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相続した土地の売却にかかる税金|計算方法・特例3つ・手取りシミュレーション

最終更新日:2026年9月29日|法務監修:司法書士・行政書士 久留慎一郎先生|執筆・編集:安心実家じまい事務局

司法書士・行政書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。

監修の範囲:相続・登記・法務に関する記述(司法書士・行政書士の業務範囲)。片付け・買取・費用相場などの記述は安心実家じまい事務局が編集しています。監修者プロフィール

税金について:税額の計算や特例を使えるかどうかの判断は税理士の業務で、監修の範囲に含みません。申告の前に、税理士または所轄の税務署でご確認ください。

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 不動産の名義変更
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理

監修範囲:久留慎一郎先生(司法書士・行政書士)の監修は、相続・登記・法務に関する記述です。税額の計算や税の特例に関する記述は、国税庁の公表資料と法令をもとに事務局が作成しており、監修の対象外です。監修者プロフィール

この記事の結論

  • 相続した土地を売って利益(譲渡所得)が出ると、所得税・復興特別所得税・住民税の3つがかかります。親の所有期間を引き継ぐため、多くは長期譲渡所得で合計20.315%です。
  • 親がいくらで買ったか分からない土地は、売値の5%しか取得費にできず、税金が大きくなりがちです。売る前に売買契約書や通帳を探す価値があります。
  • 土地だけを売るときに空き家の3,000万円控除を使えるのは、原則として親が住んでいた家を相続後に取り壊し、その敷地を売る場合です。親の生前に更地にしていた土地や、貸していた土地は対象外です。
  • 相続税を払った人は「取得費加算」を使えますが、加算できるのは売った土地の評価額に対応する分だけで、空き家特例との併用はできません。
  • 売値1,000万円・特例なし・取得費不明なら税金は約185万円、空き家特例が使えれば0円。差は特例の要件を満たせるかで決まります。

親から相続した土地を売ろうとしたとき、多くの方が最初に気にするのは「税金でいくら引かれて、手元にいくら残るのか」です。ところが土地の税金は、親がいつ・いくらで買ったか、家を壊したのはいつか、相続税を払ったかといった条件で、同じ売値でも数百万円単位で変わります。

この記事は、実家の敷地・更地・古家付きの土地・親名義の畑や貸地などを相続し、売却を考えている方に向けて、土地ならではの論点に絞って税金を整理しました。計算式と税率は国税庁タックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)で確認した内容に基づいています。実家(建物を含む)の売却にかかる税金の全体像は実家売却の税金まとめで扱っているので、あわせてご覧ください。

なお、税額は個別事情で変わります。最終的な申告内容は税理士または税務署でご確認ください。

目次

相続した土地を売るとかかる税金と費用の全体像

土地を売ったときに課税の中心になるのは「譲渡所得」、つまり売って得た利益にかかる税金です。売値そのものに税金がかかるわけではなく、売値から「取得費(親が買ったときの代金など)」と「譲渡費用(売るためにかかった費用)」を引いた利益にかかります。利益が出なければ譲渡所得の税金は0円です。

ただし売却の前後には、譲渡所得の税金以外にもいくつかの税金・費用がかかります。時系列で並べると次のとおりです。

タイミング 税金・費用 目安・税率 ポイント
相続したとき 相続税 遺産が基礎控除を超える場合のみ 申告期限は死亡を知った日の翌日から10か月以内
相続登記のとき 登録免許税 固定資産税評価額の0.4% 評価額100万円以下の土地は令和9年3月31日まで免税措置あり。支払額は取得費に算入できる
売買契約のとき 印紙税 1,000万円超5,000万円以下の契約書で1万円(軽減後) 軽減措置は令和9年3月31日までに作成する契約書が対象。売主負担分は譲渡費用
売却時 仲介手数料と消費税 仲介の場合 買取なら不要なことが多い。譲渡費用になる
売却の翌年 所得税・復興特別所得税(2027年分からは防衛特別所得税も) 長期15%/短期30%に、所得税額の2.1%相当の上乗せ(2026年分までは復興特別所得税2.1%、2027年分からは復興特別所得税1.1%+防衛特別所得税1%) 翌年2月16日〜3月15日に確定申告
売却の翌年 住民税 長期5%/短期9% 確定申告の内容をもとに市区町村から通知される

