
久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士
東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。
■経歴
- 1966年鹿児島県生まれ
- 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
- 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
- 2013年司法書士試験合格
- 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
- 2017年司法書士法人コスモ退職
- 2018年事務所開設
- 2021年司法書士法人設立
■得意領域
- 相続登記・相続手続き
- 不動産の名義変更
- 相続放棄
- 簡易裁判所の訴訟代理
この記事の結論
- 境界確定測量の費用は、隣地がすべて私有地の「民民立会い」で30万〜50万円、道路や水路など公有地が絡む「官民立会い」で50万〜80万円が目安です。面積が広く隣地所有者が多いほど上振れします。
- 実家の売却に測量は法律上の義務ではありませんが、地積測量図がない・境界標が失われている土地では、仲介会社や買主から実質的に求められるケースがほとんどです。
- 測量費用は譲渡所得税の計算上「譲渡費用」として差し引けるため、実質的な負担は税引き後で考える必要があります。空き家の3,000万円特別控除など他の制度との組み合わせも検討の余地があります。
- 依頼から境界確定までは官民立会いを含む場合で3〜6か月程度かかることが多く、売却スケジュールが決まっているなら早めの着手が結果的に近道です。
測量には種類がある——現況測量・確定測量・地積測量図の違い
「測量」とひとくくりに言っても、目的によって内容も費用もまったく異なります。実家の売却を考えて調べ始めた方がまず混乱しやすいのが、この用語の違いです。ここを押さえておくと、不動産会社や土地家屋調査士との会話がかみ合いやすくなります。
現況測量——境界の合意なしに現状を測る
現況測量は、隣地所有者の立会いや合意を必要とせず、現存するブロック塀やフェンス、既存の境界標などを手がかりに、おおよその形状と面積を測る方法です。立会い調整が不要な分、費用は後述の確定測量より抑えられ、目安は10万〜20万円程度です。新築時の建築確認申請や、大まかな面積を把握したいだけの場面で使われます。ただし、現況測量の結果はあくまで「見た目の境界」に基づくもので、法的に確定した境界とは限りません。この数字だけを根拠に売買や分筆を進めると、後から実際の境界とのズレが判明し、トラブルに発展する可能性があります。
確定測量(境界確定測量)——隣地所有者の合意を得て境界を確定する
確定測量は、隣接する土地の所有者全員の立会いのもとで現地の境界を確認し合い、双方が合意したうえで正式な境界線として確定させる作業です。合意が得られた境界には「境界標」と呼ばれるコンクリート杭や金属標が設置され、成果物として「確定測量図」が作成されます。この図面は、将来にわたって境界を証明する重要な資料になります。実家の売却、相続による分筆、担保設定など、法的な効力が必要な場面では、この確定測量が前提になります。
立会いの場では、隣地所有者との間で「筆界確認書」または「境界確認書」と呼ばれる書面を取り交わします。これは、その境界点について双方が合意したことを証明する書類で、確定測量図とあわせて保管しておくべき資料です。実家を相続した際に、先代が結んだ筆界確認書や境界確認書が古い書類の中から出てくることもあります。処分前に、権利証や登記関係の書類と一緒に確認しておくと、測量費用を抑えられる手がかりになる場合があります。
地積測量図——すでに法務局にある可能性がある図面
過去に分筆登記や地積更正登記が行われた土地であれば、「地積測量図」が法務局に保管されている場合があります。これは登記申請時に作成された測量図で、法務局(登記所)で「公図」とあわせて1通数百円程度で取得できます。地積測量図があり、かつ境界標が現地にきちんと残っていて、面積や形状に食い違いがなければ、あらためて確定測量をしなくても取引が進められることがあります。逆に、地積測量図が古い基準で作成されていたり、そもそも作成されていない土地(分筆されたことのない古い土地に多く見られます)では、確定測量が必要になる可能性が高くなります。実家の測量を検討し始めたら、まず法務局で地積測量図の有無を確認することが、最初の一歩になります。
