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土地と建物の名義が違う実家の売却方法|名義統一・同時売却・買取の判断軸と税金【比較表】

最終更新日:2026年10月22日|監修:司法書士・行政書士 久留慎一郎先生・安心実家じまい事務局

司法書士・行政書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。

監修の範囲:相続・登記・法務に関する記述(司法書士・行政書士の業務範囲)。片付け・買取・費用相場などの記述は安心実家じまい事務局が編集しています。監修者プロフィール

税金について:税額の計算や特例を使えるかどうかの判断は税理士の業務で、監修の範囲に含みません。申告の前に、税理士または所轄の税務署でご確認ください。

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 不動産の名義変更
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理

この記事の結論

  • 実家の土地と建物の名義が違う場合、そのまま売ることも、名義を一本化してから売ることも、どちらも可能です。どちらが早く・安く進むかはケースによって変わります。
  • 判断の軸は「片付けてから売るか、そのまま買取に出すか、手取りで比べる」こと。名義統一や相続登記の手間を省きたいなら、名義が違う状態のまま買い取ってもらう選択肢もあります。
  • 2024年4月の相続登記義務化により、名義変更を放置すると10万円以下の過料の対象になり得ます(法務省)。
  • 片付けから名義整理、売却の窓口まで一括で相談したい場合は実家の売却(片付けから売却まで窓口ひとつ)をご覧ください。
目次

土地と建物の名義が違う実家とは?よくあるケース

実家を売却しようとして、初めて「土地と建物の名義が違う」ことに気づく家庭は少なくありません。典型的なのは次のようなケースです。

  • 親の土地に子が建物を建てた——親が所有する土地の上に、子が自分名義で家を建てて住んでいたケース。土地は親、建物は子の名義のまま何十年も経過していることがあります。
  • 相続のときに土地だけ、または建物だけを分けた——親の死後、きょうだいで遺産分割をする際、「土地は兄、建物は弟」のように別々に相続してしまったケース。
  • 建物だけ相続登記をして、土地の名義変更を忘れていた(またはその逆)——相続登記が義務化される前は、建物だけ登記して土地を放置する、あるいは土地だけ名義変更して古い建物をそのままにするケースが珍しくありませんでした。
  • 共有名義の一部が祖父母の名義のまま残っている——数世代前の名義が更新されず、土地は祖父母、建物は親というように、世代をまたいで名義がずれているケース。
  • 借地の上に建物だけを所有している——土地は地主(他人)の名義、建物だけが実家の名義というケース。これは「名義が違う」というより「借地権」の問題になるため、対処法が異なります。
  • 二世帯住宅を親子の共有名義で建てたが、土地は親の単独名義のまま——建築時に建物だけ親子共有登記にし、土地の名義変更をしなかったケース。将来の相続のときに、建物の共有者(子)と土地の相続人(他のきょうだいを含む)が食い違う原因になりやすい形です。

どのケースに当たるかによって、売却のしやすさや必要な手続きが大きく変わります。まずは自分の実家がどのパターンに当たるかを確認することが、最初の一歩です。なお、総務省の住宅・土地統計調査では、空き家の増加傾向が続いていることが報告されています。名義の複雑さが、空き家として放置される実家の一因になっているケースは珍しくありません。

土地と建物の名義が違うと、なぜ売却が難しくなるのでしょうか。大きな理由は二つあります。一つは、買主が金融機関から住宅ローンを組む際、土地と建物の両方に抵当権を設定するのが一般的で、名義人が複数いると契約当事者が増え、手続きが複雑になることです。もう一つは、名義人全員の同意がなければ売却できないため、名義人同士の意見がまとまらない限り、取引そのものが成立しない点です。買主から見ると「権利関係が複雑な物件」と映りやすく、一般の仲介市場では買い手が見つかりにくくなる傾向があります。

「共有名義」と「名義が違う」の違いに注意

混同しやすい言葉として「共有名義」があります。共有名義は、一つの不動産(例えば建物)を複数人が共同で所有している状態です。これに対して「土地と建物の名義が違う」とは、土地という不動産と、建物という別の不動産を、それぞれ異なる人(または異なる組み合わせの人たち)が単独・共有で所有している状態を指します。両方が同時に発生しているケース(例:土地は親の単独名義、建物は子ども二人の共有名義)もあり、この場合は手続きがさらに複雑になるため、早い段階で登記簿を確認し、全体の権利関係を正確に把握しておくことが重要です。

