
久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士
東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。
■経歴
- 1966年鹿児島県生まれ
- 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
- 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
- 2013年司法書士試験合格
- 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
- 2017年司法書士法人コスモ退職
- 2018年事務所開設
- 2021年司法書士法人設立
■得意領域
- 相続登記・相続手続き
- 不動産の名義変更
- 相続放棄
- 簡易裁判所の訴訟代理
この記事の結論
- 空き家は「住宅物件」向けの通常の火災保険に入れないことが多く、多くの場合は「一般物件」向けの保険に切り替える必要があります。一般物件は住宅物件より保険料が高くなる傾向にあるため注意してください。
- 別荘のように季節的に使用し家財を常備している空き家や、転勤等で一時的に無人になっている空き家は、条件を満たせば住宅物件として契約を続けられる場合があります。
- 実家が空き家になったら、火災保険会社への「用途変更」の届出が欠かせません。届け出ずに放置すると、事故が起きたときに保険金が支払われないことがあります。
- 相続した実家の火災保険は、名義変更の手続きと解約返戻金の相続税評価を確認しておく必要があります。
空き家でも火災保険に入れるのか
火災保険は、契約の対象となる建物を大きく「住宅物件」と「一般物件」の2つに区分しています。住宅物件は人が居住していることを前提にした個人向けの分類で、割引制度が充実している一方、一般物件は店舗・事務所など事業用の建物を想定した企業向けの分類です。人が住んでいない空き家は、多くの保険会社でこの一般物件として扱われるため、住居として使われている家と同じ条件では契約できません。まずはこの2区分の違いを正しく理解しておくことが、空き家の火災保険を検討する出発点になります。
「住宅物件」と「一般物件」の違い
両者の違いを整理すると、次の表のようになります。空き家の火災保険を調べるときに混同しやすいポイントなので、契約前に確認しておくと判断がスムーズです。
| 項目 | 住宅物件 | 一般物件 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 居住用の戸建て・マンション | 店舗・事務所・空き家等の非居住用建物 |
| 保険料の傾向 | 比較的安く、各種割引が使える | 住宅物件より割高になりやすい |
| 地震保険のセット | 可能 | 原則として対象外 |
| 空き家での契約 | 条件を満たす場合のみ可能 | 多くの空き家が対象になる |
| 主な契約先 | 個人向け火災保険の各商品 | 企業向け・事業用の火災保険商品 |
つまり、空き家だからといって火災保険にまったく入れないわけではありませんが、住宅物件と同じ保険料・同じ補償内容では契約できないケースが多いということです。加入できるかどうか、いくらになるかは、空き家の使い方や管理状態によって変わります。
空き家でも住宅物件として契約できるケース
すべての空き家が一律に一般物件へ回されるわけではありません。保険会社によって基準は異なりますが、一般的に次のような使い方であれば、住宅物件として火災保険に加入できる場合があります。
- 別荘やセカンドハウスとして季節的に使用している——年に数回でも定期的に使用し、家財が備え付けられている場合。
- 転勤等の事情で一時的に不在になっている——将来的に戻って住む前提があり、管理が続けられている場合。
- 将来的に居住予定があり、適切に管理されている——リフォーム待ちなど、一時的な無人期間である場合。
一方で、居住や活用の予定が一切なく、長期間放置されている「完全な空き家」は、住宅物件としての引受けが難しくなります。実家を相続したものの誰も住む予定がない、というケースはこちらに当てはまりやすい点に注意してください。
火災保険への加入を断られやすい空き家の特徴
一般物件としても、状態によっては契約自体を断られることがあります。主なケースは次のとおりです。
- 屋根や外壁が崩れているなど、老朽化が著しい建物
- 長期間にわたって管理されず放置されている建物
- 施錠されていない、フェンスがないなど防犯対策が不十分な建物
- 居住実績も今後の利用予定もまったくない建物
