
久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士
東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。
監修の範囲:相続・登記・法務に関する記述(司法書士・行政書士の業務範囲)。片付け・買取・費用相場などの記述は安心実家じまい事務局が編集しています。監修者プロフィール
税金について:税額の計算や特例を使えるかどうかの判断は税理士の業務で、監修の範囲に含みません。申告の前に、税理士または所轄の税務署でご確認ください。
■経歴
- 1966年鹿児島県生まれ
- 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
- 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
- 2013年司法書士試験合格
- 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
- 2017年司法書士法人コスモ退職
- 2018年事務所開設
- 2021年司法書士法人設立
■得意領域
- 相続登記・相続手続き
- 不動産の名義変更
- 相続放棄
- 簡易裁判所の訴訟代理
この記事の結論
- 解体・大規模改修の前に行うアスベスト事前調査は、法改正により2022年4月から原則すべての工事で義務化され、2023年10月以降は有資格者(建築物石綿含有建材調査者など)による調査でなければ法令上有効な調査と認められません。調査費用の相場は木造戸建て住宅で5万〜20万円程度、延床面積や検体数が増える中規模建物では45万〜100万円程度になることもあります。
- 調査せずに解体・改修を進めると3年以下の懲役または300万円以下の罰金(無資格者による調査の場合は30万円以下の罰金)の対象になり得るほか、工事の一時停止命令や公共工事の指名停止処分を受けることもあります。金額と規模の見込みは、着工前に必ず自治体・労働基準監督署の一次情報で確認してください。
- 迷ったら、片付けてから売るか、そのまま買取に出すか、手取りで比べるのが判断の近道です。アスベスト含有が判明して解体費用が想定より膨らみそうな場合ほど、空き家買取(片付け不要・複数社査定)で「解体せずいくらで売れるか」を先に確認してから、解体するかどうかを決める順番をおすすめします。
- アスベスト調査・除去費用は、家屋を取り壊して土地を譲渡する目的で解体した場合、譲渡所得の計算上「譲渡費用」に算入できる可能性があります(国税庁タックスアンサーNo.3302)。空き家の3,000万円特別控除(同No.3306)の適用可否とあわせて、解体前に税理士へ確認することをおすすめします。
なぜ今「アスベスト事前調査」が重要になっているのか
実家の解体や大規模リフォームを検討し始めたとき、見積書に「アスベスト事前調査費」という項目が入っていて戸惑う方は少なくありません。かつては解体業者の判断に委ねられがちだったアスベスト(石綿)の調査ですが、大気汚染防止法の改正により、2022年4月からは建築物・工作物の解体・改修工事のほぼすべてで、事前調査の実施が法律上の義務になりました。さらに2023年10月以降に着工する工事からは、この事前調査を「建築物石綿含有建材調査者」などの有資格者が行うことが求められています。無資格のまま自己判断や目視だけで済ませた調査は、法令上有効な事前調査として認められません。
背景にあるのは、アスベストが吹き付け材・保温材・外壁材・屋根材など、1956年頃から2006年頃までに建てられた建物の広い範囲で使われていた実態です。アスベストの繊維は非常に細かく、吸い込むと数十年後に中皮腫や肺がんなどを発症するリスクがあるとされ、解体・改修工事で飛散させないための事前確認が社会的な課題になってきました。実家が古い木造住宅であればあるほど、「うちの実家にもアスベストが使われているのでは」という不安を抱く方は多く、事前調査の費用と流れを知っておくことは、解体・売却の資金計画を立てるうえで欠かせない前提知識になっています。とりわけ相続をきっかけに実家じまいを進める場合、遠方に住んでいて建物の状態を細かく把握できていないケースも多く、「解体費用の見積もりを取ったら、想定より高い金額にアスベスト調査・除去費用が含まれていて驚いた」という声も少なくありません。この記事では、調査の義務化の内容、費用相場、罰則、補助金、そして解体以外の選択肢(買取・有料引き取り)まで、実家の解体を検討する段階で確認しておきたい情報を一次情報にもとづいて整理します。