境界確定測量の費用相場——面積・境界タイプ別シミュレーション
費用相場を左右する最大の要因は、隣接地が「私有地だけか」「道路や水路など公有地を含むか」です。前者を「民民立会い」、後者を「官民立会い」と呼びます。官民立会いは、自治体側との書類のやり取りや調整の手間が増えるため、費用も期間も民民立会いより多くかかります。
民民立会い・官民立会いの費用目安
| 立会いの種類 | 費用の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 現況測量(参考) | 10万〜20万円 | 隣地の合意なし。法的な境界の確定にはならない |
| 民民立会い(確定測量) | 30万〜50万円 | 隣接地がすべて個人・法人の私有地 |
| 官民立会い(確定測量・道路等) | 50万〜80万円 | 市区町村道・県道・国道との境界確認を含む |
| 官民立会い(確定測量・水路・里道等) | 60万〜90万円 | 法定外公共物(里道・水路)との境界確認は対面地の所有者調整も加わり割高 |
この目安は、複数の土地家屋調査士事務所が公表している相場をもとに整理したものです。実際の金額は、土地の形状、境界点の数、隣地所有者の人数、依頼先の事務所によって変動します。正確な金額は、現地調査を踏まえた個別見積もりでなければ分かりません。
面積帯別の目安(安心実家じまい事務局による整理)
費用は面積にほぼ比例して増えていきますが、単純な比例ではありません。隣地所有者の数や境界点の数といった要因も重なるためです。相談の中でよく聞かれる面積帯を目安として整理すると、次のようになります。
| 土地の面積 | 民民立会いのみ | 官民立会いを含む場合 |
|---|---|---|
| 〜50坪(165㎡未満) | 25万〜40万円 | 40万〜60万円 |
| 50〜100坪(165〜330㎡) | 30万〜50万円 | 50万〜80万円 |
| 100〜150坪(330〜495㎡) | 40万〜60万円 | 60万〜90万円 |
| 150〜300坪(495〜991㎡) | 55万〜90万円 | 80万〜150万円 |
| 300坪超(991㎡超) | 個別見積もりが前提。100万円を大きく超えることもある | |
(公表されている複数の土地家屋調査士事務所の解説をもとに、安心実家じまい事務局が面積帯ごとに整理した目安です。実際の金額は現地調査後の見積もりで確認してください)田畑や山林が敷地に含まれる旧家の実家では、宅地部分だけでなく敷地全体が測量対象になることが多く、想定より面積が大きく出るケースもあります。見積もり依頼の際は、登記簿上の地目だけでなく、現況の利用形態も伝えておくと精度が上がります。
費用が変動する要因
- 隣地所有者の数——所有者が多いほど、日程調整と説明の手間が増えます。共有名義の隣地では、共有者全員への説明が必要になることもあります。
- 隣地所有者が亡くなっている場合——相続人を戸籍から調査し、相続人全員に境界確認を依頼する必要が生じることがあり、通常より時間と費用がかかります。
- 土地の形状——旗竿地や不整形地は境界点の数が増え、測量作業も複雑になります。
- 高低差・地域性——山林や傾斜地、積雪地域などは現地作業の難度が上がり、費用に影響します。
- 過去の測量資料の有無——地積測量図や過去の確定図があれば、資料調査の手間が減り、費用を抑えられる可能性があります。
測量費用以外にかかる諸費用
見積書の「測量費」だけを見ていると、実際の支払総額とのズレに戸惑うことがあります。次のような諸費用が別枠で発生する場合があるため、見積もり時に含まれているかどうかを確認しておくと安心です。
| 費用項目 | 目安 | 発生する場面 |
|---|---|---|
| 境界標の材料・設置実費 | 1点あたり数千円〜1万円程度 | 新たに境界標を設置する境界点の数に応じて加算 |
