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相続した土地を3年以内に売却すると税金が減る|取得費加算の特例の要件と計算

最終更新日:2026年9月29日|法務監修:司法書士・行政書士 久留慎一郎先生|執筆・編集:安心実家じまい事務局

司法書士・行政書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。

監修の範囲:相続・登記・法務に関する記述(司法書士・行政書士の業務範囲)。片付け・買取・費用相場などの記述は安心実家じまい事務局が編集しています。監修者プロフィール

税金について:税額の計算や特例を使えるかどうかの判断は税理士の業務で、監修の範囲に含みません。申告の前に、税理士または所轄の税務署でご確認ください。

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 不動産の名義変更
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理

監修範囲:久留慎一郎先生(司法書士・行政書士)の監修は、相続・登記・法務に関する記述です。税額の計算や税の特例に関する記述は、国税庁の公表資料と法令をもとに事務局が作成しており、監修の対象外です。監修者プロフィール

この記事の結論

  • 相続税を納めた人が、相続した土地・家を相続税の申告期限の翌日から3年以内(亡くなった日から数えるとおおむね3年10か月以内)に売ると、払った相続税の一部を「取得費」に上乗せでき、売却益にかかる税金が減ります(取得費加算の特例)。
  • 加算できる額は「その人の相続税額 × 売った財産の相続税評価額 ÷ その人の課税価格(債務控除前)」。相続税385万円・評価額3,200万円・課税価格5,000万円の例では約246万円を加算でき、譲渡所得税・住民税が約50万円減ります。
  • 相続税がかからなかった人は使えません。基礎控除以下の相続や、配偶者の税額軽減で相続税がゼロになった人は対象外です。
  • 空き家の3,000万円特別控除とは同じ物件で併用できません。一般的な実家なら空き家特例のほうが減税額が大きくなりやすい一方、マンション・1981年6月以降の建物・売却額1億円超など空き家特例が使えない場合は、取得費加算が有力な選択肢です。
  • 特例は確定申告をしないと適用されません。期限ぎりぎりの売却は、引渡日・契約日のどちらで判定するかも含めて早めに税理士へ確認しましょう。

親から相続した実家や土地を「3年以内に売ると税金が安くなる」と聞いたことがある方は多いと思います。その正体の一つが、租税特別措置法39条の「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」、通称取得費加算の特例です。相続税と、売却時の譲渡所得税の「二重の負担」を少し和らげるための制度で、使えるかどうかで税額が数十万円〜数百万円変わることがあります。

ただし「3年」の数え方は、相続が始まった日(亡くなった日)からではありません。相続税の申告期限(亡くなった日の翌日から10か月)の翌日から3年です。また、相続税を払っていない人は使えず、空き家の3,000万円特別控除とはどちらか一方しか選べないなど、判断を誤りやすいポイントがいくつもあります。

この記事では、国税庁タックスアンサー No.3267と租税特別措置法39条・同施行令25条の16の原文をもとに、要件・期限・計算式を整理しました。そのうえで、具体的な数字を使った計算例、空き家特例との有利判定表、期限から逆算した売却スケジュール、申告の手順まで順番に解説します。相続した実家の売却を考え始めた段階の方、相続税の申告を終えて「次は売却」という方に向けた内容です。

目次

取得費加算の特例とは:払った相続税の一部を「経費」にできる

取得費加算の特例は、相続や遺贈で取得した財産を一定期間内に売ったとき、その人が納めた相続税のうち売った財産に対応する部分を、譲渡所得の計算上「取得費」に足せる制度です。国税庁は次のように説明しています。

「相続または遺贈により取得した土地、建物、株式などの財産を、一定期間内に譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができます。」(国税庁 タックスアンサー No.3267)

そもそも「取得費」とは:売却益の計算で差し引ける購入代金など

土地や建物を売ったときの税金(譲渡所得税・住民税)は、売った金額そのものではなく、もうけ(譲渡所得)にかかります。譲渡所得の計算式は次のとおりです(国税庁 No.3202)。

譲渡所得 = 売却代金 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除

  • 取得費:その土地・建物を買ったときの代金や購入手数料など。建物は減価償却費相当額を差し引きます。相続した場合は、亡くなった親などが買ったときの金額を引き継ぎます(国税庁 No.3270)。
  • 譲渡費用:仲介手数料、売主負担の印紙税、売るために建物を取り壊した費用など、売るために直接かかった費用です(国税庁 No.3255)。

取得費加算の特例は、この「取得費」を相続税の一部の分だけ膨らませることで、譲渡所得(=課税される金額)を小さくする仕組みです。税額が直接減る「税額控除」ではなく、課税対象の所得を減らすタイプの特例なので、減る税金は「加算額 × 税率」になります。

なぜ3年以内に売ると得なのか

相続した不動産は、相続時に相続税がかかり、売ったときにまた譲渡所得税がかかります。相続税を払うために不動産を売らざるを得ない人もいるため、相続から比較的近い時期の売却に限って、相続税の一部を必要経費のように扱うことを認めているのがこの特例です。期限を1日でも過ぎれば使えないため、「相続した土地は3年以内に売ると税金が減る」と言われるのはこのためです。

なお、相続した不動産を売るときの税金全体(相続税・登録免許税・譲渡所得税など)の流れは実家売却の税金まとめで、譲渡所得税そのものの計算方法は実家売却の譲渡所得税の計算方法で詳しく解説しています。この記事は「取得費加算の特例」に絞って深掘りします。