借地上に建物だけを所有しているケースの考え方

土地が地主(親族以外の第三者)の名義で、実家の建物だけを所有しているケースは、厳密には「名義が違う」というより「借地権」の問題です。この場合、建物を売却するには借地権の譲渡について地主の許可(または地主への譲渡承諾料の支払い)が必要になるのが一般的です。借地契約の内容(地上権か賃借権か、契約書の有無)によって手続きが異なるため、まずは借地契約書を確認し、地主との関係や契約期間を整理したうえで、司法書士や不動産会社に相談することをおすすめします。建物を解体して更地で返還する「原状回復」が契約条件になっている場合もあるため、解体費用の見積もりも早めに取っておくと判断がしやすくなります。地主が売却自体に協力的な場合は、地主から土地を買い取って名義を統一し、通常の不動産として売却するという選択肢も検討できます。逆に地主との関係が良くない場合は、借地権のまま買い取れる専門の買取業者に相談するほうが、現実的に話が進みやすいことがあります。

まず名義を確認する方法

「名義が違うかもしれない」と感じたら、思い込みで進めず、次の方法で正式に確認してください。

登記簿謄本(登記事項証明書)を取得する

土地と建物、それぞれ別の不動産として登記されています。最寄りの法務局、またはオンラインの登記情報提供サービスで、土地と建物それぞれの登記事項証明書(謄本)を取得すれば、「甲区」欄に現在の所有者名が記載されています。土地と建物で所有者名が異なっていれば、それが名義の違いを示す確実な証拠です。郵送・オンライン申請にも対応しているため、遠方に住んでいても取得できます(法務局 登記情報提供サービス)。

固定資産税の名寄帳(なよせちょう)を確認する

市区町村役場の資産税課で「名寄帳」の写しを取得すると、その人が所有している固定資産(土地・建物)が一覧で分かります。固定資産税の納税通知書が土地用・建物用で別々に送られてきている場合も、名義が違うことを疑うきっかけになります。

相続人であれば「法定相続情報一覧図」も有効

相続が関係している場合は、法務局で法定相続情報一覧図の写しを取得しておくと、以後の相続登記や売却手続きで何度も戸籍を出し直す必要がなくなり、名義確認と手続きの両方がスムーズになります。

司法書士に「名寄せ調査」を依頼する方法もある

自分で登記簿や名寄帳を取得するのが難しい場合、司法書士に名義確認(名寄せ調査)を依頼することもできます。特に、実家が遠方にある、名義人が複数の市区町村に不動産を持っている可能性があるといった場合は、専門家に調査を依頼したほうが、見落としなく正確に名義関係を把握できます。調査費用は依頼する範囲によって変わるため、事前に見積もりを確認してから依頼するとよいでしょう。

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名義が違う実家を売却する3つの方法【比較表】

土地と建物の名義が違う場合でも、売却の方法は大きく3つに分けられます。どれが正解というわけではなく、名義人同士の関係や、かけられる時間・費用によって選び方が変わります。

方法 概要 向いているケース 注意点
名義を一本化してから売却する 土地・建物のどちらかの名義人に所有権を移し、一人(または一つの共有関係)の名義にまとめてから売る 名義人同士が親族で話し合いができる場合 所有権移転登記の費用・税金(贈与税や譲渡所得税)が発生する場合がある
名義が違うまま同時に売却する 土地の名義人と建物の名義人それ�れが、同じ買主に対して同時に売買契約を結ぶ 名義人同士の関係は良好だが、名義統一の手間をかけたくない場合 契約書を2通(土地用・建物用)作成する必要があり、買主が見つかりにくいことがある
土地・建物を別々に単独で売却する 土地の名義人、建物の名義人がそれぞれ別のタイミング・別の相手に売る 名義人同士の関係が疎遠、または意見が一致しない場合 買主が土地と建物を別々に使う前提になるため、一般の買い手が見つかりにくい

