
久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士
東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。
監修の範囲:相続・登記・法務に関する記述(司法書士・行政書士の業務範囲)。片付け・買取・費用相場などの記述は安心実家じまい事務局が編集しています。監修者プロフィール
税金について:税額の計算や特例を使えるかどうかの判断は税理士の業務で、監修の範囲に含みません。申告の前に、税理士または所轄の税務署でご確認ください。
■経歴
- 1966年鹿児島県生まれ
- 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
- 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
- 2013年司法書士試験合格
- 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
- 2017年司法書士法人コスモ退職
- 2018年事務所開設
- 2021年司法書士法人設立
■得意領域
- 相続登記・相続手続き
- 不動産の名義変更
- 相続放棄
- 簡易裁判所の訴訟代理
この記事の結論
- 空き家を仲介で売ると、引き渡し後にシロアリ・雨漏り・給排水管の不具合が見つかった場合、売主が「契約不適合責任」を問われ、修理費や損害賠償を請求される可能性があります。売れた後のトラブルが最大のリスクです。
- この責任は買取(不動産会社が直接買う)を選ぶと、多くの場合「全部免責」の特約で回避できます。片付けずそのまま、契約不適合責任を負わずに手放せる点が仲介との一番の違いです。
- 判断の軸はシンプルです。「片付けてから仲介で売る(高く売れるが契約不適合責任と時間がかかる)」か「そのまま空き家買取で手放す(安いが早く・責任を負わない)」か、最終的な手取り額で比べてください。
- 相続した空き家は相続登記が済んでいないと売却できません(2024年4月から義務化)。売却を考え始めたら、まず登記名義の確認から始めましょう。
契約不適合責任とは何か|2020年の民法改正でルールが変わった
契約不適合責任とは、売買契約で引き渡した物が「契約の内容に適合しないもの」だった場合に、売主が買主に対して負う責任のことです。2020年4月1日の民法改正までは「瑕疵担保責任」と呼ばれていましたが、条文の構造と買主が使える権利の範囲が変わり、現在は「契約不適合責任」という名称に統一されています。空き家の売買契約でも、この規定がそのまま適用されます。
改正前の瑕疵担保責任は「売主も気づかなかった隠れた欠陥」だけを対象にしていましたが、改正後の契約不適合責任は「契約書に記載した内容と、実際に引き渡した物の状態が合っているか」という考え方に変わりました。つまり、売主が知っていたか知らなかったかに関わらず、契約書(重要事項説明書・物件状況等報告書を含む)に書かれていない不具合が後から見つかれば、責任を問われる可能性があるという点が実務上の大きな違いです。「隠れていたかどうか」ではなく「契約内容と合っているかどうか」が基準になったことで、売主にとっては、契約書にどこまで正確に現況を反映できているかが、これまで以上に重要になっています。
空き家は「契約不適合」が見つかりやすい物件
空き家は、人が住んでいる家に比べて不具合が発見されにくいという特徴があります。売主自身が長期間住んでおらず、床下や屋根裏、給排水管の状態を把握できていないケースが多いためです。特に相続で取得した空き家は、故人がいつから空室にしていたか、修繕をどこまで行っていたかを相続人が正確に把握していないことも珍しくありません。買主が引き渡し後にリフォームや解体を始めて初めて、シロアリ被害や雨漏りの跡、老朽化した給排水管の漏水が発覚するという流れが典型的なパターンです。
総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年10月時点の全国の空き家数は900.2万戸、総住宅数に占める空き家率は13.8%で、いずれも過去最多を更新しています。空き家数は2018年からの5年間で51.3万戸(6.0%)増加しており、相続をきっかけに空き家を初めて所有することになる世帯は今後も増える見通しです。空き家が増えるということは、それだけ「状態を把握しきれないまま売却の判断を迫られる人」も増えるということでもあり、契約不適合責任への理解は今後さらに重要になっていきます。