| 地積更正登記の登録免許税 | 非課税(登録免許税はかかりません) | 測量の結果、登記簿上の面積を訂正する場合 |
| 分筆登記の登録免許税 | 分筆後の筆数×1,000円 | 相続人間で土地を分けて登記する場合 |
| 隣地所有者の戸籍・住民票調査費 | 1件あたり数千円程度 | 隣地所有者が死亡・相続未了で相続人を調査する場合 |
| 越境物の是正に関する協議費用 | 個別見積もり | 塀の建て替えや越境した樹木の剪定を伴う場合 |
これらは案件によって発生有無が変わる費用です。見積書に「測量費一式」としか書かれていない場合は、こうした諸費用が含まれているかどうかを契約前に確認してください。
ケースで見る費用と期間の違い
相談窓口でよく寄せられる実家の状況を3パターンに単純化し、費用と期間の目安をまとめました。実際の金額は個別の見積もりで確認する前提でご覧ください。
| ケース | 状況 | 費用目安 | 期間目安 |
|---|---|---|---|
| ケースA | 60坪の宅地。隣接地はすべて個人宅3軒、境界標がおおむね現存 | 35万〜45万円 | 1〜2か月 |
| ケースB | 90坪の旗竿地。前面道路との官民立会いが必要、隣地所有者の一人が県外在住 | 55万〜75万円 | 3〜5か月 |
| ケースC | 180坪の農家型住宅。里道・水路に接し、隣地所有者の一人がすでに死亡し相続人3名を調査 | 90万〜130万円 | 6か月〜1年 |
ケースCのように、隣地所有者の相続が絡むと、戸籍収集から始めるため測量そのものより前段の調査に時間がかかります。実家の売却期日が決まっている場合、隣地の状況を早い段階で把握しておくことが、全体のスケジュールを守るうえで重要になります。
実家の売却に境界確定測量は必要か——正直な判断基準
結論から言うと、境界確定測量は法律で義務付けられた手続きではありません。ここは誠実にお伝えしたい点です。「不動産を売るには測量をしなければならない」という説明を受けたとしても、それは法律上の義務ではなく、取引を円滑・安全に進めるための実務上の慣行です。とはいえ、実際の売買では測量なしで進められないケースのほうが多いのも事実です。次の基準で、自分の実家がどちらに近いか確認してみてください。
測量を省略できる可能性がある土地
- 法務局に地積測量図があり、記載内容が現況と一致している
- 境界標(杭・金属標など)が現地にすべて残っており、隣地所有者との認識にズレがない
- 比較的新しい分譲地で、造成時に境界が確定・記録されている
- 買主が現況のまま購入することに同意しており、住宅ローンを利用する金融機関からも指摘がない
測量が必要になりやすい土地
- 地積測量図が存在しない、または昭和期など古い基準で作られたもので現況と整合しない
- 境界標が見当たらない、ブロック塀の位置と登記簿上の境界がずれていそうだと感じる
- 隣地との間で越境物(樹木の枝、擁壁、屋根の軒先など)があると分かっている
- 親の代から境界について隣家と何となく曖昧なまま過ごしてきた経緯がある
- 複数の相続人で土地を分筆して分ける予定がある
- 土地の一部だけを売却し、残りを自分で使う予定がある
不動産会社に査定を依頼した段階で、境界の状況について確認されることがほとんどです。地積測量図の有無や境界標の状態は、査定の精度にも関わる情報のため、早い段階で伝えておくと話がスムーズです。実家の売却査定の進め方は実家の売却査定の受け方で詳しく紹介しています。
更地にして売る・解体してから売る場合はより重要になる
建物を解体して更地として売却する場合、境界が曖昧なまま解体工事を進めると、隣地との間で「解体の際に越境した」「境界杭が撤去された」といったトラブルに発展しかねません。解体前に境界を確定させ、境界標の位置を記録しておくことで、こうしたリスクを避けやすくなります。解体を検討している実家では、片付け・解体・測量の順序をあらかじめ整理しておくと、工程の手戻りを防げます。解体の流れや注意点は実家の解体費用と流れをご覧ください。
境界確定測量の流れと期間の目安
確定測量は、いきなり現地に測量士がやってきて終わる作業ではありません。資料調査から登記までのプロセスを把握しておくと、売却スケジュールを組みやすくなります。
