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相続土地国庫帰属制度は空き家に使える?建物ありの土地の要件・負担金・国庫帰属vs買取の判断基準

最終更新日:2026年9月19日|監修:司法書士・行政書士 久留慎一郎先生・安心実家じまい事務局

司法書士・行政書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。

監修の範囲:相続・登記・法務に関する記述(司法書士・行政書士の業務範囲)。片付け・買取・費用相場などの記述は安心実家じまい事務局が編集しています。監修者プロフィール

税金について:税額の計算や特例を使えるかどうかの判断は税理士の業務で、監修の範囲に含みません。申告の前に、税理士または所轄の税務署でご確認ください。

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 不動産の名義変更
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理

この記事の結論

  • 相続土地国庫帰属制度は「土地」だけを対象にした制度で、建物が残る空き家はそのままでは申請できません。国に引き取ってもらうには、自費で解体して更地にすることが出発点です。
  • 解体費用(木造30坪で目安90〜150万円)に加え、審査手数料1筆14,000円、承認後の負担金は宅地なら原則20万円〜(面積で算定される場合あり)がかかります。安く済む制度ではありません。
  • 2023〜2024年度の運用実績では申請の約半数が却下・不承認・取り下げになっていると公表されており、審査に通る保証はありません。
  • 判断の軸は「片付けてから売る(仲介)」「そのまま買取に出す」「解体して国庫帰属を申請する」の3択を、手取り額と期間で並べて比べることです。多くの実家は、解体・国庫帰属を検討する前に空き家買取(片付け不要・複数社査定)の査定額を確認したほうが、結果的に早く・高く手放せます。
目次

相続土地国庫帰属制度とは|空き家をそのまま引き取ってもらえない理由

相続土地国庫帰属制度は、相続または遺贈によって土地を取得した人が、一定の要件を満たす場合に、その土地の所有権を国に引き渡せる制度です。所有者不明土地の発生を防ぐ目的で創設され、2023年4月27日に施行されました。制度の根拠と最新の運用状況は法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」で公表されています。

ここで多くの人が誤解するのが、「空き家ごと国に引き取ってもらえる」という期待です。制度の名称は「土地」の国庫帰属であり、建物が建ったままの土地は申請の入口で対象外になります。法務局の窓口相談でも、実家に空き家が残っている場合はまず解体の要否から確認されるのが実務上の流れです。つまりこの制度は、正確には「更地にしてから国に引き取ってもらう制度」であり、「空き家を手放す制度」そのものではない、という前提を最初に押さえておく必要があります。

制度を使えるのは、相続または遺贈で土地を取得した相続人に限られます。生前贈与で取得した土地や、相続人以外の第三者が買い受けた土地は対象になりません。また共有名義の土地は、共有者全員が共同で申請する必要があり、一人でも反対すれば手続きは進められません。実家の名義が親のままの場合は、申請の前提として相続登記を済ませておく必要があります。相続登記の費用と進め方は相続登記の費用と自分でやる方法で解説しています。

制度が創設された背景には、人口減少と相続放棄の増加により、誰も管理しない「所有者不明土地」が全国で広がってきた事情があります。国土交通省の調査では、所有者不明の土地面積が九州本島に匹敵する規模に達していると指摘されており、放置された空き家・空き地が近隣トラブルや行政コストの原因になってきました。相続土地国庫帰属制度は、こうした土地を相続人が抱え込むのではなく、一定の負担金を払って国に引き渡す「最後の受け皿」として作られた制度です。裏を返せば、制度の設計自体が「安易に引き取らせない」ことを前提にしており、審査は決して緩くありません。この前提を理解した上で、空き家がある実家にどう当てはめるかを見ていきます。

なお「建物」の定義は、不動産登記規則第111条に定める、屋根と壁があって地面に定着している建造物を指します。物置やカーポートのような簡易な工作物は、建物に該当しない場合もありますが、老朽化して倒壊の恐れがある廃屋・納屋なども実務上は建物として扱われ、解体の対象になることが一般的です。判断に迷う場合は、法務局の事前相談窓口で個別に確認してください。

制度の対象になる土地・ならない土地|却下要件と不承認要件

「うちの実家の土地は国庫帰属を使えるのか」を判断するには、まず要件を1つずつ確認する必要があります。要件は法律・政令で細かく定められており、専門的な言葉が多いため、ここでは実家の空き家に当てはめたときに特に関係が深い項目に絞って整理します。すべての要件は法務省の公式ページにも一覧が掲載されているので、判断に迷う場合は必ず一次情報を確認してください。

相続土地国庫帰属制度には、申請しても審査に進む前に門前払いになる「却下要件」と、審査の結果として引き取りを断られる「不承認要件」の2段階のハードルがあります。どちらも法務省の資料に一覧で示されており、実家の空き家に当てはめると次のように整理できます。

申請の段階で却下される土地(却下要件)

  • 建物が建っている土地──空き家が残っている限り、原則として申請できません。
  • 担保権(抵当権など)や使用収益権が設定されている土地──住宅ローンの抵当権が残っていれば抹消登記が先です。
  • 他人の利用が予定されている土地(通路・墓地・境内地・水道用地など)
  • 土壌汚染がある土地
  • 境界が明らかでない土地・所有権の帰属に争いがある土地