契約不適合責任が問題になりやすい3つの部位
空き家の売買で契約不適合が主張されやすいのは、主に次の3つの部位です。いずれも外観からは判断しづらく、専門的な調査をしないと発見できないという共通点があります。
- 雨漏り・屋根・外壁——天井にシミがあっても、乾燥した時期に内覧すると気づかれにくく、梅雨や台風の後に発覚することがあります。
- シロアリ・木部の腐食——床下は通常の内覧で確認できないため、床がきしむ、沈むといった症状が出て初めて発覚するケースが多くあります。
- 給排水管・浄化槽——長期間水を流していない空き家では、配管の劣化や詰まりが使い始めてから判明することが多く、交換工事が高額になりやすい部位です。
買主が売主に請求できる4つの権利【比較表】
民法562条〜564条では、引き渡された物が契約内容に適合しない場合に、買主が売主に対して行使できる権利を4種類定めています。改正前の瑕疵担保責任では「契約解除」と「損害賠償請求」しか認められていませんでしたが、改正後は「追完請求」と「代金減額請求」が新たに明文化され、買主が選べる選択肢が広がりました。売主の立場から見れば、請求される可能性のあるパターンが増えたとも言えます。空き家の売買で実際に問題になりやすい順に整理しました。
| 請求の種類 | 根拠条文 | 内容 | 空き家売却での例 |
|---|---|---|---|
| 追完請求 | 民法562条 | 不具合の修補や、不足分の引き渡しを求める | 「雨漏りを修理してほしい」「シロアリを駆除してほしい」 |
| 代金減額請求 | 民法563条 | 追完に応じない場合などに、代金の減額を求める | 「給排水管の交換費用20万円分を代金から減額してほしい」 |
| 契約解除 | 民法564条・541条・542条 | 催告のうえ、または無催告で契約自体を解除する | 不具合が重大で目的を達成できない場合の白紙解除 |
| 損害賠償請求 | 民法564条・415条 | 不具合によって生じた損害の賠償を求める | 修理期間中の代替住居費用、調査費用などの実費 |
買主は、これらの権利をいずれか一つだけでなく、状況に応じて組み合わせて主張することもできます。売主にとって重要なのは、こうした請求は「引き渡した後」に発生するという点です。売却時点では問題なく代金を受け取れても、数か月から1年程度たってから内容証明郵便で請求が届くというケースが実務では少なくありません。売買代金をすでに受け取り、相続関係の手続きも一段落したと思っていた頃に請求が届くと、心理的な負担も金銭的な負担も大きくなりがちです。売却前にどこまでリスクを織り込んでおくかが、後々の負担を左右します。
請求できる期間には限りがある
買主は、契約不適合を知った時から1年以内に、その旨を売主に通知しなければ権利を失うのが原則です(民法566条)。ただし、この「1年」は消滅時効そのものではなく通知期間の話であり、通知さえしておけば、そこから別途、消滅時効期間(買主が権利を行使できると知った時から5年、または権利を行使できる時から10年など、民法166条の一般原則)が進行します。「1年たてば完全に安全」というわけではない点に注意してください。実際の期間や特約の上限は契約書の記載によっても変わるため、契約前に宅地建物取引業者や司法書士に確認することをおすすめします。
売主が宅地建物取引業者かどうかで扱いが変わる
売主が個人(宅地建物取引業者ではない)場合、契約不適合責任の通知期間について、当事者間で自由に特約を定めることができます。一方、売主が宅地建物取引業者の場合は、宅地建物取引業法第40条により、通知期間を引き渡しから2年以上とする特約以外は原則として無効とされ、買主保護の観点から売主に不利な特約は制限されます。空き家の相続人が個人として売却する場合はこの制限を受けませんが、免責特約を結べる自由度が高い分、内容を曖昧にしたまま契約すると、後から解釈をめぐって争いになりやすい点には注意が必要です。特約は「契約不適合責任を負わない」とだけ書くのではなく、対象範囲・例外(告知していた不具合を除くなど)まで具体的に記載しておくことをおすすめします。
損害賠償の範囲はどこまで及ぶか
