
久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士
東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。
監修の範囲:相続・登記・法務に関する記述(司法書士・行政書士の業務範囲)。片付け・買取・費用相場などの記述は安心実家じまい事務局が編集しています。監修者プロフィール
税金について:税額の計算や特例を使えるかどうかの判断は税理士の業務で、監修の範囲に含みません。申告の前に、税理士または所轄の税務署でご確認ください。
■経歴
- 1966年鹿児島県生まれ
- 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
- 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
- 2013年司法書士試験合格
- 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
- 2017年司法書士法人コスモ退職
- 2018年事務所開設
- 2021年司法書士法人設立
■得意領域
- 相続登記・相続手続き
- 不動産の名義変更
- 相続放棄
- 簡易裁判所の訴訟代理
この記事の結論
- 実家を売ったときにかかる税金は、「相続したとき」「保有している間」「売却したとき」「翌年の確定申告のとき」という4つの場面に分かれて発生します。今どの段階にいるかを把握し、それぞれで何がいくらかかるのかを先に知っておくことが、あとから慌てないための一番の近道です。
- 相続した空き家を売る場合、要件を満たせば最高3,000万円の「空き家特例」(国税庁No.3306)が使え、税金が0円になるケースも少なくありません。ただし建築時期・耐震・売却期限などの要件があり、誰でも自動的に使えるわけではない点に注意が必要です。
- 税金の額だけを見て判断しないことも大切です。片付けてから仲介で高く売るか、片付けをせず不動産会社の買取(現況のまま)で早く手放すか、家財ごと有料で引き取ってもらうか——最終的に手元にいくら残るか(手取り額)で比べるのが、後悔しない判断の軸になります。当事務局は宅建業者ではないため、実際の売却・買取は提携の宅建業者が担当し、当事務局は相談の窓口と片付けの実務を担います。
- まずは実家の売却(片付けから売却まで窓口ひとつ)のページで、片付け・査定・売却をまとめて相談できる窓口をご確認ください。
実家売却でかかる税金の全体像|時系列でわかる早見表
実家を売却するときにかかる税金・費用は、一度にまとめて発生するわけではありません。「相続したとき」「所有している間」「売却したとき」「翌年の確定申告のとき」という4つのタイミングに分散して発生します。それぞれ金額の大小も、避けられるかどうかも異なるため、まず全体像をつかんでから、自分が今どの段階にいるのかを確認しましょう。
| タイミング | 税金・費用の種類 | 目安 | 誰が払うか |
|---|---|---|---|
| 相続したとき | 相続税 | 基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超えた分に課税 | 相続人 |
| 相続したとき | 相続登記の登録免許税 | 固定資産税評価額×0.4% | 相続人(名義変更する人) |
| 保有している間 | 固定資産税・都市計画税 | 評価額に応じて毎年発生。更地にすると住宅用地の軽減がなくなり増える場合がある | その時点の所有者 |
| 売却したとき | 印紙税 | 売買契約書の記載金額に応じて数千円〜数万円 | 売主 |
| 売却したとき | 仲介手数料と消費税 | 売却額×3%+6万円(税別)が上限の目安+消費税10% | 売主(仲介の場合のみ) |
| 売却したとき | 抵当権抹消の登録免許税 | 不動産1個につき1,000円(住宅ローンが残っていた場合) | 売主 |
| 翌年の確定申告時 | 譲渡所得税(所得税) | 売却益が出た場合のみ課税。特例で0円になることも多い | 売主 |
| 翌々年6月ごろ | 住民税(譲渡所得分) | 譲渡所得税の申告内容にもとづき、翌年度分に上乗せして課税 | 売主 |
この中で最も金額のインパクトが大きく、かつ「特例を使えるかどうかで結果がまったく変わる」のが、売却時に利益が出た場合の譲渡所得税です。逆に言えば、相続税・登録免許税・固定資産税・印紙税は、要件に応じてほぼ機械的に金額が決まるものが多く、譲渡所得税だけは事前の準備次第で税額を大きく減らせる余地があります。以下、発生する順番に沿って詳しく見ていきます。
実家の売却が増えている背景|空き家の実態
総務省が実施する住宅・土地統計調査では、全国の空き家数・空き家率が公表されています。近年、相続で取得した実家をそのまま空き家にしてしまうケースが社会的な課題として取り上げられており、国も相続登記の義務化(2024年4月)や空家法の改正(2023年12月)など、空き家を放置させない方向で制度を整備してきました。「相続したら早めに使うか、貸すか、売るかを決める」という前提で制度が組まれている、と理解しておくと、税制上の特例の意図も理解しやすくなります。空き家特例(最高3,000万円控除)も、相続した空き家の流通を促す目的で設けられた制度です。
実家売却の流れ|相続確認から確定申告までの8ステップ
税金の話に入る前に、実家売却がどのような流れで進むのかを把握しておくと、どの段階でどの税金・費用が発生するのかがイメージしやすくなります。
| ステップ | 内容 | 関係する税金・費用 |
|---|---|---|
| 1. 相続財産の確認 | 実家を含む相続財産・相続人を確定する | 相続税の試算 |
| 2. 遺産分割協議 | 実家を誰が相続するか(換価分割の場合は代表者)を決める | — |
| 3. 相続登記 | 法務局で名義変更を行う(2024年4月から義務化) | 登録免許税(評価額×0.4%) |
| 4. 片付け・遺品整理 | 家財を仕分け、必要なものと処分するものに分ける | 片付け費用(譲渡費用に含められる場合あり) |
| 5. 査定・売却方針の決定 | 仲介・買取など複数社に査定を依頼し、方針を決める | — |
| 6. 売買契約 | 買主・不動産会社と契約を結ぶ | 印紙税 |
| 7. 引き渡し・決済 | 売却代金を受け取り、鍵や書類を引き渡す | 仲介手数料、抵当権抹消の登録免許税 |
| 8. 確定申告 | 翌年2月16日〜3月15日ごろに譲渡所得を申告する | 譲渡所得税・住民税 |
相続財産の確認から確定申告までを通しで見ると、実家1軒を売却するだけでも半年〜1年以上かかることが珍しくありません。特に空き家特例には「相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」という期限があるため、ステップ1〜3(相続財産の確認・遺産分割協議・相続登記)に時間がかかりすぎると、期限に間に合わなくなるリスクがあります。相続が発生したら、できるだけ早く全体のスケジュールを描いておくことをおすすめします。
①相続したときにかかる税金|相続税と相続登記の費用
実家を相続すると、まず相続税と相続登記の費用が発生する可能性があります。売却を検討する前の段階から関わってくる税金なので、最初に整理しておきます。
相続税は「基礎控除」を超えた分だけかかる
相続税には基礎控除があり、3,000万円+600万円×法定相続人の数までは相続税がかかりません。たとえば法定相続人が2人(子2人など)であれば、基礎控除は4,200万円です。実家の評価額と預貯金などの他の相続財産を合計しても基礎控除以下であれば、相続税の申告・納税は不要です。逆に、実家の評価額が高い都市部などでは、基礎控除を超えて相続税がかかるケースもあります。土地の評価は路線価や固定資産税評価額をもとに計算するため、実際に売れる価格(時価)とは一致しない点にも注意が必要です。評価方法の詳細は相続税の家の評価方法で解説しています。
相続登記は2024年4月から義務化。しない場合は過料の対象
2024年4月1日から相続登記が義務化され、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に登記をしないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象になり得ます(法務局の案内による)。2024年4月1日より前に発生した相続にも遡って適用され、その場合の期限は2027年3月31日です。相続登記が済んでいなければ、そもそも実家の名義が亡くなった親のままとなり、売却(第三者への所有権移転登記)ができません。売却を考えているのであれば、査定の前段階として相続登記を早めに済ませておく必要があります。登録免許税は固定資産税評価額の0.4%で、たとえば評価額が1,000万円の実家であれば登録免許税は4万円が目安です。費用の内訳や自分で申請する方法は相続登記の費用と自分でやる方法で解説しています。
相続人が複数いる場合は遺産分割協議も必要
相続人が複数いる場合、実家を誰の名義にするか(または共有名義にするか)を決める遺産分割協議が必要です。売却して現金を分ける「換価分割」を選ぶ家庭も多く、この場合は代表相続人1名の名義にいったん登記したうえで売却し、売却代金を分割する流れが一般的です。遺産分割協議がまとまらないまま長期間放置すると、相続登記の義務化にも抵触しかねないため、早めに話し合いを進めることをおすすめします。
