
久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士
東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。
監修の範囲:相続・登記・法務に関する記述(司法書士・行政書士の業務範囲)。片付け・買取・費用相場などの記述は安心実家じまい事務局が編集しています。監修者プロフィール
税金について:税額の計算や特例を使えるかどうかの判断は税理士の業務で、監修の範囲に含みません。申告の前に、税理士または所轄の税務署でご確認ください。
■経歴
- 1966年鹿児島県生まれ
- 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
- 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
- 2013年司法書士試験合格
- 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
- 2017年司法書士法人コスモ退職
- 2018年事務所開設
- 2021年司法書士法人設立
■得意領域
- 相続登記・相続手続き
- 不動産の名義変更
- 相続放棄
- 簡易裁判所の訴訟代理
この記事の結論
- リバースモーゲージは実家を担保に老後資金を借り、契約終了時(多くは本人が亡くなったとき)に自宅の売却などで一括返済する仕組みです。毎月は利息のみの負担で済む商品が一般的です。
- 最大のデメリットは「実家が相続財産として残らない」こと。相続人が自宅を残したい場合は、契約前に家族全員で合意しておく必要があります。
- 多くの金融機関で契約時に推定相続人全員の同意を求められます。きょうだいの誰か一人でも反対すると利用できないことがあります。
- 自宅の売却代金で完済できない場合、「リコース型」は相続人に残債の返済義務が生じ、「ノンリコース型」は原則生じません。契約時にどちらの型か必ず確認してください。
- 「自分の実家の場合どうなるか」を判断する材料として、本記事にケース別シミュレーションと比較表・チェックリストを用意しました。印刷してご家族との話し合いにお使いください。
リバースモーゲージとは?実家を担保にお金を借りる仕組み
リバースモーゲージとは、持ち家(実家)を担保に金融機関からお金を借り、契約者本人が亡くなったとき、あるいは契約で定めた期限が来たときに、自宅の売却や相続人の自己資金によって借入金を一括返済する仕組みの金融商品です。一般的な住宅ローンが「先にお金を受け取り、毎月少しずつ返していく」仕組みなのに対し、リバースモーゲージは「先にお金を受け取り、最後にまとめて返す」という逆(リバース)の構造になっている点が名前の由来です。
多くの商品では、生存中の毎月の支払いは利息のみで、元金の返済は契約終了時まで発生しません。そのため、年金収入が限られる高齢の親世帯でも、自宅に住み続けながら生活資金や介護資金、住宅のリフォーム資金などを確保できる手段として利用されています。実家に住み続けている親の資金繰りを心配するご家族が、売却やリースバックと並べて検討することが多い選択肢の一つです。
「リ・バース60」との違い
リバースモーゲージと混同されやすいのが、住宅金融支援機構と提携する民間金融機関が提供する「リ・バース60」です。リ・バース60は満60歳以上の方を対象とした住宅ローンで、毎月の支払いが利息のみという点はリバースモーゲージと共通していますが、資金使途は住宅の建設・購入・リフォーム・住宅ローンの借換えなど住宅関連資金に限定されています。一方、一般的なリバースモーゲージは、商品によって生活資金や医療・介護資金など使いみちが広いものもあります。住宅金融支援機構によると、リ・バース60の利用者の約99%が、相続人に残債の返済義務が及ばない「ノンリコース型」を選択しています(出典:住宅金融支援機構)。
「実家を担保にお金を借りる」という大枠は共通していても、商品ごとに資金使途・金利タイプ・相続人への影響が異なります。検討する際は、まず「どの商品の、どの契約タイプを比較しているのか」を家族で整理しておくことが、後々の誤解を防ぐ第一歩になります。
リバースモーゲージを使うべきか、売却・解体・保有のどれが得か。実家の状況を診断します。
検討から契約までの一般的な流れ
