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換価分割とは|実家を売って兄弟でお金を分ける手順・協議書の書き方・税金

最終更新日:2026年9月29日|法務監修:司法書士・行政書士 久留慎一郎先生|執筆・編集:安心実家じまい事務局

司法書士・行政書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。

監修の範囲:相続・登記・法務に関する記述(司法書士・行政書士の業務範囲)。片付け・買取・費用相場などの記述は安心実家じまい事務局が編集しています。監修者プロフィール

税金について:税額の計算や特例を使えるかどうかの判断は税理士の業務で、監修の範囲に含みません。申告の前に、税理士または所轄の税務署でご確認ください。

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 不動産の名義変更
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理

監修範囲:久留慎一郎先生(司法書士・行政書士)の監修は、相続・登記・法務に関する記述です。税額の計算や税の特例に関する記述は、国税庁の公表資料と法令をもとに事務局が作成しており、監修の対象外です。監修者プロフィール

この記事の結論

  • 換価分割は、実家などの遺産を売ってから、その売却代金を決めた割合で分ける遺産分割の方法です。代償金を払える人がいない、誰も住まない実家を公平に分けたい場合に向いています。
  • 名義は「代表者1人の名義」か「法定相続分での共有名義」にしてから売ります。代表者名義にしても、協議書に換価のための便宜上の名義であることと分配割合を書き、実際にその通り分配すれば、贈与税の課税は問題にならないとする国税庁の質疑応答事例(調停による換価分割の事例)があります。
  • 売却益の譲渡所得税は、代金を受け取った相続人がそれぞれ自分の取り分で確定申告します。空き家の3,000万円控除(家屋と敷地を相続で取得した相続人が3人以上なら1人2,000万円)や取得費加算の特例も、要件を満たす人ごとの判定です。
  • 期限が重なります。相続税の申告は10か月、小規模宅地等の特例を使う同居の相続人は申告期限前に売ると特例を使えない、空き家特例は相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。売る時期は期限を逆算して決めるのが損をしないコツです。
  • 兄弟で揉めて協議がまとまらないときは、家庭裁判所の調停・審判でも換価分割(競売または任意売却)が命じられることがあります。

親が亡くなり、兄弟の誰も実家に住む予定がない。けれど「家を1人が相続して、ほかの兄弟にお金を払う」ほどの貯金は誰にもない。そんなときに選ばれるのが換価分割(かんかぶんかつ)です。「換価」は財産をお金に換えること。つまり「実家を売って、そのお金を分ける」分け方を指します。

仕組みはシンプルですが、実務では「誰の名義で売るのか」「協議書に何と書けば贈与税がかからないか」「確定申告は誰がするのか」「3,000万円控除は使えるのか」で迷う人が少なくありません。書き方を1行間違えるだけで、代表者から兄弟への贈与と見られたり、使えたはずの特例を逃したりするおそれがあります。

この記事では、民法・不動産登記法と国税庁の質疑応答事例・タックスアンサーを原典に、換価分割の手順、協議書の記載例(全文)、税金の考え方、兄弟の意見が合わないときや売れないときの進め方までを一通りまとめました。実家の分け方をまだ決めていない段階の方は、先に実家の遺産分割|共有名義のリスクと4つの分け方で全体像を確認しておくと読みやすくなります。

目次

換価分割とは|実家を売って代金を分ける遺産分割の方法

相続人が複数いると、遺産はいったん相続人全員の共有になります(民法898条)。この共有状態を解消し、誰が何を取得するかを決めるのが遺産分割です。共同相続人は協議でいつでも遺産を分けられ、協議がまとまらなければ家庭裁判所に分割を求められます(民法907条)。

遺産分割の方法は、法律上「この4つから選べ」と列挙されているわけではありません。ただ実務では、次の考え方で整理するのが一般的です。

  • 現物分割:実家は長男、預金は長女のように、財産そのものを分ける
  • 代償分割:実家を1人が取得し、その人がほかの相続人にお金(代償金)を払う
  • 換価分割:実家を売ってお金に換え、その代金を分ける
  • 共有分割:実家を兄弟の共有名義のまま相続する

換価分割は、分ける対象が「不動産」から「お金」に変わるため、1円単位で割合どおりに分けられる点が最大の特徴です。一方で、売れるまで分配できない、売却益に税金がかかる、という裏返しの弱点もあります。

換価分割・代償分割・現物分割・共有の4つを比較

実家の分け方を決めるときに使える比較表です。家族会議で「うちはどれが合うか」を話し合う材料にしてください。

比較項目 換価分割 代償分割 現物分割 共有のまま
実家の行き先 第三者に売却 相続人1人が取得 相続人1人が取得(他の遺産は別の人へ) 兄弟の共有
公平に分けやすいか 分けやすい(代金を割合どおり分配) 評価額でもめやすい 遺産の種類が少ないと不公平になりやすい 持分上は公平
取得する人の自己資金 不要 代償金が必要 不要 不要
売却益への所得税・住民税 売却益があれば各相続人に課税 売らなければかからない 売らなければかからない 売れば各共有者に課税
登記 代表者名義または法定相続分の共有名義→買主へ 取得者の単独名義 取得者の単独名義 共有名義
後々のリスク 売れるまで管理費・固定資産税が続く 代償金の未払い ほぼなし 次の相続で共有者が増え、売るにも全員の同意が必要
向いているケース 誰も住まない実家、兄弟に代償金を払える人がいない 誰か1人が住み続けたい 実家と同程度の預金など他の遺産がある 原則おすすめしない(一時的な選択肢)