②保有している間にかかる税金|固定資産税と「空き家放置」のリスク
実家を相続してすぐに売らず保有し続けると、毎年固定資産税・都市計画税がかかり続けます。さらに、空き家のまま放置すると税負担が増えるリスクがあることも知っておく必要があります。
更地にすると固定資産税が上がることがある
住宅が建っている土地には「住宅用地の特例」があり、固定資産税評価額が最大6分の1(200㎡以下の部分。200㎡を超える部分は3分の1)に軽減されます。家を解体して更地にすると、この軽減がなくなり、翌年から固定資産税が最大で数倍になるケースがあります。「古い実家を解体してから売ろう」と考える方は多いのですが、解体のタイミングと売却の見込み時期がずれると、更地のまま固定資産税だけを負担する期間が発生してしまいます。解体を検討する際は、買主が見つかる見込みや、更地渡し・古家付き土地としての売却など、進め方もあわせて検討することをおすすめします。
「管理不全空き家」に指定されると特例が解除されることがある
空家等対策特別措置法(空家法)は2023年12月に改正法が施行され、放置すれば「特定空家等」になるおそれのある空き家を「管理不全空き家」として市区町村が指定できるようになりました。管理不全空き家や特定空家等に指定され、市区町村の指導・勧告に従わない場合は、住宅用地の固定資産税の軽減が解除される可能性があります(国土交通省の空家法改正の案内による)。つまり、「相続したけれど手続きが面倒だから」と実家を何年も放置していると、税金の面でも不利になっていく仕組みになっています。管理の手間や近隣トラブルのリスクを考えても、空き家を長期間放置するメリットはほとんどありません。
賃貸に出す・そのまま持ち続けるという選択肢との比較
売却以外に、実家を賃貸に出して収入を得る、あるいはそのまま保有し続けるという選択肢もあります。ただし賃貸に出す場合は、不動産所得として毎年の確定申告が必要になり、リフォーム費用や管理の手間もかかります。保有し続ける場合は固定資産税の負担が続くだけで収入は生まれません。税金だけの比較でいえば、売却して特例を使い切ってしまう方が、長期的な負担は小さくなりやすい傾向があります。賃貸に出す場合の収支や手順は実家を貸すという選択肢で解説しています。
片付け・査定・売却の相談まで、写真を送るだけで概算をお出しします。相続登記が済んでいない場合の進め方もあわせてご相談いただけます。
③売却したときにかかる税金|譲渡所得税・印紙税・仲介手数料
実家を売却して利益(譲渡所得)が出た場合にかかるのが「譲渡所得税」です。所得税と住民税をあわせて、一般に「譲渡所得税」と呼ばれます。計算式は次のとおりです。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 譲渡価額 | 実家を売却した金額 |
| 取得費 | 実家を購入したときの金額(建物は減価償却後の金額)。わからない場合は譲渡価額の5%を概算取得費として使える(国税庁No.3258) |
| 譲渡費用 | 仲介手数料・印紙税・測量費・建物の取り壊し費用など、売るために直接かかった費用 |
| 特別控除 | 空き家特例(最高3,000万円)など、要件を満たせば使える控除 |
譲渡所得=譲渡価額−(取得費+譲渡費用)−特別控除で計算し、この譲渡所得に税率を掛けたものが税額です。「売却額の全額に税金がかかる」と誤解されがちですが、実際に課税されるのはあくまで利益部分だけです。税率は実家の所有期間によって次のように変わります。
| 所有期間 | 区分 | 所得税 | 住民税 | 合計税率 |
|---|---|---|---|---|
| 売却した年の1月1日時点で5年以下 | 短期譲渡所得 | 30.63% | 9% | 39.63% |
| 売却した年の1月1日時点で5年超 | 長期譲渡所得 | 15.315% | 5% | 20.315% |
相続した実家を売る場合、所有期間は「親が取得した日」から引き継がれます(相続によって取得日がリセットされるわけではありません)。多くの場合、親が長年住んでいた実家であれば5年を超えているため、長期譲渡所得(20.315%)になります。所有期間の判定を誤ると税額計算も誤ってしまうため、親の購入時期がわかる書類(売買契約書や登記事項証明書)を確認しておきましょう。
取得費に含められるもの・含められないもの
取得費として計上できる費用の範囲を誤ると、譲渡所得の計算そのものが変わってしまいます。代表的なものを整理しました。
| 区分 | 取得費に含められるもの |
|---|---|
| 購入時にかかった費用 | 土地・建物の購入代金、購入時の仲介手数料、購入時の登録免許税・司法書士報酬、不動産取得税、印紙税 |
| 取得後にかかった費用 | 土地の造成費用、増改築費用(資産価値を高めるもの) |
| 建物の扱い | 建物は年数の経過に応じて減価償却し、購入代金から減価償却費相当額を差し引いた金額が取得費になる |
| 取得費に含められないもの | 固定資産税・都市計画税(毎年の維持費用)、住宅ローンの利息(一定の場合を除く) |
譲渡費用に含められるもの
譲渡費用は「売るために直接かかった費用」です。仲介手数料、売買契約書の印紙税、測量費、建物を取り壊して土地だけを売った場合の取り壊し費用、売却のために行った建物の補修費用などが該当します。逆に、引っ越し費用や、売却後の生活費といった費用は譲渡費用に含まれません。境界確定や測量が必要になるケースは土地の測量・境界確定の費用と流れもあわせてご確認ください。
印紙税・仲介手数料にも消費税がかかる
売買契約書には印紙税がかかり、契約金額に応じて次のように決まります(2027年3月31日までの不動産売買契約書は軽減税率が適用されるケースがあります)。
| 契約金額 | 印紙税額の目安(軽減後) |
|---|---|
| 500万円超1,000万円以下 | 5,000円 |
| 1,000万円超5,000万円以下 | 1万円 |
| 5,000万円超1億円以下 | 3万円 |
| 1億円超5億円以下 | 6万円 |
仲介で売却する場合、仲介手数料の上限は「売却額×3%+6万円」に消費税10%を加えた金額が目安です。たとえば売却額が2,000万円であれば、仲介手数料の上限目安は66万円+消費税で、合計72万6,000円程度になります。買取の場合は個人が売主となるため、仲介手数料そのものがかからない点が、仲介との大きな違いの一つです。なお、個人が自宅・実家を売却する行為そのものには消費税はかかりません(消費税は事業者が行う取引に課されるものであり、個人間の不動産売買は非課税です)。消費税がかかるのは、あくまで仲介手数料や司法書士報酬など、事業者に支払うサービス対価の部分に限られます。
譲渡所得税を左右する「取得費」の壁|わからないときはどうするか
実家の譲渡所得税を計算するうえで、最大の壁になりやすいのが「取得費」です。親が何十年も前に購入した実家の場合、購入時の売買契約書が見つからず、取得費がわからないケースが少なくありません。
取得費が分からない場合、譲渡価額の5%を「概算取得費」として使うことができます(国税庁No.3258「取得費が分からないとき」)。ただし、実際の取得費が譲渡価額の5%より高いケースが多いため、概算取得費を使うと譲渡所得(=課税対象の利益)が実際より大きく計算されてしまい、税金が高くなりがちです。売却前に次の書類を探しておくことを強くおすすめします。
- 購入時の売買契約書・重要事項説明書
- 建築時の請負契約書(新築で建てた場合)
- 登記済権利証・登記識別情報通知
- 購入時の領収書・住宅ローンの金銭消費貸借契約書
- 購入時の固定資産税評価証明書・公図
これらが一切見つからない場合でも、通帳の出金記録や当時の住宅ローンの返済予定表、火災保険の契約内容などから購入価格を推計できることがあります。近隣の当時の取引事例や、市街地価格指数(国土交通省・不動産関連団体などが公表)を参考に取得費を推計する方法が使われることもありますが、税務上の扱いには判断が分かれる部分もあるため、判断が難しい場合は確定申告を担当する税理士に相談してください。
実家売却で使える税金の特例4つ|比較表
実家の売却では、要件を満たせば税金を大きく減らせる特例がいくつかあります。ただし、それぞれ対象となる税金や要件、期限が異なり、他の特例と併用できない組み合わせもあるため、自分のケースでどれが使えるかを確認することが重要です。
| 特例名 | 対象の税金 | 控除額の目安 | 主な要件 | 期限 |
|---|---|---|---|---|
| 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例 (空き家特例/国税庁No.3306) |
譲渡所得税 | 最高3,000万円 (2024年1月以後、相続人が3人以上の場合は1人2,000万円) |
昭和56年5月31日以前に建築、区分所有建物でない、相続開始直前に被相続人以外が住んでいない、譲渡価額1億円以下、耐震基準を満たすか除却して売却 | 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで |
| マイホームを売ったときの特例 (居住用財産の3,000万円特別控除/国税庁No.3302) |
