
久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士
東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。
■経歴
- 1966年鹿児島県生まれ
- 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
- 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
- 2013年司法書士試験合格
- 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
- 2017年司法書士法人コスモ退職
- 2018年事務所開設
- 2021年司法書士法人設立
■得意領域
- 相続登記・相続手続き
- 不動産の名義変更
- 相続放棄
- 簡易裁判所の訴訟代理
この記事の結論
- 全国の空き家は900万2千戸、空き家率13.8%で、いずれも過去最多・過去最高です(総務省「令和5年住宅・土地統計調査」確報値・2024年9月25日公表)。
- 20年前の2003年は12.2%でした。伸びが大きいのは別荘や賃貸中の物件を除いた「その他空き家(実質的な放置空き家)」で、20年で約1.8倍に増えています。
- 空き家率が高いのは徳島・和歌山・鹿児島・山梨など地方圏、低いのは埼玉・沖縄・神奈川・東京です。
- 国の実態調査では、空き家所有者の約6割が「相続」をきっかけに所有者となり、うち約6割は「所有者の死亡」が発端です。相続前に対策していた世帯はわずか23.0%でした。
- 放置すると「管理不全空家」等に指定され、固定資産税の住宅用地特例(最大1/6)が受けられなくなることがあります。
- 実家を空き家にしないためには、家族での話し合い・登記の確認・家財整理を早めに進めることが有効です。
全国の空き家統計 最新の確定値(総務省「令和5年住宅・土地統計調査」)
総務省統計局は1948年(昭和23年)以来、5年ごとに「住宅・土地統計調査」を実施しています。もっとも新しい令和5年調査は2023年10月1日を基準日として行われ、確定値にあたる「住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」が2024年9月25日に公表されました。それによると、全国の総住宅数は6504万7千戸、そのうち空き家は900万2千戸で、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.8%です。空き家数・空き家率とも、調査開始以来の過去最多・過去最高を更新しました。2018年の前回調査(848万9千戸・13.6%)と比べると、5年間で51万3千戸、0.2ポイントの増加です。
空き家と一口にいっても、実際の状態はさまざまです。総務省の調査では、空き家を次の4種類に分類しています。
| 空き家の種類 | 説明 | 2023年の戸数 | 総住宅数に占める割合 |
|---|---|---|---|
| 賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家(その他空き家) | 転勤・入院などで長期不在の住宅、取り壊し予定の住宅など | 385万6千戸 | 5.9% |
| 賃貸用の空き家 | 新築・中古を問わず、賃貸のために空き家になっている住宅 | 443万6千戸 | 6.8% |
| 売却用の空き家 | 新築・中古を問わず、売却のために空き家になっている住宅 | 32万6千戸 | 0.5% |
| 二次的住宅(別荘等) | 週末や休暇時のみ使用し、普段は人が住んでいない住宅 | 38万4千戸 | 0.6% |
| 空き家 計 | ― | 900万2千戸 | 13.8% |
(出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」2024年9月25日公表)
実家じまいを考えるうえで注目したいのは、4区分のうち「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」です。これは賃貸市場にも売却市場にも出ておらず、別荘のように積極的に使われてもいない、いわば実質的な放置空き家にあたります。相続した実家をそのまま何もせず持ち続けているケースの多くは、この区分に入ります。総数900万2千戸のうち385万6千戸、率にして42.8%を占めており、空き家全体の中でも最大のボリュームゾーンです。