相続した土地を3年以内に売るとどうなる?「短期譲渡」の誤解と税率

「相続してすぐ売ると税金が高くなるのでは?」という質問をよく見かけます。結論から言うと、相続した不動産は、相続した日ではなく亡くなった親などが取得した日から所有期間を数えるため、相続後すぐに売っても高い税率になるとは限りません(国税庁 No.3270)。

譲渡所得は、売った年の1月1日時点の所有期間が5年を超えるかどうかで「長期」と「短期」に分かれ、税率が大きく異なります(国税庁 No.3208・No.3211)。

区分 所有期間(売った年の1月1日時点) 所得税 復興特別所得税 住民税 合計
長期譲渡所得 5年超 15% 所得税額の2.1% 5% 20.315%
短期譲渡所得 5年以下 30% 所得税額の2.1% 9% 39.63%

なお、令和8年度税制改正(2026年3月31日成立)により、2027年(令和9年)分以後は復興特別所得税の税率が所得税額の1.1%に下がり、代わりに防衛特別所得税(所得税額の1%)が課されます(財務省「令和8年度税制改正の解説」)。2つを足すと所得税額の2.1%で従来と同じため、上の表の合計税率(20.315%・39.63%)は2027年以後の売却でも変わりません。

親が何十年も前に買った実家なら、相続の翌月に売っても長期譲渡所得です。反対に、親が亡くなる2〜3年前に買った土地やマンションを相続してすぐ売ると、親の所有期間と合わせても5年以下になり、短期譲渡所得の高い税率がかかります。「相続から5年待たないと税率が高い」という話は、相続した不動産には基本的に当てはまりません。

整理すると、「相続した土地を3年以内に売る」ことで起きるのは次の3つです。

  • 取得費加算の特例が使える(相続税を納めた人のみ。期限は相続税の申告期限の翌日から3年)
  • 空き家の3,000万円特別控除が使える可能性がある(要件を満たす実家のみ。期限は相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日)
  • 税率(長期・短期)は、3年以内かどうかとは関係なく、亡くなった人の取得日から判定される

なお、短期譲渡所得になるケースほど取得費加算の効果は大きくなります。後述の計算例(加算額246万4,000円)を短期の税率で計算すると、税額は約1,446万円から約1,349万円へ、約98万円減る計算です。

相続した実家の空き家特例(3,000万円控除)がいつまで使えるかは、相続空き家の3,000万円控除 期限チェックで、相続開始日から期限と残り日数を確認できます。

ここまで読んで「うちの場合はどうなる?」と思ったら

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使える条件は3つ:相続税を納めた人が期限内に売ること

国税庁 No.3267が示す要件は、次の3つです。すべて満たす必要があります。

  1. 相続や遺贈(遺言による贈与)により財産を取得した者であること
  2. その財産を取得した人に相続税が課税されていること
  3. その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること

加えて、確定申告で特例の適用を受ける旨を書き、計算明細書などを添付することが手続き上の条件です(租税特別措置法39条2項)。条件を一つずつ、つまずきやすい点と合わせて見ていきます。

条件1:相続・遺贈で取得した財産であること

対象は相続や遺贈(死因贈与を含む)で取得した財産です。土地・建物のほか、株式なども対象になります。ただし国税庁は「この特例は譲渡所得のみに適用がある特例ですので、株式等の譲渡による事業所得および雑所得については、適用できません」と注記しています。

生前に贈与でもらった財産は原則として対象外です。例外は、相続税の課税価格に含められる相続時精算課税の適用財産や、相続開始前の一定期間内に受けた暦年課税の贈与財産で、これらは相続税の課税価格の計算に組み込まれるため、売却すれば特例の対象になり得ます(国税庁 質疑応答事例)。計算式の分母にも登場します(後述)。

条件2:その人に相続税が課税されていること

ここが最も誤解されやすい点です。「家族の誰かが相続税を払った」ではなく、「売った本人に相続税額がある」ことが必要です。次のような人は使えません。

  • 遺産の総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数。国税庁 No.4152)以下で、相続税の申告自体が不要だった人
  • 配偶者の税額軽減などで、本人の納める相続税がゼロになった人(多くの場合、配偶者)

基礎控除の判定方法は相続税の基礎控除|申告が必要かの判定手順で解説しています。自分に相続税がかかっていない場合、取得費加算は選択肢から外し、空き家の3,000万円特別控除や、自分が住んでいた家なら居住用財産の3,000万円特別控除を検討する流れになります。

条件3:期限内に売ること(3年10か月の意味)

租税特別措置法39条1項の原文は「当該相続の開始があつた日の翌日から当該相続に係る…申告書…の提出期限…の翌日以後三年を経過する日までの間に」譲渡した場合、と定めています。相続税の申告期限は「死亡したことを知った日の翌日から10か月以内」なので(国税庁 No.4205)、10か月+3年=相続開始からおおむね3年10か月が売却の期限になります。

「相続から3年以内」と覚えていると、実際より10か月早く諦めてしまうことがあります。逆に「相続税の申告をしてから3年」と覚えるのも誤りで、申告を早く出しても期限は前倒しになりません。基準はあくまで申告期限です。

