
久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士
東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。
■経歴
- 1966年鹿児島県生まれ
- 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
- 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
- 2013年司法書士試験合格
- 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
- 2017年司法書士法人コスモ退職
- 2018年事務所開設
- 2021年司法書士法人設立
■得意領域
- 相続登記・相続手続き
- 不動産の名義変更
- 相続放棄
- 簡易裁判所の訴訟代理
この記事の結論
- 訳あり物件は心理的瑕疵・物理的瑕疵・法的瑕疵・環境的瑕疵の4種類に分けられ、種類によって売却の難しさも税金の扱いも変わります。
- 事故物件の告知義務は、賃貸取引では概ね3年が目安ですが、売買取引には経過期間の定めがなく、判明した事実は原則として告知の対象になります。
- 売却方法は仲介(高値だが時間がかかる)と買取(早いが価格は下がる)の2択で、状況に応じた使い分けが必要です。
- 相続した空き家を売る場合、要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。控除の有無で税額は大きく変わるため、契約前に確認しておいてください。
訳あり物件とは|4つの分類と具体例
訳あり物件とは、通常の不動産取引に比べて売りにくい事情を抱えた物件の通称です。法律上の正式な用語ではありませんが、不動産業界では次の4つに大きく分類して扱われています。相続した実家がこのいずれかに該当することに気づかないまま売却の相談に進み、後から条件面で戸惑う方も少なくありません。まずは自分の物件がどの分類に当てはまるかを確認することが、適切な売却方法を選ぶ第一歩です。
心理的瑕疵物件(事故物件)
過去にその物件で自殺・他殺・孤独死などの事案があり、買主や借主が心理的な抵抗感を持つ可能性がある物件です。いわゆる「事故物件」と呼ばれるもので、告知義務の有無は死亡の状況や発見までの経過期間によって判断が分かれます。詳しくは次の章で説明します。
物理的瑕疵物件
雨漏り、シロアリ被害、基礎の傾き、給排水管の劣化など、建物や土地そのものに物理的な欠陥がある物件です。空き家として長期間放置された実家では、湿気やねずみ・害虫の被害が進み、当初は想定していなかった物理的瑕疵が見つかることもあります。土壌汚染が判明した土地もこの分類に含まれます。天井や壁にしみがあれば雨漏りの跡、床が沈む・傾く感覚があれば基礎や土台の劣化、外壁や柱に小さな穴や木くずが見られればシロアリ被害を疑うサインになります。専門業者の点検を受けるまでは断定できませんが、これらの兆候に気づいた時点で早めに調査を依頼しておくと、売却時に慌てずに済みます。
法的瑕疵物件
建築基準法や都市計画法などの法令に抵触している物件です。代表例は再建築不可物件で、接道義務(建築基準法上、原則として幅員4m以上の道路に2m以上接していること)を満たさない土地は、建て替えができません。既存の建物が建築確認を得ずに増築された違法建築や、市街化調整区域内で新築の制限がある土地も該当します。共有名義のうち自分の持分だけを売却する「共有持分」の売却も、買主の使い方が制限されるという意味で法的瑕疵に近い扱いを受けることがあります。
環境的瑕疵物件
物件そのものに問題はなくても、周辺環境に起因して売却が難しくなる物件です。近隣に暴力団事務所やゴミ屋敷がある、高圧線の下にある、線路や幹線道路に近く騒音・振動が大きいといったケースが該当します。地域の事情に左右されるため、告知の要否は個別の状況判断になります。実家の周辺環境は住んでいた本人にとっては当たり前すぎて気づきにくい部分でもあるため、久しぶりに実家を訪れた際に、近隣の様子が以前と変わっていないか確認しておくと、後から想定外の指摘を受けずに済みます。
4つの分類と、売却時の難しさ・主な売却先の傾向をまとめると次のとおりです。
| 分類 | 主な具体例 | 売却の難しさ | 主な売却方法 |
|---|---|---|---|
| 心理的瑕疵 | 自殺・他殺・孤独死(特殊清掃を要した事案) | 高い(告知義務あり、買主の心理的抵抗が大きい) | 専門買取業者・仲介(時間をかけて) |
| 物理的瑕疵 | 雨漏り、シロアリ被害、老朽化、土壌汚染 | 中〜高(修繕費・解体費を考慮した価格交渉になる) | 買取(現況渡し)が中心 |
| 法的瑕疵 | 再建築不可、違法建築、共有持分 | 高い(一般の買主・住宅ローンの利用が難しい) | 専門買取業者が中心 |
| 環境的瑕疵 | 近隣トラブル、騒音、周辺施設の問題 | 中(立地条件次第で差が大きい) | 仲介・買取どちらも可 |
