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実家売却は兄弟の共有名義でも進められる?解消方法と手取りの比較【判断チェックリスト付き】

最終更新日:2026年9月14日|監修:司法書士・行政書士 久留慎一郎先生・安心実家じまい事務局

司法書士・行政書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。

監修の範囲:相続・登記・法務に関する記述(司法書士・行政書士の業務範囲)。片付け・買取・費用相場などの記述は安心実家じまい事務局が編集しています。監修者プロフィール

税金について:税額の計算や特例を使えるかどうかの判断は税理士の業務で、監修の範囲に含みません。申告の前に、税理士または所轄の税務署でご確認ください。

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 不動産の名義変更
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理

この記事の結論

  • 兄弟で実家を共有名義のまま放置すると、2024年4月から相続登記が義務化され、正当な理由なく3年以内に登記しないと10万円以下の過料の対象になり得ます(法務局)。
  • 判断に迷ったら、まず「片付けてから売るか、そのまま買取に出すか、手取り額で比べる」のが最短ルートです。片付け費用・仲介手数料・譲渡所得税を差し引いた「手取り」で比較すると、感情論を挟まずに兄弟間の合意を作りやすくなります。判断に迷う場合は実家の売却(片付けから売却まで窓口ひとつ)で無料相談できます。
  • 共有名義の解消方法は主に「換価分割(売って現金で分ける)」「代償分割(一人が住み、他へ現金を払う)」「持分売却」の3つ。全員の合意が要らない方法もあるため、対立していても解消手段はあります。
  • 相続開始から3年目の年末までに売却すれば、要件を満たす場合「空き家の3,000万円特別控除」(国税庁タックスアンサーNo.3306)が使え、期限は令和9年(2027年)12月31日までの譲渡分です。期限が近い場合は判断を急ぐ必要があります。

兄弟の共有名義になった実家の売却や、共有持分の買取については、共有持分の売却・買取の相談窓口で、片付けとあわせて無料でご相談いただけます。

目次

実家が兄弟の共有名義になる2つのパターン

親が亡くなり実家を相続する場面で、兄弟が「共有名義」になるケースには大きく2つの経路があります。ひとつは、遺産分割協議の際に「とりあえず法定相続分どおりに共有にしておこう」と決めるパターンです。誰か一人が単独で相続すると決めきれない、あるいは急いで相続登記だけ済ませたい事情がある場合に選ばれやすい方法ですが、後から売却や活用の方針で意見が割れる火種になりがちです。

もうひとつは、遺産分割協議そのものを行わず、実家の名義が亡くなった親のまま、あるいは相続人全員の共有として法定相続分で登記された状態のまま何年も放置されるパターンです。こちらは「協議をしていない」というだけで、法律上は相続人全員が共有持分を持つ状態になっています。仲が悪いわけではなく、単に「誰も手続きを進めなかった」という理由で共有状態が続いているケースも少なくありません。

どちらのパターンも、相続が発生した直後は「まだ気持ちの整理がついていない」「葬儀や各種手続きに追われて実家のことまで手が回らない」といった事情から生じやすいものです。悪意や対立があって共有状態になっているわけではないケースが大半であるにもかかわらず、時間が経つほど手続きが複雑化し、結果的に「最初から対立していたわけではないのに、いつの間にか話し合いが難しくなっていた」という状況に陥りやすい点が、この問題の厄介なところです。だからこそ、早い段階で「いつまでに、何を決めるか」を意識しておくことが重要になります。

どちらのパターンであっても、共有名義の不動産は、原則として共有者全員の同意がなければ売却できません(民法上、共有物全体の処分には共有者全員の同意が必要です)。逆に言えば、自分の持分だけを売る、あるいは持分に応じた賃料を請求するといった行為は、他の共有者の同意がなくても法律上は可能な場合があります。この「全員の同意が必要な行為」と「単独でもできる行為」の違いを最初に理解しておくと、兄弟間の話し合いが整理しやすくなります。

兄弟間で意見が対立する背景には、単なる金銭的な損得だけでなく、「実家に対する思い入れの差」が影響していることも少なくありません。同居していた期間が長い兄弟と、早くに独立して離れて暮らしていた兄弟とでは、実家への感情的な距離感が異なるのは自然なことです。どちらの感じ方も否定せず、まずはお互いの立場を認め合ったうえで、現実的な手続きの話に進めていくことが、円滑な話し合いの土台になります。

共有名義に関する用語の整理

話し合いを進める前に、混同しやすい用語を整理しておきます。「共有持分」とは、共有者それぞれが持つ、不動産に対する権利の割合のことです。「法定相続分」とは、民法で定められた相続人ごとの取り分の割合で、兄弟のみが相続人の場合は原則として均等(兄弟2人なら2分の1ずつ)になります。「共有物の変更行為」(売却・大規模リフォームなど)は共有者全員の同意が必要、「管理行為」(賃貸借契約の締結など)は持分価格の過半数の同意で足りる、「保存行為」(修繕・不法占拠者への明け渡し請求など)は単独でも行えるというように、行為の性質によって必要な同意の範囲が異なります。この違いを押さえておくと、「これは自分一人でもできるのか、兄弟全員の合意が必要なのか」を都度整理しやすくなります。

共有名義のまま放置するとどうなるか【4つの法的リスク】

「話し合いがまとまらないから、とりあえずそのままにしておく」という選択は、実は年々コストが上がっていく選択でもあります。一次情報で確認できる制度上のリスクを整理します。

リスク①相続登記の義務化(2024年4月1日施行)

不動産登記法の改正により、2024年4月1日から相続登記が義務化されました。相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならず、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり得ます。この改正は2024年4月1日より前に発生した相続にも遡って適用され、施行日の時点ですでに相続を知っていた場合は、施行日から3年後の2027年3月31日が期限の目安になります。相続登記の手続きが難しい場合、簡易な「相続人申告登記」を行うことで過料を回避できる制度もあります(法務局)。相続人申告登記は、遺産分割協議がまとまっていない段階でも、「自分がこの被相続人の相続人である」ことを法務局へ申し出るだけで済む簡易な手続きで、通常の相続登記のように戸籍一式をすべて揃える必要がなく、相続人の一人からでも単独で申し出ることができます。ただしこの申告登記はあくまで暫定的な対応であり、実際に不動産を売却する際には、別途正式な相続登記(遺産分割協議に基づく所有権移転登記)を行う必要がある点に注意してください。相続登記の費用と自分でやる方法もあわせてご覧ください。

リスク②管理不全空き家に認定されると固定資産税が上がる

2023年12月13日に施行された改正空家等対策特別措置法(空家法)により、「特定空家」になる一歩手前の状態を指す「管理不全空家」という区分が新設されました。市区町村から管理不全空家として勧告を受けると、住宅用地の固定資産税の軽減特例(住宅用地特例)が解除され、土地の固定資産税が数倍に増える可能性があります(国土交通省)。誰も住まず片付けもされないまま共有名義で塩漬けになっている実家は、この管理不全空家に該当しやすい典型例です。

認定までの流れとしては、まず市区町村が実態調査を行い、管理が不十分と判断された場合に「助言・指導」が行われます。それでも改善が見られない場合に「勧告」に進み、勧告を受けた時点で住宅用地特例が解除されます。さらに状態が悪化し、倒壊の危険があるなど周辺に危険を及ぼすおそれがあると判断されれば、より重い区分である「特定空家」として「命令」や「代執行(行政による強制的な解体等)」の対象になることもあります。共有名義の場合、こうした助言・指導・勧告は共有者全員に対して行われる可能性があるため、「自分は知らなかった」では済まされない点にも注意が必要です。

リスク③空き家の3,000万円特別控除には期限がある

相続した空き家を売却する際に使える「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(国税庁タックスアンサーNo.3306)は、譲渡所得から最大3,000万円(相続人が3人以上の場合は1人あたり最大2,000万円)を控除できる制度です。ただしこの特例には「相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」に売却するという期限に加え、制度自体の適用期限が令和9年(2027年)12月31日までの譲渡分までと定められています。共有名義のまま話し合いを先延ばしにしている間に、この期限を過ぎてしまうと数百万円単位の税負担の差につながる可能性があります。例えば譲渡所得が1,500万円生じるケースで、特例が使えれば控除額の範囲内に収まり譲渡所得税がかからない一方、期限切れで特例が使えなければ、長期譲渡所得の税率20.315%が適用され、単純計算で「1,500万円×20.315%=約305万円」の税負担が生じる可能性があります(実際の税額は取得費や譲渡費用の内容によって変動するため、あくまで概算のイメージです)。この差の大きさからも、期限の確認がいかに重要かが分かります。