この5つのうち、実家の空き家で最も多く該当するのは「建物が建っている土地」です。次に多いのが、住宅ローンが完済されずに親が亡くなり、抵当権の抹消登記を忘れているケースです。抵当権は金融機関に完済証明を発行してもらい、司法書士に抹消登記を依頼すれば数万円程度で解消できます。境界が不明確な場合は、土地家屋調査士に境界確定測量を依頼する必要があり、隣地の立ち会いが必要になるため数か月かかることもあります。測量の費用と流れは土地の測量・境界確定の費用と流れで解説しています。

審査で引き取りを断られる土地(不承認要件)

  • 崖(勾配30度以上・高さ5m以上)があり、管理に過分な費用・労力がかかる土地
  • 地下に廃屋の基礎・浄化槽・井戸などの有体物が埋まっている土地
  • 隣接地との争訟(境界確認・通行権など)がないと管理できない土地
  • 鳥獣被害・災害の危険が生じている土地
  • その他、通常の管理・処分に過分な費用・労力を要する土地

不承認要件は、却下要件よりも判断に幅があり、法務局の実地調査の結果次第で結論が変わります。たとえば崖地は「勾配30度以上・高さ5m以上」という数値基準がありますが、実際に管理コストが過大かどうかは土砂災害警戒区域の指定状況や、擁壁の有無によっても左右されます。地下埋設物についても、旧建物の基礎を完全撤去したつもりでも、古い浄化槽や井戸が地中に残っているケースは珍しくなく、解体業者に依頼する際は「地下埋設物調査込み」で見積もりを取ることをおすすめします。

実家の空き家跡地でよく引っかかるのは、「解体はしたが、旧建物の基礎コンクリートや浄化槽を埋め戻しただけで撤去していない」ケースです。解体業者に依頼する際は、基礎・配管・浄化槽まで含めた完全撤去(更地渡し)で見積もりを取ってください。中途半端な解体では、国庫帰属の審査でも、後述する買取・仲介でも評価が下がります。

山林・農地の場合の追加要件

実家の敷地とあわせて山林・農地を相続しているケースもあります。山林は、崩落や倒木のリスクが低く、管理コストが過大でないと判断されれば対象になりえますが、傾斜が急な土地や、境界が不明確な奥山は不承認になりやすい傾向があります。農地は農地法による規制があるため、農業委員会への届出や、耕作されているかどうかの現況確認が別途必要です。「土地だけなら何でも引き取ってもらえる」わけではなく、種目ごとに個別の審査基準がある点に注意してください。

また、農地を相続する際には、相続開始を知った日からおおむね10か月以内に農業委員会への届出が必要です。届出を怠ると過料の対象になり得るため、実家の敷地に畑や田が含まれている場合は、国庫帰属の検討と並行して、まず農業委員会への届出を済ませてください。森林(保安林など)が含まれる場合も、森林法上の届出や伐採の制限がかかることがあり、通常の宅地とは別の窓口(森林組合・都道府県の林務担当課)への確認が必要になります。

運用実績|申請の約半数は承認に至っていない

制度開始から数年が経過し、法務局が公表している運用件数の集計では、申請全体のうち承認に至った割合はおおむね5割前後で、残りは審査中のほか、却下・不承認・取り下げが一定数を占めるとされています。取り下げの多くは、審査の過程で「境界の確定」「担保権の抹消」「隣地との協議」など追加対応を求められ、費用や労力が見合わないと判断した申請者が手続きを止めたケースです。「申請すれば通る」という前提で解体費用を先に投じるのは危険で、事前相談の段階で法務局の担当者に土地の状況を具体的に伝え、可能性を確認してから解体に進むことをおすすめします。

審査の過程でよく追加対応を求められる例としては、次のようなものがあります。

  • 境界標の設置・確認──隣地との境界に境界標がない場合、土地家屋調査士による境界確定測量を求められることがある。
  • 抵当権など担保権の抹消登記──完済済みでも登記が残っている場合、抹消登記を先に済ませる必要がある。
  • 越境物の是正──隣地の建物・樹木が越境している、あるいは自分の土地の工作物が隣地に越境している場合、是正または覚書の締結を求められることがある。
  • 追加の現況写真・図面の提出──更地であることや、埋設物がないことを示す資料の追加提出。

これらの対応には、それぞれ数万円〜数十万円の追加費用と、数週間〜数か月の追加期間がかかる場合があります。事前相談の段階でできるだけ具体的に土地の状況を伝え、追加対応が必要になりそうかどうかを早めに把握しておくことが、無駄な出費を避けるポイントです。

相談予約の取り方

相続土地国庫帰属制度の事前相談は、原則として土地を管轄する法務局(本局)で受け付けています。多くの法務局では、電話またはウェブの予約フォームから事前相談の日時を予約する仕組みになっており、当日は登記事項証明書や公図、現況写真などの資料を持参すると、その場で申請の見込みについて具体的なアドバイスを受けやすくなります。予約が数週間先まで埋まっていることもあるため、解体を検討し始めた段階で早めに相談枠を確保しておくと、全体のスケジュールを圧縮できます。

費用はいくらかかる?審査手数料と負担金の実額

制度の利用には、大きく分けて「解体費用」「審査手数料」「負担金」の3つの費用がかかります。法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」によると、負担金は承認された土地の種目ごとに、10年分の標準的な管理費用相当額として算定され、納付が必要になるのは承認を受けたときの一度きりです。