譲渡所得税 | 最高3,000万円 | 親が売却時点でまだ住んでいる(生前に売る)場合などに検討。空き家特例とは要件が異なる | 売却した年内に要件を満たすこと |
| 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例 (取得費加算の特例/国税庁No.3267) |
譲渡所得税 | 相続税額×(譲渡資産の相続税評価額÷取得財産総額等)を取得費に加算 | 相続税を納めていること、相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡すること | 相続税申告期限の翌日から3年以内 |
| 小規模宅地等の特例 | 相続税(譲渡所得税ではない) | 実家の敷地の評価額を最大80%減額 | 同居親族が相続する、または「家なき子特例」の要件を満たすなど | 相続税の申告期限まで |
注意したいのは、空き家特例と取得費加算の特例は併用できないことです(国税庁の案内による)。どちらか有利な方を選ぶ必要があるため、譲渡所得の金額によってどちらが得かをシミュレーションしてから確定申告することをおすすめします。また、小規模宅地等の特例は相続税を減らす制度であり、売却時の譲渡所得税とは別の話です。「相続税で小規模宅地等の特例を使ったから、譲渡所得税でも何か控除がある」という誤解をしないよう注意してください(小規模宅地等の特例の詳細は小規模宅地等の特例とはで解説しています)。空き家特例と譲渡所得税の計算の詳しいシミュレーションは、実家売却の譲渡所得税の計算方法もあわせてご覧ください。空き家特例そのものの要件や必要書類をさらに詳しく知りたい場合は空き家の3,000万円特別控除とはを参照してください。
空き家特例の要件を1つずつ確認する
空き家特例(国税庁No.3306)は控除額が大きい分、要件も細かく定められています。1つでも満たさないと適用を受けられないため、順番に確認しましょう。
- 建築時期:昭和56年5月31日以前に建築されたこと。この日付は「新耐震基準」導入前の建物を対象とする趣旨で設定されています。建築確認済証や登記事項証明書の新築年月日で確認します。
- 区分所有建物(マンション等)でないこと。マンションなど区分所有建物は対象外です。戸建てであることが前提です。
- 相続開始の直前において、被相続人以外に居住者がいなかったこと。親と同居していた家族がいた場合は要件を満たしません(老人ホーム入居中の特例的な取り扱いもあるため個別確認が必要です)。
- 相続時から譲渡時まで、事業・貸付け・居住の用に供されていないこと。相続後に賃貸に出したり、誰かが住んだりすると対象外になります。
- 譲渡価額が1億円以下であること。複数回に分けて売却した場合も合計額で判定されます。
- 耐震基準を満たすか、除却して売却すること。家屋を残したまま売る場合は耐震基準適合証明書が必要です。基準を満たさない場合は取り壊してから土地のみを売却するか、譲渡後翌年2月15日までに耐震改修または除却を行う必要があります。
- 特別な関係のある者(親族・同族会社など)への譲渡でないこと。身内間での売買には適用されません。
- 他の特例(マイホームの3,000万円控除や取得費加算の特例など)と重複適用していないこと。併用できない組み合わせがあるため注意が必要です。
これらの要件は毎年のように細部が見直されることもあるため、実際に適用を検討する際は、国税庁の最新のタックスアンサー(No.3306)や税務署・税理士への確認を必ず行ってください。
取得費加算の特例の計算例
取得費加算の特例(国税庁No.3267)は、相続税を納めた人が一定期間内に相続財産を譲渡した場合に使える特例で、計算式は次のとおりです。
加算額=相続税額×(譲渡した財産の相続税評価額÷相続税の課税価格の計算の基礎とされた相続財産の価額)
たとえば、相続税を600万円納めており、実家の相続税評価額が2,000万円、相続財産全体の評価額が8,000万円だった場合、加算額は次のようになります。
加算額=600万円×(2,000万円÷8,000万円)=150万円
この150万円を取得費に上乗せできるため、譲渡所得を150万円圧縮でき、結果として税額を抑えられます。ただし前述のとおり空き家特例とは併用できないため、どちらの特例を使った方が有利になるかは、実際の数字を当てはめて比較する必要があります。
空き家特例とマイホーム特例、結局どちらを検討すればよいか
「空き家特例」と「マイホームを売ったときの特例」は、どちらも最高3,000万円を控除できる点は共通していますが、対象になる場面がまったく異なります。マイホーム特例は、売主自身がその家に住んでいた(自分の居住用財産である)ことが前提です。したがって、親が実家に住み続けている間に、親自身が売主として売却する場合に検討する特例です。一方、空き家特例は、被相続人(亡くなった親など)が住んでいた家を、相続人が相続後に売却する場合の特例であり、売主である相続人自身がそこに住んでいる必要はありません。むしろ「相続後、誰も住んでいない(=空き家である)こと」が要件になっています。つまり、「親が生きている間に親名義で売る」のか「相続してから相続人名義で売る」のかによって、検討すべき特例がそもそも変わるということです。この違いを理解しておくと、いつ売るべきかという意思決定にも役立ちます。判断に迷う場合は、両方の特例で試算したうえで、税理士に確認することをおすすめします。
相続税と譲渡所得税、両方かかるケースの全体像
実家の評価額が大きく相続税がかかる家庭では、相続税を納めたうえで、さらに売却時に譲渡所得税もかかる「二重の税負担」に感じられることがあります。しかし、取得費加算の特例を使えば、納めた相続税の一部を譲渡所得の計算上の取得費に加算でき、譲渡所得税を軽減できます。たとえば、相続税を800万円納め、空き家特例の要件を満たさなかったケースで、取得費加算の特例を使うと、加算できる金額の分だけ譲渡所得が圧縮され、結果として二重負担が一定程度緩和されます。相続税と譲渡所得税は別の税金ですが、取得費加算の特例のような「橋渡し」の制度があることを知っておくと、税負担の全体像をより正確に把握できます。なお、相続税の納税自体に充てるために実家を急いで売却しなければならない場合は、空き家特例の要件(耐震基準・除却など)を満たす準備が間に合わないこともあります。その場合は、まず取得費加算の特例の活用を軸に検討し、時間的余裕があれば空き家特例の要件も並行して整えていく、という優先順位のつけ方も一つの考え方です。
特例を使うために必要になりやすい書類
空き家特例を使う場合、市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」の取得が必須です。この確認書は、対象の家屋が要件(区分所有建物でない、相続開始直前に被相続人以外が住んでいなかったなど)を満たしていることを市区町村が確認したうえで発行するもので、申請から発行までに数週間かかることもあります。耐震基準を満たすことを証明する「耐震基準適合証明書」も、耐震診断・改修を行う業者への依頼が必要になるため、売却スケジュールに組み込んでおくことをおすすめします。
売却の判断軸|買取・仲介・有料引き取りで手取りはどう変わるか【比較表】
実家の税金を計算する前に、そもそも「どの方法で手放すか」で手取り額は大きく変わります。判断のポイントは、片付けてから仲介で高く売るか、そのまま買取で早く手放すか、家財ごと有料で引き取ってもらうか——最終的な手取り額で比べることです。売却額(または査定額)から、片付け費用・仲介手数料・税金を差し引いた金額が、実際に手元に残るお金になります。
| 方法 | 価格の目安 | 片付けの要否 | 売却までの期間 | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|
| 仲介(片付け後に売却) | 相場に近い価格。3つの中で最も高くなりやすい | 必要(家財を撤去してから売り出す) | 数か月〜1年程度 | 時間に余裕があり、少しでも高く売りたい場合 |
| 買取(不動産会社が現況のまま買い取る) | 相場の7〜8割程度が目安(会社により差がある) | 不要な場合が多い(残置物ありでも可のケースあり) | 数週間〜1か月程度 | 早く現金化したい、遠方で片付けの時間が取れない場合 |
| 有料での引き取り(家財ごと・訳あり物件として) | 売却益は見込めない、または費用がかかる場合がある | 不要 | 比較的短期間 | 老朽化が進み売却自体が難しい、再建築不可などの事情がある場合 |
「片付けてから仲介」は価格面で有利ですが、片付け費用(家財量に応じて数万円〜数十万円)と時間がかかります。片付け中に固定資産税や光熱費の基本料金などの維持費も発生し続けるため、売却完了までの期間が延びるほど、手元に残る金額は目減りしていきます。一方「買取」は片付け不要・短期間というメリットがある一方、価格は仲介より下がる傾向があり、税金の計算上も譲渡価額そのものが下がるため、空き家特例を使っても手取りが仲介より少なくなることがあります。空き家買取と実家の売却(仲介)のどちらが自分の実家に合うかは、建物の状態・立地・急ぎ度によって変わるため、実際に査定を取って比較することをおすすめします。当事務局は宅建業者ではないため、実際の買取・仲介は提携の宅建業者が担当し、当事務局は相談の窓口と片付けの実務を担当します。
