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擁壁・がけ条例がある実家は売却できない?建て替え制限と買取・仲介の比較【2026年版】

最終更新日:2026年10月18日|監修:司法書士・行政書士 久留慎一郎先生・安心実家じまい事務局

司法書士・行政書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。

監修の範囲:相続・登記・法務に関する記述(司法書士・行政書士の業務範囲)。片付け・買取・費用相場などの記述は安心実家じまい事務局が編集しています。監修者プロフィール

税金について:税額の計算や特例を使えるかどうかの判断は税理士の業務で、監修の範囲に含みません。申告の前に、税理士または所轄の税務署でご確認ください。

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 不動産の名義変更
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理

この記事の結論

  • 擁壁や高低差のある「がけ」付きの実家は、擁壁の高さ・造成年・検査済証の有無で売却の難易度が大きく変わります。まず現状を確認することが先決です。
  • 擁壁が建築基準法・宅地造成等規制法の基準に適合していない場合、建て替えができない「再建築不可」になっている可能性があります。
  • 片付けてから仲介で売るか、そのまま空き家買取(片付け不要・複数社査定)に出すか、手取り額で比較して判断するのが遠回りを避ける近道です。
  • 擁壁の補強・造り直しには一般に数百万円規模の費用がかかるため、自己負担で直すより買取額との比較をおすすめします。
目次

擁壁・がけ条例とは何か。実家の売却にどう影響するか

実家が高低差のある土地に建っていて、敷地の端に石積みやコンクリートの壁(擁壁)がある場合、その擁壁の状態と行政上の扱いが、売却できるかどうかを左右します。まず前提となる制度を整理します。

建築基準法施行令第138条では、高さ2メートルを超える擁壁を新たに築造する場合、工作物として確認申請が必要と定められています。つまり「高さ2メートル超の擁壁=行政の許可・検査を経て造られているはずの構造物」という位置づけです。確認申請を経て完了検査を受けていれば検査済証が交付されますが、古い擁壁ではこの検査済証が見当たらないケースが多く、これが売却時の大きな論点になります。

一方で「がけ条例」は、擁壁そのものの高さではなく、敷地と隣地・道路との高低差に着目した規制です。都道府県や市が建築基準法に基づいて独自に定める条例で、一般的には「高低差2メートル以上・勾配30度以上」の土地部分を「がけ」とみなし、がけの下端・上端からの一定距離(がけの高さの1.5〜2倍程度)の範囲に建築物を建てる際、構造上の安全確認や制限がかかります。名称・基準値は自治体ごとに異なるため、該当するかどうかは必ず物件所在地の役所(建築指導課など)で確認が必要です。

さらに2023年の法改正で、従来の宅地造成等規制法は「宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)」に改められ、2024年から全面施行されています。盛土規制法では、切土は高さ2メートル超、盛土は高さ1メートル超のがけが生じる場合に許可の対象となり、既存の擁壁であっても安全性の確認・改善命令の対象になり得る点が強化されました。相続した実家の擁壁が古い場合、この法改正の対象になっていないかも確認しておく必要があります。

急傾斜地崩壊危険区域に指定されている場合の扱い

擁壁の高さが5メートルを超えるような大規模ながけ地では、「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(急傾斜地法)」に基づき、都道府県知事が「急傾斜地崩壊危険区域」を指定している場合があります。この区域内で新たに擁壁を築造したり、切土・盛土を行う場合は、都道府県知事の許可が必要になります。区域に指定されているかどうかは、物件所在地の都道府県が公表している土砂災害ハザードマップ、または土木事務所・砂防担当課で確認できます。

急傾斜地崩壊危険区域に指定されている実家は、買主側からも「災害リスクが行政によって公式に示されている土地」と見られるため、仲介では価格交渉の対象になりやすく、ハザードマップの説明義務(不動産取引における水害ハザードマップの説明義務化など、近年強化されている開示ルール)とも関わってきます。売却を検討する際は、区域指定の有無を早めに確認し、買取・仲介どちらの方法でも、現状をそのまま開示したうえで進めることが前提になります。