この3つのうち、一般の個人向け市場で買い手を見つけやすいのは「名義を一本化してから売却する」方法です。ただし名義人同士の関係や手続きの手間を考えると、次に紹介する「買取・仲介・有料引き取り」の3択で、どの窓口を使うかを先に決めておくほうが、結果的に話が早く進むことがあります。例えば、名義人同士がすでに疎遠で話し合いの機会を作りにくい場合、名義統一を先に済ませようとすると、連絡や合意形成そのものに時間がかかり、結果的に売却全体のスケジュールが大きく後ろ倒しになることがあります。そうした事情がある場合は、名義が違う状態のまま相談できる買取窓口を先に当たり、名義統一の手続きは並行して進めるという順序も検討する価値があります。

買取・仲介・有料引き取りの3択比較【名義が違う実家の場合】

名義が違う実家の処分方法を考えるとき、「仲介(一般の買い手を探す)」だけでなく、「買取(専門業者に直接買ってもらう)」「有料引き取り(買主を探さず手放す)」という選択肢も含めて比較すると、手取り額とスピードのバランスを取りやすくなります。なお、当事務局は宅建業者ではないため、買取・仲介そのものは提携の宅建業者が担当し、当事務局は相談の窓口と、片付け・名義確認の整理を担います。

仲介 買取(提携の宅建業者) 有料引き取り
手取り額の目安 相場に近い(高くなりやすい) 相場の6〜8割程度が目安 マイナス(引き取り料がかかる)
売却までの期間 数か月〜1年以上かかることも 数週間〜1か月程度で完了しやすい 買主を探さないため比較的早い
名義が違う場合の進めやすさ 名義統一を先に求められることが多い 名義が違う状態のまま相談できる場合がある 名義人全員の同意があれば進めやすい
向いているケース 時間をかけてでも高く売りたい 早く・確実に手放したい、名義統一の手間を避けたい 買主が見つかる見込みが低い、立地や老朽化が著しい

名義統一の手続き(登記費用・税金の確認・名義人同士の合意形成)に時間や心理的な負担をかけたくない場合は、名義が違う状態のまま相談できる買取窓口を先に当たってみる価値があります。買取と仲介それぞれの具体的な流れやメリット・デメリットは空き家買取で詳しく解説しています。

手取り額のシミュレーション(想定価格3,000万円の場合)

あくまで考え方を示す簡易なシミュレーションです。実際の金額は物件の状態・地域・時期によって大きく変わるため、目安としてご覧ください。仲介で想定価格3,000万円で売れた場合、仲介手数料(上限は売却価格の3%+6万円+消費税が目安)や、名義統一にかかる登記費用・税金を差し引いた金額が手取りになります。買取の場合、提示額が仲介の相場の6〜8割程度(この例では1,800万〜2,400万円程度)になりやすい一方、仲介手数料がかからず、売却までの期間が短く済むため、名義統一や登記にかかる時間的なコストを圧縮できます。有料引き取りは、建物の解体費用や引き取り料が手取りからさらに差し引かれるため、マイナスになることも想定したうえで検討する必要があります。どの選択肢が「自分の場合」に合っているかは、名義人同士で話し合える時間があるか、早く手放したい事情があるかによって変わります。

ケース別シミュレーション

名義が違う実家の売却は、誰と誰の名義かによって進め方が変わります。よくある複数のパターンで、考え方の整理を示します。自分の実家がどのケースに近いかを確認しながら読み進めると、必要な手続きの見通しが立てやすくなります。なお、ここで示す内容は一般的な考え方の整理であり、個々の家庭の事情や物件の状態によって判断が変わることがあります。具体的な手続きの要否は、必ず司法書士・税理士など専門家に確認してください。

ケースA:土地は親、建物は子(存命の親子)

親が存命で、土地は親名義、建物は子名義というケースです。親の同意が得られるなら、親から子へ土地を譲る(売買・贈与・相続時精算課税など)、または子から親へ建物を譲る方法で名義を一本化できます。贈与の場合は贈与税、売買の場合は譲渡所得税がかかる可能性があるため、金額が大きい場合は税理士への確認が欠かせません。親に認知機能の低下がある場合は、成年後見制度の利用が必要になることもあり、手続きに時間がかかる点に注意してください。また、将来的に実家を売却する予定が決まっているのであれば、名義統一と売却の相談を同時に進めておくと、名義変更にかけた費用や時間が無駄にならず、スケジュール全体を短縮しやすくなります。

