
久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士
東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。
■経歴
- 1966年鹿児島県生まれ
- 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
- 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
- 2013年司法書士試験合格
- 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
- 2017年司法書士法人コスモ退職
- 2018年事務所開設
- 2021年司法書士法人設立
■得意領域
- 相続登記・相続手続き
- 不動産の名義変更
- 相続放棄
- 簡易裁判所の訴訟代理
この記事の結論
- 高齢者向けの自治体ごみ出し支援制度(通称「ふれあい収集」など)は、全国34.8%の市区町村が導入しています(令和2年度・環境省調査)。制度名・対象要件・収集頻度・費用は自治体ごとに異なります。
- 制度は大きく直接支援型(直営・委託)/コミュニティ支援型/福祉サービスの一環型の4タイプに分かれ、財源には総務省の特別交付税措置が使われています。
- 世田谷区・横浜市・大阪市・名古屋市・札幌市・京都市・さいたま市の7市区を自治体公式サイトから独自に比較すると、「65歳以上ひとり暮らし+要介護・要支援」を軸にしつつ、収集頻度や粗大ごみの扱いに差があります。
- 制度がない・対象外の場合も、介護保険の訪問介護やごみの自力処分など代わりの選択肢があります。
- ごみ出しが負担になり始めるタイミングは、生前整理や将来の実家じまいを考え始める合図でもあります。
高齢者のごみ出し支援制度とは?全国の導入状況
自治体のごみ出し支援制度は、家庭ごみを自分でごみ集積所まで持ち出せない高齢者や障害のある方を対象に、市区町村の職員や委託業者が玄関先まで収集にうかがう仕組みです。核家族化が進み、高齢者だけの世帯や一人暮らし高齢者が増えたことを背景に、平成11年(1999年)以降、本格的な導入が広がってきました。呼び名は自治体ごとに異なり、「ふれあい収集」(横浜市・大阪市・さいたま市など)、「なごやか収集」(名古屋市)、「さわやか収集」(札幌市)、「まごころ収集」(京都市)、「高齢者等訪問収集」(世田谷区)など、名称だけを見ても地域色があります。
全国の導入率は34.8%(環境省・令和2年度調査)
環境省が2021年3月に公表した「高齢者ごみ出し支援制度導入の手引き」によると、令和3年1月現在、全国の地方公共団体のうち34.8%(417団体)が高齢者ごみ出し支援制度を導入しています。平成30年度の調査時点では23.5%(387団体)だったため、2年ほどの間に導入率が10ポイント以上伸びたことになります(2026年8月時点・環境省公式サイト掲載の手引きより)。裏を返せば、全国のおよそ3分の2の自治体では、この種の制度がまだ整っていません。実家がある市区町村に制度があるかどうかは、地域によって差が大きい点をまず押さえておく必要があります。
制度を支えるお金の仕組み——総務省の特別交付税措置
制度の広がりを後押ししているのが、総務省による財政支援です。令和元年度の特別交付税(3月分)の算定から、「高齢者等世帯に対するごみ出し支援」という項目が新たに設けられ、所定の経費について措置率0.5での特別交付税措置が講じられるようになりました(2026年8月時点・環境省の手引きに掲載の総務省資料より)。自治体側の財政負担が一定程度国によって補填される仕組みができたことで、新規導入や制度拡充を検討しやすくなっています。京都市が2026年度に「まごころ収集」の対象拡充に向けた社会実験を行っているのも、こうした流れの一例です。
主担当部局は「ごみ」の部署が7割
制度の運営主体は、廃棄物部局(ごみ・リサイクル担当課)が73.0%、福祉部局が21.5%となっています(平成30年度・環境省アンケート調査より)。ごみ収集の実務を担う部署が主導する自治体が多い一方、高齢者福祉の一環として位置づけている自治体もあり、どちらの部局が窓口になるかは自治体によって異なります。問い合わせ先が分からない場合は、まず環境局・清掃事務所へ、次に高齢福祉課や地域包括支援センターへ、という順で確認すると効率的です。