空家法との関係:擁壁を放置すると「管理不全空き家」になるリスク

実家が空き家のまま放置され、擁壁の劣化が進むと、国土交通省が所管する空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)上の「管理不全空き家」に該当する可能性があります。空家法は2023年の改正で、倒壊のおそれがある「特定空家」に至る前の段階でも、放置すれば特定空家になるおそれがある空き家を「管理不全空き家」として自治体が指導・勧告できる仕組みを設けました。勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例(小規模住宅用地の軽減措置)が解除され、固定資産税の負担が重くなる場合があります。

擁壁の劣化・ひび割れを放置したまま空き家状態を続けることは、この管理不全空き家の指導対象になるリスクを高めます。売却を迷っている間も固定資産税や管理の負担は続くため、「補強してから売る」「現況のまま買取に出す」のいずれであっても、判断を先延ばしにしないことが、結果的に負担を抑えることにつながります。

自治体別のがけ条例の基準比較【独自集計】

がけ条例は自治体ごとに内容が異なり、同じ「高低差2メートル」の擁壁でも扱いが変わります。主要自治体の建築安全条例を確認した結果を一覧にしました。実家の所在地に該当する条例を必ず個別に確認してください。

自治体 がけの定義(目安) 制限される範囲(目安)
東京都(建築安全条例) 高さ2mを超える崖で、勾配30度を超えるもの 崖の下端からがけ高(H)の2倍までの範囲は原則建築制限
神奈川県(建築基準条例) 高さ2mを超え、勾配30度を超える崖 崖の上端・下端から一定距離は建築物の構造規制あり
埼玉県(建築基準法施行条例) 高さ2mを超え、勾配30度を超える崖 崖の下端からH×2の範囲は構造審査・補強対象
千葉県(建築基準法施行条例) 高さ2mを超え、勾配30度を超える崖 崖の下端からH×2の範囲は構造審査・補強対象

※上記は各自治体の建築安全条例・施行条例の公表内容をもとにした目安であり、実際の適用可否は擁壁の施工年・検査記録・現況によって個別判断されます。必ず物件所在地の建築指導課・開発審査課に実際の図面を持参して確認してください。たとえば神奈川県内の丘陵地にある実家で、がけ条例の対象に該当し建て替えが難しいと分かった場合は、補強にかかる費用と神奈川県の空き家買取での手取り額を比較してから方針を決める家庭が多く見られます。

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擁壁付きの実家が「売れない」と言われる理由

擁壁やがけ地のある実家の売却相談で、不動産会社から「今のままでは難しい」と言われる理由は、主に次の5つに整理できます。

①再建築不可になっている可能性がある

擁壁の安全性が確認できない、または検査済証がない場合、自治体によっては新築・建て替えの確認申請が許可されないことがあります。買主が「将来建て替えられない土地」と判断すると、住宅ローンが組みづらくなり、購入希望者が大きく減ります。

②擁壁の補強・造り直しに数百万円単位の費用がかかる

擁壁の補強や造り直しの費用は、規模や構造によって大きく異なりますが、一般的な宅地規模(擁壁の長さ10〜20メートル程度)でも100万円台後半〜数百万円、老朽化が進み大規模な造り直しが必要な場合は500万円を超えることもあります。買主がこの費用を見込んで価格交渉をするため、売却価格が下がりやすくなります。

③倒壊時の責任(土地工作物責任)への不安

民法第717条では、擁壁などの土地の工作物に瑕疵(欠陥)があり、それによって他人に損害を与えた場合、占有者・所有者が責任を負うことが定められています。買主は「崖崩れで隣家に被害が出たら所有者責任を負うのでは」という不安を抱きやすく、これも購入をためらう要因になります。

(参考)買主からよく出る質問への備え方

擁壁付きの土地を実際に検討している買主からは「擁壁はいつ造られたものですか」「検査済証はありますか」「過去に補修した記録はありますか」といった質問が必ず出ます。これらにその場で答えられないと、商談が止まってしまうことが多いため、売却を決める前に、分かる範囲で記録を集めておくことをおすすめします。

④がけ条例による建築制限で使える土地の面積が狭くなる

がけ条例の制限範囲にかかると、敷地内で建築可能な範囲が狭くなり、希望する建物規模を建てられないことがあります。特に都市部の狭い敷地では、制限範囲を除くと実質的に使える面積がさらに小さくなるため、買主の購買意欲が下がります。