リスク④代替わりで共有者がねずみ算式に増える

共有者である兄弟の誰かが亡くなると、その持分はさらにその子(甥・姪)に相続され、共有者の数が増えていきます。総務省の令和5年住宅・土地統計調査では、全国の空き家数は900万戸、空き家率は13.8%と過去最多を更新しており、こうした「相続したが手続きが進まない空き家」が全国的に積み上がっていることが背景にあります。共有者が増えるほど、全員の同意を取り付けるハードルは上がり、いずれ「話し合いすら困難な状態」になりかねません。

この調査では、賃貸用・売却用および二次的住宅(別荘など)を除いた「その他の住宅」に分類される空き家が385万戸にのぼり、総住宅数に占める割合は5.9%とされています。この「その他の住宅」に分類される空き家の多くが、相続後に活用も売却もされないまま放置されている実家だと考えられています。兄弟間の話し合いが数年単位で先延ばしになること自体は珍しいことではありませんが、全国的にも同じ状況にある世帯が増え続けているという背景を知っておくと、「うちだけの特殊な事情ではない」という前提で、落ち着いて話し合いを進めやすくなります。

「何もしない」を続けた場合の10年間コスト試算

共有名義のまま話し合いを先延ばしにし続けた場合、どの程度の負担が積み上がるのか、仮の数字でイメージしてみます。以下はあくまで理解のための試算例であり、実際の税額・評価額は自治体や物件ごとに異なります。

経過年数 想定される状態 負担の目安(仮の試算)
相続開始〜3年 空き家特例の適用期限内。相続登記も義務化の期限内 固定資産税(住宅用地特例適用で軽減された状態)を按分で負担
3年超 空き家の3,000万円特別控除が使えなくなる(相続開始から3年経過後の年末を過ぎた場合) 譲渡所得税・住民税が数百万円単位で増える可能性
相続登記の義務化期限超過 正当な理由なく相続登記をしていない状態 10万円以下の過料の対象になり得る(法務局)
管理不全空家の勧告を受けた場合 住宅用地特例が解除された状態 土地の固定資産税が数倍(最大6倍程度)に増える可能性(国土交通省)
共有者の一人が死亡 その持分がさらに子(甥・姪)に相続される 共有者の人数が増え、以後の合意形成コストが上昇

この試算からも分かるとおり、「今は忙しいから」と先延ばしにするコストは、時間の経過とともに金銭的にも手続き的にも重くなっていきます。逆に言えば、早い段階で方針を決めれば、これらのコストの多くは回避できます。

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遺産分割協議の進め方【6ステップ】

共有名義を解消する前提として、まだ遺産分割協議が終わっていない場合は、次の流れで進めるのが一般的です。すでに法定相続分どおりの共有登記が済んでいる場合でも、後から遺産分割協議を行い、単独名義や別の分け方に変更すること自体は可能です。

STEP1:遺言書の有無を確認する

まず自宅や貸金庫、法務局の自筆証書遺言書保管制度、公証役場の公正証書遺言検索システムなどで、遺言書が残されていないかを確認します。遺言書があれば、原則としてその内容が遺産分割協議より優先されます。

STEP2:法定相続人を確定する

被相続人の出生から死亡までの戸籍を収集し、法定相続人が誰であるかを確定します。異母・異父きょうだいや、認知した子がいる場合など、想定していなかった相続人が判明することもあるため、専門家(司法書士)に依頼して漏れなく調査することをおすすめします。

STEP3:相続財産を確定する

実家などの不動産に加え、預貯金・有価証券・借入金(負債)など、相続財産の全体像を把握します。不動産については、固定資産税の納税通知書や登記事項証明書、名寄帳などで所在地・評価額を確認します。

STEP4:実家の評価額を確認する

遺産分割協議を行ううえで、実家の評価額の目安が必要になります。固定資産税評価額、相続税評価額(路線価方式または倍率方式)、不動産業者による査定額など、目的によって使う評価額が異なるため、代償分割を検討する場合は複数の評価額を確認しておくと、金額の妥当性について話し合いやすくなります。自分で概算を把握したい場合は、毎年送られてくる固定資産税の納税通知書に記載された「固定資産税評価額」を確認する方法が手軽です。一般的に、固定資産税評価額は実勢価格(市場での取引価格)のおおむね7割程度、相続税評価額(路線価)は8割程度が目安とされることが多いため、これらの数字から逆算しておおよその実勢価格を推測できます。ただし、これはあくまで一般的な目安であり、実際の売却価格は立地や建物の状態によって大きく変わるため、最終的な判断には不動産業者による査定を必ず利用してください。特に、共有名義のまま代償分割の金額を決める場面では、評価額の算出方法について兄弟間で事前に合意しておかないと、後になって「その金額の根拠は何か」という疑問が生じやすくなります。査定を依頼する段階から、どの評価額を基準に話を進めるのかを共有しておくことをおすすめします。

STEP5:遺産分割協議を行い、協議書を作成する

相続人全員で話し合い、誰がどの財産をどのように取得するかを決めます。合意した内容は「遺産分割協議書」として書面にまとめ、相続人全員が実印を押印し、印鑑証明書を添付します。この協議書が、後の相続登記や預貯金の解約手続きに必要になります。

STEP6:相続登記を申請する

遺産分割協議書などの必要書類をそろえ、法務局に相続登記を申請します。共有名義のまま登記する場合も、単独名義に変更する場合も、この申請によって名義が確定します。2024年4月1日以降は、相続を知った日から3年以内にこの申請を行うことが義務付けられています。

共有名義を解消する5つの方法【比較表】

共有名義の実家を「誰か一人の単独名義にする」「現金化して分ける」といった形に整理する方法は、主に5つあります。全員の合意が必要な方法と、単独でも進められる方法があるため、兄弟間の対立の程度に応じて選べます。どの方法を選ぶにしても、まず「実家をどうしたいか」という兄弟それぞれの希望を、一度紙に書き出して共有することから始めると、話し合いの土台が作りやすくなります。「売りたい」「住みたい」「まだ決められない」という3つの立場のうち、自分がどこに当てはまるかを兄弟全員が言葉にするだけでも、対立点が見えやすくなります。

方法 概要 全員の合意 現金化 向いているケース
換価分割 実家を売却し、代金を相続割合に応じて分配する 必要 できる 誰も住む予定がなく、平等に分けたい場合
代償分割 一人が実家を取得し、他の兄弟へ持分相当の現金を支払う 必要 取得者以外はできる 誰かが住み続けたい・活用したい場合
持分売却(自分の持分のみ) 自分の共有持分だけを不動産業者や第三者に売却する 不要(単独でできる) できる(相場は目減りしやすい) 他の共有者と協議が難航している場合
持分の買取・買い戻し 他の共有者から自分の持分を買い取ってもらう、または自分が買い取る 相手との合意が必要 片方はできる 特定の兄弟が実家に強い思い入れを持つ場合
共有物分割請求(訴訟) 協議が整わない場合に裁判所へ分割を求める手続き 不要(法的手続き) 結果的にできることが多い 話し合いが完全に決裂した場合の最終手段

実務上もっとも多いのは「換価分割」、次いで「代償分割」です。共有物分割請求は時間と費用がかかるため、まずは話し合いによる解消を目指し、どうしても進まない場合の最終手段として選択肢に入れておく、という位置づけで考えるとよいでしょう。どの方法を選ぶ場合でも、最終的には相続登記(名義変更)を経なければ売却や担保設定はできないため、方針が決まった時点で早めに司法書士へ相談し、必要書類の準備を並行して進めておくと、全体のスケジュールを短縮しやすくなります。

話し合いが決裂した場合の「共有物分割請求」とは

兄弟間の話し合いがどうしてもまとまらない場合、民法上は裁判所に「共有物分割請求訴訟」を申し立てることができます。共有者であれば誰でも、いつでも請求できる権利です。裁判所は事案に応じて、次のいずれかの方法で分割を命じます。