【独自集計】制度の4タイプと主要7市区の比較
ここからは、環境省の手引きが整理する制度の4タイプと、実際に自治体公式サイトを確認して集計した主要7市区の内容を紹介します。自治体名だけを見ても中身は分からないため、対象要件・収集頻度・費用まで具体的に比較することが実家の状況を判断する助けになります。
まず知っておきたい4つの制度タイプ
環境省の手引きでは、高齢者ごみ出し支援制度を運営主体の違いから4タイプに分類しています。同じ「ごみ出し支援」でも、誰が収集に来るか、どこまで運んでもらえるかが変わります。
| タイプ | 運営主体・支援者 | 特徴 |
|---|---|---|
| 直接支援型(直営) | 市区町村の職員 | 自治体職員が玄関先等から清掃センターまで直接収集。要件は自治体ごとに設定 |
| 直接支援型(委託) | 自治体から委託された事業者 | 収集運搬を業者に委託。範囲や要件は直営型とほぼ同様 |
| コミュニティ支援型 | 自治会・NPO等の登録支援団体 | 自治体が支援団体に補助金等を交付。運搬先は玄関前〜集積所までが中心 |
| 福祉サービスの一環型 | 福祉部局・ホームヘルパー等 | 訪問介護等の生活支援の一部として実施。清掃センターまでの運搬は原則対象外 |
(2026年8月時点・環境省「高齢者ごみ出し支援制度導入の手引き」より)どのタイプかによって、費用の出どころや申し込み窓口が変わります。直接支援型は自治体の清掃部門、福祉サービスの一環型はケアマネジャーやホームヘルパーが窓口になりやすい傾向があります。
主要7市区の対象要件・収集頻度・費用を比較
安心実家じまい事務局で、政令指定都市・特別区・県庁所在地クラスの自治体公式サイトを個別に確認し、対象要件・収集頻度・費用・安否確認の有無をまとめました。実家がこれらの市区にある場合の参考にしてください。実家が下記以外の市区町村にある場合も、同様の項目を自治体公式サイトで確認する際のチェック項目としてお使いいただけます。
| 自治体・制度名 | 主な対象要件 | 収集頻度・範囲 | 費用 | 安否確認 |
|---|---|---|---|---|
| 世田谷区 高齢者等訪問収集 |
65歳以上ひとり暮らし高齢者等(要介護2以上)/ひとり暮らし障害者等/特に必要と認めた世帯 | 管轄清掃事務所が個別案内 | 案内なし(要問合せ) | あり(1週間程度ごみが出ない場合等) |
| 横浜市 ふれあい収集 |
障害者手帳等の交付者/要介護(要支援)認定者/ごみ出し困難な65歳以上のひとり暮らし | 週1回、玄関先等 | 案内なし(要問合せ) | 案内なし |
| 大阪市 ふれあい収集 |
65歳以上ひとり暮らし高齢者・高齢者のみ世帯/障がいのある方が居住する世帯 | 普通ごみ〜粗大ごみまで対応 | 無料(粗大ごみは別途処理手数料) | あり(希望制の通報サービス) |
| 名古屋市 なごやか収集 |
65歳以上/要介護・要支援認定/各種障害者手帳所持者のみで構成される世帯 | 可燃・不燃・粗大ごみ・資源等、条件付きで屋内収集も | 案内なし(要問合せ) | 案内なし |
| 札幌市 さわやか収集 |
要介護2以上または障害支援区分3以上等、3要件のいずれかに世帯全員が該当 | 生活ごみ週1回・大型ごみは一度に3点まで | 案内なし(要問合せ) | あり(希望者に毎回声かけ) |
| 京都市 まごころ収集(社会実験実施中) |
ごみ出しが困難な高齢者・障害のある方等 | 各まち美化事務所が個別案内 | 案内なし(要問合せ) | あり(ごみが出ない場合に登録先へ連絡) |
| さいたま市 ふれあい収集 |
65歳以上ひとり暮らし高齢者(要介護等)/ひとり暮らし障害者等 | 原則週1回、玄関先収集。家電リサイクル法対象品・粗大ごみは対象外 | 案内なし(要問合せ) | 案内なし |
(2026年8月時点・各市区公式サイトより。世田谷区は2025年1月23日更新、横浜市は2025年8月19日更新、大阪市は2026年4月1日更新、名古屋市は2025年10月17日更新、札幌市は2026年4月1日更新、京都市は2026年7月24日更新、さいたま市は2026年1月1日更新の内容を確認)表中「案内なし」は、公式サイトの該当ページに費用や安否確認に関する明記がなかったことを示します。実際の運用は変わることがあるため、申し込み前に各自治体の窓口で最新情報を確認してください。