アスベスト事前調査とは|根拠法令と義務化の内容
アスベスト事前調査は、大きく分けて大気汚染防止法(環境省所管)と石綿障害予防規則(石綿則)(厚生労働省所管、労働安全衛生法に基づく省令)の二つの法令で定められています。大気汚染防止法は近隣住民や大気環境への飛散防止の観点から、石綿則は工事に従事する作業員の健康被害防止の観点から、それぞれ事前調査・記録の作成・保存を義務付けています。両者は目的が異なりますが、実務上は同じ調査結果を両方の法令の要件を満たす形でまとめて実施するのが一般的です。
調査の対象となるのは、建築物の解体・改修工事だけでなく、工作物(煙突・貯水槽・ボイラーなど)の解体・改修工事も含まれます。調査は「書面調査」(設計図書・建築確認台帳などで建材の使用状況を確認する)と「現地調査(目視調査)」を組み合わせて行い、図面や目視だけでは判断がつかない建材については、サンプルを採取して分析機関で「含有の有無」を調べる「分析調査」を行います。2006年9月1日以降に着工した建物は、アスベストの製造・使用が原則禁止された後の建築にあたるため、着工日を証明する書類(確認済証など)があれば現地調査・分析調査を省略できる場合があります。実家の建築確認済証や登記事項証明書に記載された新築年月日は、この判断の起点になるため、解体・改修を検討し始めた段階で早めに確認しておくと調査費用を抑えられることがあります。
事前調査結果の報告義務がある工事規模
事前調査そのものはすべての解体・改修工事で必要ですが、調査結果を労働基準監督署・都道府県等へ電子システムで報告する義務が生じるのは、一定規模以上の工事に限られます。目安は次の通りです。
| 工事の種類 | 報告義務が生じる規模の目安 |
|---|---|
| 建築物の解体工事 | 解体対象部分の床面積の合計が80平方メートル以上 |
| 建築物の改修工事 | 請負金額の合計が100万円(税込)以上 |
| 工作物の解体・改修工事 | 請負金額の合計が100万円(税込)以上(一部の工作物は規模基準が別途定められる) |
実家の木造戸建て住宅を解体する場合、延床面積が80平方メートル(約24坪)を超えるケースが多いため、多くの実家解体は報告義務の対象になると考えておくのが安全です。報告は解体業者が代行することが一般的ですが、報告内容や調査結果の記録は施主(発注者)側も保管しておくことをおすすめします。後述する売却時の税務申告や、補助金申請の添付書類として必要になることがあるためです。
「解体して売る」「そのまま売る」で手取りがどう変わるか、写真を送るだけで概算をお出しします。
アスベスト事前調査の費用相場|内訳と建物規模別の目安
調査費用は「書面調査」「現地調査(目視)」「分析調査(検体採取・分析)」の3つの要素で構成されます。建物の延床面積が大きく、使われている建材の種類が多いほど採取する検体数が増え、費用も上がります。一般的な費用の内訳は次の通りです。
| 調査項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| 書面調査(図面・建築確認台帳の確認) | 2万〜5万円 |
| 現地調査・目視調査 | 2万〜5万円 |
| 分析調査(1検体あたり) | 1万5,000円〜5万円 |
| 報告書作成・電子報告手続き | 1万〜3万円程度(業者の見積もりに含まれることが多い) |
これらを合計した総額の目安は、建物の規模によって次のように変わります。
| 建物の規模・用途 | 採取検体数の目安 | 調査費用総額の目安 |
|---|---|---|
| 木造戸建て住宅(延床80㎡前後) | 1〜4検体程度 | 5万〜20万円 |