共有のまま相続すると、将来売ろうとしたときに共有者全員の同意が必要です(民法251条1項。共有物の「変更」にあたるため)。次の相続で共有者が甥や姪に広がると、連絡を取るだけで年単位の時間がかかることもあります。共有名義の具体的なリスクは空き家の共有名義売却|全員の同意・持分だけの売却・3,000万円控除の要件で詳しく解説しています。

換価分割が向いているかの判定フロー

  1. 相続人の誰かが実家に住み続けたい → はい:代償分割か現物分割を検討
  2. 実家以外に、実家の評価額に見合う預金などがある → はい:現物分割で足りる可能性
  3. 実家を取得したい人が、ほかの兄弟に代償金を払える → はい:代償分割
  4. 上のどれにも当てはまらない(誰も住まない・代償金を払える人がいない) → 換価分割が第一候補
  5. 換価分割にしたうえで、売却益の税金・小規模宅地等の特例・空き家特例への影響を確認してから売る時期を決める
ここまで読んで「うちの場合はどうなる?」と思ったら

相続した家・土地の売却を、片付けから名義変更・売却まで窓口ひとつでご相談いただけます。買取・仲介は提携の宅建業者、登記は提携司法書士が担当します。

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換価分割の流れ|協議書から分配までの6ステップ

換価分割は、次の順番で進めます。ポイントは「先に協議書を作ってから、登記・売却」という順番を崩さないことです。

ステップ やること 主な書類・関係者
1. 相続人と財産の確定 戸籍で相続人を確定し、実家の登記事項証明書・固定資産税の課税明細を取り寄せる 戸籍一式、法定相続情報一覧図(任意)、登記事項証明書
2. 査定で売れる価格を把握 仲介・買取の両方で査定を取り、手取りの見込みを出す 不動産会社(宅建業者)の査定書
3. 遺産分割協議・協議書の作成 換価分割とすること、登記名義、費用の精算方法、分配割合、売れない場合の扱いを決める 遺産分割協議書(全員が署名・実印押印)、全員の印鑑証明書
4. 相続登記 代表者名義または法定相続分での共有名義に相続登記 法務局、司法書士
5. 売却 媒介契約・売買契約・決済・引渡し。家財の片付けや解体が必要なら並行して手配 宅建業者、買主、司法書士(所有権移転登記)
6. 分配と確定申告 費用を差し引いた代金を協議書の割合で振り込み、翌年に各自が確定申告 振込記録、精算書、譲渡所得の内訳書

ステップ4の登記は「代表者名義」か「共有名義」かを選ぶ

亡くなった親の名義のままでは売れません。買主へ名義を移す前に、いったん相続人側へ相続登記をする必要があります。なお、2024年4月から始まった相続登記の義務化で新設された「相続人申告登記」は、義務を果たしたとみなされる簡易な手続ですが、法務省は「相続した不動産を売却したり、抵当権の設定をしたりするような場合には相続登記をする必要がある」と明記しています(法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」)。換価分割では、相続人申告登記ではなく通常の相続登記が必要です。

比較項目 代表者名義(単独登記) 法定相続分の共有名義(共同登記)
登記の中身 相続人の1人(例:長男)に相続を原因として登記 相続人全員を法定相続分で共有者として登記
媒介契約・売買契約の署名 代表者1人 共有者全員(委任状による代理も可)
決済日の立ち会い・本人確認 代表者のみ 全員分の本人確認が必要
協議書の書き方 「換価のための便宜上の名義」であることを明記する必要が高い 取得割合と換価する旨を記載
固定資産税の通知 代表者に届く(精算方法を決めておく) 代表者(共有者の1人)に届く
主なリスク 代表者による使い込み・分配の遅れ 1人でも非協力・連絡不通になると売れない
向いているケース 兄弟に信頼関係がある、遠方の兄弟が多い 代表者に任せるのが不安、分配割合が法定相続分どおり

兄弟の数が多い、遠方に住んでいる、高齢で何度も手続きに出向けない人がいる場合は、代表者名義の方が売却はずっと楽になります。代表者に任せきりが不安なら、協議書で「売却価格の最低ライン」「分配期限」「精算書の開示」を決めておけば歯止めになります。

なお、遺産分割をしないまま法定相続分での共有登記をするだけなら、相続人の1人からでも申請できます(共有物の保存行為。民法252条5項)。ただ、換価分割ではその後の売却に全員の関与が必要になるため、協議書を作ってから登記する流れの方が二度手間になりません。登記の具体的な手続きや費用は相続登記の費用と自分でやる方法、提携司法書士への依頼は相続登記・名義変更の相談をご覧ください。