手取り額で比較する|仲介・買取・引き取りの数字シミュレーション
判断軸で説明した「手取り額」を、実際の数字で比較してみます。築45年・昭和50年築の実家(相続税評価額2,000万円程度)を売却するケースを想定します。
| 方法 | 想定売却額 | 片付け費用 | 仲介手数料等 | 譲渡所得税 | 手取りの目安 |
|---|---|---|---|---|---|
| 仲介(片付け後) | 2,800万円 | −50万円 | −105万6,000円(3%+6万円+消費税) | 空き家特例適用で0円 | 約2,644万円 |
| 買取(現況のまま) | 2,100万円(相場の75%想定) | 0円 | 0円(仲介手数料なし) | 空き家特例適用で0円 | 約2,100万円 |
| 有料引き取り(訳あり) | 0円〜わずか | 0円 | 0円 | 課税なし(利益がほぼ発生しない) | ほぼ0円、または費用負担あり |
このケースでは、片付け費用を払ってでも仲介で売った方が手取りは大きくなる計算になります。ただし、これは「片付けに大きな手間や心理的負担がかからない」「売却まで数か月〜半年程度の時間を確保できる」ことが前提です。遠方に住んでいて片付けに何度も帰省しなければならない場合や、一刻も早く手放したい事情がある場合は、金額だけでなく時間的コスト・精神的コストも含めて総合的に判断する必要があります。上記はあくまで一例であり、実際の金額は建物の状態・立地・査定額によって変わるため、複数社の査定を取ったうえで比較することをおすすめします。
実家売却の税金を減らす「タイミング」の選び方
同じ実家でも、いつ・どのタイミングで売るかによって使える特例が変わります。
親の生前に売る場合
親が存命で実家に住んでいる間に売却する場合は、「マイホームを売ったときの特例」(国税庁No.3302、最高3,000万円控除)の対象になり得ます。空き家特例よりも建築年数などの制限がない分、対象になりやすいケースもあります。ただし、親の住み替え先の確保や本人の意向確認が前提になるため、税金だけで判断せず、親の生活基盤をどうするかとあわせて検討する必要があります。
相続後、期限内(3年以内)に売る場合
空き家特例の対象になり得るタイミングです。相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があるため、相続発生後はできるだけ早く相続登記・片付け・査定を進めることが、特例を使えるかどうかを左右します。
相続から期限を過ぎて売る場合
空き家特例の期限を過ぎてしまうと、この特例は使えなくなります。取得費加算の特例(相続税の申告期限の翌日から3年以内)も期限を過ぎていれば使えません。この場合、譲渡所得に対してそのまま長期譲渡所得の税率(20.315%)が課税されるため、税負担が大きくなりやすい点に注意が必要です。「まだ決心がつかない」「片付けが終わらない」という理由で先延ばしにしていると、結果的に使える特例がなくなってしまうことがあります。
税務署の無料相談窓口を活用する
税理士に依頼するほどではないが、自分で判断するのは不安という場合は、税務署の確定申告相談窓口を利用する方法もあります。確定申告の時期(2月〜3月)には、多くの税務署で申告書の作成を手伝ってもらえる相談会場が設けられます。事前に取得費・譲渡費用の資料や、空き家特例を使う場合は被相続人居住用家屋等確認書などを準備してから相談すると、その場で申告書の作成まで進められることもあります。混雑する時期でもあるため、可能であれば早めの時期に相談の予約を取っておくとスムーズです。国税庁の電話相談センター(電話相談窓口)でも、一般的な制度の説明を受けることができます。
税理士に相談すべきケース・自分で申告できるケース
確定申告は自分で行うこともできますが、次のようなケースでは税理士への相談を検討することをおすすめします。
- 取得費の資料が一部しか見つからず、実額と概算のどちらを使うべきか判断が難しい場合
- 空き家特例と取得費加算の特例のどちらが有利か、実際の数字で比較したい場合
- 相続人が複数いて、共有名義での申告や按分計算が必要な場合
- 実家の一部を賃貸に出していた期間があるなど、居住用財産としての扱いが複雑な場合
- 相続税の申告と譲渡所得税の申告の両方が必要で、全体の税負担を最適化したい場合
逆に、譲渡所得がマイナスで申告義務がない場合や、取得費の資料がそろっていて計算がシンプルな場合は、国税庁の確定申告書等作成コーナーを使って自分で申告することも十分可能です。税理士に依頼する場合の報酬は、譲渡所得の申告のみであれば5万円〜15万円程度が一般的な目安とされていますが、事務所や案件の複雑さによって幅があります。空き家特例を使えるかどうかで数百万円単位の差が出るケースを考えると、報酬を払ってでも専門家に確認してもらう価値があるかどうかは、ご自身の実家の売却額の規模に応じて判断するとよいでしょう。
用語辞典|実家売却の税金でよく出てくる言葉
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 譲渡所得 | 不動産などを売却して得た利益(売却額から取得費・譲渡費用・特別控除を差し引いたもの) |
| 取得費 | 不動産を取得(購入・建築)したときにかかった金額。建物は減価償却後の金額を使う |
| 譲渡費用 | 売却のために直接かかった費用(仲介手数料・印紙税・取り壊し費用など) |
| 長期譲渡所得・短期譲渡所得 | 売却した年の1月1日時点での所有期間が5年を超えるかどうかで区分。税率が大きく異なる |
| 分離課税 | 給与所得などとは合算せず、譲渡所得だけで別に税額を計算する課税方式 |
| 被相続人 | 亡くなった人(実家の元の持ち主)のこと |
| 換価分割 | 相続財産(実家など)を売却して現金化し、相続人で分ける遺産分割の方法 |
| 被相続人居住用家屋等確認書 | 空き家特例の適用要件を満たすことを市区町村が確認し発行する書類 |
| 特定空家等 | 倒壊の危険や衛生上の問題があるなど、空家法に基づき市区町村が指定する著しく管理不全な空き家 |
| 住宅用地の特例 | 住宅が建つ土地の固定資産税評価額を最大6分の1に軽減する制度 |
片付けを終えてから売却するまでの流れ
仲介で高く売る方針を選んだ場合、家財の片付けが最初のハードルになります。実家に残された家財・遺品を仕分け、必要なものと処分するものを分ける作業は、平日に休みを取って通うだけでは終わらないことも多く、心理的な負担も大きい作業です。遠方に住んでいる場合は、片付けのためだけに何度も帰省することになり、交通費や宿泊費もかさみます。「税金の計算は理解できたけれど、そもそも片付けに手をつけられていない」という状態のまま時間だけが過ぎてしまい、気づけば空き家特例の期限が迫っていた、というケースは実際に少なくありません。税金の話と片付けの話は別々に考えず、最初にスケジュール全体を描いてから動き始めることが、結果的に一番の近道になります。
この段階でよく利用されるのが、実家じまい代行や遺品整理のサービスです。仕分け・搬出・供養・不用品の処分までを代行してもらうことで、片付けにかかる時間を大幅に短縮でき、売却査定の準備も早く整います。形見分けの品や思い出の品を先に分けておく方法は形見分けの時期とマナーで解説しています。片付け費用の相場や、相続財産から支払えるかどうかは遺品整理費用は相続財産から出せるかを参考にしてください。片付けが終わった後の実家の処分方法を、売却以外の選択肢も含めて比較したい場合は実家の処分方法5つを比較もあわせてご覧ください。
ケース別シミュレーション
実際の数字でイメージをつかむために、3つのケースで税額の目安を確認します。実際の税額は個々の事情(取得費の資料の有無、相続人の数、譲渡費用の内訳など)によって変わるため、あくまで目安としてご覧ください。
ケース1:空き家特例が使え、税額が0円になったケース
昭和50年築の実家(親が単身で居住、他に居住者なし)を、相続開始から2年後に3,000万円で売却したケースです。取得費が不明なため概算取得費150万円(譲渡価額の5%)、譲渡費用(仲介手数料など)120万円とすると、譲渡所得は次のように計算されます。
譲渡所得=3,000万円−(150万円+120万円)=2,730万円
空き家特例(3,000万円控除)の要件(昭和56年5月31日以前築、譲渡価額1億円以下、耐震基準を満たすなど)をすべて満たせば、譲渡所得2,730万円が特別控除3,000万円の範囲内に収まるため、譲渡所得税は0円になります。ただし税額が0円でも、特例の適用を受けるための確定申告は必要です。このケースのポイントは、譲渡費用の120万円をきちんと計上したことです。もし譲渡費用を計上し忘れていた場合でも、控除額3,000万円の範囲内に収まるため結果的に税額は変わりませんが、譲渡所得が3,000万円に近い金額になるケースでは、譲渡費用の計上漏れがそのまま課税額に直結するため、領収書は必ず保管しておくべきです。
ケース2:空き家特例の要件を一部満たさず、課税されたケース
実家が区分所有建物(マンション)だったケースや、耐震基準を満たさずに除却もしないまま売却したケースでは、空き家特例が使えません。前述の例と同じ数字(譲渡所得2,730万円)で特例なしとすると、長期譲渡所得の税率20.315%を掛けて、次のようになります。
税額=2,730万円×20.315%=約554万6,000円