損害賠償請求の対象になるのは、修理費用そのものだけとは限りません。改正後の民法では、債務不履行の一般原則(民法415条)に基づき、契約が履行されていれば得られたはずの利益(履行利益)まで賠償の対象に含まれ得ると解されています。空き家の売買であれば、修理費用に加えて、修理期間中の代替住居費用や、調査・鑑定にかかった費用などが請求される可能性があります。賠償額が大きくなるほど、売主にとっての負担は重くなるため、引き渡し後の請求リスクをそもそも負わない買取という選択肢の価値が相対的に高まります。
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売却の判断|買取・仲介・有料引き取りを契約不適合責任の視点で比較する
空き家を手放す方法は、大きく分けて「仲介で売る」「買取(不動産会社に直接売る)」「有料での引き取りを依頼する」の3つがあります。それぞれ契約不適合責任の扱いと、手元に残る金額(手取り)が大きく異なるため、金額だけでなく責任の所在まで含めて比較することが重要です。「有料引き取り」は、再建築不可物件や、買取業者でも値がつかないほど傷みが激しい建物を対象に、所有者側が費用を負担して引き取ってもらう方法で、そもそも売買契約ではないため契約不適合責任という概念自体が生じません。売却先が見つからない場合の最終手段として位置づけられます。
| 仲介(個人が買主) | 買取(宅建業者が買主) | 有料引き取り | |
|---|---|---|---|
| 売却価格の目安 | 相場に近い(高め) | 相場の5〜8割程度 | マイナス(費用がかかる) |
| 契約不適合責任 | 免責特約をつけても、故意に告げなかった不具合は責任を負う | 「契約不適合責任を全部免責」の特約が一般的。引き渡し後の請求リスクがほぼない | そもそも売買ではないため契約不適合責任は生じない |
| 片付け・清掃 | 原則、売主が現況を整えてから引き渡す必要がある | 家財が残ったまま(現況)でも買取可能な業者が多い | 家財の処分費用も込みで交渉することが多い |
| 売却までの期間 | 数ヶ月〜1年以上かかることもある | 数週間〜1ヶ月程度で現金化しやすい | 引き取り先が見つかり次第 |
| 向いているケース | 建物の状態が良く、時間をかけられる場合 | 契約不適合責任のリスクを避けたい・早く現金化したい場合 | 再建築不可・築年数が古すぎて買取も難しい場合 |
表のとおり、仲介は「時間をかけて高く売れる可能性がある一方、引き渡し後に契約不適合責任を問われるリスクを売主が負い続ける」方法です。対して買取は「価格は下がるものの、契約不適合責任のリスクごと手放せる」方法にあたります。どちらが優れているという単純な話ではなく、建物の状態を正確に把握できているか、時間をかけられるか、引き渡し後のリスクをどこまで許容できるかによって、最適な選択肢は変わります。当事務局は宅地建物取引業者ではないため、当事務局自身が空き家を買い取ることはできません。売却をご希望の場合は、提携している宅建業者が買取・仲介の実務を担当し、当事務局は窓口としてのご相談対応と、売却前の片付け・家財の搬出を担当する、という役割分担になります。実家の売却を仲介で検討する場合と、空き家買取で契約不適合責任ごと手放す場合の両方を、まずは概算の金額で比較してみることをおすすめします。
「片付けてから売る」か「そのまま買取か」の判断軸
迷ったときに軸になるのは、「片付け費用・修繕費用・時間をかけて仲介で売った場合の手取り」と「現況のまま買取に出した場合の手取り」を、実際に見積もりを取って比べることです。仲介での想定売却価格から、片付け費用・インスペクション費用・値引き交渉額・契約不適合責任の保険料や引き渡し後の予備費を差し引いた金額と、買取価格をそのまま比較すると、想像より差が小さいことも珍しくありません。片付けに人手や時間をかけられない場合、金額差が小さいなら買取を選ぶ方が総合的な負担は軽くなります。逆に、金額差が明らかに大きく、かつ片付けや修繕にかけられる時間と人手がある場合は、多少のリスクを引き受けてでも仲介を選ぶという判断も合理的です。
空き家を売る前に確認しておくべきこと
契約不適合責任のリスクを抑えるためには、売却方法を決める前に、いくつかの前提条件を確認しておく必要があります。ここを飛ばして仲介の契約を先に進めてしまうと、後から手続きが止まったり、想定外の税負担が発覚したりすることがあります。
相続登記が済んでいるか(2024年4月義務化)