相続登記の登録免許税

相続による所有権移転登記の登録免許税は、不動産の価額(固定資産税評価額)の1,000分の4です(国税庁 タックスアンサーNo.7191)。代表者名義でも共有名義でも税率は同じです。土地の価額が100万円以下なら、令和9年3月31日までの登記について免税措置もあります。

遺産分割協議書の書き方|贈与税を避ける記載例(全文)

換価分割の協議書でいちばん大事なのは、「売って代金を分ける」という合意そのものを書面に残すことです。これが書かれていないと、代表者が実家を相続し、その後に売却代金の一部を兄弟に「あげた」ように見えてしまいます。

国税庁の質疑応答事例は、共同相続人の1人の名義で相続登記をしたうえで換価し代金を分配したケースについて、「単に換価のための便宜のものであり、その代金が、分割に関する調停の内容に従って実際に分配される場合には、贈与税の課税が問題になることはありません」と回答しています(国税庁 質疑応答事例「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」)。この事例は調停による換価分割のケースですが、協議による換価分割でも、協議書に同じ趣旨を書いておくことが実務の基本です。条件は2つです。

  • 代表者の名義は換価のための便宜であること(協議書に明記)
  • 代金が決めた内容どおりに実際に分配されること(振込記録を残す)

記載例1:代表者名義で売る場合(相続人3人・3分の1ずつ)

遺産分割協議書

被相続人 山田太郎(令和8年3月10日死亡)
最後の本籍 ○○県○○市○○町1番地
最後の住所 ○○県○○市○○町1丁目2番3号

上記被相続人の相続人である山田一郎(以下「甲」という。)、佐藤花子(以下「乙」という。)、山田次郎(以下「丙」という。)は、被相続人の遺産について協議を行い、次のとおり遺産を分割することに合意した。

第1条(換価分割)
次の不動産(以下「本件不動産」という。)は、これを売却して換価し、その代金を分配する方法により分割する。
【土地】所在 ○○市○○町一丁目/地番 2番3/地目 宅地/地積 165.29平方メートル
【建物】所在 ○○市○○町一丁目2番地3/家屋番号 2番3/種類 居宅/構造 木造瓦葺2階建/床面積 1階 66.12平方メートル 2階 49.58平方メートル

第2条(換価のための登記)
本件不動産は、換価手続の便宜上、甲が相続を原因として所有権移転登記を行う。甲は、本件不動産を換価するために名義人となるものであり、本件不動産およびその売却代金について、第4条に定める甲の取得分を超える権利を有しない。

第3条(売却手続)
1 甲は、乙および丙から委任を受け、本件不動産の売却に関する一切の手続(媒介契約・売買契約の締結、代金の受領、引渡し等)を行う。
2 売却価格は金○○○○万円以上とする。これを下回る価格で売却するときは、乙および丙の書面による同意を得る。
3 甲は、令和○年○月○日までに売買契約を締結するよう努める。

第4条(代金の分配)
本件不動産の売却代金から、次の費用を控除した残額を、甲・乙・丙が各3分の1の割合で取得する。
(1)仲介手数料 (2)相続登記および売却に伴う登記の費用 (3)測量費・解体費・家財の片付け費用 (4)売買契約書の印紙代 (5)相続開始から引渡しまでの固定資産税・都市計画税、火災保険料、水道光熱費等の維持管理費 (6)その他売却に直接要した費用
なお、売却により生じる所得税・住民税は、各相続人が自己の取得分に応じてそれぞれ負担する。

第5条(分配の時期と精算)
甲は、売却代金を受領した日から○日以内に、前条の費用の明細および領収書の写しを添えた精算書を乙および丙に交付し、乙および丙の指定する口座に各取得額を振り込む。振込手数料は○○の負担とする。

第6条(売却できない場合)
令和○年○月○日までに売買契約が成立しないときは、甲・乙・丙は、売却価格の見直し、買取業者への売却、または他の分割方法への変更について改めて協議する。

第7条(その他の遺産)
本協議書に記載のない遺産および後日判明した遺産は、甲・乙・丙が法定相続分に応じて取得する。

以上のとおり協議が成立したので、これを証するため本書3通を作成し、各自署名押印のうえ各1通を保有する。

令和○年○月○日
(住所)甲 山田一郎 実印
(住所)乙 佐藤花子 実印
(住所)丙 山田次郎 実印

記載例2:法定相続分の共有名義で売る場合

第1条は記載例1と同じで、第2条以下を次のように変えます。

第2条(換価のための登記)
本件不動産は、甲・乙・丙が各3分の1の持分で相続を原因とする所有権移転登記を行ったうえで売却する。

第3条(売却手続)
本件不動産の売却に関する窓口は甲とする。媒介契約および売買契約は甲・乙・丙の全員が当事者として締結し、乙および丙は必要に応じて甲に委任状を交付する。