裏を返せば、定期的な巡回・清掃・簡単な補修を続けているだけでも、保険会社から見た印象は変わり、契約できる選択肢が広がります。実家が空き家になった段階で、片付けと並行して最低限の管理を続けることには、保険加入の観点からも意味があります。
用途変更の届出を怠るとどうなるか
火災保険の契約は、契約時に申告した用途や使用状況を前提に保険料が計算されています。保険法では、契約後に保険事故が起こる可能性が著しく高まった場合、契約者は保険会社へ遅滞なく通知する義務を負うとされており、居住用として使われていた家が空き家になることは、この危険増加にあたると考えられます。通知を怠ったまま保険会社が把握していない状態が続くと、事故が起きた際に「告知・通知義務違反」として契約が解除されたり、保険金の支払いが制限されたりする可能性があります。保険料を払い続けていても補償を受けられないという事態は避けたいところですので、実家が空き家になったタイミングで、契約している保険会社または代理店へ早めに連絡してください。
空き家に火災保険が必要な理由
「誰も住んでいないのだから、火事の心配は少ないのでは」と考える方もいますが、実際には空き家だからこそ高まるリスクがあります。総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」によると、2023年時点で全国の空き家は約900万戸、総住宅数に占める空き家率は13.8%で、いずれも過去最高となりました(2026年8月時点・総務省統計局公表資料より)。空き家が全国的に増え続けている以上、火災保険を検討する意義も年々高まっているといえます。
空き家特有のリスクは、大きく次の4つに整理できます。
- 放火・不審火のリスク——人の出入りがない空き家は防犯性が低く、放火犯や不審者に狙われやすい傾向があります。総務省消防庁「令和6年版消防白書」によると、2023年には放火および放火の疑いによる火災が全国で約4,000件発生しています(住宅に限定した数値ではありませんが、無人の建物ほど発見が遅れ被害が拡大しやすい点は共通の課題です。2026年8月時点・総務省消防庁公表資料より)。
- 漏電・老朽化による出火のリスク——電気配線の劣化や水濡れによる漏電、ネズミが配線をかじることで生じるショートなど、無人でも起こり得る火災原因があります。
- 自然災害による損害拡大のリスク——台風で屋根瓦が飛ぶ、豪雨で床上浸水するといった被害に、住んでいないためすぐ気づけず対応が遅れがちです。
- 損害賠償責任のリスク——空き家の火災や倒壊で近隣に被害を与えると、所有者が損害賠償責任を負う可能性があります。老朽化した建物の解体・処分費用は建物の規模や構造によって数十万円〜数百万円規模まで幅があり、正確な金額は複数の解体業者から見積もりを取って確認する必要があります。
さらに、空き家を管理不十分なまま放置すると、自治体から「特定空家等」に指定される可能性があります。指定後に改善の勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例が解除され、税額が最大6倍に増える場合があります。命令に従わないと空家等対策の推進に関する特別措置法に基づき50万円以下の過料が科されることもあり、最終的には行政代執行によって強制的に解体され、費用を請求されるケースもあります(2026年8月時点の同法の規定による)。火災保険への加入は、こうした管理リスクに備える手段のひとつでもあります。
火災保険で補償される範囲と空き家で重視したい補償
火災保険と一言でいっても、補償の中身は一つではありません。基本補償と、契約時に選択できる補償を組み合わせて内容を決めるのが一般的です。空き家の場合は、住んでいる家とは重視すべき補償の優先順位が変わってきます。
| 補償の種類 | 主な事例 | 空き家での位置づけ |
|---|---|---|
| 火災・落雷・破裂爆発 | 放火や漏電による全焼、隣家からのもらい火 | 基本補償として原則必須 |
| 風災・雹災・雪災 | 台風で屋根瓦が飛散、大雪で屋根が破損 | 点検が遅れがちな空き家では優先度が高い |
| 水災 | 豪雨による床上浸水、土砂の流入 | ハザードマップ上のリスクに応じて要否を判断 |
| 盗難 | 空き巣被害、設備・配管の盗難 | 無人で発見が遅れやすいため重視されやすい |
| 水濡れ・破損等 | 給排水管の劣化による水漏れ、外部からの物体の衝突 | 老朽化した空き家では発生しやすい |
家財がまったく残っていない空き家であれば、家財の補償を外して建物のみの契約にすることで保険料を抑えられます。一方、水災リスクが低い立地であっても、盗難や破損等の補償まで外してしまうと、空き家特有のリスクへの備えが手薄になりかねません。どの補償を残し、どれを外すかは、実家の立地や管理状況に応じて個別に判断する必要があります。