使える人・使えない人の早見表

ケース 取得費加算 理由・補足
相続税を納めた子が、相続した実家を3年10か月以内に売る 使える 典型的な適用例
遺産が基礎控除以下で、相続税の申告をしていない 使えない 本人に相続税が課税されていない
配偶者が相続し、配偶者の税額軽減で納税額ゼロ 使えない 同上
相続税の申告期限から3年を1日でも過ぎて売った 使えない 期限は延びない(下記の例外を除く)
相続税の申告前に売り、確定申告も先に済ませた 使える(更正の請求) 相続税の期限内申告書を出した日の翌日から2か月以内に更正の請求が可能(措置法39条4項1号)
同じ家で空き家の3,000万円特別控除を受ける 使えない どちらか一方のみ(措置法35条3項)
自分が住んでいた家を売り、居住用の3,000万円特別控除を受ける 併用できると解される 居住用3,000万円控除の除外規定(措置法35条2項)に39条は挙げられていない。適用前に税理士・税務署で確認を
相続した株式を証券会社経由で売る(譲渡所得) 使える 事業所得・雑所得になる売却は対象外

期限はいつまで?死亡日別の早見表と「10か月」の数え方

期限を正確に把握するには、まず相続税の申告期限を出し、その翌日から3年を数えます。相続税の申告期限が土曜・日曜・祝日にあたる場合は翌日(平日)に延びるため(国税庁 No.4205)、それに連動して取得費加算の期限も後ろにずれると考えられます。期限直前の売却を予定している方は、正確な日付を税理士や税務署で確認してください。

亡くなった日(例) 相続税の申告期限 取得費加算の売却期限 (参考)空き家特例の売却期限
2023年4月1日 2024年2月1日 2027年2月1日 2026年12月31日
2024年3月10日 2025年1月10日 2028年1月10日 2027年12月31日
2024年11月20日 2025年9月22日(9月20日が土曜のため翌平日) 2028年9月22日(※) 2027年12月31日
2025年6月10日 2026年4月10日 2029年4月10日 2027年12月31日(制度の期限)
2026年9月1日 2027年7月1日 2030年7月1日 2027年12月31日(制度の期限)

※申告期限が休日で延びた場合の取得費加算の期限は、延長後の申告期限を基準に数える考え方で記載しています。期限ぎりぎりの売却になる場合は税務署・税理士に確認してください。

空き家特例の期限は「相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日」ですが、制度自体が2027年(令和9年)12月31日までの譲渡に限られています(国税庁 No.3306、2026年4月1日現在の法令)。そのため2024年以降に相続が始まったケースでは、空き家特例の期限のほうが先に来ることが多い点に注意が必要です。制度が延長されるかどうかは、今後の税制改正を確認してください。

相続税の申告前に売る場合の手順(更正の請求の流れ)

相続税の納税資金をつくるために、相続税の申告より先に実家を売るケースは珍しくありません。この場合は、所得税の確定申告と相続税の申告の順番によって手続きが変わります。

時期(例) 出来事 取得費加算の扱い
2025年6月10日 父が死亡(相続開始) ―
2025年11月 実家を売却・引渡し 譲渡の日。期限内
2026年3月16日まで 2025年分の確定申告(3月15日が日曜のため翌日) 相続税額が未確定のため、特例なしで申告する
2026年4月10日 相続税の申告期限。この日に期限内申告書を提出したとする ここで相続税額が確定
2026年6月10日まで 更正の請求 相続税の期限内申告書を出した日の翌日から2か月以内に、計算明細書を添えて請求(措置法39条4項1号)。4月より前に相続税を申告していれば期限もその分早まります

相続税の申告を所得税の確定申告期限より前に済ませられれば、確定申告の段階で特例を使えるため、更正の請求は不要です。どちらの順番になりそうかを、相続税の申告を依頼している税理士と早めに共有しておきましょう。

期限に関する3つの例外・注意点

  • 相続税の申告前に売った場合:売った年の所得税の確定申告時点で相続税額が確定していなくても、相続税の申告期限までに相続税額が確定すれば特例の対象になります(措置法通達39-1)。確定申告を先に出した場合は、相続税の期限内申告書を出した日の翌日から2か月以内に更正の請求をすれば特例を受けられます(措置法39条4項1号)。
  • 相続税の修正申告をした場合:期限内に申告した相続税について、売却後に修正申告で税額が変わったときは、修正後の相続税額で計算してよいとされています(租税特別措置法施行令25条の16第2項、国税庁 質疑応答事例)。
  • 二次相続が重なった場合:親の相続税の申告期限前に、申告をしないまま相続人自身も亡くなったときは、一次相続の申告期限が二次相続の相続人を基準に延びるため、取得費加算の期限もその延びた申告期限から3年となります(国税庁 質疑応答事例)。

加算額の計算式:分母は「債務控除前」の課税価格

取得費に加算できる相続税額は、国税庁 No.3267の算式と租税特別措置法施行令25条の16で決まっています。やさしく書き直すと次のとおりです。

取得費に加算する額 = その人の相続税額 ×(売った財産の相続税評価額 ÷ その人の相続税の課税価格〈債務控除前〉)

分母の「課税価格」は、その人が相続した財産の価額+相続時精算課税の適用財産の価額+相続税の計算に加算された暦年贈与の財産の価額。

式の意味は単純で、「自分が払った相続税のうち、売った財産の割合に相当する部分」を加算するということです。自分が相続した財産の半分を占める土地を売れば、自分の相続税額の半分が加算額の上限の目安になります。

