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残置物はそのまま売却できる?片付けと買取どちらが得か手取りで比較【判断チェックリスト付き】

最終更新日:2026年9月26日|監修:司法書士・行政書士 久留慎一郎先生・安心実家じまい事務局

司法書士・行政書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。

監修の範囲:相続・登記・法務に関する記述(司法書士・行政書士の業務範囲)。片付け・買取・費用相場などの記述は安心実家じまい事務局が編集しています。監修者プロフィール

税金について:税額の計算や特例を使えるかどうかの判断は税理士の業務で、監修の範囲に含みません。申告の前に、税理士または所轄の税務署でご確認ください。

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 不動産の名義変更
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理

この記事の結論

  • 残置物(家具・家電・衣類などの家財)を残したまま空き家や実家を売ることは、法律上まったく問題ありません。「片付けてから仲介で売る」か「残置物そのままの空き家買取で手放す」かは、片付け費用と時間、そして最終的な手取り額で比べて決めるのが合理的です。
  • 判断軸はシンプルです。「片付け費用+手間+時間」を払ってでも仲介の高値売却を狙うか、片付け費用ゼロでそのまま買取に出し早く現金化するか、この二択を自分の家のケースに当てはめて手取りで比較してください。
  • 残置物を放置したまま空き家を長期間ほったらかすと、管理不全空き家に指定され固定資産税が最大6倍になるリスクがあります(国土交通省)。「片付けるか売るか」を先延ばしにすること自体が一番損をする選択です。
  • 売却益が出た場合は相続空き家の3,000万円特別控除(国税庁タックスアンサーNo.3306)が使えることがあります。適用には昭和56年5月31日以前築などの要件があるため、事前確認が必須です。

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目次

残置物とは何か、そのまま売却できるのか【結論】

残置物とは、家具・家電・食器・衣類・布団・仏壇・農機具など、家の中や敷地に残されたままになっている動産(家財)のことです。相続した実家や空き家では、遺品整理や形見分けが済んでいないケースが多く、残置物がそのまま残った状態で「売却」を検討する相続人が少なくありません。

結論から言うと、残置物がある状態のまま空き家を売却すること自体に法律上の制限はありません。宅地建物取引業法や民法にも「残置物を撤去しなければ売却できない」という規定はなく、売主と買主が合意すれば、家財を残したままの引き渡しも可能です。ただし、誰に売るか(買取業者か、個人の買主か)によって、片付けが「必須」になるか「不要」になるかが大きく変わります。この違いを理解しないまま進めると、不要な片付け費用を払ってしまったり、逆にトラブルになったりします。

「そのまま売却」が現実的なケース

空き家専門の買取業者や、訳あり物件(再建築不可・立地が悪い・老朽化が進んでいるなど)を扱う買取業者に売る場合は、残置物を残したままの現状引き渡しに対応していることがほとんどです。買取業者は自社または提携する解体・処分業者を使って残置物ごと処分するため、売主が事前に片付ける必要がありません。特に、建物の解体や更地化を前提とした取引では、家財を先に片付けても売却額がほとんど変わらないため、そのまま買取に出したほうが合理的です。

「片付けてから売る」ほうが有利なケース

一方、一般の個人(実際に住む人)への仲介売却を目指す場合は、残置物を片付けてから引き渡すのが原則です。個人の買主は「すぐに住める・使える状態」を求めるため、家財が残ったままの物件は敬遠されやすく、内見時の印象も悪くなります。立地が良く建物の状態も悪くない空き家であれば、片付け費用(数万円〜数十万円)をかけてでも仲介で高値売却を狙うほうが、トータルの手取りが大きくなることがあります。

残置物と「付帯設備」の違いに注意する

残置物とよく混同されるのが「付帯設備」です。エアコン・給湯器・照明器具・キッチン設備など、建物に固定され生活インフラとして機能しているものは、原則として売買契約における付帯設備として扱われ、残置物(動産)とは区別されます。仲介で売却する場合は、契約書に「付帯設備表」を添付し、何を残して何を撤去するかを明記するのが一般的です。買取の場合も、口頭の合意だけで進めず、引き渡す対象を書面で確認しておくと、引き渡し後に「思っていたものと違う」というトラブルを避けられます。