金融機関や商品によって細部は異なりますが、リバースモーゲージを検討する場合、一般的には次のような流れで進みます。実際に申し込む前のイメージとして参考にしてください。
- 情報収集・相談:複数の金融機関の商品概要を取り寄せ、資金使途・金利タイプ・契約タイプ(リコース型/ノンリコース型)を比較する。
- 家族間での話し合い:推定相続人となる家族に、検討している旨と契約の仕組みを共有し、実家を将来どうしたいかの希望を確認する。
- 事前審査の申し込み:年齢・物件条件・担保評価の目安について、金融機関に事前審査を依頼する。
- 担保評価・本審査:自宅の担保評価が行われ、融資限度額が提示される。推定相続人全員の同意書面を求められることが多い。
- 契約・融資開始:契約内容に同意し、融資が開始される。以後は多くの商品で利息のみの支払いとなる。
- 契約終了時の返済:契約者の死亡または契約期限の到来により、自宅の売却または相続人の自己資金で借入金を返済する。
特に2番目の「家族間での話し合い」を後回しにすると、4番目の同意取得の段階でつまずくことがあります。検討を始めた時点で、できるだけ早く家族に共有しておくことをおすすめします。
検討中に迷ったときの相談先
複数の金融機関の商品を比較していると、「どの商品が自分の実家に合うのか分からない」「家族への説明の仕方に悩む」といった場面が出てきます。契約内容や金利に関する説明は、まず申し込みを検討している金融機関の窓口に確認するのが基本です。契約自体への強い勧誘を感じた場合や、契約内容に疑問を感じた場合は、最寄りの消費生活センターに相談する方法もあります。相続や登記、相続放棄など法律面の判断が絡む場合は、司法書士や弁護士への相談が適しています。実家じまい全体の方向性(売却・賃貸・保有・解体のどれが合うか)から考え直したい場合は、無料診断も活用できます。
リバースモーゲージ・リ・バース60・リースバック・売却の比較表
実家の資金活用・処分方法として比較されることが多い4つの方法を整理しました。ご自身・ご家族の状況に当てはめて、目安としてご覧ください。
| 比較項目 | リバースモーゲージ | リ・バース60 | リースバック | 売却(通常) |
|---|---|---|---|---|
| 所有権 | 原則維持 | 原則維持 | 売却により手放す | 手放す |
| 資金使途 | 商品により異なる(生活資金可の商品もある) | 住宅関連資金に限定 | 原則自由 | 原則自由 |
| 毎月の負担 | 利息のみが多い | 利息のみ | 家賃が発生 | 発生しない |
| 元本返済 | 契約終了時に一括 | 契約終了時に一括 | 借入ではないため不要 | 不要 |
| 相続人への影響 | 型により異なる(下記参照) | 約99%がノンリコース型を選択 | 自宅は相続財産として残らない | 自宅は相続財産として残らない |
| 契約・売却時の同意 | 推定相続人全員の同意を求められることが多い | 同様 | 原則本人の判断で可 | 共有名義なら共有者の同意が必要 |
| 向いている人 | 自宅に住み続けながら資金を確保したい人 | 住宅関連の資金ニーズがある60歳以上の人 | 借入を避けてまとまった資金を得たい人 | 実家を使う予定がなく現金化したい人 |
この表からも分かるとおり、「実家に住み続けたいか」「相続人に資産として残したいか」「毎月の支払いを避けたいか」という3つの軸で、向いている方法が変わります。どれが優れているという話ではなく、ご家庭の優先順位に合わせて選ぶ必要があります。
利用できる条件と、知っておきたいメリット
デメリットを正しく理解するためには、まずどのような人が利用でき、どのようなメリットがあるのかを押さえておく必要があります。多くの商品では、契約者の年齢(概ね55歳〜60歳以上)、対象物件(戸建てが中心で、マンションは対象外または評価が厳しくなる金融機関が多い)、担保評価額に応じた融資限度額の設定といった要件があります。細かな年齢・物件要件は金融機関や商品ごとに異なるため、検討する場合は複数の金融機関に条件を確認することをおすすめします。
メリットとしては、まず「自宅に住み続けながら資金を確保できる」ことが挙げられます。売却やリースバックのように転居や生活環境の変化を伴わないため、高齢になってからの引っ越しの負担を避けられます。また、多くの商品で毎月の支払いが利息のみに設計されているため、年金収入が中心の世帯でも、現役時代の住宅ローンのような元金返済の負担なく資金を確保しやすい点も特徴です。資金使途が広い商品であれば、生活費の補填だけでなく、自宅のリフォーム費用、医療・介護費用など、まとまった出費が必要な場面にも対応できます。
