが、相続登記の義務化をきっかけに手続きを始めるケースが増えています。相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却できる見込みが立てば、空き家の3,000万円特別控除の適用を前提に、家屋を取り壊してから土地を売る計画を立てられます。特例の要件確認と、市区町村への「被相続人居住用家屋等確認書」の申請といった必要書類の準備を、売却活動と並行して進めておくと、期限内の売却と確定申告に間に合わせやすくなります。
売却前チェックリスト
古家付き土地の売却を検討し始めた段階で確認しておきたい項目を一覧にしました。上から順に着手すると、名義・境界・費用・税金の抜け漏れが起きにくくなります。印刷してご活用ください。
| 確認項目 | ポイント |
|---|---|
| 相続登記 | 名義変更が済んでいるか。未了なら司法書士へ相談する |
| 境界の確定 | 境界標の有無、測量図の有無を確認する |
| 再建築の可否 | 前面道路の幅・接道の状況を自治体の建築指導課で確認する |
| 解体費用の見積もり | 複数の解体業者から見積もりを取り、構造・残置物の量を伝える |
| 解体の補助金 | 自治体の老朽危険家屋除却補助の有無を確認する(着工前の申請が条件) |
| 家財の片付け | 遺品整理・生前整理の要否と時期を決める |
| 空き家特別控除の要件 | 築年数・居住実態・売却期限を確認し、必要書類を早めに把握する |
| 取得費加算の特例との比較 | 相続税を納めている場合はどちらが有利か試算する |
| 査定の比較 | 2〜3社に査定を依頼し、古家付き・更地双方の想定価格を聞く |
| 媒介契約の種類 | 専任媒介にする場合はレインズ登録状況の報告を求める |
| 契約不適合責任の特約 | 免責の範囲を契約書に明記してもらう |
よくある質問
古家付き土地とはどういう意味ですか?
古家を解体してから売ったほうがいいですか、それともそのまま売ったほうがいいですか?
古家付き土地を売るとき、契約不適合責任はどうなりますか?
相続した空き家を売るとき、3,000万円の特別控除は誰でも使えますか?
古家付き土地の売却でも相続登記は必要ですか?
古家付き土地の適正な価格はどうやって調べればいいですか?
実家を売らずに空き家のまま放置するとどうなりますか?
まとめ
古家付き土地として売るか、解体して更地にするかは、費用と需要の両面から考える必要がある判断です。要点を振り返ります。
- 古家付き土地は解体費用(木造30坪で目安90万〜150万円)をかけずに売却できるが、契約不適合責任のトラブルが起きやすい
- 再建築不可の土地は、更地にすると買い手が減ることがあるため解体前に接道状況を確認する
- 建物を解体すると翌年から固定資産税の住宅用地特例が外れ、税額が上がる場合がある
- 相続した空き家の売却は、要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例がある(2027年12月31日まで、相続から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却)
- 取得費が不明な場合は、譲渡価額の5%を取得費とみなす概算取得費のルールが使える
- 売却の前提として相続登記(2024年義務化)が必要。境界確定や家財の片付けも並行して進める
- 査定は複数社に依頼し、媒介契約の種類と囲い込みのリスクも確認したうえで進める
- 共有名義の実家は、売却に共有者全員の同意が必要。方針のすり合わせを早めに行う
- 売却先が決まらない土地は、相続土地国庫帰属制度や活用(駐車場・賃貸・空き家バンク)も選択肢になる
古家付き土地の売却は、解体するかどうかの一点だけでも、税金・費用・買主の需要という複数の要素が絡みます。まずは相続登記の状況と境界の有無を確認し、そのうえで複数の不動産会社に査定を依頼して、古家付き・更地それぞれの想定価格と根拠を比較することが、納得のいく売却への近道です。解体するかどうかの結論を急ぐ必要はありませんが、方針を決めずに放置する期間が長引くほど、管理の手間と特定空家等に指定されるリスクは大きくなります。片付けから売却・解体の手配まで一つの窓口で相談したい場合は、実家じまい代行サービスをご検討ください。
早いこともあります
実家の片付けから処分まで、
窓口ひとつでご相談いただけます。
ご相談・お見積もりは無料です。