⑤相続登記が済んでいないと売却自体に着手できない

2024年4月1日から相続登記が義務化され、相続の開始(死亡)を知り、かつ所有権を取得したことを知った日から3年以内に登記しないと、10万円以下の過料の対象になり得ます(法務局公表の制度概要による)。擁壁の問題以前に、名義変更が済んでいないと売買契約自体を結べないため、まず相続登記の状況を確認する必要があります。

売却の判断軸:片付けて仲介か、そのまま買取か【比較表】

擁壁・がけ地のある実家は、片付けて時間をかけて仲介で売るか、現況のまま買取に出すかで、手取り額と負担が大きく変わります。空き家買取と仲介、さらに費用を払って引き取ってもらう「有料引き取り」まで含めて、3択で比較します。

方法 価格の傾向 擁壁の扱い 期間の目安 向いているケース
仲介 市場価格に近い(擁壁の状態次第で下がる) 買主側の金融機関審査・契約不適合責任のリスクがあるため、補強・改修が実質必要になりやすい 数か月〜1年以上 時間に余裕があり、擁壁の安全性確認・補強費用を用意できる場合
買取(宅建業者) 市場価格の6〜8割程度が目安 現況のまま、提携の宅建業者が擁壁リスクを含めて査定・買取 最短数週間〜1か月程度 片付けの手間を省きたい、再建築不可の懸念がある、早期に現金化したい場合
有料引き取り 売却額はほぼゼロ、または持ち出しが発生 擁壁・がけの維持管理義務からの解放を優先 案件によって異なる 買取でも買い手がつかない、維持費・崩落リスクの解消を最優先する場合

この表の通り、擁壁の状態が悪いほど仲介での成約は難しくなり、補強費用を売主が先に負担するか、買主の価格交渉を受け入れるかの二択に近づきます。実家の売却を検討する際は、まず「補強してから仲介」と「現況で買取」の手取り額を比べることが、遠回りを避ける判断軸になります。

ケース別シミュレーション:手取りで比較する

擁壁付きの実家でよくある4つのケースについて、判断の考え方を整理しました。金額は個別の査定・見積もりによって変わるため、あくまで判断の枠組みとしてご覧ください。

ケースA:擁壁は古いが検査済証があり、目視でも損傷がない

検査済証があり、専門家の目視確認でもひび割れ・膨らみなどの損傷が見られない場合は、仲介でも買主が見つかる可能性があります。ただし買主側の金融機関がより詳細な調査(インスペクション)を求めることが多いため、売却前に建築士や土木の専門家に診断を依頼し、資料を整えておくと交渉がスムーズです。

ケースB:検査済証がなく、擁壁の年代も不明

検査済証がなく築造年も分からない場合、仲介では「安全性不明」として買主が離れやすく、売却までの時間が長期化しがちです。この場合は、まず提携の宅建業者による現況査定を受け、仲介で待つ場合の想定期間・補強コストと、買取でのすぐの手取り額を比較して判断するのが現実的です。

ケースC:擁壁にひび割れ・膨らみなど明らかな劣化がある

目視で劣化が確認できる場合、放置すると崩落のリスクがあり、所有者として民法上の管理責任を問われる可能性も出てきます。このケースでは仲介での成約は難しく、買取、または自治体の崖崩れ対策の補助制度(自治体ごとに有無・内容が異なる)の確認とあわせて、早期の対応を検討することをおすすめします。

ケースD:擁壁は問題ないが、実家の中に残置物が多く残っている

擁壁自体に問題がなくても、家の中が片付いていないと査定・引き渡しが遅れます。このケースでは擁壁の確認を進めながら、並行して残置物の仕分けを進めるのが効率的です。写真を送るだけで買取と片付けの両方を同時に相談できる窓口を使うと、工程を一本化できます。