実家が複数の分類にまたがることもあります。たとえば「長期間空き家で老朽化が進み、かつ接道条件を満たさない再建築不可物件」のように、物理的瑕疵と法的瑕疵が重なるケースは珍しくありません。重なる要素が多いほど一般の仲介市場では買主が見つかりにくくなり、専門の買取業者への相談が現実的な選択肢になっていきます。
事故物件の告知義務はいつまで続くか
売却を検討する際にもっとも誤解されやすいのが、告知義務の期間です。国土交通省は2021年に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定し、宅地建物取引業者が調査・告知を行う際の考え方を整理しました。このガイドラインは業者向けの実務指針ですが、売主自身が自分の物件の扱いを理解するうえでも参考になります。
自然死・日常生活での不慮の死は原則として告知不要
老衰や持病による自然死、または転倒や誤嚥など日常生活の中で起こり得る事故死は、特殊清掃や大規模なリフォームを要しない限り、社会通念上通常起こり得るものとして、原則は告知の対象にならないとされています。「実家で親が亡くなった」というだけで一律に事故物件になるわけではありません。
特殊清掃を要した場合の告知(売買は経過期間の定めなし)
発見が遅れて特殊清掃や大規模リフォームを要した死亡事案は、原因が自然死であっても告知の対象になるという考え方が示されています。ただし取引の種類で扱いが異なり、売買取引では経過期間の定めがなく原則として告知が必要とされる一方、賃貸借取引では特殊清掃等が行われることとなった死の発覚から概ね3年間を経過した後は、特段の事情がない限り原則として告知不要と整理されています。孤独死そのものが問題なのではなく、その後の状態が居住や使用に影響を及ぼしたかどうかが判断基準になります。
賃貸取引と売買取引で扱いが異なる
自殺・他殺・火災による死亡など、事件性や社会的な影響が大きい事案については、賃貸取引では発生からおおむね3年間を告知の目安とし、経過後は原則として告知不要という考え方が示されています。一方で売買取引については、ガイドライン上に明確な経過期間の定めがありません。買主が長期間その不動産を所有し、生活の基盤とすることを踏まえ、宅地建物取引業者が調査で把握した事案は、原則として期間の定めなく告知の対象になるという整理です。賃貸の感覚で「3年経てば告知しなくてよい」と考えるのは誤りなので注意してください。
| 事案の種類 | 賃貸取引の目安 | 売買取引の目安 |
|---|---|---|
| 自然死・日常生活の事故死(特殊清掃なし) | 原則不要 | 原則不要 |
| 特殊清掃・大規模リフォームを要した死 | 発覚から概ね3年間を目安に必要(経過後は原則不要) | 経過期間の定めなし。原則として期間を問わず必要 |
| 自殺・他殺・火災等(事件性のある死) | 概ね3年間を目安に必要(経過後は原則不要) | 経過期間の定めなし。原則として期間を問わず必要 |
(国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」の考え方を整理して作成。最終的な判断は個別事情により異なるため、実際の取引では宅地建物取引業者・弁護士にご確認ください)
告知しないとどうなるか
知っていた事実を告知せずに売却し、後から買主が事実を知った場合、民法上の契約不適合責任を問われる可能性があります。2020年の民法改正で、以前の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」という呼び方に変わり、買主は代金減額請求・損害賠償請求・契約解除などを求められるようになりました。告知していれば成立しなかったはずの契約を、告知しなかったために後から取り消される事態は、売主にとって金銭的にも精神的にも負担が大きくなります。マイナスの情報だからこそ、早い段階で不動産会社に正直に伝えることが、結果的に自分を守ることにつながります。
一般の不動産会社と訳あり物件専門業者、どちらに相談すべきか
実家の売却というと、まず地元の一般的な不動産会社を思い浮かべる方が多いと思いますが、訳あり物件では対応の幅に差が出やすい分野です。両者の違いを整理すると、次のようになります。
| 一般の不動産会社 | 訳あり物件専門業者 | |
|---|---|---|
| 得意な取引 | 一般的な戸建て・マンションの仲介 | 事故物件・再建築不可・共有持分などの買取・活用 |
| 査定のスピード | 比較的時間をかけて相場を調査 | 類似案件の実績が多く、短期間で査定を出せることが多い |
| 告知事項への対応 | 告知事項があると仲介を敬遠されることがある | 告知事項を前提に価格を組み立てる |
| 契約後のトラブル対応 | 契約不適合責任を負う一般的な契約が中心 | 免責特約や現状渡しなど、訳あり物件向けの契約に慣れている |
| 再建築不可・共有持分の扱い | 取り扱いを断られることがある | 専門知識をもとに解決策を提示できることが多い |
一般の不動産会社に相談すること自体は間違いではありませんが、「うちでは扱いが難しい」と言われて終わってしまうことも少なくありません。まずは一般の不動産会社と訳あり物件専門業者の両方に査定を依頼し、対応できる範囲と提示価格を比較したうえで、どちらに任せるかを判断することをおすすめします。
