MENU

空き家をなぜ売らない?放置のリスクと買取・仲介・有料引き取りの手取り比較

最終更新日:2026年9月17日|監修:司法書士・行政書士 久留慎一郎先生・安心実家じまい事務局

司法書士・行政書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。

監修の範囲:相続・登記・法務に関する記述(司法書士・行政書士の業務範囲)。片付け・買取・費用相場などの記述は安心実家じまい事務局が編集しています。監修者プロフィール

税金について:税額の計算や特例を使えるかどうかの判断は税理士の業務で、監修の範囲に含みません。申告の前に、税理士または所轄の税務署でご確認ください。

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 不動産の名義変更
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理

この記事の結論

  • 空き家を売らない理由の多くは「片付けが面倒」「思い出があって踏ん切りがつかない」「相続関係が整理できていない」の3つに集約されます。感情的な問題と実務的な問題を分けて考えると、動き出しやすくなります。
  • 放置を続けると、老朽化の進行に加えて「特定空家等」「管理不全空家」に指定されると固定資産税の住宅用地特例(最大1/6軽減)が外れて税額が数倍になるリスクがあります(国土交通省・空家等対策の推進に関する特別措置法)。
  • 判断に迷ったら、「片付けてから仲介で売るか」「そのまま買取に出すか」「有料で引き取ってもらうか」を、手取り額で並べて比べるのが一番早い方法です。空き家買取(片付け不要・複数社査定)なら、残置物が残ったままでも査定を依頼できます。
  • 当事務局は宅地建物取引業者ではないため、買取・仲介は提携の宅建業者が行い、当事務局は片付けと窓口の役割を担います。まずは現状のまま無料で査定額を確認するところから始められます。

共有名義・再建築不可・借地・古家など売りにくい事情のある実家は、売りにくい実家の買取・売却相談で、事情に合う提携先を無料でご紹介しています。

目次

空き家を「なぜ売らない」のか|所有者が動けない理由を整理する

実家が空き家になってから数年が経っているのに、なぜか売却に踏み切れない――。こうした相談は、安心実家じまいの窓口でも数多く寄せられます。「そのうち売ろうと思っている」という言葉の裏には、実はいくつかの共通した理由が隠れています。まずは、所有者が空き家を売らない理由を整理し、自分の状況がどれに当てはまるかを確認することから始めましょう。

総務省統計局が公表している「住宅・土地統計調査」(2023年)によると、全国の空き家数は約900万戸、総住宅数に占める空き家率は13.8%と過去最高を更新しています。実家が空き家のまま放置されているのは、決して珍しいことではなく、多くの世帯が同じ壁にぶつかっているのが実情です(総務省統計局「住宅・土地統計調査」2023年より)。

理由1:家財・残置物の片付けが終わっていない

もっとも多い理由が「中に物が残っていて手がつけられない」というものです。親が長年暮らした家には、家具・家電・衣類・書類・写真など、量にすると軽トラック数台分の家財が残っていることが珍しくありません。「まず片付けてから売却活動を始めよう」と考えているうちに、片付けの重さに手が止まってしまい、結果として何年も放置状態が続くケースが多く見られます。

この段階でつまずいている場合、片付けを先に終わらせる必要はなく、実家じまい代行や遺品整理のサービスに残置物の仕分け・搬出を任せながら、並行して売却や買取の相談を進める方法もあります。片付けと売却をどちらも自分一人で抱え込もうとすると、時間ばかりが過ぎてしまいがちです。

理由2:思い出があって踏ん切りがつかない

生まれ育った家、親が最後まで暮らした家には、金銭的な価値だけでは測れない思い入れがあります。「まだ手放す決心がつかない」という気持ちは自然なことで、無理に急かされるべきものではありません。ただし、感情的な整理と、資産としての実家をどう扱うかという実務的な判断は、分けて考えることができます。売却の準備を進めながら、実際に契約するタイミングは気持ちの整理がついてからでも遅くはありません。

理由3:相続登記や名義変更が終わっていない

実家の名義が亡くなった親や、さらにその前の代のままになっているケースも少なくありません。2024年4月1日から相続登記が義務化され、不動産の取得を知った日から3年以内に登記申請することが必要になりました。過去に相続した不動産についても、原則として2027年3月31日までに登記を済ませる必要があり、正当な理由なく放置すると10万円以下の過料の対象になり得ます(法務省・法務局「相続登記の申請義務化」より)。名義が変わっていない状態では、不動産会社への売却依頼も、買取業者との契約も基本的に進められません。「そもそも何から手をつければいいか分からない」まま時間だけが経っているなら、まず登記名義の確認が最初の一歩になります。

理由4:解体費用・修繕費用の負担が重い

老朽化が進んだ空き家では、「そのまま売れるのか」「解体してから売った方がいいのか」の判断がつかず、足踏みしてしまうことがあります。木造住宅の解体費用は延床面積30坪程度で100万〜200万円程度が目安とされ、まとまった現金を先に用意する必要があると考えると、なかなか動き出せません。しかし、老朽化した建物であっても、解体せずそのまま買取業者に売却できる場合があり、解体費用を先に用意する必要がないケースも多くあります。

理由5:売却価格への不安・相場が分からない

「二束三文にしかならないのでは」という不安から、査定すら依頼せずに放置してしまう人もいます。しかし、査定自体は無料で依頼できることがほとんどで、査定額を知らないまま判断を先延ばしにするより、まず複数社の査定額を比較してから考える方が、結果的に早く前に進めます。

理由6:相続人が複数いて話がまとまらない

きょうだいなど相続人が複数いる場合、「誰が窓口になるか」「売却代金をどう分けるか」で話し合いが進まず、実家がそのまま放置されることがあります。特に、遠方に住む相続人と近くに住む相続人とで、実家に対する温度差が生じやすい点も、話し合いが停滞する一因です。

理由7:将来使うかもしれないと考えている

「いつか自分たちが住むかもしれない」「別荘代わりに使えるかもしれない」という漠然とした将来の可能性を理由に、売却を先送りにするケースもあります。実際に使う具体的な計画(時期・頻度・誰が管理するか)があるなら保有を続ける選択も合理的ですが、計画のないまま「もしかしたら」で保有し続けると、後述する維持費や税負担だけが積み上がっていきます。

理由8:単純に忙しくて後回しになっている

特別な理由があるわけではなく、仕事や自分の家庭のことで手一杯になり、実家の問題が後回しになっているというケースも実際には多く見られます。この場合は、片付けから売却・買取までを一つの窓口でまとめて相談できるサービスを使うことで、手間を大きく減らせます。