- 相談・見積もり——土地家屋調査士に依頼し、対象地の登記簿・公図・地積測量図の有無などをもとに概算見積もりを受けます。
- 資料調査——法務局・市区町村役所で、過去の測量図や道路の管理区分に関する資料を確認します。
- 現地の事前調査——現地で既存の境界標やブロック塀などの位置を確認し、資料との整合性を確かめます。
- 官民立会い(該当する場合)——道路や水路の管理者(市区町村や国の出先機関など)に立会申請を提出し、現地で境界確認を行います。申請から立会いまで自治体側の日程調整が入るため、時間がかかりやすい工程です。
- 民民立会い——隣地所有者に案内文書を送付し、日程を調整したうえで、現地で境界を確認してもらいます。
- 境界標の設置——合意が得られた境界点に、恒久的な境界標を設置します。
- 図面作成・登記申請——確定測量図を作成し、必要に応じて地積更正登記などの申請を行います。
期間の目安は、民民立会いのみで隣地所有者の対応がスムーズな場合で1〜2か月程度、官民立会いを含む場合は自治体側の手続きが加わるため3〜6か月程度、隣地所有者が遠方在住や相続未了で連絡調整に時間がかかる場合はさらに長引くことがあります。売却の決済日や引き渡し日から逆算して、余裕を持ったスケジュールで着手することをおすすめします。
費用を抑える方法・依頼前に自分で確認できること
測量そのものの作業を安くする方法は限られていますが、依頼前の準備次第で、無駄な調査工程を減らし、結果的に費用と期間を圧縮できる余地があります。次のチェックリストは、土地家屋調査士に相談する前にご自身で確認できる項目です。
| 確認項目 | 確認方法 | 分かること |
|---|---|---|
| 地積測量図の有無 | 法務局(登記所)で公図・地積測量図を取得 | 過去に測量歴があるか、費用を抑えられる可能性があるか |
| 境界標の有無・位置 | 現地を歩いて目視確認(写真を撮っておく) | 境界が現地でも維持されているか |
| 地籍調査の実施状況 | 国土交通省「地籍調査Webサイト」の実施状況マップで確認 | 自治体単位で地籍調査が完了していれば境界資料の精度が高いことが多い |
| 法務局地図(14条地図)の整備状況 | 法務局窓口、またはオンラインの登記情報で確認 | 公図が現況と一致した精度の高い地図に置き換わっているか |
| 越境物の有無 | 隣地との境界付近の樹木・塀・屋根の状態を確認 | 立会い時に調整が必要になりそうな箇所を事前に把握できる |
| 隣地所有者の連絡先 | 近隣付き合いのある親族に確認、または町内会経由で確認 | 立会い調整がスムーズに進むかどうかの見通しが立つ |
地籍調査は、国土調査法にもとづき市区町村などが実施主体となり、国と都道府県の費用負担(国庫補助)を受けながら全国の土地の境界・面積・所有者情報を確定していく事業で、対象地域では確定測量よりも精度の高い境界資料がすでに整っている場合があります。一方、法務局地図作成事業は法務局自身が主体となって同様の地図整備を進めている取り組みです。実家がある地域でどちらかが完了していれば、確定測量の際に資料調査の手間が省け、費用が下がる可能性があります。事前に把握しておくと、見積もり時の説明もスムーズになります。
この他、複数の土地家屋調査士事務所から見積もりを取り、内訳を比較することも有効です。「一式◯◯万円」だけの見積書ではなく、資料調査費・現地調査費・境界立会い費・境界標設置費・図面作成費といった内訳が明示された見積書を選ぶと、後から追加費用が発生した際にも交渉がしやすくなります。
隣地所有者と合意できない・行方不明のときはどうするか
境界確定測量は、隣地所有者全員の合意があって初めて成立します。しかし実際には、隣地の所有者が遠方に住んでいる、相続が未了で誰が所有者か分からない、感情的なもつれから立会いを拒否される、といった事情で合意に至らないことも珍しくありません。
まずは所在調査と丁寧な説明から
隣地所有者の連絡先が分からない場合、土地家屋調査士が登記簿や戸籍・住民票の調査を通じて所在を確認します。相続が発生していて名義人がすでに亡くなっている場合は、相続人の調査から始めることになり、通常より時間がかかります。連絡が取れた場合は、境界確定の目的(売却のため、老朽化した塀の建て替えのためなど)を丁寧に説明し、立会いの日程を無理なく調整することが、円満な合意への近道です。