一方で、これらのメリットは「将来、実家をどうしたいか」という相続人側の希望と表裏一体の関係にあります。次の章で、特に実家じまいを考えるご家族が確認しておきたいデメリットを整理します。
親の年金・資産状況との組み合わせで考える
リバースモーゲージを検討する多くのケースでは、「年金収入だけでは生活費や介護費用が足りなくなりそう」という不安が出発点になっています。まず確認したいのは、親の年金額、預貯金、他の資産(他の不動産や保険など)を含めた資産全体の状況です。預貯金や他の資産で当面の不足分をまかなえる見通しがあるなら、リバースモーゲージを急いで契約する必要はないかもしれません。反対に、実家以外にほとんど資産がなく、かつ実家を手放す予定もないという場合は、リバースモーゲージが現実的な選択肢になり得ます。資産状況の棚卸しは、リバースモーゲージを検討する前に必ず行っておきたいステップです。
リバースモーゲージのデメリット5つ
メリットだけでなく、契約前に必ず押さえておきたいデメリットを5つに整理しました。特に実家を将来相続する立場のご家族は、1番目と4番目を重点的に確認してください。
①実家が相続財産として残らない可能性がある
最大のデメリットは、実家を相続財産として残せない可能性があることです。契約者が亡くなった後、原則として自宅を売却して借入金を返済するため、「実家は長男に継がせたい」「空き家にせず兄弟で使いたい」といった希望があっても、その通りにならないことがあります。相続人が自己資金で一括返済すれば自宅を残すことも可能ですが、まとまった資金を用意できる家庭は限られます。親の意向だけで契約してしまうと、相続人側が後から「実家を残したかった」と感じるケースがあるため、契約前の家族間の話し合いが欠かせません。
特に、実家が先祖代々の家である場合や、家業・庭・墓など家と一体になった事情がある場合は、「お金の問題」以上に「気持ちの問題」として重くなることがあります。数字の比較だけでなく、実家に対する家族それぞれの思いも含めて話し合う時間を取ることが大切です。
②借入可能額が想定より少ないことがある
融資額は自宅の評価額そのものではなく、その一定割合をもとに設定されるのが一般的です。地方や郊外の物件、築年数が経過した物件、マンションなどは評価が厳しくなりやすく、「自宅があるのだから大きな金額を借りられるはず」という想定より少ない金額しか借りられないことがあります。資金計画を立てる前に、実際にいくら借りられるのかを金融機関に確認することが重要です。
特に、老後資金の計画全体をリバースモーゲージの借入額だけに依存させてしまうと、想定していた金額に届かなかった場合に計画そのものが崩れてしまいます。事前審査の段階で融資可能額の目安を把握し、それでも資金が不足する場合は、他の資産の活用や家族からの支援なども含めて計画を立て直す必要があります。
③金利上昇で利息負担が重くなることがある
多くの商品は変動金利を採用しているため、契約後に金利が上昇すると毎月の利息負担が増える可能性があります。年金収入が中心の高齢の親世帯にとって、月数千円〜1万円台の負担増でも家計への影響は大きくなりやすい点に注意が必要です。
金利タイプには固定金利を選べる商品もありますが、固定金利は一般に当初の金利水準が変動金利より高めに設定される傾向があります。「将来の金利上昇リスクを避けたいか」「当初の負担を抑えたいか」のどちらを優先するかで、適した金利タイプが変わります。年金収入のみで生活している、あるいは今後大きな収入増が見込めない家庭では、金利上昇時のシミュレーションを事前に行っておくことをおすすめします。
④不動産の評価額が下がると融資条件が変わることがある
自宅の評価額が融資条件の前提になっているため、地価の変動や建物の老朽化などで評価額が下がると、融資限度額が引き下げられたり、新たな借入ができなくなったりすることがあります。
評価額の見直しは、商品によって一定期間ごと(1年〜数年に1回程度)に行われるのが一般的です。見直しのタイミングと、評価額が下がった場合に具体的にどのような対応が取られるのか(融資枠の縮小、追加担保の要求など)は、契約前に必ず確認しておきたいポイントです。