建て方別にみる空き家の内訳
空き家を建て方別に見ると、一戸建が352万3千戸(空き家全体の39.1%)、共同住宅が502万9千戸(同55.9%)です。実家じまいの対象になりやすい一戸建の空き家は、その約8割(80.9%)が「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」に分類されており、賃貸や売却の動きがないまま放置されている実態がうかがえます。共同住宅(アパート・マンション)の空き家は逆に、約8割(78.5%)が賃貸用として市場に出ています。
| 建て方 | 空き家数 | うち放置空き家(その他空き家)の割合 | うち賃貸用の割合 |
|---|---|---|---|
| 一戸建 | 352万3千戸 | 80.9% | 6.0% |
| 共同住宅 | 502万9千戸 | 16.9% | 78.5% |
| 長屋建 | 41万9千戸 | 32.5% | 64.6% |
(出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」表2-2)
一戸建の空き家は共同住宅に比べて市場に出にくく、所有者の判断が入らない限り動かないという特徴があります。実家が一戸建であるほど、早めに方針を決めておく意味が大きいといえます。
なお、住宅・土地統計調査には、調査の早期提供を目的とした「速報値」(今回は2024年4月30日公表)と、その後に確定する「確報値」(同年9月25日公表)があります。速報段階では空き家数が899万5千戸・空き家率13.8%と示されていましたが、確報では900万2千戸に修正されています。本記事の数値はすべて、より精度の高い確報値に統一しています。他のサイトや記事で見かける数字とわずかに異なる場合は、速報値と確報値のどちらを参照しているかの違いであることが多いので、あわせて覚えておくと数字の見方に迷いにくくなります。
空き家はこの20年でどう増えてきたか(1978年〜2023年の推移)
総務省の確報集計には、1978年から2023年までの空き家数・空き家率の推移も掲載されています。全国の総住宅数、空き家数、空き家率、そして放置空き家にあたる「その他空き家」の数と率を、5年ごとの時点で並べたものが次の表です。
| 年(調査回) | 総住宅数 | 空き家数 | 空き家率 | うちその他空き家数 | その他空き家率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1978年(昭和53年) | 3,545.1万戸 | 267.9万戸 | 7.6% | 97.7万戸 | 2.8% |
| 1983年(昭和58年) | 3,860.7万戸 | 330.2万戸 | 8.6% | 125.2万戸 | 3.2% |
| 1988年(昭和63年) | 4,200.7万戸 | 394.0万戸 | 9.4% | 131.0万戸 | 3.1% |
| 1993年(平成5年) | 4,587.9万戸 | 447.6万戸 | 9.8% | 148.8万戸 | 3.2% |
| 1998年(平成10年) | 5,024.6万戸 | 576.4万戸 | 11.5% | 182.5万戸 | 3.6% |
| 2003年(平成15年) | 5,389.1万戸 | 659.3万戸 | 12.2% | 211.8万戸 | 3.9% |
| 2008年(平成20年) | 5,758.6万戸 | 756.8万戸 | 13.1% | 268.1万戸 | 4.7% |
| 2013年(平成25年) | 6,062.9万戸 | 819.6万戸 | 13.5% | 318.4万戸 | 5.3% |
| 2018年(平成30年) | 6,240.7万戸 | 848.9万戸 | 13.6% | 348.7万戸 | 5.6% |
| 2023年(令和5年) | 6,504.7万戸 | 900.2万戸 | 13.8% | 385.6万戸 | 5.9% |
(出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」表2-1をもとに安心実家じまい事務局が集計。数値は1000戸単位を万戸単位に換算)