第4条(代金の分配)
売却代金から記載例1の第4条と同じ費用を控除した残額を、甲・乙・丙が各3分の1の割合で取得する。

協議書を作るときのチェックリスト

  • 不動産の表示は登記事項証明書のとおり一字一句写したか(住所表記と地番は違うことが多い)
  • 「売却して代金を分配する」という換価分割の合意が書かれているか
  • 代表者名義なら「換価のための便宜上の名義」であることが書かれているか
  • 分配割合(3分の1ずつ等)が明記されているか。法定相続分と違う割合でもよい
  • 代金から差し引く費用の範囲が具体的に書かれているか
  • 譲渡所得税などは各自負担であることが書かれているか
  • 最低売却価格、売却期限、売れない場合の再協議条項があるか
  • 分配期限と精算書の開示方法が決まっているか
  • 全員が署名し実印を押し、印鑑証明書をそろえたか

協議書は相続登記の添付書類にもなるため、登記を司法書士に頼むなら、協議書の作成段階から相談しておくと書き直しを防げます。実家じまいに付随する登記は提携司法書士による相続登記サポートでもご相談いただけます。

換価分割で相続税・贈与税・譲渡所得税はどうなる

換価分割に関係する税金は、主に3つです。どれがいつ、誰にかかるのかを整理します。なお税額の計算や特例の判定は個別事情で変わるため、実際の申告は税理士や税務署にご確認ください。

税金 かかるか 誰が・いつ 換価分割でのポイント
相続税 遺産総額が基礎控除を超えればかかる 各相続人が、死亡を知った日の翌日から10か月以内に申告・納税 財産の価額は相続した時点の時価で評価する(相続税法22条)。売却価格そのものに相続税がかかるわけではない
贈与税 協議書どおりに分配すれば問題にならない - 代表者名義は「換価のための便宜」と明記し、実際に分配する
譲渡所得税(所得税・住民税) 売却益があればかかる 代金を取得した各相続人が、売った翌年に確定申告 空き家特例・取得費加算などの判定も人ごと
登録免許税 相続登記でかかる 登記の申請時 固定資産税評価額の1,000分の4

相続税の申告期限(10か月)は国税庁 タックスアンサーNo.4205で確認できます。実家を売る場面で登場する税金の全体像は実家売却の税金まとめでも場面別に整理しています。

注意:小規模宅地等の特例と「売る時期」

見落とされやすいのが、相続税の小規模宅地等の特例との関係です。親と同居していた相続人が実家の敷地にこの特例を使う場合、「相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつ、その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること」が要件です(国税庁 タックスアンサーNo.4124)。いわゆる「家なき子」の要件でも申告期限までの保有が求められます。配偶者が取得する場合は、この保有要件はありません。

つまり、同居していた子や家なき子がこの特例で相続税を減らす予定なら、申告期限(10か月)より前に売ってしまうと特例が使えなくなる可能性があります。相続税がかかりそうな家庭では、換価分割の売却時期を決める前に税理士へ確認してください。特例の要件は小規模宅地等の特例とはで解説しています。

確定申告は誰がする?譲渡所得は相続分ごとに各自で申告

換価分割で出た売却益の譲渡所得税は、代表者がまとめて払うのではなく、代金を取得した相続人がそれぞれ自分の分を申告します。

根拠は国税庁の質疑応答事例です。換価時までに代金の取得割合を定めていた(分割済みの)場合、「換価代金の取得割合を定めることは、換価遺産の所有割合について換価代金の取得割合と同じ割合とすることを定めることにほかならず」、譲渡所得は「換価遺産の所有割合(=換価代金の取得割合)に応じて申告することになります」とされています(国税庁 質疑応答事例「未分割遺産を換価したことによる譲渡所得の申告とその後分割が確定したことによる更正の請求、修正申告等」)。

パターン 譲渡所得を申告する割合 後から割合を変えられるか
協議書で取得割合を決めてから売った 協議書で決めた取得割合 -
協議前に売り、法定相続分で代金を分けた 法定相続分 -
協議前に売り、代金の分け方を後で決める 原則、法定相続分 確定申告期限までに代金を分割し、全員がその割合で申告すれば認められる。期限後に分割しても更正の請求はできない

表の3行目が落とし穴です。協議がまとまる前に売ると、あとで「長男が多めに取る」と決めても、税務上は法定相続分で売ったことになります。協議書で割合を決めてから売るのが安全です。

申告の時期と税率

確定申告は、売った年の翌年2月16日から3月15日までが原則です(国税庁 タックスアンサーNo.2020)。譲渡所得は「売却代金-(取得費+譲渡費用)-特別控除」で計算し、税率は所有期間で変わります。相続した不動産の所有期間は、原則として亡くなった親が取得した日から数えます(国税庁 タックスアンサーNo.3202)。

区分 所有期間(売った年の1月1日時点) 所得税 住民税
長期譲渡所得 5年超 15%(+復興特別所得税=所得税額×2.1%) 5%
短期譲渡所得 5年以下 30%(+復興特別所得税=所得税額×2.1%) 9%