特例が使えるかどうかだけで、税額が0円と約555万円という大きな差になることがわかります。取得費加算の特例が使える場合は、この税額から一定額を軽減できる可能性があるため、空き家特例の要件を満たさない場合は取得費加算の特例が使えないかもあわせて確認しましょう。このケースのように区分所有建物や耐震未対応で空き家特例が使えないとわかった時点で諦めてしまう方もいますが、取得費加算の特例や、実額の取得費を丁寧に洗い出すことで、税額をさらに圧縮できる余地が残っていることを覚えておいてください。
ケース3:神奈川県内の実家で、取得費の書類が見つかったケース
神奈川県内にある実家(築40年、親が新築で購入)を相続し、当時の建築請負契約書が見つかったケースです。実際の取得費(建物の減価償却後の金額+土地の購入価格)が譲渡価額の5%より高かったため、概算取得費ではなく実額の取得費を使うことで、譲渡所得を圧縮でき、結果的に税額を抑えられました。同じ売却額でも、取得費の書類が見つかるかどうかで税額が数百万円単位で変わることがある、という点が実務上とても重要です。エリアによる空き家買取の相場や進め方は神奈川県の空き家買取もあわせてご確認ください。
ケース4:相続人3人以上で空き家特例を使ったケース
子3人(法定相続人3人)で実家を相続し、売却額4,500万円、譲渡所得が2,700万円だったケースです。2024年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合、空き家特例の控除額は1人あたり最高2,000万円が上限になります。3人で均等に按分すると、1人あたりの譲渡所得は900万円で、控除額の上限2,000万円の範囲内に収まるため、3人とも譲渡所得税は0円になります。仮に譲渡所得がもっと大きく、1人あたり2,000万円を超える部分があれば、その超過分にのみ課税されます。相続人の数によって控除額の上限が変わる点は見落とされやすいため、共有名義で相続する場合は必ず確認しておきましょう。
ケース5:取得費が高く、そもそも譲渡所得がほぼ出なかったケース
親がバブル期に高値で購入した実家を、時間が経ってから売却したケースです。購入時の売買契約書が残っており、実際の取得費が譲渡価額に近い金額だったため、譲渡所得はごくわずかしか発生しませんでした。このケースでは空き家特例を使うまでもなく、そもそも課税される利益がほとんど出ません。「古い実家だから税金がかかるはず」と思い込まず、まず取得費の書類を探して実額で計算してみることが重要だとわかる例です。
売却額別|税額シミュレーション早見表
ここまでのケースをふまえ、売却額ごとにおおよその税額がどう変わるかを一覧にしました。いずれも所有期間5年超(長期譲渡所得・税率20.315%)、取得費不明のため概算取得費(譲渡価額の5%)、譲渡費用は売却額の4%(仲介手数料相当)と仮定した簡易シミュレーションです。実際の税額は個々の条件で変わるため、目安としてご覧ください。
| 売却額 | 譲渡所得の目安 (特例適用前) |
空き家特例あり(3,000万円控除) | 空き家特例なし(20.315%課税) |
|---|---|---|---|
| 1,500万円 | 約1,365万円 | 0円 | 約277万円 |
| 2,000万円 | 約1,820万円 | 0円 | 約370万円 |
| 3,000万円 | 約2,730万円 | 0円 | 約555万円 |
| 4,000万円 | 約3,640万円 | 約640万円分に課税→約130万円 | 約740万円 |
| 5,000万円 | 約4,550万円 | 約1,550万円分に課税→約315万円 | 約925万円 |
売却額が3,000万円前後までであれば、空き家特例が使えるかどうかで税額が「0円」と「数百万円」に分かれる、まさに天と地ほどの差が生まれることがわかります。一方、売却額が4,000万円を超えてくると、空き家特例を使っても控除しきれない部分に課税が発生します。この場合でも、特例なしのケースと比べれば税負担は大幅に軽くなります。ご自身の実家の売却額の見込みがどのゾーンに入るか、まずは査定を取って確認することをおすすめします。
確定申告書の記入の流れ|自分で申告する場合のステップ
確定申告を自分で行う場合、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すると、画面の案内に沿って入力するだけで税額が自動計算されます。おおまかな流れは次のとおりです。
- ステップ1:譲渡所得の内訳書を準備する——売買契約書・取得費の資料・譲渡費用の領収書をもとに、売却額・取得費・譲渡費用を整理します。
- ステップ2:特例の適用要件を確認する——空き家特例や取得費加算の特例を使う場合、必要書類(被相続人居住用家屋等確認書など)がそろっているか確認します。
- ステップ3:確定申告書等作成コーナーで入力する——「分離課税の譲渡所得」を選択し、売却した不動産の情報、取得費、譲渡費用、適用する特例を順番に入力します。
- ステップ4:税額を確認し、申告書を印刷または電子申告(e-Tax)する——自動計算された税額を確認し、必要書類を添付して提出します。
- ステップ5:納税する——申告と同時に、または期限内に納税を済ませます(振替納税やクレジットカード納付などの方法があります)。
特例の適用要件の判定や、取得費が複雑なケース(増改築を繰り返している、共有名義であるなど)では、入力を誤ると本来使えるはずの特例を見落としてしまうこともあります。少しでも不安がある場合は、税務署の相談窓口や税理士への相談を利用することをおすすめします。
なお、e-Tax(電子申告)を利用すれば、添付書類の一部を省略できたり、還付がある場合に還付までの期間が短くなったりするメリットがあります。マイナンバーカードとスマートフォンがあれば、税務署に出向かずに自宅から申告を完了できるため、遠方に住んでいて実家の売却手続きのために何度も動きにくい方にも利用しやすい方法です。
確定申告の要否・時期・必要書類【印刷用チェックリスト】
実家を売却して譲渡所得が出た場合(特例を使って税額が0円になった場合を含みます)、確定申告が必要です。申告をしないと特例の適用を受けられないため、たとえ税額が0円でも申告を忘れないようにしましょう。逆に譲渡所得がマイナスであれば、原則として申告義務はありません。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 申告の要否 | 譲渡所得がプラスの場合は申告必須(特例で税額0円でも申告は必要) |
| 申告の時期 | 売却した年の翌年2月16日〜3月15日ごろ(年により変動) |
| 申告先 | 売主の住所地を管轄する税務署 |
| 必要書類(売買関連) | 売買契約書の写し、譲渡費用の領収書、登記事項証明書 |
| 必要書類(取得費関連) | 購入時の売買契約書・請負契約書、または取得費がわかる資料一式 |
| 必要書類(特例関連) | 空き家特例の場合は「被相続人居住用家屋等確認書」(市区町村発行)、耐震基準適合証明書など |
| 提出書類 | 確定申告書第三表(分離課税用)、譲渡所得の内訳書 |
| 住民税の納付 | 申告内容にもとづき、翌年度の住民税(給与天引きまたは普通徴収)に反映される |
特に「被相続人居住用家屋等確認書」は市区町村への申請が必要で、発行までに時間がかかることがあります。空き家特例を使う予定がある場合は、売却が決まった段階で早めに申請しておくことをおすすめします。確定申告は自分で行うこともできますが、特例の適用可否や取得費の計算が複雑なケースでは、税理士に依頼した方が結果的に安心なことも多くあります。
譲渡所得にかかる住民税は、所得税のように申告と同時には納付しません。確定申告の内容が市区町村に連携され、原則として申告した年の翌年度(6月ごろ)の住民税に上乗せされる形で課税されます。会社員の場合、給与から天引きされる特別徴収に含めるか、自分で納付する普通徴収にするかを確定申告書で選択できます。実家の売却によって一時的に住民税額が大きく増えることがあるため、給与明細の手取り額が急に変わって驚かないよう、あらかじめ普通徴収を選んで別に納付する、または増額分を見込んでおくとよいでしょう。
相続開始から売却までのスケジュール例
空き家特例の期限(相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで)を意識して、逆算したスケジュール例を示します。実際の進み方は個々の事情で変わりますが、目安としてご覧ください。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 相続開始直後(〜3か月) | 相続財産・相続人の確認、遺産分割協議の開始、相続放棄を検討する場合はこの期間内に判断 |
| 3か月〜半年 | 遺産分割協議の完了、相続登記の準備・申請 |
| 半年〜1年 | 片付け・遺品整理、複数社への査定依頼、売却方針(仲介・買取)の決定 |
| 1年〜2年 | 耐震診断・耐震改修または除却の要否判断、被相続人居住用家屋等確認書の準備 |
| 2年〜3年(期限厳守) | 売買契約・引き渡しを完了させる(相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで) |
| 売却翌年 | 2月16日〜3月15日ごろに確定申告 |