比較して分かるのは、「65歳以上のひとり暮らし」を対象の柱にしている自治体が多い一方、要介護度や障害者手帳の有無を条件に加えるかどうか、同居家族がいる場合の扱いをどうするかは自治体ごとに違うということです。さいたま市のように、家電リサイクル法の対象品目(冷蔵庫・冷凍庫・洗濯機・エアコン・テレビ)や粗大ごみを制度の対象外と明記している自治体もあれば、大阪市のように粗大ごみまで対応する(ただし処理手数料は別途必要)自治体もあります。実家の状況に合わせて、対象品目まで確認しておくと申請後の行き違いを防げます。
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申請前に確認しておきたいチェックリスト
電話や窓口で問い合わせる前に、次の項目を整理しておくと、やり取りがスムーズになります。実家の状況をまとめたメモとして、印刷してお使いください。
| 確認項目 | ポイント |
|---|---|
| 制度の有無 | 「(市区町村名) ごみ出し支援」で自治体公式サイトを検索。見当たらない場合は環境局・清掃事務所へ電話 |
| 対象要件 | 年齢・要介護(要支援)度・障害者手帳の有無・同居家族の状況を確認 |
| 同居家族の扱い | 同居者がいる場合、同居者も高齢や障害等で持ち出しが困難であることが条件になる自治体が多い |
| 収集頻度・対象品目 | 週1回が目安だが、可燃ごみのみか、資源ごみ・粗大ごみまで含むかは自治体差が大きい |
| 家電リサイクル法対象品 | 冷蔵庫・洗濯機・エアコン・テレビは制度の対象外になることが多い。別途の処分方法を確認 |
| 費用 | 無料が基本だが、粗大ごみは別途処理手数料が必要な自治体がある |
| 安否確認の希望 | 声かけによる安否確認を実施するか、希望制かどうかを確認 |
| 申込方法・代理申請 | 電話・窓口・電子申請のいずれか、本人以外(家族・ケアマネジャー)でも申請できるか |
| 開始までの流れ | 多くの制度で職員による自宅訪問・要件確認があり、即日開始ではない |
申し込み後は、多くの自治体で職員が自宅を訪問し、要介護認定の状況や世帯構成、ごみを持ち出せない具体的な理由を確認したうえで、支援の可否や開始日が決まります。地域によっては、近隣に支援可能なボランティアや自治会がいないかを先に確認する自治体もあります(コミュニティ支援型の場合)。訪問調査から開始までに数週間かかることもあるため、ごみ出しが難しくなってきたと感じた時点で、早めに相談しておくと安心です。
制度が使えない・対象外のときの代替手段
年齢や要介護度の要件を満たさない、実家の自治体に制度自体がない、といったケースも珍しくありません。その場合に検討できる代替手段を整理します。
介護保険の訪問介護(生活援助)を使う
要介護認定を受けている場合、介護保険の訪問介護(生活援助)の一環として、ホームヘルパーがごみ出しを手伝ってくれることがあります。ごみ出し支援制度の対象外でも、介護保険サービスの範囲でカバーできる場合があるため、担当のケアマネジャーに相談してみる価値があります。要支援認定の場合は、介護予防・日常生活支援総合事業の「訪問型サービス」が該当することもあるため、あわせて確認しておくとよいでしょう。
粗大ごみの持ち込み・自力処分を組み合わせる
制度の対象が可燃ごみ・不燃ごみに限られ、粗大ごみが対象外の自治体は少なくありません。粗大ごみについては、自治体の粗大ごみ受付センターに事前申込みのうえ、収集や持ち込みを利用する方法が基本になります。物量が多く自力での搬出が難しい場合は、遺品整理・生前整理の専門業者に依頼したほうが、結果的に負担が少ないこともあります。料金の考え方は遺品整理の料金相場を間取り別に解説で紹介しています。
地域包括支援センターに相談する
制度の有無がよく分からない、どの窓口に聞けばよいか分からないという場合は、お住まいの地域を担当する地域包括支援センターに相談する方法もあります。介護・福祉に関する総合相談窓口として、ごみ出し支援を含む生活支援サービスの案内を受けられることがあります。市区町村の高齢福祉課に問い合わせれば、担当のセンターを教えてもらえます。
ケース別に見る「うちの場合はどうする?」
実際の相談でよくある状況を4つのパターンに分けて、対応の考え方を整理しました。
ケース1:実家で一人暮らしの母(78歳・要支援1)が「ごみ出しがつらい」と言い始めた
要支援・要介護の認定を受けていれば、多くの自治体の制度で対象になりうる段階です。まずは母の住む市区町村の環境局・清掃事務所に電話し、対象要件と申込方法を確認します。あわせてケアマネジャーがいる場合は、訪問介護(生活援助)でごみ出しをカバーできないかも聞いておくと、選択肢を比較できます。