計算式の5つの細かいルール

  1. 分母は債務控除前:施行令25条の16は、相続税法13条(債務控除)を適用しないものとした場合の課税価格を使うと定めています。親の借入金や葬式費用を差し引く前の金額が分母になるため、「課税価格(相続税申告書の数字)をそのまま使う」と加算額を過大に計算してしまいます。
  2. 相続税額は贈与税額控除前、延滞税・加算税は含まない:生前贈与で払った贈与税が相続税から控除されている場合は、その控除がないものとした相続税額を使います(施行令25条の16第3項、措置法通達39-4)。延滞税などの附帯税は含めません。
  3. 売却益が上限:加算額が、特例を使わずに計算した譲渡益(売却代金-取得費-譲渡費用)を超える場合は、譲渡益の金額までです。売却損が出ている場合、加算額はゼロです。
  4. 売った財産ごとに計算:同じ年に複数の財産を売っても、財産ごとに計算します。損が出た財産の分を、もうけが出た別の財産に回すことはできません(措置法39条8項、措置法通達39-5)。
  5. 分子の評価額は「課税価格の計算に入った金額」:小規模宅地等の特例で土地の評価額が減額されている場合は、分子も減額後の金額になるため、加算額は小さくなります。小規模宅地等の特例の要件は小規模宅地等の特例とはを参照してください。

なお、平成27年(2015年)1月1日以後に開始した相続については、「売った財産に対応する相続税額」だけが加算対象です。以前は土地を売ると土地全体の相続税額を加算できた時期があったため、古い解説記事を見るときは注意してください。国税庁の計算明細書も「平成27年1月1日以後相続開始用」と「令和5年1月1日以後相続開始用」に分かれています。

計算例:相続税385万円の人が実家を売ると税金はいくら減るか

ここからは、具体的な数字で「特例を使う・使わない」の差を計算します。数字は説明用の仮の例です。

前提条件

項目 内容
家族構成 父が死亡。相続人は長男Aさん・長女Bさんの2人(母は既に他界)
遺産総額(課税価格の合計) 1億円(債務・葬式費用なし、生前贈与なし)
Aさんの取得財産 実家の土地(評価額3,000万円)・建物(評価額200万円)・預金1,800万円=5,000万円
Bさんの取得財産 預金・有価証券など5,000万円
実家の売却 Aさんが相続税の申告期限から2年後に4,000万円で売却(父が30年以上前に購入。売買契約書が残っており、取得費は土地・建物合計で200万円〈建物は減価償却費相当額を差し引いた後〉と確認できた)
譲渡費用 仲介手数料・印紙代など合計150万円

ステップ1:Aさんの相続税額を出す

  • 基礎控除:3,000万円+600万円×2人=4,200万円
  • 課税遺産総額:1億円-4,200万円=5,800万円
  • 法定相続分で分けた額:5,800万円÷2=2,900万円(1人あたり)
  • 速算表(国税庁 No.4155):2,900万円×15%-50万円=385万円 → 2人分で相続税の総額770万円
  • Aさんの相続税額:770万円×(5,000万円÷1億円)=385万円

相続税評価額の出し方(路線価・固定資産税評価額)は相続税の家の評価方法で解説しています。

ステップ2:取得費に加算できる額を出す

385万円 ×(実家の評価額3,200万円 ÷ Aさんの課税価格5,000万円)=246万4,000円

次のステップで出す譲渡益(3,650万円)を下回っているため、上限には引っかかりません。

ステップ3:譲渡所得と税額を比べる

取得費は父の購入代金などを基にした実額の200万円です(国税庁 No.3270)。父の所有期間を引き継ぐため、売った年の1月1日時点で所有期間5年超の「長期譲渡所得」となり、税率は所得税15%・復興特別所得税(所得税額の2.1%)・住民税5%です(国税庁 No.3208)。

購入代金が分からず、売却代金の5%を取得費とする「概算取得費」(国税庁 No.3258)を使う場合に、取得費加算を上乗せできるかについては、国税庁のタックスアンサーや申告の手引きに明示した解説が見当たりません。措置法39条1項は「取得費に相当する金額」に加算すると定めていますが、概算取得費と組み合わせる予定の方は、申告前に税理士か税務署で扱いを確認してください。

項目 特例を使わない 取得費加算を使う
売却代金 4,000万円 4,000万円
取得費(実額) 200万円 200万円
取得費への加算額 ― 246万4,000円
譲渡費用 150万円 150万円
課税譲渡所得 3,650万円 3,403万6,000円
所得税(15%) 547万5,000円 510万5,400円
復興特別所得税(所得税の2.1%)※ 11万4,975円 10万7,213円
住民税(5%) 182万5,000円 170万1,800円
税額合計 約741万5,000円 約691万4,000円
差額 約50万円の減税(加算額246万4,000円×20.315%)

※2027年分以後の売却では、復興特別所得税1.1%と防衛特別所得税1%に分かれますが、合計額(所得税額の2.1%)は同じです。実際の申告では、課税所得の1,000円未満の切り捨てや税額の100円未満の切り捨てがあるため、数百円単位でずれます。減税額は「加算額×税率(長期なら約20%、短期なら約39.63%)」で概算できると覚えておくと便利です。

応用1:借入金・葬式費用があると加算額はどう変わるか

Aさんが葬式費用300万円を負担していた場合、相続税申告書上のAさんの課税価格は4,700万円になります。しかし取得費加算の分母は債務控除前の5,000万円のままです(相続税額は債務控除で下がるので、その下がった税額を使います)。分母を4,700万円にしてしまうと加算額が過大になり、後で税務署から指摘を受けるおそれがあります。

