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施設に入った親の家を売却する方法|意思確認・成年後見・3,000万円控除の期限

最終更新日:2026年9月29日|法務監修:司法書士・行政書士 久留慎一郎先生|執筆・編集:安心実家じまい事務局

司法書士・行政書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。

監修の範囲:相続・登記・法務に関する記述(司法書士・行政書士の業務範囲)。片付け・買取・費用相場などの記述は安心実家じまい事務局が編集しています。監修者プロフィール

税金について:税額の計算や特例を使えるかどうかの判断は税理士の業務で、監修の範囲に含みません。申告の前に、税理士または所轄の税務署でご確認ください。

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 不動産の名義変更
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理

監修範囲:久留慎一郎先生(司法書士・行政書士)の監修は、相続・登記・法務に関する記述です。税額の計算や税の特例に関する記述は、国税庁の公表資料と法令をもとに事務局が作成しており、監修の対象外です。監修者プロフィール

この記事の結論

  • 施設に入った親の家でも、名義が親なら売主は親本人です。子が売れるのは「委任状による代理」「成年後見(保佐・補助)」「家族信託」のいずれかで権限を得たときだけです。
  • 親の判断能力があるうちは委任状+司法書士の意思確認で進められます。施設での面談・署名で足り、決済当日に親が出向く必要がないケースも多くあります。
  • 認知症が進んだ後は成年後見人が売主の代理人になり、施設入居中の自宅でも家庭裁判所の許可(民法859条の3)が必要です。許可なしの売却は無効になります。
  • マイホームの3,000万円特別控除は、親が住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売れば使えます。2023年中に施設へ移った場合、期限は2026年12月31日です。
  • 売却代金は親の財産です。入居一時金・月額費用に充てられる一方、介護保険施設の食費・居住費の軽減(補足給付)や相続税の計算に影響するため、売る前にお金の行き先まで決めておくのが失敗しないコツです。

親が老人ホームや介護施設に入り、実家が空き家になった。施設の費用もかかるし、固定資産税や管理の手間も続く。そろそろ売りたいけれど、名義は親のまま――。この記事は、そんな状況にある子世代の方に向けて、「施設に入った親の家を、誰が、どうやって売るのか」を手続きの順番どおりに整理したものです。

売却の可否を分けるのは、家の状態よりも親の判断能力です。元気なうちなら委任状で進められる手続きも、認知症が進むと家庭裁判所を通す必要が出てきます。さらに税金の特例には「住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」という期限(例:2024年5月に施設へ入居→2027年12月31日まで)があり、のんびり構えていると数百万円単位で手取りが変わることもあります。

「売るか、貸すか、残すか」をまだ決めかねている方は、先に老人ホーム入居が決まったら実家はどうする|4つの選択肢もあわせてご覧ください。本記事は「売る」と決めた方、または売る方向で検討している方向けの実務編です。

目次

施設に入った親の家は「親が売主」――子が勝手に売れない理由

最初に押さえておきたいのは、親が施設に入っても、家の持ち主は親のままだという点です。親子であっても、子が親の不動産を自分の判断で売ることはできません。売買契約は「売主本人の意思表示」があって初めて成立し、代理人が契約する場合も「本人から代理権をもらっていること」が前提になります(民法99条)。

「親の実印と権利証を預かっているから大丈夫」という考えは危険です。不動産の売買では、仲介する宅建業者と登記を担当する司法書士が、売主本人の確認と売却意思の確認を行います。実印を持っているだけの子が売主のふりをすることは、実務上まず通りません。

まず登記簿で「名義人」を確認する

手続きを考える前に、法務局で登記事項証明書(登記簿)を取り、所有者欄を確認しましょう。次のどれに当たるかで、売り方が変わります。

名義の状態 売主になる人 先にやること
親の単独名義 親本人 親の判断能力を確認し、下記の3つの方法から選ぶ
両親の共有名義 父と母の両方 両親それぞれの判断能力を確認。片方だけ認知症なら、その人について後見等が必要
親と子の共有名義 親と子の両方 親の持分について代理・後見の手続きが必要
祖父母など亡くなった人の名義のまま 相続人全員(親を含む) 先に相続登記。親が認知症だと遺産分割協議にも後見人が必要

亡くなった人の名義が残っている場合は、2024年4月から相続登記が義務化されている点にも注意が必要です。詳しくは相続登記の義務化とは|期限・過料・実家を相続したらやることで解説しています。

子が親の家を売れる方法は3つ(+任意後見)

  1. 委任状による代理(任意代理):親に判断能力があり、売却に同意している場合。
  2. 成年後見制度(法定後見):親の判断能力がすでに不十分な場合。家庭裁判所が選んだ後見人等が売る。
  3. 家族信託:親が元気なうちに信託契約を結び、子(受託者)に管理・売却の権限を移しておく方法。

このほか、親が元気なうちに公正証書で結んでおく任意後見契約(任意後見契約に関する法律3条)もあります。どれを使えるかは、ほぼ「今の親の判断能力」で決まります。

売り方を決める最初のチェック:親の判断能力を見極める

民法3条の2は「意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は無効とする」と定めています。意思能力とは、自分のした契約の結果を理解できる力のことです。認知症の診断名がついているかどうかではなく、「この家を、いくらで、誰に売り、代金がどうなるか」を本人が理解できているかが問われます。