出典:国税庁 タックスアンサーNo.3208、No.3211。親が長く住んでいた実家なら、ほとんどが長期譲渡所得です。取得費が分からない場合は、売却代金の5%を取得費にできます(国税庁 タックスアンサーNo.3258)。売却益が出ず、特例も使わないなら申告不要なケースもありますが、特例を使う場合は申告が要件です。申告書の書き方や必要書類は実家売却の確定申告|必要書類・期限・空き家の3,000万円控除にまとめています。

特例も人ごとに判定する

換価分割で使えるかどうかを検討したい特例は、主に次の3つです。どれも相続人1人ずつ要件を見ます。

特例 主な要件 換価分割での注意点
相続空き家の3,000万円特別控除 昭和56年5月31日以前に建築、区分所有でない、相続開始直前に親以外に住んでいた人がいない、売却代金1億円以下、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る、令和9年12月31日までの売却 家屋と敷地を相続で取得した相続人が3人以上なら1人あたり上限2,000万円(令和6年1月1日以後の譲渡)。1億円の判定は他の相続人が売った分も合計。取得費加算とは併用不可
マイホームの3,000万円特別控除 売った人自身が住んでいる(住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合も可)、親族など特別の関係がある人に売らない 親と同居していた相続人だけが対象になりうる。同居者がいると上の空き家特例は全員使えない
取得費加算の特例 その相続人に相続税が課税されている、相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売る 納めた相続税の一部を取得費に加算。相続税がかからなかった人は使えない

出典:国税庁 タックスアンサーNo.3306、No.3302、No.3267(いずれも令和8年4月1日現在法令等)。

空き家特例の要件(相続人が家屋と敷地の両方を相続で取得していること、市区町村の「被相続人居住用家屋等確認書」など)は細かく、代表者名義で換価分割した場合に代表者以外の相続人がどう扱われるかは、登記や協議書の内容によって確認が必要な点です。特例の適用を前提に売却するなら、売買契約の前に税務署か税理士に確認しておくと安心です。要件の詳細は空き家の3,000万円特別控除(相続空き家特例)とはで解説しています。

税額シミュレーション|特例の有無で手取りはこう変わる

数字で見ると、特例を使えるかどうかの差がよく分かります。以下はタックスアンサーの計算式に当てはめた概算です(復興特別所得税を含み、1円未満・端数は丸めています)。

ケース1:父が1人で住んでいた実家を兄弟3人で換価分割

  • 昭和50年築の木造住宅と敷地。父が1人暮らし、相続人は子3人(各3分の1)。3人とも家屋と敷地を相続で取得した扱いになる前提(代表者名義で登記した場合の扱いは上記のとおり事前確認が必要)
  • 売却代金3,000万円、取得費は不明のため概算取得費150万円(5%)
  • 譲渡費用250万円(仲介手数料・測量費・解体費など)
  • 譲渡所得=3,000万円-150万円-250万円=2,600万円 → 1人あたり約866.7万円
1人あたり 空き家特例なし 空き家特例あり(取得者3人以上のため上限2,000万円)
譲渡所得 約866.7万円 約866.7万円
特別控除 0円 約866.7万円(上限2,000万円の範囲内)
所得税(15%) 約130.0万円 0円
復興特別所得税(所得税×2.1%) 約2.7万円 0円
住民税(5%) 約43.3万円 0円
税金合計 約176万円 0円
3人分の合計 約528万円 0円

特例を使うには、売却時までに耐震基準を満たすか解体する(令和6年1月1日以後の譲渡は、売却後その翌年2月15日までに耐震基準を満たすか取壊しが行われた場合も対象)などの要件と、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日という期限を満たす必要があります。3人それぞれが確定申告をして初めて税金が0円になる点にも注意してください。

ケース2:長男が親と同居していた実家を兄妹2人で換価分割

  • 長男が父と同居しており、売却を機に退去。相続人は長男と長女(各2分の1)
  • 売却代金4,000万円、概算取得費200万円、譲渡費用200万円 → 譲渡所得3,600万円、1人あたり1,800万円
  • 同居者がいたため、空き家特例は2人とも使えない
相続人 使える可能性のある特例 税金の目安
長男(同居) マイホームの3,000万円特別控除 1,800万円-3,000万円→課税所得0円、税金0円
長女(別居) なし(相続税がかかっていれば取得費加算を検討) 長期譲渡所得の場合、1,800万円×20.315%=約365.7万円

同じ実家を売っても、兄妹で税負担が大きく違ってきます。手取りに差が出るのを避けたいなら、分配割合を調整するか、税引き後の手取りで公平になるよう協議で話し合っておく方法もあります。長男が小規模宅地等の特例で相続税を減らす場合は、申告期限まで売れない点も合わせて確認が必要です。譲渡所得の計算方法は実家売却の譲渡所得税の計算方法でさらに詳しく解説しています。