ケースB:土地は祖父母(未登記のまま)、建物は親の名義

数世代前の名義が放置されているケースです。まず相続登記(祖父母から現在の相続人への名義変更)を行う必要があり、相続人の数が多いほど戸籍の収集や同意形成に時間がかかります。2024年4月の相続登記義務化により、過去の相続分も原則2027年3月31日までに登記することが求められているため、該当する場合は早めに着手してください(法務省)。手続きを自分で進める時間がない場合は、片付けと並行して実家じまい代行の相談窓口から司法書士につなぐ進め方もあります。

ケースC:きょうだいで土地と建物を別々に相続した

遺産分割協議の際に、土地を兄、建物を弟のように分けてしまったケースです。今になって売却しようとすると、兄と弟それぞれの合意が必要になります。関係が良好なら名義統一や同時売却がスムーズですが、関係が疎遠な場合や意見が合わない場合は、名義が違う状態のまま買取を相談できる窓口を使う方が現実的なことがあります。

ケースD:共有者の一人が行方不明、または連絡が取れない

共有名義になっている土地や建物で、共有者の一人と連絡が取れない、あるいは所在が分からないケースです。この場合は、不在者財産管理人の選任や、所有者不明土地・建物の管理制度の活用など、裁判所を通じた手続きが必要になることがあります。個人で進めるのは難易度が高いため、早い段階で司法書士・弁護士に相談することをおすすめします。

ケースE:二世帯住宅で建物は親子共有、土地は親の単独名義

建物を親子の共有名義で登記し、土地は親の単独名義のままになっているケースです。親が亡くなると、土地は相続人全員(子が複数いれば全員)で分けることになりますが、建物の共有者である子は、建物についてはすでに自分の持分を持っています。このように「建物の権利関係」と「相続で分けるべき土地の権利関係」が食い違うと、きょうだい間で「建物に住んでいた子だけが得をするのではないか」という感情的な対立が起きやすくなります。早い段階で、土地についても遺産分割協議の中で誰が取得するかを明確にし、必要であれば建物の共有者である子が、土地の相続分を他のきょうだいから買い取る(代償分割)といった方法で整理するのが現実的です。

ケースF:住宅ローンの残債が土地または建物の名義人に残っている

土地または建物の名義人に住宅ローンの残債がある場合、売却するにはローンを完済して抵当権を抹消する必要があります。団体信用生命保険(団信)に加入していた名義人が死亡した場合は、団信によりローンが完済され抵当権抹消の手続きのみで済むことがありますが、団信未加入やローンが完済されていない場合は、売却代金でローンを完済できるかどうかの確認が先に必要です。残債がオーバーローン(売却額より残債が多い)になりそうな場合は、金融機関への相談や任意売却の検討も含めて、早めに専門家に相談してください。

名義を一本化する手続きの流れと費用の目安

名義統一を選ぶ場合、一般的な流れは次のとおりです。

ステップ 内容
①名義人全員の確認 登記簿・名寄帳で現在の所有者を正式に確認する
②名義統一の方法を決める 売買・贈与・相続(まだ相続登記が済んでいない場合)のいずれで統一するか決める
③必要書類の収集 戸籍謄本、印鑑証明書、登記簿謄本など。相続が絡む場合は法定相続情報一覧図があると手続きが早い
④所有権移転登記(または相続登記)の申請 司法書士に依頼する場合、土地・建物それぞれの登記にあわせて手数料がかかる
⑤名義統一後、売却活動を開始する 仲介・買取いずれの窓口でも、名義が一本化されていれば話が進めやすい

司法書士への登記手数料は内容や地域によって幅がありますが、相続登記・所有権移転登記いずれも、必要書類が揃っていないほど調査や収集の時間がかかり、結果的に費用も上がりやすい傾向があります。金額の目安は個々の案件によって異なるため、具体的な見積もりは司法書士に直接確認してください。

戸籍の収集が難航するケースに注意

名義統一の手続きで最も時間がかかりやすいのが、戸籍謄本の収集です。数世代前の名義が放置されているケースでは、亡くなった名義人の戸籍をさかのぼって、相続人が何人いるかを確定させる必要があります。本籍地が遠方や複数の市区町村にわたっている場合、郵送での取り寄せに数週間かかることもあります。すでに法定相続情報一覧図を取得している場合はこの手間を省けるため、相続が複数回にわたっている実家では、早い段階で司法書士に調査を依頼することをおすすめします。相続人の中に面識のない親族(代襲相続人など)が含まれていることが判明する場合もあり、その際は連絡先の調査にもさらに時間がかかることを想定しておく必要があります。