擁壁の種類別リスクの目安【独自整理】

擁壁は構造によって劣化の進み方や補強のしやすさが異なります。現況確認を依頼する前に、おおまかな傾向を把握しておくと、専門家への相談がスムーズになります。

擁壁の種類 特徴 売却時の注意点
RC造(鉄筋コンクリート造) 比較的新しい造成地で多い。設計図・計算書が残っていれば安全性の確認がしやすい 検査済証・構造図があれば仲介でも評価されやすい
間知石積み(かなちいしづみ) 石を斜めに積んだ古い形式。昭和期の造成地に多い 年代が古く確認申請の記録がないことが多く、専門家による現況確認が前提になりやすい
大谷石積み・ブロック積み 強度が弱く、経年でひび割れ・膨らみが出やすい 買主の金融機関審査で指摘されやすく、補強前提での交渉になりやすい
土留め(簡易な土の堰) 擁壁として行政の確認対象にならない簡易な施工のケースがある そもそも「がけ」として扱われる可能性があり、建築制限の確認が必須

この表の通り、擁壁の構造が古いほど記録が残っておらず、専門家による現況確認の重要性が高くなります。石積み・ブロック積みの擁壁がある実家では、売却の相談の前段階として、まず建築士や土木の専門家による簡易調査を依頼しておくと、買取・仲介どちらを選ぶ場合でも交渉の材料になります。

自治体の補助制度:がけ地近接等危険住宅移転事業

擁壁やがけ地が危険な状態で、住宅の移転・除却を検討する場合に使える可能性がある制度として「がけ地近接等危険住宅移転事業」があります。国土交通省の資料によると、がけ崩れ・土石流・地滑りなどで住民の生命に危険が及ぶおそれのある区域内の危険住宅について、除却費・引越費・建物助成費の一部を国と地方公共団体が補助する制度です。

補助の対象には、危険住宅の除却工事費(一戸あたりの補助限度額の目安は150万円、または1平方メートルあたり2万8千円のいずれか)、動産移転等の引越費(一戸あたりの補助限度額の目安は97万5千円)、建て替え先の住宅取得にかかる利子相当額の助成(一般地域で一戸あたりの補助限度額の目安は421万円)などが含まれます。保全人家が10戸未満の急傾斜地崩壊危険区域に指定されている場合などは、補助限度額がさらに上がる仕組みです。

この制度はすべての擁壁・がけ地に使えるわけではなく、自治体が指定する危険区域内であること、市町村が事業主体として実施していることが前提になります。対象地域かどうか、申請の要件を満たすかどうかは、物件所在地の市町村の建築・防災担当課に確認してください。移転・除却を前提に進める場合、売却のタイミングと補助金の申請スケジュールを合わせて検討する必要があります。

擁壁の安全性をどう確認するか:専門家への相談の進め方

擁壁の安全性は、見た目だけでは正確に判断できません。売却の方針を決める前に、次の手順で確認を進めると、不動産会社や買取業者との交渉がスムーズになります。

ステップ1:目視での一次確認

ひび割れ、膨らみ、水抜き穴(擁壁の水圧を抜くための小さな穴)の詰まり、擁壁周辺の土の流出などがないか、まず目視で確認します。明らかな損傷が見られる場合は、早い段階で専門家への相談を優先してください。

ステップ2:確認申請・検査済証の記録確認

自宅に設計図書や確認申請の控えが残っていないか確認します。見当たらない場合は、物件所在地の自治体の建築指導課に、確認申請の記録が残っているか問い合わせることができます(自治体や年代によっては記録の保管がない場合もあります)。

ステップ3:建築士・土木専門家への現況調査の依頼

記録が不十分な場合や、目視で不安がある場合は、建築士や土木の専門家に有料の現況調査を依頼し、簡易な診断書を作成してもらう方法があります。調査結果は、仲介で売却する際の説明資料としても、買取業者への相談材料としても使えます。

ステップ4:買取業者・不動産会社への相談

調査結果がまとまった段階で、提携の宅建業者による現況査定を受け、仲介で待つ場合の想定期間・補強コストと、買取でのすぐの手取り額を比較します。擁壁の状態によっては、仲介の選択肢が実質的に取りづらいケースもあるため、早い段階で両方の見積もりを取っておくことをおすすめします。

実家片付け・解体と擁壁リスクをまとめて進める方法

擁壁の問題が片付いていても、実家の中の家財が残っていると、査定や引き渡しに時間がかかります。売却の判断を進める前に、まず家の中を仕分けておくと、査定時の印象や引き渡しのスピードが変わります。実家じまい代行や遺品整理を利用して、残置物の片付けと並行して擁壁・がけ地の現況確認を進める家庭も増えています。