仲介と買取、訳あり物件はどちらを選ぶべきか
訳あり物件の売却方法は、大きく分けて「仲介」と「買取」の2つです。それぞれの特徴を理解したうえで、自分の状況に合った方法を選ぶ必要があります。
| 仲介 | 買取 | |
|---|---|---|
| 売却の仕組み | 不動産会社が買主を探し、売買を仲介する | 不動産会社(買取業者)が直接買主になる |
| 売却価格 | 相場に近い価格が期待できる | 仲介より低くなる傾向(相場の6〜8割程度が目安になることが多い) |
| 売却までの期間 | 買主が見つかるまで数か月〜1年以上かかることもある | 早ければ数日〜1か月程度で現金化できる |
| 仲介手数料 | 売買価格に応じて発生(上限は宅建業法で規定) | 不要(業者が直接買うため) |
| 契約不適合責任 | 特約がない限り負う(引き渡し後も一定期間責任が残る) | 「契約不適合責任免責」の契約が一般的 |
| 内覧・広告 | 物件情報が公開され、内覧対応が必要 | 内覧・広告は基本的に不要 |
訳あり物件を仲介で売る場合、告知義務のある事情を正直に開示したうえで、時間をかけて理解のある買主を探す形になります。価格面では有利ですが、告知事項が大きいほど買主が見つかりにくく、売却までの期間が読みにくいという難点があります。相続税の申告期限や、次の住まいの準備など、期限が決まっている事情がある場合には不向きなこともあります。
買取は、訳あり物件を専門に扱う不動産会社が直接買い取る方法です。契約不適合責任を免責する契約が一般的なため、後から瑕疵が見つかっても責任を問われる心配が少なく、現状のまま、家財を残したまま引き渡せる業者もあります。価格は仲介より下がりますが、確実性とスピードを重視する場合には現実的な選択肢です。とくに再建築不可物件や共有持分など、一般の仲介市場では買主が見つかりにくい法的瑕疵を抱える物件は、最初から買取専門業者に相談したほうが結果的に早く解決することが多い傾向にあります。
迷ったときの判断軸
時間に余裕があり、少しでも高く売りたい場合は仲介から検討し、反応が薄ければ買取に切り替える進め方があります。逆に、相続税の納税資金が必要、遠方に住んでいて管理の負担が大きい、早期の現金化を優先したいといった事情がある場合は、最初から買取での相談を軸にするほうが現実的です。両方の見積もりを取り、価格差と時間差を比べたうえで判断することをおすすめします。
訳あり物件の買取相場の目安
買取価格は、瑕疵の種類や程度、立地、建物の状態によって大きく変わるため、一律の相場を示すことはできません。それでも、業界で目安として語られることの多い下落率の水準を知っておくと、提示された査定額が妥当かどうかを判断する手がかりになります。
| 瑕疵の種類 | 相場に対する買取価格の目安 | 価格が下がる主な理由 |
|---|---|---|
| 心理的瑕疵(事故物件) | 6〜8割程度 | 買主の心理的抵抗、再販時にも告知義務が残る |
| 物理的瑕疵(老朽化・要解体) | 相場から解体費・修繕費相当を差し引いた水準 | 取り壊しや大規模修繕のコストを買主側が負担するため |
| 法的瑕疵(再建築不可) | 5〜7割程度 | 住宅ローンが利用しづらく、活用方法が限られるため |
| 法的瑕疵(共有持分のみ) | 3〜5割程度 | 持分だけでは自由に使えず、買主が限られるため |
(複数の買取専門業者が公表する目安をもとに整理した一般的な水準です。実際の金額は個別の物件状況によって変わるため、現地の査定を受けたうえで判断してください)
査定額が業者によって差が出る理由
同じ物件でも、買取業者によって査定額が数百万円単位で異なることがあります。理由の一つは、業者ごとに得意な瑕疵の種類が異なることです。事故物件のリノベーション再販を専門にする業者と、再建築不可物件を専門にする業者とでは、同じ物件でも評価の視点が変わります。もう一つの理由は、買い取った後の活用方法の違いです。更地にして駐車場にする、リフォームして賃貸に出す、隣地の所有者へ買い取ってもらう交渉をするなど、出口戦略の選択肢が多い業者ほど、高い金額を提示できる余地があります。1社だけの査定で決めず、複数社から見積もりを取って比較することが、適正価格で売却するための基本になります。
訳あり物件を買う側はどんな人か
「訳あり物件を買う人などいるのか」と不安に思う方もいますが、実際には一定の需要があります。事故物件は、価格の安さを理由にリノベーションして再販する専門業者や、家賃を抑えたい賃貸投資家が買い手になることが多い分野です。再建築不可物件は、隣地の所有者が敷地を広げる目的で購入したり、駐車場・資材置き場として使う法人が買い手になったりします。共有持分は、持分専門の買取業者が他の共有者との交渉を前提に買い取り、最終的に共有物全体をまとめて再販するケースが一般的です。買い手の顔が見えにくいだけで、それぞれの瑕疵に応じた出口が存在することを知っておくと、売却をあきらめる前に相談する意味が見えてきます。
事務局の相談窓口でよく見られるパターン
相談を受ける中では、次のようなパターンが繰り返し見られます。自分の状況が当てはまらないか確認してみてください。