このように書き出すと、「3年」という期限は意外と長くないことがわかります。特に遺産分割協議がまとまらない、相続人の一部と連絡が取りにくいといった事情があると、あっという間に期限が近づいてしまいます。相続が発生したら、できるだけ早い段階でこの記事のようなスケジュールを頭に入れておくことをおすすめします。相続人が遠方に住んでいる、複数人いて話し合いに時間がかかる、実家の片付けに手が回らないといった事情がある場合は、なおさらです。専門家や代行サービスをうまく活用しながら、各ステップを並行して進めることで、期限に間に合わせやすくなります。
共有名義・残置物がある場合の注意点
共有名義で相続した実家を売る場合
相続人が複数いて実家を共有名義のまま相続した場合、売却には共有者全員の同意が必要です。共有者のうち1人でも売却に反対すると、原則として売却を進められません(共有物分割請求などの法的手続きを取る方法もありますが、時間と費用がかかります)。共有名義のまま長期間放置すると、さらに次の代へ相続が発生して共有者がねずみ算式に増えてしまう「数次相続」の問題も起こり得ます。数次相続が発生した実家の相続手続きは数次相続とはで解説しています。売却を考えているのであれば、共有のまま先延ばしにせず、早めに代表者を決めて換価分割を進めることをおすすめします。
共有名義のまま売却する場合、譲渡所得や特別控除は共有者それぞれの持分に応じて按分して計算します。たとえば、子2人が2分の1ずつの持分で実家を共有し、売却額3,000万円・譲渡費用200万円・取得費不明(概算取得費150万円)だったケースでは、譲渡所得の合計は3,000万円−(150万円+200万円)=2,650万円となり、これを持分2分の1ずつで按分すると、1人あたりの譲渡所得は1,325万円です。空き家特例(相続人が1人または2人の場合は1人最高3,000万円)の範囲内に収まるため、2人とも譲渡所得税は0円になります。確定申告も共有者それぞれが個別に行う必要があるため、忘れずに両者とも申告してください。持分割合が均等でない場合(たとえば3分の2と3分の1など)は、譲渡所得・取得費・譲渡費用のすべてを持分割合に応じて按分するため、計算がやや複雑になります。共有者間で計算結果に食い違いが出ないよう、申告前に按分の考え方をすり合わせておくことをおすすめします。
残置物(家財)が残ったまま売却する場合
買取であれば、残置物が残ったままでも売却できるケースが多くあります。ただし、残置物の処分費用が買取価格から差し引かれる(査定額が下がる)ことが一般的です。残置物の処分費用と、自分たちで片付けてから仲介で売る場合の価格差を比較して、どちらが手取りとして有利かを検討する必要があります。残置物ありでの売却については残置物はそのまま売却できるかで詳しく解説しています。
老人ホーム入居中・認知症の親の実家を売る場合の特例の扱い
空き家特例の要件には「相続開始の直前において、被相続人以外に居住者がいなかったこと」がありますが、親が老人ホームなどの施設に入居していた場合の特例的な取り扱いが設けられています。一定の要件(要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所していたこと、実家が事業の用に供されていないことなど)を満たせば、施設入所後に空き家になっていた期間があっても、空き家特例の対象になり得ます。老人ホーム入居が決まった際の実家の扱い方は老人ホーム入居が決まったら実家はどうするで解説しています。
また、親が認知症などで判断能力が十分でない状態のまま実家の名義になっている場合、本人の意思確認ができないため、そのままでは売却手続きを進められません。この場合は成年後見制度を利用し、成年後見人が家庭裁判所の許可を得たうえで売却する必要があります。居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必須であり、税金の特例を検討する以前に、この手続きが前提になる点に注意してください。認知症の親の家の管理については認知症の親の家の管理、成年後見人による売却の詳しい手続きは成年後見人は実家を売却できるかで解説しています。
相続放棄した場合、実家の税金はどうなるか
相続財産に借金が多い場合など、相続放棄を選ぶケースもあります。相続放棄をすると、実家を含む相続財産を一切引き継がないことになるため、当然ながら実家を売却することもできません。相続放棄は自己のために相続の開始があったことを知った時から3年以内に家庭裁判所へ申述する必要があり、実家の片付けや形見分けなど「相続財産の処分」とみなされる行為をしてしまうと、単純承認とみなされて相続放棄ができなくなることがあるため注意が必要です。相続放棄の手続き・費用・期限は相続放棄の手続き・費用・期限で、親に借金がある場合の判断基準は親の借金と実家の相続で解説しています。借金の総額がはっきりしない場合は、相続放棄ではなく「限定承認」という、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ手続きを選ぶ方法もあります。限定承認を選んだ場合の実家の扱いや、相続放棄との違いは限定承認とはで解説しています。
マンションの実家・更地渡し・古家付き土地での税金の違い
マンションの実家を売る場合
実家がマンション(区分所有建物)の場合、空き家特例は「区分所有建物でないこと」が要件のため、原則として対象外です。譲渡所得税の計算方法自体は戸建てと同じですが、使える特例が限られる点は事前に理解しておく必要があります。取得費加算の特例やマイホーム特例(親が生前に住んでいた場合)など、他に使える制度がないかを確認しましょう。マンションの実家じまいの進め方や戸建てとの違いはマンションの実家じまいで解説しています。
更地渡し・古家付き土地として売る場合
買主の希望に応じて、解体して更地の状態で引き渡す「更地渡し」と、建物をそのまま残して土地の付属物として扱う「古家付き土地」としての売却があります。更地渡しの場合、解体費用は譲渡費用に含められますが、前述のとおり解体後は住宅用地の固定資産税軽減がなくなるため、引き渡しまでの期間が空くと負担が増えます。古家付き土地として売る場合は、建物の解体費用を売主が負担しない分、譲渡費用としての計上額は小さくなりますが、買主側が解体費用を織り込んで価格交渉してくることもあります。どちらが手取り額として有利かは、解体費用の見積もりと、更地・古家付きそれぞれでの想定売却額を比較して判断する必要があります。更地渡しの費用負担や契約の注意点は更地渡しとは、古家付き土地として売る際の判断基準は古家付き土地として売る方法で解説しています。
訳あり物件・再建築不可・農地付き実家の税金の考え方
実家の状態によっては、通常の売却より複雑な検討が必要になるケースがあります。
再建築不可物件・訳あり物件の場合
建築基準法上の接道義務を満たしていない「再建築不可物件」や、事故物件などの「訳あり物件」は、一般の物件より売却価格が下がる傾向があります。ただし、売却額が下がれば譲渡所得もその分小さくなるため、譲渡所得税の負担自体は軽くなる方向に働きます。空き家特例の要件(譲渡価額1億円以下など)には該当しやすい一方、そもそも買い手が見つかりにくく、有料での引き取りに近い形にならざるを得ないケースもあります。再建築不可物件の売却相場や活用法は再建築不可物件とは、訳あり物件の売却方法は訳あり物件の売却方法で解説しています。
実家の敷地に農地・山林が含まれる場合
実家の敷地の一部、または隣接地に農地や山林が含まれている場合、農地の売却には農業委員会の許可(農地法上の手続き)が必要になるなど、宅地とは異なる手続きが必要です。評価方法や取得費の考え方も宅地とは異なる部分があるため、農地・山林が含まれる場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。詳しくは農地・山林の処分方法で解説しています。
実家を売らない選択肢との税金比較
実家は必ず売却しなければならないわけではありません。売却以外の選択肢と、税金面での違いを整理しておきます。
| 選択肢 | 税金面の特徴 |
|---|---|
| 売却する | 譲渡所得税がかかる可能性があるが、特例を使えば大きく軽減できる。以後の固定資産税負担はなくなる |
| 賃貸に出す | 不動産所得として毎年申告が必要。固定資産税は住宅用地の軽減を維持できる場合が多い |
| そのまま保有する | 固定資産税・都市計画税の負担が続く。管理不全空き家に指定されると軽減が解除されるリスクがある |
| 相続土地国庫帰属制度を使う | 要件を満たせば土地を国に引き渡せるが、負担金の納付が必要。建物がある場合は解体が前提 |
| 解体して更地活用する(駐車場など) | 解体費用がかかり、固定資産税の住宅用地軽減もなくなる。収益化できれば長期的にはプラスになることも |
それぞれのメリット・デメリットを含めた詳しい比較は実家の処分方法5つを比較、土地活用の収支については実家の土地活用で解説しています。
申告期限を過ぎてしまった場合はどうなるか
確定申告の期限(原則、売却した年の翌年3月15日)を過ぎてしまった場合、いくつかのペナルティが発生する可能性があります。
- 無申告加算税——期限後に自主的に申告した場合でも、原則として納付すべき税額に応じた加算税がかかります(税額や申告のタイミングによって割合は異なります)。