相続した不動産の名義変更(相続登記)は、2024年4月1日から義務化されています。相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならず、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり得ます(法務省・法務局案内)。相続登記が済んでいない空き家は、そもそも売買契約を締結できません。遺産分割協議がまとまらず3年以内の登記が難しい場合は、「相続人申告登記」という簡易な制度で義務を一旦果たす方法もあるため、司法書士に早めに相談してください。
「管理不全空家」に指定されていないか
2023年12月13日に施行された改正空家法(空家等対策の推進に関する特別措置法)により、「特定空家」に至る前段階の「管理不全空家」という区分が新設されました(国土交通省)。管理不全空家に指定され、自治体から必要な措置を勧告されると、翌年1月1日を基準日として、住宅用地の固定資産税の軽減特例(1/6または1/3への減額)が解除され、更地と同水準の税額(最大で従来の6倍程度)になる可能性があります。放置期間が長いほど税負担が重くなるため、売却するかどうかに関わらず、指定を受けていないか自治体の空き家担当窓口で確認しておくことをおすすめします。
| 管理不全空家 | 特定空家 | |
|---|---|---|
| 状態 | 放置すれば特定空家になるおそれがある状態(窓・壁の破損など管理不十分) | 倒壊のおそれや衛生上有害など、周辺に著しい悪影響を及ぼしている状態 |
| 行政の対応 | 指導・勧告 | 指導・勧告・命令・行政代執行(強制的な解体)まで可能 |
| 固定資産税への影響 | 勧告を受けると住宅用地の軽減特例が解除される | 同様に軽減特例が解除される(より段階が進んだ状態) |
| 売却への影響 | 早めに管理を改善するか、売却・解体の検討が必要 | 買主が見つかりにくく、行政代執行のリスクも生じるため対応が急務 |
いずれの区分も、所有者が自主的に管理を改善するか、売却・解体によって空き家状態を解消することが、指定の解除・回避につながります。すでに自治体から通知や勧告を受けている場合は、放置せずに早めに対応方針を決めることが重要です。
境界・越境物の有無
隣地との境界が未確定のまま、あるいは越境物(塀・樹木の枝など)がある状態で売却すると、これも契約不適合責任の対象になり得ます。仲介で売る場合、境界が不明確な土地は「境界の不適合」として代金減額や解除の対象になることがあり、契約前に確定測量を求められるのが一般的です。測量図が手元にない場合は、売却の意思が固まった段階で、確定測量の要否を仲介業者や土地家屋調査士に確認してください。買取の場合は、境界未確定のまま買い取る業者もありますが、その分価格に反映されるのが通常です。
設備の告知書(物件状況等報告書)の準備
仲介で売却する場合、売主は「物件状況等報告書」(告知書)に、把握している不具合を記載する必要があります。過去の雨漏り修理歴、シロアリ駆除歴、給排水管の交換履歴、増改築の有無などが主な記載項目です。相続した空き家では、こうした履歴を相続人自身が知らないことも多いため、故人の家族・近隣住民への聞き取りや、リフォーム業者への依頼記録の確認など、分かる範囲で調べておくことが、後日のトラブル防止につながります。分からない部分は「不明」と正直に記載し、推測で「異常なし」と書かないことが重要です。
片付けは契約不適合責任のリスクにも直結する
家財が残ったままの空き家を仲介で売却する場合、床下や天井裏に残置物があると、内覧やインスペクション(建物状況調査)の段階で不具合を見落としやすくなります。逆に、事前にしっかり片付けて建物の状態を確認しておくことは、契約不適合責任のリスクを減らすことにも直結します。押し入れの奥や物置の下など、日常では目が届きにくい場所ほど、雨漏りの跡やシロアリの被害が隠れていることもあるため、片付けの過程そのものが簡易的な建物チェックの機会にもなります。片付けから相続の各種手続きまでを一括で進めたい場合は実家じまい代行、家財のうち遺品の仕分け・供養・処分を中心に依頼したい場合は遺品整理サービスをご利用いただけます。買取を選ぶ場合でも、家財を先に整理しておくと査定額が上がるケースがあるため、売却方針が決まる前の早い段階でご相談いただくと選択肢が広がります。
契約不適合責任を回避・軽減する3つの方法
方法1:契約書に「契約不適合責任を免除する」特約を盛り込む