| 鉄骨造アパート・小規模店舗(延床150㎡前後) | 10〜28検体程度 | 45万〜100万円 |
| 大規模なビル・工場 | 数十〜百検体以上 | 数百万円規模になることもある |
一般的な実家(木造戸建て)であれば、調査費用単体では5万〜20万円程度に収まることが多いですが、増改築を繰り返している建物や、離れ・物置・車庫など付属建物が複数ある場合は、その分だけ調査対象と検体数が増え、費用が上振れする傾向があります。見積もりを取る際は「調査対象の建物・付属棟をすべて含んだ金額か」を必ず確認してください。付属棟を見落として調査すると、着工直前になって追加調査が必要になり、工期全体が遅れる原因にもなります。
分析調査を省略できるケースもある
前述の通り、2006年9月1日以降に着工した建物で、着工日を証明する書類(確認済証・検査済証など)が確認できる場合は、現地調査・分析調査を省略し、書面調査のみで「アスベストなし」と判定できることがあります。この場合、調査費用は書面調査分の2万〜5万円程度に抑えられます。実家の建築確認済証が見当たらない場合でも、建築確認台帳は自治体の建築指導課で閲覧・証明書の交付を受けられることがあるため、解体業者に依頼する前に一度、建築時期の裏付け資料が残っていないか確認しておくと、無駄な分析費用を避けられる場合があります。
調査を行わないとどうなるか|罰則と行政処分
事前調査を実施せずに解体・改修工事を行った場合や、無資格者が調査を行った場合には、法令上の罰則が定められています。実際の適用は個々の事案によりますが、主な罰則の内容は次の通りです。
| 違反行為 | 罰則の目安 |
|---|---|
| 事前調査を実施せずに解体・改修工事を行った場合 | 3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金(法人には両罰規定あり) |
| 無資格者が事前調査を実施した場合 | 事業者に対して30万円以下の罰金 |
| 一定規模の工事で結果を報告しなかった場合 | 6か月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金 |
罰則以外にも、都道府県・労働基準監督署による工事の一時停止命令や、公共工事の入札に参加する業者であれば指名停止処分を受けることがあります。工事が止まれば、その分だけ解体・売却のスケジュール全体が遅れ、余計な諸経費(重機のリース延長料、仮設足場の追加日数分の費用など)がかさむことにもつながります。「調査費用を節約したつもりが、結果的に工期の遅延や罰則でより多くの費用がかかる」という事態を避けるためにも、事前調査は解体業者選びの初期段階で必ず内訳として確認することが重要です。
アスベスト補助金制度|国と自治体の支援
アスベストの事前調査・分析、そして含有が判明した場合の除去工事には、国や自治体による補助制度が用意されていることがあります。国土交通省の社会資本整備総合交付金や厚生労働省の関連事業を財源に、実際の運用は市区町村がそれぞれの要綱で行っているため、制度の有無・補助額・対象要件は自治体ごとに異なります。
代表的な制度として、吹き付けアスベスト等が使用されているおそれのある建物を対象に、分析調査費用に対して最大25万円/棟程度を補助する制度を設けている自治体があります。実際の補助額・補助率は自治体によって差があり、たとえば分析費用の全額(1検体あたり数万円を上限)を補助する制度や、調査費用全体の一部を補助率1/2〜2/3程度で補助する制度など、内容はさまざまです。神奈川県のように、県内の複数の市区町村がそれぞれ独自のアスベスト含有調査補助制度を設けている地域もあるため、神奈川県の空き家買取を検討している場合も、解体前に一度、物件所在地の環境部門・建築部門の窓口へ補助制度の有無を確認することをおすすめします。
補助金の多くは、調査・除去工事の契約前に交付申請を行うことが条件になっている点に注意が必要です。空き家の解体費用補助金と同様、契約・着工後に判明した補助制度は対象外となるケースがほとんどです。解体業者に見積もりを依頼する段階で、あわせて自治体の補助金窓口にも連絡し、申請の順番を誤らないようにしてください。