登録免許税の目安

名義統一や相続登記の際には、登記のたびに登録免許税がかかります。国税庁タックスアンサーNo.7191の登録免許税の税額表によれば、土地の所有権移転登記の税率は、相続・法人の合併・共有物の分割の場合は不動産の価額の1,000分の4(0.4%)、売買・贈与など原因の場合は原則1,000分の20(2%)とされています。ただしこの1,000分の15=1.5%への軽減措置は、土地の売買による所有権移転登記(令和11年3月31日までの登記)に限定されており、贈与による移転登記には適用されません(国税庁タックスアンサーNo.7191)。つまり、相続を原因として名義を統一する場合は税率が低く、親から子への売買・贈与で統一する場合は税率が高くなる傾向があり、特に贈与は軽減措置の対象外である点に注意が必要です。どちらの原因で名義統一を行うかによって、登録免許税の負担が変わる点も、方法を選ぶ際の判断材料になります。

名義人の一人が認知症などで判断能力が低下している場合

名義統一や売却の合意には、名義人本人の意思確認が必要です。認知機能の低下などで本人が契約内容を理解・判断できない状態にある場合、そのままでは売買契約や所有権移転の手続きを進めることができません。この場合は家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立て、後見人が本人に代わって手続きを進める必要があります。成年後見の申立てから後見人が決まるまでには数か月かかることが一般的で、売却のスケジュールに大きく影響するため、該当する可能性がある場合は早めに専門家へ相談してください。

名義が違う実家にかかる税金の考え方

税金の扱いは、名義統一の方法と、最終的にどう売却するかによって変わります。断定的な金額はお伝えできませんが、確認しておきたい一次情報を整理します。名義が違う実家の税金を考える際は、「①名義統一の手続き自体にかかる税金」と「②売却したときの譲渡所得にかかる税金」の二段階で分けて整理すると、何を確認すべきかが分かりやすくなります。①は前の章で紹介した登録免許税や、贈与・売買に伴う税金、②は次に紹介する空き家特例や取得費の扱いが関わってきます。

空き家の譲渡所得の特別控除(空き家特例)

相続した家を売却する際、一定の要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円(相続人が3人以上の場合は2,000万円)を控除できる特例があります。国税庁のタックスアンサーNo.3306によれば、この特例は「相続または遺贈により被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等を取得した相続人」が、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、売却代金1億円以下で売却した場合に適用されます(国税庁タックスアンサーNo.3306)。この要件は「家屋とその敷地等を取得した相続人」が前提になっているため、土地と建物の相続人(名義人)が異なる場合、特例の適用条件を満たせるかどうかは個々の事情によって判断が分かれます。該当する可能性がある場合は、売却前に税務署または税理士に必ず確認してください。

取得費が分からないときの5%ルール

先祖代々の土地・建物で、取得費(購入時の価格)が分からない場合、国税庁タックスアンサーNo.3258により、売却金額の5%相当額を取得費とすることができます。例えば3,000万円で売却した場合、取得費が不明なら150万円を取得費として計算できます(国税庁タックスアンサーNo.3258)。名義が違う実家は、取得の経緯が古く取得費の記録が残っていないケースが多いため、この5%ルールの対象になりやすい点も押さえておくとよいでしょう。

名義統一の際にかかる税金

売買で名義統一をする場合は譲渡所得税、贈与で統一する場合は贈与税が、それぞれの移転方法に応じてかかる可能性があります。金額によって課税の有無や計算方法が変わるため、具体的な判断は税理士または税務署に確認することをおすすめします。

相続時精算課税を使う選択肢もある

親が存命で、親の土地を子の名義に統一したい場合、通常の贈与では贈与税がかかりますが、一定の要件のもとで「相続時精算課税」という制度を選択すると、2,500万円までの贈与について贈与税が課税されず、将来の相続時にまとめて相続税として計算される仕組みを利用できる場合があります。この制度は選択すると取り消せない、将来の相続税の計算に影響するなど注意点が多いため、利用を検討する場合は必ず税理士に相談してから判断してください。

固定資産税は売却・名義統一が完了するまで引き続き発生する

名義統一や売却の手続きを進めている間も、固定資産税は現在の名義人に課税され続けます。手続きに時間がかかりそうな場合は、誰がいつまで固定資産税を立て替えるか、名義人同士であらかじめ取り決めておくと、後々の不公平感によるトラブルを避けられます。