総住宅数は45年間で1.8倍に増え、それ以上のペースで空き家数は3.4倍に増えています。とくに目を引くのは「その他空き家」の伸びです。2003年に211.8万戸だったものが2023年には385.6万戸となり、20年間で約1.8倍に膨らんでいます。国土交通省も、使用目的のない空き家(平成15年:212万戸→令和5年:386万戸)がこの20年でおよそ2倍近い水準まで増えている点を課題として挙げており、今後も増加が見込まれるとしています(出典:国土交通省「空き家対策特設サイト」等の公表資料。数値は総務省「令和5年住宅・土地統計調査」確報値に基づく)。全体の空き家率が13.8%と聞くと大きな数字には見えないかもしれませんが、実際に社会問題となっているのは、この「その他空き家」の伸びの速さです。
賃貸用・売却用の空き家は、いずれ借り手や買い手がつけば市場から消えていきます。しかし「その他空き家」は、所有者自身が動かない限りいつまでも残り続けます。実家じまいの相談を受けていると、まさにこの「その他空き家」に当てはまる実家、つまり誰も住んでおらず、貸す予定も売る予定もないまま数年が経っている実家のご相談が少なくありません。統計上の伸び率の高さは、こうした個々のご家庭の状況が積み重なった結果だといえます。
都道府県別の空き家率ランキング(最新・全47都道府県)
空き家率には大きな地域差があります。総務省の確報値(2023年)で空き家率が最も高いのは徳島県の21.3%、次いで和歌山県21.2%、鹿児島県20.5%、山梨県20.4%、高知県20.3%と続きます。最も低いのは埼玉県9.3%で、沖縄県9.4%、神奈川県9.8%、東京都10.9%が続きます。
ただし、この全体の空き家率には別荘など「二次的住宅」も含まれています。山梨県や長野県のように別荘地を多く抱える県は、二次的住宅の分だけ数字が押し上げられている面があります。実家の放置リスクをより正確に見るなら、二次的住宅と賃貸・売却中の物件を除いた「その他空き家率」を確認するほうが実態に近づきます。この指標で見ると、最も高いのは鹿児島県13.6%で、高知県12.9%、徳島県12.2%、愛媛県12.2%、和歌山県12.1%が上位に並び、西日本の県が目立ちます。
| 順位 | 空き家率が高い都道府県 | 空き家率 | その他空き家率が高い都道府県 | その他空き家率 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | 徳島県 | 21.3% | 鹿児島県 | 13.6% |
| 2位 | 和歌山県 | 21.2% | 高知県 | 12.9% |
| 3位 | 鹿児島県 | 20.5% | 徳島県・愛媛県 | 12.2% |
| 4位 | 山梨県 | 20.4% | 和歌山県 | 12.1% |
| 5位 | 高知県 | 20.3% | 島根県 | 11.3% |
(出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」付表 都道府県別の主な指標)
全47都道府県分のデータを、空き家率の高い順に一覧にしました。実家がある都道府県の位置づけを確認する際にお使いください。
| 順位 | 都道府県 | 空き家数 | 空き家率 | その他空き家率 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 徳島県 | 8万3千戸 | 21.3% | 12.2% |
| 2 | 和歌山県 | 10万5千戸 | 21.2% | 12.1% |
| 3 | 鹿児島県 | 18万4千戸 | 20.5% | 13.6% |
| 4 | 山梨県 | 8万7千戸 | 20.4% | 8.7% |
| 5 | 高知県 | 7万9千戸 | 20.3% | 12.9% |
| 6 | 長野県 | 20万9千戸 | 20.1% | 8.9% |
| 7 | 愛媛県 | 14万6千戸 | 19.8% | 12.2% |
| 8 | 山口県 | 14万1千戸 | 19.4% | 11.1% |
| 9 | 大分県 | 11万6千戸 | 19.1% | 9.6% |
| 10 | 香川県 | 9万2千戸 | 18.6% | 9.7% |
| 11 | 岩手県 | 10万戸 | 17.3% | 9.3% |
| 11 | 長崎県 | 11万3千戸 | 17.3% | 9.9% |
| 13 | 島根県 | 5万5千戸 | 17.0% | 11.3% |
| 14 | 栃木県 | 16万4千戸 | 16.9% | 6.6% |
| 15 | 青森県 | 9万9千戸 | 16.7% | 9.3% |