個人間の売買契約であれば、契約自由の原則により、契約不適合責任を免除する特約(全部免責特約)を結ぶこと自体は可能です。ただし、売主が契約時点で知っていながら買主に告げなかった不具合については、免責特約があっても責任を免れないとされています(民法572条の趣旨)。また、買主が宅地建物取引業者ではない個人の場合、業者側の説明義務や重要事項説明の実務上、免責特約を結べたとしても、価格交渉で大きく値引きを求められることが一般的です。特約を結ぶ際は、「本物件について、売主は契約不適合責任を負わない。ただし、売主が知りながら買主に告げなかった事実については、この限りではない」といった形で、免責の範囲と例外を明確に書き分けておくと、後日の解釈の争いを防ぎやすくなります。
方法2:ホームインスペクション(建物状況調査)を受けてから売る
専門業者に建物の劣化状況を調査してもらい、その結果を重要事項説明書や物件状況等報告書に正確に反映させておくと、「契約内容に適合しない」と主張されるリスク自体を減らせます。調査費用が発生しますが、後から高額な損害賠償を請求されるリスクと比べれば、事前に受けておく価値は小さくありません。
方法3:買取(宅建業者への直接売却)を選ぶ
宅地建物取引業者が買主となる買取では、業者側が「契約不適合責任を全部免責」とする特約を結ぶのが一般的な実務です。買取業者はリフォームや再販を前提に、建物の状態をある程度織り込んだ価格を提示するため、売主は引き渡し後の請求リスクをほぼ負わずに済みます。価格は仲介より下がりますが、「片付けなくてよい」「契約不適合責任を負わない」「短期間で現金化できる」という3点をまとめて解決できる方法です。
買取を選ぶ場合に確認しておきたいポイント
買取業者であればどこでも同じ条件というわけではありません。契約書を交わす前に、次の点を確認しておくと、後からのトラブルを避けやすくなります。
- 免責特約の範囲が契約書に明記されているか——「契約不適合責任を負わない」旨が口頭だけでなく、書面に明確に記載されているかを確認します。
- 宅地建物取引業の免許番号があるか——免許番号は都道府県または国土交通大臣の許可を受けている証明で、業者のウェブサイトや名刺、重要事項説明書に記載されています。
- 査定額の根拠が説明されるか——近隣の取引事例や建物の状態を踏まえた説明があるかどうかは、信頼できる業者を見分ける目安になります。
- 複数社から見積もりを取っているか——1社だけの査定額を鵜呑みにせず、複数社を比較することで、相場からかけ離れた金額を提示されるリスクを減らせます。
参考:既存住宅売買瑕疵保険という選択肢
仲介での売却を選ぶ場合、「既存住宅売買瑕疵保険」への加入も検討の余地があります。これは、引き渡し後に構造上主要な部分や雨水の浸入を防ぐ部分に不具合が見つかった場合の修理費用等を、保険金でカバーする制度です。加入には、保険法人が定める検査基準を満たす必要があり、昭和56年6月1日以降に着工された建物であることなど一定の要件があります。加入できれば、買主にとっても安心材料となり、売却活動そのものが有利に進みやすくなるというメリットもあります。ただし空き家は要件を満たさないことも多いため、加入の可否は仲介業者を通じて事前に確認してください。
空き家の税金の特例|3,000万円控除と取得費(国税庁)
空き家を売却する際は、譲渡所得税の特例も合わせて確認しておくと、手取り額の比較がより正確になります。金額や要件は個々の状況によって変わるため、以下は国税庁タックスアンサーに基づく一般的な要件の紹介であり、実際の適用可否は税理士または税務署への確認をおすすめします。
譲渡所得税は、「譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額」で計算した譲渡所得に対して課税される仕組みです。空き家特例の3,000万円控除は、この式の「特別控除額」にあたる部分に適用されます。税率は建物の所有期間(相続の場合は被相続人の所有期間を引き継ぎます)によって区分が変わるため、控除の適用可否だけでなく、所有期間の区分についても、確定申告の際に税理士へ確認することをおすすめします。
被相続人の居住用財産(空き家)を売った場合の3,000万円特別控除
相続または遺贈で取得した空き家とその敷地を売却する場合、一定の要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円(令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合は2,000万円)を控除できる特例です(国税庁タックスアンサー No.3306)。主な要件は次のとおりです。