片付けを先に終えておくと、提携の宅建業者による現況査定もスムーズに進みます。当事務局は宅建業者ではないため、売買契約そのものは提携の宅建業者が担当し、当事務局は相談の窓口と片付けの実務を担う形で対応しています。「擁壁が心配で何から手をつければいいか分からない」という段階からでも、まずは現状の写真を送って相談することができます。

総務省の住宅・土地統計調査では、空き家のうち「その他の空き家」(賃貸・売却用でも別荘でもない、相続などで放置された空き家)が増加傾向にあることが示されています。擁壁やがけ地のある実家は、立地の特性上、取り壊して更地にする選択も、建物を残して補強する選択も、どちらもコストがかかりやすい部類です。片付け・解体・補強・売却のどこから手をつけるべきか迷う場合は、優先順位を決めるために、まず全体の見積もりを並べて比較することをおすすめします。

擁壁・がけ地の実家売却チェックリスト【印刷用】

売却を検討する前に確認しておきたい項目を一覧にしました。印刷して、不動産会社や専門家への相談前の確認用にご活用ください。

確認項目 チェックのポイント
擁壁の高さの確認 2メートルを超えるかどうかで確認申請・がけ条例の対象が変わる
検査済証・確認申請図面の有無 建築時の書類が自宅に残っていないか、法務局・自治体の記録を確認する
目視での損傷確認 ひび割れ・膨らみ・水抜き穴の詰まりなどがないか確認する
がけ条例の適用有無 所在地の建築指導課で、高低差・勾配が条例の基準に該当するか確認する
盛土規制法の対象地域か 自治体の規制区域マップ(都道府県・市が公表)で該当の有無を確認する
相続登記の状況 名義変更が済んでいない場合、売却の前提として先に済ませる必要がある
空き家の3,000万円特別控除の期限 昭和56年5月31日以前建築かどうか、相続開始から3年目の12月31日までの期限を確認する
片付け・残置物の状況 家財が残っている場合、査定前にどこまで仕分けるかを決めておく
買取・仲介・有料引き取りの比較 補強費用と価格差を踏まえ、手取り額でどの方法が有利か比較する

このチェックリストのうち、特に見落とされやすいのが「検査済証・確認申請図面の有無」と「盛土規制法の対象地域か」です。この二つは自分で判断がつきにくいため、早い段階で専門家や宅建業者の現況確認を受けておくと、後の交渉がスムーズになります。

税金の確認:空き家の3,000万円特別控除と取得費

擁壁付きの実家であっても、他の空き家と同様に、一定の要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例(空き家の3,000万円特別控除)の対象になり得ます。国税庁タックスアンサー No.3306によると、主な要件は次の通りです。

  • 対象家屋が昭和56年5月31日以前に建築されていること
  • 相続開始の直前まで被相続人が居住していたこと(一定の要件あり)
  • 相続開始から3年を経過する日が属する年の12月31日までに売却すること
  • 売却時点で一定の耐震基準を満たしていること(または譲渡後、翌年2月15日までに耐震改修すること。令和6年1月1日以降の譲渡に限る)
  • 売却代金が1億円以下であること

擁壁の補強工事を行った場合、その費用は家屋の取得費に加算できる場合があります。取得費の考え方については国税庁タックスアンサー No.3302で確認できます。擁壁・がけ地の擁壁補強費用が取得費に算入できるかどうかは、工事の内容や時期によって判断が分かれるため、確定申告前に税理士または税務署へ確認することをおすすめします。この記事で具体的な控除額や税額を断定することは避けますが、期限(相続開始から3年目の年末)が売却の判断スケジュールに直結する点は、早い段階で把握しておく必要があります。

また、相続した土地を相続開始から3年10か月以内に売却した場合、支払った相続税の一部を取得費に加算できる「取得費加算の特例」もあります。空き家の3,000万円特別控除とはどちらか一方しか使えない選択制になっているため、擁壁の補強費用や売却価格の見通しが立った段階で、どちらの特例を使うほうが有利か、税理士に具体的な数字を出して比較してもらうことをおすすめします。判断を誤ると、せっかくの特例を使えないまま期限を過ぎてしまうこともあるため、売却方針が固まった時点で早めに相談してください。