| 15 | 群馬県 | 16万1千戸 | 16.7% | 7.6% |
| 15 | 静岡県 | 29万6千戸 | 16.7% | 5.9% |
| 18 | 岡山県 | 15万7千戸 | 16.5% | 8.6% |
| 19 | 三重県 | 14万3千戸 | 16.3% | 9.5% |
| 19 | 宮崎県 | 9万1千戸 | 16.3% | 9.9% |
| 21 | 岐阜県 | 14万8千戸 | 16.1% | 8.1% |
| 22 | 秋田県 | 7万戸 | 15.8% | 10.0% |
| 22 | 広島県 | 23万1千戸 | 15.8% | 7.8% |
| 24 | 鳥取県 | 4万1千戸 | 15.7% | 9.7% |
| 25 | 北海道 | 45万2千戸 | 15.6% | 5.6% |
| 25 | 石川県 | 8万6千戸 | 15.6% | 7.3% |
| 25 | 福井県 | 5万3千戸 | 15.6% | 8.5% |
| 28 | 新潟県 | 15万5千戸 | 15.3% | 7.6% |
| 29 | 福島県 | 13万1千戸 | 15.2% | 7.3% |
| 30 | 熊本県 | 12万7千戸 | 14.9% | 7.6% |
| 31 | 富山県 | 7万戸 | 14.7% | 8.4% |
| 32 | 奈良県 | 9万4千戸 | 14.6% | 7.7% |
| 33 | 佐賀県 | 5万3千戸 | 14.5% | 7.7% |
| 34 | 大阪府 | 70万2千戸 | 14.2% | 4.6% |
| 35 | 茨城県 | 19万6千戸 | 14.1% | 6.7% |
| 36 | 兵庫県 | 38万7千戸 | 13.8% | 6.2% |
| 37 | 山形県 | 6万2千戸 | 13.5% | 7.9% |
| 38 | 京都府 | 18万戸 | 13.1% | 6.2% |
| 39 | 宮城県 | 14万戸 | 12.4% | 4.6% |
| 39 | 福岡県 | 33万5千戸 | 12.4% | 4.6% |
| 41 | 千葉県 | 39万4千戸 | 12.3% | 5.0% |
| 41 | 滋賀県 | 8万2千戸 | 12.3% | 7.3% |
| 43 | 愛知県 | 43万3千戸 | 11.8% | 4.3% |
| 44 | 東京都 | 89万7千戸 | 10.9% | 2.6% |
| 45 | 神奈川県 | 46万7千戸 | 9.8% | 3.2% |
| 46 | 沖縄県 | 6万5千戸 | 9.4% | 4.0% |
| 47 | 埼玉県 | 33万戸 | 9.3% | 3.8% |
(出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」付表 都道府県別の主な指標(2023年)。空き家数・率は2023年10月1日時点。次回調査は2028年(令和10年)に実施予定で、公表後に数値が更新されます)
率でなく実数でみると、大都市圏も他人事ではない
空き家率だけを見ると、空き家問題は地方の話だと感じるかもしれません。しかし、空き家の絶対数(戸数)で並べ直すと、まったく違う顔が見えてきます。総住宅数そのものが多い大都市圏は、空き家率が低くても、空き家の実数では上位に入ってきます。
| 順位 | 都道府県 | 空き家数 | 空き家率 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 東京都 | 89万7千戸 | 10.9% |
| 2位 | 大阪府 | 70万2千戸 | 14.2% |
| 3位 | 神奈川県 | 46万7千戸 | 9.8% |
| 4位 | 北海道 | 45万2千戸 | 15.6% |
| 5位 | 愛知県 | 43万3千戸 | 11.8% |
| 6位 | 千葉県 | 39万4千戸 | 12.3% |
| 7位 | 兵庫県 | 38万7千戸 | 13.8% |
| 8位 | 福岡県 | 33万5千戸 | 12.4% |
| 9位 | 埼玉県 | 33万戸 | 9.3% |
| 10位 | 静岡県 | 29万6千戸 | 16.7% |
(出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」付表をもとに安心実家じまい事務局が実数順に並べ替え)