合意が得られないときの「筆界特定制度」
説明を尽くしても隣地所有者の同意が得られない場合、法務局が運用する「筆界特定制度」を利用する方法があります。これは、土地の所有者からの申請を受けて、法務局の筆界特定登記官が、外部の専門家(筆界調査委員)による現地調査や測量の結果を踏まえて、公法上の境界(筆界)がどこにあるかを判断する制度です。裁判所での境界確定訴訟に比べて、短期間かつ低い費用負担で境界を確定できる仕組みとして用意されています。手数料は土地の固定資産税評価額に応じて算定され、これとは別に測量費用などの実費がかかります。金額の詳細は、申請先の法務局に確認してください。
それでも解決しない場合の境界確定訴訟
筆界特定制度でも決着しない、あるいは隣地所有者との間で私法上の所有権の範囲そのものに争いがある場合は、裁判所での境界確定訴訟(筆界確定訴訟・所有権確認訴訟)に進む選択肢が残ります。ただし、訴訟は期間も費用も大きくかかるため、実家の売却を急いでいる場合には現実的でないことが多く、境界に不安がある部分を除いて先行して売却する、あるいは境界紛争があることを買主に開示したうえで価格調整するといった代替策を不動産会社と相談することになります。
相談窓口でよく見られるパターン
実家の測量に関する相談では、次のようなパターンが繰り返し見られます。自分の状況に近いものがないか、確認してみてください。
- 親の代から「境界はだいたいここ」という口約束だけで済ませてきた土地で、売却の段になって初めて地積測量図がないことに気づき、そこから測量を手配するため引き渡し予定が数か月後ろ倒しになる
- 隣地の塀やカーポートの屋根が数十センチ実家側に越境していることが測量で判明し、隣地所有者との話し合いに時間がかかる
- 隣地が空き家で所有者が遠方在住・音信不通に近く、立会いの日程調整だけで数か月を要する
- 庭木の枝や根が境界を越えて隣地に伸びており、剪定や伐採の費用負担をめぐって話し合いが必要になる
- 測量後に境界標を設置したところ、登記簿上の面積が実測と数㎡異なることが判明し、地積更正登記が追加で必要になる
共通しているのは、境界の状態を「なんとなく分かっているつもり」のまま長年過ごしてきたことです。売却や解体を具体的に検討し始めた時点で、一度専門家の目で確認しておくと、後の工程での手戻りを減らせます。
越境した樹木の枝は自分で切れる場合がある
実家の敷地でよく相談されるのが、隣地から伸びてきた木の枝や、逆に実家の庭木が隣地に越境しているケースです。2023年4月に施行された改正民法では、越境した竹木の枝について、竹木の所有者に切除を催告しても相当な期間内に応じない場合や、竹木の所有者が不明・所在不明の場合、急迫の事情がある場合に、土地の所有者自身が枝を切り取れるルールが整備されています(改正民法233条)。ただし、根については従来どおり自分で切除できる扱いのままです。境界確定測量とあわせて越境物が見つかった場合は、まず話し合いによる解決を試み、それでも進まないときにこうした制度の利用を検討する、という順序が現実的です。
測量費用と税金の関係——譲渡所得税・空き家特例との組み合わせ
測量費用は、単に「支払って終わり」の費用ではありません。実家を売却する場合、税金の計算に関わってくる点も知っておくと、実質的な負担感が変わってきます。
測量費用は譲渡費用として差し引ける
土地や建物を売却したときの譲渡所得は、「譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額」で計算します。国税庁のタックスアンサー(No.3208)では、譲渡費用の例として仲介手数料や印紙代とあわせて「測量費」が明記されています。つまり、境界確定測量にかかった費用は、譲渡所得から差し引ける経費として扱うことができ、その分だけ課税対象となる譲渡所得が圧縮されます。
所有期間で税率が変わる点にも注意
譲渡所得の税率は、売却する年の1月1日時点での所有期間によって大きく変わります。相続した実家の場合、被相続人が取得した時期から所有期間を引き継げるため、長期譲渡になっているケースがほとんどですが、念のため確認しておくとよい項目です。