期限から逆算する換価分割のスケジュール

換価分割では、相続・登記・税金の期限が重なります。「いつまでに何をするか」を相続開始日から逆算した表です。

期限(相続開始=親が亡くなった日から) 内容 換価分割での意味
相続開始を知った時から3か月以内 相続放棄・限定承認の期限(民法915条) 借金が多いなら換価分割より先に検討
死亡を知った日の翌日から10か月以内 相続税の申告・納税 売却前でも申告は必要。小規模宅地等の特例を使う同居親族は、この日より前に売ると特例を使えない
不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内 相続登記の申請義務(正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象) 換価分割でも売却前に相続登記をするので、通常はここで満たされる
3年を経過する日の属する年の12月31日 空き家特例の売却期限(令和9年12月31日までの譲渡が対象) 空き家特例を使うなら、協議・登記・売却をこの日までに
相続税の申告期限の翌日以後3年 取得費加算の特例の売却期限 相続税を払った相続人がいる場合に確認
売った翌年の2月16日〜3月15日 譲渡所得の確定申告 各相続人がそれぞれ申告

相続登記の義務(3年・過料)は不動産登記法76条の2・164条と法務省Q&Aで確認できます。空き家特例の期限を狙うなら、売り出しから引渡しまで半年〜1年かかる前提で、遅くとも相続から2年以内には協議書をまとめておくと余裕が持てます。義務化の詳細は相続登記の義務化とは、相続全体の期限は相続手続きの全体スケジュールを参照してください。

兄弟の意見が合わないとき・遠方の兄弟がいるときの進め方

遠方に住む兄弟がいる場合

遺産分割協議は、全員が一堂に会する必要はありません。電話やオンラインで内容を合意し、協議書を郵送で回して各自が署名・実印を押す「持ち回り」の方法でも成立します。遠方の相続人が多いほど、次の工夫で負担を減らせます。

  • 登記は代表者名義にし、媒介契約・売買契約・決済を代表者1人で進められるようにする
  • 協議書に最低売却価格と売却期限を入れ、代表者に売却の判断を任せる範囲を明確にする
  • 査定書・媒介契約書・売買契約書の写しを共有するルールを決めておく
  • 共有名義で売る場合は、決済日に来られない人の分を委任状で代理してもらう段取りを司法書士と事前に確認する

実家が遠方にあり、片付けや現地対応ができないことが売却の足かせになっているケースもよくあります。家財の整理から売却の相談までをまとめて進めたい場合は、実家売却の相談窓口で、提携の宅建業者による査定と片付けの段取りを一緒に組み立てられます。遠方の実家の片付けの進め方は実家の片付けが遠方で進まない人へも参考になります。

協議がまとまらない場合:家庭裁判所の調停・審判

「売るか残すか」「いくらで売るか」で意見が割れて話がまとまらないときは、家庭裁判所の遺産分割調停を申し立てられます。申立ては相手方のうち1人の住所地の家庭裁判所か、当事者が合意で定める家庭裁判所に行い、費用は被相続人1人につき収入印紙1,200円分と郵便切手です(裁判所「遺産分割調停」)。調停が不成立になると、自動的に審判手続に移ります。

審判のために必要があるときは、家庭裁判所が相続人に遺産を競売して換価することを命じられます。相当と認めるときは、相続人の意見を聴いたうえで任意に売却して換価することを命じることもできますが、相続人の中に競売によるべきとの意思を示した人がいるとできません(家事事件手続法194条)。競売は市場で売るより価格が下がりやすいため、裁判所に委ねる前に、仲介と買取の両方の査定額を示して話し合う価値は十分にあります。兄弟間でこじれやすいパターンと予防策は相続で兄弟が揉める典型パターン7つと予防策、共有名義の兄弟で売却を進める具体策は実家売却は兄弟の共有名義でも進められる?で解説しています。

相続人に認知症の人・未成年者・行方不明の人がいる場合

状況 必要になる手続き 根拠
判断能力が不十分な相続人がいる 成年後見人などが本人に代わって協議に参加 民法の成年後見制度
未成年の子と親権者の親がともに相続人 家庭裁判所で特別代理人を選任 民法826条
行方不明の相続人がいる 家庭裁判所で不在者財産管理人を選任 民法25条

これらの手続きには数か月かかることがあり、空き家特例の期限に影響します。該当しそうなら早めに司法書士や弁護士に相談してください。成年後見人が関わる売却は成年後見人は実家を売却できるかで解説しています。

換価分割で実家が売れない場合

換価分割を決めたのに買い手がつかないケースは、地方の実家や再建築不可の土地などで珍しくありません。次の順で打ち手を検討します。

  1. 売り出し価格の見直し:協議書の最低売却価格を全員の合意で下げる
  2. 買取への切り替え:仲介より価格は下がりやすいものの、家財が残ったままや古家付きでも引き取ってもらえることがある。提携の宅建業者の買取は空き家買取の相談窓口から相談できます
  3. 分割方法の変更:協議書の再協議条項に基づき、兄弟の1人が安く取得する代償分割などに切り替える
  4. 手放す制度の検討:建物がある土地は申請できないため、建物を解体したうえでの相続土地国庫帰属制度(要件・負担金あり。法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」)