  • 現物分割——土地であれば実際に分筆して、各共有者が単独名義の土地を取得する方法です。建物がある場合は物理的に分けるのが難しく、選ばれにくい方法です。
  • 代償分割(全面的価格賠償)——一人の共有者が不動産を単独で取得し、他の共有者に持分相当額を金銭で支払う方法です。取得する側に支払い能力があることが前提になります。
  • 換価分割(競売分割)——裁判所の関与のもとで不動産を競売にかけ、売却代金を持分割合に応じて分配する方法です。任意売却よりも価格が下がりやすい傾向があるとされています。

訴訟には時間(半年〜1年以上かかることもあります)と弁護士費用がかかるため、最終手段と位置づけ、まずは話し合いや調停での解決を目指すのが現実的です。話し合いが平行線をたどっている段階でも、「このまま進まなければ最終的には裁判所の手続きに進む可能性がある」という見通しを共有するだけで、話し合いが前進することもあります。

売却の判断軸:片付けてから売る・そのまま買取・手取りで比較する

兄弟で意見が割れやすいのが「片付けてから仲介で高く売りたい」派と「面倒なので早くそのまま買い取ってほしい」派の対立です。どちらが正しいというものではなく、手取り額(受け取れる現金から、片付け費用・手数料・税金を差し引いた金額)で比較することが、感情的な対立を避ける近道です。当事務局は宅建業者ではないため、実際の買取・仲介の契約や査定は提携の宅建業者が担当し、当事務局は片付けと窓口をまとめて担当する形になります。売却の判断や空き家買取と仲介の比較は、まず概算の手取りを出してから検討することをおすすめします。

仲介・買取・有料引き取りの3択比較表

仲介(片付け後に売却) 買取(そのまま売却) 有料引き取り(老朽化が進んだ場合)
売却価格の傾向 相場に近い価格になりやすい 相場の6〜8割程度になることが多い 価格はつかず、引き取り費用がかかる
売却までの期間 数か月〜半年以上かかることがある 数週間〜1か月程度で現金化しやすい 比較的短期間
片付け・修繕の要否 必要(家財撤去・簡易リフォームを求められることも) 不要な場合が多い(現状のまま) 不要
兄弟間の負担 片付けの分担や修繕費用の負担で揉めやすい 負担が少なく合意を得やすい 費用負担について事前合意が必要
向いているケース 立地が良く、時間をかけても高く売りたい場合 老朽化している・遠方で手をかけられない場合 倒壊の危険があるなど、通常の売却が難しい場合

片付けに時間や手間をかけたくない、あるいは兄弟の誰も現地に頻繁に行けないという場合は、片付けから買取までを一つの窓口でまとめて相談する方法もあります。片付けの進め方は実家じまい代行、遺品の仕分けや供養が中心であれば遺品整理のご相談を承っています。

兄弟で片付けを分担するときの注意点

実家の片付けは、売却方法を仲介・買取のどちらにするかにかかわらず、多くの場合で必要になる作業です。兄弟で分担する場合、まず「残す物(形見分けの候補)」「処分する物」「判断に迷う物」の3つに分けて仕分けを進めると、作業が整理しやすくなります。形見分けの進め方や、贈与税との関係については形見分けはいつ・どこまで?時期とマナー、贈与税の注意点で詳しく解説しています。遠方に住む兄弟がいる場合は、写真で家財の状態を共有しながら、現地に行ける兄弟が中心になって進め、後日まとめて報告するという分担も現実的です。作業日程を合わせるのが難しい場合は、片付け業者に立ち会いなしで依頼し、作業前後の写真を共有してもらう方法もあります。

仲介手数料・諸費用の目安

仲介で売却する場合の仲介手数料は、宅地建物取引業法で上限が定められており、速算法では「売却価格×3%+6万円(税別)」が一般的な上限額の目安です。例えば売却価格が2,000万円であれば、仲介手数料の上限は「2,000万円×3%+6万円=66万円(税別)」となります。このほか、相続登記の登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)、印紙税、必要に応じて解体費用や測量費用などがかかります。買取の場合は仲介手数料が発生しないことが多い一方、売却価格自体が相場より低くなる傾向があるため、諸費用の差も含めて手取り額を比較することが大切です。

不動産の売買契約書に貼付する印紙税には軽減措置があり、令和9年3月31日までに作成される契約書については、契約金額1,000万円超5,000万円以下で1万円、5,000万円超1億円以下で3万円が目安となります(国税庁)。実家の売却価格の多くはこの範囲に収まることが多いため、諸費用の概算に組み込んでおくとよいでしょう。

ケース別シミュレーション:兄弟の実家、こう進める

実際の相談でよくある4つのパターンについて、進め方の考え方を整理しました。金額の例はあくまで理解のための仮の数字であり、実際の税額・査定額は個別の事情によって異なります。正確な税額は税理士・税務署へ、登記手続きは司法書士へご確認ください。

ケースA:兄弟2人、誰も住む予定がなく平等に分けたい

もっともシンプルなケースです。実家を売却し、代金を法定相続分(多くの場合は2分の1ずつ)で分ける「換価分割」を選びます。売却前に相続登記を済ませておく必要があるため、まず司法書士に相談し、名義を相続人全員の共有名義(または売却時にまとめて手続きできる形)に変更してから、宅建業者に査定を依頼する流れになります。

仮の数字で考える手取りの目安:売却価格2,000万円、取得費が分からず概算取得費(譲渡価額の5%)である100万円を採用、譲渡費用(仲介手数料等)を100万円とすると、譲渡所得の概算は「2,000万円-100万円-100万円=1,800万円」。ここから空き家の3,000万円特別控除の要件を満たせば譲渡所得はゼロとなり、譲渡所得税はかからない計算になります(要件を満たさない場合は税率が異なるため、必ず税理士に確認してください)。

このケースで見落とされがちなのが、片付け費用の扱いです。片付け費用は譲渡所得の計算上、直接的な取得費や譲渡費用には含まれないのが原則ですが、家財を撤去してから引き渡すことで買主が見つかりやすくなり、結果的に売却価格が上がる、あるいは早期に売却できるという効果が期待できます。片付け費用と、片付けをしないことで生じる値引き交渉の可能性を比較し、どちらが手取りとして有利かを検討するとよいでしょう。

相続人が3人以上の場合の控除額の違い:兄弟が3人以上いる場合、空き家の3,000万円特別控除は1人あたり最大2,000万円が上限になります。例えば兄弟3人が均等に相続し、それぞれが要件を満たして特例を適用する場合、合計での控除上限は「2,000万円×3人=6,000万円」となり、譲渡所得がこの範囲に収まれば税負担なく売却できる可能性があります。ただし各相続人が個別に要件(家屋の要件・譲渡期限など)を満たす必要があるため、誰か一人でも要件から外れると、その人の分だけ控除が使えなくなる点に注意が必要です。

ケースB:兄の一人が実家に住み続けたい、弟は現金がほしい

「代償分割」を検討します。実家を兄が単独で相続する代わりに、弟の持分に相当する金額を兄が現金で支払う方法です。実家の評価額(固定資産税評価額や不動産業者の査定額)をもとに金額を算出し、兄に支払い能力があるかが分かれ目になります。支払いが難しい場合は、住宅ローンの借り換えや、実家を担保にした資金調達を検討することもありますが、いずれも司法書士・金融機関への相談が前提になります。

代償分割で特に注意したいのが、評価額の決め方です。固定資産税評価額は実勢価格(市場での売買価格)より低めに算出される傾向があるため、固定資産税評価額だけを基準にすると、現金を受け取る側が不利に感じることがあります。不動産業者による無料査定を複数社から取り、実勢価格に近い金額を基準にすることで、双方が納得しやすい金額に近づけやすくなります。

ケースC:10年以上空き家のまま放置していた

片付けが進まないまま長期間放置していた実家は、管理不全空き家に認定されて固定資産税が上がるリスクがあるだけでなく、老朽化により買取価格が下がりやすい状態でもあります。このケースでは、まず片付け(家財の撤去・仕分け)を先に進め、建物の状態を確認したうえで「仲介で売る」「そのまま買取に出す」「解体して更地で売る」のいずれが手取り最大化につながるかを比較します。空き家の3,000万円特別控除は「相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」という期限があるため、放置期間が長い場合は期限を過ぎていないか、まず確認することが最優先です。