| 区分 | 所有期間 | 税率(所得税+住民税) |
|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 売却年の1月1日時点で5年以下 | 30%+9%=39%(復興特別所得税を除く) |
| 長期譲渡所得 | 売却年の1月1日時点で5年超 | 15%+5%=20%(復興特別所得税を除く) |
(国税庁タックスアンサーNo.3208・No.3211より。いずれも別途、令和19年まで復興特別所得税として所得税額の2.1%が加算されます)短期と長期では税率が実に2倍近く異なります。相続直後に急いで売却先を探す前に、所有期間の起算点がどうなっているか確認しておく価値があります。
簡易シミュレーション
実際にどの程度の影響があるか、単純化した例で確認してみます(実際の税額は取得費の算定方法や特例の適用有無によって変わるため、目安としてご覧ください)。
| 項目 | 測量費用を計上しない場合 | 測量費用60万円を譲渡費用に計上した場合 |
|---|---|---|
| 譲渡価額 | 3,000万円 | 3,000万円 |
| 取得費+その他譲渡費用 | 1,500万円 | 1,500万円 |
| 測量費用 | 0円 | 60万円 |
| 課税長期譲渡所得金額 | 1,500万円 | 1,440万円 |
| 税額(所得税15%+住民税5%の概算) | 約300万円 | 約288万円 |
この例では、測量費用60万円を計上したことで課税所得が60万円圧縮され、税額はおよそ12万円軽くなる計算です(所有期間5年超の長期譲渡所得・税率20%で概算、復興特別所得税は含めていません)。測量費用の全額が戻ってくるわけではありませんが、支払った費用の一部が税負担の軽減という形で戻ってくる点は、見積もりの検討材料に加えておく価値があります。確定申告の際に使うため、測量費用の請求書・領収書は保管しておいてください。
空き家の3,000万円特別控除との関係
相続した実家を売却する場合、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最大3,000万円(相続人が3人以上の場合は2,000万円)を控除できる「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」があります(国税庁タックスアンサーNo.3306)。主な要件は、昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること、区分所有登記がされていないこと、相続開始の直前まで被相続人以外に住んでいた人がいなかったこと、譲渡代金が1億円以下であること、相続開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却することなどです。家屋は一定の耐震基準を満たすか取り壊して売却することが要件ですが、令和6年1月1日以後の譲渡では、譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに耐震基準を満たすこととなった場合や家屋の全部を取り壊した場合も適用対象になります。適用期限は令和9年(2027年)12月31日までの譲渡が対象です。この特別控除が使える場合、測量費用の譲渡費用計上とあわせて活用することで、譲渡所得をより大きく圧縮できる可能性があります。適用要件は個別の事情によって細かく判定が分かれるため、税理士または税務署への確認をおすすめします。
相続土地国庫帰属制度を使う場合の測量
売却のめどが立たず、土地を手放して国に引き渡す「相続土地国庫帰属制度」を検討する場合も、境界が曖昧な土地は審査の過程で確認を求められることがあります。この制度は、相続などで土地を取得した個人が、法務局の審査を経て土地を国庫に帰属させる仕組みで、審査手数料(土地一筆あたり14,000円)と、10年分の土地管理費に相当する負担金の納付が必要です。建物が建っている土地や担保権が設定されている土地は対象外になるなど、細かな要件があるため、利用を検討する場合は法務局への事前相談が前提になります。相続した土地の名義変更や関連制度については相続登記の義務化とはもあわせてご覧ください。