空き家率が全国最下位の東京都でも、空き家の実数は全国最多の89万7千戸です。空き家率が低いからといって空き家が少ないわけではなく、人口や住宅ストックの規模が大きいぶん、絶対数としては目立たないだけともいえます。実家が首都圏や近畿圏にあり「うちの地域は空き家率が低いから大丈夫」と考えている場合も、地域全体で見れば同じような空き家が数多く存在している、という前提で考えたほうが実情に近いでしょう。
なぜ実家は「空き家」になるのか 空き家所有者実態調査からわかること
空き家の全体像だけでなく「なぜ空き家になるのか」を知ることも、実家の将来を考えるうえで重要です。国土交通省は住宅・土地統計調査で「空き家を所有している」と回答した世帯を対象に、約5年ごとに「空き家所有者実態調査」を実施しています。もっとも新しい令和6年調査の結果は2025年8月29日に公表されました。
空き家の約6割は「相続」で取得したもの
この調査によると、空き家の取得方法は「相続」が57.9%と半数を超え、最多です。次いで「新築・建て替え」17.1%、「既存住宅を購入」14.2%、「新築住宅を購入」4.6%、「贈与」2.3%と続きます。空き家問題の主な入口が、相続であることがあらためて裏付けられた形です。
相続で取得した空き家について、建築時期を見ると「1971〜1980年」26.4%、「1951〜1970年」26.4%、「1950年以前」20.4%と続き、7割超が1980年以前に建てられた住宅です。築45年以上の住宅が中心となるため、老朽化の進み具合も気になるところです。実際、腐朽・破損の程度を尋ねた設問では「室内外に部分的な腐朽・破損あり」が47.1%、「構造上の不具合あり」が21.2%、「室内外に全体的な腐朽・破損あり」が3.5%となっており、あわせて7割超に何らかの傷みが見られます。「構造上の不具合や腐朽・破損なし」と回答した割合は28.2%にとどまります。
相続空き家が生まれるきっかけ(発生原因)としては「死亡」が58.3%と突出して多く、「転居」26.9%、「老人ホームなどの施設へ入居」11.3%が続きます。親が施設に入るか亡くなるかしたタイミングで実家が空き家になり、そのまま相続されるという流れが典型的だとわかります。
相続前に対策していた世帯はわずか23.0%
相続空き家について「相続前に何らかの対策を実施していたか」を尋ねた設問では、「対策あり」が23.0%、「対策なし」が77.0%でした。対策の内容としては「被相続人との話し合い」16.7%が最も多く、「その他の対策」4.3%、「遺言の作成支援」1.8%、「後見制度や家族信託の活用」1.3%と続きます。全体の8割近い世帯が、相続が発生する前には何も手を付けていなかったことになります。
この差は、相続後の空き家の扱いにも表れています。国土交通省の報告によれば、相続前に対策を実施していなかった空き家は、対策を実施していた空き家と比べて「何もせずにそのまま空き家として所有され続けている」割合が約1.5倍にのぼるとされています。生前に方針を話し合っておくかどうかが、その後の空き家化を左右しているといえます。
今後の意向 4割は「所有継続」、4割弱は「除却・売却」
今後の利用意向を種類別に見ると、賃貸にも売却にも出していない「使用目的のない空き家」の所有世帯では、「空き家として所有しておく(物置を含む)」が40.6%と最も多く、次いで「除却する」19.2%、「売却する」18.3%です。除却と売却を合わせると37.5%となり、4割弱の世帯が家を手放す方向を考えている一方で、4割強はいまのまま持ち続ける意向であることがわかります。直近1年間の状況を見ると、この種類の空き家のうち85.2%は依然として空き家のままで、解消(空き家でなくなること)に至ったのは14.8%にとどまります。解消の理由としては「除却した」22.7%、「貸した」「所有者や親族が居住した」がそれぞれ15.5%でした。
空き家の種類によって「その後」は大きく違う
同じ空き家所有者実態調査では、空き家の種類(使用目的のない空き家・二次的住宅/別荘・貸家用・売却用)ごとに、直近1年間で空き家が解消された割合と、今後の利用意向を尋ねています。種類によって傾向がはっきり分かれる結果となりました。
| 空き家の種類 | 直近1年間で空き家のまま | 今後の意向で最も多い回答 |
|---|---|---|
| 使用目的のない空き家 | 85.2% | 空き家として所有しておく 40.6% |