共有名義の場合は全員の同意が前提

相続によって実家が複数の相続人による共有名義になっているケースも多く見られます。共有名義の不動産は、共有者全員の同意がなければ売却できません(民法上、共有物全体の処分には共有者全員の合意が必要とされています)。残置物を片付けるかどうか、そのまま買取に出すかどうかについても、後々のトラブルを避けるため、着手前に共有者間で方針を共有しておくことをおすすめします。共有名義の実家売却の詳しい進め方は実家売却は兄弟の共有名義でも進められる?もあわせてご覧ください。

片付けてから売るか、そのまま買取か──手取りで比べる判断軸

残置物のある家をどう売るかで一番大切なのは、「どちらが得か」を手取り額で比べることです。片付け費用・時間・売却価格の3つを天秤にかけて判断します。

比較項目 片付けてから仲介で売る 残置物ごと買取に出す
片付け費用 戸建てで20万〜50万円程度が目安(間取り・量による) 0円(買取業者が処分費込みで査定)
売却までの期間 片付け+販売活動で数か月〜半年以上 最短数日〜数週間で現金化できることが多い
売却価格の傾向 市場相場に近い価格を狙いやすい 仲介より1〜3割程度低くなる傾向
向いている物件 立地が良く、建物の状態が悪くない空き家 老朽化・再建築不可・遠方・立地が悪い空き家

この表からわかる通り、「片付け費用+時間をかけて高く売る」か「片付け費用ゼロで早く手放す」かのトレードオフです。立地や築年数で仲介需要が見込める家なら前者、老朽化が進み個人の買主がつきにくい家なら後者が合理的です。迷ったときは、空き家買取と実家の売却(仲介)の両方で査定を取り、実際の手取り額を数字で比べるのが確実です。査定は無料でできるため、判断材料として取り寄せることをおすすめします。

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残置物ありのまま売却する3つの方法【比較表】

残置物を残したまま手放す方法は、大きく分けて「買取」「仲介(現状渡し可の場合)」「有料引き取り」の3つです。当事務局は宅地建物取引業者ではないため、売買契約そのものは提携の宅建業者が担当し、当事務局は相談の窓口と片付け・立ち会いのサポートを行っています。

方法 費用の目安 現金化までの期間 向いているケース
買取(残置物ごと) 片付け費用0円。買取価格から処分費相当が差し引かれる形 1〜4週間程度 老朽化・遠方・急いで現金化したい空き家
仲介(現状渡し可の買主を探す) 片付け費用は物件次第で0〜数十万円 数か月〜半年以上(買主が見つかるまで) 立地が良く、訳あり物件専門の個人買主が見込める場合
有料引き取り 売却代金は得られず、引き取り費用がかかる場合がある 比較的短期間 買取価格がつかない極端に老朽化した空き家

「有料引き取り」は、買取業者が値段をつけられないほど老朽化・立地条件が悪い空き家を対象に、所有者側が費用を払って手放す方法です。国土交通省の調査でも、空き家の処分方法の一つとして紹介されています。買取価格がつくかどうかは物件次第のため、複数の窓口で査定を取り、買取と有料引き取りのどちらに該当するかを確認するところから始めるのが現実的です。詳しい費用相場や国のガイドラインは空き家の有料引き取りとは?費用相場・国のガイドラインで解説しています。

残置物の内容で費用感が変わる

買取価格や処分費用に影響しやすい残置物の例を挙げます。大型家具・家電(タンス・ソファ・冷蔵庫・洗濯機など)は搬出の手間がかかり、量が多いほど処分費用の目安が上がります。農機具・重機・物置なども同様です。一方、衣類・書籍・食器類は比較的軽量で、処分費用への影響は限定的です。仏壇・神棚など宗教的な意味を持つ物は、通常の粗大ごみとは別に、閉眼供養やお焚き上げの手配が必要になることがあり、費用も別途発生します。売却前にどのような残置物があるかをリストアップしておくと、査定や見積もりの精度が上がります。