⑤長期入院・施設入所で契約が終了する場合がある
利用者が老人ホームや病院などに長期間入所し、自宅に住まなくなった場合、「居住実態がない」と判断されて契約が終了し、一括返済を求められる可能性があります。将来の介護・入院の可能性も踏まえて検討する必要があります。
手数料・諸費用も事前に確認する
上記5つに加えて、契約時の事務手数料、担保設定にかかる登記費用、場合によっては保証料や保険料など、諸費用が発生する商品もあります。借入額に対して諸費用の割合が大きいと、実質的に使える資金が想定より少なくなることがあります。見積もりの段階で、諸費用まで含めた「実質的に手元に残る金額」を確認しておくことをおすすめします。
相続人への影響と同意の仕組み
「実家じまい」を考えるご家族にとって、最も気になるのがこの章です。リバースモーゲージは契約者本人だけで完結する商品ではなく、相続人全体の事情に関わってきます。
契約時に推定相続人全員の同意が必要なことが多い
多くの金融機関では、契約時に推定相続人全員(子どもなど)の同意を求めています。これは、契約者が亡くなった後に自宅が売却対象となる可能性が高いためです。親としては老後資金を確保するための合理的な判断でも、きょうだいのうち一人でも「実家を残したい」と反対すれば、契約自体が進められないことがあります。検討を始める段階で、早めに家族間で話し合いの場を持つことをおすすめします。
ノンリコース型とリコース型の違い
自宅の売却代金で借入残高を完済できなかった場合の扱いは、契約タイプによって異なります。
- リコース型:売却代金で返済しきれなかった残債について、相続人が返済義務を引き継ぐ場合があります。
- ノンリコース型:売却代金で返済しきれなかった場合でも、原則として相続人に残債の返済義務は及びません。金利はリコース型よりやや高く設定される傾向がありますが、相続人の負担を避けたい場合に選ばれています。
どちらのタイプで契約しているかは、相続人にとって非常に重要な情報です。親がすでに契約している場合は、契約書や金融機関への確認で、どちらのタイプかを早めに把握しておきましょう。
配偶者が住み続けられるかどうかの確認
契約者本人が亡くなった後、配偶者がそのまま実家に住み続けられるかどうかも、見落とされやすい重要な論点です。商品によっては、配偶者を連帯債務者として契約に加える、あるいは配偶者の居住継続に配慮した条件が用意されている場合があります。一方で、こうした配慮がない商品では、契約者本人の死亡によって契約が終了し、配偶者も退去を求められる可能性があります。両親のどちらかがすでに実家に住んでいる、あるいは将来も住み続ける予定がある場合は、「契約者が先に亡くなった場合、配偶者はどうなるのか」を契約前に必ず確認してください。
相続放棄を検討している場合の注意点
親の資産状況によっては、相続人が将来「相続放棄」を検討する場合もあります。相続財産の一部でも処分・使用してしまうと「法定単純承認」とみなされ、その後相続放棄ができなくなることがあります。リバースモーゲージの返済や契約内容に関する対応も、相続財産の処分に関わる可能性があるため、相続放棄を考えている場合は、着手前に司法書士や弁護士へ相談することをおすすめします。
相続税の計算における債務の扱い
国税庁の案内によれば、相続税を計算する際、被相続人が死亡した時点で現に存在し、確実と認められる債務(借入金など)は、相続財産の総額から差し引くことができます(出典:国税庁タックスアンサー No.4126「相続財産から控除できる債務」)。リバースモーゲージの残債も、この一般的な債務控除の考え方に沿って扱われると考えられますが、具体的な金額の計算や、リコース型・ノンリコース型による評価の違いは個々の契約内容によって変わるため、断定的な金額はこの記事では示しません。相続税の申告が必要になりそうな場合は、税理士または最寄りの税務署に確認してください。
なお、リバースモーゲージで受け取るお金は「借入金」であり、贈与ではありません。そのため、親が借り入れた資金を自分の生活費や介護費用として使う分には、通常、贈与税の問題は生じません。一方で、借り入れた資金をそのまま子どもなど他の家族に渡した場合は、別途贈与とみなされ贈与税の対象になる可能性があるため、資金の使いみちについても家族間で確認しておくと安心です。
実家の状況・ご家族の意向をお伺いし、売却・賃貸・保有・解体のどれが合うかを一緒に整理します。