無効になった売買は、後から買主や親族とのトラブルになります。そのため宅建業者や司法書士は、少しでも不安があれば取引を止めます。家族としては、次の早見表で「どのルートになりそうか」を先に見立てておくと、準備の無駄が減ります。

親の様子(目安) 想定されるルート 家族がまずやること
会話がしっかりしていて、家を売る理由や金額の話が通じる 親本人が売主(契約・決済の一部を委任状で子に任せる) 査定を取り、親と売却条件を話し合う。司法書士との面談日程を施設と調整
日によって理解度に波がある。物忘れが目立ち始めた 委任状ルートを急ぐ。難しければ補助・保佐の申立てを検討 かかりつけ医に相談し、面談は調子の良い時間帯に。家族信託・任意後見の検討は今が最後の機会になりやすい
売却の話をしても理解できない。家族の顔がわからないこともある 成年後見(または保佐・補助)+家庭裁判所の居住用不動産処分許可 家庭裁判所に後見開始を申し立てる。診断書は裁判所所定の書式で医師に依頼

判断能力を最終的に見極めるのは、家族ではなく決済を担当する司法書士です。司法書士は登記申請の前に売主本人と面談し、本人確認と売却意思の確認を行います。面談では「ご自宅を売ることをご存じですか」「売った代金はどうしますか」といった質問で、本人が自分の言葉で答えられるかを確かめるのが一般的です。事前に家族が答えを教え込むような準備は、かえって疑いを招くので避けましょう。

判断能力が低下したときの制度の全体像は認知症の親の家の管理|売れなくなる前にできる備えで詳しくまとめています。

ここまで読んで「うちの場合はどうなる?」と思ったら

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親が元気なうちに売る:委任状で子が手続きを進める方法

親に判断能力があれば、売主はあくまで親本人のまま、施設に通えない親の代わりに子が不動産会社とのやり取りや契約手続きを代理する、という形で進められます。流れ自体は通常の売却と同じです。

委任状に書いておくべき項目

委任状は仲介する宅建業者や司法書士が書式を用意することが多いものの、何をどこまで任せるかは親子で事前に決めておく必要があります。「売却に関する一切を任せる」のような白紙委任は、親の真意とずれる危険があるうえ、買主側から受け入れられないこともあります。

項目 書き方の例・ポイント
物件の表示 登記事項証明書どおりに所在・地番・家屋番号を記載
委任する行為 媒介契約の締結、売買契約の締結、手付金・残代金の受領、引渡し など個別に列挙
売買価格の範囲 「○○万円以上」など下限を明記。値下げ交渉にどこまで応じてよいか
代金の振込先 親名義の口座を指定(子の口座にしない)
契約条件 引渡し時期、残置物の扱い、契約不適合責任を負う範囲・期間
有効期限 「令和○年○月○日まで」と期限を区切る
署名・押印 親の自署と実印。印鑑証明書を添付

代金の受取口座を親名義にするのは、売却代金が親の財産だからです。子の口座に入れて管理すると、贈与や使い込みを疑われる原因になります。

宅建業者・司法書士による本人確認と意思確認

宅建業者と司法書士は、犯罪収益移転防止法で「特定事業者」とされ、不動産の売買では取引時確認(本人確認・取引目的の確認など)が義務付けられています(同法2条2項・4条)。代理人が手続きをする場合は、代理人である子の本人確認も行われます。

これとは別に、司法書士は登記を申請する立場として、売主本人が本当に売る意思を持っているかを自ら確認します。親が施設から出られない場合は、司法書士や宅建業者の担当者が施設を訪ねて面談するのが一般的です。施設によっては面会の予約や人数制限があるため、日程は早めに施設と調整しておきましょう。

決済・引渡しに親が出られない場合の進め方

売買契約や決済(残代金の受け取りと所有権移転登記)の日に、親本人が銀行や不動産会社に出向く必要はありません。多くの場合、次のように分けて進めます。

  1. 事前に施設で親と面談:司法書士が本人確認・意思確認を行い、登記の委任状などに親が署名・実印を押す。
  2. 書類の準備:登記識別情報(または権利証)、印鑑証明書、固定資産評価証明書などを揃える。印鑑証明書は作成後3か月以内のものが必要です(不動産登記令16条3項)。
  3. 決済当日:委任を受けた子と司法書士が立ち会い、残代金が親名義の口座に入金されたことを確認して、鍵を引き渡す。

印鑑証明書の取得は、親の住民票がある市区町村で行います。施設に住民票を移している場合は施設所在地の市区町村です。印鑑登録証(カード)が見当たらない場合は再登録が必要になり、本人の手続きが絡むため、早めに確認しておきましょう。

途中で親の判断能力が落ちたらどうなるか

民法上、委任による代理権は本人の死亡などで消滅しますが、本人の判断能力の低下だけでは当然には消滅しません(民法111条・653条)。ただし実務では、決済直前の意思確認で本人の意思が確認できなければ、司法書士は登記手続きを進めません。売買契約を結んだ後に止まると、買主との関係で違約の問題にもなりかねません。親の体調に不安があるなら、契約から決済までの期間を短く設定する、引渡し猶予を付けずに済むよう片付けを先に終わらせる、といった段取りが有効です。