名義統一を急ぐべきか、まず売却の相談を先にすべきか

「名義統一を終えてから売却の相談をすべきか」「先に売却の相談をしてから名義統一の方針を決めるべきか」で迷う方も多くいます。結論としては、どちらを先にしても構いません。買取を前提にする場合は、提携の宅建業者に相談した時点で、名義が違う状態のままどこまで進められるかを確認できるため、名義統一の手続きと並行して話を進められます。一方、仲介で高く売ることを優先する場合は、買い手を探し始める前に名義統一を済ませておくほうが、契約相手が見つかりやすくなります。どちらの方針にするかを先に決めておくと、専門家への相談もスムーズになります。

名義を放置するリスク

「いつか整理すればいい」と名義の問題を放置すると、次のようなリスクが積み重なります。

相続登記義務化による過料のリスク

2024年4月1日から相続登記が義務化され、不動産を相続したことを知った日から3年以内に登記の申請をしないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象になり得ます。2024年4月1日より前に発生していた相続についても、原則2027年3月31日までに登記が必要です(法務省)。名義が違う実家は、多くの場合その背景に未登記の相続が隠れているため、この期限に該当していないか確認しておく必要があります。

固定資産税が最大6倍になるリスク(管理不全空き家・特定空家)

空家等対策の推進に関する特別措置法の改正により、2023年12月13日から「管理不全空き家」の制度が運用されています。管理が不十分なまま放置され、自治体から勧告を受けた状態が続くと、住宅用地の固定資産税の軽減特例が外れ、固定資産税が最大6倍になる場合があります(国土交通省)。名義が違うことを理由に誰も手続きを進めないまま空き家として放置してしまうと、このリスクが現実化しやすくなります。

総務省の調査でも空き家は増加傾向

総務省の住宅・土地統計調査では、全国の空き家数・空き家率は調査ごとに増加傾向が続いていることが示されています。名義の複雑さを理由に放置される実家が多いことも、背景の一因として指摘されています。実家の空き家化を防ぐには、名義の整理と売却・活用の判断を早めに行うことが重要です。

放置が長引くほど、関係者の合意形成が難しくなる

名義の問題を放置している間に、名義人の一人が亡くなると、その名義人の相続人(配偶者・子など)がさらに権利を引き継ぎ、関係者の数が増えていきます。例えば、親子で共有していた建物の名義が、親の死後に兄弟姉妹へ分散し、さらにその配偶者や子にまで権利が広がるといった具合です。関係者が増えるほど、全員の同意を取るための連絡・調整にかかる時間と手間が増え、売却の判断そのものが先送りされやすくなります。名義の問題は「今、関係者が少ないうちに」整理するほど、負担が小さく済む傾向があります。

片付けから売却までを一つの窓口で進める方法

名義が違う実家は、名義の確認・統一の手続きと、家の中の片付けが同時に必要になることが多く、どちらから手をつければよいか分からなくなりがちです。安心実家じまいでは、提携の司法書士による名義確認・相続登記の相談と、遺品整理・残置物の片付けの相談を、同じ窓口でまとめてご案内しています。

片付けを先に進めたい場合は遺品整理サービスで、残置物の仕分け・搬出・供養までご相談いただけます。片付けと名義整理、提携の宅建業者による売却相談までまとめて進めたい場合は実家じまい代行をご覧ください。遠方にお住まいで立ち会いが難しい場合も、鍵をお預かりして進める方法があり、作業の前後の写真をご報告しますので、立ち会えない名義人の方にも状況を共有しやすくなります。

神奈川県内の実家であれば神奈川県の空き家買取のページで、提携の宅建業者による買取の相談先をまとめています。お住まいの地域によって対応できる業者や進め方が異なるため、まずは状況を写真でお送りいただくところから始めることをおすすめします。

相談してから売却までの一般的な流れ

名義が違う実家について相談いただいた場合、一般的には次のような流れで進みます。まず写真や登記簿の情報(分かる範囲で構いません)をお送りいただき、概算の見積もりと、名義の状況から想定される手続きの方針をお伝えします。次に、片付けが必要な場合は仕分け・搬出の日程を決め、並行して提携の司法書士が名義確認・相続登記や名義統一の手続きを進めます。名義の整理が完了した時点、あるいは名義が違う状態のまま買取・仲介のどちらで進めるかが決まった時点で、提携の宅建業者が契約・売却の手続きに入ります。片付けと名義整理を同時並行で進められるため、どちらかが終わるのを待つよりも、全体の期間を短縮できることが多いです。