理由が複数重なっているケースがほとんど

実際の相談現場では、8つの理由のうち1つだけが当てはまるケースより、複数の理由が同時に重なっているケースの方が多く見られます。たとえば「片付けが終わっていない」うえに「相続人が複数いて話がまとまらない」、さらに「相続登記も済んでいない」という状態が同時に進行していることも珍しくありません。理由が複合的になるほど、所有者は「何から手をつけていいか分からない」状態に陥り、結果として何年も動けなくなってしまいます。こうした場合は、すべてを自分一人で整理しようとせず、片付け・登記・査定・相続人間の調整のうち、まず1つだけ着手先を決めることが、停滞から抜け出す現実的な方法です。

「売らない」と「売れない」は分けて考える

ここまで整理してきた8つの理由は、いずれも所有者の判断や事情による「売らない」状態です。一方で、再建築不可物件である、権利関係が複雑で共有者の一部と連絡が取れない、立地条件が厳しく買い手がつきにくいといった事情がある場合は、所有者が動いたとしてもすぐには「売れない」状態にあることがあります。自分の実家がどちらに当てはまるかを見極めることも、次に取るべき行動を決めるうえで重要です。「売らない」状態であれば、行動を起こすことで解決に近づけます。「売れない」状態であれば、専門家や買取業者に相談し、条件を整理したうえで解決策を探る必要があります。

売らない理由 状態の目安 先に進めやすい対処
片付けが終わっていない 家財が残ったまま数年経過 片付けと並行して査定を依頼する
思い出があって踏ん切りがつかない 気持ちの整理がついていない 準備だけ進め、契約時期は後で決める
相続登記・名義変更が未了 名義が故人や先代のまま 登記事項証明書を取得し手続きを確認する
解体費用の負担が重い 老朽化が進んでいる 解体不要で売れる買取を検討する
相場が分からず不安 査定を依頼したことがない まず無料査定で金額の目安をつかむ
相続人間で話がまとまらない 共有名義・意見の相違がある 窓口を一本化し情報を共有する
将来使うかもしれない 具体的な使用計画がない 維持費と手放した場合の手取りを比較する
単純に後回しになっている 忙しくて着手できていない 片付け〜売却を一括で任せる
ここまでで「うちの場合はどれに当てはまる?」と思ったら

片付け・査定・買取・仲介まで、窓口ひとつでご相談いただけます。写真を送るだけで概算のお見積もりをお出しします。

LINEで無料見積もり 実家まるごと診断(無料) 実家じまい代行を見る

空き家を放置するとどうなるか|時系列で見るリスク

「今すぐ何かが起きるわけではない」からこそ、空き家の放置は先延ばしにされやすい問題です。しかし、放置期間が長くなるほど、リスクは段階的に重くなっていきます。ここでは、放置してからの経過にそって、どのようなリスクが積み上がっていくかを整理します。

放置1〜2年目:劣化の進行と管理の手間

人が住まなくなった家は、住んでいる家より劣化のスピードが速いとされています。換気がされないことで湿気がこもり木材の腐食やカビが進み、排水管は使わないことで封水(においや害虫の侵入を防ぐ水のふた)が蒸発して劣化が進みます。庭木や雑草は数年で敷地外まで伸び、隣地とのトラブルの火種にもなります。この段階では、まだ行政からの指導などは入っていないことが多いものの、劣化はすでに静かに進行しています。

放置3〜5年目:所有者責任と近隣トラブルの顕在化

民法717条(土地工作物責任)により、建物の設置・保存に欠陥があって他人に損害を与えた場合、占有者がいない空き家では実質的に所有者が無過失で賠償責任を負う場面が多くなります。台風で瓦が飛んで隣家を傷つけた、老朽化したブロック塀が倒れて通行人がけがをしたといった事故は、この時期以降に起きやすくなります。所有者責任の詳しい内容や、賠償額の目安・備えるべき保険については、空き家の所有者責任|台風・地震で損害が出たら誰が賠償するかで詳しく解説しています。

放置5年目以降:特定空家等・管理不全空家への指定リスク

空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)にもとづき、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれがある状態などと市区町村が認めた空き家は「特定空家等」に指定されます。2023年の法改正では、特定空家等になる前の段階でも「管理不全空家」として勧告の対象になる仕組みが新設されました(国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」より)。指定の流れは次のとおりです。

  1. 立入調査——市区町村の職員が現地を確認します。
  2. 助言・指導——所有者に改善を促します。この段階ではまだ強制力はありません。
  3. 勧告——改善されない場合に行われます。この時点で固定資産税の住宅用地特例が外れます。
  4. 命令——勧告にも従わない場合、期限を定めて命令が出されます。違反すると50万円以下の過料の対象になり得ます。
  5. 行政代執行——それでも改善されない場合、行政が解体等を代わりに行い、費用を所有者に請求します。

固定資産税の住宅用地特例が外れるとどれだけ増えるか

住宅が建っている土地には、固定資産税の課税標準額を200㎡以下の部分は1/6、200㎡を超える部分は1/3に軽減する「住宅用地特例」が適用されています。勧告を受けて特例が外れると、更地とほぼ同じ水準で税額が計算されるため、税負担は大きく上がります。目安は次のとおりです(実際の税額は評価額・自治体の税率・負担調整措置により変動するため、正確な金額は固定資産税課への確認が必要です)。

土地の固定資産税評価額 特例適用時の年税額目安 特例解除後の年税額目安 年間の増加額目安
600万円(150㎡程度) 約1.4万円 約8.4万円 約7万円
1,200万円(180㎡程度) 約2.8万円 約16.8万円 約14万円
2,000万円(200㎡以下) 約4.7万円 約28万円 約23万円

この増額は勧告が続く限り毎年発生します。「まだ何も言われていないから大丈夫」と考えているうちに、静かに税負担だけが積み上がっていく点に注意が必要です。

台風・大雪・豪雨による被害リスク

放置期間が長引くほど、自然災害による被害も見過ごせなくなります。老朽化した屋根瓦や外壁材は台風の強風で飛散しやすく、隣家の屋根や車、窓ガラスを損傷させる事故につながることがあります。積雪地域では、屋根に積もった雪の重みでカーポートや物置が倒壊したり、落雪が隣地や道路の通行人に被害を与えたりする事故も報告されています。豪雨時には、詰まった雨水ますや側溝から水があふれ、隣地への浸水被害につながることもあります。これらはいずれも、事前の点検と簡単な補修で防げる範囲の被害であることが多く、放置期間の長さがそのままリスクの大きさに直結します。