相続税は「相続したこと」に、譲渡所得の税金は「売って利益が出たこと」にかかる別の税金です。相続税を払ったうえで土地を売ると、同じ土地に二重に税金がかかっているように感じますが、その負担を調整するのが後で説明する「取得費加算の特例」です。相続税がかかるかどうかの判定は相続税の基礎控除の解説で確認できます。

税額の計算式と税率|所有期間は親が買った日から数える

計算式は「売値-取得費-譲渡費用-特別控除」

国税庁が示している計算式は次のとおりです。

課税譲渡所得金額 = 譲渡価額(売値)-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
長期の税額 = 課税譲渡所得金額 × 所得税15%(+所得税額の2.1%相当の上乗せ)+ 住民税5%
短期の税額 = 課税譲渡所得金額 × 所得税30%(+所得税額の2.1%相当の上乗せ)+ 住民税9%

所得税に上乗せされる税は、売った年によって内訳が変わります。

  • 2026年(令和8年)分までの売却:復興特別所得税(基準所得税額×2.1%)
  • 2027年(令和9年)分以後の売却:復興特別所得税が1.1%に引き下げられ、新たに防衛特別所得税(基準所得税額×1%)がかかります。あわせて復興特別所得税の課税期間は令和29年(2047年)分まで延長されました(令和8年度税制改正)。

内訳は変わっても上乗せの合計は所得税額の2.1%で同じなので、実効税率は2026年に売っても2027年以後に売っても、長期が20.315%(15%+0.315%+5%)、短期が39.63%(30%+0.63%+9%)です。売る年を2026年と2027年のどちらにしても、この改正によって譲渡所得の税率が上がったり下がったりすることはありません。なお、国税庁タックスアンサーの譲渡所得のページ(No.3208・3211)は「平成25年から令和29年までの各年分は復興特別所得税2.1%」という書き方ですが、2027年分以後の内訳は国税庁No.1000 所得税のしくみや財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」のとおり上記のようになります。

区分 判定 所得税 上乗せ分(復興特別所得税/2027年分から+防衛特別所得税) 住民税 合計
長期譲渡所得 売った年の1月1日時点で所有期間5年超 15% 0.315% 5% 20.315%
短期譲渡所得 売った年の1月1日時点で所有期間5年以下 30% 0.63% 9% 39.63%

土地の譲渡所得は給与や年金などとは分けて計算する「分離課税」です。給与が多い人ほど税率が上がる、という仕組みにはなりません。

「相続から5年」ではなく「親の取得日から5年」

よくある誤解が「相続してから5年以内に売ると税率が高い」というものです。国税庁は、相続や贈与で取得した土地建物の所有期間について、被相続人(亡くなった親)の取得の時期がそのまま相続人に引き継がれるとしています。

たとえば親が30年前に買った土地なら、相続した翌月に売っても長期譲渡所得です。「相続したばかりだから5年待とう」と売却を先延ばしにする必要はありません。逆に、親が亡くなる数年前に買った土地だけは短期になる可能性があります。

  • 親が2022年3月に購入し、2025年に相続、2027年に売却:2027年1月1日時点の所有期間は4年9か月なので短期(39.63%)
  • 同じ土地を2028年に売却:2028年1月1日時点で5年9か月なので長期(20.315%)

判定の基準日は「売った日」ではなく「売った年の1月1日」です。所有期間がちょうど5年前後の土地は、売る年を1年ずらすだけで税率がほぼ半分になることがあります。

相続した実家の空き家特例(3,000万円控除)がいつまで使えるかは、相続空き家の3,000万円控除 期限チェックで、相続開始日から期限と残り日数を確認できます。

ここまで読んで「うちの場合はどうなる?」と思ったら

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取得費がわからない土地は「売値の5%」|昔から持っている土地の取得費

取得費は親が買ったときの金額を引き継ぐ

相続した土地の取得費は、相続時の評価額ではなく、親(被相続人)がその土地を買ったときの購入代金や購入手数料をもとに計算します。祖父母から親へ相続されていた土地なら、さらにさかのぼって最初に買った人の金額です。