アスベスト事前調査から報告までの流れ
実際の調査は、次のような流れで進みます。着工予定日から逆算して、全体で1〜2週間程度の余裕を見ておくと安心です。解体業者への相談・見積もり依頼と同時に調査を依頼すれば、結果が出た段階でそのまま除去費用を含めた最終見積もりに進めるため、二度手間を避けられます。
- 書面調査:設計図書・建築確認台帳・過去の改修履歴を確認し、アスベスト含有の可能性がある建材を洗い出す(1〜2日程度)
- 現地目視調査:有資格者が現地を訪れ、書面調査で特定した箇所や、図面にない増改築部分を目視で確認する(半日〜1日程度)
- サンプリング・分析調査:含有の判断がつかない建材からサンプルを採取し、分析機関で検査する(通常3〜7日、特急対応で1〜2日程度)
- 調査結果報告書の作成:調査結果をまとめた報告書を作成する
- 電子報告システムへの登録:一定規模以上の工事は、労働基準監督署・都道府県への電子報告を行う(1〜3日程度)
- 解体・改修工事の実施:含有が確認された建材がある場合は、レベルに応じた養生・除去作業を経てから解体を進める
アスベスト含有が判明した場合、除去作業の分だけ工期が延びます。特に吹き付け材(レベル1)が使われていた場合は、専用の隔離養生や集じん・排気装置の設置が必要になり、通常の解体工事より着工までの準備期間が長くなる点も、資金計画とあわせてスケジュールに織り込んでおく必要があります。
アスベスト含有が判明した場合の除去費用|レベル別の相場
事前調査でアスベスト含有が確認されると、解体・改修工事全体の費用に、除去・処理費用が上乗せされます。アスベスト含有建材は、飛散のしやすさに応じて「レベル1(発じん性が最も高い)」から「レベル3(発じん性が比較的低い)」まで区分されており、レベルによって必要な養生・除去方法、費用の水準が大きく異なります。
| レベル | 該当する建材の例 | 除去費用の目安(1㎡あたり) |
|---|---|---|
| レベル1 | 吹き付けアスベスト(耐火被覆材・断熱材など) | 1万5,000円〜8万円 |
| レベル2 | 保温材・断熱材・耐火被覆材(吹き付け以外) | 1万〜4万円程度 |
| レベル3 | スレート・成形板・ビニル床タイルなど | 1万〜2万円程度(成形板の張り替え等で10万〜20万円/㎡規模になる例もある) |
実家の多くは、屋根材や外壁材にレベル3の成形板(スレート瓦など)が使われているケースが中心ですが、増改築の履歴によっては、給湯設備の配管保温材などにレベル2の建材が使われていることもあります。除去費用は使用面積・箇所数によって総額が大きく変わるため、事前調査の結果が出た段階で、解体業者から除去費用を含めた改めての見積もりを取ることが欠かせません。
解体費用全体に占めるアスベスト対応費用の位置づけ
木造30坪の実家を解体する場合の本体解体費用は、坪単価3万〜5万円で90万〜150万円程度が相場とされていますが、アスベスト含有が判明すると、これに調査費用5万〜20万円、含有箇所の除去費用(数万円〜数十万円、レベル1相当の広範囲な吹き付け材があれば百万円単位になることもある)が加わります。見積もりを比較する際は、「解体費用一式」ではなく、本体解体費・付帯工事費・残置物処分費・アスベスト調査費・除去費を項目ごとに分けて提示してもらい、複数社で比較することが、想定外の追加費用を避けるポイントです。
信頼できる調査・解体業者の選び方|見積書のチェックポイント
アスベスト事前調査と解体工事は、同じ業者が一括して請け負うことが多い一方、調査だけを専門の分析会社に発注し、解体は別の業者が行う体制を取っているケースもあります。どちらの体制でも、契約前に次の点を確認しておくと、費用面・法令面でのトラブルを避けやすくなります。
| 確認項目 | チェックポイント |
|---|---|
| 調査者の資格 | 「建築物石綿含有建材調査者」等の有資格者が調査を行うか、資格者証の提示を求められるか |
| 分析機関の精度管理 | 分析を行う機関が精度管理事業に参加している、または信頼できる第三者機関であるか |