動物の侵入・不法投棄・放火の誘発

人の出入りがない空き家は、野生動物や野良猫が住み着きやすく、鳴き声やふん尿による近隣トラブルに発展することがあります。敷地内にごみが不法投棄されると、それを放置したこと自体が「著しく衛生上有害」な状態として特定空家等の判定要素になり得ます。放火のリスクも軽視できず、庭や玄関先に燃えやすいものを置いたままにしないこと、外から様子が見えにくい死角を作らないことが、防犯上の基本的な対策になります。放置期間が長くなるほど、こうした「誰も見ていない」状態そのものが、周辺住民にとっての不安材料になっていく点も見落とせません。

保険の見直しも忘れずに

空き家であっても火災保険には加入できますが、居住用物件と比べて保険料が高めに設定されたり、契約できる保険会社・プランが限られたりする場合があります。地震による損壊は火災保険では原則補償対象外で、地震保険への加入が別途必要です。また、自分の建物が原因で第三者に損害を与えたときの備えとして、施設賠償責任保険や個人賠償責任保険特約も検討に値します。空き家になった時点で契約が失効していないか、補償内容が空き家の状態に合っているかを、保険会社に確認しておくことをおすすめします。

「売らない」を続けた場合の維持費シミュレーション(独自試算)

放置のリスクを金額で捉えるために、一般的な木造戸建て(延床30坪・土地150㎡程度、固定資産税評価額は建物300万円・土地800万円と仮定)を、何もせず保有し続けた場合の年間コストを試算しました。

費目 年間の目安 備考
固定資産税(住宅用地特例適用時) 約6万円前後 特例が外れると建物分を含め数倍になる
都市計画税(市街化区域の場合) 約1.5万円前後 市街化区域外では非課税の自治体もある
火災保険・地震保険 2〜6万円程度 空き家プランは居住用より高めになりやすい
庭木の剪定・簡易清掃(年1〜2回) 2〜10万円程度 敷地の広さ・樹木の本数により変動
見回り・管理代行サービス 0〜12万円程度 自分で訪問するなら0円、委託なら月5,000円〜1万円が目安
年間合計の目安 おおよそ11〜35万円程度 管理の頻度・委託の有無で幅がある

特例が維持されている前提でも、5年間で55万円〜175万円程度が積み上がる計算です。ここに、老朽化にともなう突発的な修繕費や、特定空家等・管理不全空家に指定された場合の税額増加、事故が起きた場合の賠償金が加われば、負担はさらに膨らみます。「今は何も起きていないから維持費だけで済んでいる」状態は、あくまで一時的なものと捉えておく必要があります。

自主管理・管理代行・売却の比較(独自整理)

「売らない」を選んだ場合でも、その中でどう管理するかによって、負担とリスクの大きさは変わります。主な選択肢を比較しました。

方法 費用目安 賠償・行政指導リスク 向いているケース
自主管理(定期的に自分で訪問) 交通費・修繕費が随時発生 点検頻度が低いと残る 近隣に住んでいる、月1回程度は訪問できる
空き家管理サービスに委託 月5,000〜1万円程度+報告費用 定期点検で早期発見しやすく低減 遠方在住で当面は売却を決めていない
買取・仲介で売却する 片付け費用・仲介手数料が中心 所有権移転後は買主の責任に 維持のリスクと手間をまとめて手放したい

当面は保有を続ける方針であっても、「何もしない」という選択と「管理代行サービスに委託して定期点検を続ける」という選択とでは、万一の事故が起きた際の評価が大きく異なります。保有を続けると決めた場合は、その決定に管理体制もセットで組み込んでおくことが重要です。

「売却を検討すべきタイミング」を逃さないためのサイン

「そのうち考える」という状態から一歩進めるきっかけとして、次のようなサインが出ていないか確認してみてください。いずれかに当てはまる場合は、判断を先延ばしにするより、早めに査定や相談を始めた方が結果的に負担を抑えられます。

  • 固定資産税の納税通知書が届いた——毎年届く納税通知は、維持コストを再確認する自然なタイミングです。「摘要」欄で住宅用地特例が適用されているかも合わせて確認できます。
  • 自治体から空き家に関する通知・調査依頼が届いた——立入調査や助言・指導の連絡は、特定空家等・管理不全空家に向けたプロセスの初期段階であることが多く、早めの対応が税負担の増加を防ぎます。
  • 近隣から庭木や外壁の状態について連絡があった——近隣が気づく段階まで劣化が進んでいる可能性があり、点検と対応を先送りにするリスクが高まっています。
  • 相続登記の義務化の期限(2027年3月31日)が近づいている——名義変更を終えなければ売却も買取も進められないため、期限を意識したスケジュールで動く必要があります。
  • 火災保険・地震保険の更新時期が来た——保険料の見直しと合わせて、そもそも保有を続けるかどうかを再検討する良いタイミングです。

これらのサインは、いずれも「今すぐ決断しなければならない」という強制力を持つものではありませんが、判断を後押しする材料として活用できます。サインに気づいた時点で、まずは無料査定や相談窓口に連絡を入れておくと、実際に動くべきタイミングを逃さずに済みます。

片付けてから売る?そのまま買取に出す?判断の軸は「手取り額」

ここまで放置のリスクを見てきましたが、多くの人が次に迷うのが「片付けてから仲介で売るべきか、片付けずにそのまま買取に出すべきか」という選択です。この判断は感覚ではなく、片付け費用・解体費用・仲介手数料・売却までの期間をすべて差し引いた「手取り額」で比べることで、初めて客観的に判断できます。

選択肢は大きく3つ|買取・仲介・有料引き取りの比較

実家を手放す方法は、大きく分けて「買取」「仲介」、そして資産価値がほとんど見込めない物件向けの「有料引き取り」の3種類があります。それぞれ、価格・期間・手間のバランスが異なるため、自分の状況にとって何を優先するかによって選ぶべき方法が変わります。「とにかく高く売りたい」のか、「とにかく早く・楽に手放したい」のかを、比較を始める前に自分の中で整理しておくと、判断がぶれにくくなります。当事務局は宅地建物取引業者ではないため、買取・仲介の売買契約そのものは提携の宅建業者が担当し、当事務局は残置物の片付けと窓口の調整を担います。それぞれの特徴を比較表にまとめました。

方法 売却までの期間 片付け・解体の要否 価格水準 向いているケース
買取
空き家買取(提携宅建業者)
早い(数日〜数週間程度が目安) 不要(残置物が残ったままでも査定可能な場合が多い) 仲介より低めになりやすい 急いで手放したい・片付けの負担を減らしたい
仲介
実家の売却(提携宅建業者)
数か月〜半年以上かかることもある 片付け・清掃をしておくと印象・価格に有利 買取より高くなりやすい 時間に余裕があり少しでも高く売りたい
有料引き取り 個別相談による 物件による 所有者側が費用を負担する場合がある 資産価値がほとんど見込めない・再建築不可等の事情がある