- 実家が空き家になって数年経ってから売却を検討し始め、その間に物理的な劣化が進んで、想定より買取価格が下がってしまう
- 相続人の一人が「事故物件だから売れないはず」と思い込み、そもそも売却の相談自体を先延ばしにしてしまう
- 1社だけの査定額を見て「この程度か」と判断し、他社に相談しないまま安値で手放してしまう
- 再建築不可の実家を一般の仲介業者に持ち込み、半年以上買主が見つからないまま時間だけが過ぎてしまう
これらに共通するのは、訳あり物件特有の事情を理解した相手に早い段階で相談していれば避けられた手戻りが多い、という点です。迷ったときほど、複数の専門家に話を聞く価値があります。
売却にかかる税金と計算例
訳あり物件を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、譲渡所得税と住民税がかかります。相続した実家であれば、要件を満たすことで税負担を大きく抑えられる特例もあるため、計算の仕組みを理解しておくことが重要です。
譲渡所得税の基本
譲渡所得金額は「譲渡価額(売却代金)-(取得費+譲渡費用)-特別控除額」で計算します。取得費が分からない場合は、譲渡価額の5%を概算取得費として計算することもできます。相続した古い実家では取得費の記録が残っていないことも多く、その場合は概算取得費を使うため、譲渡所得(利益)が大きく計算されやすい点に注意が必要です。
税率は、売却した年の1月1日時点での所有期間によって変わります。所有期間5年超の長期譲渡所得は税率20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)、5年以下の短期譲渡所得は税率39.63%(所得税30%・復興特別所得税0.63%・住民税9%)です(国税庁「長期譲渡所得の税額の計算」より)。相続した不動産の所有期間は、亡くなった被相続人が取得した時期から通算されるため、相続してすぐに売却しても、被相続人が長期間所有していれば長期譲渡所得として扱われます。
空き家の3,000万円特別控除
相続または遺贈により取得した被相続人の居住用家屋(空き家)とその敷地を売却する場合、一定の要件を満たせば、譲渡所得の金額から最高3,000万円(相続人が3人以上の場合は2,000万円)を控除できる特例があります。主な要件は次のとおりです(国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」より)。
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること(区分所有建物登記がされている建物は対象外)
- 相続開始の直前まで被相続人が一人で住んでいたこと(老人ホーム等への入所の場合は一定の要件で対象になる)
- 相続の時から譲渡の時まで、事業・貸付け・居住のいずれにも使われていないこと
- 家屋を売る場合は譲渡時に耐震基準を満たしていること、または家屋を取り壊してから土地を売ること(令和6年1月1日以後の譲渡では、譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修または取壊しが行われた場合も対象)
- 相続開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
- 売却代金が1億円以下であること
- 制度の適用期限は令和9年(2027年)12月31日までの譲渡であること
訳あり物件の中でも、老朽化した空き家(物理的瑕疵)はこの特例の対象になりやすい典型例です。耐震基準を満たさない古い建物であれば、取り壊してから土地を売る方法でも特例の対象になり得るため、解体と売却の順番を含めて事前に検討する価値があります。ただし、事故物件や再建築不可物件など他の瑕疵が絡む場合、要件を満たすかどうかの判断が難しくなることもあるため、税理士や税務署への確認をおすすめします。
相続税の取得費加算の特例との関係に注意
相続税を納めた人が、相続開始から3年10か月以内に不動産を売却した場合、支払った相続税の一部を取得費に加算できる「相続税の取得費加算の特例」という制度もあります。見落とされがちなのは、この特例と空き家の3,000万円特別控除は、どちらか一方しか使えない選択適用だという点です。相続税を多く納めた方は取得費加算の特例のほうが有利になる場合もあるため、どちらを選ぶかは実際の金額を試算したうえで判断する必要があります。両方の特例が使えると誤解したまま確定申告の準備を進めると、後から計算をやり直すことになりかねません。
ケース別の税額シミュレーション
実際にどの程度の税額になるか、3つのケースで比較します。取得費は不明のため概算取得費(譲渡価額の5%)で計算し、所有期間は5年超(長期譲渡所得)とします。
| ケース | 売却代金 | 譲渡所得の計算 | 税額の目安 |
|---|---|---|---|
| A:空き家特例あり(老朽化した実家、要件充足) | 2,000万円 | 2,000万円-(100万円+150万円)-1,750万円(特例控除)=0円 | 0円 |
| B:空き家特例なし(同条件だが要件を満たさない) | 2,000万円 | 2,000万円-(100万円+150万円)=1,750万円 | 約356万円(20.315%) |