| 主な要件 | 内容 |
|---|---|
| 建築時期 | 昭和56年5月31日以前に建築されたこと |
| 耐震基準 | 譲渡時に耐震基準を満たしているか、譲渡の翌年2月15日までに耐震改修を行うこと(更地にして売る場合は建物を取り壊せば可) |
| 売却期限 | 相続開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること |
| 売却価格 | 1億円以下であること |
| 利用状況 | 相続時から譲渡時まで、事業用・貸付用・居住用として使われていないこと |
この特例が使える空き家は、「耐震基準を満たさなくても、更地にして売れば適用できる」点も実務上重要です。契約不適合責任の観点から見ても、更地にしてしまえば建物の不具合そのものがなくなるため、リスクを大きく減らせるという副次的なメリットもあります。老朽化した建物を解体してから売却するかどうかの判断材料としても押さえておいてください(詳しい解体費用や自治体補助金については空き家解体費用の補助金のコラムも参考になります)。
取得費が分からない場合の考え方
相続した古い空き家では、被相続人が取得した際の売買契約書が見つからず、取得費(購入時の価格)が分からないケースが多くあります。取得費が不明な場合、譲渡価額の5%を取得費とみなす「概算取得費」を使う方法がありますが、実際の取得費より低くなり、譲渡所得税の負担が重くなりやすい点に注意が必要です(国税庁タックスアンサー No.3302関連)。購入時の契約書・領収書・住宅ローンの契約書などが見つかる場合は、売却前に必ず保管場所を確認してください。
相続税を払っている場合は「取得費加算の特例」も確認する
相続した空き家を売却して相続税をすでに納めている場合、納めた相続税額の一部を譲渡資産の取得費に加算できる「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(取得費加算の特例)」が使えることがあります(国税庁タックスアンサー No.3267)。適用要件は、(1)相続や遺贈により財産を取得した人であること、(2)その財産の取得について相続税が課税されていること、(3)相続開始があった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること、の3点です。空き家特例(3,000万円控除)と取得費加算の特例は、どちらか一方しか使えない場合があるため、両方の適用可能性がある場合は、どちらが有利か税理士に試算してもらうことをおすすめします。
空き家の契約不適合責任でよくある失敗パターン
事務局として売却のご相談を受ける中でよく耳にする、契約不適合責任にまつわる失敗パターンと、その防ぎ方を紹介します。
- 「昔から知っていた不具合」を軽く考えて告げなかった——「前から雨漏りしていたけど大したことないと思っていた」という認識のまま告知書に書かず、引き渡し後に本格的な雨漏りとして発覚し、高額な損害賠償を求められるケースです。軽微だと思う不具合でも、把握している範囲は必ず書面に記載してください。
- 内覧前に応急処置だけして、告知書には書かなかった——雨漏りのシミを塗装で隠す、床のきしみを部分補修するなど、見た目だけ整えて告知しないと、後から「隠蔽した」とみなされ、通常より重い責任を問われる可能性があります。応急処置をした事実そのものも記載しておくべきです。
- 相続人の一人だけが把握している情報を共有しなかった——同居していた相続人だけが知っている不具合情報が、他の相続人や仲介業者に伝わらないまま売却が進んでしまうケースです。相続人間で「知っている不具合」を洗い出す機会を、契約前に一度設けることをおすすめします。
- 安さだけで買取業者を選び、免責特約の内容を確認しなかった——買取なら契約不適合責任を負わないと思い込み、契約書の文言を確認しないまま契約し、後から特約の範囲が限定的だったと分かるケースです。契約前に、免責の範囲を必ず書面で確認してください。
- 売却を急ぎすぎて、境界確定を後回しにした——境界が未確定のまま契約を進め、引き渡し後に隣地とのトラブルが発覚し、買主から契約不適合を主張されるケースです。境界確定には時間がかかるため、売却を決めた早い段階で着手しておくことが重要です。