この比較で分かるとおり、「時間をかけられるかどうか」と「片付けにどれだけ手間をかけられるか」が、選ぶべき方法を左右します。急いで手放したい場合や、片付けの負担そのものを減らしたい場合は、残置物が残った状態でも複数社の査定を受けられる空き家買取が現実的な選択肢です。一方、時間に余裕があり、少しでも高い金額での売却を目指したい場合は、片付け・清掃をしたうえで実家の売却(仲介)を選ぶ方が結果的に手取りが多くなる傾向があります。

片付けてから売る場合の手取り試算

延床30坪・築40年程度の木造住宅を例に、片付け・清掃をしたうえで仲介で売却するケースの手取りを試算します(数値はあくまで一般的な目安で、実際の金額は物件の状態・地域・相場により変動します)。

項目 金額目安 備考
想定売却価格(仲介) 1,200万円 近隣相場を踏まえた想定値
片付け・遺品整理費用 △30万円 家財量・間取りにより変動
仲介手数料(上限目安) △43.56万円 売買価格400万円超の場合の速算式(売買価格×3%+6万円)×消費税相当
測量・境界確定費用 △20万円〜80万円 境界が未確定の場合に必要になることがある
手取り額の目安 約1,046万円〜1,106万円 譲渡所得税は別途考慮が必要

そのまま買取に出す場合の手取り試算

同じ物件を片付けずにそのまま買取に出したケースを試算します。

項目 金額目安 備考
想定買取価格 850万円 仲介より低めになりやすい(相場の7〜8割程度が目安とされる)
片付け費用 0円 残置物が残ったままでも査定・買取の対象になる場合が多い
仲介手数料 0円 買取業者との直接取引のため仲介手数料は発生しない
手取り額の目安 約850万円 片付け費用・時間の負担がかからない分、価格は下がる

この2つの試算を比べると、金額だけを見れば仲介の方が手取りは多くなる傾向がありますが、その差額(この例ではおよそ200万円前後)は、片付けにかかる時間・労力・売却までの期間の長さという「見えないコスト」と引き換えになっている点に注意が必要です。遠方に住んでいて片付けに時間を割けない場合や、固定資産税・管理費の負担を一日でも早く終わらせたい場合は、金額の差より早さと手間の少なさを優先して買取を選ぶ判断も十分に合理的です。

有料引き取りが必要になるケース

再建築不可物件、立地条件が厳しい山間部の物件、老朽化が著しく倒壊の危険がある建物などでは、買取・仲介いずれでも値がつかず、解体費用や将来の管理費用相当額を所有者が負担したうえで引き取ってもらう「有料引き取り」が必要になる場合があります。この場合も、まずは買取査定を受けたうえで、査定額がつかない・マイナスになる場合の選択肢として検討する順番が現実的です。いきなり有料引き取りを前提にするのではなく、複数の選択肢を順番に確認することをおすすめします。

不動産会社・買取業者の説明を鵜呑みにしない方が良い理由

正直にお伝えすると、不動産会社の中には、所有者にとって最適な選択肢よりも、自社の利益につながる契約形態を優先して勧めてくるケースがあります。代表的なのが媒介契約の種類です。「専属専任媒介」「専任媒介」は他社に重ねて依頼できない契約で、依頼を受けた1社が売主・買主の両方から仲介手数料を得る「両手仲介」につながりやすい構造があります。両手仲介自体は違法ではありませんが、他社からの良い条件の買主候補をあえて紹介しない「囲い込み」が起きるリスクが指摘されています。「一般媒介」であれば複数社に同時に依頼でき比較検討しやすくなりますが、その分どの会社も積極的に動いてくれないというデメリットもあります。

買取業者についても同様で、複数社に査定を依頼せず1社だけの提示額で契約を決めてしまうと、相場より低い金額で手放してしまう可能性があります。査定価格の根拠(近隣の取引事例、路線価、建物の劣化状況など)を具体的に説明できる会社かどうかは、その会社が誠実に対応しているかを見極める材料になります。金額だけでなく、説明の透明性も比較材料に加えることをおすすめします。

権利証・境界確定書類の有無も価格に影響する

買取・仲介いずれの場合も、権利証(登記識別情報)や測量図・境界確認書といった書類がそろっているかどうかで、査定額や手続きにかかる期間が変わることがあります。境界が未確定の土地は、買主側にとって将来の近隣トラブルのリスクとなるため、価格に反映されやすい傾向があります。書類が見当たらない場合でも、司法書士や土地家屋調査士に相談すれば、必要な手続きを確認できます。

事務局の相談窓口でよく見られるパターン

安心実家じまいの相談窓口では、「なぜ売らないのか」に関連して、次のようなパターンが繰り返し見られます。心当たりがないか確認してみてください。

  • 「片付けてから」を口実に何年も動けていない——片付けを終わらせることを条件にしてしまうと、片付けの負担そのものが行動のハードルになり、結果として何年も先送りされることがあります。片付けと査定は同時に進められる、という発想の転換が突破口になります。
  • きょうだいの誰かが「そのうち住むかも」と言って話が進まない——具体的な時期や条件が伴わない「かもしれない」は、話し合いを停滞させる典型的な要因です。いつまでに判断するかの期限を、きょうだい間であらかじめ決めておくことをおすすめします。
  • 査定を1社にしか依頼せず、金額に納得できないまま放置している——1社の提示額だけで「安すぎる」と判断し、その後の行動を止めてしまうケースです。複数社に査定を依頼すると、金額の妥当性を客観的に判断しやすくなります。
  • 名義変更の手間を後回しにした結果、いざ売ろうとしたときに手続きが長引く——相続登記が済んでいないことに、実際に売却を決めた段階で初めて気づくケースも多くあります。売却の意思が固まっていない段階でも、名義の確認だけは先に済ませておくと、いざというときにスムーズです。
  • 維持費を漠然としか把握しておらず、売却との比較ができていない——「なんとなく持ち続けている」状態では、売却との比較検討自体が始まりません。固定資産税の課税明細書を手元に用意するだけでも、比較の第一歩になります。

これらに共通するのは、「具体的な数字や期限を決めないまま、なんとなく先送りにしている」という点です。数字と期限を1つ決めるだけで、状況が動き出すことは少なくありません。

ケース別に見る「なぜ売らないか」への処方箋

売らない理由は人によって異なるため、状況別に現実的な対処法を整理しました。

ケースA:家財が大量に残っていて手をつけられない

片付けの負担が大きすぎて動けない場合は、片付けと査定を同時並行で進める方法が有効です。実家じまい代行や遺品整理で家財の仕分け・搬出を進めながら、買取業者に現状のまま査定を依頼すれば、「まず片付けを終わらせてから」という思考の順番を崩さずに、同時に前へ進められます。形見分けが必要な品がある場合は、仕分けの段階で先に取り分けておく方法も併用できます。