土地家屋調査士の選び方チェックリスト
境界確定測量は、資格を持つ土地家屋調査士に依頼するのが原則です。地域や事務所によって費用や対応スピードに差が出るため、2〜3社から見積もりを取って比較することをおすすめします。確認しておきたいポイントを整理しました。
| 確認項目 | ポイント |
|---|---|
| 資格の確認 | 土地家屋調査士の登録番号を確認する。名刺や見積書に記載があるのが通常 |
| 見積書の内訳 | 資料調査・現地調査・境界立会い・境界標設置・図面作成が分けて記載されているか |
| 官民立会いの実績 | 対象自治体での官民立会いの実務経験があるか(自治体ごとに手続きの癖があるため) |
| 隣地所有者への説明対応 | 立会い案内の文書作成や説明を任せられるか、依頼者自身が対応する部分はどこか |
| 追加費用の条件 | 隣地所有者が遠方・相続未了などで調査が長引いた場合の追加費用の有無と上限 |
| 完了までの見込み期間 | 官民立会いを含む場合の想定スケジュールを事前に共有してもらえるか |
遠方に住んでいて実家の測量に立ち会えない場合は、現地確認や隣地への説明をどこまで代行してもらえるかも確認しておきたい点です。売却スケジュールが決まっている場合は、その旨を最初の相談時点で伝え、逆算したスケジュールを一緒に組んでもらうと、後の工程が滞りにくくなります。
実家じまいの中で測量をどう位置づけるか
境界確定測量は、実家の売却・解体・分筆といった手続きの前段階にあたる作業です。片付けと並行して進めておくべき手続きのひとつとして捉えると、全体のスケジュールが立てやすくなります。安心実家じまいでは、遺品整理や家財の片付けから、売却査定・解体の手配までを一つの窓口でご案内しており、測量や登記など専門的な手続きが必要な場面では、提携する土地家屋調査士・司法書士と連携しながら進める体制を整えています。
空き家のまま実家を放置していると、境界標が土に埋もれてしまったり、樹木が越境して隣地とのトラブルの火種になったりすることがあります。売却や解体を決めていなくても、定期的な管理の中で境界標の状態を確認しておくと、いざ測量が必要になったときの調査がスムーズです。空き家の管理方法については空き家の管理方法で詳しく解説しています。片付けから売却・解体までの全体の流れは実家じまい代行サービスのページでご案内しています。
よくある質問
境界確定測量の費用相場はいくらですか?
実家を売るときに境界確定測量をしなくても売却できますか?
測量費用は売主と買主のどちらが負担しますか?
隣地の所有者と連絡が取れない場合はどうすればいいですか?
測量費用は税金の計算にどう関係しますか?
まとめ
土地の測量・境界確定は、費用も期間もかかる作業だからこそ、実家の売却や解体を検討し始めた早い段階で見通しを立てておく価値があります。要点を振り返ります。
- 境界確定測量の費用は、民民立会いで30万〜50万円、官民立会いで50万〜80万円が目安。面積が広いほど、隣地所有者が多いほど上振れする
- 測量は法律上の義務ではないが、地積測量図がない・境界標が失われている土地では実務上ほぼ必須になる
- 依頼前に法務局で地積測量図の有無を確認し、地籍調査や法務局地図の整備状況も調べておくと、見積もりの精度が上がる
- 隣地所有者と合意できない場合は、筆界特定制度という裁判より短期間・低コストな解決手段がある
- 測量費用は譲渡所得税の計算上「譲渡費用」として差し引ける。空き家の3,000万円特別控除との組み合わせも検討する
- 官民立会いを含む場合、依頼から完了まで3〜6か月程度かかることが多い。売却スケジュールから逆算して早めに着手する
実家の測量が必要かどうかは、地積測量図の有無や境界標の状態によってケースバイケースです。まずは法務局で資料の有無を確認し、不安があれば早めに土地家屋調査士や不動産会社に相談してみてください。片付けから売却・解体まであわせて相談したい場合は、実家じまい代行サービスでも承っています。
早いこともあります
実家の片付けから処分まで、
窓口ひとつでご相談いただけます。
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