保険金額の決め方(新価と時価)
火災保険の保険金額は、建物を新たに建て直す場合の費用を基準にする「新価(再調達価額)」と、経年劣化や消耗分を差し引いた「時価」のどちらかで設定します。多くの住宅物件用の商品は新価を基準にしていますが、空き家が一般物件として契約する場合、時価を基準にした契約になることもあります。時価を基準にすると、築年数が古い建物ほど評価額が下がり、実際に建て替えるための費用に対して保険金が不足するおそれがあります。見積もりを取る際は、保険金額が新価・時価のどちらで算定されているかを確認してください。
空き家の火災保険料はどのくらいか
空き家は一般物件として扱われることが多いため、居住用の住宅物件に比べて保険料が高くなりやすい傾向があります。理由は、火災の発見が遅れやすいこと、劣化や損傷に気づきにくいこと、放火や空き巣のリスクが高いこと、住宅物件向けの新築割引・長期契約割引が使えないことなどが重なるためです。ただし、保険料は建物ひとつひとつの条件によって大きく変わるため、一律の金額を示すことは適切ではありません。主な変動要因は次のとおりです。
- 建物の構造——木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造など、構造区分によって燃えにくさの評価が異なり、保険料に反映されます。
- 築年数——昭和56年5月31日以前に着工された建物は、現行の耐震基準(新耐震基準)より前の基準で建てられているため、構造にかかわらず保険料が高くなる傾向があるとされています。
- 所在地の災害リスク——ハザードマップ上の水災リスクや地域の気象傾向によって、保険会社ごとの料率が変わります。
- 補償内容の広さ——火災・落雷・破裂爆発に加え、風災・水災・盗難・破損等まで補償を広げるほど保険料は上がります。
- 保険期間・契約プラン——長期契約や補償の絞り込みによって、年あたりの負担を抑えられる場合があります。
民間の火災保険比較サービスが公表している成約データを見ても、空き家の年間保険料は居住用の一戸建てより数千円〜1万円ほど高くなる傾向が示されています。ただし、これはあくまで一つの調査事例であり、個々の物件の保険料はこの数字とは異なります。正確な金額を知るには、複数の保険会社・代理店から見積もりを取ることが欠かせません。
ケース別に見る保険料の考え方
実家の状態によって、火災保険で確認すべきポイントは変わります。相続や実家じまいの過程でよくある4つの局面に分けて整理しました。上位の一般的な解説記事にはあまり出てこない、状態別の判断軸としてご活用ください。
| 実家の状態 | 想定される分類 | 保険料の傾向 | 確認しておきたいこと |
|---|---|---|---|
| 親が居住中 | 住宅物件 | 通常どおり | 契約者・受取人の確認、証券の保管場所の把握 |
| 相続直後・空き家になったばかり(家財あり) | 住宅物件のまま継続できる場合と一般物件へ切り替える場合がある | 継続できれば変わらず、切り替えなら上昇 | 用途変更の届出、名義変更の要否 |
| 長期間の空き家(管理が続いている) | 一般物件が中心 | 住宅物件より割高 | 補償範囲の絞り込み、管理状況の記録 |
| 売却・解体の方針が決まっている | 一般物件、または解約を検討 | 短期契約や補償縮小で調整可能 | 解約返戻金の有無、契約終了時期の設定 |
特に③の「長期間の空き家」では、家財がないなら建物のみの契約にする、水災リスクの低い立地なら水災補償を外すといった見直しで、必要な補償を保ちながら保険料を抑えられる余地があります。逆に、老朽化が進んでいたり、賃借人や近隣とのトラブルが想定されたりする場合は、補償を絞りすぎないほうが安全です。
火災保険と地震保険・共済の関係
地震保険は火災保険とセットでなければ契約できず、単独での加入はできません。保険金額にも上限があり、建物は5,000万円、家財は1,000万円までで、かつ火災保険の保険金額の30〜50%の範囲内で設定する決まりです。ここで注意したいのは、空き家が一般物件として扱われる場合、地震保険は原則として対象外になるという点です。地震による火災は、通常の火災保険では補償されません。別荘など、条件を満たして住宅物件として契約できた空き家であれば、地震保険をセットできる可能性があります。