| 二次的住宅・別荘用の空き家 | 84.6% | 別荘・セカンドハウスとして利用 47.2% |
| 貸家用の空き家 | 66.9% | 賃貸する 34.6% |
| 売却用の空き家 | 68.6% | 売却する 70.4% |
(出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査 結果のポイント」2025年8月29日公表)
売却用・貸家用の空き家は、もともと市場に出す前提のため1年以内に3割前後が実際に動いています。一方で「使用目的のない空き家」と「二次的住宅」は8割超が1年経っても動きがなく、今後の意向でも「そのまま所有」が最多です。実家がこの「使用目的のない空き家」に分類される状態、つまり売るとも貸すとも決めていない状態のまま長期化しやすいことが、統計の面からも裏付けられています。方針を決めないまま持ち続けるほど、動かすタイミングを失いやすくなるといえます。
逆にいえば、「売却する」「除却する」という方針さえ決まれば、空き家は動き出す可能性が高いということでもあります。売却用の空き家の70.4%が「売却する」意向を持ち、実際に直近1年で3割超が売却などにより空き家でなくなっているのは、方針が明確な空き家ほど早く動く、という自然な結果です。実家についても、家財の整理と並行して「所有し続けるのか」「手放すのか」の方針を早めに定めることが、その後の展開を左右する分かれ目になります。
(出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査 結果のポイント」2025年8月29日公表。調査は令和5年住宅・土地統計調査で「空き家を所有している」と回答した世帯から抽出した約1万3千世帯を対象に実施)
空き家を放置するとどうなるか 法制度と固定資産税のリスク
空き家対策の根拠となる法律が「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家法・平成26年制定)です。倒壊の危険性が高いなど周囲に著しく悪影響を及ぼす空き家を、市区町村が「特定空家等」に指定し、指導や勧告など所有者に改善を求める対応や、それでも放置される場合に強制的に取り壊すといった対応が行われてきました。2023年(令和5年)にはこの法律が改正され、適切に管理されていない、いわば「特定空家の予備軍」にあたる空き家も「管理不全空家」として指導などの対象に加わりました(出典:国土交通省「空き家対策特設サイト 空家法とは」)。
この改正でとくに実務上の影響が大きいのが、固定資産税の住宅用地特例との関係です。一般の住宅が建つ土地には「住宅用地特例」が適用され、200平方メートル以下の部分(小規模住宅用地)は課税標準が1/6に、それを超える部分(一般住宅用地)は1/3に軽減されます。しかし「特定空家等」や「管理不全空家」に指定され、市区町村の指導に従わず勧告を受けると、この軽減措置が受けられなくなります。更地と同じ評価に近づくため、土地の固定資産税が実質的に増える可能性がある、という仕組みです(出典:国土交通省「空き家対策特設サイト 空家法とは」)。
放置期間が長くなるほど、老朽化や損傷は進みます。前章で見たとおり、相続空き家の7割超にはすでに何らかの腐朽・破損が見られます。国土交通省も「空き家は放置される期間が長くなればなるほど、老朽化や損傷が進み、売買や賃貸などが難しくなってしまう」としており、住まいが不要になった時点で早めに「しまう(除却)」「活かす(活用)」のどちらかを検討することを呼びかけています。
あわせて押さえておきたいのが、相続登記の義務化です。2024年4月から相続による不動産の名義変更(相続登記)が義務化されており、正当な理由なく放置すると過料の対象になり得ます。名義が先代や先々代のままだと、売却も解体の契約もそのままでは進められません。空き家の今後を検討する際は、家財の整理と並行して、登記が誰の名義になっているかを早い段階で確認しておくことをおすすめします。
実家を売却するときに使える税制優遇(空き家の3,000万円特別控除)
相続した実家を早めに売却する場合、税負担を抑えられる制度もあわせて知っておくと判断の材料になります。国土交通省と国税庁が案内している「空き家の発生を抑制するための特例措置」(通称:相続空き家の3,000万円特別控除)は、被相続人が住んでいた家屋とその敷地を相続した人が、一定の要件を満たして売却した場合に、譲渡所得から最高3,000万円を特別控除できる制度です。ただし2024年(令和6年)1月1日以後の譲渡で、被相続人居住用家屋等を取得した相続人が3人以上いる場合は、控除額の上限が2,000万円になります。実家を複数のきょうだいで相続したケースでは、この上限額の違いに注意が必要です。