認知症が進んだ場合:成年後見と家庭裁判所の許可(民法859条の3)

親の判断能力が失われている場合、子が委任状で代わりに売ることはできません。家庭裁判所に後見開始の審判を申し立て、選ばれた成年後見人が親の代理人として売ることになります。

施設入居後の自宅も「居住用不動産」に当たる

民法859条の3は、成年後見人が本人の「居住の用に供する建物又はその敷地」を売却・賃貸などするには家庭裁判所の許可が必要と定めています。「親はもう施設にいるから、実家は居住用ではないのでは」と考えがちですが、裁判所は手続案内の中で、居住用不動産には「本人が現在は病院や施設に入所しているため居住していないが、将来居住する可能性がある場合、又は入所前に居住していた場合なども含みます」と明記しています。そして許可を得ないで処分した場合、その処分は無効です。

保佐人・補助人でも、不動産を処分する代理権が付与されていれば同じ許可が必要です(民法876条の5第2項・876条の10第1項が859条の3を準用)。

後見の申立てから売却までの流れと費用

段階 内容 裁判所に納める費用など
1. 後見開始の申立て 本人の住所地の家庭裁判所へ。申立人は本人・配偶者・四親等内の親族など 申立手数料 収入印紙800円/登記手数料 収入印紙2,600円/郵便切手(裁判所ごとに異なる)/鑑定が必要な場合は鑑定費用
2. 審理・後見開始の審判 裁判所が後見人を選任。親族を候補者にしても、専門職が選ばれることがある ―
3. 売却の準備 後見人が査定を取り、買主候補を探す。売買契約は「家庭裁判所の許可」を条件とする形で進めるのが一般的 ―
4. 居住用不動産処分許可の申立て 後見開始の審判をした家庭裁判所へ。売買契約書(写し)、評価証明書、不動産業者の査定書、登記事項証明書などを添付 収入印紙800円+郵便料
5. 許可後に決済 代金は本人(親)の財産として後見人が管理。裁判所への報告が続く ―

後見開始の申立てには、本人の戸籍謄本・住民票、裁判所所定の書式による医師の診断書、本人情報シート、財産や収支の資料などが必要です(いずれも裁判所の手続案内による)。家庭裁判所は「売る必要があるか」「価格が妥当か」「売った後の親の住まいが確保されているか」を見て判断するため、施設の入居契約書や、費用が不足している事情がわかる資料を揃えておくと説明しやすくなります。

成年後見は、一度始まると原則として本人が亡くなるまで続き、専門職が後見人になれば報酬も継続して発生します。売却のためだけに使う制度ではない点は理解しておきましょう。手続きの詳細やスケジュール、許可が下りにくいケースは成年後見人は実家を売却できるか|居住用不動産の許可手続きと流れで解説しています。

2026年6月成立の民法改正で後見制度はどう変わるか

2026年(令和8年)6月17日に「民法等の一部を改正する法律」が参議院で可決・成立し、6月24日に公布されました(令和8年法律第45号。法務省「民法等の一部を改正する法律案」、衆議院の議案審議経過情報による)。法務省の法律案要綱によると、後見開始・保佐開始の審判は廃止され、補助の制度に一本化されます。家庭裁判所は必要な範囲に絞って補助人に同意権や代理権を与え、必要がなくなれば審判を取り消せる仕組みに変わります。

施行日は、成年後見制度の見直し部分について「公布の日から2年6月を超えない範囲内において政令で定める日」とされています(遅くとも2028年12月までに施行。2026年9月時点で、法務省のページでは具体的な施行日は示されていません)。現在(2026年9月)申し立てる場合も、施行日までは現行の後見・保佐・補助の制度がそのまま使われます。本記事の手続きの説明も、すべて現行制度に基づいています。なお、改正後も、居住用不動産の売却について代理権を与えられた補助人が売るには家庭裁判所の許可が必要とする規定(改正後の民法876条の13)が新設されています。施設に入った親の家を裁判所の許可なしに売れるようになるわけではありません。すでに後見が始まっている人が施行後にどう扱われるか(経過措置)などの細部は、施行までに法務省・裁判所から案内が出る見込みのため、最新情報を確認してください。

委任状・成年後見・任意後見・家族信託の比較

親が元気なうちなら、将来に備えて任意後見や家族信託を準備するという選択肢もあります。ただし、どちらも親に契約できるだけの判断能力が残っていることが前提です。4つの方法を「施設に入った親の家を売る」という目的で比べると、次のようになります。