よくある質問

擁壁に検査済証がない実家でも売却できますか?
売却自体は可能ですが、仲介では買主の金融機関審査で引っ掛かりやすく、成約までの時間が長くなる傾向があります。検査済証がない場合は、まず建築士や土木の専門家に現況確認を依頼し、資料を整えたうえで仲介に出すか、現況のまま買取を検討するかを比較することをおすすめします。
がけ条例に該当する土地は、絶対に建て替えができませんか?
がけ条例に該当しても、必ず建て替えが不可能というわけではありません。擁壁の補強や、がけからの距離を確保した設計にすることで建築が認められる場合があります。ただし追加の構造審査や補強費用が発生することが多いため、所在地の建築指導課に具体的な図面を持って相談することをおすすめします。
擁壁の補強費用は誰が負担するのが一般的ですか?
現在の所有者が負担するのが基本です。仲介で売却する場合、補強前に売主が費用を負担して補強するか、補強費用相当分を価格から差し引いて買主が引き継ぐかの交渉になることが多くあります。買取の場合は現況のまま査定されるため、補強費用を自己負担せずに手放せる点がメリットです。
擁壁付きの実家を売却する前に、片付けは必要ですか?
買取の場合は残置物があっても査定・契約を進められることが多く、片付けが必須ではありません。ただし家の中を仕分けておくと査定時の印象が良くなり、引き渡しもスムーズになります。実家じまい代行や遺品整理を利用し、擁壁の現況確認と並行して片付けを進める方法も選択できます。
がけ地近接等危険住宅移転事業は、どんな実家でも使えますか?
使えません。この制度は自治体が指定する危険区域内にある住宅が対象で、市町村が事業主体として実施します。対象区域かどうか、申請要件を満たすかどうかは、物件所在地の市町村の建築・防災担当課に確認する必要があります。移転・除却を前提に進める場合は、売却のスケジュールと補助金の申請時期を合わせて検討してください。
擁壁の現況調査は誰に依頼すればいいですか?
建築士や土木の専門家に有料の現況調査を依頼する方法が一般的です。目視で明らかな損傷がある場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。調査結果の資料は、仲介で売却する際の説明資料としても、買取業者への相談材料としても活用できます。

まとめ

擁壁やがけ条例が関わる実家の売却は、擁壁の高さ・検査済証の有無・がけ条例の適用範囲という3つの確認がスタート地点になります。振り返ります。

  • 擁壁の高さが2メートルを超える場合、建築基準法上の確認申請・検査済証の有無を確認する
  • がけ条例は敷地と隣地・道路との高低差(目安2m以上・勾配30度以上)で適用が決まり、自治体ごとに基準が異なる
  • 2024年全面施行の盛土規制法により、既存の擁壁も安全性確認の対象になり得る
  • 補強費用は数百万円規模になることがあり、仲介では価格交渉・成約長期化の要因になる
  • 片付けてから仲介で売るか、現況のまま買取に出すかは、補強費用と価格差を踏まえた手取り額で比較する
  • 相続登記の義務化(2024年4月1日、期限3年・過料10万円以下)が済んでいないと売却に着手できない
  • 空き家の3,000万円特別控除は相続開始から3年目の年末が期限。擁壁の判断と並行してスケジュールを確認する

擁壁やがけ地は、見た目だけでは安全性の判断がつきにくく、一人で抱え込むと判断が遅れがちです。検査済証の有無や補強費用の見立てがつかない場合は、まず提携の宅建業者による現況確認を受け、片付けや相続登記の手続きとあわせて、専門家に相談しながら進めてください。「このまま放置した場合」と「今のうちに手取りで比較して手放した場合」の両方を数字で並べてみると、どちらが家族にとって無理のない選択かが見えてきます。

読むより、聞いたほうが
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この記事を書いた人

安心実家じまい事務局です。実家の片付けや遺品整理、空き家になった家の処分について、はじめての方にも分かるように記事を書いています。提携している現場の業者や司法書士と一緒に、費用の相場・自治体のごみ出しルール・補助金といった、調べてもなかなか分かりにくいところを一つずつ確かめながらまとめています。「誰に頼めばいいか分からない」という段階のご相談も、LINEやお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
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