主な要件は次のとおりです。相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること。売却代金が1億円以下であること。被相続人が相続開始の直前までその家屋に居住していたこと(老人ホーム等に入居していた場合も、一定の要件を満たせば対象になります)。旧耐震基準(昭和56年5月31日以前に建築)の家屋は、耐震改修工事をして売却するか、取り壊して更地として売却することが必要です。2024年(令和6年)1月1日以降の譲渡分からは、売却後、譲渡の年の翌年2月15日までに耐震改修または取り壊しを行った場合も対象に加わりました。要件はこのほかにも細かく定められているため、対象になるかどうかは個別に確認が必要です。
この特例措置は令和5年度税制改正で適用期限が延長され、2027年(令和9年)12月31日までの譲渡が対象です。期限や要件は税制改正によって今後も変わる可能性があるため、実際に適用を検討する際は、国税庁または国土交通省の最新情報で確認するか、税理士に相談することをおすすめします(出典:国土交通省「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)」)。
相続した実家を「とりあえず所有しておく」か「早めに売却する」かによって、使える制度が変わってきます。前章で見たとおり、相続前に対策をしていなかった空き家は所有し続けられる傾向が強く出ています。売却という選択肢を検討する場合は、期限のある制度であることも踏まえて、早めに情報を集めておくとよいでしょう。
空き家を「活かす」ための選択肢もある
実家じまいというと解体や売却をイメージしがちですが、国土交通省は解体・売却以外にも、空き家を活かす複数の選択肢を紹介しています。売る・貸す・処分するのいずれにも決めかねている場合、どのような制度があるかを知っておくと判断の幅が広がります。
| 選択肢 | 内容 |
|---|---|
| インスペクションの活用 | 専門家に建物現況調査をしてもらい、売却後のトラブル回避や、修繕・リフォームの要否を判断する材料にする |
| 空き家バンクへの登録 | 自治体が運営する「空き家バンク」に登録し、購入・賃借を希望する人とのマッチングを図る |
| 住宅セーフティネット制度 | 高齢者や低額所得者など、住まい探しに困っている人向けに、入居を拒まない住宅として貸し出す |
| マイホーム借上げ制度 | 専門機関に借り上げてもらい、居住用住宅として転貸してもらう |
| サブリース事業者への賃貸 | 賃貸事業用の住宅として、転貸を行う民間事業者に貸し出す |
| リバースモーゲージ(空き家になる前) | 住まいを担保に融資を受け、死亡時に売却して一括返済する仕組み。生前に自宅に住み続けながら将来の処分を計画できる |
(出典:国土交通省「空き家等対策の推進に関する特別措置法 特設サイト」空き家を売る・貸す際に活用できる制度)
いずれの制度も、まずは実家がある市区町村や不動産事業者への相談が入り口になります。制度の対象条件や運用は自治体によって異なるため、活用を検討する場合は、実家のある自治体の空き家相談窓口に問い合わせてみることをおすすめします。
実家を「その他空き家」にしないためにできること
国土交通省の呼びかけと、これまでの統計から見えてきた傾向を踏まえると、実家の空き家化を防ぐ、あるいは早期に方針を決めるためのポイントは次の3つに整理できます。
| やること | 具体的な内容 | 目安のタイミング |
|---|---|---|
| 家族で話し合う | 「誰が住むか」「解体するか」「売るか」「貸すか」を、親が元気なうちから話し合っておく | 親が実家に住んでいるうち、または施設入居のタイミング |
| 登記を確認する | 名義人が誰になっているか、相続人が把握できているかを確認し、必要なら早めに相続登記を進める | 相続が発生した直後、または発生前の生前整理の段階 |
| 家財を整理する | 活用するにも売却・解体するにも、家財が片付いていないと話が進まない。少しずつでも整理を始める | 方針が固まる前から、できる範囲で並行して |