費用の種類金額の目安納付のタイミング
解体費用(建物がある場合)木造30坪で目安90〜150万円(自治体の解体補助金を利用できる場合あり)申請前(または承認後の速やかな取り壊しを条件に申請できる場合あり)
審査手数料土地1筆につき14,000円申請時
負担金(宅地・原則)20万円〜(面積区分に応じて算定される市街化区域等の宅地・農地は別計算)承認後、通知から30日以内
負担金(山林)面積に応じて算定(原則面積が広いほど増額)承認後、通知から30日以内

負担金は土地の種目で計算方法が変わる

負担金の額は、土地の種目(宅地・農地・山林・その他)ごとに定められた算定方法で決まります。法務省の公表資料に基づく大まかな考え方は次のとおりです。

土地の種目算定の考え方
宅地(原則)面積にかかわらず一律20万円
宅地(市街化区域・用途地域指定区域内)面積に応じた算定(面積が広いほど増額)
農地(原則)面積にかかわらず一律20万円
農地(市街化区域・農用地区域等)面積に応じた算定
森林面積に応じた算定
その他(雑種地・原野など)面積にかかわらず一律20万円

実家が地方の一般的な住宅地にある場合、多くは「宅地(原則)」の一律20万円に該当しますが、市街化区域内で用途地域が指定されている土地は面積に応じた算定になるため、想定より高額になることがあります。正確な金額は、法務局の窓口で土地の地目・所在地を伝えて事前に試算してもらうのが確実です。

注意したいのは、負担金が「安く済むから得」とは限らない点です。解体費用90〜150万円に加えて負担金20万円以上、審査手数料、必要書類の取得費用まで合算すると、実家の立地によっては解体して更地で仲介売却したほうが手元に残る現金が多いケースも珍しくありません。金額の判断は土地ごとの評価額・立地・面積で変わるため、まずは空き家買取や仲介の査定を取り、「もし売れるといくらか」を先に把握してから国庫帰属を検討する順番をおすすめします。

解体費用の内訳を分解する

「木造30坪で90〜150万円」という金額には幅があり、内訳を知らないまま見積もりを比べると、安い業者に見えて後から追加費用を請求されるトラブルが起こりがちです。主な内訳は次のとおりです。

費目目安備考
建物本体の解体・撤去坪あたり3〜5万円木造。鉄骨・RC造はさらに高額
付帯工作物の撤去(塀・カーポート・物置)数万〜20万円程度見積もりに含まれているか要確認
基礎・浄化槽・井戸の完全撤去10〜30万円程度国庫帰属では埋め戻しのみでは不可
アスベスト事前調査・除去調査数万円〜、除去は数十万円〜1975年以前の建物は要注意
廃棄物の処分費・整地費建物規模による家財が残っている場合は別途片付け費用

特にアスベスト(石綿)は、1975年以前に建てられた建物では屋根材・外壁材に使われている可能性があり、事前調査が法令で義務付けられています。調査を省略した見積もりは後から追加費用が発生するリスクが高いため、契約前に「アスベスト事前調査費込みか」を必ず確認してください。また、家財が残ったままの解体は、片付けを別業者に依頼するより解体業者にまとめて依頼したほうが割高になりやすいため、先に遺品整理で家財を搬出してから解体する順番のほうが、総額を抑えられることが多いです。

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申請から国庫帰属までの流れ|審査は半年〜1年

  1. 相続登記を済ませる──名義が親のままでは申請できません。期限は相続を知った日から3年以内(義務化済み)。共有名義の場合は共有者全員の同意も並行して確認しておきます。
  2. 建物を解体し、更地にする──基礎・浄化槽・井戸まで完全撤去。アスベスト事前調査を行い、解体業者から「更地渡し」の証明(工事完了証明書・現況写真)を受け取っておくと、後の審査資料として使えます。
  3. 法務局(本局)に事前相談──管轄の法務局(本局)には、相続土地国庫帰属相談窓口が設けられています。予約制の場合が多いため、事前に電話で相談日を確保し、土地の状況(面積・地目・境界・埋設物の有無など)を伝えて、申請の見込みを確認します。
  4. 申請書類を提出──承認申請書、土地の登記事項証明書、公図、現況写真、境界に関する資料などを準備し、審査手数料(1筆14,000円)を収入印紙で納付します。
  5. 実地調査を含む審査──法務局の担当者、または委託を受けた者が現地を確認する場合があります。境界確認や追加資料の提出を求められることもあり、審査期間は半年〜1年が目安です。
  6. 承認・負担金の納付──承認されると、負担金の金額を記載した通知が届きます。通知から30日以内に負担金を納付した時点で、土地の所有権が国に移転します。期限内に納付しないと承認が失効するため注意してください。

審査には現地調査を含めて半年〜1年かかるため、「相続税の申告期限(相続開始から10か月)」や、空き家特例の適用期限とはスケジュールが噛み合わないことがあります。空き家を売却する場合に使える3,000万円特別控除の要件・期限は空き家の3,000万円特別控除とはで確認できます。国庫帰属を検討する場合も、税金面の期限は別途チェックしておいてください。

申請時に必要な主な書類

書類入手先取得費用の目安
承認申請書・土地の状況及び境界に関する情報法務局窓口で様式取得無料
登記事項証明書法務局600円程度/通
公図・地積測量図法務局各450〜600円程度
固定資産評価証明書市区町村役場数百円程度
現況写真(更地であることが分かるもの)申請者が撮影実費
相続関係を示す戸籍謄本等市区町村役場数百〜数千円