| 見積もりの内訳 | 書面調査費・現地調査費・分析調査費(検体数)・報告書作成費が項目ごとに分かれているか |
| 付属棟の含有有無 | 離れ・物置・車庫・塀など、母屋以外の建物・工作物も調査対象に含まれているか |
| 電子報告の代行 | 一定規模以上の工事で必要な電子報告手続きが、見積もりに含まれているか |
| 除去業者の許可・届出 | 含有が判明した場合の除去工事を行う業者が、必要な許可・届出(特定粉じん排出等作業の実施届など)を備えているか |
| 産業廃棄物の処分ルート | アスベスト廃棄物の処分先(特別管理産業廃棄物処分業の許可を持つ施設か)が明示されているか |
| 工期への影響 | 調査から報告、除去作業までを含めた全体の工期が明記されているか |
特に見落とされやすいのが「分析機関の精度管理」です。分析の精度が低い機関に依頼すると、本来は含有ありと判定されるべき建材が「含有なし」と誤って判定され、後から近隣住民や労働基準監督署から指摘を受けるリスクがあります。逆に、必要以上に慎重な判定で検体数を水増しされ、調査費用だけが不必要に膨らむケースも報告されています。見積もりを比較する際は、金額の安さだけでなく、調査者の資格と分析機関の実績もあわせて確認することをおすすめします。また、調査結果の報告書は、解体後の建物滅失登記や、将来の税務申告(譲渡費用の算入)の際に必要になることがあるため、工事完了後も紛失しないよう保管しておいてください。
解体して売る・そのまま買取・有料引き取りの3択比較
アスベスト含有が判明し、解体費用が想定より膨らみそうだと分かったとき、「それでも解体して更地で売るべきか」で立ち止まる方は少なくありません。判断は「解体して更地で売った場合の手取り」と「古家付きのまま買取に出した場合の手取り」を並べて比べるのが確実です。安心実家じまい事務局は宅建業者ではないため、当事務局自身が買主として買い取ることはありません。空き家買取や実家の売却では、提携する宅建業者・仲介会社が買取・仲介の査定と契約実務を担い、当事務局は複数社への一括見積もりの窓口と、売却前の片付け・仕分けの手配を担当します。
| 選択肢 | 費用・調査の目安 | 向いているケース |
|---|---|---|
| アスベスト調査・除去のうえ解体して更地で売却(仲介) | 調査費5万〜20万円+除去費(含有箇所に応じて数万〜数百万円)+本体解体費90万〜240万円 | 更地の需要が高いエリア/空き家の3,000万円特別控除など税制優遇を使いたい場合 |
| 片付けのみ済ませ古家付きのまま買取 | 解体・調査費用ゼロ+片付け費用のみ。買取価格は解体・調査・除去費用相当分が差し引かれることが多い | アスベスト対応費用を先に用意できない/早期に現金化したい/レベル1相当の広範囲な吹き付け材があり除去費用が高額になりそうな場合 |
| 有料での引き取り(買主が解体費用を負担する形での譲渡) | 売主側の持ち出しはほぼなし。譲渡額はゼロまたはマイナス(解体・調査費相当を売主が負担する契約)になることもある | 買い手がつかない老朽家屋で、アスベスト対応も含めたこれ以上の負担を避けたい場合 |
特にアスベスト含有が疑われる築古の実家では、「解体して更地にすれば必ず高く売れる」とは限りません。除去費用を差し引いた手取り額が、古家付きのまま買取に出した査定額を下回ることもあります。まずは空き家買取で「アスベスト調査を行わず、今のままいくらで売れるか」の概算査定を取ってから、解体・調査費用の見積もりと比較する順番をおすすめします。
片付け・残置物の処理はアスベスト調査の前後どちらが良いか
家財が残ったまま解体を依頼すると、解体業者が産業廃棄物として処分することになり、一般的な戸建て1軒分で10万〜30万円程度の追加費用がかかることがあります。アスベスト事前調査自体は、家財が残っていても実施できますが、天井裏・床下・屋根裏など建材の確認が必要な箇所に物が積まれていると、目視調査に時間がかかったり、追加の立ち会いが必要になったりすることがあります。可能であれば、実家じまい代行や遺品整理で先に家財を片付けてから調査に入ると、調査そのものがスムーズに進み、仏壇・位牌・思い出の品を確実に取り分けたうえで、解体の判断に進むことができます。遠方に住んでいて立ち会いが難しい場合も、鍵を預かって片付けから調査の立ち会いまで代行できる窓口を選ぶと、実家に何度も足を運ぶ負担を減らせます。