応用2:代償金を払って実家を相続した場合

兄弟の一人が実家を相続し、他の兄弟にお金(代償金)を払って公平にする「代償分割」をした場合は、計算式が変わります。国税庁の通達(措置法通達39-7)は次の算式を示しています。

加算額 = 確定相続税額 ×〔売った財産の評価額B -(支払代償金C × B ÷(A+C))〕÷ その人の課税価格(債務控除前)A

たとえば、Aさんが実家(評価額3,200万円)と預金800万円を相続し、Bさんに代償金1,000万円を払ったとします。Aさんの課税価格Aは4,000万円-1,000万円=3,000万円です。Aさんの相続税額を仮に300万円とすると、次のようになります。

  • 代償金のうち実家に対応する部分:1,000万円×3,200万円÷(3,000万円+1,000万円)=800万円
  • 加算額:300万円×(3,200万円-800万円)÷3,000万円=240万円

代償金を考えずに「300万円×3,200万円÷3,000万円」と計算すると320万円になり、80万円も過大です。代償分割は加算額が小さくなりやすい点を知っておきましょう。実家の分け方の選択肢は実家の遺産分割|4つの分け方で整理しています。

応用3:同じ年に2つの財産を売った場合

仮にAさんの取得財産5,000万円の内訳が、実家(評価額3,200万円)・貸駐車場の土地(評価額1,000万円)・預金800万円で、実家と駐車場の土地を同じ年に売ったとします。加算額は財産ごとに計算するため、実家は246万4,000円、駐車場の土地は385万円×1,000万円÷5,000万円=77万円です。ただし駐車場の土地の売却で損が出ていれば、その77万円は加算できず、実家の加算額に回すこともできません(措置法通達39-5)。

複数の財産を相続していて、相続税を払うために一部だけ売るなら、売却益が大きく出る財産(親が昔に安く買った土地など)から売るほうが、加算額を無駄なく使えるという考え方があります。反対に、値下がりしていて売却損が出る財産に特例を当てても効果はありません。

空き家の3,000万円控除とは併用不可:どちらが得かの判定表

相続した実家の売却で使える代表的な特例は、取得費加算と「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」(空き家特例)の2つです。租税特別措置法35条3項は、空き家特例の対象から「第三十九条の規定の適用を受けるもの」を除いているため、同じ家・土地の売却で両方を使うことはできません。

2つの特例の比較表

比較項目 取得費加算の特例 空き家の3,000万円特別控除
減らす仕組み 取得費に相続税の一部を加算 譲渡所得から最高3,000万円を控除(相続人3人以上なら2,000万円)
相続税の納付 必要(本人に相続税額があること) 不要
対象の財産 土地・建物・株式など相続財産全般 1981年5月31日以前に建築された戸建て(区分所有登記の建物は除く)とその敷地
相続直前の状態 問わない 被相続人が一人で住んでいたこと(老人ホーム入所の特例あり)
売却時の建物の状態 問わない 耐震基準を満たすか取壊し(売却翌年2月15日までに買主が行う場合も可)
相続後の使い方 問わない(貸していても可) 事業・貸付け・居住に使っていないこと
売却代金の上限 なし 1億円以下
売却期限 相続税の申告期限の翌日から3年 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日(かつ2027年12月31日まで)
主な追加書類 計算明細書 市区町村の「被相続人居住用家屋等確認書」など

空き家特例の要件の詳細は空き家の3,000万円特別控除(相続空き家特例)とはで詳しく解説しています。

どちらが得かの判定フロー

  1. 自分に相続税額はあるか? → ない:取得費加算は使えません。空き家特例(要件を満たせば)を検討します。
  2. 空き家特例の要件を満たすか?(1981年5月31日以前築の戸建て・被相続人の一人暮らし・相続後に貸していない・売却額1億円以下・期限内) → 満たさない:取得費加算を使います。
  3. 両方使える場合は減税額を比べる:空き家特例の減税額はおおむね「min(譲渡益, 3,000万円)×税率」、取得費加算は「min(加算額, 譲渡益)×税率」。加算額が3,000万円(相続人3人以上なら2,000万円)を超えない限り、空き家特例のほうが減税額は大きくなります。
  4. 複数の財産を売るなら組み合わせを検討:空き家特例を使った実家とは別の土地(貸していた土地・田畑など)には、取得費加算を使えます。

先ほどの計算例で比べると

パターン 課税譲渡所得 税額合計(概算)
特例なし 3,650万円 約741万円
取得費加算(加算額246万4,000円) 3,403万6,000円 約691万円
空き家特例(相続人2人・3,000万円控除) 650万円 約132万円
空き家特例(相続人3人以上・2,000万円控除) 1,650万円 約335万円

一般的な実家の規模では、空き家特例の要件を満たすなら空き家特例が有利になりやすいことが分かります。取得費加算が本領を発揮するのは、マンションの実家、1981年6月以降に建てられた家、相続後に賃貸に出していた家、親と同居していた家族がいた家、売却額が1億円を超える土地など、空き家特例が使えないケースです。