戸籍謄本の収集は、相続人が複数の市区町村にまたがって本籍を移している場合、想像以上に手間がかかります。まとめて取得する方法は相続に必要な戸籍の集め方で解説しています。

自分で申請する場合と専門家に依頼する場合

国庫帰属の申請は、自分で法務局に出向いて手続きすることも可能です。ただし、必要書類の収集、境界の確認資料の作成、法務局とのやり取りには専門知識が必要な場面が多く、司法書士・行政書士に代行を依頼するケースも一般的です。代行を依頼する場合の報酬相場は、書類収集・申請書作成の代行で数万円〜10万円台、境界確定測量を伴う場合は土地家屋調査士への別途依頼で数十万円かかることもあります。自分で進める時間が取れない場合や、遠方に住んでいて現地とのやり取りが難しい場合は、専門家への依頼を検討してください。

相続放棄との違い|「もう関わりたくない」場合はどちらを選ぶか

「実家の土地を手放したい」と考える人の中には、相続放棄と国庫帰属を混同している人も少なくありません。この2つは、使えるタイミングも効果もまったく異なります。

相続放棄は、相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述する手続きで、認められると土地だけでなく預貯金・借金を含めた相続財産すべてを最初から相続しなかったことになります。実家の土地だけを放棄して、他の財産は相続するという選択はできません。また、相続放棄をしても、他に相続人がいない場合や、次順位の相続人も全員放棄した場合は、放棄した人が相続財産清算人に引き継ぐまで管理義務を負い続けることがある点にも注意が必要です。

一方、国庫帰属制度は、いったん相続した上で、預貯金などプラスの財産は受け取りながら、不要な土地だけを国に引き渡せる制度です。「実家の土地は要らないが、預貯金は相続したい」という場合には、相続放棄ではなく国庫帰属を検討することになります。ただし、相続放棄の期限(3か月)を過ぎてから国庫帰属を検討する場合、単純承認とみなされる行為(遺産の処分・使用など)をすでにしていないか、着手前に確認しておくことをおすすめします。判断に迷う場合は、早めに司法書士や弁護士へ相談してください。

たとえば、「実家の預貯金は生活費として受け取りたいが、遠方の山林は今後も管理できる見込みがない」というケースでは、預貯金を含めた相続を選び、山林だけを国庫帰属で手放すという選択が現実的です。反対に、実家に多額の借金や連帯保証が付いている場合は、土地を含めたすべての財産を相続放棄で手放したほうが、結果的にリスクを抑えられることもあります。財産全体を洗い出した上で、どちらの制度がふさわしいかを判断してください。

「片付けて売る」「そのまま買取」「有料で手放す(国庫帰属)」の3択比較

実家の空き家を処分する方法は、突き詰めると次の3つに集約されます。当事務局は宅地建物取引業者ではないため、実際の売買・仲介は提携の宅建業者が担当し、当事務局は相談窓口と片付けの実務を受け持つ体制です。まずは3つの選択肢を、手取り額・スピード・片付けの要否で比較してください。

方法手取りの傾向期間の目安片付け・解体向いているケース
① 片付けて仲介で売却相場に近い高値が狙える3〜6か月原則として空にして引き渡し立地がよく買い手が付く家
② そのまま買取に出す仲介の7〜8割が目安。家財ごと引き取り可の業者もあり2〜4週間不要な業者を選べば片付け不要早く終えたい、遠方で管理できない、訳あり物件
③ 解体して国庫帰属(有料で手放す)手取りはマイナス(解体費+負担金の持ち出し)解体1〜2か月+審査半年〜1年解体・完全撤去が必須買い手が付かない山林・不便な土地で、他に手段がない場合の最終手段

この3つを比べると分かるとおり、国庫帰属は「お金を払って手放す」制度であるのに対し、買取・仲介は「お金を受け取って手放す」取引です。同じ土地でも、売却できる見込みが少しでもあるなら、先に買取と仲介の査定を取ってから国庫帰属を検討するのが、手取り額の面で合理的な順番です。片付けにかかる手間や時間を惜しんで判断を先延ばしにするより、まず片付けと査定を同時に進めたほうが、結果的に選択肢が広がります。片付けを含めた窓口の一本化については実家じまい代行で、家財の量が多い場合の仕分け・搬出は遺品整理で対応しています。

なお、当事務局(安心実家じまい事務局)は宅地建物取引業の免許を持つ不動産業者ではありません。実際の売買契約や重要事項説明、仲介・買取の価格交渉といった不動産取引そのものは、提携する宅地建物取引業者が担当します。当事務局が担うのは、相談の窓口一本化、家財の片付け・仕分け、必要に応じた司法書士・解体業者など専門家への橋渡しです。「片付けと売却の窓口がバラバラで、何度も同じ説明を繰り返すのが面倒」という悩みを解消することを役割としており、「当事務局が直接買い取る」という表現は使っていません。査定や契約条件は、提携の宅建業者から直接ご案内します。

仲介・買取・国庫帰属、それぞれのメリットとデメリット

仲介のメリットは、市場価格に近い金額で売却できる可能性が最も高いことです。デメリットは、買い手が見つかるまで数か月〜半年以上かかることがあり、その間の管理責任(固定資産税・草刈り・防犯)が続く点です。