残置物を放置するリスク──「決めない」ことが一番損をする

「そのうち片付ける」「そのうち売る」と先延ばしにしたまま空き家を放置すると、税負担が増えるリスクがあります。2023年12月13日施行の改正空家法(空家等対策の推進に関する特別措置法)により、適切な管理がされておらず、このまま放置すると「特定空家」になるおそれがある空き家は「管理不全空家」として市区町村から指導・勧告の対象になります。

管理不全空家として勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例(敷地200㎡以下の部分の課税標準を6分の1に軽減する制度)が解除され、勧告を受けた翌年の1月1日(賦課期日)から固定資産税が最大6倍になる可能性があります(国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」)。残置物が大量に残ったまま換気や庭木の手入れがされていない空き家は、この管理不全空家に該当しやすいため注意が必要です。

放置のコストは「固定資産税」だけではない

放置期間が長くなるほど、建物の劣化も進みます。雨漏りやシロアリ被害が進行すると、買取業者の査定額そのものが下がり、当初は買取がついた家でも「有料引き取り」対象に変わってしまうこともあります。判断を先延ばしにすること自体が、将来の手取り額を減らす一番のリスクだと考えておくべきです。

「特定空家」まで進むとさらに負担が重くなる

管理不全空家の状態からさらに放置が続き、倒壊のおそれや衛生上有害な状態にまで悪化すると、空家法上の「特定空家」に指定される可能性があります。特定空家に指定されると、市区町村から助言・指導、勧告、命令という段階を経て、最終的には行政代執行(自治体が強制的に解体などを行い、費用を所有者に請求する制度)の対象になることもあります。管理不全空家の段階で対応すれば固定資産税の増額で済みますが、特定空家まで進むと解体費用や命令違反への対応など、負担はさらに大きくなります。「まだ大丈夫」と先延ばしにせず、早い段階で片付け・売却・管理のいずれかの方針を決めることが、結果的に一番コストを抑える選択になります。

管理不全空き家に指定された場合の固定資産税の仕組みや対策については管理不全空き家は固定資産税が6倍に?勧告の仕組みと今からできる対策で詳しく解説しています。

空き家売却の税金の特例──3,000万円特別控除と取得費のルール

残置物のあるなしにかかわらず、空き家や実家を売って利益(譲渡所得)が出た場合は、所得税・住民税(譲渡所得税)の対象になります。ただし、相続した空き家には税負担を軽くできる特例があるため、売却前に必ず確認してください。金額や要件は国税庁タックスアンサーの一次情報に基づき、以下にまとめます。

相続空き家の3,000万円特別控除(国税庁タックスアンサーNo.3306)

正式名称は「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」です。主な要件は次の通りです(国税庁タックスアンサーNo.3306より)。

  • 相続または遺贈により取得した、被相続人が居住していた家屋であること
  • 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること(旧耐震基準の家屋が対象)
  • 相続の時から譲渡の時まで、事業用・貸付用・居住用に供されたことがないこと
  • 売却時に耐震基準を満たすよう耐震改修を行うか、家屋を取り壊して売ること
  • 特別な関係のない第三者への売却であること
  • 売却代金が1億円以下であること
  • 平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売ること、かつ相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること

控除額は最高3,000万円ですが、令和6年1月1日以降の譲渡で相続人が3人以上の場合は、1人あたり2,000万円に減額されます。適用期限は令和9年12月31日までと定められているため、対象になりそうな空き家は早めに要件を確認し、期限内の売却を検討してください。詳しい要件やシミュレーションは空き家の3,000万円特別控除の解説記事もあわせてご覧ください。

特別控除の適用イメージ(シミュレーション)

3,000万円特別控除が適用できるかどうかで、税額がどれだけ変わるかのイメージを整理します。以下はあくまで概算の考え方であり、実際の税額は所有期間・取得費・他の控除の有無などで変わるため、必ず税理士または税務署に確認してください。