親の判断能力に不安がある場合の注意点
実家じまいを検討するタイミングでは、親がすでに高齢で、判断能力に不安が出てきているケースも少なくありません。リバースモーゲージは契約者本人の意思によって契約する金融商品であるため、本人の判断能力が十分でないと、そもそも契約自体を結べない可能性があります。金融機関によっては、契約時に本人の意思確認を慎重に行う、あるいは成年後見制度の利用状況を確認する場合があります。
すでに成年後見人がついている場合は、後見人が本人の利益のために契約してよいかどうかを慎重に判断する必要があり、家庭裁判所の許可が必要になる場面もあります。親の判断能力に不安を感じ始めた段階では、リバースモーゲージの検討と並行して、今後の財産管理の方針(成年後見、家族信託など)についても、司法書士や弁護士に相談しておくことをおすすめします。判断能力が十分なうちに家族で話し合い、本人の意向を書面やエンディングノートに残しておくことも、後のトラブルを防ぐ一つの方法です。
ケース別に見る「自分の場合どうするか」
リバースモーゲージが向いているかどうかは、家族構成や実家の状況によって変わります。よくある4つのケースに当てはめて考え方を整理します。
ケースA:一人っ子で、将来は実家を自分が相続する予定
相続人が自分一人であれば、同意を取る相手は自分だけです。実家を将来手放す予定がある、あるいはリースバックや売却でも構わないと考えているなら、リバースモーゲージで親の老後資金を確保する選択肢は比較的検討しやすいケースです。一方で「自分の代でも実家に住み続けたい」「空き家にせず活用したい」という希望があるなら、残債の返済方法や、自己資金での完済が可能かを事前にシミュレーションしておく必要があります。
ケースB:きょうだいが複数いて、実家の希望が分かれている
最も慎重な検討が必要なケースです。きょうだいのうち一人でも「実家を残したい」という意向があれば、契約時の同意が得られず進められない可能性があります。逆に、全員が「実家は手放してよい」と考えている場合でも、将来の分配方法(売却後の残余資金をどう分けるかなど)を事前に話し合っておかないと、相続時にトラブルの火種になります。家族会議を開き、同意の有無と将来の分配方針を記録に残しておくことをおすすめします。遠方に住むきょうだいがいる場合は、電話やオンラインでも構わないので、必ず本人の意向を直接確認し、後から「知らなかった」とならないようにしておくことが重要です。
ケースC:親が単独で判断を進めようとしている
親がすでに金融機関と話を進めている、あるいは契約を検討している段階で、子ども世代が後から知るケースもあります。この場合、まず契約内容(リコース型かノンリコース型か、資金使途、融資限度額)を確認し、家族としての意向を早めに伝えることが大切です。金融機関によっては契約前に相続人の同意書面を求めるため、同意する・しないにかかわらず、早い段階で話し合いの場を持つほうが、後のトラブルを避けられます。「反対すると親の資金繰りを困らせてしまうのでは」と感じて言い出しにくい場合もありますが、契約後に実家を残せなくなってから気づくよりも、契約前に懸念点を共有するほうが、結果的に親子双方にとって納得感のある選択につながります。
ケースD:実家をすでに空き家にする方向で検討している
親がすでに施設入所を予定している、あるいは実家を将来空き家にする可能性が高い場合は、リバースモーゲージの「長期入院・施設入所で契約が終了する」というデメリットが直接関わってきます。居住実態がなくなれば契約が終了し、一括返済を求められる可能性があるため、施設入所の予定がある程度見えている場合は、リバースモーゲージよりも売却やリースバックのほうが見通しを立てやすいことがあります。実家の今後の使い道に迷う場合は、売却・賃貸・保有・解体のどれが合うかを無料診断で整理する方法もあります。
契約前に確認したい実務チェックリスト
リバースモーゲージを検討する際に、契約前に確認しておきたい項目を一覧にしました。印刷して、ご家族との話し合いや金融機関への質問リストとしてご活用ください。
| 確認項目 | チェックのポイント |
|---|---|
| 契約タイプ | ノンリコース型かリコース型か。残債が相続人に及ぶ可能性があるか |
| 推定相続人全員の同意 | きょうだいなど全員の意向を事前に確認したか |
| 金利タイプ | 固定か変動か。変動の場合、上昇時の負担増をどこまで想定しているか |