買取のメリットは、業者が直接の買い手になるため、早ければ2〜4週間で現金化でき、家財が残っていても引き取り可能な業者を選べば片付けの手間を省けることです。デメリットは、価格が仲介の7〜8割程度に下がる傾向があることです。

国庫帰属のメリットは、買い手が見つかる見込みがまったくない土地でも、要件を満たせば手放せる可能性があることです。将来にわたる固定資産税・管理義務から解放される点は大きな価値ですが、デメリットとして、解体費用と負担金を合わせた持ち出しが発生し、審査に半年〜1年かかり、しかも承認される保証がないことが挙げられます。

この3つの方法は、どれか1つだけを選ばなければならないわけではありません。実務では、まず買取・仲介の査定を同時に取り、値が付かないと分かった土地についてだけ国庫帰属を検討するという「並行してあたる」進め方が最も無駄がありません。判断のスピードを優先するか、金額を優先するかによっても最適な組み合わせは変わるため、家族の状況に合わせて優先順位を決めておくことをおすすめします。

また、査定を依頼する際は「解体前」「解体後」の両方の条件で見積もりを取り比べておくと、解体費用をかける価値があるかどうかを数字で判断できます。多くの買取業者は、解体前の現況のまま査定を出せるため、まずは手間をかけずに現状を確認することから始めてください。

ケース別シミュレーション|3つのパターンで比べる

同じ「相続した実家の空き家」でも、立地や建物の状態によって最適な選択肢は変わります。ここでは典型的な3つのパターンを取り上げ、それぞれどの選択肢を優先的に検討すべきかを整理します。実際の判断では、必ず複数社の査定額と、解体・国庫帰属それぞれの見積もりを取ったうえで、数字を並べて比較してください。

ケース1:立地のよい住宅地(例:神奈川県内の駅徒歩圏)

駅からバス圏内でも住宅需要がある土地なら、解体して国庫帰属を申請するメリットはほぼありません。空き家を片付けて売却査定を取ると、解体費用(90〜150万円)と負担金(20万円〜)の持ち出しに対して、仲介または買取で数百万円〜の売却代金が見込めるケースが多いためです。神奈川県の空き家買取のように地域の買取実績がある窓口で、解体前の状態のまま査定を取ることをおすすめします。

試算例:土地の相続税評価額300万円、建物は築50年の木造平屋(解体費用目安120万円)というケースで比べると、①国庫帰属を選んだ場合は解体費120万円+負担金20万円+審査手数料1.4万円+書類取得費(登記事項証明書・公図など)で、手取りは約マイナス141万円です。②片付けて仲介で売却した場合、土地の実勢価格が評価額の1.1〜1.3倍程度で取引される地域なら、解体費を差し引いても手取りがプラスになる可能性があります。③そのまま買取に出す場合、解体不要・家財ごと引き取りの業者を選べば、価格は仲介より下がるものの、片付け・解体の持ち出しがない分、着金までの実質的な負担は小さくなります。実際の数字は土地ごとに大きく異なるため、必ず複数社の査定を取って比較してください。

ケース2:地方の郊外・買い手が付きにくい土地

仲介での売却が数年単位で決まらない、買取査定を取っても値が付かない、という土地では、解体・国庫帰属の検討にも合理性が出てきます。ただしその場合も、まず「訳あり物件専門の買取業者」に一度は打診してから判断してください。立地が悪い土地でも、更地渡しの条件次第で買い手が見つかることがあります。

ケース3:山林・原野・崖地など管理が難しい土地

崖地や急傾斜地、管理不全の山林は、そもそも国庫帰属の不承認要件に該当する可能性が高い土地です。買取市場でも値が付きにくいため、自治体の空き家バンク・山林引き取りサービスなど、複数の窓口に同時に相談し、可能性のある選択肢を並行して探るのが現実的です。

ケース4:相続人が複数いて、活用方針の意見が割れる場合

兄弟姉妹で実家を共有相続し、「売りたい人」と「残しておきたい人」で意見が割れることもよくあります。国庫帰属は共有者全員の同意が必要なため、一人でも反対すれば選択肢から外れます。このような場合は、まず遺産分割協議で不動産を単独名義にする(代償分割・換価分割などの方法があります)か、意見がまとまるまでの間、片付けと最低限の管理だけを先に済ませておくと、後の選択肢を狭めずに済みます。遺産分割協議がまとまらない場合の実家の扱いは、まず相続登記と現状把握を進めながら、家庭裁判所の調停も視野に入れて専門家に相談することをおすすめします。

代償分割は、実家を相続する一人が、他の相続人に相当額の金銭(代償金)を支払うことで公平を図る方法です。換価分割は、実家を売却してから代金を相続人で分ける方法で、実家を残す人がいない場合に選ばれます。どちらの方法を選ぶにしても、まず売却査定を取って「実家がいくらで売れるか」を全員で共有しておくと、代償金の金額や、換価分割の見込み額について話し合いがスムーズに進みます。