土地は建物と違って減価償却をしないので、購入代金がそのまま取得費になります。親が1990年前後に高値で買った土地を今売ると、取得費が売値を上回り、譲渡所得がマイナス(税金0円)になることも珍しくありません。

分からなければ「概算取得費5%」

先祖代々の土地や、購入時期が古く資料が残っていない土地は、売った金額の5%を取得費とすることができます(概算取得費)。実際の取得費が売値の5%より少ない場合も、5%を使えます。

ただしこの5%は、実際に買った金額よりかなり小さいことがほとんどです。2,000万円で売った土地の取得費が100万円扱いになれば、1,900万円近くが課税対象になります。売却前に次の資料を探す価値があります。

探す資料 何がわかるか どこにあることが多いか
土地の売買契約書 購入代金・購入日(最有力の証拠) 親の金庫、仏壇の引き出し、権利証と同じ封筒
登記済証(権利証)・登記識別情報 取得した日・取得原因(売買か相続か) 同上。法務局で登記事項証明書を取れば取得日と原因は確認可能
購入時の領収書・仲介手数料の領収書 支払額・仲介手数料(取得費に含まれる) 家計の書類ファイル
住宅ローンの契約書・返済予定表 借入額から購入価格の手がかり 金融機関から取り寄せ可能な場合あり
預金通帳・振込記録 購入時期の大口出金 親の古い通帳
分譲時のパンフレット・重要事項説明書 分譲価格・面積 購入時の書類一式

契約書が見つからない場合に、他の資料から取得費を推計できるかは個別判断になります。推計で申告する場合は、事前に税理士か税務署に相談してください。登記簿で取得原因が「相続」なら、さらに前の世代の取得までさかのぼる必要があります。

相続登記の費用は取得費に入る(5%を使う場合は除く)

国税庁によると、業務に使っていない土地を相続したときに相続人が払った登記費用(登録免許税・司法書士報酬など)は取得費に含まれます。ただし概算取得費(5%)を使う場合は、これらを上乗せできません。実際の取得費で計算するときは、相続登記の領収書も保管しておきましょう。相続登記の費用の目安は相続登記の費用と自分でやる方法にまとめています。

土地ならではの譲渡費用|測量費・解体費は引けるが管理費は引けない

譲渡費用とは「土地を売るために直接かかった費用」です。国税庁は仲介手数料、測量費、売主が負担した印紙代、借家人などへの立退料、建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用などを挙げる一方で、修繕費や固定資産税など維持・管理のための費用は譲渡費用にならないとしています。土地の売却で出てきやすい費用を整理すると次のとおりです。

費用 扱い 補足
仲介手数料 譲渡費用になる 消費税分も含めて計上
売買契約書の印紙代(売主負担分) 譲渡費用になる 軽減税率適用後の額
境界確定などの測量費 譲渡費用になる 売るために行ったもの。費用相場は土地の測量・境界確定の費用参照
古家の解体費用 譲渡費用になる 土地を売るために取り壊した場合。建物の損失額(残っていた取得費)も譲渡費用になる
借家人への立退料 譲渡費用になる 貸家を売るために明け渡してもらう場合。借地人に借地権を返してもらう対価は性質が異なるため個別に確認
分筆登記の費用 個別に確認 売却のための分筆かどうかで判断が分かれうるため、申告前に税務署・税理士へ
相続登記の費用 譲渡費用ではなく取得費 概算取得費5%を使う場合は加算不可
固定資産税・都市計画税 ならない 保有コスト扱い。売却時の日割り精算は固定資産税の精算参照
草刈り・管理費・修繕費 ならない 維持管理の費用
遺産分割のための訴訟費用 取得費にもならない 国税庁が明記

更地にしてから売る場合、解体費用は100万円を超えることもあるので、譲渡費用に入れられるかどうかは税額に直結します。解体の見積書・契約書・領収書は、売却の翌年の確定申告まで保管してください。

税金を減らす特例3つの使い分け

相続した土地の売却で検討する特例は、主に次の3つです。

特例1:空き家の3,000万円特別控除(土地のみなら「取り壊し後の敷地」)