ケースB:老朽化が激しく解体費用が心配

解体費用を先に用意できないことがネックになっている場合、解体せずそのまま売れる買取を先に検討する方法があります。買取業者の中には、老朽化した建物や再建築不可物件も査定対象とするところがあり、解体費用を自己負担せずに手放せる可能性があります。まずは現状のままで査定額を確認し、解体前提で仲介に出した場合との差額を比べてから判断することをおすすめします。

ケースC:相続人が複数いて意見がまとまらない

相続人間で温度差がある場合は、感情的な議論になる前に、査定額・維持費・税負担といった客観的な数字を先に揃えて共有する方法が効果的です。「売るべきか」という抽象的な議論より、「このまま持ち続けると年間いくらかかり、売ればいくら手元に残るか」という具体的な数字を土台に話し合う方が、合意形成が進みやすくなります。

ケースD:相続登記が済んでおらず身動きが取れない

名義変更が終わっていない場合は、片付けや売却の相談と並行して、司法書士への相続登記の依頼を進めることができます。登記が完了するまで売却契約は結べませんが、査定額の確認や片付けの相談自体は、登記完了前でも並行して進められます。相続登記の費用や自分で行う方法については、法務局の窓口またはオンラインの登記情報提供サービスで登記事項証明書を取得し、現在の名義を確認することから始めてください。

ケースE:遠方に住んでいて現地に行けない

遠方在住で現地確認や立ち会いが難しい場合も、鍵を預けて片付け・査定・売却の手続きを進める方法があります。写真での状況報告を受けながら、現地に行かずに手続きを完結させることも可能です。「現地に行く時間が取れないから」という理由だけで判断を先延ばしにする必要はありません。

ケースF:親が老人ホームに入居中で名義がまだ親のまま

親が存命のまま老人ホームなどに入居し、実家が空き家になっているケースもあります。この場合、実家の名義はまだ親本人のままであることが多く、子どもが勝手に売却手続きを進めることはできません。親の判断能力がしっかりしている間は、親本人の意思で売却を進めることができますが、判断能力の低下が見られる場合は、成年後見制度の利用が必要になることもあります。将来的な選択肢を狭めないためにも、判断能力がはっきりしているうちに、家族間で今後の方針を話し合っておくことをおすすめします。

ケースG:借地上に建物がある・借地権付き物件

実家が借地の上に建っている場合、土地の所有者と建物の所有者が別人であるため、売却の際には地主の承諾(譲渡承諾)が必要になることが一般的です。承諾料の相場や手続きは地域や契約内容によって異なるため、まずは地主または借地権に詳しい不動産会社・司法書士に相談し、承諾を得られる見込みがあるかを確認してから、買取・仲介の相談を進めるとスムーズです。

ケースH:資産価値が低く空き家バンクへの登録も検討している

買取・仲介での売却が難しい地方の物件では、自治体が運営する空き家バンクへの登録も選択肢の一つです。空き家バンクは、移住希望者などとのマッチングを目的とした制度で、自治体によってはリフォーム補助金や家財処分費用の補助が用意されていることもあります。ただし、成約までの期間は仲介より長くかかる傾向があるため、急いで手放したい場合は買取と並行して検討するとよいでしょう。空き家バンクの仕組みについては空き家バンクとは|登録方法・売れやすさ・自治体の支援で詳しく解説しています。

ケースI:更地にしてから売るか、古家付きのまま売るか迷っている

老朽化した建物が建ったままの土地は「古家付き土地」として売却する方法と、解体して更地にしてから売る方法があります。古家付きのまま売却すれば解体費用(木造30坪で目安100万〜200万円程度)を先に負担せずに済みますが、買主側が解体費用を見込んで価格交渉を行うことが多く、結果的に売却価格が下がる傾向があります。更地にすれば買い手の対象は広がりやすい一方、解体後は固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなる点に注意が必要です。どちらが有利かは、物件の状態や地域の需要によって変わるため、両方のパターンで査定額を確認してから判断することをおすすめします。

ケースJ:親の借金や住宅ローンの残債がある可能性がある

実家に住宅ローンの残債や、親名義の借金が残っている可能性がある場合は、売却を検討する前に負債の状況を確認しておく必要があります。住宅ローンが残っている不動産は、原則として抵当権を抹消しない限り売却できません。売却代金でローンを完済できる見込みがあるかどうかを、金融機関に確認してから手続きを進めることになります。親の借金の総額が資産を上回る可能性がある場合は、相続放棄も含めた選択肢を、司法書士や弁護士に相談したうえで検討してください。安易に片付けや処分を先に進めてしまうと、後から相続放棄ができなくなるおそれがある点にも注意が必要です。

売却以外の選択肢も含めて比較する

「売らない」という選択の背景には、売却以外の道も検討したいという気持ちが隠れていることがあります。ここでは、売却と並べて検討されやすい選択肢を簡単に紹介します。

賃貸に出す

解体・売却をせず、実家を貸家として活用する方法もあります。ただし、賃貸に出すには一定のリフォーム費用がかかることが多く、入居者がつくまでの空室期間や、退去後の原状回復費用など、売却にはない管理の手間が継続的に発生します。賃貸に出す場合の収支や手順については実家を貸すという選択肢|賃貸に出す手順・収支・リスクで詳しく解説しています。

隣地の所有者に売る

不動産会社を通さず、隣接する土地の所有者に直接売却する方法も選択肢の一つです。隣地の所有者にとっては土地の一体利用によるメリットがあるため、通常の相場より高値での売却が実現する場合もあります。声のかけ方や価格の決め方には注意点があるため、詳しくは実家を隣の人に売る方法|声のかけ方・価格の決め方・注意点をご覧ください。

土地として活用する

建物を解体し、駐車場やトランクルームとして活用する方法もあります。初期投資が必要になりますが、売却せずに収益を得たい場合の選択肢になります。ただし、需要が見込めるエリアかどうかの見極めが重要で、需要のないエリアでは維持費だけがかさむ結果になることもあります。

これらの選択肢は、いずれも「今すぐ売らなくてよい」という点では共通していますが、いずれも一定の初期費用や継続的な管理の手間を伴います。「売らない」という選択を続ける場合は、売却した場合の手取り額と、これらの選択肢を実行した場合の収支を、同じ土俵で比較しておくことをおすすめします。