項目 特例なし 3,000万円特別控除あり
売却代金 2,500万円 2,500万円
取得費(不明のため概算取得費5%) 125万円 125万円
譲渡所得(売却代金-取得費-譲渡費用) 課税対象になる 特別控除により課税対象から除外される部分が生じる
譲渡所得税・住民税 譲渡所得に応じて課税 控除額の範囲内であれば大幅に軽減される可能性

売却代金が控除額の範囲に収まるケースでは、特例の適用可否によって納税額が大きく変わることがあります。「昭和56年5月31日以前築」「相続開始から3年以内」など要件が細かいため、対象になりそうな場合は、売却の契約前に税理士へ確認しておくことを強くおすすめします。

取得費が分からないときの5%ルール(国税庁タックスアンサーNo.3258)

譲渡所得は「売却代金-(取得費+譲渡費用)」で計算します。実家のように購入時の契約書や領収書が見つからず、取得費が分からないケースは珍しくありません。この場合、国税庁タックスアンサーNo.3258により、売却代金の5%相当額を取得費とみなして計算できます(概算取得費)。例えば3,000万円で売却した場合、取得費が分からなければ150万円(売却代金の5%)を取得費として計上できます。実際の取得費が分かっていても、計算した金額が5%相当額より低い場合は、有利なほうである5%相当額を使うことも認められています。建物の取得費については、購入代金・建築代金の合計額から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた金額が基本となります(国税庁タックスアンサーNo.3252)。取得費や特例適用の具体的な判断は、税理士または税務署への確認をおすすめします。

片付けが必要なケース・不要なケースの見極め方

残置物を「片付けてから売る」べきか「そのまま売る」べきかは、以下の観点で判断します。

チェック項目 片付け推奨 そのままでも可
買主の想定 個人(住むための購入者) 買取業者・解体前提の業者
建物の状態 比較的良好、そのまま住める 老朽化・雨漏り・シロアリなど
立地 駅近・住宅地など需要が見込める 再建築不可・郊外・過疎地域
相続人の状況 片付けに立ち会える人がいる 遠方在住・高齢・立ち会いが難しい

片付けが必要と判断した場合でも、相続人自身がすべて仕分ける必要はありません。仏壇の供養、貴金属や骨董品の査定・買取、大型家具の搬出など、専門業者に任せたほうがスムーズな作業も多くあります。片付けの手間や時間が取れない場合は、実家じまい代行や遺品整理のサービスを使い、仕分けから搬出、必要なら買取査定までを一つの窓口にまとめる方法もあります。安心実家じまいでは、片付けと空き家の売却相談を同時に進められる体制を整えています。

残置物を自分で処分する場合の目安

「片付けてから仲介で売る」を選ぶ場合、自分たちで片付けるか、業者に依頼するかも判断が分かれます。それぞれのメリット・デメリットを整理します。

方法 費用の目安 メリット デメリット
自分たちで片付ける ゴミ処分費用のみ(数千円〜数万円) 費用を抑えられる。形見分けと並行できる 体力・時間がかかる。大型家具の搬出が困難
不用品回収業者に依頼 戸建て1軒で20万〜50万円程度が目安 短期間で一括処分できる 貴重品の見落としリスク。業者選びが必要
遺品整理業者に依頼 不用品回収より高めだが仕分け・供養にも対応 仕分け・供養・買取まで一括対応できる 費用は片付け専業の業者よりかかる傾向

自分たちで片付ける場合は、粗大ごみとしての自治体回収、リサイクルショップやフリマアプリの活用、家電リサイクル法対象品(エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機)の適正処分などを組み合わせる方法が一般的です。ただし、遠方に住んでいる、体力的に難しい、量が多すぎるといった場合は、無理に自分たちで進めず業者へ依頼したほうが、結果的に時間と労力を節約できます。