どの専門家に、どの順番で相談すればよいか

名義が違う実家の相談先は複数あり、どこから始めればよいか迷う方が多くいます。おおまかな目安としては、まず「名義の確認」と「相続登記が必要かどうか」を司法書士に確認し、次に売却額や税金に関わる判断(空き家特例の適用可否、取得費の扱いなど)を税理士に確認し、最後に実際の売却を仲介業者または買取業者(提携の宅建業者)に依頼する、という順番になることが多いです。ただし、片付けや残置物の処分が先に必要な場合は、司法書士への相談と並行して進めても問題ありません。どこから手をつければよいか分からない場合は、当事務局の窓口にご相談いただければ、状況に応じて適切な専門家へおつなぎします。

名義の整理と片付け、どちらから相談しても大丈夫です

登記簿の確認方法から、片付け・買取の窓口まで。写真を送るだけで概算のお見積もりをお出しします。

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名義が違う実家を売却する前の実務チェックリスト

着手前に確認しておきたい項目を一覧にしました。印刷して、ご家族間の話し合いにご活用ください。

確認項目 チェックのポイント
土地・建物それぞれの登記簿を取得したか 法務局またはオンラインで現在の所有者名を正式に確認する
名義人全員の生存・連絡可否を確認したか 行方不明・判断能力の低下がある場合は専門家への相談を先に検討する
相続登記の期限に該当していないか 2024年4月1日以前の相続分は2027年3月31日までの登記が必要
名義統一か、名義が違う状態のままの売却か方針を決めたか 名義人同士の関係性・手続きにかけられる時間で判断する
買取・仲介・有料引き取りのどれを軸にするか決めたか 手取り額とスピードのバランスで比較する
空き家特例・取得費の扱いを確認したか 税額に関わる判断は税理士・税務署に確認する
片付け・残置物の扱いを決めたか 売却前にどこまで片付けるか、業者に任せる範囲を決めておく
固定資産税の通知が複数に分かれていないか 土地用・建物用で別々に届いている場合は名義が違う可能性が高い

このチェックリストのうち、特につまずきやすいのが「相続登記の期限」と「名義統一か、名義が違う状態のままの売却か」の判断です。この二つを先に整理しておくと、その後の相談がスムーズになります。印刷してご家族で共有する際は、各項目の担当者(誰が何を確認するか)もあわせてメモしておくと、後から「誰が確認したか分からない」という事態を防げます。

名義統一・売却にかかる期間の目安

名義が違う実家の売却は、仲介や買取そのものの期間に加えて、名義統一や相続登記の手続き期間が加算されることがあります。おおまかな目安を一覧にしました。

状況 名義統一・相続登記にかかる期間の目安
名義人全員の意思確認が取れ、書類も揃っている 2週間〜1か月程度
戸籍の収集が必要(数世代前の相続が未登記) 1〜3か月程度
名義人の一人が認知症などで判断能力が低下している 成年後見人の選任を含め数か月〜半年程度
共有者の一人が行方不明・連絡が取れない 不在者財産管理人の選任など裁判所の手続きを含め半年〜1年程度

この目安はあくまで一般的な傾向であり、個々の事情によって大きく変わります。特に行方不明者がいるケースや、相続人の数が多いケースは、見積もりより長くかかることを前提にスケジュールを組んでおくと安心です。売却を急ぐ事情(転勤・施設入所の費用準備・固定資産税の負担など)がある場合は、名義統一の完了を待たずに買取の相談を始めておくことで、全体の期間を圧縮できる可能性があります。

測量・境界確認が必要になる場合もある

土地の売却では、買主や仲介業者から境界確定測量を求められることがあります。名義が違う実家で、土地の境界が長年確認されていない場合、測量の実施にも一定の時間と費用がかかります。名義統一の手続きと並行して、境界確認の必要性についても早めに不動産会社や土地家屋調査士に相談しておくと、売却直前になって手続きが滞るリスクを減らせます。