比較項目 委任状(任意代理) 法定後見(後見・保佐・補助) 任意後見 家族信託
使える時期 親に判断能力があるうち 判断能力が低下した後 元気なうちに契約→低下後に効力発生 元気なうちに契約
売るのは誰か 売主は親(子は代理) 後見人等が親を代理 任意後見人(子など)が親を代理 受託者(子)が自分の名義で売る
誰が担当者になるか 親が選ぶ 家庭裁判所が選ぶ(専門職の場合あり) 親が契約で選ぶ 親が契約で選ぶ
家庭裁判所の関与 なし あり。自宅の売却は許可が必要(民法859条の3) 任意後見監督人の選任が必要(任意後見契約法4条) 原則なし
契約の方式 委任状(実印+印鑑証明書) 申立て 公正証書(同法3条) 信託契約(公正証書にすることが多い)+信託の登記
判断能力が落ちた後も使えるか 実務上は止まる 使える 使える(監督人選任後) 使える
3,000万円控除 親が要件を満たせば可 親が要件を満たせば可 親が要件を満たせば可 受益者である親の売却とみなされ(所得税法13条)、要件を満たせば可
向いている人 親が元気で、すぐ売ると決まっている すでに認知症が進んでいる 売却以外の身上保護も含めて備えたい 売る時期を決めきれず、将来の売却権限を子に持たせたい

「親はまだ元気だが、売るのは数年後」という場合に家族信託が選ばれやすいのは、判断能力が落ちた後でも受託者の判断で売れるからです。一方、すぐ売ると決まっているなら委任状で売ってしまうのが最もシンプルで、費用もかかりません。家族信託の設計や登記は専門家の関与が必要になるため、目的に対して手間が見合うかで判断しましょう。

施設入居後に売ったときの税金:3,000万円控除には期限がある

親の家を売って利益(譲渡所得)が出ると、所得税・住民税がかかります。売主は親なので、確定申告をして税金を納めるのも親です。施設に入った親の家を売るときに最も重要なのが、国税庁タックスアンサーNo.3302の「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」です。

「住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日」まで

No.3302では、特例の対象に「以前に住んでいた家屋(住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合に限ります。)」が含まれています。施設への入居で親が実家に住まなくなった場合、この期限内に売れば、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。住まなくなった後は「どのような用途に使用してもかまいません」とされているため、期限内であれば一時的に貸していた家でも対象です。

具体的には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日が期限です(例:2024年5月に施設へ入居して住まなくなった→3年を経過するのは2027年5月→期限は2027年12月31日)。

親が実家に住まなくなった時期 3,000万円控除の売却期限 2026年9月末時点の残り
2022年中 2025年12月31日 期限切れ
2023年中 2026年12月31日 約3か月。最優先で動く必要あり
2024年中 2027年12月31日 約1年3か月
2025年中 2028年12月31日 約2年3か月
2026年中 2029年12月31日 約3年3か月

「売った日」は、原則として買主に引き渡した日ですが、売買契約の効力発生日(一般的には契約締結日)を選んで申告することもできます(国税庁No.3102)。期限ぎりぎりの場合は、年内に契約まで済ませられるかが勝負になります。なお、入院からそのまま施設に移ったなど「いつ住まなくなったか」の判断が難しいケースは、税務署か税理士に確認してください。

見落としやすい要件

  • 子や親族に売ると使えない:親子・夫婦・生計を一にする親族など「特別の関係がある人」への売却は対象外です。「親の家を子が買い取る」形では3,000万円控除は受けられません。
  • 解体して更地で売る場合:家屋を取り壊した日から1年以内に土地の売買契約を結び、かつ上記の期限内に売ること。取り壊してから契約までの間に、土地を貸駐車場などに使っていないことが条件です。
  • 前年・前々年の適用:親が売った年の前年・前々年にこの特例などを使っていないこと。
  • 住民票を施設に移している場合:売買契約日の前日の住民票の住所と売った家の所在地が違うときは、戸籍の附票の写しなど、その家に住んでいたことがわかる書類を確定申告書に添付します(No.3302)。住民票を移しているから特例が使えない、というわけではありません。

住民票は施設に移すべきか

施設に入った親の住民票を移すかどうかは、3,000万円控除の可否を直接決めるものではありません。特例は「実際にその家に住んでいたか」で判断され、住民票の住所と売った家が違う場合は、戸籍の附票の写しなどで以前に住んでいたことを示せば足ります(No.3302)。移すかどうかは、郵便物の受け取り、介護保険や医療の手続き、印鑑証明書を取る役所の場所など、生活上の都合で決めてかまいません。ただし住民票を移した場合、印鑑登録は旧住所の市区町村で抹消されるのが通常なので、売却で使う印鑑証明書は新しい住所地で登録し直す必要が出てきます。

所有期間10年超なら軽減税率も重ねて使える

売った年の1月1日時点で土地・建物の所有期間がともに10年を超えていれば、「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」(No.3305)を3,000万円控除と重ねて使えます。控除後の課税長期譲渡所得のうち6,000万円以下の部分は、所得税10%(復興特別所得税を含めて10.21%)、住民税4%です。通常の長期譲渡所得(所得税15.315%・住民税5%、No.3208)よりも低い税率になります。

計算例:期限内に売るか、過ぎてから売るか

条件を仮定して試算します(端数処理は省略)。父が40年前に買った家を3,500万円で売却、購入時の資料がなく取得費は売った金額の5%(国税庁No.3258の概算取得費)、仲介手数料などの譲渡費用を120万円とします。

項目 期限内に売った場合 期限を過ぎて売った場合
譲渡価額 3,500万円 3,500万円
取得費(概算5%) 175万円 175万円
譲渡費用 120万円 120万円
譲渡所得 3,205万円 3,205万円
特別控除 3,000万円 0円
課税長期譲渡所得 205万円 3,205万円
所得税・復興特別所得税 約20.9万円(10.21%) 約490.8万円(15.315%)
住民税 約8.2万円(4%) 約160.3万円(5%)
税金の合計 約29.1万円 約651.1万円