- 延滞税——法定納期限の翌日から納付日までの日数に応じて、利息に相当する延滞税が課されます。
- 特例の適用ができなくなるリスク——空き家特例など、確定申告をすること自体が適用要件になっている特例は、期限後の申告でも認められる場合がありますが、対応は個別のケースによって異なるため、早めに税務署へ相談することが重要です。
「税金がかかるかどうかわからないから、とりあえず申告を後回しにする」という判断は、結果的にペナルティを増やすリスクがあります。売却した年の年末が近づいたら、翌年の確定申告に向けて必要書類を整理しておくことをおすすめします。もし期限を過ぎてしまっていることに気づいた場合は、放置せずできるだけ早く税務署に相談し、自主的に申告する方が、加算税の負担を抑えられる可能性があります。
買取・仲介業者を選ぶときに税金の観点で確認すべきこと
不動産会社を選ぶ際、価格や対応の丁寧さだけでなく、税金に関わる部分でも確認しておきたいポイントがあります。
- 空き家特例に必要な書類の取得を手伝ってもらえるか——被相続人居住用家屋等確認書や耐震基準適合証明書の取得には、市区町村や専門業者とのやり取りが必要です。慣れた業者であればスムーズに進められます。
- 売買契約書に譲渡所得の計算に必要な情報が明記されるか——売却額・契約日・引き渡し日などは、確定申告の内訳書を作成する際に必須の情報です。
- 提携の税理士や司法書士を紹介してもらえるか——売却後の確定申告や相続登記について、専門家への橋渡しをしてくれる窓口かどうかも重要な確認ポイントです。
- 宅地建物取引業の免許を持っているか——買取・仲介はいずれも宅地建物取引業の免許が必要な業務です。免許番号を確認しましょう。当事務局自体は宅建業者ではなく、提携の宅建業者と連携して対応しています。
解体費用の相場と、税負担への影響
空き家特例を使うために除却(解体)を選ぶ場合や、そもそも老朽化が進んで解体してから売る場合、解体費用も重要な検討材料になります。木造戸建ての解体費用は、建物の構造・延床面積・立地(重機が入れるかどうか)によって大きく異なり、一般的には延床面積30坪前後の木造住宅で100万円〜200万円程度が目安とされています。鉄骨造・RC造はさらに高額になる傾向があります。解体費用は、建物を取り壊して土地のみを売却する場合には譲渡費用として計上できるため、領収書は必ず保管しておきましょう。一方で、解体後に買主がなかなか見つからない期間が長引くと、更地の状態での固定資産税負担(住宅用地の軽減がなくなった状態)が続くリスクもあるため、解体前に売却の見込みをある程度確認しておくことをおすすめします。
総費用まとめ|税金以外も含めた資金計画の立て方
実家の売却を検討する際は、税金だけでなく、片付け・登記・仲介などにかかる費用も含めた「総費用」で資金計画を立てておくと、想定外の出費に慌てずに済みます。売却額3,000万円、空き家特例が使えるケースを例に、発生し得る費用の全体像を整理しました。
| 費用項目 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 相続登記の登録免許税 | 評価額×0.4%(評価額1,500万円なら6万円) | 相続人が自分で申請すれば司法書士報酬は不要 |
| 片付け・遺品整理費用 | 10万円〜50万円程度 | 家財の量・建物の広さによって変動 |
| 耐震診断・耐震改修(該当する場合) | 診断のみ数万円、改修は数十万円〜100万円超 | 空き家特例を使う場合に必要になることがある |
| 解体費用(該当する場合) | 100万円〜200万円程度(木造30坪前後) | 除却して売る場合。譲渡費用として計上可能 |
| 仲介手数料 | 売却額×3%+6万円+消費税 | 買取の場合は原則不要 |
| 印紙税 | 数千円〜数万円 | 契約金額により変動 |
| 抵当権抹消の登録免許税 | 不動産1個につき1,000円 | 住宅ローンが残っていた場合のみ |
| 譲渡所得税 | 特例適用で0円〜、非適用で数百万円 | 取得費・特例の有無で大きく変動 |
このように書き出すと、税金以外の費用(片付け・耐震・解体・仲介手数料など)の合計が、税額そのものより大きくなるケースも珍しくないことがわかります。「税金がいくらか」だけでなく、「手元にいくら残るか」という総費用ベースで資金計画を立てることが、実家売却を後悔なく進めるためのポイントです。特に、片付け費用と仲介手数料は売却額に関わらず一定の割合・金額で発生するため、売却額が小さい実家ほど、総費用に占める割合が大きくなる点にも注意が必要です。数百万円規模の売却であれば、片付け費用と仲介手数料だけで手取りの1〜2割が目減りすることもあるため、事前の見積もり比較が重要になります。
実家売却の税金でよくある失敗と対策
- 取得費の書類を探さずに概算取得費(5%)で計算してしまう——実額の取得費より税額が高くなりがちです。売却を決める前に、まず書類探しから始めましょう。
- 空き家特例の期限(相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで)を過ぎてしまう——片付けや相続登記に時間がかかり、気づいたら期限が近いというケースがあります。相続が発生したら早めにスケジュールを確認してください。
- 耐震基準を満たさないまま「家屋あり」で売却してしまう——空き家特例は、耐震基準を満たすか、除却してから売る必要があります。要件を確認しないまま契約を進めると、特例が使えなくなることがあります。
- 相続登記を済ませないまま売却の話を進めてしまう——相続登記が終わっていないと、そもそも売却(所有権移転登記)ができません。相続人が複数いる場合は、遺産分割協議も先に済ませておく必要があります。
- 特例を使ったのに確定申告を忘れる——税額が0円になる場合でも、申告をしなければ特例の適用は受けられません。
- 小規模宅地等の特例と譲渡所得税の特例を混同してしまう——相続税の申告で小規模宅地等の特例を使ったことと、売却時の譲渡所得税の特例は別の手続きです。両方を検討する必要があります。
- 片付け費用や解体費用を譲渡費用に含め忘れる——建物を取り壊して土地だけを売った場合の取り壊し費用は譲渡費用に含められます。領収書を保管しておきましょう。
実務チェックリスト|売却前に確認しておきたい項目
実家の売却をスムーズに進めるために、着手前に確認しておきたい項目を一覧にしました。印刷して、進捗管理にご活用ください。
| 確認項目 | チェックのポイント |
|---|---|
| 相続登記の完了 | 2024年4月から義務化。未了の場合はまず登記を済ませる |
| 取得費の資料探し | 購入時の契約書・登記済権利証・領収書などを探す |
| 建築年月日の確認 | 昭和56年5月31日以前かどうかで空き家特例の対象が変わる |
| 耐震基準・除却の要否 | 空き家特例を使う場合、耐震基準を満たすか除却するかを決める |
| 相続人全員の合意 | 遺産分割協議が済んでいるか、売却について合意が取れているか |
| 片付け・遺品整理の要否 | 仲介で売る場合は片付けが前提。買取なら不要な場合もある |
| 複数社への査定依頼 | 仲介・買取それぞれで複数社の見積もりを比較する |
| 売却期限の確認 | 空き家特例・取得費加算の特例には期限があるため逆算してスケジュールを組む |
| 被相続人居住用家屋等確認書の申請 | 空き家特例を使う場合は市区町村へ早めに申請する |
エリア別の実家じまい・空き家買取の相談先
実家の税金の考え方は全国共通ですが、売却・買取の相場や進め方はエリアによって差があります。お住まいのエリア、または実家があるエリアの情報もあわせてご確認ください。
| エリア | 関連ページ |
|---|---|
| 神奈川県 | 神奈川県の空き家買取/神奈川県の実家じまい |
| 千葉県 | 千葉県の空き家買取/千葉県の実家じまい |
| 埼玉県 | 埼玉県の空き家買取/埼玉県の実家じまい |
| 大阪府 | 大阪府の空き家買取 |
| 愛知県 | 愛知県の空き家買取/名古屋市の実家じまい |
| 福岡県 | 福岡県の空き家買取/福岡県の実家じまい |
| 北海道 | 北海道の空き家買取/北海道の実家じまい |
お住まいの、または実家があるエリアが表にない場合も、当事務局では全国の相談を受け付けています。まずは写真とあわせてご相談ください。
耐震基準適合証明書の取得の流れ
空き家特例を「家屋を残したまま」使う場合、耐震基準適合証明書の取得が必要です。取得の流れは、一般的に次のようになります。
- 1. 建築士事務所や指定確認検査機関に耐震診断を依頼する——現地調査と図面確認をもとに、現行の耐震基準を満たしているかを診断します。
- 2. 基準を満たさない場合は耐震改修を行う——壁の補強や基礎の補修など、必要な工事を実施します。
- 3. 耐震基準適合証明書の発行を受ける——診断・改修後に基準を満たしていることが確認できれば、証明書が発行されます。
- 4. 証明書を確定申告の添付書類として提出する——売買契約時にも、買主・仲介会社に証明書の有無を伝えておくとスムーズです。