ケース2:認知症の父(要介護3)が分別できずに近隣とトラブルになっている
分別の間違いが続くと、集積所の管理をする自治会や近隣とのトラブルに発展しやすくなります。要介護3であれば制度の対象要件を満たす自治体が多いため、早めの申請が有効です。制度によっては、収集員が分別状況を確認したうえで、声かけの頻度や収集方法を調整してくれる場合もあります。あわせて、地域包括支援センターやケアマネジャーに近隣トラブルの状況を共有しておくと、他の生活支援サービスの利用にもつながりやすくなります。
ケース3:施設入所が決まり、実家を空ける。数か月後に本格的な片付けを控えている
ごみ出し支援制度は、あくまで自宅で生活する方を対象にした制度です。施設入所後は利用対象から外れるため、入所が決まった時点で自治体への辞退の届出が必要になる自治体もあります(京都市の「まごころ収集」には終了届の様式があります)。空き家になった実家の片付けは、遺品整理とは異なる「生前整理」に当たります。全体の進め方は遺品整理とは?いつから・費用・捨ててはいけないもので解説している内容が参考になります。
ケース4:遠方に住む子どもが代理で申請したい
名古屋市の「なごやか収集」のように、希望者本人が申し込めない場合は代理の方でも申請できると明記している自治体があります。ほかの自治体でも、ケアマネジャーやホームヘルパー、同居家族が窓口となって手続きするケースは珍しくありません。ただし、申請後の自宅訪問には基本的に本人(または立会人)の在宅が必要になるため、訪問日程の調整は帰省のタイミングと合わせて計画しておくとスムーズです。
ごみ出し支援を使い始めたら見えてくること
ごみ出し支援制度の申請をきっかけに実家を訪ねると、玄関先や庭先に想定より多くの物が溜まっていることに気づく家族が少なくありません。ごみを集積所まで運べなくなっているということは、収納の整理や不要品の処分そのものも、本人にとって難しくなり始めているサインである場合が多いためです。ごみ出しの負担だけでなく、家の中の片付け全般が滞っていないか、帰省の際にあわせて確認しておくことをおすすめします。
ごみ出し支援制度は、あくまで日々の生活ごみを対象にした仕組みで、家財の整理や不要品の大量処分までは対象になりません。物量が多く自分たちだけでは片付けきれない場合や、将来的な実家じまいを見据えて生前整理を進めたい場合は、専門の業者に相談する選択肢があります。安心実家じまいでは、生前整理から遺品整理、家の売却・解体の手配まで、状況に応じたご相談を承っています。サービスの詳細は遺品整理サービスのページをご覧ください。
よくある質問
自治体のごみ出し支援制度とはどんな制度ですか?
自分の住む自治体に制度があるか、どうやって確認しますか?
家族が代理で申請できますか?
ごみ出し支援制度と遺品整理・実家じまいはどう関係しますか?
まとめ
自治体のごみ出し支援制度は、高齢の親が実家で暮らし続けるための身近なセーフティネットです。要点を振り返ります。
- 全国34.8%の市区町村が高齢者ごみ出し支援制度を導入(令和2年度・環境省調査、平成30年度の23.5%から増加)
- 制度は直接支援型(直営・委託)/コミュニティ支援型/福祉サービスの一環型の4タイプに分かれる
- 世田谷区・横浜市・大阪市・名古屋市・札幌市・京都市・さいたま市を比較すると、対象要件・収集頻度・粗大ごみの扱いに差がある
- 家電リサイクル法対象品目(冷蔵庫・洗濯機・エアコン・テレビ)や粗大ごみは、制度の対象外になっている自治体が多い
- 制度が使えない場合は、介護保険の訪問介護や地域包括支援センターへの相談も選択肢になる
- ごみ出しが負担になり始めた実家は、生前整理や将来の実家じまいを考え始める合図でもある
実家がある市区町村に制度があるかどうかは、まず自治体公式サイトか環境局・清掃事務所への電話で確認するのが近道です。制度の内容は年度ごとに見直されることがあるため、この記事の比較表はあくまで確認時点(2026年8月)の目安とし、申請前には最新情報を各自治体でご確認ください。ごみ出し支援だけではまかないきれない片付けや、実家じまい全体の進め方については、遺品整理の完全ガイドもあわせてご覧ください。
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