この例では、期限を過ぎただけで税金が約622万円増えます。施設の費用に充てたいお金がそのまま税金に消える計算です。取得費がわかる売買契約書や領収書が残っていれば、課税される金額はさらに小さくなることがあります。実際の税額は取得費・譲渡費用・他の所得によって変わるため、申告前に税理士か税務署で確認してください。税金の計算方法は実家売却の譲渡所得税の計算方法で詳しく解説しています。

親が亡くなった後に売る場合との違い

親が亡くなってから子が相続して売る場合、親の3,000万円控除(No.3302)は使えません。代わりに「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」(No.3306)が候補になります。老人ホーム等に入所していた親の家でも、入所直前に要介護認定等を受けていたこと、入所後に家を貸したり他人が住んだりしていないことなどの条件を満たせば対象になります(No.3307)。

ただしこの空き家特例は、1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた家に限られ、2027年12月31日までの売却が対象、相続人が3人以上なら控除は1人2,000万円までといった制限があります。新耐震基準の家や、施設入居後に貸していた家は使えません。「生前に親が売るか、相続後に子が売るか」の比較は実家の売却は相続前と相続後どちらが得?、空き家特例の要件は空き家の3,000万円特別控除をご覧ください。

売った代金の行き先:介護費・入居一時金・相続税・補足給付への影響

家を売れば終わり、ではありません。売却代金は親の預金になり、その後の介護費用や相続にまで影響します。売る前に次の4点を家族で確認しておきましょう。

1. 代金は親の財産。施設費用には充てられる

売却代金を入居一時金や月額費用の支払いに充てるのは、親自身のための支出なので問題ありません。一方、子が代金を自分の生活費や住宅ローンに回すと、贈与税の対象になったり、他の兄弟から使い込みを疑われたりします。支払いは親の口座から施設へ直接、使い道はノートや通帳のコピーで記録しておくのが安全です。後見人が管理する場合は、家庭裁判所への報告対象になります。入居一時金を売却で用意する段取りは老人ホームの入居一時金を実家の売却で用意する方法で解説しています。

2. 介護保険施設の「補足給付」が受けられなくなることがある

特別養護老人ホームなどの介護保険施設では、所得や資産が一定以下の人の食費・居住費を軽減する「特定入所者介護サービス費(補足給付)」があります。厚生労働省の介護サービス情報公表システムによると、対象になるには市町村民税非課税などの条件に加え、預貯金額が一定以下であることが必要です。

設定区分 主な対象者 預貯金額の上限(夫婦の場合)
第1段階 世帯全員が市町村民税非課税で、老齢福祉年金受給者 1,000万円(2,000万円)
第2段階 世帯全員が非課税で、本人の公的年金収入額(非課税年金を含む)+その他の合計所得金額が82.65万円以下 650万円(1,650万円)
第3段階① 同 82.65万円超〜120万円以下 550万円(1,550万円)
第3段階② 同 120万円超 500万円(1,500万円)

家を売って預貯金がこの上限を超えれば、補足給付の対象から外れ、食費・居住費は基準の金額を自己負担することになります。これ自体は「売ったお金で払う」だけなので損ではありませんが、毎月の支出が増える前提で資金計画を立てる必要があります。売却した年の所得は翌年度の住民税の課税・非課税の判定や介護保険料などにも関係する場合があるため、施設のある市区町村の介護保険担当窓口で確認しておくと安心です。

3. 相続税の計算が変わる

家のままなら相続税は路線価などで評価され、条件を満たせば「小規模宅地等の特例」で土地の評価額を330㎡まで80%減らせます。国税庁No.4124では、要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所していた場合も、入所前の自宅を被相続人の居住用として扱えるとしています(入所後に事業の用に使ったり、新たに被相続人等以外の人が住んだりしていないことなどが条件)。

ところが生前に売ると、家は現金に変わり、額面どおりに相続財産に含まれます。親の財産が相続税の基礎控除を超えそうな家庭では、売るか残すかで相続税が変わる可能性があるため、売却前に税理士に試算してもらう価値があります。特例の要件は小規模宅地等の特例とはを参照してください。

4. 確定申告は翌年2月16日〜3月15日に親名義で

譲渡所得の確定申告の期間は、原則として売った年の翌年2月16日から3月15日までです(国税庁No.2020)。親が施設にいても申告者は親です。家族が書類を作って提出を手伝うことはできますが、判断能力が低下している場合は後見人が行います。売った後に親が亡くなった場合は、相続人が準確定申告をすることになります。