10年以上放置された実家では、雨漏りやシロアリ被害、庭木の越境など、近隣とのトラブルにつながる問題が進行していることも珍しくありません。売却を検討する前に、まず建物の状態を確認する簡易点検を行い、修繕が必要な箇所を把握しておくと、査定や買取の交渉がスムーズになります。空き家特例の期限をすでに過ぎている場合でも、譲渡所得税の税率自体は変わらないため、諦めずに手取り額の試算だけは行っておくことをおすすめします。また、長期間放置された実家は、近隣住民から自治体へ苦情が寄せられ、市区町村から助言・指導を受けている場合もあります。心当たりがある場合は、自治体の空き家対策担当窓口に現在の指導状況を確認しておくと、今後の対応方針を立てやすくなります。

ケースD:兄弟の一人が遠方に住んでいて疎遠

連絡が取りにくい共有者がいる場合でも、売却をあきらめる必要はありません。まずは書面(内容証明郵便など)で連絡を試み、それでも応じない場合は、共有物分割請求など法的手続きを検討することになります。感情的なこじれを避けるため、早い段階で司法書士や弁護士に間に入ってもらう方法も有効です。連絡自体が取れない共有者がいる場合の手続きは、個別の事情によって大きく異なるため、専門家への早めの相談をおすすめします。

疎遠になっていた理由がさまざまな家庭の事情による場合、いきなり売却の話を切り出すと、かえって態度を硬化させてしまうこともあります。まずは近況報告や体調を気遣う内容から始め、実家の現状(固定資産税の負担状況や老朽化の程度など)を客観的な事実として伝えることから始めると、話し合いのきっかけを作りやすくなります。感情面のやり取りが難しい場合は、司法書士などの第三者を介して事務的な連絡から始める方法も有効です。また、疎遠な兄弟の連絡先が分からなくなっている場合は、戸籍の附票を取得することで現在の住所を調査できます。相続人であれば、必要書類を揃えたうえで自分の戸籍の附票を取得できるため、まずは司法書士に相談し、調査の進め方を確認するとよいでしょう。

ケースE:実家にまだ住宅ローンや抵当権が残っている

親が実家を購入した際の住宅ローンが完済されておらず、抵当権が設定されたまま相続が発生しているケースもあります。この場合、まず金融機関に連絡し、残債の状況を確認する必要があります。抵当権が残ったままでは、原則として売却代金から残債を一括返済したうえで抵当権を抹消しなければ、買主への所有権移転登記ができません。相続人が団体信用生命保険(団信)の適用対象かどうかによっても対応が変わるため、通帳や返済予定表などの資料を早めに探し、金融機関・司法書士に相談することが優先されます。

売却代金だけで残債を完済できない「オーバーローン」の状態にある場合は、自己資金での補填や、任意売却といった特殊な手続きが必要になることもあります。兄弟の誰かが立て替えて残債を精算した場合は、後日その分を代償分割の計算に反映させるなど、負担の公平性を確保する工夫も必要です。ローンの残債状況は、相続人であれば金融機関に確認できる場合が多いため、早い段階で残高証明書を取り寄せておくと、その後の資金計画が立てやすくなります。

ケースF:親が認知症になった後に共有名義で相続した

親が生前に認知症などで判断能力が低下していた場合、生前贈与や遺言書の作成が難しく、結果として法定相続分どおりの共有名義になりやすい傾向があります。このケースでは、相続開始後に成年後見制度を利用していた形跡がないか、遺産分割協議書が有効に成立しているかを確認することが重要です。判断能力に関する疑義が後から生じると、遺産分割協議のやり直しなど手続きが複雑化することもあるため、少しでも不安がある場合は早めに司法書士へ相談してください。

また、親が認知症になる前に実家の名義や資産状況について家族で話し合っておくことは、将来の共有名義トラブルを未然に防ぐ有効な対策でもあります。判断能力が低下する前であれば、生前贈与や家族信託、遺言書の作成といった選択肢を取ることができ、相続開始後の共有名義化を避けやすくなります。すでに認知症の親がいる場合でも、実家の管理方法について今のうちから兄弟間で情報共有をしておくことは、将来の負担軽減につながります。

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売却前に確認したい税金の一次情報3つ

空き家の3,000万円特別控除(国税庁タックスアンサーNo.3306)の要件

この特例を使うには、主に次の要件をすべて満たす必要があります(国税庁公表情報より)。

  • 売却する家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたものであること
  • 区分所有建物登記がされていない、一戸建てなどの単独の建物であること
  • 相続開始の直前に、被相続人以外に住んでいた人がいなかったこと
  • 相続開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
  • 売却代金が1億円以下であること
  • 家屋を売却時に一定の耐震基準を満たしている、または耐震改修を行う、あるいは家屋を取り壊して更地にしてから売却すること
  • 相続から売却まで、事業用・貸付用・居住用として使用していないこと

詳細な要件や必要書類は、必ず国税庁タックスアンサーNo.3306の原文でご確認ください。適用の可否は個々の家屋の状態や取得の経緯によって変わるため、最終判断は税理士にご相談することをおすすめします。

実務上、悩ましいのが「耐震基準」の要件です。昭和56年5月31日以前に建築された家屋の多くは、現行の耐震基準(新耐震基準)を満たしていないため、そのまま売却しただけでは特例の対象外になる可能性があります。対応方法としては、(1)耐震診断を受けて耐震基準を満たすと証明する、(2)耐震改修工事を行ってから売却する、(3)家屋を解体して更地にしてから売却する、のいずれかを選ぶことになります。解体費用は建物の構造・広さによって大きく異なるため、事前に複数の解体業者から見積もりを取り、特別控除で得られる節税額と比較したうえで判断することをおすすめします。

取得費が分からない場合の概算取得費

相続した実家は、親や祖父母が購入した際の契約書が残っていないことが多く、取得費が分からないケースが大半です。この場合、国税庁の取扱いでは、譲渡価額(売却代金)の5%を「概算取得費」として計上できます。実際の取得費が譲渡価額の5%を下回る場合でも、この概算取得費を使うことができます(国税庁タックスアンサー「取得費が分からないとき」)。取得費が低いほど譲渡所得は大きくなり、税負担も増える可能性があるため、契約書や購入時の記録が見つかる場合は、捨てずに保管しておくことが重要です。

固定資産税の納税通知書は誰に届くのか

共有名義の不動産の固定資産税は、地方税法上、共有者全員が連帯して納税義務を負う仕組みになっています。実務上は、市区町村が共有者の中から代表者(納税代表者)を指定し、その代表者宛に納税通知書が送付され、代表者が一旦全額を納付したうえで、他の共有者に持分割合に応じた金額を請求(精算)する運用が一般的です。誰が代表者になっているかを確認せずに放置すると、「実は自分が全額を立て替えて払っていた」という状況に気づくのが遅れることもあるため、共有者間で早めに代表者と精算方法を確認しておくことをおすすめします。

相続登記の費用と義務化への対応

共有名義のまま売却するには、まず相続登記を済ませ、相続人全員の名義にする必要があります。相続登記の登録免許税は、原則として固定資産税評価額の0.4%です。相続登記の義務化(2024年4月1日施行)により、正当な理由なく3年以内に登記をしないと10万円以下の過料の対象になり得るため、売却の意思があるかどうかにかかわらず、早めの登記が推奨されます。費用や自分で手続きする方法は相続登記の費用と自分でやる方法で詳しく解説しています。

譲渡所得税の税率(所有期間5年超・5年以下)

実家を売却した際の譲渡所得(売却価格から取得費・譲渡費用・特別控除を差し引いた額)には、所得税・住民税がかかります。税率は、売却した年の1月1日時点での所有期間によって異なります(国税庁タックスアンサーNo.3208・No.3211)。

区分 所有期間 税率(所得税+住民税)
長期譲渡所得 売却した年の1月1日時点で5年超 20.315%(所得税15.315%+住民税5%)
短期譲渡所得 売却した年の1月1日時点で5年以下 39.63%(所得税30.63%+住民税9%)

相続した不動産の所有期間は、亡くなった親が取得した時点から通算されるため、多くの場合は長期譲渡所得(20.315%)が適用されます。ただし、正確な所有期間の判定や税額計算は個別の事情によって変わるため、確定申告前に税理士へ確認することをおすすめします。