| C:訳あり物件(買取・事故物件で相場より安く売却) | 1,200万円 | 1,200万円-(60万円+40万円)=1,100万円 | 約223万円(20.315%) |
(譲渡費用は仲介手数料・印紙代等の概算。実際の税額は個別の状況により変動するため、目安としてご覧ください)
なお、売却によって譲渡益が出なかった場合、原則として確定申告は不要です。ただし空き家の3,000万円特別控除など特例の適用を受けて結果的に納税額がゼロになる場合は、特例を使うこと自体を示すために確定申告が必要になります。「税金がかからないから申告もしなくてよい」と考えて放置すると、特例の適用が認められない可能性があるため、譲渡益の有無にかかわらず、売却した年の確定申告の要否は税務署や税理士に確認しておくことをおすすめします。
共有名義の実家で、自分の持分(例えば3人兄弟で3分の1)だけを専門業者に600万円で売却した場合も、譲渡所得の計算方法は変わりません。取得費・譲渡費用を持分割合で按分し、「持分の譲渡価額-(持分に対応する取得費+譲渡費用)」で譲渡所得を計算します。空き家特例は被相続人の居住用家屋・敷地の売却が対象のため、共有持分のみの売却でも要件を満たせば適用できる場合がありますが、判定が複雑になりやすいため、共有名義の実家を売る際は早めに税理士へ相談することをおすすめします。
ケースAとBを比べると分かるとおり、空き家特例の適用の有無だけで税額に350万円以上の差が生じています。売却を急ぐあまり要件確認を後回しにすると、本来払わずに済んだはずの税金を払うことになりかねません。契約を結ぶ前に、特例の対象になるかどうかを税務署や税理士に確認しておくことを強くおすすめします。
再建築不可物件・共有持分物件を売るときに知っておきたいこと
法的瑕疵の中でも、実家の売却相談で特に多いのが再建築不可物件と共有持分物件です。どちらも一般の仲介市場では扱いにくいとされますが、仕組みを理解すれば解消できる場合や、専門業者への相談で現実的な着地点が見える場合があります。
再建築不可物件が生まれる理由と解消の可能性
建築基準法では、建物を建てる敷地は原則として幅員4m以上の道路に2m以上接していなければならないと定められています(接道義務)。この基準を満たさない土地は、既存の建物を解体すると新しく建物を建てられなくなるため「再建築不可」と呼ばれます。旧市街や農村部の古い実家では、細い私道や他人の土地を通らないと道路に出られない敷地が珍しくありません。
再建築不可であっても、解消できる可能性が残っている場合があります。代表的なのは、建築基準法43条2項2号による許可(従来の「43条ただし書き許可」)で、特定行政庁が交通上・安全上・防火上・衛生上支障がないと認め、建築審査会の同意を得て許可すれば、接道義務を満たさない土地でも建築が許可されることがあります。ほかにも、道路に面するようセットバック(敷地の一部を後退させる)を行う方法、隣接する土地の一部を買い取って接道条件を満たす方法などがあります。いずれも個別の敷地条件によって可否が分かれるため、建築基準法に詳しい建築士や、再建築不可物件を専門に扱う不動産会社への相談が欠かせません。
接道条件の解消が難しい場合でも、隣地の所有者へ売却する、駐車場や資材置き場として活用する、再建築不可物件の専門買取業者に売るといった選択肢が残ります。隣地の所有者にとっては自分の土地の使い勝手が広がるメリットがあるため、一般の買主より高い価格で買い取ってもらえることもあります。実家の隣地所有者と面識がある場合は、売却活動を始める前に一度打診してみる価値があります。
共有持分だけを売るときの注意点
相続によって実家が兄弟姉妹など複数人の共有名義になっているケースも、法的瑕疵に近い扱いを受けます。民法上、共有者は他の共有者の同意を得なくても、自分の持分だけを単独で売却できます。ただし、共有持分だけを買い取っても、買主は物件全体を自由に使ったり住んだりすることはできません。他の共有者との関係を整理する必要があり、一般の個人にとっては使いにくい権利になるため、通常の仲介市場ではまず買い手がつきません。
共有持分を専門に扱う買取業者は、他の共有者との交渉や、共有物分割請求(裁判所を通じて共有関係を解消する手続き)に関するノウハウを持っており、一般の仲介では動かない案件でも現金化できる場合があります。共有者全員の意見がまとまらず実家の処分が止まっている場合、次のような選択肢が考えられます。
- 自分の持分だけを専門業者に売却する——他の共有者の同意なく進められますが、価格は単独所有の物件より低くなる傾向があります。
- 他の共有者に自分の持分を買い取ってもらう(代償分割)——身内で完結できるため、専門業者に売るより手続きが簡単になることがあります。
- 共有者全員で物件全体を売却する——単独所有の物件と同じ条件で売却でき、価格面ではもっとも有利になりやすい方法です。
- 共有物分割請求訴訟を起こす——話し合いがまとまらない場合の最終手段です。裁判所の判断で現物分割・代償分割・競売による分割のいずれかが決まります。
共有名義の実家をどう扱うかで意見が分かれている場合は、訴訟に進む前に、司法書士や弁護士を交えて選択肢を整理することをおすすめします。