国庫帰属以外の代替策|自治体の空き家バンク・寄付・隣地への相談

国庫帰属は審査が厳しく、費用も持ち出しになるため、申請の前に次の代替策を検討する価値があります。

  • 自治体の空き家バンクへの登録──移住希望者やリノベーション目的の買い手とマッチングする仕組みで、多くの自治体が無料で運営しています。地方の空き家でも、リフォーム前提の安値なら成約する例があります。
  • 隣接地の所有者への相談──隣地の所有者にとっては、自分の土地と一体利用できるメリットがあるため、市場価格より安くても購入・引き取りに応じてもらえることがあります。
  • 自治体やNPO法人への寄付──公益性が認められれば寄付を受け付ける自治体もありますが、多くの自治体は財政負担を理由に空き家・空き地の寄付を断っています。事前に自治体の資産管理課へ相談が必要です。
  • 訳あり物件専門の買取業者への打診──再建築不可・事故物件・立地の悪い土地でも、専門業者であれば買い取れるケースがあります。訳あり物件の売却方法は訳あり物件の売却方法で詳しく解説しています。

これらの代替策と国庫帰属を並行して進めても問題ありません。むしろ、解体費用を投じる前に空き家バンクや買取業者への打診を先に済ませておくことで、「せっかく解体したのに審査に落ちた」という最悪のパターンを避けられます。

相談先の一覧

相談内容相談先
国庫帰属の要件・審査の見込み管轄の法務局(本局)の相続土地国庫帰属相談窓口
相続登記・境界・共有名義の整理司法書士・土地家屋調査士
解体費用の見積もり・アスベスト調査解体業者(複数社で相見積もり)
売却査定(仲介・買取)提携の宅地建物取引業者
空き家バンクへの登録実家がある市区町村の空き家対策窓口
片付け・家財の仕分け実家じまい代行・遺品整理の窓口

相談先が多岐にわたるため、どこから手を付けていいか分からなくなりがちです。当事務局では、片付けの窓口と合わせて、これらの専門家への橋渡しをまとめてご案内しています。全体のスケジュール感としては、相続登記から査定・解体の判断までを1〜2か月、国庫帰属の審査を選んだ場合はそこからさらに半年〜1年を見込んでおくと、家族間のスケジュール共有もしやすくなります。

特に遠方に住んでいて実家に頻繁に足を運べない場合、複数の相談先とそれぞれ個別にやり取りするだけでも大きな負担になります。写真や資料を一箇所にまとめて共有できる窓口を決めておくと、家族間の情報共有もスムーズになり、判断のスピードが上がります。立ち会いなしで片付けから査定・書類の受け渡しまで進められる体制を選ぶと、遠方に住む相続人の負担を大きく減らせます。

申請前に知っておきたい5つの注意点

  • 審査手数料は却下・不承認でも返還されません。14,000円は審査を受けるための費用であり、結果にかかわらず戻ってきません。
  • 一度国庫帰属が完了した土地は、原則として買い戻せません。後から「やっぱり自分で使いたい」と思っても、国有財産になった土地を任意に取り戻す手続きは用意されていません。
  • 解体後に別の用途(駐車場・資材置き場など)で活用する選択肢も一度検討してから解体する。更地にした後は、国庫帰属の審査結果が出るまで土地が塩漬けになるため、活用と手放すことの両方を天秤にかけておくと後悔が少なくなります。
  • 負担金の算定基準は将来見直される可能性があります。制度開始からの申請状況を踏まえ、国が運用を検証する方針を示しているため、最新の金額は申請時に法務局へ必ず確認してください。
  • 審査中も固定資産税は発生し続けます。申請してから承認されるまでの半年〜1年間、土地の所有者は引き続き自分(相続人)であるため、固定資産税の納税義務も継続します。

申請前に確認するチェックリスト

印刷してそのまま使えるチェックリストです。1つでも「いいえ」があれば、申請前に対応が必要です。すべて「はい」になった段階で、法務局への事前相談・申請に進む準備が整ったと判断できます。家族で共有しながら、一つずつ潰していくのがおすすめです。

  • □ 土地の名義が相続人(自分・共有者全員)になっている(相続登記が完了している)
  • □ 建物・廃屋・基礎・浄化槽・井戸などの有体物をすべて撤去し、更地になっている
  • □ 住宅ローンの抵当権など、担保権の登記が残っていない
  • □ 隣地との境界が明確になっている(境界確定測量が済んでいる、または争いがない)
  • □ 土壌汚染や埋設物の疑いがない
  • □ 共有名義の場合、共有者全員の同意が取れている
  • □ 解体費用・審査手数料・負担金の総額を試算し、買取・仲介の査定額と比較済みである
  • □ 審査に半年〜1年かかる前提で、相続税申告や特例の期限と矛盾しないか確認済みである

空き家を放置するリスク|管理不全空家・特定空家の指定

国庫帰属の審査には半年〜1年かかるため、その間も空き家を放置すれば管理不全のリスクが続きます。空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)の改正により、自治体が「管理不全空家」に指定した場合、固定資産税の住宅用地特例(更地の最大6分の1に軽減される措置)が解除され、税額が跳ね上がる可能性があります。制度の詳細は国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法」で確認できます。

総務省の調査でも空き家の増加傾向が続いており、放置期間が長くなるほど管理コストと近隣トラブルのリスクが積み上がることが指摘されています(総務省統計局「住宅・土地統計調査」)。国庫帰属の審査を待つ間も、片付け・簡易な管理(庭木の剪定、通気・通水など)を並行して進め、税負担が跳ね上がる前に判断を終えることをおすすめします。