アスベスト調査費用は税務上どう扱われるか
相続した空き家を売却する際、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(国税庁タックスアンサーNo.3306)は、2027年12月31日までの譲渡が対象で、昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された家屋を解体して更地で売却することなどが要件の一つです。この特例の適用を検討している場合、アスベスト調査・除去にかかった費用も含めた解体費用の全体像を把握しておく必要があります。
また、家屋を取り壊してから土地を譲渡する目的で解体した場合の取壊し費用(これに付随するアスベスト調査・除去費用を含む)は、譲渡所得の計算上「譲渡費用」として売却代金から差し引ける場合があるとされています。取得費の取扱いを含む具体的な計算方法は、国税庁タックスアンサーNo.3302で解説されています。アスベスト調査・除去費用を譲渡費用に算入できるかどうかは個々の事情によって判断が分かれるため、解体前に税理士または税務署へ確認しておくことを強くおすすめします。確認できない数字を見切り発車で試算すると、確定申告の段階で慌てることになりかねません。
相続登記が済んでいないと調査・解体の契約も進めにくい
2024年4月1日から相続登記が義務化され、不動産を相続したことを知った日から3年以内に登記をしないと、10万円以下の過料の対象になります(法務局)。アスベスト事前調査そのものは所有者でなくても依頼できる場合がありますが、解体工事の契約や、補助金の交付申請では、建物・土地の名義人が申請者・契約者と一致している必要があります。相続人が複数いて遺産分割協議がまとまっていない場合は、実家の解体・売却を進める前に、まず名義がどうなっているかを法務局で確認しておくことが、遠回りに見えて一番の近道になります。
放置した場合のリスクと管理不全空家等の指定
総務省の令和5年(2023年)住宅・土地統計調査によると、全国の空き家数は899.5万戸で、総住宅数に占める空き家率は13.8%と過去最高を更新しました。相続した実家を「アスベストが心配だから」と調査も解体もせず放置してしまうと、老朽化が進み、国土交通省が所管する空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)に基づく「管理不全空家等」「特定空家等」に指定されるリスクが高まります。指定を受けて自治体の勧告に従わない場合、住宅用地の特例が解除され、固定資産税が上がることもあります。アスベストへの不安を理由に判断を先送りにすること自体は誤りではありませんが、まず事前調査を行って「含有の有無」「除去費用の見込み」をはっきりさせることが、放置期間を短くし、次の判断(解体するか、片付けだけして売るか)に進む最短ルートになります。
解体後に必要な手続き|建物滅失登記とマニフェストの保管
アスベスト対応を含めた解体工事が完了したら、忘れてはならないのが「建物滅失登記」です。建物を取り壊した場合、取り壊した日から1か月以内に法務局へ建物滅失登記を申請する義務があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。解体業者から発行される「取壊し証明書」「工事完了引渡証明書」は、この登記の添付書類として必要になるため、解体後は必ず受け取り、大切に保管してください。
アスベスト含有建材が除去された場合は、あわせて「産業廃棄物管理票(マニフェスト)」の写しも保管しておくことをおすすめします。アスベスト廃棄物は特別管理産業廃棄物に区分され、排出から最終処分までの流れをマニフェストで追跡する仕組みになっています。マニフェストの写しは、後日「適正に処分されたか」を確認したいとき、あるいは将来的に隣接地の権利関係や境界を巡るやり取りが生じたときの記録としても役立ちます。建物滅失登記が完了すると法務局から自治体に通知される仕組みもありますが、自治体によっては別途「家屋滅失届」の提出を求めることがあるため、解体後は法務局への登記とあわせて、自治体の資産税課(固定資産税担当)にも確認しておくと安心です。これらの手続きを済ませて初めて、翌年度の固定資産税が更地としての評価額に切り替わります。