売れない理由と対処法は空き家を売りたいのに売れない理由と対処法、仲介と買取の違いは空き家の仲介と買取の違い、国庫帰属は相続土地国庫帰属制度は空き家に使える?で詳しく比較しています。代表者名義のまま長く売れずにいると、固定資産税の立替えや管理の負担が代表者に偏り、兄弟関係がぎくしゃくする原因になります。売却期限を決めて、期限が来たら次の手に進むルールを協議書に入れておくことをおすすめします。

換価分割のメリット・デメリット

メリット デメリット
代金を割合どおりに分けられ、評価額の争いが起きにくい 売れるまで分配できず、時間がかかることがある
取得する人に代償金などの自己資金がいらない 売却益があれば各相続人に譲渡所得税・住民税がかかる
相続税の納税資金をつくれる(ただし申告期限までに売れるとは限らない) 仲介手数料・測量・解体・片付けなどの費用がかかる
誰も住まない実家の管理負担・固定資産税から解放される 小規模宅地等の特例を使う同居親族は、申告期限前に売ると特例を失う可能性
共有名義のまま次の世代に問題を持ち越さない 代表者名義では使い込み・分配の遅れのリスクがあり、実家を残したい兄弟の気持ちとも対立しうる

デメリットの多くは、協議書の書き方と売る時期の設計で小さくできます。反対に、次のような場合は換価分割にこだわらなくてよいかもしれません。

  • 兄弟の1人が住み続けたく、代償金を払える → 代償分割の方が売却費用も譲渡所得税もかからない
  • 実家の評価額に見合う預金がある → 現物分割で足りる
  • 相続人が1人だけ → そもそも分割の問題がなく、相続登記をしてから自分で売ればよい

協議書の作成や相続登記は、相続人自身で行うことも可能です。専門家に頼むかどうかは、相続人の数、関係の良し悪し、不動産の数で判断すれば十分です。

換価分割で損をしないための実務チェックリスト

家族会議の前に、印刷して確認に使ってください。

  • 相続人全員を戸籍で確定したか(前婚の子など漏れがないか)
  • 実家の登記事項証明書で、所有者・地番・家屋番号・抵当権の有無を確認したか
  • 仲介と買取の両方で査定を取り、費用を差し引いた手取りを比較したか
  • 相続税がかかるか(基礎控除を超えるか)を確認したか
  • 小規模宅地等の特例を使う人がいるなら、売却を申告期限後にする段取りになっているか
  • 空き家特例の要件(昭和56年5月31日以前の建築・同居者なし・期限・1億円以下)を満たしそうか
  • 代表者名義か共有名義かを決めたか
  • 協議書に換価分割の合意、便宜上の名義、分配割合、費用の範囲、各自の税負担、売却期限、再協議条項を書いたか
  • 家財の片付け・仏壇の供養・解体の要否と費用負担を決めたか
  • 分配は振込で行い、精算書と領収書の写しを全員に共有する段取りになっているか
  • 翌年の確定申告を各自が行うこと、必要書類(売買契約書の写し・精算書など)を全員に配ることを確認したか