正式名称は「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」です。一定の要件を満たすと、譲渡所得から最高3,000万円を差し引けます。令和6年1月1日以後の譲渡で、家屋と敷地を相続した相続人が3人以上いる場合は2,000万円までです。適用期限は令和9年(2027年)12月31日までの譲渡です。

この特例の対象は「親が住んでいた家(昭和56年5月31日以前に建築、区分所有ではない、親以外に住んでいた人がいない)」と「その敷地」です。土地だけを売る形で使えるのは、相続した家屋を全部取り壊してから敷地を売る場合に限られ、次の条件がつきます。

  • 家屋は、相続の時から取り壊しの時まで事業・貸付け・居住に使っていないこと
  • 敷地は、相続の時から売る時まで事業・貸付け・居住に使っていないこと
  • 取り壊してから売るまで、敷地に建物や構築物を建てていないこと

親が要介護認定などを受けて老人ホーム等に入所し、そのまま亡くなった場合も、入所まで住んでいた家が物品の保管などに使われ、貸したりしていなければ対象になりえます(国税庁 No.3307)。

令和6年1月1日以後の譲渡では、家を残したまま売り、売った年の翌年2月15日までに買主が取り壊し(または耐震改修)をした場合も対象になりました。売主が解体費を負担せずに特例を使える道が広がった一方で、買主の協力が要件になるため、売買契約で取り決めておく必要があります。

土地の売却で特例が使えない典型例は次のとおりです。

  • 親の生前にすでに家を取り壊し、更地で相続した土地(相続開始直前に親が住んでいた家屋の敷地ではない)
  • 相続後に家を取り壊し、売れるまでの間に月極駐車場として貸していた土地
  • 家は残したまま、敷地の一部だけを分筆して売る場合(家屋の譲渡も取り壊しもない)
  • 親が第三者に貸していた土地(貸地・底地)や、畑・山林など親の居住用家屋の敷地ではない土地
  • 売却代金が1億円を超える場合(分割して売った部分や他の相続人が売った部分も合算して判定)
  • 親子・夫婦・生計を一にする親族など「特別の関係がある人」に売る場合

もう1つの期限が「相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」に売ることです。2024年に相続した場合は2027年12月31日までとなり、制度の期限とも重なります。要件の詳細と必要書類は空き家の3,000万円特別控除の解説で詳しく説明しています。

なお、マイホームを売ったときの3,000万円控除は、売る人自身が住んでいた家とその敷地が対象です。親と同居していた相続人がその家に住み続けていた場合などを除き、相続した土地には通常使えません。

特例2:相続税の取得費加算(相続税を払った人だけ)

相続税を払った人が、相続した財産を一定期間内に売った場合、払った相続税のうち売った財産に対応する部分を取得費に上乗せできます。要件は次の3つです。

  1. 相続や遺贈で財産を取得した人であること
  2. その人に相続税が課税されていること
  3. 相続開始日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売ること(相続から概ね3年10か月以内)

加算額は「その人の相続税額 × 売った土地の相続税評価額 ÷(その人の取得財産の価額などの合計)」で計算します。ポイントは、加算できるのは売った土地の評価額に見合う部分だけという点です。相続財産の大半が預金で、売る土地の評価額が小さければ、加算額も小さくなります。また、加算額はこの特例を使わずに計算した譲渡益が上限で、利益を超えてマイナスにはできません。

特例3:所有期間5年超の長期税率

特例というより税率の区分ですが、前述のとおり所有期間は親の取得日から通算します。親の取得日が相続の直前だった土地だけは、売る年を調整して長期(20.315%)にできないか検討します。

どれを使うかの判定

チェック項目 はい いいえ
1. 売る土地は、親が亡くなる直前まで一人で住んでいた家(昭和56年5月31日以前の建築)の敷地か 2へ 空き家特例は不可。4へ
2. 相続後、家も土地も貸したり住んだりしていないか 3へ 空き家特例は不可。4へ
3. 売却代金は1億円以下で、期限内(相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ2027年12月31日まで)に売れるか 空き家特例を優先して検討(解体・耐震改修・買主解体のいずれか) 4へ
4. 自分に相続税が課税され、相続から3年10か月以内に売れるか 取得費加算を検討 5へ
5. 親の取得日から数えて、売る年の1月1日時点で5年超か 長期税率20.315%で計算 売る年をずらせるか検討