残置物ありのまま売却を進める手順

残置物を片付けずに売却を進める場合も、基本的な手順は通常の空き家売却と変わりません。

  1. 相続登記の確認:売却するには、故人名義のままでは進められず、相続人名義への相続登記が必要です。令和6年(2024年)4月1日から相続登記が義務化されており、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象になり得ます(法務局「相続登記が義務化されました」)。2024年4月1日より前に発生した相続にも遡って適用され、その場合の期限は2027年3月31日です。期限内に必要書類が揃わない場合は、簡易な「相続人申告登記」の制度で過料を回避できる救済措置もあります。相続登記が未了の場合は、売却の前提としてまず手続きを進めてください。
  2. 査定の依頼:残置物ありの状態のまま、買取業者に査定を依頼します。写真での概算査定に対応している業者も多く、現地を見ずに大まかな金額を把握できます。
  3. 買取と仲介の比較:可能であれば仲介での想定価格も取り寄せ、片付け費用を差し引いた手取りで比較します。
  4. 契約・引き渡し:買取の場合、残置物ごと現状のまま引き渡す契約を結びます。何が「残置物として引き渡す対象」に含まれるかは、契約書上で明確にしておくとトラブルを防げます。

なお、相続登記や名義変更などの法律手続きは、司法書士に依頼すると確実です。相続人が複数いる場合の遺産分割協議書の作成なども含め、専門家に早めに相談しておくと、売却のタイミングを逃さずに進められます。

残置物ありの売却でトラブルを避けるポイント

残置物があるままの売却は、通常の売却よりも「言った・言わない」のすれ違いが起きやすい取引です。事務局として相談を受ける中でよくあるトラブルと、その防ぎ方を紹介します。

  • 「全部撤去してくれると思っていた」という認識違い——買取だから残置物はすべて業者が処分してくれると思い込み、実際には一部が対象外だったというケースです。契約前に、どこまでが処分対象かを書面で確認してください。
  • 相場より極端に安い査定額を提示される——残置物の処分費用を過大に見積もり、買い叩かれるケースがあります。1社だけで決めず、複数業者から査定を取って比較することが防止策になります。
  • 相続人の一部の同意を得ないまま契約してしまう——共有名義の場合、共有者全員の同意なく契約を進めると、後から契約の有効性を巡るトラブルに発展します。着手前に相続人全員の合意を取り付けてください。
  • 相続放棄を検討している段階で処分してしまう——相続放棄をするかどうか決まっていない段階で残置物を処分・売却すると、法定単純承認とみなされ、後から相続放棄ができなくなることがあります。放棄の可能性が少しでもあるなら、着手前に司法書士や弁護士に相談してください。

いずれのトラブルも、「契約前に書面で確認する」「1社だけで判断しない」「相続人全員の合意を取る」という3点を徹底することで、多くは防げます。

ケース別シミュレーション

実際によくある3つのケースで、片付け費用と売却方法の考え方を整理します。金額はあくまで目安であり、実際の査定額は物件ごとに異なります。

ケースA:郊外の戸建て・築45年・残置物多め

昭和56年以前築で旧耐震基準に該当し、家財がほぼそのまま残っている典型的なケースです。個人の買主がつきにくい立地であれば、片付け費用をかけずに買取業者へ残置物ごと売却し、早期に現金化する方法が現実的です。3,000万円特別控除の要件(昭和56年5月31日以前築、相続開始から3年以内など)に当てはまるか、売却前に必ず確認してください。

ケースB:駅近の戸建て・築25年・比較的きれい

建物の状態が良く、個人の買主が見込める立地です。片付け費用(数十万円程度)をかけてでも、仲介で市場価格に近い売却を目指したほうが、トータルの手取りが大きくなる可能性があります。片付けは遺品整理業者に依頼し、供養が必要な仏壇などは別途手配するとスムーズです。

ケースC:遠方の実家・相続人が立ち会えない

相続人が遠方に住んでおり、現地での片付けに立ち会えないケースです。鍵を預けて片付けから査定・買取までを一括で任せられる窓口を使うと、現地に行けなくても手続きを進められます。残置物の仕分けと売却相談を同じ窓口にまとめることで、やり取りの手間を減らせます。