訳あり物件を少しでも高く売るための下準備
訳あり物件だからといって、価格を下げること以外に打つ手がないわけではありません。売却前の下準備によって、査定額や成約までの期間が変わることがあります。
境界確定測量
隣地との境界があいまいなままだと、買主は将来のトラブルを懸念して購入をためらいやすくなります。とくに旧市街や農村部の古い実家では、境界標が失われていたり、そもそも境界が確定していなかったりすることがあります。土地家屋調査士に依頼する確定測量には数十万円の費用と数か月の期間がかかりますが、境界が確定していることは買主にとって大きな安心材料になり、査定額の交渉でも有利に働くことがあります。
越境物の解消・覚書の準備
庭木の枝や給排水管が隣地にはみ出している「越境」も、老朽化した実家では珍しくありません。物理的に解消できない越境がある場合でも、隣地所有者との間で「越境の事実を認め、将来撤去する」という内容の覚書を交わしておくことで、買主のリスクを軽減できます。覚書がないまま売却すると、後から買主と隣地所有者の間でトラブルになり、売主が責任を問われる可能性もあります。
残置物・動産の撤去
買取業者の中には家財を残したまま引き渡せるところもありますが、残置物が多いほど査定額が下がる傾向があります。遺品整理や生前整理で家財をあらかじめ片付けておくと、買取・仲介どちらの選択肢も取りやすくなります。特殊清掃が必要な場合は、清掃を終えてから売却活動に入るほうが、告知事項の説明もしやすくなります。
売却前に準備しておきたい書類
| 書類 | 取得先 | 用途 |
|---|---|---|
| 登記事項証明書(登記簿謄本) | 法務局 | 所有者・権利関係の確認 |
| 公図・地積測量図 | 法務局 | 土地の形状・境界の確認 |
| 固定資産評価証明書 | 不動産所在地の市区町村窓口 | 税額計算・取得費の参考 |
| 建築確認済証・検査済証 | 自宅で保管(紛失時は特定行政庁で記録確認) | 再建築の可否・違法建築の有無の確認 |
| 権利証または登記識別情報 | 自宅で保管 | 本人確認・売買契約時に必要 |
建築確認済証は、再建築不可かどうかの判断や、増改築の履歴を確認するうえで重要な書類です。紛失している場合は、建物を管轄する特定行政庁(市区町村の建築指導課など)で記録が確認できることがあります。相続した実家では、これらの書類が実家のどこかに散らばったまま見つからないことも多いため、遺品整理と並行して探しておくと、売却の相談がスムーズに進みます。
相続した訳あり物件を手放す方法
売却先が見つからない、あるいは資産価値が低く維持費の方が負担になる訳あり物件については、売却以外の選択肢も検討する価値があります。
相続土地国庫帰属制度
相続や遺贈によって取得した土地について、一定の要件を満たせば国に引き渡せる「相続土地国庫帰属制度」があります。申請できるのは相続などで土地の所有権を取得した個人で、法務大臣(窓口は法務局)の承認を得たうえで、審査手数料14,000円と、10年分の土地管理費に相当する負担金を納付する必要があります。建物が建っている土地や、担保権が設定されている土地、境界が明らかでない土地などは対象外となるため、老朽化した実家が残っている場合は、解体してから申請する必要があります。再建築不可で買い手がつかない土地や、山林・原野に近い実家の敷地では、売却よりも現実的な選択肢になることがあります。
相続放棄という選択肢
実家の資産価値が低く、解体費や管理費のほうが負担になりそうな場合は、相続放棄という選択肢もあります。相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から原則3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があり、この期間(熟慮期間)を過ぎると単純承認したものとみなされます。また期間内であっても、遺品の一部でも売却・処分すると法定単純承認とみなされ、後から撤回できなくなることがあります。訳あり物件だからといって安易に放棄を決める前に、買取業者に一度査定を依頼してみると、想定より高い金額で売却できる可能性もあります。放棄を迷っている段階では、家財の処分や売却の手続きに着手する前に、早めに司法書士や弁護士へ相談しておくことをおすすめします。
不動産会社に行く前に知っておきたいこと
訳あり物件の売却では、不動産会社に相談する前に知っておくと損をしにくくなる点がいくつかあります。囲い込まずに書いておきます。
マイナスの情報ほど正直に伝える
過去の死亡事案や建物の不具合を隠したまま契約を進めると、後から契約不適合責任を問われ、代金の一部返還や損害賠償を求められる可能性があります。マイナスの情報を伝えることで査定額が下がるとしても、隠したまま契約するリスクのほうが大きくなります。分からないことがあれば、査定の段階で率直に相談してください。
相見積もりを取ってから決める
前述のとおり、買取業者によって査定額に数百万円の差が出ることがあります。1社の提示額だけで判断せず、最低でも2〜3社から見積もりを取り、金額の根拠を比べることをおすすめします。査定額の内訳(更地化費用の見込み、リフォーム費用の見込みなど)を説明できる業者かどうかも、信頼できる相手を見極める材料になります。