相続税評価額の目安(路線価方式・倍率方式)

相続税の申告要否を判断するには、実家の土地・建物の相続税評価額を把握する必要があります。土地の評価は、国税庁が公表する「路線価」が定められている地域では路線価方式(路線価×土地の面積を基本に、形状などで補正)、路線価が定められていない地域では「倍率方式」(固定資産税評価額×国税庁が定める倍率)で計算します。建物については、原則として固定資産税評価額がそのまま相続税評価額として扱われます。路線価は国税庁の「財産評価基準書」で地域ごとに確認できますが、土地の形状や接道状況によって補正計算が必要になる場合もあるため、正確な評価額の算出は税理士への依頼をおすすめします。

相続税の申告が必要かどうかの目安

実家を含む相続財産の合計額が、相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、相続税の申告が必要になります(国税庁)。例えば法定相続人が兄弟2人だけの場合、基礎控除額は「3,000万円+600万円×2人=4,200万円」です。実家の評価額に預貯金など他の相続財産を合算した金額がこの基礎控除額以下であれば、原則として相続税の申告は不要です。ただし、実家の評価額(路線価や固定資産税評価額をもとに算出)は個別に確認が必要なため、正確な判定は税理士にご相談ください。

実家を「売らない」という選択肢は現実的か

兄弟の中に「思い出があるから残したい」「将来子どもが使うかもしれない」という意見がある場合、売却以外の選択肢も一度は検討しておくと、後悔のない判断につながります。主な選択肢を整理します。

賃貸に出して家賃収入を得る

立地条件が良い場合、実家をリフォームして賃貸に出し、家賃収入を兄弟間で分配する方法もあります。ただし、リフォーム費用の負担、入居者とのトラブル対応、管理会社への委託費用など、継続的な手間とコストが発生します。共有名義のまま賃貸に出す場合、契約締結には共有者の持分価格の過半数の同意が必要になる点にも注意が必要です。空室が続けば収支がマイナスになるリスクもあるため、賃貸需要のある立地かどうかを不動産会社に事前確認しておくことをおすすめします。

賃貸で得た家賃収入は「不動産所得」として、共有持分に応じて各共有者がそれぞれ確定申告を行う必要があります。管理会社への委託費用や修繕費、固定資産税などは必要経費として収入から差し引くことができますが、申告漏れがあると後から追徴課税を受ける可能性もあるため、賃貸を選ぶ場合は税理士に相談しながら進めることをおすすめします。

誰も住まないまま「とりあえず維持」する

結論を出さないまま、固定資産税と最低限の管理(庭木の手入れ、通水など)だけを続ける選択です。ただし、この記事で解説してきたとおり、管理不全空家に認定されるリスクや、空き家特例の期限切れ、相続登記義務化への対応など、時間の経過とともに不利になる要素が多いため、「いつまで維持するか」の期限を決めずに続けることはおすすめできません。少なくとも1〜2年に一度は、兄弟間で方針を再確認する機会を設けることをおすすめします。

更地にして活用する、または売却する

建物の老朽化が進んでいる場合、解体して更地にしたうえで、駐車場などとして活用する、あるいは更地として売却する方法もあります。更地にすると固定資産税の住宅用地特例(更地より税額を抑える特例)が適用されなくなり、土地の固定資産税が上がる点には注意が必要です。解体のタイミングは、売却する直前にするか、しばらく別の用途で活用してから売却するかによっても税負担が変わるため、解体前に税理士へ相談することをおすすめします。

親の配偶者が存命の場合の注意点(二次相続)

父が亡くなり、母がまだ存命の状態で実家の相続が発生した場合、母と子(兄弟)が共同で実家を相続するケースが多くあります。この場合、母が実家に住み続けることを希望すれば、母の単独名義または母を含めた共有名義にし、兄弟はいったん相続を主張しない、という進め方も選択肢になります。ただし、母が亡くなった際に改めて相続(二次相続)が発生し、そのときに実家の扱いを再度話し合う必要が生じます。将来の二次相続まで見据えて、今のうちに家族間で大まかな方針を共有しておくと、二度手間や再度の意見対立を避けやすくなります。母の生活資金や老人ホームへの入居費用が必要になった場合に、実家をどう扱うかも、早めに話し合っておきたいテーマです。

相続放棄という選択肢と共有名義の関係

実家の管理や売却の手間を考え、そもそも相続放棄をするべきか迷う相続人もいます。相続放棄をすると、その相続人は初めから相続人でなかったものとして扱われ、実家の共有持分を含め、すべての相続財産を引き継がないことになります。相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に申述する必要があります。この期限を過ぎると、原則として相続放棄はできなくなります。

ここで注意したいのは、相続放棄をしても、他の兄弟が実家の管理義務を引き継ぐまでは、一定の管理責任が残る可能性があるという点です。また、相続財産に実家以外のプラスの財産が多い場合、実家だけを理由に相続放棄をすると、それらの財産も一緒に手放すことになります。実家の共有持分だけを整理したい場合は、相続放棄ではなく、他の兄弟への持分譲渡や代償分割を検討するほうが適していることも多くあります。親に借金がある場合の相続放棄の判断基準は親の借金と実家の相続|相続放棄すべきかの判断基準と3か月の期限で詳しく解説しています。

兄弟のうち一人だけが相続放棄をした場合、その人が持つはずだった共有持分は、他の相続人(残りの兄弟)に按分されて帰属します。例えば兄弟3人のうち1人が相続放棄をすると、残る2人でその持分を分け合う形になり、結果として残った兄弟の共有持分の割合が増えます。相続放棄をするかどうかは、実家の管理負担だけでなく、他の相続財産全体とのバランスで判断する必要があるため、迷った場合は3か月の期限内に司法書士や弁護士へ相談することをおすすめします。なお、相続人全員が相続放棄をした場合、実家を含む相続財産は最終的に清算手続きを経て国庫に帰属する可能性があり、その間の管理責任について別途対応が必要になることもあるため、全員での放棄を検討する場合は特に慎重な相談をおすすめします。

「限定承認」という中間的な選択肢

相続財産に実家はあるものの、他に借金がどの程度あるか分からず、単純承認(すべて引き継ぐ)と相続放棄(すべて放棄する)のどちらを選ぶべきか判断がつかない場合には、「限定承認」という制度もあります。限定承認は、相続財産の範囲内でのみ負債を引き継ぐという選択で、相続財産がプラスであれば残りを取得でき、マイナスであってもそれ以上の負担を負わない仕組みです。ただし限定承認は相続人全員が共同で申述する必要があり、手続きも相続放棄より複雑になる傾向があります。実家の資産価値と負債の状況が不透明な場合は、司法書士や弁護士に相談し、限定承認が選択肢になり得るかを含めて検討することをおすすめします。限定承認を選んだ場合、相続財産の清算手続きの中で実家を売却する必要が生じることもあり、通常の遺産分割協議よりも家庭裁判所が関わる場面が増えます。手続きの見通しが立てにくい制度でもあるため、少しでも利用を検討する場合は、早い段階で専門家に相談し、他の相続人全員の意向も含めて確認しておくことが大切です。

状況別・共有名義の解消方法 早見表

これまで紹介したケースA〜Fを踏まえ、状況ごとにどの解消方法が検討しやすいかを一覧にまとめました。実際にはケースが複合することも多いため、あくまで最初の検討の出発点としてご活用ください。

状況 検討しやすい解消方法 優先して相談する専門家
全員が売却に前向きで、住む予定がない 換価分割(売却して現金で分配) 宅建業者・司法書士
一人が住み続けたい・活用したい 代償分割(単独取得+現金精算) 司法書士・金融機関
話し合いが難航し、進展しない 持分売却、または共有物分割請求 弁護士・司法書士
長期間放置し老朽化が進んでいる 解体して更地で売却、または現状のまま買取 実家じまい窓口・宅建業者
連絡が取れない共有者がいる 不在者財産管理人の選任、共有物分割請求 弁護士
負債の有無が不明で判断がつかない 限定承認の検討(期限内に限る) 司法書士・弁護士