放置期間中にかかり続けるコスト

国庫帰属の審査や、売却先を探している期間中も、空き家を所有している限り次のコストが発生し続けます。

  • 固定資産税・都市計画税──住宅用地特例が適用されている間は軽減されるが、指定を受けると増額する。
  • 火災保険料──空き家でも契約を続ける場合、通常より保険料が割高になることがある。
  • 草刈り・剪定・見回りなどの管理費──自分で行えない場合、管理代行サービスに依頼すると年間数万円程度かかることが多い。
  • 台風・積雪などによる修繕費──老朽化した空き家ほど、突発的な修繕が必要になるリスクが高い。

これらの費用は、判断を先延ばしにすればするほど積み上がっていきます。国庫帰属の審査に半年〜1年かかることを踏まえると、「早く判断を下すこと」自体が、実はコストを抑える最大のポイントだと言えます。

固定資産税の住宅用地特例が解除されると、敷地面積200平方メートル以下の部分(小規模住宅用地)は評価額の6分の1、200平方メートルを超える部分(一般住宅用地)は評価額の3分の1に軽減されている措置が失われ、更地と同じ評価で課税されます。年間の税額が数万円から十数万円に跳ね上がる例も報告されており、「国庫帰属の審査を待つ間、指定を受けないように最低限の管理を続ける」という発想も費用対効果の判断材料になります。

管理不全空家・特定空家に指定されるまでの流れ

2023年の空家法改正で、従来の「特定空家」に加えて「管理不全空家」という区分が新設されました。特定空家は、倒壊の危険性が著しく高いなど深刻な状態の空き家が対象ですが、管理不全空家は、そのまま放置すれば特定空家になるおそれがある段階の空き家を対象にしており、より早い段階で行政が関与できるようになっています。指定までの流れは、おおむね次の順序で進みます。

  1. 指導・助言──自治体が所有者に対し、適切な管理を求める通知を行う段階。
  2. 勧告──指導に従わない場合、正式な勧告が行われる。この時点で固定資産税の住宅用地特例が解除される。
  3. 命令──勧告にも従わない場合、是正命令が出される。命令に違反すると過料の対象になり得る。
  4. 行政代執行──最終的に自治体が解体・除却を代行し、費用は所有者に請求される。

国庫帰属の審査を待っている間にこの指定が進んでしまうと、税負担の増加に加えて、行政代執行による解体費用の請求という最悪のシナリオもあり得ます。国庫帰属を検討する場合でも、自治体からの通知が届いていないか、実家の状態を定期的に確認しておくことが重要です。制度の詳細は国土交通省の空家法特設ページで公開されています。

特定空家に指定される要件は、空家法上、大きく次の4つに整理されています。①そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態、②そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態、③適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、④その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態、の4つです。実家の空き家が長期間無人になっている場合、屋根材の剥落や庭木の越境、害虫・害獣の発生などが積み重なると、これらの要件に該当しやすくなります。定期的な見回りや、簡易な管理サービスの利用も選択肢に入れておくと安心です。

地域によって費用は変わる|都市部と地方の違い

負担金は面積で算定される区分があるため、都市部(市街化区域の宅地)と地方(それ以外の宅地・山林)で金額の考え方が異なります。また、解体費用や買取相場も地域差が大きく、同じ「実家の空き家」でも立地によって最適な選択は変わります。神奈川県の空き家買取のように都市部で買取需要がある地域では、国庫帰属より先に買取査定を確認したほうが手取りが大きくなる可能性が高く、逆に買い手が付きにくい地方の土地では、空き家バンクや訳あり物件専門業者への相談と並行して国庫帰属を検討する価値があります。まずはお住まいの地域、または実家がある地域の買取相場を確認してから、次の一手を決めることをおすすめします。

三大都市圏やその近郊では、たとえ実家が古い空き家であっても、土地としての需要が残っている限り仲介・買取のどちらかで値が付く可能性が比較的高い傾向にあります。一方、人口減少が進む地方では、土地そのものの需要が乏しく、無償・低価格でも買い手が見つからないことがあります。こうした地域差を踏まえると、「実家が都市部にあるなら、まず売却査定から」「実家が地方の山林・原野に近いなら、空き家バンクや国庫帰属も含めて幅広く選択肢を比較する」という大まかな方針が立てやすくなります。いずれの場合も、解体費用という後戻りできない支出を投じる前に、複数の窓口へ同時に相談し、実際の反応を見てから最終判断することをおすすめします。

よくある質問

ここまでの内容と重なる部分もありますが、相談窓口でよく聞かれる質問を改めてまとめました。判断に迷ったときの確認用にご活用ください。制度は法改正や運用見直しが行われる可能性があるため、実際に手続きを進める際は、必ず法務局や専門家に最新の情報を確認してから進めることをおすすめします。