空き家特例と取得費加算は、同じ土地について併用できません。どちらも使える場合、控除額が大きい空き家特例のほうが有利になることが一般的ですが、相続税額が大きく売る土地の評価額の割合も大きい場合は、取得費加算が上回ることもあります。両方で試算して比べてください。

路線価と売値の関係|相続税評価額は売値の目安にならない

相続税の計算で土地を評価するときは、路線価(道路ごとに国税庁が定める1平方メートルあたりの価格)や、路線価のない地域では固定資産税評価額に倍率を掛けた額を使います。国税庁によると、路線価は地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に定められています。

このため、路線価で評価した額より実際の売値が高くなることはよくあります。一方、地方の土地や形が悪い土地、接道条件の悪い土地では、評価額どおりの値段で売れない場合もあります。相続税評価額は税金計算のための数字で、「この値段で売れる」という保証ではありません。

売却の税金との関係で押さえておきたいのは次の2点です。

  • 譲渡所得の計算に使う取得費は「親が買った金額」で、相続税評価額(路線価)ではない。相続時の評価額を取得費にすることはできない
  • 取得費加算の計算式には、売った土地の「相続税評価額」が使われる。小規模宅地等の特例で評価額が減額された土地は、加算額も小さくなりうる

家や土地の評価方法は相続税の家の評価方法、小規模宅地等の特例は小規模宅地等の特例の解説で確認できます。

手取りシミュレーション|売値1,000万・2,000万・3,000万円

親が数十年前に取得した土地(長期譲渡所得)を相続し、取得費の資料がなく概算取得費5%を使う前提で計算しました。譲渡費用は仲介手数料と印紙代などを概算で置いています。税額は端数処理を省略した概算です。

項目 売値1,000万円 売値2,000万円 売値3,000万円
取得費(売値の5%) 50万円 100万円 150万円
譲渡費用(仮定) 40万円 72万円 105万円
譲渡所得 910万円 1,828万円 2,745万円
【特例なし】税額(20.315%) 約185万円 約371万円 約558万円
【特例なし】手取り 約775万円 約1,557万円 約2,337万円
【空き家特例3,000万円】税額 0円 0円 0円
【空き家特例3,000万円】手取り 約960万円 約1,928万円 約2,895万円
特例による差額 約185万円 約371万円 約558万円

家屋と敷地を相続した相続人が3人以上いる場合、空き家特例の控除は1人2,000万円までです。この表の売値3,000万円のケースでは、2,000万円を差し引いた745万円に20.315%がかかり、税額は約151万円になります(手取り約2,744万円)。

空き家特例を使うために家を解体する場合、解体費用の分だけ手取りは減ります。ただし解体費は譲渡費用になるため、特例なしで売る場合は税額を減らす効果もあります。確定申告をしないと特例は使えないので、税額が0円になるケースでも申告が必要です。

ケース:取得費加算を使った場合

売値2,000万円の土地で、売主が払った相続税が300万円、その人の取得財産の価額などの合計が1億円、売った土地の相続税評価額が1,600万円(路線価ベース)だったとします。

  • 加算額:300万円 × 1,600万円 ÷ 1億円 = 48万円
  • 譲渡所得:2,000万円 -(100万円+48万円+72万円)= 1,780万円
  • 税額:約362万円(特例なしより約10万円少ない)

相続税の総額に比べて売る土地の割合が小さいと、取得費加算の効果は数万〜十数万円程度にとどまります。空き家特例の要件を満たせるなら、そちらを優先して検討するのが基本です。

ケース:取得費がわかると税額はここまで変わる

同じ売値2,000万円の土地で、親が1991年に2,500万円で購入した契約書が見つかった場合、取得費2,500万円+譲渡費用72万円が売値を上回るため、譲渡所得はマイナスで税金は0円です。資料がなく5%で計算した場合の約371万円との差は、契約書1枚で生まれます。

ケース:親の購入から5年以内の土地

親が相続の3年前に1,900万円で買った土地を、相続の翌年に2,000万円で売った場合、譲渡所得は2,000万円-(1,900万円+72万円)=28万円で、短期税率39.63%を適用すると税額は約11万円です。利益が小さければ短期でも税額は限られますが、利益が大きい土地は売る年の調整を検討する価値があります。