買取・仲介業者を選ぶときに確認したいポイント

共有名義の実家を売却する際、業者選びで意見が割れることもあります。兄弟間で納得感を持って業者を選ぶために、次のポイントを確認しておくとよいでしょう。

  • 宅地建物取引業の免許番号——免許番号の後ろにあるカッコ内の数字(更新回数)が大きいほど、営業年数が長い業者であることが分かります。
  • 査定の根拠が明確か——周辺の取引事例や路線価など、査定額の根拠を具体的に説明してくれるかを確認します。根拠が曖昧なまま高い査定額だけを提示する業者には注意が必要です。
  • 相続・共有名義の実務経験——共有名義の売却には、通常の売却より書類や手続きが複雑になる場面があります。相続案件の取り扱い実績がある業者かどうかも確認材料になります。
  • 片付けから対応できるか——片付けが済んでいない実家の場合、片付けの手配まで一括で相談できる窓口であれば、兄弟間の作業分担の負担を減らせます。
  • 契約形態(専属専任・専任・一般)の違い——複数の業者に同時に依頼できる「一般媒介契約」か、1社に絞る「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」かによって、販売活動の進み方が変わります。それぞれの特徴を理解したうえで契約形態を選びましょう。

特に注意したいのが、「自分の共有持分だけを買い取る」ことを専門にうたう買取業者への売却です。他の共有者との関係が悪化している場合の解決策として利用されることがありますが、持分だけを取得した第三者が、残りの共有者に対して強い交渉(買取や共有物分割請求など)を仕掛けてくるケースも報告されています。持分売却を検討する場合は、契約内容や業者の実績を慎重に確認し、判断に迷う場合は事前に司法書士や弁護士にも相談することをおすすめします。

共有名義と単独名義、何が違うのか【比較表】

「そもそも共有名義と単独名義で何が違うのか」を整理しておくと、解消方法を選ぶ際の判断がしやすくなります。

共有名義 単独名義
売却の可否 原則として共有者全員の同意が必要 名義人の判断だけで売却できる
賃貸に出す場合 持分価格の過半数の同意が必要 名義人の判断だけで進められる
大規模修繕・建て替え 共有者全員の同意が必要 名義人の判断だけで進められる
固定資産税の納税 共有者全員が持分に応じて負担(代表者が一括納付し、後で精算するのが一般的) 名義人が全額負担
相続登記の義務 共有者全員がそれぞれ登記義務を負う 名義人のみが登記義務を負う
将来の相続(二次相続) 共有者が亡くなるたびに持分がさらに分散しやすい 名義人の相続人にまとまって承継される

この比較からも分かるとおり、共有名義は「全員の合意が必要な場面が多い」という点で、意思決定のスピードが落ちやすい仕組みです。将来的なトラブルを避けたい場合、早い段階でどちらかの単独名義(または売却による現金化)に整理しておくことが、長期的には管理の手間を減らすことにつながります。逆に言えば、共有名義のままでも「保存行為(修繕や不法占拠者への対応など)」は単独でできるため、当面の管理に支障が出るわけではありません。「今すぐ結論を出さなければならない」と焦る必要はなく、期限のあるものから優先順位をつけて対応していく姿勢で十分です。

共有名義の実家売却でよくある誤解

相談を受けていると、法律の思い込みから話し合いがこじれているケースも見受けられます。よくある誤解を3つ紹介します。

  • 「持分が多い人の意見が優先される」という誤解——不動産全体の売却(変更行為)には、持分の大小にかかわらず共有者全員の同意が必要です。持分が9割あっても、残り1割の共有者が反対すれば、全体の売却はできません。ただし、賃貸などの管理行為は持分価格の過半数で決められるため、行為の種類によって必要な同意の範囲が異なる点を正しく理解しておくことが大切です。
  • 「長男(長女)だから実家を継ぐのが当然」という誤解——現在の民法には、長男・長女が優先的に実家を相続するという規定はありません。法定相続分は、原則として兄弟間で均等です。慣習として長男が実家を継ぐ家庭は今も見られますが、それはあくまで話し合いの結果であり、法律上の義務ではないことを共有しておくと、感情的な対立を避けやすくなります。
  • 「実家に住んでいた兄弟が多く相続できる」という誤解——同居していたこと自体は、直ちに相続分を増やす理由にはなりません。ただし、被相続人の療養看護に努めた、財産の維持・増加に特別に貢献したといった事情がある場合は「寄与分」として相続分の調整が認められる可能性があります。寄与分の有無や金額は個別の事情によって判断が分かれるため、該当しそうな場合は司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。

安心実家じまいに相談した場合の進め方

「何から手をつければいいか分からない」という場合は、片付け・査定・登記・税金の相談窓口を一つにまとめる方法もあります。安心実家じまいでは、次のような流れでご相談を承っています。

  1. LINEまたはフォームで概要をご相談——実家の所在地、共有者の人数、片付けの状況などを簡単にお伺いします。
  2. 写真をもとに概算お見積もり——現地に伺う前に、写真をお送りいただくだけで概算の見積もりをお出しします。兄弟間で最初の目安として共有いただけます。
  3. 片付け・仕分けの実施——形見分けの候補品を分けながら、家財の撤去・処分を進めます。遠方にお住まいの場合も、鍵をお預かりして進める方法があります。
  4. 提携の宅建業者による査定・売却方針の相談——仲介・買取どちらが適しているか、手取り額の目安とあわせてご相談いただけます。実際の売買契約は提携の宅建業者が担当します。
  5. 必要に応じて司法書士・税理士へのご紹介——相続登記や税金の申告が必要な場合、提携の専門家におつなぎすることも可能です。

兄弟間で話し合いが完全にまとまっていない段階でも、まずは概算の見積もりだけを取り、判断材料として持ち帰っていただくことも可能です。ご相談・お見積もりは無料です。

売却前に修繕・リフォームをすべきか

「少しでも高く売るために、修繕やリフォームをしたほうがいいのか」という相談もよく寄せられます。結論としては、大規模なリフォームは基本的に不要というケースが大半です。買主の多くは、購入後に自分好みにリフォームすることを前提に検討するため、売主側で高額な内装リフォームを行っても、その費用がそのまま売却価格に上乗せされるとは限りません。

一方で、次のような最低限の対応は、売却のしやすさに影響することがあります。

  • 家財・生活用品の撤去——買主が室内の状態を確認しやすくなり、内見時の印象が改善します。
  • 雨漏り・シロアリなど構造に関わる不具合の把握——契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)に関わる部分のため、把握したうえで告知するかどうかを検討する必要があります。
  • 庭木の剪定・簡易な清掃——外観の印象が変わり、内見の申し込み件数に影響することがあります。

修繕にどこまで手をかけるかは、仲介で時間をかけて売るか、そのまま買取に出すかによっても判断が変わります。買取であれば現状のまま引き渡せることが多いため、修繕費用をかけずに済むケースが一般的です。判断に迷う場合は、リフォーム前の状態で査定を依頼し、必要な対応の範囲を業者に確認してから決めることをおすすめします。共有名義の場合、修繕費用を誰がどの割合で負担するかも、事前に取り決めておきたいポイントです。持分割合に応じて負担するのが基本的な考え方ですが、実際に住んでいた兄弟がいる場合など、家庭の事情に応じて調整するケースも見られます。