売る以外の選択肢との比較:貸す・リースバック・残す

施設に入った親の家は、売る以外にも選択肢があります。「親が自宅に戻る可能性」と「3,000万円控除の期限」を軸にすると、判断しやすくなります。

選択肢 向いているケース 注意点
売る 親が自宅に戻る見込みが低い/施設費用を確保したい/管理する家族がいない 親の判断能力が必要(なければ後見+裁判所の許可)。3,000万円控除の期限内に売るのが有利
貸す 立地が良く賃貸需要がある/将来、家族が住む可能性がある リフォーム費用や修繕の負担。入居者がいると退去してもらうのは簡単ではない。後見人が貸すにも裁判所の許可が必要。貸したまま期限を過ぎると3,000万円控除は使えない
リースバック 売却代金が欲しいが、一時帰宅の場所などとして家を使い続けたい 家賃がかかり続ける。売却価格は相場より低くなりやすい。施設入居後は利用する意味が薄いことが多い
空き家のまま残す 親が戻る可能性が高い/相続税対策で残したい 固定資産税・火災保険・管理の手間が続く。管理が不十分だと自治体から指導・勧告を受け、固定資産税の住宅用地特例が外れるおそれ

親が「いつか家に帰りたい」と望んでいる場合、その気持ちを無視して売ると、後悔や家族間の対立につながります。施設の職員や主治医に「在宅に戻れる見込み」を聞いたうえで、親と一緒に結論を出すのが理想です。貸す場合の手順は実家を貸すという選択肢、リースバックの仕組みは実家のリースバックとはで解説しています。

子が住む・子が買い取る場合の注意点

「他人に売るくらいなら自分が住みたい」「兄弟の誰かが買い取れば家を残せる」という相談もよくあります。家族の中で完結させる方法は気持ちの面では納得しやすい反面、税金の特例が使えなくなる落とし穴があります。

子が親から買い取る場合

  • 親の3,000万円控除と軽減税率は使えない:国税庁No.3302・No.3305とも、親子や生計を一にする親族など「特別の関係がある人」への売却を対象外としています。親に譲渡益が出れば、控除なしで課税されます。
  • 安すぎる価格は贈与とみなされる:著しく低い価額で財産を譲り受けた場合、時価との差額は贈与を受けたものとみなされます(相続税法7条)。「親子だから安く」は、子に贈与税がかかる原因になります。価格は不動産会社の査定などで時価の根拠を残しましょう。
  • 他の兄弟の理解:親の財産が子の一人に移るため、将来の相続で不公平感が出やすい取引です。価格の決め方を兄弟にも共有しておくと、後のトラブルを防げます。
  • 親が認知症なら後見人との取引になる:後見人である子が自分で買う場合は利益相反になり、特別代理人の選任などの手続きが必要です。

子が住む(売らずに使う)場合

  • 親の3,000万円控除の期限は止まらない:子が住んでも「住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」という期限は変わりません(例:2024年5月に入居→2027年12月31日まで)。期限内に第三者へ売れば控除は使えますが、期限を過ぎてから売ると使えません。
  • 相続後の空き家特例が使えなくなる:No.3307は、施設入所後に家が「被相続人以外の者の居住の用」に使われていないことを要件にしています。子が住み始めると、親の死亡後にこの特例は使えません。
  • 小規模宅地等の特例にも影響:No.4124の注意書きでも、入所後に「新たに被相続人等以外の人の居住の用に供された場合」は除かれています。住む子の状況(親と生計を一にしているか等)によって結論が変わるため、税理士への確認が欠かせません。

家族が住む・買うという選択は、税金の特例を手放す代わりに家を残す判断です。「特例を使って第三者に売った場合の手取り」と比べてから決めることをおすすめします。兄弟間の調整は実家売却は兄弟の共有名義でも進められる?も参考になります。

入居一時金・月額費用に間に合わせる逆算スケジュール

「いつまでに、いくら必要か」から逆算して、売り方を選びます。仲介で相場に近い価格を狙うか、提携の宅建業者による買取で早く現金化するかは、期限までの残り時間で決まることが多いものです。

ルートA:親に判断能力がある(委任状で売る)

時期 やること ポイント
支払期限の6か月前まで 登記簿の確認、親と売却条件の話し合い、複数社の査定 査定額は「売れる価格」ではない。根拠を聞く
5か月前 媒介契約(または買取の相談)、委任状の作成、司法書士の面談日程の調整 専任媒介契約の有効期間は3か月以内(宅建業法34条の2)。更新するかは実績を見て判断
4〜2か月前 販売活動、並行して家財の片付け・仏壇の供養 親に残したい物を先に確認。片付けは引渡し条件に合わせる
2か月前 売買契約(手付金受領) 決済日を施設費用の支払日より前に設定
1か月前まで 施設での意思確認・署名、印鑑証明書の取得(3か月以内) 親の体調に合わせて予備日を確保
支払期限まで 決済・引渡し、施設費用の支払い 代金は親の口座へ。翌年2月16日〜3月15日に確定申告

ルートB:判断能力が低下している(後見を使って売る)

ルートBでは、後見開始の申立て準備(診断書・戸籍・財産資料の収集)、家庭裁判所の審理、後見人の選任、売買契約、居住用不動産処分許可の申立てと、裁判所の手続きが2回挟まります。審理にかかる期間は事案や裁判所によって異なり、ルートAより数か月単位で長くなるのが普通です。入居一時金の支払いに間に合わないときは、施設に支払い時期を相談する、親の預貯金や年金で当面の月額費用をまかなうなど、つなぎの資金計画を先に立てておきましょう。