居住用の3,000万円控除とは併用できる

親と同居していた子が相続した家を売る場合など、売る本人がその家に住んでいたときは、自分のマイホームとして「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」(国税庁 No.3302)を検討できます。租税特別措置法35条2項の除外規定には39条(取得費加算)が挙げられていないため、居住用の3,000万円控除と取得費加算は同じ売却で併用できると解されています。空き家特例(35条3項が39条の適用を受ける譲渡を明文で除外)とは扱いが異なります。ただし国税庁のタックスアンサーには併用可否を明示した記載がないため、適用前に税理士か税務署で確認してください。

一部だけ取得費加算を使うこともできる

店舗併用住宅のように、亡くなった人が住んでいた部分(居住用部分)と、それ以外の部分(非居住用部分)がある家では、非居住用部分だけに取得費加算を使い、居住用部分に空き家特例を使うことが認められています(措置法通達35-8)。このケースは計算が複雑になるため、税理士に試算を依頼するのが現実的です。

期限に間に合わせる売却スケジュール:査定から引き渡しまでの逆算

取得費加算は「期限内に譲渡していること」が条件です。売りに出してから買主が見つかり、引き渡しが終わるまでには時間がかかるため、期限から逆算して動き出す時期を決めておきましょう。

「売った日」はいつか:引渡日が原則、契約日も選べる

譲渡所得の収入の時期は、原則として資産の引渡しがあった日です。ただし納税者の選択により、売買契約の効力発生日(契約日)で申告することも認められています(所得税基本通達36-12)。引渡日は所有権移転登記に必要な書類の交付など、支配が移った事実で判定され、原則として代金決済の日より後にはなりません。

期限直前に契約・引渡しがまたがる場合、契約日基準で期限内に収まるかどうかで結論が変わる可能性があります。期限の数か月前には引渡しまで終える計画にしておき、ぎりぎりになる場合は、どちらの日付で申告するかを事前に税理士へ相談してください。

逆算スケジュール(仲介で売る場合の目安)

期限からの逆算 やること ポイント
期限の18〜12か月前 遺産分割の確定・相続登記 名義が亡くなった人のままでは売れません。相続登記の義務化の期限(相続で不動産を取得したことを知った日から3年)とも重なります
期限の12〜10か月前 家財の片付け・複数社の査定・売り方の決定 仲介か買取かで必要な期間が大きく変わります
期限の10〜9か月前 媒介契約・売り出し開始 境界が不明な土地は測量に時間がかかることがあります
期限の9〜4か月前 内覧対応・価格の見直し・買主決定 売れない期間が続いたら買取への切り替えも検討
期限の4〜3か月前 売買契約の締結 引渡日を期限より十分前に設定
期限の3〜1か月前 決済・引渡し この日が原則の「譲渡の日」
売った年の翌年2月16日〜3月15日 確定申告 特例は申告しないと適用されません

表の期間は一般的な目安で、物件の立地や状態、共有者の人数によって前後します。遠方の実家、境界が確定していない土地、家財が大量に残っている家は、前倒しで動くほうが安心です。売却全体の流れは空き家売却の流れと注意点、仲介と買取の違いは空き家の仲介と買取の違いで詳しく解説しています。

期限が迫っているときの選択肢

期限まで半年を切ってまだ売り出していない場合、仲介で買主を探す時間が足りないことがあります。その場合は、不動産会社が直接買い取る「買取」を使うと、条件が合えば短期間で契約・引渡しまで進められます。買取価格は仲介の相場より低くなるのが一般的なので、「仲介で高く売れる見込み」と「特例による減税額」を比べて判断しましょう。先ほどの計算例なら、取得費加算による減税は約50万円です。仲介と買取の価格差がそれより大きいなら、特例を諦めて仲介で売るほうが手取りは多くなります。

安心実家じまい事務局では、相続した実家の売却について、提携の宅地建物取引業者による査定・買取・仲介の相談を受け付けています(事務局自体は宅建業者ではないため、売買の契約実務は提携業者が担当します)。期限までの段取りに不安がある方は、実家売却の相談窓口で状況をお聞かせください。

共有名義・遺産分割がまとまらない場合

兄弟で共有名義にした実家を売るには、共有者全員の同意が必要です。遺産分割協議が長引くと、それだけで取得費加算の期限が近づきます。相続税の申告期限(10か月)までに分割がまとまらず、未分割のまま申告するケースもありますが、売却の段取りとしては不利になりやすいため、早めの合意形成が大切です。兄弟で実家を売る場合の進め方は実家売却は兄弟の共有名義でも進められる?を参照してください。

申告手続き:確定申告書・計算明細書・必要書類

取得費加算の特例は、売った年の翌年に確定申告をして初めて適用されます。確定申告の期間は原則として翌年2月16日から3月15日です(国税庁 No.2020)。給与所得者で年末調整を受けている人も、不動産を売ってもうけが出たら確定申告が必要です。

国税庁が定める提出書類

国税庁 No.3267は、確定申告書に次の書類を添えて提出するよう案内しています。

  1. 相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書(この明細書を使うと加算額を計算できます)
  2. 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用](株式の場合は株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書など)

計算明細書は国税庁の「申告書添付書類一覧(譲渡所得・山林所得関係)」からダウンロードできます。相続開始日によって様式が分かれているので(平成27年1月1日以後相続開始用/令和5年1月1日以後相続開始用)、該当するものを選んでください。国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば、画面の案内に沿って入力することで付表や明細書も作成できます。