ケースD:相続人が複数・共有名義のまま放置されている

相続登記が未了で、複数の相続人による共有名義(または法定相続分での共有)のまま数年放置されているケースです。まず相続人全員で「売却する・しない」の方針を固め、相続登記を済ませたうえで査定に進む必要があります。残置物の仕分けについても、誰がどの品物を確認するかを事前に決めておくと、後日の「知らないうちに処分された」というトラブルを避けられます。相続人の人数が多い場合ほど、早い段階で司法書士に相談し、手続きの見通しを立てておくことをおすすめします。

県ごとの空き家買取窓口を探す

残置物ありの空き家買取は、対応できる業者やエリアの事情が都道府県ごとに異なります。安心実家じまいでは、都道府県別に空き家買取の相談窓口をご案内しています。例えば神奈川県の実家であれば神奈川県の空き家買取のページから、地域の事情を踏まえた相談が可能です。お住まいの、または実家がある都道府県のページから、残置物ありの状態でも相談できるかご確認ください。

将来のために今からできる備え

実家がまだ健在なうちから、残置物や売却について家族で話し合っておくと、いざというときの負担を大きく減らせます。特に効果があるのは次の3点です。

  • 不動産の権利書・登記事項証明書の保管場所を共有しておく——相続発生後、まずどこに何があるか分からず探すところから始まるケースが多くあります。あらかじめ家族で保管場所を共有しておくと、相続登記の着手がスムーズになります。
  • 貴重品・思い出の品のリストを作っておく——本人が元気なうちに、貴金属や骨董品など価値がありそうな品をリスト化しておくと、遺品整理・形見分けの際の判断がしやすくなります。
  • 「売る・貸す・空き家のまま」の希望を聞いておく——実家の将来について本人の希望を聞いておくと、相続後に相続人だけで判断する負担が減ります。エンディングノートに記しておく方法もあります。

こうした備えがない状態で相続が発生しても、慌てる必要はありません。相続登記・残置物の仕分け・売却先の選定は、順を追って進めれば必ず整理できます。判断に迷う場面が出てきたら、その都度、司法書士や税理士、売却の専門窓口に相談しながら進めてください。

印刷して使える確認チェックリスト

残置物のある空き家の売却に着手する前に、確認しておきたい項目を一覧にしました。印刷して、家族間の確認用にご活用ください。

確認項目 チェックのポイント
相続登記は済んでいるか 故人名義のままでは売却できない。未了なら先に手続きする
遺言書・遺産分割協議書の確認 売却の合意が相続人全員で取れているか確認する
建築年の確認 昭和56年5月31日以前築なら3,000万円特別控除の対象になり得る
買取・仲介・有料引き取りの見積もり比較 複数窓口で査定を取り、手取り額で比較する
残置物のうち貴重品の有無 貴金属・骨董品などは先に査定・買取を検討する
仏壇・位牌の供養の要否 売却前に供養・お焚き上げの手配が必要か確認する
取得費の資料(契約書・領収書)の有無 見つからない場合は概算取得費(売却代金の5%)を使える
売却の期限 特例の期限(令和9年12月31日)や相続開始から3年以内かを確認する