実家(建物を含む)の売却でのケース別計算は実家売却の譲渡所得税の計算方法にもまとめています。手取りを含めた売却の相談は、実家売却の相談窓口で提携の宅建業者とともに整理できます。

土地の種類別の注意点|農地・貸地・市街化調整区域・共有

農地(田・畑)

農地を農地のまま売るには、農地法第3条により農業委員会の許可が必要です。宅地などに転用する目的で売る場合は、第5条により都道府県知事等の許可が必要になり、市街化区域内の農地は事前に農業委員会へ届け出る形になります。許可が下りなければ売買は成立しないため、買主が見つかっても引き渡しまで時間がかかります。農地は空き家特例の対象外で、特例で検討できるのは主に取得費加算と長期税率です。相続時の手続きは農地・山林の相続と処分手続きで解説しています。

貸地・駐車場として貸していた土地

親が第三者に貸していた土地(底地)や、相続後に駐車場として貸した土地は、空き家特例の「貸付けの用に供していないこと」という要件を満たしません。貸地の売却では借地人の意向も価格に影響します。借地権付きの実家については借地権の実家の売却をご覧ください。

市街化調整区域の土地

原則として建物を建てにくい区域のため、買い手が限られ、路線価・評価額に比べて売値が低くなりやすい土地です。売れる価格によっては譲渡所得がほとんど出ないこともあります。売り方の選択肢は市街化調整区域の家の売却にまとめています。

兄弟の共有で相続した土地

共有で相続した土地を売る場合、譲渡所得はそれぞれの持分に応じて各相続人が計算・申告します。空き家特例の3,000万円(3人以上なら2,000万円)も各相続人ごとの上限です。遺産分割で「売って代金を分ける(換価分割)」と決めた場合も、各相続人が取得した持分に応じてそれぞれ申告するのが基本です。共有のまま売る手順は空き家の共有名義売却で解説しています。

売る前に決めること:更地か古家付きか、仲介か買取か

相続登記は売却の前提

相続した土地を売るには、まず親名義から相続人名義への相続登記が必要です。2024年4月1日から相続登記は義務になり、相続で取得したことを知った日から3年以内に登記しないと、正当な理由がない場合は10万円以下の過料の対象になります。遺産分割の話し合いと並行して、早めに進めておくと売却の段取りも組みやすくなります。登記の手続きは相続登記・名義変更の相談窓口で提携司法書士に依頼できます。義務化の詳細は相続登記の義務化とはで確認できます。

更地にするか、古家付きで売るか

比較項目 更地にして売る 古家付きで売る
解体費用 売主が負担(譲渡費用になる) 不要(買主が解体する想定で価格が下がることが多い)
空き家特例 要件を満たせば使える 耐震基準を満たすか、翌年2月15日までに買主が解体・耐震改修すれば使える
固定資産税 1月1日時点で建物がないと住宅用地の特例(200㎡以下の部分は評価額の6分の1など)が外れる 住宅用地の特例が続く
買い手の見つけやすさ 建築プランを立てやすく、個人の買主に好まれやすい リフォーム前提の買主や業者向け
向いているケース 立地がよく、早く売れる見込みがある 売れるまで時間がかかりそう、解体費を先に出せない

固定資産税は毎年1月1日の状況で課税されるため、年末に解体して翌年に売れ残ると、土地の固定資産税が上がる可能性があります。解体のタイミングと手取りの比較は空き家は解体してから売るべきかや古家付き土地として売る方法をご覧ください。

仲介で売るか、買取で売るか

仲介は市場で買主を探すため高く売れる可能性がある一方、売れるまでの期間は読めません。買取は宅建業者が直接買うため、価格は仲介より低くなりやすいものの、仲介手数料がかからないことが多く、期限内に確実に売りたいときに向いています。空き家特例の期限(相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。例:2024年4月に相続→2027年12月31日まで。制度期限は2027年12月31日)や取得費加算の期限(相続から約3年10か月)が迫っている場合は、この期限から逆算して売り方を選ぶことが大切です。