期限に間に合わないときの考え方

  • 3,000万円控除の期限が近い:仲介で時間をかけて少しでも高く売るより、期限内に確実に売るほうが手取りが多いことがあります(前述の計算例では税額差は約622万円)。
  • 家が古い・片付けが終わっていない:家財が残ったまま引き取る買取なら、片付けの時間を短縮できます(残置物はそのまま売却できる?)。
  • 仲介と買取の違いは空き家の仲介と買取の違いで比較しています。

安心実家じまい事務局は宅建業者ではないため、自ら買い取ったり仲介したりはしません。実家売却の相談窓口では、状況を伺ったうえで、売買の契約実務は提携の宅建業者、登記・後見に関わる手続きは提携の司法書士につなぎ、片付けから売却までの段取りを一緒に整理します。

施設に入った親の家で起きやすい失敗

よくある失敗 何が起きるか 防ぎ方
「もう少し様子を見てから」と先送り 親の判断能力が落ち、委任状で売れなくなる。後見を使うことになり時間と費用が増える 親が元気なうちに方針だけでも決め、必要なら委任状・家族信託・任意後見を準備
入居日を記録していない 3,000万円控除の期限がいつか分からず、気付いたら過ぎていた 入居契約書などで住まなくなった日を確認し、「その日から3年を経過する日の属する年の12月31日」(例:2024年5月入居→2027年12月31日)をカレンダーに入れる
代金を子の口座で受け取った 贈与や使い込みを疑われ、兄弟間の争いになる 入金は親名義の口座に。支出は記録を残す
片付けを後回しにした 引渡し期限に間に合わず、決済が延びる 売り出しと並行して片付けを進める。残置物込みで引き取る買取も検討
親に黙って話を進めた 司法書士の意思確認で親が「売るつもりはない」と答え、契約直前で止まる 売却理由と代金の使い道を、親が納得するまで話し合う

親への切り出し方に悩む場合は実家じまいを親にどう切り出す?を参考にしてください。

売却前の実務チェックリスト(印刷用)

施設に入った親の家を売るときに、家族が揃えておきたいものを一覧にしました。チェックしながら進めてください。

名義・書類

  • 登記事項証明書(所有者・共有者・抵当権の有無を確認)
  • 登記識別情報通知または登記済証(権利証)の保管場所
  • 親の実印・印鑑登録証(カード)の有無
  • 親の本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証・健康保険証など)
  • 固定資産税の納税通知書・評価証明書
  • 購入時の売買契約書・領収書・建築時の請負契約書(取得費の証明に使う)
  • 建築確認済証・検査済証、境界確認書や測量図(あれば)
  • 住民票の異動状況(施設に移しているなら戸籍の附票を取得)
  • 施設の入居契約書・重要事項説明書(入居日から「住まなくなった日」を確認する目安)
  • 要介護認定の通知書の写し(相続後の空き家特例・小規模宅地等の特例で使う可能性)

親との確認事項

  • 売ることへの本人の同意(誰が同席して話したかを記録)
  • 売却価格の下限・引渡し時期
  • 代金の入金口座(親名義)と使い道
  • 家に残したい物・形見として受け取りたい物
  • 仏壇・神棚の扱い(閉眼供養の要否)

家の片付け・管理

  • 家財の片付け(売却条件に合わせて「全部撤去」か「そのまま」かを決める)
  • 電気・ガス・水道・電話・新聞などの契約の整理
  • 郵便の転送届
  • 火災保険の契約内容(空き家になった旨の通知が必要な場合がある)

仏壇の扱いは売却前の仏壇・神棚の処分で詳しく解説しています。片付けを業者に任せる場合、安心実家じまいの実家じまい代行パックは、2DKまで29.8万円・3LDKまで49.8万円・4LDK以上69.8万円〜(税別)の定額で、家財の仕分け・搬出・処分をお受けしています。家族だけで片付けられる量なら、業者に頼まなくても問題ありません。