空き家のまま放置するコストも計算に入れる
売却を先延ばしにしている間も、固定資産税は発生し続けます。さらに、管理が行き届かない状態が続くと、自治体から「特定空家等」に指定され、住宅用地の固定資産税の軽減特例が解除されて税額が上がる可能性もあります。空き家の管理をどこまで自分で続けられるかは、空き家管理の方法と費用で詳しく解説しています。売却までの期間が長引きそうな場合は、管理の手配もあわせて検討してください。
査定を受ける前に相続登記が済んでいるか確認する
名義が故人や先代のままでは、不動産会社との媒介契約や買取業者との売買契約を進めることが基本的にできません。相続登記は2024年4月から義務化されており、正当な理由なく放置すると過料の対象になり得ます。実家の売却を検討し始めた時点で、登記簿上の名義が誰になっているかを確認しておくことをおすすめします。売却前の査定の進め方は実家売却の査定の受け方で解説しています。
解体すべきか、そのまま売るべきかは慎重に判断する
老朽化した建物が残っている場合、解体してから売るか、現況のまま売るかで手取り額が変わることがあります。解体費用をかけても更地のほうが高く売れるケースもあれば、古家付きのまま買取業者に売ったほうが総額で得になるケースもあります。空き家特例の適用可否によっても判断は変わるため、解体を決める前に複数の選択肢を比較することが大切です。解体費用の目安と進め方は実家解体の費用と流れで紹介しています。
訳あり物件を売る手順
訳あり物件の売却は、通常の不動産売却よりも準備に時間がかかることがあります。おおまかな流れを把握しておくと、日程調整がしやすくなります。
- 物件の状況を整理する——過去の事案の有無、建物の劣化状況、法的な制限(再建築不可・共有持分など)を洗い出します。登記事項証明書や固定資産評価証明書を取得しておくと、その後の手続きがスムーズです。
- 相続登記の状況を確認する——名義が故人や先代のままになっていないか確認します。未了の場合は、司法書士に相談しながら並行して手続きを進めます。
- 複数社に査定を依頼する——仲介と買取の両方で、複数社から見積もりを取ります。査定額だけでなく、対応スピードや契約条件も比較します。
- 売却方法を決める——価格を優先するか、スピードを優先するかを踏まえ、仲介か買取かを選びます。
- 告知事項を整理し、契約する——把握している事実を漏れなく伝え、重要事項説明書・売買契約書の内容を確認したうえで契約します。
- 引き渡し・確定申告——引き渡し後、譲渡所得が出た場合は翌年に確定申告を行います。空き家特例など各種控除の適用も、この段階で申告書に反映させます。
相談から引き渡しまでの目安期間
売却方法によって、相談から引き渡しまでの期間は大きく変わります。目安を知っておくと、相続税の申告期限や次の予定との調整がしやすくなります。
| 売却方法 | 相談から契約までの目安 | 契約から引き渡しまでの目安 |
|---|---|---|
| 訳あり物件専門業者への買取 | 1〜2週間程度 | 1〜4週間程度 |
| 一般の不動産会社による仲介 | 1〜3か月程度(買主が見つかるまで) | 1〜2か月程度 |
| 共有持分・再建築不可の仲介 | 数か月〜1年以上かかることもある | 買主が見つかり次第 |
相続税の納税は相続開始から10か月以内が期限です。納税資金を売却代金でまかなう予定がある場合は、仲介ではなく買取を軸に検討したほうが、期限に間に合わせやすくなります。
買取業者を選ぶときのチェックリスト
訳あり物件の買取業者を選ぶ際に確認しておきたい項目を一覧にまとめました。相談前のチェックリストとしてご活用ください。
| 確認項目 | ポイント |
|---|---|
| 宅地建物取引業の免許 | 免許番号を確認する(更新回数が多いほど営業年数が長い目安になる) |
| 類似案件の取扱実績 | 同種の瑕疵(事故物件・再建築不可など)の取扱経験があるか |
| 査定額の根拠説明 | 解体費・リフォーム費用の見込みなど、内訳を説明できるか |
| 契約不適合責任の扱い | 免責の範囲と条件が契約書に明記されているか |
| 決済までのスケジュール | 現金化を急ぐ場合、具体的な決済日を提示できるか |
| 家財の処分対応 | 家財を残したまま引き渡せるか、別途費用がかかるか |
| 相見積もりへの対応 | 他社との比較を理由に契約を急かさないか |
訪問見積もりや電話勧誘で契約を急がされたと感じた場合は、いったん保留にして他社と比較することをおすすめします。なお、宅地建物取引業法上のクーリング・オフ(37条の2)は、宅建業者が売主となり一般個人が買主となる取引が対象で、個人が所有する実家を買取業者(宅建業者)に売却する今回のようなケースには原則として適用されません。「クーリング・オフできるはず」と思い込まず、契約前に内容をよく確認し、不安があれば契約を急がず消費者庁や国民生活センターに相談してください。
訳あり物件の売却と実家じまいをあわせて進める理由