共通しているのは、「分かっている情報を、分かっている範囲で正直に書面化する」ことを怠った場合に、トラブルが大きくなりやすいという点です。逆に言えば、不具合があること自体は契約不適合責任の直接の原因にはならず、それを告げなかったこと・告知書に反映しなかったことが問題になります。「古い家だから多少の不具合は仕方ない」という感覚を売主・買主の双方が共有できていれば大きな争いにはなりにくい一方、その感覚のズレが埋まらないまま契約が進むと、引き渡し後の請求という形で表面化しやすくなります。
ケース別シミュレーション
ケースA:築45年、相続直後、建物の傷みが大きい
昭和56年以前築で3,000万円特別控除の建築時期要件は満たすものの、雨漏りやシロアリ被害が疑われる場合です。このケースでは、仲介で高値を狙うより、契約不適合責任を負わない買取を軸に検討するのが現実的です。まず相続登記を済ませたうえで、片付けをせずに買取査定を複数社から取り、解体して更地で売る場合の金額とも比較してください。建物の傷みが大きいほど、仲介で売った場合に引き渡し後の請求を受けるリスクも高くなるため、「多少価格が下がっても責任を負わずに済む」買取のメリットが相対的に大きくなる典型例です。
ケースB:築30年前後、比較的状態が良い
建物の状態が良い場合は、ホームインスペクションを受けたうえで仲介に出す選択肢も現実的です。調査費用はかかりますが、契約不適合責任のリスクを減らしたうえで、相場に近い価格での売却を目指せます。ただし内覧対応や引き渡しまでの期間が必要になるため、時間的な余裕があるかどうかも判断材料にしてください。インスペクションで大きな問題が見つからなければ、その結果を買主に示すことで、価格交渉でも有利に働くことがあります。
ケースC:遠方に住んでいて、片付ける時間がない
遠方在住で頻繁に現地へ行けない場合、片付け・立ち会い・内覧対応にかかる手間そのものが大きな負担になります。このケースでは、家財が残ったままでも買取査定を受けられる業者を選ぶか、片付けから売却相談までを一つの窓口で進められる代行サービスを利用する方法が現実的です。現地に頻繁に行けないことは、建物の状態把握が難しいことも意味するため、契約不適合責任のリスクを抑えられる買取との相性が良いケースでもあります。
ケースD:再建築不可・接道条件が悪い
再建築不可物件は仲介でも買主が見つかりにくく、契約不適合責任のリスクを負ってまで仲介に出すメリットが小さくなりがちです。買取専門業者の中には再建築不可物件を専門に扱う業者もあるため、早い段階で買取相場を確認しておくことをおすすめします(再建築不可物件の売却・買取も参考にしてください)。
ケースE:家財が大量に残っていて、告知書の作成にも自信がない
家財が大量に残っている空き家では、床下や天井裏の状態を確認すること自体が難しく、正確な告知書を作成する自信が持てないことがあります。このような場合、無理に仲介で正確な告知を目指すより、家財が残った現況のまま買取に出す方が、契約不適合責任のリスクとご自身の負担の両方を抑えられます。片付けを先に済ませてから建物の状態を確認し、そのうえで仲介と買取のどちらが有利かを判断する、という順序を取ることもできます。
相談先の分担|どの専門家に何を聞けばよいか
空き家の売却は、法律・税金・不動産取引という複数の専門分野にまたがるため、一人の専門家がすべてをカバーしているとは限りません。よくある相談内容ごとに、相談先の目安を整理しました。
| 相談内容 | 主な相談先 |
|---|---|
| 相続登記・相続放棄の手続き | 司法書士 |
| 3,000万円控除・取得費加算の特例など税金の計算 | 税理士・税務署 |
| 境界確定測量 | 土地家屋調査士 |
| 契約不適合責任の特約の書き方・トラブル対応 | 宅地建物取引業者(仲介・買取)、必要に応じて弁護士 |
| 片付け・家財整理・遺品供養 | 実家じまい・遺品整理の専門業者 |
| 解体・更地化の見積もり | 解体業者、自治体の補助金窓口 |
当事務局は、この中でも「片付け・家財整理」と「窓口としてのご相談対応」を担当し、売却の実務が必要な場面では提携の宅建業者・司法書士・税理士へおつなぎする体制を取っています。どこに何を相談すればよいか分からない段階でも、まずはお問い合わせいただければ、優先順位を一緒に整理できます。
契約不適合責任|売却前の実務チェックリスト
印刷して、売却方針を決める前の確認用にご活用ください。