よくある質問

残置物を片付けずに空き家を売ることは法律上問題ありませんか?
問題ありません。残置物がある状態での売却を禁じる法律上の規定はなく、売主と買主が合意すれば現状のままの引き渡しも可能です。ただし、個人の買主への仲介売却では片付けを求められることが一般的なため、買取業者に売る場合との違いを理解して進める必要があります。
残置物ごと買取に出すと、査定額はどのくらい下がりますか?
下がり幅は物件や残置物の量によって異なり、一概の金額はお伝えできません。買取価格には、業者が負担する残置物の処分費用相当額が反映される仕組みのため、量が多いほど影響が出やすい傾向があります。実際の金額は、片付けありなしの両方で査定を取り比較することをおすすめします。
3,000万円特別控除はいつまで使えますか?
令和9年(2027年)12月31日までに売却することが要件の一つです。加えて、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。昭和56年5月31日以前に建築された家屋であることなど、他の要件も満たす必要があるため、対象になるかどうかは早めに確認してください(国税庁タックスアンサーNo.3306)。
取得費の書類が見つからない場合はどうすればよいですか?
購入時の契約書や領収書が見つからない場合、国税庁のルールにより売却代金の5%相当額を取得費とみなして計算できます(概算取得費)。実際の取得費がこれより低い場合でも、有利な5%相当額を使うことが認められています。詳しくは税理士または税務署に確認してください。
片付けと売却の相談は同じ窓口でできますか?
安心実家じまいでは、残置物の仕分け・片付けと、空き家の買取・売却の相談を同じ窓口でご案内しています。当事務局は宅地建物取引業者ではないため、実際の売買契約は提携の宅建業者が担当し、当事務局は相談の窓口と片付けのサポートを行います。遠方にお住まいの場合も、鍵をお預かりして進める方法があります。
相続登記をしないまま残置物ごと売却することはできますか?
できません。売却するには、まず不動産の名義を故人から相続人へ変更する相続登記を済ませる必要があります。令和6年4月1日から相続登記は義務化されており、相続を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象になり得ます。未了の場合は、査定と並行して早めに司法書士へ相談し、登記手続きを進めることをおすすめします。
共有名義の実家でも、残置物ありのまま売却できますか?
売却は可能ですが、共有名義の不動産は共有者全員の同意がなければ売却できません。残置物を片付けるかどうか、買取と仲介のどちらを選ぶかについても、着手前に共有者間で方針を共有しておくとトラブルを防げます。人数が多い場合や意見が分かれる場合は、早めに司法書士へ相談することをおすすめします。

まとめ

残置物のある実家・空き家は、片付けずにそのまま売却することも法律上可能です。大切なのは、「片付け費用+時間をかけて高く売る」か「片付け費用ゼロで早く手放す」かを、自分の家の立地・建物状態・相続人の状況に当てはめて、手取り額で比較して決めることです。振り返ります。

  • 残置物を残したままの売却は法律上問題ない。買取業者なら現状渡しに対応していることが多い
  • 判断軸は「片付けてから仲介で高く売る」か「そのまま買取で早く現金化する」かの手取り比較
  • 放置を続けると管理不全空家に指定され、固定資産税が最大6倍になるリスクがある
  • 相続空き家の3,000万円特別控除は令和9年12月31日までの期限つき。昭和56年5月31日以前築などの要件を確認する
  • 取得費が分からない場合は、売却代金の5%を取得費とみなせる
  • 片付けの手間が取れない場合は、実家じまい代行や遺品整理のサービスを使い、売却相談と同じ窓口にまとめる方法がある

残置物のある空き家をどう手放すかに、絶対の正解はありません。ご家族の状況と物件の条件に合わせて、無理のない方法を選んでください。相続登記や税金の特例など、法律・税務に関わる判断は、一人で抱え込まず司法書士や税理士に相談することをおすすめします。あわせて実家の売却の基本的な流れも確認しておくと、進め方のイメージがつかみやすくなります。

読むより、聞いたほうが
早いこともあります

残置物ありのままでも査定できます。写真を送るだけで概算のお見積もりをお出しします。ご相談・お見積もりは無料です。

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この記事を書いた人

安心実家じまい事務局です。実家の片付けや遺品整理、空き家になった家の処分について、はじめての方にも分かるように記事を書いています。提携している現場の業者や司法書士と一緒に、費用の相場・自治体のごみ出しルール・補助金といった、調べてもなかなか分かりにくいところを一つずつ確かめながらまとめています。「誰に頼めばいいか分からない」という段階のご相談も、LINEやお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
運営は株式会社Sora Capital(東京都渋谷区・安心実家じまい事務局)です。相続・登記・法務に関する記述は、提携の司法書士・行政書士 久留慎一郎が監修しています。税額の計算や申告の判断は、税理士にご確認ください。

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