業者に頼まなくてよいケースもあります。隣地の所有者が買いたいと言っている、親族以外の知人に売る話がまとまっているといった場合は、契約書の作成や登記だけ専門家に依頼する方法もあります(親子・夫婦など特別の関係がある人への売却は空き家特例の対象外です)。仲介と買取の違いは仲介と買取の違い、費用の内訳は空き家売却の費用・手数料で比較できます。当事務局は宅建業者ではないため、買取・仲介の契約は提携の宅建業者が担当します。実家売却の相談では、期限と手取りの両方から売り方を一緒に整理します。

相続から確定申告までの逆算スケジュール

相続した土地の売却では、税の特例と登記の期限が重なります。相続開始日を起点にすると次のとおりです。

時期(相続開始から) やること・期限 根拠
すぐ〜3か月 相続人の確定、財産調査、土地の登記簿・取得時の契約書を探す 取得費の資料は早いほど見つかりやすい
10か月以内 相続税の申告・納付(基礎控除を超える場合) 死亡を知った日の翌日から10か月
3年以内 相続登記(知った日から3年以内) 2024年4月義務化。10万円以下の過料
3年を経過する日の属する年の12月31日まで(例:2024年4月に相続→2027年12月31日) 空き家特例を使う売却の期限(かつ2027年12月31日まで) 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日
約3年10か月以内 取得費加算を使う売却の期限 相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日
売却の翌年2月16日〜3月15日 確定申告(特例を使う場合は税額0円でも申告) 国税庁 No.2020
確定申告の後 住民税の通知・納付 市区町村から通知

売却の契約から引き渡しまでは、仲介なら数か月かかることもあります。期限の直前に契約するスケジュールは避け、特例の期限に対して数か月の余裕を持って売り出すのが安全です。確定申告の書類と書き方は実家売却の確定申告で解説しています。

よくある質問

相続した土地を3年以内に売るとどうなりますか?
相続税を払った人は、相続開始から相続税の申告期限の翌日以後3年(概ね3年10か月)以内に売れば、払った相続税のうち売った土地に対応する分を取得費に加算でき、譲渡所得の税金が減ります。また親が住んでいた家の敷地なら、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却で空き家の3,000万円控除を検討できます。なお税率の長期・短期は相続日ではなく親の取得日から判定します。
相続した土地を売ったら確定申告は必要ですか?
売って譲渡所得(売値から取得費と譲渡費用を引いた利益)が出た場合は、売った年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告が必要です。空き家の3,000万円控除や取得費加算の特例を使う場合は、特例の結果税額が0円になるときでも申告しなければ特例を受けられません。取得費が売値を上回り利益が出ない場合の扱いは、他の所得も含めて税務署や税理士に確認してください。
相続した土地を売却して3,000万円控除になる条件は?
相続した土地だけを売る場合に空き家の3,000万円控除を使えるのは、主に親が相続開始直前まで一人で住んでいた昭和56年5月31日以前建築の家を相続後に取り壊し、その敷地を売る場合です。相続後に貸したり住んだりしていないこと、売却代金1億円以下、相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで(例:2024年4月に相続→2027年12月31日まで)かつ制度期限の2027年12月31日までの譲渡などの要件があります。相続人が3人以上なら上限は2,000万円です。
親が買った金額がわからない土地の取得費はどうなりますか?
取得費が分からない場合は、売った金額の5%を取得費(概算取得費)にできます。たとえば2,000万円で売れば取得費は100万円です。実際の購入額はこれより高いことが多いため、売買契約書、権利証と一緒に保管された書類、住宅ローンの資料、古い通帳などを探すと税額が大きく下がる可能性があります。相続登記の費用は、実際の取得費で計算する場合のみ取得費に加えられます。
相続してすぐ売ると短期譲渡所得になって税率が高くなりますか?
なりません。相続した土地の所有期間は、亡くなった親が取得した日から通算します。親が長年持っていた土地なら、相続直後に売っても売った年の1月1日時点で5年超となり、長期譲渡所得で合計20.315%(所得税15%、住民税5%、所得税額の2.1%相当の上乗せ0.315%)です。上乗せ分は2026年分までは復興特別所得税、2027年分からは復興特別所得税1.1%と防衛特別所得税1%に分かれますが、合計税率は変わりません。親が亡くなる数年前に買った土地だけは短期(合計39.63%)になる可能性があります。
更地にするための解体費用や測量費は税金計算で差し引けますか?
土地を売るために建物を取り壊した費用と、その建物の損失額、売るために行った測量費は、国税庁が譲渡費用として挙げています。仲介手数料や売主負担の印紙代も譲渡費用です。一方、固定資産税や草刈り・修繕など維持管理の費用は譲渡費用になりません。領収書や契約書は確定申告まで保管しておきましょう。
空き家特例と相続税の取得費加算は両方使えますか?
同じ土地について併用はできません。国税庁は空き家特例の要件として、取得費加算の特例など他の特例の適用を受けていないことを挙げています。一般的には控除額の大きい空き家特例が有利ですが、相続税額が大きく、売る土地の評価額が相続財産に占める割合も大きい場合は取得費加算が上回ることもあるため、両方で試算して比べるのが確実です。
兄弟で共有している相続した土地を売ったとき、税金は誰が払いますか?
共有の土地を売った場合、譲渡所得は各相続人の持分に応じてそれぞれ計算し、各自が確定申告・納税します。空き家の3,000万円控除も相続人ごとの上限で、家屋と敷地を相続した人が3人以上なら各2,000万円までです。売却代金を分ける換価分割でも、取得した持分に応じてそれぞれ申告するのが基本です。
相続した農地を売るときの注意点は?
農地を農地のまま売るには農地法第3条による農業委員会の許可、宅地などに転用する目的で売るには第5条による都道府県知事等の許可が必要です(市街化区域内は農業委員会への届出)。許可が下りるまで売買は完了しません。農地は空き家の3,000万円控除の対象外なので、税金面では取得費加算や長期税率を前提に計算します。