準備しておくと記入がスムーズな資料

法定の提出書類とは別に、明細書や内訳書を書くために次の資料を手元にそろえておくと作業が進みます。

  • 相続税申告書の控え(自分の相続税額、取得財産の価額、売った財産の評価額、債務控除額を転記するため)
  • 売買契約書・重要事項説明書の写し(売却代金、契約日の確認)
  • 引渡し・決済の日が分かる書類(領収書、登記関係書類など)
  • 仲介手数料・印紙代・測量費・解体費など譲渡費用の領収書
  • 亡くなった人が購入したときの売買契約書・領収書(なければ概算取得費5%を使う検討。取得費加算との組み合わせは税理士に確認)
  • 相続登記にかかった登録免許税・司法書士報酬の領収書(業務に使っていない土地建物なら取得費に含められます。ただし概算取得費5%を使う場合は含められません。国税庁 No.3270)

計算明細書の書き方の流れ

  1. 相続税申告書から、自分の「相続税額」と「取得財産の価額」「相続時精算課税適用財産の価額」「暦年課税分の贈与財産価額」を転記する
  2. 売った財産の相続税評価額(相続税の課税価格の計算の基礎に算入された価額)を書く
  3. 計算式に当てはめて加算額を出す
  4. 譲渡益を上限にチェックし、譲渡所得の内訳書の取得費欄の計算に反映する

確定申告全体の手順や、空き家特例を使う場合の書類は実家売却の確定申告|必要書類・期限で詳しく解説しています。

申告を忘れた・特例の記載を漏らした場合

租税特別措置法39条3項は、確定申告書の提出がなかった場合や、特例の記載・添付がなかった場合でも、「やむを得ない事情がある」と税務署長が認めるときは、後から書類を出して適用を受けられる余地を残しています。ただし「やむを得ない事情」の判断は税務署側にあるため、最初から正しく申告するのが基本です。気づいた時点で速やかに税務署か税理士へ相談しましょう。

よくある失敗と、損しないためのチェックリスト

取得費加算で起こりやすい失敗を、実務の順番に沿って整理しました。売却を決める前、契約前、申告前にそれぞれ確認してください。

よくある失敗5つ

  1. 「相続から3年」と誤解して期限を早く見積もる:実際は相続税の申告期限の翌日から3年。逆に遅く見積もると期限切れになります。
  2. 分母を債務控除後の課税価格で計算する:加算額が過大になり、修正申告の原因になります。
  3. 空き家特例と比べずに取得費加算を使う:要件を満たすなら、空き家特例のほうが減税額は大きくなりがちです。
  4. 家族の誰かが相続税を払ったから使えると思い込む:売った本人に相続税額がなければ使えません。
  5. 確定申告をしない:特例は申告が前提です。減税どころか無申告加算税などの対象になるおそれもあります。

取得費加算の実務チェックリスト

タイミング 確認項目
売却を決める前 自分に相続税額があるか(相続税申告書の自分の欄で確認)
売却を決める前 相続税の申告期限と、取得費加算の期限日を書き出したか
売却を決める前 空き家特例・居住用3,000万円控除の要件を満たすか確認したか
売却を決める前 相続登記が完了しているか(共有者全員の同意はあるか)
契約前 引渡日が期限内に収まるスケジュールか
契約前 複数の財産を売る場合、どれに特例を使うか試算したか
申告前 計算明細書の様式が相続開始日に合っているか
申告前 分母に債務控除前の課税価格を使ったか
申告前 代償金を払った場合、代償金の調整をしたか
申告前 加算額が譲渡益を超えていないか

税理士に頼むべきケース・自分で申告できるケース

取得費加算の計算そのものは、相続税申告書の数字を計算明細書に写して掛け算・割り算をするだけなので、相続財産が単純で、売ったのが1つの不動産だけなら、国税庁の確定申告書等作成コーナーを使って自分で申告することも十分可能です。相続税の申告を税理士に依頼していた場合は、その税理士に売却の申告もまとめて相談すると、数字の転記ミスを防げます。

一方、次のようなケースは有利・不利の判断や計算が複雑になるため、税理士に試算を依頼することをおすすめします。

  • 空き家特例と取得費加算の両方が使えそうで、どちらが有利か判断したい
  • 代償分割をした、または遺留分侵害額を支払った
  • 同じ年に複数の相続財産を売る、または売る順番を決めたい
  • 相続税の申告前に売却し、更正の請求が必要になりそう
  • 相続税の修正申告・更正の請求が予定されている
  • 店舗併用住宅など居住用と非居住用が混在している

当事務局の監修者は司法書士・行政書士で、相続登記や遺産分割などの法務面を監修しています。税額の計算や特例の適用判断は税理士の専門領域ですので、個別の税額は税理士にご確認ください。相続登記がまだの方は相続登記・名義変更の相談、実家の片付けから売却までまとめて相談したい方は実家まるごと診断(無料)もご利用いただけます。