兄弟間の話し合いでよくあるトラブルと防ぎ方

実家じまいの相談を受ける中でよく聞くパターンと、その防ぎ方を紹介します。

  • 「売る・売らない」で意見が真っ二つ——思い出の詰まった実家を手放すことへの心理的な抵抗が原因になっていることが多くあります。感情面の話し合いと、維持費・税金などの現実的な負担の話し合いを分けて進めると、議論が整理しやすくなります。まずは「今すぐ結論を出す」のではなく、「いつまでに方針を決めるか」という期限だけを先に合意する方法も有効です。
  • 片付け費用や修繕費の負担割合で揉める——持分割合に応じて負担するのか、住んでいた人が多く負担するのかなど、事前にルールを文書化しておくと後のトラブルを防げます。誰か一人が立て替えている場合は、領収書を残し、後日精算する前提であることを他の兄弟にも伝えておきましょう。
  • 査定額や売却価格に納得できない——一社だけの査定額を鵜呑みにせず、複数の業者や買取・仲介の両方で概算を取ることで、納得感のある判断材料になります。査定額の根拠(周辺の取引事例、路線価、建物の状態)を書面で示してもらうことも交渉の材料になります。
  • 誰か一人が実家に住み着いてしまう——他の共有者にも使用の対価(家賃相当額)を請求できる場合があります。放置すると既成事実化しやすいため、早めに取り決めをすることが重要です。無償での使用を認める場合も、いつまで、どのような条件で認めるのかを書面にしておくと後のトラブルを防げます。
  • 相続登記を後回しにして共有者が増えてしまう——義務化により過料のリスクも生じるため、売却の方針が決まっていなくても、登記だけは先に済ませておくという選択肢もあります。方針が固まってから登記しようとすると、話し合いが長引くほど共有者が増え、後になるほど登記自体が難しくなる悪循環に陥りやすくなります。
  • 兄弟以外の共有者(配偶者や甥・姪)が加わって複雑化する——共有者の一人が亡くなり、その配偶者や子が持分を相続すると、当初は兄弟だけだった共有関係に、面識の薄い親族が加わることがあります。連絡先が分からなくなる前に、共有者全員の氏名・連絡先を一覧にしておくと、後の手続きがスムーズになります。
  • 「言った言わない」の水掛け論になる——電話や口頭だけでやり取りを進めると、後になって「そんな話は聞いていない」という食い違いが生じがちです。重要な決定事項は、グループチャットやメールなど記録の残る手段でも共有しておくと、後の誤解を防げます。
  • 一部の兄弟だけが手続きの負担を抱え込む——近くに住む兄弟や、手続きに詳しい兄弟に作業が集中し、不満がたまることがあります。役割(書類収集・業者とのやり取り・費用の管理など)をあらかじめ分担し、進捗を定期的に共有する仕組みを作ることで、負担の偏りを防ぎやすくなります。

兄弟の家族会議で使えるアジェンダ例

話し合いが感情的になりやすい場合は、あらかじめ議題を決めておくと、脱線を防ぎやすくなります。次のような順序で進めることをおすすめします。

順番 議題 ポイント
1 現状の共有 登記の状態、固定資産税の負担者、現在の建物の状態を全員で共有する
2 それぞれの希望の表明 「売りたい」「住みたい」「まだ決められない」を一人ずつ言葉にする
3 期限の確認 相続登記の義務化期限、空き家特例の期限など、動かせない期限を共有する
4 選択肢の整理 換価分割・代償分割・持分売却など、取り得る方法を一覧で確認する
5 次回までの宿題を決める 査定の依頼、片付け業者への相談など、誰が何をいつまでに行うかを決める

1回の話し合いで結論を出そうとせず、「今日は現状把握まで」「次回は選択肢の比較まで」というように、段階を分けて進めることも、対立を避けるコツのひとつです。オンライン会議やグループチャットを併用すれば、遠方に住む兄弟がいても、同じ情報を共有しながら話し合いを進められます。話し合いの記録は、簡単な議事メモとして残しておくと、「前回そう決めたはずでは」という食い違いを防げます。特に代償分割の金額や、片付け費用の負担割合など、金銭が絡む決定事項は必ず書面やメッセージの形で残しておくことをおすすめします。

実家じまいの全体スケジュール例

相続の発生から実家の売却完了まで、どのくらいの期間がかかるのか、標準的な流れをタイムラインで整理しました。個別の事情によって前後しますが、全体像をつかむ目安としてご活用ください。

時期の目安 やること 関わる専門家
相続開始直後〜1か月 死亡届の提出、遺言書の確認、葬儀・法要の対応 市区町村窓口
1〜3か月 相続放棄をするかどうかの判断(期限あり)、法定相続人・相続財産の確認 司法書士・弁護士
3〜6か月 形見分け・遺品整理、実家の片付け方針の話し合い 実家じまい窓口
6か月〜1年 遺産分割協議、遺産分割協議書の作成 司法書士
1年〜1年半 相続登記の申請、実家の査定・売却方針の決定 司法書士・宅建業者
1年半〜2年 片付け・修繕(必要な場合)、売却活動または買取の手配 実家じまい窓口・宅建業者
2〜3年 売買契約・引き渡し、確定申告(譲渡所得税の申告) 宅建業者・税理士

空き家の3,000万円特別控除を利用したい場合、この表の「相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」に売却を完了させる必要があるため、遅くとも相続開始から2年以内には売却方針を決め、片付けと査定を進めておくことが望ましいペースといえます。また、相続税の申告・納付には、相続開始を知った日の翌日から10か月以内という期限もあります。相続税の申告が必要なケースでは、実家の売却時期と相続税の申告期限が重なることも多いため、税理士に早めに相談し、全体のスケジュールを一度に把握しておくことをおすすめします。

共有名義の実家を売却するときの必要書類一覧

共有名義の実家を売却する場合、単独名義の売却よりも必要書類が増える傾向があります。あらかじめ全体像を把握しておくと、兄弟間での書類収集の分担がしやすくなります。

書類 用途 取得先
被相続人の出生から死亡までの戸籍一式 法定相続人の確定 本籍地の市区町村役場
相続人全員の戸籍謄本・住民票 相続人の特定、登記手続き 各相続人の本籍地・住所地の役場
遺産分割協議書 相続登記、売却時の権利関係の証明 相続人全員で作成
相続人全員の印鑑証明書 遺産分割協議書への押印の証明 住所地の市区町村役場
登記事項証明書(登記簿謄本) 現在の名義・権利関係の確認 法務局
固定資産税評価証明書・納税通知書 登録免許税の計算、評価額の確認 市区町村役場(都税事務所)
権利証(登記済証)または登記識別情報 本人確認、売却時の本人性の証明 被相続人が保管していたもの
本人確認書類(相続人全員分) 売買契約時の本人確認 各相続人が用意

戸籍の収集は、被相続人の本籍地が転籍を繰り返している場合など、想像以上に時間がかかることがあります。兄弟の誰か一人がすべてを抱え込むと負担が偏りやすいため、司法書士に一括して収集を依頼する、あるいは役割を分担して並行して進めるといった工夫がおすすめです。

遠方に住む兄弟がいる場合、印鑑証明書の取得や実印の押印のために現地へ出向く必要はなく、多くの手続きは郵送でのやり取りで完結できます。売買契約の締結や決済への立ち会いが難しい場合は、司法書士や他の相続人へ手続きを委任する「委任状」を作成することで、代理人が手続きを進めることも可能です。委任状の書式や必要事項は司法書士によって案内してもらえるため、遠方に住んでいることを理由に手続きを諦める必要はありません。決済当日にどうしても立ち会えない場合、司法書士が現地で本人確認や書類の受け渡しを代行する仕組みを整えている事務所もあるため、事前に相談しておくと安心です。オンラインでの本人確認(電子署名やビデオ通話での面談)に対応した司法書士事務所も増えているため、遠方在住であることを理由に手続きが滞ることは、以前に比べて少なくなってきています。

共有名義の実家、売却前チェックリスト【印刷用】

兄弟で話し合いを始める前に確認しておきたい項目を一覧にしました。印刷して、家族会議の際にご活用ください。項目数が多いと感じる場合は、まず「相続登記の有無」「空き家特例の期限」「片付け・家財撤去の要否」の3つだけでも先に確認し、残りは話し合いを進めながら順に埋めていく進め方でも構いません。チェックが埋まっていく過程そのものが、兄弟間で「一緒に前に進んでいる」という実感につながり、話し合い全体の雰囲気を前向きにする効果も期待できます。

確認項目 チェックのポイント
相続登記の有無 実家の名義が誰になっているか、法務局で登記事項証明書を取得して確認する
相続人・共有者の確定 戸籍を収集し、法定相続人が誰か、共有持分の割合を確認する
遺言書・遺産分割協議書の有無 すでに合意した書面がないか、まず家中を確認する
固定資産税の納税状況 誰が立て替えて払っているか、精算方法を事前に決める
建物の築年数と昭和56年5月基準 空き家特例の対象になるかどうかの目安を確認する
空き家特例の期限 相続開始から3年を経過する年の12月31日までか、令和9年12月末までかを確認する
片付け・家財撤去の要否 仲介・買取どちらを選ぶ場合でも、片付け範囲を先に把握する
売却か賃貸か活用かの方針 兄弟それぞれの希望を先に出し合い、対立点を明確にする
代償分割の場合の資金計画 住み続ける側に支払い能力があるか、事前に確認する
専門家への相談窓口 司法書士(登記)・税理士(税金)・宅建業者(査定)の役割分担を整理する