| 融資限度額と評価の見直し | 評価額が下がった場合に融資条件がどう変わるか |
| 資金使途の範囲 | 生活資金・医療介護費など、使える範囲が希望に合っているか |
| 居住継続の条件 | 長期入院・施設入所時に契約が終了する条件を確認したか |
| 配偶者の居住継続 | 契約者が亡くなった後も配偶者が住み続けられる設計か |
| 相続放棄の可能性 | 相続人の誰かが相続放棄を検討している場合、着手前に司法書士・弁護士へ相談したか |
| 実家の登記状況 | 相続登記が済んでいるか。未登記のまま契約できない場合がある |
| 他の選択肢との比較 | リ・バース60、リースバック、売却と比較したうえで判断したか |
このうち特に見落とされやすいのが「実家の登記状況」です。親の名義のままで長年放置されている実家は、相続登記が済んでいないケースも少なくありません。相続登記は2024年4月から義務化されており、正当な理由なく期限内(原則、相続の開始および不動産の取得を知った日から3年以内)に登記をしないと10万円以下の過料の対象になることがあります(出典:法務局)。リバースモーゲージを検討する前提として、まずは実家の登記が現状どうなっているかを確認しておくと、話がスムーズに進みます。詳しくは相続登記の義務化・2027年3月末期限についての解説をご覧ください。
チェックリストの各項目は、1回の面談で全てを確認しきれないことも多くあります。金融機関によっては担当者が変わることもあるため、確認した内容は口頭だけで終わらせず、メールや書面で記録を残しておくと、後から「言った・言わない」の行き違いを防げます。家族で話し合う際も、このチェックリストをそのまま使い、誰がどの項目を確認したかをメモしておくと、話し合いの進捗が分かりやすくなります。
よくある質問
リバースモーゲージを使うと実家は必ず手放すことになりますか?
相続人の一人が反対したら、リバースモーゲージは利用できませんか?
親がリバースモーゲージで借りたお金を、子どもが代わりに返済する義務はありますか?
リバースモーゲージとリースバックはどちらを選ぶべきですか?
マンションに住んでいる場合もリバースモーゲージを利用できますか?
リバースモーゲージを途中で解約したり、一部だけ返済したりできますか?
まとめ
リバースモーゲージは、実家に住み続けながら老後資金を確保できる方法の一つですが、「実家が相続財産として残らない可能性がある」「推定相続人全員の同意が必要になることが多い」という2点は、契約者本人だけでなく、将来実家を相続する家族全体にとって重要な論点です。振り返ります。
- リバースモーゲージは実家を担保に借り、契約終了時に売却などで一括返済する仕組み。毎月は利息のみの負担が一般的
- 最大のデメリットは実家を相続財産として残せない可能性があること。契約前の家族間の合意が欠かせない
- 多くの金融機関で推定相続人全員の同意が必要。きょうだいの意向が分かれている場合は特に慎重な検討を
- 残債が出た場合、リコース型は相続人に返済義務が生じる可能性があり、ノンリコース型は原則生じない
- 相続放棄を検討している場合は、着手前に司法書士や弁護士へ相談する
- 実家の相続登記が済んでいるかどうかも、検討の前提として早めに確認しておく
リバースモーゲージに正解の選び方はありません。親の老後資金の必要性と、相続人側の「実家を残したいか」という気持ちの両方を踏まえ、無理のない方法を選んでいただければ十分です。判断に迷う場合は、一人で抱え込まず、司法書士や税理士、金融機関の担当者など専門家に相談してください。実家の今後の使い道そのものに迷う場合は実家まるごと診断(無料)もあわせてご活用ください。
親世代にとっては「老後の生活を安心させたい」、子世代にとっては「実家や家族関係を大切にしたい」という、どちらも自然な気持ちです。リバースモーゲージを検討する過程は、この2つの気持ちをすり合わせる良いきっかけにもなります。契約を急ぐ前に、一度家族全員で実家の将来について話す時間を作ることが、結果的に一番の安心につながります。
早いこともあります
実家の状況をお伺いし、リバースモーゲージ・売却・賃貸・保有・解体のどれが合うかを一緒に整理します。ご相談・お見積もりは無料です。
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