火災保険は保険会社だけでなく、共済でも取り扱われています。ただし共済は、居住していることを加入・継続の条件としている場合が一般的で、空き家では利用できないか、利用できても制約が大きい傾向があります。転勤にともなう一時的な空き家や、季節的に使用する別荘など、状況によって扱いが変わることもあるため、検討している共済がある場合は、空き家の使用状況を具体的に伝えたうえで加入可否を確認してください。
相続した実家の火災保険はどうする
親が亡くなり実家を相続した場合、契約者本人がすでに亡くなっている以上、火災保険をそのまま自動的に引き継ぐことはできません。相続人が実家にそのまま住む場合や、定期的に別荘として使用する場合は「空き家」に該当しないため、保険会社へ名義変更の連絡をするだけで契約を引き継げます。しかし、誰も住む予定がなく空き家になる場合は、住宅物件としての継続が難しくなることがあるため、注意が必要です。
まず確認すべきは、既存の火災保険の有無と内容です。どの保険会社に加入しているか、補償内容や契約期間はどうなっているか、契約者名義の変更が可能かを確認します。名義変更には、一般的に被相続人の死亡の事実を証明する書類、相続人の本人確認書類、保険証券(現在の契約内容がわかるもの)が必要です。名義変更の前に空き家が損害を受けた場合は、原則として被相続人の財産としての扱いとなり、相続人が保険金を受け取れることが多いとされていますが、相続手続きが完了するまで支払いが保留されることもあるため、速やかな手続きが望まれます。
もう一つ見落とされがちなのが、解約返戻金の相続税への影響です。火災保険を名義変更して契約を継続する場合でも、相続発生時点で解約したと仮定した場合の解約返戻金相当額が、相続財産として評価される可能性があります。解約する場合も同様に、解約返戻金は被相続人の財産として相続税の対象になり得ます。相続財産の評価額の合計が、相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合は、相続税の申告が必要になるため、他の財産とあわせて確認しておくと安心です。判断に迷う場合は、司法書士や税理士など専門家へ早めに相談することをおすすめします。
相続した実家の火災保険 見直しチェックリスト
実家を相続してから最初の数か月でやるべきことをチェックリストにまとめました。印刷して、確認済みの項目にチェックを入れる形でご活用ください。
| 確認項目 | ポイント |
|---|---|
| 既存の火災保険の有無を確認する | 保険証券や口座引落しの履歴から契約会社・証券番号を特定する |
| 補償内容と契約期間を確認する | 満期日、補償範囲、地震保険の有無を保険会社に問い合わせる |
| 実家の利用予定を決める | 住む・別荘として使う・空き家のまま維持する・売却や解体を検討するのいずれかを整理する |
| 用途変更の届出をする | 空き家になる場合は、保険会社に用途変更を申告し補償が続くか確認する |
| 名義変更の必要書類をそろえる | 死亡の事実がわかる書類・相続人の本人確認書類・保険証券を準備する |
| 解約返戻金の有無を確認する | 相続財産として評価される可能性があるため、金額の目安を保険会社に確認する |
| 相続登記の要否を確認する | 不動産の名義が故人のままだと売却・解体の契約が進められない |
| 保険の空白期間ができていないか確認する | 旧契約の解約日と新契約の開始日にズレがないかを確認する |
相続放棄を検討している場合の注意点
実家の資産価値が低く、維持費や解体費のほうが負担になりそうな場合、相続放棄という選択肢もあります。ここで注意したいのが、相続放棄をする前の火災保険の扱いです。民法上、相続放棄の前であっても、財産をこれまでどおりの状態に保つための「保存行為」は原則として単純承認にはあたらないと考えられています。既契約の火災保険料をそのまま口座振替で払い続ける程度であれば、通常は保存行為の範囲にとどまるとされていますが、解約して返戻金を受け取る行為は、相続財産を処分したとみなされ、単純承認と判断されるおそれがあります。相続放棄を検討している段階では、保険を解約せず、返戻金にも手をつけないまま、司法書士や弁護士に相談してから判断することをおすすめします。
空き家専用の火災保険を選ぶときの比較ポイント
空き家向けの火災保険は、住宅物件用の商品に比べて情報が少なく、比較検討がしづらいという声もよく聞かれます。複数の保険会社・代理店から見積もりを取る際は、次の項目を横並びで比較すると、条件の違いが見えやすくなります。
| 比較項目 | 確認のポイント |
|---|---|
| 空き家として契約可能か | 住宅物件・一般物件のどちらの扱いになるかを明確にしてもらう |
| 保険金額の算定基準 | 新価(再調達価額)か時価かを確認し、建て替え費用に対して不足がないか見積もる |