耐震診断・改修には数万円〜100万円超と幅があり、期間も数週間から数か月かかることがあります。空き家特例の適用を耐震基準クリアで狙う場合は、売却スケジュールの早い段階でこの手続きに着手することをおすすめします。耐震改修が現実的でない場合は、除却(解体)してから土地のみを売却する方法も選択肢になります。どちらの方法を選ぶかは、耐震改修費用・解体費用それぞれの見積もりと、控除できる税額(最大3,000万円分の譲渡所得にかかる税率相当額)を比較して判断するのが合理的です。築年数が古く、耐震改修に多額の費用がかかると見込まれる場合は、除却を選んだ方がトータルの負担を抑えられることも少なくありません。
実家の評価額はどうやって調べるか
相続税がかかるかどうか、空き家特例の要件(譲渡価額1億円以下など)に該当するかどうかを検討する前段階として、実家のおおよその評価額を把握しておくと話がスムーズです。実家の評価額を調べる方法には主に次の3つがあります。
- 路線価方式:国税庁が公表する路線価図をもとに、土地の面積×路線価で評価額を計算する方法。相続税評価額の算定に使われます。
- 固定資産税評価額:毎年送付される固定資産税の納税通知書に記載されている評価額。建物の評価はこちらを基準にすることが多く、登録免許税の計算にも使われます。
- 実勢価格(時価):不動産会社の査定や、実際の売買事例から推定する市場価格。相続税評価額や固定資産税評価額とは一致しないことがほとんどで、売却額の目安にするにはこちらを参考にします。
「相続税評価額は低いのに、実際に売れる価格はもっと高い」というケースは珍しくありません。評価額の種類によって用途が異なるため、混同しないよう注意してください。詳しい調べ方は相続税の家の評価方法で解説しています。
路線価方式の簡単な計算例を挙げると、路線価が1㎡あたり20万円、土地の面積が150㎡であれば、路線価による評価額の目安は20万円×150㎡=3,000万円です(実際には土地の形状や接道状況に応じた補正率が加わるため、あくまで概算です)。これに対して、固定資産税評価額は一般的に時価の70%程度、路線価は時価の80%程度を目安に設定されているといわれます。つまり、実際に売れる価格(時価)は、路線価や固定資産税評価額よりも高くなる傾向があります。この差を理解しておかないと、「評価額が低いから税金もかからないはず」と誤解し、実際に売却してみたら想定より高く売れて譲渡所得税が発生した、という事態にもなりかねません。逆に、路線価や固定資産税評価額をもとに「うちの実家はこれくらいの価値だろう」と思い込み、実際の査定額がそれより低かったというケースもあります。特に地方や人口減少が進むエリアでは、評価額と実際の需要(買い手のつきやすさ)が乖離しやすい傾向があるため、税金の試算はあくまで参考にとどめ、最終的な判断は複数社の査定額をもとに行うことをおすすめします。
取得費加算の特例を使う場合に必要な相続税関連の書類
取得費加算の特例を利用する場合、譲渡所得の内訳書に加えて、相続税の申告書の写しや相続税の課税価格の計算の基礎となった財産の明細(相続税申告書の第11表など)が必要になります。相続税の申告を担当した税理士がいる場合は、その税理士に依頼して必要な書類の写しを準備してもらうとスムーズです。相続税の申告から時間が経っている場合や、申告書の控えが手元にない場合は、税務署に「申告書等閲覧サービス」を利用して内容を確認する方法もあります。取得費加算の特例は計算がやや複雑なため、相続税の申告を担当した税理士に、譲渡所得税の申告もあわせて依頼するケースが多く見られます。
空き家特例の対象にならない場合の代替策
建築年数や耐震要件などで空き家特例の対象にならない場合でも、税負担を軽くする方法が残されていることがあります。
- 取得費加算の特例を検討する——相続税を納めている場合、期限内であれば使える可能性があります。
- 取得費の実額をできる限り正確に計算する——概算取得費(5%)よりも実額の取得費の方が高いケースが多いため、書類探しを徹底することが最も効果の大きい対策になり得ます。
- 耐震改修・除却を検討する——耐震基準を満たしていないだけであれば、耐震改修工事を行うか、建物を取り壊して土地のみで売却することで、空き家特例の対象になる可能性があります。改修・解体費用と、特例で軽減できる税額を比較して判断します。
- 売却時期を調整する——空き家特例の期限(相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで)に間に合うよう、片付け・査定・契約のスケジュールを前倒しする方法もあります。
よくある質問
実家を売って利益が出なかった場合も確定申告は必要ですか?
空き家特例と取得費加算の特例はどちらが得ですか?
親が実家に住んでいる間に売った場合と、相続後に売った場合で税金は変わりますか?
兄弟で実家を相続し、共有名義のまま売却する場合、税金の特例はどうなりますか?
相続税を払うために実家を売る場合、何か気をつけることはありますか?
実家の売却は、片付けを先に済ませてから相談すべきですか?
実家を解体してから売った場合、解体費用は税金の計算上どう扱われますか?
実家の一部を賃貸に出していた期間がある場合、空き家特例は使えますか?
相続登記がまだ済んでいませんが、先に売却の相談だけしてもいいですか?
実家の売却額から片付け費用を差し引くことはできますか?
実家を隣の人に直接売る場合、税金の扱いは変わりますか?
実家の売却で使った特例は、他の不動産の売却でも繰り返し使えますか?
実家を分割して一部だけ売却することはできますか?
実家じまいと墓じまいを同時に検討する場合
実家の売却を考えるタイミングは、多くの場合、お墓の今後(承継するか、墓じまいするか)を考えるタイミングとも重なります。実家の売却で得た資金を、墓じまいや永代供養の費用に充てるケースも見られます。税金の面では実家の売却と墓じまいは別の手続きですが、資金計画やスケジュールを一体で考えると、全体の負担感を把握しやすくなります。実家じまいと墓じまいを同時に進める順番や費用の考え方は実家じまいと墓じまいを同時に進める方法で解説しています。
誤解されやすいポイントの整理
ここまでの内容と重なる部分もありますが、実家売却の税金について特に誤解されやすいポイントを、最後に整理しておきます。
- 「売却額の全部に税金がかかる」は誤り——課税対象になるのは、あくまで取得費・譲渡費用・特別控除を差し引いた後の「利益」部分だけです。
- 「相続したらすぐに税金がかかる」は誤り——相続税は基礎控除を超えた場合のみ、譲渡所得税は売却して利益が出た場合のみ課税されます。相続しただけでは譲渡所得税はかかりません。
- 「古い家だから特例が自動的に使える」は誤り——空き家特例には建築時期・耐震・居住状況・売却期限など複数の要件があり、自動的に適用されるものではなく、確定申告で申請する必要があります。
- 「小規模宅地等の特例を使ったから譲渡所得税も控除される」は誤り——小規模宅地等の特例は相続税の計算上の話であり、売却時の譲渡所得税とは別の制度です。
- 「税金が高いから買取より仲介の方が絶対に得」は誤り——特例を使えば税額が0円になるケースも多く、税金だけでなく片付け費用・仲介手数料・時間的コストも含めた手取り額で比較する必要があります。
出典・参考情報
本記事の税金・制度に関する記述は、以下の公的機関の一次情報をもとに作成しています。制度は改正されることがあるため、実際に適用を検討する際は、必ず最新の情報を各機関の公式サイトでご確認ください。
- 国税庁タックスアンサー No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
- 国税庁タックスアンサー No.3302「マイホームを売ったときの特例」
- 国税庁タックスアンサー No.3267「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
- 国税庁タックスアンサー No.3258「取得費が分からないとき」
- 法務局「相続登記の申請義務化に関するQ&A」
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(管理不全空家等・特定空家等)」
- 総務省統計局「住宅・土地統計調査」
まとめ
実家の売却でかかる税金は、相続時・保有中・売却時・確定申告時の4つの場面に分かれ、中でも売却時の譲渡所得税は取得費の把握と特例の活用で税額が大きく変わります。空き家特例(最高3,000万円控除)を筆頭に、複数の特例には期限と要件があるため、相続が発生したら早めにスケジュールを確認し、購入時の書類を探しておくことが結果を左右します。取得費が分からない場合の概算取得費(譲渡価額の5%)は、税額を実際より高くしてしまう可能性があるため、まずは購入時の契約書や登記関係の書類を探すことから始めてください。
そして何より、税金だけでなく片付け費用や仲介手数料も含めた「手取り額」で、仲介・買取・有料引き取りのどれが自分の実家に合っているかを比較することが、後悔しない選択につながります。相続登記が済んでいない、片付けに手をつけられていない、といった状態であっても、まずは今の状況のまま相談していただいて構いません。当事務局は宅建業者ではないため、実際の売却・買取は提携の宅建業者が担当し、当事務局は相談の窓口と片付けの実務を一貫してサポートします。まずはお気軽にご相談ください。
早いこともあります
片付け・査定・売却まで、写真を送るだけで概算のお見積もりをお出しします。ご相談・お見積もりは無料です。


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