ケース別に見るアスベスト調査費用の考え方
ケース1:築50年以上の木造実家で、吹き付け材の使用が疑われる場合
1970年代に建てられた木造2階建ての実家で、天井裏に吹き付け材のような建材が見える場合。事前調査(書面+現地+分析2〜3検体)で15万円程度、分析の結果レベル1の吹き付けアスベストが確認されると、除去費用だけで数十万〜百万円規模になることもあります。この場合、除去費用を含めた解体総額と、自治体のアスベスト補助制度(分析費用の一部〜最大25万円程度)を適用した場合の自己負担額、そして古家付きのまま買取に出した場合の査定額の3つを並べて比較することをおすすめします。除去費用が高額になりそうな場合ほど、解体を急がず、まず買取査定を取っておく価値があります。
ケース2:2006年以降に増築した部分があり、着工日の証明書類が一部残っている場合
本体は1980年築だが、2010年頃に増築した部分がある実家のケース。増築部分は着工日を証明する確認済証が見つかれば、その部分だけ現地・分析調査を省略できる可能性があります。一方、本体部分は書面調査だけでは判断がつかず、現地調査・分析調査が必要になります。建築確認台帳の閲覧を自治体窓口で行い、増築の履歴を整理してから業者に見積もりを依頼すると、調査費用を必要最小限に抑えられることがあります。
ケース3:アスベスト調査費用がネックで、解体せず買取を選んだ場合
築45年の実家で、事前調査の結果レベル3の成形板(屋根材・外壁材)にアスベスト含有が確認されたケース。除去費用を含めた解体総額の見積もりが200万円を超え、想定していた更地売却額との差額が縮まってしまったため、家財だけ片付けたうえで古家付き土地として買取査定に出したところ、解体・調査費用の負担なしで現金化できた例です。再建築不可物件や、更地価格が伸びにくいエリアでは、こうした比較の結果、買取の方が実質的に有利になることがあります。
ケース4:相続人が複数おり、調査結果を見てから話し合いたい場合
相続人3人のうち意見が分かれ、「解体すべきか」を決めかねているケース。このような場合は、まずアスベスト事前調査だけを先に行い、①含有の有無と除去費用の見込み、②古家付きのままの買取査定額、③調査・除去費用を含めた解体総額と更地の想定売却額、の3つの数字をそろえてから相続人全員で話し合う進め方が現実的です。感情的な対立が起きやすい相続の場面では、「誰かの意見」ではなく「数字」を土台に話し合う方が合意形成が早く進む傾向があります。
アスベスト調査費用の資金計画|補助金は精算払いが基本
自治体のアスベスト調査・除去補助金の多くは、費用を一旦全額自己負担で支払い、工事完了後に実績報告を行ってから補助額が振り込まれる「精算払い」の制度です。解体業者への支払いが先、補助金の入金は後という資金の流れになる点を見落とさないようにしてください。手元資金に不安がある場合、次のような選択肢もあわせて検討する価値があります。
- 金融機関の空き家解体・除却ローン:一部の地方銀行・信用金庫では、空き家の解体・除却を目的とした専用ローン商品を用意していることがあります。アスベスト調査・除去費用を含めて借り入れできるか、居住地の金融機関に相談してみる価値があります
- 相続財産からの支出:相続財産に現金・預貯金がある場合、遺産分割協議で調査・解体費用を相続財産から支出することを取り決めておく方法もあります。相続人間での費用負担割合を事前に書面(簡単なメモやメールで可)で合意しておくと、後から「言った・言わない」のトラブルを避けられます
- 売却代金からの精算:解体後すぐに売却する予定がある場合、決済時に受け取る売却代金から調査・解体費用を精算する形にできないか、仲介会社・買主側と交渉できることもあります