よくある質問

施設に入った親の家を子が売ることはできますか?
親名義の家の売主は親本人なので、子が自分の判断だけで売ることはできません。親に判断能力があれば委任状で子が代理して手続きを進められ、判断能力が失われていれば家庭裁判所が選んだ成年後見人が売主の代理人になります。親が元気なうちに家族信託を結んでおけば、受託者である子が売ることもできます。どの方法を使えるかは、ほぼ親の現在の判断能力で決まります。
施設に入った親の家を売却するには委任状が必要ですか?
親に判断能力があり、子が代わりに契約や決済の手続きをする場合は委任状が必要です。委任状には物件、委任する行為、売買価格の下限、代金の振込先(親名義の口座)、有効期限などを具体的に書き、親の自署と実印、印鑑証明書を添えます。委任状があっても、司法書士や宅建業者は施設などで親本人と面談し、本人確認と売却意思の確認を行います。
親が認知症の場合、施設に入った親の家は売れますか?
判断能力が失われている場合は委任状では売れず、家庭裁判所に後見開始を申し立て、選ばれた成年後見人が売ります。施設に入所中で住んでいない自宅も居住用不動産に当たるため、売却には家庭裁判所の許可(民法859条の3)が必要で、許可なしの売却は無効です。申立手数料は後見開始が収入印紙800円と登記手数料2,600円、処分許可が800円で、別に郵便料や鑑定費用がかかる場合があります。
施設に入った親の家を売却したら税金はいくらかかりますか?
売って利益(譲渡所得)が出れば親に所得税・住民税がかかります。親が住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売れば、居住用財産の3,000万円特別控除が使え、所有期間10年超なら軽減税率も重ねて使えます。例えば3,500万円で売り取得費不明の場合、期限内なら約29万円、期限後なら約651万円という試算になります。個別の税額は税理士か税務署で確認してください。
施設に入った親の家を売却するには住民票が必要ですか?
住民票を施設に移しているかどうかで3,000万円控除の可否が決まるわけではありません。売買契約日の前日の住民票の住所と売った家の所在地が違う場合は、戸籍の附票の写しなど、その家に住んでいたことがわかる書類を確定申告書に添付します。また登記では親の印鑑証明書(作成後3か月以内)が必要になるため、住民票を移した場合は新しい住所地で印鑑登録をしておく必要があります。
施設に入った親の家に子が住むことはできますか?
親の了解があれば住むことはできます。ただし子が住んでも、親の3,000万円控除の期限(住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。例:2024年5月に入居→2027年12月31日まで)は止まりません。また施設入所後に親以外の人が住むと、親が亡くなった後に相続人が使える空き家の3,000万円特例は使えなくなり、相続税の小規模宅地等の特例にも影響する場合があります。住む前に、特例を使って売った場合の手取りと比べておくと安心です。
子が親の家を買い取る場合、3,000万円控除は使えますか?
使えません。国税庁のタックスアンサーNo.3302では、親子や夫婦、生計を一にする親族など特別の関係がある人への売却は特例の対象外とされています。さらに時価より著しく低い価格で買い取ると、差額が贈与とみなされ子に贈与税がかかることがあります(相続税法7条)。親族間で売買する場合は、不動産会社の査定などで時価の根拠を残しておきましょう。
売却代金を親の施設費用に使っても問題ありませんか?
売却代金は親の財産なので、入居一時金や月額費用など親自身のための支払いに充てるのは問題ありません。代金は親名義の口座で受け取り、施設へは親の口座から支払い、使い道を記録しておくと兄弟間のトラブルを防げます。なお預貯金が増えると、特別養護老人ホームなどの食費・居住費を軽減する補足給付の預貯金要件(単身で500万〜1,000万円以下など)から外れることがあります。
成年後見制度が改正されると、親の家は売りやすくなりますか?
2026年6月に成立した改正民法(令和8年法律第45号)で、後見・保佐は廃止され補助に一本化されますが、施行は公布(2026年6月24日)から2年6か月以内の政令で定める日で、2026年9月時点では施行日は示されておらず、現在は改正前の後見・保佐・補助の制度が使われています。改正後も、居住用不動産の売却について代理権を与えられた補助人が売るには家庭裁判所の許可が必要とする規定が設けられており、裁判所の許可が不要になるわけではありません。

まとめ

  • 施設に入っても、親名義の家の売主は親本人。子が売れるのは委任状・成年後見(保佐・補助)・家族信託で権限を得たときに限られます。
  • 親に判断能力があるうちは、委任状と司法書士の意思確認で進められます。施設での面談と署名で済み、決済日に親が出向く必要がないケースも多くあります。
  • 判断能力が失われた後は、成年後見人が家庭裁判所の許可(民法859条の3)を得て売ります。施設入居中の自宅も「居住用不動産」です。2026年6月成立の改正法(施行は公布から2年6か月以内)で後見・保佐は補助に一本化されますが、施行後も、自宅の売却の代理権を与えられた補助人が売るには家庭裁判所の許可が必要です。
  • 3,000万円控除は「住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日」まで(例:2024年5月に入居→2027年12月31日まで)。所有10年超なら軽減税率も重ねて使えます。期限を過ぎると、税額が数百万円増えることもあります。
  • 売却代金は親の財産です。補足給付・相続税・翌年の確定申告への影響まで含めて、売る前に家族で計画を立てましょう。

「親の判断能力がどの段階か分からない」「期限までに間に合うか知りたい」という場合は、実家まるごと診断(無料)で状況を整理するところから始めてみてください。売却の進め方の相談は実家売却の相談窓口で受け付けています。

税金についてのご注意
本記事の税金に関する記述は、2026年9月29日時点の国税庁の公表資料と法令にもとづく一般的な説明です。特例が使えるかどうかや個別の税額は、所得や相続の状況によって変わります。個別の税額は税理士にご確認ください(所轄の税務署でも相談できます)。

出典・参考資料(2026年9月29日確認)

読むより、聞いたほうが
早いこともあります

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この記事を書いた人

安心実家じまい事務局です。実家の片付けや遺品整理、空き家になった家の処分について、はじめての方にも分かるように記事を書いています。提携している現場の業者や司法書士と一緒に、費用の相場・自治体のごみ出しルール・補助金といった、調べてもなかなか分かりにくいところを一つずつ確かめながらまとめています。「誰に頼めばいいか分からない」という段階のご相談も、LINEやお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
運営は株式会社Sora Capital(東京都渋谷区・安心実家じまい事務局)です。相続・登記・法務に関する記述は、提携の司法書士・行政書士 久留慎一郎が監修しています。税額の計算や申告の判断は、税理士にご確認ください。

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