県ごとの空き家事情と相談窓口

空き家の売れやすさや自治体の支援制度は、地域によって差があります。例えば神奈川県のように人口が多く不動産需要が比較的安定している地域もあれば、地方部で買い手を見つけること自体が難しい地域もあります。お住まいの地域や実家がある地域の事情に応じた相談先を選ぶことも、売却をスムーズに進めるポイントの一つです。神奈川県内に実家がある場合は神奈川県の空き家買取、埼玉県内に実家がある場合は埼玉県の空き家買取、千葉県内に実家がある場合は千葉県の空き家買取、北海道内に実家がある場合は北海道の空き家買取のページもあわせてご確認ください。人口密集地では買取・仲介いずれでも比較的早く相談が進みやすい一方、地方部や郊外では、買い手候補が限られる分、買取業者や自治体の空き家バンクとの連携が現実的な選択肢になることが多くなります。

共有名義(相続人が複数)の場合の売却手続き

実家の名義が遺産分割未了のまま相続人全員の共有になっているケースは珍しくありません。共有名義の不動産を売却するには、原則として共有者全員の同意が必要です。共有者のうち1人でも反対すれば、売買契約を結ぶことはできません。共有者の中に連絡が取りづらい人や、遠方に住んでいて話し合いに参加しにくい人がいる場合は、早めに連絡を取り、売却の方向性について意思確認をしておくことが重要です。

遺産分割協議がまだ済んでいない場合は、売却の前提として、まず相続人全員で遺産分割協議を行い、実家の名義を誰にするか(単独名義にするか、共有のまま相続登記をするか)を決める必要があります。共有のまま相続登記をした場合でも、その後の売却には共有者全員の同意が必要になる点は変わりません。将来の売却をスムーズに進めたい場合は、遺産分割協議の段階で、実家を代表して管理・売却する人を決めておく方法も有効です。

共有者の一部と連絡が取れない、あるいは行方不明になっている場合は、家庭裁判所への不在者財産管理人の選任申立てなど、通常より手間のかかる手続きが必要になることがあります。このようなケースでは、早い段階で司法書士や弁護士に相談し、見通しを立てておくことをおすすめします。

売却前に確認しておきたい実務チェックリスト

「売らない」から「売る」へ気持ちを切り替えたときに、着手前に確認しておきたい項目を一覧にしました。印刷して、確認用にご活用ください。

確認項目 チェックのポイント
登記名義の確認 登記事項証明書を取得し、名義が誰になっているか確認する。故人や先代のままなら相続登記の準備を進める
建築年の確認 昭和56年5月31日以前かどうかで、空き家の3,000万円特別控除の対象になるかが変わる(国税庁タックスアンサーNo.3306)
取得費が分かる書類の有無 当時の売買契約書・領収書があるか確認。ない場合は概算取得費(譲渡価額の5%)を使う扱いになる(国税庁タックスアンサーNo.3302)
家財・残置物の量の把握 片付け費用の見積もりを取るか、残置物ありのまま買取査定を依頼するかを決める
特定空家等・管理不全空家の指定有無 市区町村の空き家対策担当課に、指定や助言・指導を受けていないか確認する
固定資産税の課税明細 住宅用地特例が適用されているか、課税明細書の「摘要」欄で確認する
相続人全員の意向確認 共有名義の場合、売却には共有者全員の同意が原則必要
複数社への査定依頼 買取・仲介とも1社だけで判断せず、2〜3社の査定額を比較する

片付けだけを先に依頼することもできる

「売却するかどうかはまだ決められないが、家財だけは先に片付けたい」という相談も少なくありません。この場合、売却の判断を保留にしたまま、片付けだけを先に依頼することも可能です。片付けを終えておけば、後日あらためて査定を依頼する際にも、建物の状態を正確に把握しやすくなり、査定額の精度も上がりやすくなります。また、形見分けが必要な品や、仏壇・位牌など供養が必要な物がある場合も、片付けの段階で仕分けて対応できます。「売る・売らない」を今すぐ決められなくても、片付けだけは先に進めておく、という選択肢があることを知っておくと、行動のハードルが下がります。

買取業者・不動産会社選びで確認しておきたいポイント

実際に買取や仲介の相談を進める段階になったら、業者選びで確認しておきたいポイントを整理しておきます。

確認ポイント チェックの視点
宅地建物取引業の免許番号 免許番号の(1)などの数字が更新回数を示す。数字が大きいほど営業年数が長い傾向がある
査定額の根拠説明 近隣の取引事例・路線価・建物の劣化状況など、具体的な根拠を示せるか
残置物ありでの査定可否 片付け前の現状で査定・買取に対応できるか、事前に確認する
契約形態の説明の有無 専任媒介・一般媒介などの違いとメリット・デメリットを説明してくれるか
複数社比較への理解 他社への相談・比較を嫌がらず、むしろ勧めてくれるか
契約後のキャンセル規定 手付解除・違約金の条件を契約前に確認しておく

特に「他社に査定を依頼するな」と強く求めてくる業者には注意が必要です。誠実な業者であれば、比較検討されること自体を問題視しないことがほとんどです。

実家の売却にまつわる税金の基本

売却を検討する際に避けて通れないのが税金の扱いです。不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、譲渡所得税(所得税・復興特別所得税・住民税)がかかります。譲渡所得は「譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除」で計算し、税率は所有期間によって次のように変わります。

区分 所有期間 税率(所得税・復興特別所得税・住民税の合計)
短期譲渡所得 5年以下 39.63%
長期譲渡所得 5年超 20.315%

相続した実家の場合、所有期間は被相続人(親など)が取得した時点から通算されるため、長年住んでいた実家であれば多くの場合は長期譲渡所得(20.315%)が適用されます。また、取得費が分からない場合は譲渡価額の5%を概算取得費として計上できます(国税庁タックスアンサーNo.3302「土地や建物を売ったときの取得費」より)。

相続した空き家を売る場合に使えるのが「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」です。国税庁の案内によると、次の主な要件を満たせば、譲渡所得から最大3,000万円(相続人が3人以上の場合は2,000万円)を控除できます(国税庁タックスアンサーNo.3306より)。

  • 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること(区分所有建物登記のあるマンション等は対象外)
  • 相続開始直前に被相続人が一人で住んでいた家であること
  • 相続の時から譲渡の時まで、事業用・貸付用・居住用に使われていないこと
  • 譲渡時に耐震基準を満たしているか、家屋を解体してから土地を売ること
  • 相続開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
  • 売却代金が1億円以下であること
  • 適用期限は令和9年(2027年)12月31日までの譲渡であること

この特例は、買取・仲介いずれの方法で売却した場合でも要件を満たせば適用できます。建築年や耐震基準の適合状況によって税額が数百万円単位で変わることもあるため、早い段階で確認しておく価値があります。適用の可否は個別事情によって細かく分かれるため、最終的には税務署または税理士に確認してください。