まとめ

  • 相続した土地を売って利益が出ると、所得税・復興特別所得税・住民税がかかる。所有期間は親の取得日から数えるので、多くは長期の20.315%になる。
  • 取得費は親が買ったときの金額を引き継ぐ。資料がなければ売値の5%となり税額が大きくなるため、売買契約書・通帳・ローン書類を先に探す。
  • 測量費・解体費・仲介手数料は譲渡費用として引けるが、固定資産税や管理費は引けない。
  • 土地だけの売却で空き家の3,000万円控除を使えるのは、親が住んでいた家を相続後に取り壊した敷地(または買主が翌年2月15日までに取り壊す場合)。生前に更地だった土地、貸していた土地、農地は対象外。
  • 相続税を払った人は取得費加算を検討できるが、空き家特例とは併用できない。両方で試算して有利なほうを選ぶ。
  • 相続登記(3年以内)、空き家特例(相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。例:2024年4月に相続→2027年12月31日まで。制度は2027年末まで)、取得費加算(約3年10か月)の期限から逆算して、更地か古家付きか、仲介か買取かを決める。

個別の税額や特例の適用可否は、申告前に税理士または税務署で確認してください。売却の段取りや登記について迷ったら、実家売却の相談から状況をお聞かせください。

税金についてのご注意
本記事の税金に関する記述は、2026年9月29日時点の国税庁の公表資料と法令にもとづく一般的な説明です。特例が使えるかどうかや個別の税額は、所得や相続の状況によって変わります。個別の税額は税理士にご確認ください(所轄の税務署でも相談できます)。

出典・参考資料(2026年9月29日確認)

読むより、聞いたほうが
早いこともあります

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この記事を書いた人

安心実家じまい事務局です。実家の片付けや遺品整理、空き家になった家の処分について、はじめての方にも分かるように記事を書いています。提携している現場の業者や司法書士と一緒に、費用の相場・自治体のごみ出しルール・補助金といった、調べてもなかなか分かりにくいところを一つずつ確かめながらまとめています。「誰に頼めばいいか分からない」という段階のご相談も、LINEやお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
運営は株式会社Sora Capital(東京都渋谷区・安心実家じまい事務局)です。相続・登記・法務に関する記述は、提携の司法書士・行政書士 久留慎一郎が監修しています。税額の計算や申告の判断は、税理士にご確認ください。

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