家財が残ったままの実家をどう売るかは残置物はそのまま売却できる?、実家じまい全体の段取りは実家じまいの手順7ステップも参考にしてください。

よくある質問

換価分割とは何ですか?
換価分割は、実家などの遺産を売却してお金に換え、その売却代金を相続人で決めた割合に分ける遺産分割の方法です。代償金を払える人がいない場合や、誰も住まない実家を公平に分けたい場合に向いています。売る前に遺産分割協議書で換価分割とすること、登記の名義、分配割合、差し引く費用を決めておくのが基本です。
換価分割は確定申告が必要ですか?
売却益(譲渡所得)が出た場合や特例を使う場合は、代金を受け取った相続人がそれぞれ、売った年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告をします。国税庁の質疑応答事例では、換価時までに取得割合を決めていれば、その取得割合に応じて各自が申告するとされています。代表者がまとめて申告するのではない点に注意してください。空き家の3,000万円控除などの特例は、申告をしないと適用されません。
換価分割のデメリットは?
主なデメリットは、売れるまで分配できず時間がかかること、売却益があると各相続人に所得税・住民税がかかること、仲介手数料や解体・片付けなどの費用がかかることです。また、親と同居していた相続人が小規模宅地等の特例を使う場合、相続税の申告期限(10か月)前に売ると特例を使えなくなります。代表者名義で売る場合は、使い込みや分配の遅れを防ぐ条項を協議書に入れておきましょう。
換価分割で3000万円控除とは?
換価分割で実家を売った場合に使える可能性があるのは、相続空き家の3,000万円特別控除と、マイホームの3,000万円特別控除です。空き家特例は昭和56年5月31日以前に建築され、親が1人で住んでいた家などが対象で、相続人ごとに判定します。令和6年以後の譲渡では、家屋と敷地を相続で取得した相続人が3人以上なら1人あたり上限2,000万円です。親と同居していた相続人はマイホーム特例を使える場合があります。適用の可否は税務署や税理士に確認してください。
換価分割で売れない場合はどうすればいいですか?
まず全員の合意で売り出し価格を見直し、それでも難しければ買取業者への売却を検討します。買取は仲介より価格が下がりやすいものの、古家付きや家財が残ったままでも引き取ってもらえることがあります。協議書に売却期限と再協議条項を入れておけば、兄弟の1人が取得する代償分割への切り替えなども話し合いやすくなります。建物を解体して相続土地国庫帰属制度を使う方法もあります。
換価分割で代表者1人の名義にすると贈与税はかかりますか?
国税庁の質疑応答事例(調停による換価分割の事例)は、1人の名義での相続登記が単に換価のための便宜であり、代金が決めた内容に従って実際に分配される場合、贈与税の課税は問題にならないとしています。遺産分割協議書に換価のための便宜上の名義であることと分配割合を明記し、振込記録を残して実際に分配することが大切です。売却を長く放置したり、決めた割合と違う分配をしたりすると、贈与と見られるリスクが高まります。
換価分割の登記は代表者名義と共有名義のどちらがよいですか?
代表者名義は、媒介契約や売買契約、決済を代表者1人で進められるため、遠方の兄弟が多い場合に向いています。ただし代金を代表者が受け取るため、分配期限や精算書の開示を協議書で決めておく必要があります。共有名義は登記が実態どおりで安心感がある一方、契約のたびに全員の署名や本人確認が必要で、1人でも非協力だと売れません。家族の関係性と手間で選ぶのが現実的です。
兄弟の意見が合わず協議がまとまらない場合、換価分割はできますか?
協議がまとまらないときは、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てられます。費用は被相続人1人につき収入印紙1,200円分と郵便切手です。調停が不成立なら審判に移り、家庭裁判所は必要に応じて遺産の競売や、相続人の意見を聴いたうえでの任意売却による換価を命じることができます(家事事件手続法194条)。競売は価格が下がりやすいため、査定額を示して協議でまとめる努力も重要です。
換価分割の売却代金から差し引ける費用は何ですか?
遺産分割協議書で決めれば、仲介手数料、相続登記や売却に伴う登記費用、測量費、解体費、家財の片付け費用、印紙代、売却までの固定資産税や火災保険料などの維持管理費を売却代金から差し引いて分配できます。一方、譲渡所得にかかる所得税・住民税は各相続人の負担なので、各自で納めるのが一般的です。何を差し引くかを具体的に書いておくと、後の精算で揉めにくくなります。

まとめ

換価分割は、実家を売って代金を分けることで、代償金を払える人がいなくても公平に遺産を分けられる方法です。押さえておきたいポイントを振り返ります。

  • 流れは「相続人・財産の確定 → 査定 → 協議書 → 相続登記 → 売却 → 分配・各自の確定申告」。協議書を先に作る
  • 名義は代表者名義か法定相続分の共有名義。代表者名義なら「換価のための便宜上の名義」と分配割合を協議書に書き、そのとおり分配すれば贈与税は問題にならないとする国税庁の質疑応答事例がある
  • 譲渡所得は代金の取得割合ごとに各自が申告。空き家特例(取得した相続人が3人以上なら1人2,000万円)・マイホーム特例・取得費加算も人ごとの判定
  • 小規模宅地等の特例、空き家特例、取得費加算の期限を逆算して売る時期を決める
  • 意見が合わなければ調停・審判、売れなければ価格見直し・買取・分割方法の変更を検討する

安心実家じまい事務局は、実家の片付けから売却・登記までの段取りをまとめてご相談いただける窓口です。売却の実務(査定・買取・仲介の契約)は提携の宅建業者が、相続登記は提携の司法書士が担当します。兄弟で換価分割を検討していて、まず手取りの見込みを知りたい方は実家売却の相談から、何から手をつけるか整理したい方は実家まるごと診断(無料)からお気軽にどうぞ。

税金についてのご注意
本記事の税金に関する記述は、2026年9月29日時点の国税庁の公表資料と法令にもとづく一般的な説明です。特例が使えるかどうかや個別の税額は、所得や相続の状況によって変わります。個別の税額は税理士にご確認ください(所轄の税務署でも相談できます)。

出典・参考資料(2026年9月29日確認)

読むより、聞いたほうが
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この記事を書いた人

安心実家じまい事務局です。実家の片付けや遺品整理、空き家になった家の処分について、はじめての方にも分かるように記事を書いています。提携している現場の業者や司法書士と一緒に、費用の相場・自治体のごみ出しルール・補助金といった、調べてもなかなか分かりにくいところを一つずつ確かめながらまとめています。「誰に頼めばいいか分からない」という段階のご相談も、LINEやお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
運営は株式会社Sora Capital(東京都渋谷区・安心実家じまい事務局)です。相続・登記・法務に関する記述は、提携の司法書士・行政書士 久留慎一郎が監修しています。税額の計算や申告の判断は、税理士にご確認ください。

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