取得費が分からない場合の注意点

相続した実家の取得費は、被相続人(親など)がその不動産を取得したときの金額をそのまま引き継ぎます。ただし、数十年前に取得した実家では、当時の売買契約書や領収書が残っておらず、取得費が分からないケースが少なくありません。その場合、実務上は譲渡価額の5%相当額を「概算取得費」として計上できる扱いになっています(国税庁タックスアンサーNo.3302より)。古い実家ほどこの概算取得費ルールが使われる場面が多く、実際の取得費より低い金額で計算されることで、譲渡所得が大きく計上されやすい点には注意が必要です。当時の契約書が見つかる可能性がある場合は、売却の相談を始める前に、一度探しておく価値があります。

売却後に必要な手続き

売却が完了した後も、いくつか忘れずに済ませておきたい手続きがあります。譲渡所得が発生した場合は、売却した翌年の2月16日から3月15日の間に確定申告が必要です(3,000万円特別控除の適用を受ける場合も、控除の結果として税額が0円になる場合を含め、原則として確定申告が必要です)。また、売却代金の受け取り後は、相続人間での分配方法についても、事前に取り決めた内容にもとづいて速やかに精算しておくことをおすすめします。書類関係は、売買契約書・重要事項説明書・領収書などを含め、確定申告や将来の問い合わせに備えて一定期間保管しておくと安心です。

特別控除の有無で税額はどれだけ変わるか(試算例)

建築年がわずかに要件を外れるだけで、税額がどれほど変わるかを試算しました。取得費が分からず概算取得費(譲渡価額の5%)を使う前提です。

ケース 譲渡価額 取得費・譲渡費用 特別控除の適用 課税譲渡所得 税額の目安(20.315%)
昭和55年築・要件を満たし解体して売却 1,000万円 取得費50万円+譲渡費用80万円 あり(3,000万円) 0円 0円
昭和55年築・要件を満たし耐震適合で売却 1,200万円 取得費60万円+譲渡費用90万円 あり(3,000万円) 0円 0円
昭和57年築のため要件を満たさず 1,200万円 取得費60万円+譲渡費用90万円 なし 約1,050万円 約213.3万円

この試算のように、建築年が要件(昭和56年5月31日以前)をわずかに外れるだけで、特別控除が使えず税額が200万円以上変わることがあります。実家の建築年や耐震基準の適合状況は、売却方法を検討し始める早い段階で確認しておく価値があります。

相続登記が済んでいない場合の手続き

前述のとおり、2024年4月1日から相続登記が義務化されています。相続登記に必要な書類や、自分で申請する場合の費用については法務局の窓口で確認できます。登録免許税は原則として固定資産税評価額の0.4%で、司法書士に依頼する場合は別途報酬が発生します。名義が故人や先代のままでは、買取業者との契約も仲介での売却依頼も進められないため、片付けや査定の相談と並行して、早めに着手しておくことをおすすめします。

安心実家じまいのサービス案内

安心実家じまいは、実家の片付けから売却・買取の窓口調整までを一つの窓口でお受けする全国対応のサービスです。当事務局は宅地建物取引業者ではないため、買取・仲介の売買契約そのものは提携の宅建業者が担当し、当事務局は残置物の仕分け・搬出・供養の手配と、複数社への査定依頼の橋渡しを行います。

「片付けが終わっていないけれど査定だけ先に知りたい」「相続人が複数いて話がまとまらない」「まず維持費と売った場合の手取りを比べたい」といったご相談にも対応します。相続登記など法律手続きが絡む場合は提携司法書士と連携しながら進める体制を整えています。実家じまい全体の進め方は実家じまい代行パックをご覧ください。

お見積もりを確定してからのご契約です。追加の作業が見込まれる場合は作業前に金額を提示し、ご了承をいただいてから実施します。

「売らない」ことにまつわるよくある誤解

相談を受ける中では、空き家を売らないという選択について、事実と異なる思い込みをされている方が少なくありません。代表的な誤解を整理しておきます。

誤解1:「誰にも迷惑をかけていないから、放っておいても問題ない」

近隣からの苦情や自治体からの通知がまだ来ていないというだけで、責任やリスクが発生していないわけではありません。老朽化は目に見えない部分から静かに進行しており、事故はある日突然起こるものです。通知の有無と、実際にリスクが生じているかどうかは別の問題だと考えておく必要があります。

誤解2:「相続放棄すれば実家の問題は完全になくなる」

相続放棄をした時点でその財産を現に占有していた場合、次の順位の相続人や相続財産清算人が管理を始められるまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって保存する義務が残ります(2023年4月1日施行の改正民法940条)。また、相続人全員が放棄した場合でも、空き家そのものが消えてなくなるわけではなく、最終的に家庭裁判所への相続財産清算人の選任申立てが必要になることもあります。「放棄届を出したから翌日から無関係」というわけにはいかない点に注意してください。

誤解3:「古い家だから、そもそも売れないだろう」

老朽化した家でも、土地としての価値が残っていれば買取業者による査定対象になることが多くあります。建物の価値がほぼゼロでも、更地にした場合の土地価格をもとに買取価格が提示されるケースは珍しくありません。査定を依頼する前から「どうせ売れない」と決めつけず、まず現状のまま査定額を確認することをおすすめします。

誤解4:「家財が残ったままでは、誰も査定に来てくれない」

買取業者の中には、残置物が残ったままの状態でも現地を見たうえで査定額を提示できるところが多くあります。片付けを先に終わらせなければ査定すら受けられないと思い込んでいる方も多いのですが、実際には片付けと並行して査定を進められるケースがほとんどです。

誤解5:「遠方に住んでいるので、実質的に何もできない」

裁判上、遠方に住んでいることや多忙であることは、それ自体では管理責任を免れる理由になりません。一方で、鍵を預けて片付け・査定・売却手続きを進める仕組みを使えば、現地に何度も足を運ばなくても手続きを進めることは可能です。「遠方だから動けない」と「遠方でも動く方法がある」は別の話だと理解しておくことが、行動を起こす第一歩になります。

空き家所有者が今日からできる3つの行動

ここまでの内容を踏まえ、今日から着手できる行動を優先順位順に整理しました。すべてを一度に終わらせる必要はなく、まずは1から着手することをおすすめします。

  1. 登記事項証明書を取得し、名義と共有状況を確認する——法務局の窓口またはオンライン(登記情報提供サービス)で取得できます。名義が故人や先代のままなら、相続登記の準備を並行して進めます。
  2. 現状のまま無料査定を依頼し、金額の目安をつかむ——片付けが終わっていなくても、複数社に査定を依頼して金額のレンジを把握することができます。「売れるかどうか分からない」状態から「いくらで売れるか分かる」状態に変えるだけで、次の判断がしやすくなります。
  3. 維持費と手取り額を比べたうえで、家族内で方向性を話し合う——結論を急ぐ必要はありませんが、「当面は保有する」という選択をした場合も、それは能動的な決定として、管理体制(自主管理か委託か)とセットで考えることが重要です。「決めていない」状態を漫然と続けることが、最もリスクの高い選択です。