よくある質問

相続した家を3年以内に売却するとどうなりますか?
相続税を納めた人が、相続税の申告期限の翌日から3年以内(相続開始からおおむね3年10か月以内)に売ると、取得費加算の特例により払った相続税の一部を取得費に加算でき、譲渡所得税・住民税が減ります。また、要件を満たす実家なら空き家の3,000万円特別控除も検討できます。ただし両者は同じ物件で併用できないため、どちらが有利か比べて選びます。
相続から3年以内のルールとは何ですか?
一般に、取得費加算の特例(相続税の申告期限の翌日から3年以内の売却)と、空き家の3,000万円特別控除(相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却)の2つを指すことが多いです。期限の数え方が異なり、取得費加算は相続開始からおおむね3年10か月、空き家特例は制度自体が2027年12月31日までの譲渡に限られている点に注意が必要です。
相続した土地をすぐに売却すると税率が高くなりますか?
相続した土地の所有期間は、相続した日ではなく亡くなった人が取得した日から数えます。親が5年以上前に取得した土地なら、相続直後に売っても長期譲渡所得(所得税・復興特別所得税・住民税の合計20.315%)です。親の取得から売った年の1月1日までが5年以下の場合に限り、短期譲渡所得(合計39.63%)となります。
相続税を払っていなくても取得費加算の特例は使えますか?
使えません。特例の要件は、財産を取得した本人に相続税が課税されていることです。遺産が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下で申告不要だった人や、配偶者の税額軽減で納税額がゼロになった人は対象外です。その場合は空き家の3,000万円特別控除や、自分が住んでいた家なら居住用財産の3,000万円特別控除を検討します。
空き家特例と取得費加算の特例は併用できますか?
同じ家・土地の売却では併用できません。租税特別措置法35条3項で、取得費加算(39条)の適用を受ける譲渡は空き家特例の対象から除かれています。一般的な規模の実家では、加算額が3,000万円(相続人3人以上なら2,000万円)を超えない限り空き家特例のほうが減税額は大きくなりやすいです。なお、自分が住んでいた家の居住用3,000万円控除とは、条文上は併用できると解されています(適用前に税理士へ確認を)。
取得費に加算できる相続税額はどう計算しますか?
「その人の相続税額×売った財産の相続税評価額÷その人の相続税の課税価格(債務控除前)」で計算します。分母は借入金や葬式費用を差し引く前の金額で、相続時精算課税の財産や加算対象の暦年贈与財産も含めます。加算額は特例を使わない場合の譲渡益が上限で、財産ごとに計算します。国税庁の「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」を使うと計算できます。
「売った日」は契約日と引渡日のどちらで判定しますか?
譲渡所得の収入の時期は原則として引渡しの日ですが、納税者の選択で売買契約の効力発生日(契約日)とすることも認められています(所得税基本通達36-12)。期限の直前に契約と引渡しがまたがると判断が分かれる可能性があるため、期限の数か月前には引渡しまで終える計画にし、ぎりぎりになる場合は事前に税理士へ確認してください。
相続税の申告前に家を売った場合でも特例は使えますか?
使えます。売った年の確定申告の時点で相続税額が確定していなくても、相続税の申告期限までに税額が確定すれば適用対象です。確定申告を先に済ませた場合は、相続税の期限内申告書を出した日の翌日から2か月以内に更正の請求をすれば、特例を適用して所得税の還付を受けられます(租税特別措置法39条4項1号)。
取得費加算の特例を受けるには確定申告が必要ですか?
必要です。売った年の翌年2月16日から3月15日までの確定申告で、確定申告書に「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」と「譲渡所得の内訳書(土地・建物用)」を添付して提出します。年末調整を受けている会社員でも、不動産の売却で譲渡益が出た場合は確定申告が必要です。個別の税額は税理士にご確認ください。

まとめ

  • 取得費加算の特例は、相続税を納めた人が相続財産を相続税の申告期限の翌日から3年以内(相続開始からおおむね3年10か月以内)に売ったとき、払った相続税の一部を取得費に加算できる制度です。
  • 加算額は「その人の相続税額×売った財産の評価額÷その人の課税価格(債務控除前)」。譲渡益が上限で、財産ごとに計算します。減税額は「加算額×税率(長期約20%)」が目安です。
  • 空き家の3,000万円特別控除とは同じ物件で併用できず、要件を満たすなら空き家特例が有利になりやすい一方、マンションや新しい家、貸していた家などでは取得費加算が有力です。居住用3,000万円控除とは、条文上は併用できると解されています。
  • 「売った日」は原則引渡日、選択で契約日。期限の数か月前には引渡しまで終える計画を立て、査定・相続登記は早めに着手しましょう。
  • 特例は確定申告で計算明細書を添付して初めて適用されます。

相続税の申告を終えて「実家をどうするか」を考え始めた段階なら、まずは期限日を書き出し、売却にかかる期間を逆算することから始めてください。売却の進め方や査定の相談は、実家売却の相談窓口で受け付けています(査定・売買の実務は提携の宅地建物取引業者が担当します)。

税金についてのご注意
本記事の税金に関する記述は、2026年9月29日時点の国税庁の公表資料と法令にもとづく一般的な説明です。特例が使えるかどうかや個別の税額は、所得や相続の状況によって変わります。個別の税額は税理士にご確認ください(所轄の税務署でも相談できます)。

出典・参考資料(2026年9月29日確認)

読むより、聞いたほうが
早いこともあります

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この記事を書いた人

安心実家じまい事務局です。実家の片付けや遺品整理、空き家になった家の処分について、はじめての方にも分かるように記事を書いています。提携している現場の業者や司法書士と一緒に、費用の相場・自治体のごみ出しルール・補助金といった、調べてもなかなか分かりにくいところを一つずつ確かめながらまとめています。「誰に頼めばいいか分からない」という段階のご相談も、LINEやお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
運営は株式会社Sora Capital(東京都渋谷区・安心実家じまい事務局)です。相続・登記・法務に関する記述は、提携の司法書士・行政書士 久留慎一郎が監修しています。税額の計算や申告の判断は、税理士にご確認ください。

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