空き家がある土地でも相続土地国庫帰属制度を申請できますか?
原則としてできません。制度の対象はあくまで土地であり、建物(空き家)が残っている状態では申請の段階で却下されます。国に引き取ってもらうには、自費で建物を解体し、基礎や浄化槽まで含めて完全に更地にしてから申請する必要があります。承認申請後に速やかに取り壊す予定であることを示せば申請が受理される場合もありますが、実務上は解体を終えてから申請するのが確実です。
負担金はいくらかかりますか?
宅地の場合、原則として20万円からとされていますが、市街化区域内の宅地や農地などは面積に応じて算定されるため金額が変わります。山林も面積に応じた算定です。負担金は承認を受けたときに一度だけ納付し、10年分の標準的な管理費用相当額として計算されます。正確な金額は法務局の窓口で土地ごとに確認してください。
審査にはどれくらいの期間がかかりますか?
申請から承認までは、現地調査を含めておおむね半年〜1年が目安とされています。相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月)や、空き家の3,000万円特別控除の適用期限(相続開始から3年目の年末までの売却)とはタイミングが合わないことが多いため、税金の期限がある場合は国庫帰属より先に売却の可否を検討したほうが安全です。
審査に落ちることはありますか?
あります。崖地、埋設物がある土地、境界に争いがある土地、管理に過分な費用がかかる土地などは不承認要件に該当し、審査を通過できません。公表されている運用実績でも、申請の一定割合が却下・不承認・取り下げになっており、審査に通る保証がある制度ではない点に注意してください。
国庫帰属と買取・仲介、どちらを先に検討すべきですか?
多くの実家では、先に買取・仲介の査定を取ることをおすすめします。国庫帰属は解体費用と負担金を自己負担する「お金を払って手放す」制度である一方、買取・仲介は売却代金を受け取れる取引です。査定を取った結果、買い手が付かない土地だと分かってから、最終手段として国庫帰属を検討する順番が、手取り額の面で無駄がありません。
共有名義の実家でも国庫帰属を申請できますか?
共有名義の土地は、共有者全員が共同で申請する必要があります。一人でも同意しない共有者がいると手続きは進められません。兄弟姉妹で共有している実家などは、申請の前に遺産分割協議で単独名義にするか、全員の同意を書面で確認しておくとスムーズです。
解体せずに済む方法はありますか?
国庫帰属を使う場合は解体が必須ですが、解体を避けたいのであれば、家財を残したまま買い取る業者に売却する方法があります。建物付きのまま、または家財が残った状態でも査定・買取に応じる業者を選べば、解体費用そのものをかけずに手放せる可能性があります。
相続放棄と国庫帰属はどう違いますか?
相続放棄は相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申述する手続きで、認められると土地だけでなく預貯金・借金を含むすべての相続財産を放棄したことになります。一方、国庫帰属はいったん相続した上で、預貯金など他の財産は受け取りながら不要な土地だけを国に引き渡せる制度です。「土地は要らないが他の財産は相続したい」場合は国庫帰属、「関わり自体を断ちたい」場合は相続放棄が選択肢になります。期限が異なるため、早めにどちらが適切か司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
審査手数料や解体費用は誰が負担しますか?
申請者(土地の相続人)が全額自己負担します。審査手数料は1筆14,000円、解体費用は業者の見積もり額そのものが自己負担です。共有名義の場合は、共有者間であらかじめ費用負担の割合を決めておかないと、後からトラブルになりやすい点に注意してください。
一度国庫帰属した土地を後から買い戻すことはできますか?
できません。負担金の納付により所有権が国に移転した時点で、その土地は国有財産となります。任意に買い戻す手続きは用意されていないため、申請前に「本当に手放してよい土地か」を家族全員で確認しておくことが重要です。将来的な活用の可能性が少しでもある場合は、国庫帰属より先に賃貸・駐車場としての活用や、時間をかけた売却も検討してください。
審査中も固定資産税はかかりますか?
かかります。申請から承認までの半年〜1年の間、土地の所有者は引き続き申請者(相続人)であるため、固定資産税の納税義務も継続します。承認され、負担金を納付して所有権が国に移転した年の翌年度分から課税されなくなるのが一般的な扱いです。

まとめ──国庫帰属は「最終手段」、まず売れるかどうかを確かめる

  • 相続土地国庫帰属制度は建物付きの空き家をそのまま引き取る制度ではない。解体して更地にすることが申請の前提になる。
  • 解体費用+審査手数料+負担金で、手取りはマイナスになる。売却できる見込みがあるなら、買取・仲介の査定を先に取ったほうが合理的なケースが多い。
  • 審査には半年〜1年かかり、承認される保証もない。相続税や特例の期限がある場合は、国庫帰属だけに頼らず並行して売却も検討する。
  • 相続放棄とは別の制度。預貯金などプラスの財産は相続しつつ、不要な土地だけを手放したい場合に検討する選択肢であり、期限(3か月)が過ぎた相続放棄の代わりにはならない。
  • 解体前に法務局の事前相談で見込みを確認する。審査に落ちれば解体費用だけが無駄になるため、順番を誤らないことが重要。

相続土地国庫帰属制度は、「どうしても売れない土地を、費用を払ってでも手放したい」という限られたケースに向いた最終手段です。多くの実家では、片付けと査定を先に済ませ、買取・仲介の可能性を確かめてから判断したほうが、時間的にも金銭的にも合理的な結果になります。まずは現状の把握と査定から始めてみてください。

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この記事を書いた人

安心実家じまい事務局です。実家の片付けや遺品整理、空き家になった家の処分について、はじめての方にも分かるように記事を書いています。提携している現場の業者や司法書士と一緒に、費用の相場・自治体のごみ出しルール・補助金といった、調べてもなかなか分かりにくいところを一つずつ確かめながらまとめています。「誰に頼めばいいか分からない」という段階のご相談も、LINEやお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
運営は株式会社Sora Capital(東京都渋谷区・安心実家じまい事務局)です。相続・登記・法務に関する記述は、提携の司法書士・行政書士 久留慎一郎が監修しています。税額の計算や申告の判断は、税理士にご確認ください。

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