これらの対応は、司法書士・税理士・買取業者・不動産会社など相談先が分かれるため、一つの窓口でまとめて整理したい場合は、片付けから査定・売却の窓口調整までを一括で相談できるサービスもあわせてご検討ください。

よくある質問

空き家をなぜ売らない人が多いのですか?
もっとも多い理由は「家財・残置物の片付けが終わっていない」ことです。次いで「思い出があって踏ん切りがつかない」「相続登記や名義変更が済んでいない」「解体費用の負担が重い」といった理由が続きます。感情面の問題と、片付け・登記・費用といった実務面の問題を分けて考え、実務面から一つずつ着手すると動き出しやすくなります。
空き家を放置するとどんなリスクがありますか?
建物の劣化が進むだけでなく、老朽化した屋根や塀が原因で第三者に損害を与えた場合、民法717条により所有者が賠償責任を負う可能性があります。また、「特定空家等」や「管理不全空家」に指定され勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例(最大1/6軽減)が外れて税額が数倍になることもあります。詳しくは空き家の所有者責任で解説しています。
片付けが終わっていないのですが、買取に出せますか?
残置物が残ったままでも査定・買取の対象になる場合が多くあります。片付け費用をかけずに手放したい場合は空き家買取への相談が現実的な選択肢です。片付けをしたうえで少しでも高く売りたい場合は、仲介での実家の売却を検討してください。
買取と仲介、どちらを選べばいいですか?
時間に余裕があり、少しでも高い価格での売却を目指すなら仲介、急いで手放したい・片付けや測量などの手間を減らしたいなら買取が向いています。判断に迷う場合は、片付け費用・仲介手数料・売却までの期間を差し引いた「手取り額」で比較することをおすすめします。
相続した空き家を売ると税金はいくらかかりますか?
譲渡所得(譲渡価額-取得費・譲渡費用-特別控除)に対して、長期譲渡所得の場合は20.315%の税率がかかります。昭和56年5月31日以前に建築された家屋で一定の要件を満たせば、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例(国税庁タックスアンサーNo.3306)があります。適用の可否は個別事情により異なるため、税務署または税理士に確認してください。
相続人が複数いて話がまとまらない場合はどうすればいいですか?
感情的な議論になりやすいため、まず査定額・維持費・税負担といった客観的な数字を揃えて共有することをおすすめします。具体的な金額を土台に話し合うことで、合意形成が進みやすくなります。窓口を一つにまとめて情報共有を一元化する方法も有効です。
解体してから売った方がいいですか、それとも古家付きのまま売った方がいいですか?
古家付きのまま売却すれば解体費用(木造30坪で目安100万〜200万円程度)を先に負担せずに済みますが、買主側が解体費用を見込んで価格交渉することが多く、売却価格が下がる傾向があります。更地にすれば買い手の対象は広がりやすい一方、固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなります。どちらが有利かは物件や地域の需要によって変わるため、両方のパターンで査定額を確認してから判断することをおすすめします。
相続放棄をすれば実家の管理責任からは完全に逃れられますか?
相続放棄をした時点でその財産を現に占有していた場合、次の相続人や相続財産清算人が管理を始められるまでの間、一定の保存義務が残ります(改正民法940条)。相続人全員が放棄した場合でも、空き家自体が消えるわけではなく、家庭裁判所への相続財産清算人の選任申立てが必要になることもあります。放棄すれば即座にすべての責任から解放されるわけではない点に注意してください。

まとめ

空き家を「なぜ売らないのか」という問いには、片付け・感情・相続登記・費用・相場への不安・相続人間の調整・将来への漠然とした期待・単純な多忙さといった、いくつもの理由が重なっています。要点を振り返ります。

  • 売らない理由の多くは片付け・感情・相続登記の未了に集約される。実務面から一つずつ着手すると動きやすい
  • 放置を続けると老朽化に加えて所有者責任・特定空家等の指定リスクが積み上がる
  • 特定空家等・管理不全空家の勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例が外れ税額が数倍になり得る
  • 判断の軸は「片付けてから仲介で売るか」「そのまま買取に出すか」を手取り額で比べること
  • 当事務局は宅建業者ではないため、買取・仲介は提携の宅建業者が担当し、当事務局は片付けと窓口を担う
  • 相続した空き家の売却には3,000万円特別控除があるが、建築年・耐震基準・売却時期など要件が細かい
  • 相続登記が未了だと売却も買取も進められないため、片付け・査定の相談と並行して手続きを進める

「そのうち売ろう」と考えているうちにも、維持費と税負担のリスクは静かに積み上がっていきます。まずは片付けの状態や登記名義を確認するところから、あるいは現状のまま無料査定を依頼するところから始めてみてください。片付けから売却・買取の窓口調整まで、判断に迷う部分はまとめてご相談いただけます。

「売らない」という選択そのものが間違っているわけではありません。将来使う具体的な計画があり、維持費や管理体制もきちんと組み込んだうえでの「保有継続」という判断であれば、それも一つの合理的な結論です。問題なのは、理由や計画がはっきりしないまま、なんとなく時間だけが過ぎていく状態です。片付け・登記・査定・相続人間の調整のうち、まず1つだけでも今日中に着手先を決めることが、「なぜ売らないのか」から「どうするか決めた」へ一歩進む、もっとも現実的な方法です。

読むより、聞いたほうが
早いこともあります

片付け・査定・買取・仲介の窓口調整まで、まとめてご相談いただけます。ご相談・お見積もりは無料です。

LINEで無料相談 実家まるごと診断(無料) サービスを見る フォームで相談

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

安心実家じまい事務局です。実家の片付けや遺品整理、空き家になった家の処分について、はじめての方にも分かるように記事を書いています。提携している現場の業者や司法書士と一緒に、費用の相場・自治体のごみ出しルール・補助金といった、調べてもなかなか分かりにくいところを一つずつ確かめながらまとめています。「誰に頼めばいいか分からない」という段階のご相談も、LINEやお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
運営は株式会社Sora Capital(東京都渋谷区・安心実家じまい事務局)です。相続・登記・法務に関する記述は、提携の司法書士・行政書士 久留慎一郎が監修しています。税額の計算や申告の判断は、税理士にご確認ください。

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次