| 確認項目 | チェックのポイント |
|---|---|
| 相続登記の完了 | 名義変更が済んでいないと売買契約自体ができない |
| 雨漏り・シロアリ被害の有無 | 天井裏・床下を含めて目視できる範囲を確認しておく |
| 給排水管・浄化槽の状態 | 長期間使用していない設備は特に要確認 |
| 越境物・境界の確認 | 塀や樹木の越境、境界標の有無を確認する |
| 管理不全空家の指定有無 | 自治体の空き家担当窓口に確認する |
| 購入時の契約書・領収書の有無 | 取得費の証明に使えるものがないか確認する |
| 耐震基準・建築時期の確認 | 3,000万円控除の要件に該当するか確認する |
| 家財の残置状況 | 片付け済みか、残したまま買取査定に出すかを決める |
| 免責特約の内容確認(仲介の場合) | 契約不適合責任の範囲・期間を契約書で必ず確認する |
このうち、特に見落とされやすいのが「給排水管・浄化槽の状態」と「管理不全空家の指定有無」です。目に見えにくい部分ほど、引き渡し後の請求や税負担の増加につながりやすいため、優先して確認しておくと安心です。チェックが済んだ項目から契約書や告知書に反映していくと、仲介・買取どちらを選ぶ場合でも、後から「言った・言わない」のトラブルになりにくくなります。一人で全項目を確認するのが難しい場合は、司法書士・仲介業者・買取業者など、項目ごとに適した専門家へ分担して相談する方法も検討してください。
よくある質問
空き家を「現状のまま」売ると契約書に書けば、契約不適合責任は一切負わなくて済みますか?
買取なら本当に契約不適合責任を負わないのですか?
相続登記が済んでいない空き家は売れませんか?
雨漏りやシロアリ被害があることが分かっている場合、黙って売ってもよいですか?
3,000万円特別控除は、建物を解体して更地にしてから売っても使えますか?
管理不全空家に指定されると、売却にも影響しますか?
買取と仲介、どちらを選べばよいか一人で決められません。相談できますか?
まとめ
空き家の契約不適合責任は、「引き渡した後に問題が見つかる」という性質上、売却の意思決定の段階では見落とされがちなリスクです。仲介で高く売ることだけを目標にすると、引き渡し後の請求という形でリスクが後回しになり、買取で早く手放すことだけを目標にすると、本来もっと高く売れたはずの価格差を見過ごしてしまうこともあります。どちらが正解かは建物の状態や相続関係、時間の余裕によって変わるため、まずは両方の選択肢を同じ土俵で比較することが出発点になります。振り返ります。
- 契約不適合責任とは、引き渡した物が契約内容に合わない場合に売主が負う責任。2020年の民法改正で瑕疵担保責任から名称・内容が変わった
- 買主は追完請求・代金減額請求・契約解除・損害賠償請求の4つを状況に応じて主張できる
- 仲介は高く売れる可能性がある一方、契約不適合責任のリスクを売主が負い続ける。買取はその逆で、リスクごと早く手放せる
- 判断の軸は「片付けてから仲介で売った場合の手取り」と「現況のまま買取に出した場合の手取り」を実際に比較すること
- 相続登記(2024年義務化)・管理不全空家の指定有無・3,000万円特別控除の要件は、売却前に必ず確認しておく
- 知っている不具合は隠さず開示する。免責特約があっても、告げなかった不具合の責任は免れない
- 相続税を納めている場合は「取得費加算の特例」も候補に入れ、3,000万円控除とどちらが有利か試算してもらう
- 買取業者を選ぶ場合は、免責特約の範囲が契約書に明記されているか、複数社の査定額を比較したうえで判断する
契約不適合責任も含めた総合的な判断は、建物の状態や相続関係によって変わります。当事務局は宅地建物取引業者ではないため、買取・仲介の実務は提携の宅建業者が担当し、当事務局は相談窓口と片付け・家財整理を担当しています。「片付けてから売るべきか」「そのまま買取に出すべきか」で迷った場合は、まずは概算の金額から比較してみてください。相続登記や税金の特例など、期限のある手続きも絡むため、判断に迷う場合ほど早めに相談窓口を確認しておくことが、結果的に負担を小さくする近道になります。
早いこともあります
片付け不要・現況のまま、複数の提携宅建業者から買取査定をお出しします。ご相談・お見積もりは無料です。


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