| 基本補償と選択できる補償 | 火災・落雷・破裂爆発に加え、風災・水災・盗難・水濡れ等の要否を実情に合わせて選ぶ |
| 保険期間 | 短期契約と長期契約のどちらが総額で有利か、解体・売却の見込み時期とあわせて検討する |
| 解約時の返戻金 | 契約途中で解約した場合、未経過期間分がどの程度戻るかを確認する |
| 付帯費用補償 | 残存物取片づけ費用、失火見舞費用など、万一の際にかかる周辺費用の補償有無を確認する |
とくに保険金額の算定基準と付帯費用補償は見落とされがちですが、実際に建物が焼失・倒壊した場合の負担額を大きく左右します。見積書を並べる際は、保険料の金額だけでなく、この2点も突き合わせておいてください。
保険を切らさないための実務ポイント
私たち安心実家じまいの相談窓口には、遺品整理や実家じまいの相談とあわせて「保険はどうしたらいいのか分からないまま時間が経ってしまった」というお声が寄せられることがあります。現場でよく見られるのが、次のようなすれ違いです。親が加入していた火災保険の存在を家族の誰も正確に把握しておらず、満期を迎えて自動更新されないまま失効してしまう。あるいは、空き家になったことを保険会社に伝えないまま数年が経ち、いざ台風被害に遭ったときになって、用途変更の届出漏れを理由に補償が受けられないと分かる。こうした「保険の空白期間」は、片付けや相続の手続きに気を取られている間に生じやすいものです。
これを防ぐために、実家が空き家になったと分かった時点で、次の5つを確認しておくことをおすすめします。
- 火災保険証券の現物を探し、保管場所を家族間で共有する——実家の書斎や仏壇の引き出しなど、意外な場所に保管されていることがあります。
- 保険会社に用途変更・名義変更を連絡する——電話一本で済む場合もあれば、書類提出が必要な場合もあります。連絡自体を後回しにしないことが重要です。
- 満期日をカレンダーやリマインダーに登録する——遠方に住む相続人が複数いる場合、誰かひとりが確認すればよいという状態を作っておきます。
- 近隣への影響が大きい立地かどうかを確認する——隣家との距離が近い、密集した住宅地にあるといった場合は、補償を手厚くする判断材料になります。
- 片付け・解体・売却の方針とあわせて保険の要否を見直す——解体が決まっているなら、工事着手前後で契約を終了するタイミングを検討します。
火災保険の契約自体は保険会社や代理店との手続きですが、実家じまいの相談を先に進めておくと、いつ・どの段階で保険を見直せばよいかの見通しが立てやすくなります。片付けと保険の手続きは別々に進めるのではなく、同じタイムラインの中で並行して考えることをおすすめします。実家じまい全体の流れと、各段階で確認しておきたい保険の動きを対応させると、次のようになります。
| 実家じまいの段階 | あわせて確認したい保険の動き |
|---|---|
| 相続の発生・実家の把握 | 既存の火災保険証券を探し、契約会社・満期日を確認する |
| 片付け・遺品整理の開始 | 空き家になる時期が固まった時点で、保険会社へ用途変更を連絡する |
| 名義変更・相続登記の手続き | 保険契約の名義変更に必要な書類をあわせて準備する |
| 売却・解体の方針決定 | 解約のタイミングと解約返戻金の有無を確認する |
| 契約完了・引き渡し | 保険契約の終了日を、引き渡しや解体着工の日程にあわせて設定する |
片付けの具体的な手順は実家じまいの手順で詳しく解説しています。保険の見直しをどのタイミングで行うか迷ったときは、片付け全体の進行状況とあわせて確認してみてください。
関連する法制度・公的データまとめ
空き家の火災保険を検討するうえで押さえておきたい公的な制度やデータを一覧にまとめました。数字や施行日は変わることがあるため、実際の手続きの際は各省庁・自治体の最新情報を確認してください。
| 制度・データ | 内容 | 出典・時点 |
|---|---|---|
| 全国の空き家の実数 | 2023年時点で約900万戸、空き家率13.8%(いずれも過去最多) | 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」(2026年8月時点) |
| 放火・放火の疑いによる火災件数 | 2023年に全国で約4,000件 | 総務省消防庁「令和6年版消防白書」(2026年8月時点) |
| 特定空家等の指定と固定資産税 | 勧告を受けると住宅用地の特例が解除され、税額が最大6倍に。命令違反は50万円以下の過料 | 空家等対策の推進に関する特別措置法(2026年8月時点の規定) |
| 相続登記の義務化 | 2024年4月1日施行。正当な理由なく3年以内に登記しないと10万円以下の過料。施行日より前に相続した不動産も対象で、猶予期間は2027年3月31日まで | 法務省の案内による(2026年8月時点) |