このチェックリストのうち、特に見落とされやすいのが「空き家特例の期限」と「相続登記の有無」です。この2つは時間の経過とともに選択肢が狭まっていくため、話し合いの初期段階で必ず確認しておくことをおすすめします。チェックリストは家族会議のたびに見返し、進捗状況を余白に書き込んでいくと、「前回決めたこと」「まだ残っている課題」が一目で分かるようになります。兄弟の誰かが単独で抱え込むのではなく、全員が同じ紙を見ながら話し合いを進めることが、公平感のある合意形成につながります。

よくある質問

兄弟の一人が売却に反対している場合、実家を売ることはできますか?
共有名義の不動産全体を売却するには、原則として共有者全員の同意が必要です。一人でも反対している場合、不動産全体の売却はできません。ただし、自分の共有持分だけを第三者に売却することは単独でも可能です。話し合いで解決が難しい場合は、司法書士や弁護士に相談し、共有物分割請求などの法的手続きを検討する方法もあります。
相続登記をしないまま実家を放置するとどうなりますか?
2024年4月1日から相続登記が義務化されており、相続を知った日から3年以内に正当な理由なく登記をしないと、10万円以下の過料の対象になり得ます。また、名義変更をしないまま共有者が亡くなると、その持分がさらに相続され、共有者の数が増えて話し合いがより難しくなる可能性があります。
空き家の3,000万円特別控除は兄弟それぞれが使えますか?
要件を満たせば、相続人ごとに特別控除を受けられます。ただし相続人が3人以上いる場合は、1人あたりの控除額の上限が3,000万円ではなく2,000万円になります。建物の建築時期や耐震基準など細かい要件があるため、適用可否は税理士または国税庁タックスアンサーNo.3306で必ず確認してください。
片付けをしてから売るのと、そのまま買取に出すのはどちらが得ですか?
一概にどちらが得とは言えません。片付けて仲介で売れば売却価格は相場に近づきやすい一方、片付け費用と時間がかかります。そのまま買取に出せば早く現金化できますが、価格は相場より下がる傾向があります。片付け費用・仲介手数料・税金を差し引いた「手取り額」で比較し、兄弟間で急ぐ事情があるかどうかも踏まえて判断することをおすすめします。
共有名義のまま賃貸に出すことはできますか?
共有物の管理行為(賃貸など)は、共有者の持分価格の過半数の同意があれば可能とされています。売却のように全員の同意までは不要な場合がありますが、賃料の分配方法や管理の負担分担で意見が分かれることもあるため、事前に取り決めをしておくことをおすすめします。
兄弟の一人と連絡が取れない場合、どうすればよいですか?
まずは戸籍の附票などで現住所を調査し、書面(内容証明郵便など)で連絡を試みる方法が一般的です。それでも応じない、または連絡先自体が不明な場合は、家庭裁判所への不在者財産管理人の選任申立てや、共有物分割請求訴訟など法的手続きを検討することになります。個別の事情によって最適な手続きが異なるため、早めに司法書士や弁護士へ相談することをおすすめします。
相続税の申告は必要になりますか?
相続財産の合計額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合に申告が必要です。例えば法定相続人が兄弟2人のみであれば基礎控除額は4,200万円です。実家の評価額に預貯金など他の財産を合算して判定するため、正確な金額は税理士にご確認ください。
実家にまだ住宅ローンが残っている場合はどうすればよいですか?
まず金融機関に連絡し、残債の状況と抵当権の設定状況を確認します。売却する場合は、原則として売却代金から残債を一括返済し、抵当権を抹消したうえで買主に引き渡す必要があります。団体信用生命保険の適用対象かどうかによっても対応が変わるため、返済予定表などの資料を早めに探し、金融機関・司法書士へ相談してください。
共有名義のまま一人が固定資産税を立て替えている場合、他の兄弟に請求できますか?
固定資産税は共有者全員が持分に応じて負担すべき費用と考えられており、立て替えた分を他の共有者に請求すること自体は可能とされています。ただし時間が経つほど金額や記録があいまいになりやすいため、立て替えた都度、領収書を保管し、金額を記録しておくことをおすすめします。
兄弟の一人が相続放棄をした場合、実家の共有持分はどうなりますか?
相続放棄をした人は初めから相続人でなかったものとして扱われるため、その人が持つはずだった共有持分は、残りの相続人に按分されて帰属します。例えば兄弟3人のうち1人が相続放棄をすると、残る2人でその持分を分け合う形になります。相続放棄は自己のために相続の開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があるため、検討する場合は期限内に判断することが重要です。
共有名義のままリフォーム費用を借りるために、実家を担保に融資を受けられますか?
共有不動産全体を担保に融資を受ける場合、原則として共有者全員の同意と、抵当権設定登記への協力が必要になります。共有者の一部が同意しない場合は、担保にできるのは自分の持分のみとなり、金融機関によっては共有持分だけを担保にした融資に対応していないこともあります。個別の金融機関の取り扱いによって条件が異なるため、事前に相談することをおすすめします。

まとめ

兄弟で共有名義になった実家は、話し合いを先延ばしにするほど、相続登記の義務化・管理不全空き家・空き家特例の期限といった制度上のリスクが積み重なっていきます。一方で、共有名義だからといって売却や活用の道が閉ざされているわけではなく、換価分割・代償分割・持分売却など、状況に応じた解消方法が用意されています。大切なのは、「誰が正しいか」ではなく「今、何を優先するか」を兄弟で共有し、期限のあるものから順に手続きを進めていくことです。振り返ります。

  • 共有名義の不動産全体を売却するには、原則として共有者全員の同意が必要
  • 2024年4月1日から相続登記が義務化。3年以内に登記しないと10万円以下の過料の対象になり得る
  • 管理不全空家に認定されると、固定資産税の住宅用地特例が解除され税額が上がる可能性がある
  • 共有名義の解消方法は換価分割・代償分割・持分売却など5パターン。全員の合意が不要な方法もある
  • 空き家の3,000万円特別控除は要件付きで、制度自体の期限は令和9年(2027年)12月31日までの譲渡分
  • 売却の判断は「片付けてから売るか、そのまま買取か」を手取り額で比較するのが近道
  • 相続財産の合計が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超えるかで相続税申告の要否が決まる
  • 片付け・査定・登記・税金は、それぞれの専門家(実家じまい窓口・宅建業者・司法書士・税理士)に役割分担して相談する

兄弟間の話し合いは、感情面と実務面を分けて進めることで、対立を避けながら現実的な着地点を見つけやすくなります。「片付けてから売るか、そのまま買取に出すか」で意見が割れている場合も、まずは両方の概算見積もりを取り、手取り額を並べて比較してみることをおすすめします。数字という共通の物差しがあると、感情的な対立を避けながら合意形成を進めやすくなります。

この記事で紹介した制度上の期限(相続登記の義務化、空き家特例、相続税の申告期限)は、いずれも「知らなかった」では済まされないものばかりです。まずは自分たちの実家がどの期限に近づいているのかを確認するところから始め、必要に応じて司法書士・税理士・宅建業者へ相談の輪を広げていくことをおすすめします。共有名義という状態は、それ自体が問題なのではなく、方針を決めないまま時間だけが過ぎていくことがリスクを大きくします。逆に言えば、早めに方針さえ決まれば、換価分割・代償分割・持分売却のいずれを選んでも、着実に前に進めることができます。片付けから売却・買取までを窓口ひとつでまとめて相談したい場合は、まずは写真を送るだけの無料見積もりからご相談ください。詳しい進め方は実家の売却(片付けから売却まで窓口ひとつ)もあわせてご覧ください。

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この記事を書いた人

安心実家じまい事務局です。実家の片付けや遺品整理、空き家になった家の処分について、はじめての方にも分かるように記事を書いています。提携している現場の業者や司法書士と一緒に、費用の相場・自治体のごみ出しルール・補助金といった、調べてもなかなか分かりにくいところを一つずつ確かめながらまとめています。「誰に頼めばいいか分からない」という段階のご相談も、LINEやお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
運営は株式会社Sora Capital(東京都渋谷区・安心実家じまい事務局)です。相続・登記・法務に関する記述は、提携の司法書士・行政書士 久留慎一郎が監修しています。税額の計算や申告の判断は、税理士にご確認ください。

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