| 専門家・窓口に相談する | 自治体の空き家相談窓口、司法書士、片付け・解体の専門業者など、状況に応じた相談先を早めに知っておく | 話し合いや登記確認と同時並行で |
(出典:国土交通省「空き家対策特設サイト」の呼びかけ内容をもとに安心実家じまい事務局が整理)
このうち「家財を整理する」は、遠方に住んでいたり仕事で時間が取れなかったりすると、後回しになりがちな作業です。相続前の対策を実施していた世帯が23.0%にとどまっていた背景にも、話し合いや登記の確認以前に、実家に眠る大量の家財をどう扱えばよいかわからず、結局手を付けられないまま時間が過ぎてしまうケースが少なくないと考えられます。家財の量が多い、遠方で頻繁に通えない、仏壇や写真など思い出の品の扱いに迷うといった事情がある場合は、片付けの専門業者に写真を送って概算を確認するところから始めると、次の一歩に進みやすくなります。
実家じまいの具体的な進め方は実家じまいの完全ガイドで、費用の相場は実家じまいの費用相場で、手続きの手順は実家じまいの手順で詳しく解説しています。方針がまだ固まっていない段階でも、家財整理から売却・解体の手配までを一つの窓口に相談することができます。
実家じまいのサービス案内
安心実家じまいは、家財の片付けから家の売却・解体の手配までを一つの窓口でお受けする全国対応のサービスです。「相続はしたが、まだ何も手を付けられていない」「実家をどうするか、家族の意見がまとまっていない」といった、方針が固まる前の段階からのご相談にも対応しています。
片付けのみのご依頼は遺品整理サービスで、家の処分まで含めてまとめて進めたい場合は実家じまい代行パックで承ります。写真を送っていただくだけで概算のお見積もりをご案内できるため、実家が遠方にある場合や、現地に何があるかをまだ十分に把握できていない場合でも、まずは状況を整理するところから相談を始めていただけます。相続登記など法律手続きが絡む場合は、提携司法書士と連携して進めます。空き家バンクへの登録や解体補助金の活用など、片付け以外の選択肢を検討したい場合も、状況に応じて自治体の窓口や提携先をご案内しています。
よくある質問
全国の空き家は何戸ありますか?空き家率はどれくらいですか?
空き家率が最も高い都道府県はどこですか?
実家が空き家になりそうなとき、まず何をすればいいですか?
実家を売却するときに使える税金の特例はありますか?
まとめ
全国の空き家統計を振り返ると、次のことが見えてきます。
- 全国の空き家は900万2千戸、空き家率13.8%で過去最多・過去最高(総務省「令和5年住宅・土地統計調査」確報値)
- 賃貸・売却にも出ていない「その他空き家」は385万6千戸で、20年間で約1.8倍に増加
- 空き家率が高いのは徳島・和歌山・鹿児島・山梨・高知など地方圏、低いのは埼玉・沖縄・神奈川・東京
- 空き家所有者の約6割は相続がきっかけで、うち約6割は所有者の死亡が発端(国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」)
- 相続前に対策していた世帯はわずか23.0%。対策なしの空き家は放置され続ける割合が約1.5倍
- 放置すると「管理不全空家」等に指定され、固定資産税の住宅用地特例(最大1/6)が受けられなくなることがある
- 2024年4月から相続登記が義務化。名義の確認は早めに進めておく
- 実家を空き家にしないためには、家族での話し合い・登記の確認・家財整理を早めに進めることが有効
数字だけを見ると、空き家問題は遠い社会課題のように感じられるかもしれません。しかし今回取り上げた統計の背景には、親の死亡や施設入居をきっかけに実家を相続し、方針を決めないまま時間が過ぎていく、という一つひとつの家庭の事情が積み重なっています。相続前に対策をしていた世帯が23.0%にとどまっているという事実は、裏を返せば、早めに動き出すだけで多くの家庭がまだ手を付けていない一歩を先に進められるということでもあります。
次回の住宅・土地統計調査は2028年(令和10年)に実施される予定です。今回ご紹介した数値は、次回調査の結果が公表されるまでの最新値にあたりますが、税制や補助金の制度は毎年のように見直されるため、実際に手続きを進める際は、自治体や国税庁の最新情報をあわせてご確認ください。実家の状況を一度整理してみたい方は、実家じまいの完全ガイドもあわせてご覧ください。
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