| 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例 | 要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円(相続人が3人以上の場合は2,000万円)を控除できる | 国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(2026年8月時点) |
火災保険そのものは民間の保険会社が扱う商品ですが、空き家をめぐる負担やリスクは、こうした公的な制度と密接に関わっています。保険料だけでなく、固定資産税や相続登記の期限まで含めて全体像を把握しておくと、実家の今後を判断しやすくなります。
空き家をこのまま持つか、実家じまいを検討するか
空き家を所有し続ける限り、火災保険料に加えて固定資産税、庭木の手入れや点検といった維持管理の費用が毎年発生します。一般物件としての火災保険料は住宅物件より高くなりがちで、これに管理コストが積み重なると、想定以上の負担になっていることも少なくありません。売る・貸す・解体するといった選択肢を検討する際は、保険料や税金の負担額を年単位で見積もったうえで、片付けから先の手続きまでを見通しておくことをおすすめします。
年単位の負担を把握するには、次のような費目を洗い出し、実家の状況にあわせて金額を書き込んでいく方法が実用的です。保険会社や自治体からの通知書をもとに、ご自身の実家の数字を当てはめて整理してみてください。
| 費目 | 確認方法 | 年間の目安を書き込む欄 |
|---|---|---|
| 火災保険料 | 保険証券・保険会社からの通知で確認 | |
| 固定資産税・都市計画税 | 自治体から届く納税通知書で確認 | |
| 管理・巡回費用 | 自分で通う交通費、または管理サービスの利用料 | |
| 庭木の手入れ・清掃費用 | 依頼した造園業者・清掃業者の見積もりで確認 | |
| 修繕・補修費用 | 雨漏りや外壁の劣化への対応費用 |
これらを合計した金額と、片付け・売却・解体にかかる一時的な費用を比べることで、「持ち続けるコスト」と「実家じまいを進めるコスト」を同じ土俵で比較できます。毎年かかる費用は、放置している期間が長いほど積み重なっていく点も考慮に入れてください。
実家の片付けや家財の整理、その先の売却・解体までを一つの窓口で相談したい場合は、実家じまい代行パックをご案内しています。実家じまいをどこから始めればよいか分からない方は実家じまいの進め方ガイドを、費用感を先に知りたい方は実家じまいの費用の目安を、具体的な手続きの順番を確認したい方は実家じまいの手順をあわせてご覧ください。火災保険の見直しと、実家そのものをどうするかの検討は、同じタイミングで進めておくと二度手間になりません。
よくある質問
空き家でも火災保険に入れますか?
空き家の火災保険料はいくらくらいですか?
空き家になったら火災保険会社に連絡は必要ですか?
空き家の火災保険は地震保険とセットにできますか?
実家を解体する予定でも火災保険は必要ですか?
まとめ
空き家の火災保険は、住宅物件と一般物件という2つの区分を理解することが最初の一歩です。要点を振り返ります。
- 空き家は多くの場合「一般物件」として扱われ、住宅物件向けの通常の火災保険には入れないことがある
- 別荘としての季節利用、転勤等の一時的な不在、居住予定があり管理されている状態なら、住宅物件として契約できる可能性がある
- 老朽化が著しい、長期放置、防犯対策が不十分な空き家は、加入を断られることがある
- 保険料は構造・築年数・所在地・補償内容で大きく変わり、旧耐震基準の建物は高くなりやすい
- 地震保険は空き家(一般物件)では原則対象外。共済も居住を条件とする場合が多い
- 相続した実家は、名義変更の書類準備と解約返戻金の相続税評価を確認しておく
- 空き家になったら「用途変更」の届出を忘れず、保険の空白期間を作らない
- 保険料・固定資産税・維持管理費の負担を年単位で把握し、実家じまいの検討と並行して進める
火災保険は、空き家を所有し続けるうえで欠かせない備えですが、加入条件や保険料の考え方は居住用の住宅と大きく異なります。まずは既存の契約内容を確認し、空き家になった事実を保険会社へ伝えることから始めてください。片付けや今後の活用方針とあわせて整理したい場合は、実家じまい代行パックや関連コラムもあわせてご参照ください。
早いこともあります
実家の片付けから処分まで、
窓口ひとつでご相談いただけます。
ご相談・お見積もりは無料です。