訳あり物件の売却は、単独の手続きとして進めるより、遺品整理・相続登記・解体といった実家じまい全体の中に位置づけて進めたほうが結果的にスムーズなことが多いというのが、相談を受けてきた実感です。理由は主に3つあります。
一つ目は、家財が残ったままだと物理的瑕疵の判断がしにくいことです。家の中に物が積まれた状態では、雨漏りやシロアリ被害の跡が隠れてしまい、査定担当者が状態を正確に把握できません。遺品整理を先に済ませておくことで、査定の精度が上がり、買取価格の根拠も説明しやすくなります。
二つ目は、相続登記が済んでいないと、そもそも売買契約の主体になれないことです。名義変更を後回しにしたまま買取業者と交渉を進めても、契約の段階で手続きが止まってしまいます。片付けと並行して相続登記の準備を進めておくと、売却のタイミングを逃しません。
三つ目は、解体の要否や空き家特例の適用可否が、片付け・登記・売却の順序によって変わることです。解体してから売るか、現況のまま売るかの判断は、家財が片付いて建物の状態が正確に分かってからのほうが精度が上がります。片付け・登記・売却・解体をばらばらに進めるのではなく、早い段階で全体の順序を相談できる窓口を持つことが、結果的に手戻りの少ない進め方になります。
安心実家じまいのサービス案内
安心実家じまいは、実家の片付けから売却・解体の手配までを一つの窓口でお受けする全国対応のサービスです。相続した実家が事故物件や再建築不可、老朽化した空き家など訳あり物件に該当する場合も、状況に応じた進め方をご案内します。片付けから始めたい場合は実家じまい代行パック、遺品整理のみのご依頼は遺品整理サービスで承ります。
相続登記など法律手続きが絡む場合は、提携司法書士と連携して進めます。売却・解体を含めた進め方の全体像は実家売却の査定の受け方と実家解体の費用と流れ、売却までの間の管理は空き家管理の方法と費用をあわせてご覧ください。料金の全体は料金表、ご相談の進め方はご相談の流れでご案内しています。
よくある質問
訳あり物件とはどんな物件ですか?
事故物件を売るときの告知義務はいつまで続きますか?
訳あり物件は仲介と買取どちらがいいですか?
空き家の実家を売ると税金はどのくらいかかりますか?
買取業者に売ると相場よりどのくらい安くなりますか?
再建築不可の実家でも売却できますか?
共有名義の実家を、他の相続人の同意なしに売ることはできますか?
訳あり物件の売却でよくあるトラブルと回避策
相談の現場で見聞きする、訳あり物件特有のトラブルと、その回避策をまとめました。契約前に一度目を通しておくと、想定外の事態を減らせます。
| トラブル事例 | 回避策 |
|---|---|
| 告知していなかった過去の死亡事案が引き渡し後に発覚し、契約不適合責任を問われた | 把握している事実は査定の段階からすべて開示し、書面に残す |
| 境界が未確定のまま売却し、引き渡し後に隣地所有者とのトラブルに巻き込まれた | 売却前に確定測量を行うか、境界が未確定であることを重要事項として明記する |
| 1社の査定額を鵜呑みにして契約し、後から他社がより高値を提示していたと知った | 契約前に最低2〜3社の査定を比較する |
| 相続登記が未了のまま契約を進めようとし、決済直前で手続きが止まった | 査定依頼と同時に登記事項証明書を取得し、名義を確認しておく |
| 共有者の一部に連絡が取れず、物件全体の売却が長期間止まった | 持分売却や代償分割など、全員の合意を待たずに進められる方法も並行して検討する |
まとめ
訳あり物件の売却は、通常の不動産売却よりも判断すべき点が多くなります。要点を振り返ります。
- 訳あり物件は心理的瑕疵・物理的瑕疵・法的瑕疵・環境的瑕疵の4種類に分類される
- 事故物件の告知義務は、賃貸では概ね3年が目安だが、売買には経過期間の定めがなく原則として告知が必要
- マイナスの情報を隠すと、後から契約不適合責任を問われるリスクがある
- 売却方法は仲介(高値だが時間がかかる)と買取(早いが価格は下がる)の2択。状況に応じて使い分ける
- 買取相場は瑕疵の種類によって相場の3〜8割程度が目安。複数社の見積もり比較が欠かせない
- 相続した空き家は、要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例がある。ただし相続税の取得費加算の特例とは選択適用になる
- 再建築不可は接道条件の解消策が、共有持分は代償分割や専門業者への売却が現実的な選択肢になる
- 境界確定・越境の覚書・残置物の撤去といった下準備が、査定額や成約までの期間を左右する
- 売却先が見つからない土地は、相続土地国庫帰属制度や相続放棄も選択肢になり得る
- 査定の前に、相続登記が済んでいるかを確認しておく
相続した実家が訳あり物件に該当すると分かると、不安を感じる方も少なくありません。ただし、種類ごとの特徴と税制を理解し、複数の専門家に相談しながら進めれば、多くのケースで現実的な売却先を見つけることができます。まずは物件の状況を整理し、査定を受けるところから始めてみてください。片付けや解体まで含めた実家じまい全体の進め方は実家じまい代行サービスのページもご覧ください。
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