いずれの方法を選ぶ場合も、調査・除去費用の見込み額と補助金の入金タイミングのずれを踏まえ、無理のない資金計画を立てることが重要です。
アスベスト事前調査を依頼する前の実務チェックリスト【印刷して使える】
- □ 建物の建築年月日(1981年より前か後か、2006年9月より前か後か)を建築確認済証・登記事項証明書で確認したか
- □ 増改築の履歴と、その部分の着工日を証明する書類が残っているか確認したか
- □ 依頼する調査業者が「建築物石綿含有建材調査者」等の有資格者か確認したか
- □ 見積もりに書面調査費・現地調査費・分析調査費(検体数)が項目ごとに明記されているか
- □ 離れ・物置・車庫など付属建物も調査対象に含まれているか確認したか
- □ 自治体にアスベスト調査・除去の補助制度があるか、窓口に問い合わせたか
- □ 補助金の交付決定を受ける前に調査・解体業者と契約していないか
- □ 解体工事の床面積が80㎡以上の場合、電子報告の手続きが見積もりに含まれているか
- □ 除去費用が判明した場合の解体総額と、古家付きのまま売った場合の査定額を比較したか
- □ アスベスト調査・除去費用を譲渡費用に算入できるか、税理士に確認したか
- □ 相続登記(名義)が済んでいるか、法務局で確認したか
よくある質問
アスベスト事前調査は必ずしなければいけませんか?
アスベスト事前調査の費用はどれくらいかかりますか?
調査をせずに解体するとどうなりますか?
アスベストが見つかった場合、解体費用はどれくらい上がりますか?
アスベスト調査・除去の補助金はありますか?
アスベストが心配な場合、解体せずに売ることはできますか?
アスベスト調査・除去費用は税金の計算に含められますか?
アスベスト事前調査は解体前だけでなく、売却前にもしておくべきですか?
この記事で参照した一次情報
本記事の制度・金額に関する記載は、次の公的機関が公表している一次情報をもとに確認しています。制度は改正されることがあるため、実際に手続きを行う際は必ず最新の内容をご自身でもご確認ください。
- 国税庁タックスアンサーNo.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
- 国税庁タックスアンサーNo.3302「マイホームを売ったときの特例(取得費の取扱い等)」
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」
- 法務局「相続登記の申請義務化」に関する案内
- 総務省「令和5年住宅・土地統計調査」
まとめ
アスベスト事前調査は、2022年4月の法改正でほぼすべての解体・改修工事に義務付けられ、2023年10月以降は有資格者による調査が必須になっています。費用相場は木造戸建て住宅で5万〜20万円程度、含有が判明すればレベルに応じた除去費用(数万円〜百万円単位)が別途かかることもあります。調査を怠ると3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金の対象になり得るほか、工事の遅延や補助金の申請機会を逃すことにもつながります。
解体すべきかどうかは、調査・除去費用を含めた解体総額、自治体の補助制度を使った場合の自己負担額、そして「解体せず古家付きのまま売った場合の手取り」までを並べて比較して初めて判断できます。片付けてから売るか、そのまま買取か、手取りで比べるという判断軸を持っておけば、アスベスト調査の結果に一喜一憂せず、落ち着いて次の一手を選べます。結論を急がず、数字をそろえてから決めることが、後悔のない選択につながります。
安心実家じまい事務局は宅建業者ではないため、当事務局が直接買い取ることはありませんが、片付け・仕分けの手配と、提携する宅建業者への買取・仲介の一括見積もりの窓口を担当しています。「調査費用が心配」「解体すべきか、そのまま売れるか迷っている」という段階でも、まずは無料の概算見積もりからご相談ください。写真を送っていただくだけで、片付け・調査・解体・買取を含めたおおまかな流れと費用感をお伝えできます。
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