よくある質問

土地と建物の名義が違う実家でも、そのまま売却できますか?
可能です。土地の名義人と建物の名義人がそれぞれ同意すれば、名義を一本化せずに同時売却する方法や、土地・建物を別々に単独で売却する方法があります。ただし一般の仲介市場では買い手が見つかりにくい傾向があるため、名義が違う状態のまま相談できる買取窓口を併せて検討すると選択肢が広がります。
名義統一にはどのくらい費用がかかりますか?
司法書士への登記手数料や、贈与・売買によって生じる税金の有無によって金額は大きく変わります。必要書類が揃っているかどうかでも調査の手間が変わるため、具体的な費用は司法書士や税理士に直接見積もりを確認することをおすすめします。
相続登記をしないまま放置するとどうなりますか?
2024年4月1日の相続登記義務化により、不動産を相続したことを知った日から3年以内に登記をしないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象になり得ます。2024年4月1日より前の相続分についても、原則2027年3月31日までの登記が必要です。該当する可能性がある場合は、早めに法務局や司法書士に相談してください。
空き家特例は、土地と建物の名義が違う場合でも使えますか?
国税庁タックスアンサーNo.3306の空き家特例は「被相続人居住用家屋および敷地等を取得した相続人」が売却した場合が対象で、土地と建物を同一の相続人が取得することが前提とされています。土地と建物の相続人(名義人)が異なる場合、適用できるかどうかは個々の事情によって判断が分かれるため、売却前に税務署または税理士に必ず確認してください。
共有者の一人が行方不明の場合はどうすればいいですか?
不在者財産管理人の選任など、裁判所を通じた手続きが必要になる場合があります。個人で進めるのは難易度が高いため、早い段階で司法書士・弁護士に相談することをおすすめします。
親が存命のまま、親の土地を子の名義にすることはできますか?
可能です。売買または贈与のいずれかで名義を移すことができます。贈与の場合は原則として贈与税がかかりますが、一定の要件のもとで相続時精算課税という制度を選択できる場合があります。いずれの方法でも、金額や親の判断能力の状況によって注意点が変わるため、司法書士・税理士に事前に相談することをおすすめします。
借地の上に建物だけを所有している場合も、この記事の方法で売却できますか?
借地上の建物の売却は、土地と建物の名義が違う一般的なケースとは異なり、地主の承諾(譲渡承諾料の支払いを含む)が必要になることが一般的です。借地契約書を確認し、契約の種類や条件を整理したうえで、地主や司法書士、不動産会社に相談してください。
名義統一にはどのくらいの期間がかかりますか?
必要書類がすべて揃っている場合は数週間程度で完了することもありますが、戸籍の収集に時間がかかる場合や、名義人の中に認知症の方・行方不明の方がいる場合は、数か月以上かかることもあります。早めに司法書士へ相談し、必要な手続きの全体像を確認しておくことをおすすめします。
土地の境界が分からない場合、名義が違う実家は売却できませんか?
境界が未確定でも売却できないわけではありませんが、買主や仲介業者から境界確定測量を求められることがあります。測量には一定の期間と費用がかかるため、名義統一の手続きと並行して、早めに不動産会社や土地家屋調査士に相談しておくことをおすすめします。買取であれば、境界未確定のまま相談できる窓口もあります。

まとめ

土地と建物の名義が違う実家は、放置すればいずれ相続登記義務化や固定資産税の増額といったリスクにつながります。一方で、名義が違う状態のままでも売却の選択肢は複数あり、必ずしも名義統一を先に済ませる必要はありません。振り返ります。

  • 名義の違いは登記簿謄本・名寄帳で正式に確認する
  • 売却方法は「名義統一してから売る」「名義が違うまま同時売却」「単独売却」の3パターン
  • 買取・仲介・有料引き取りの3択を、手取り額とスピードで比較する
  • 2024年4月の相続登記義務化により、放置すると10万円以下の過料の対象になり得る
  • 空き家特例は土地・建物を同一相続人が取得していることが前提。名義が違う場合は税務署・税理士に確認する
  • 片付け・名義整理・売却の相談は、まとめて一つの窓口に任せると負担が減る

名義が違う実家の売却に正解の進め方は一つではありません。ご家族の関係や、かけられる時間・費用に合わせて、無理のない方法を選んでいただければ十分です。判断に迷う場合は、一人で抱え込まず、司法書士や税理士など専門家に相談してください。特に、相続登記の期限が迫っている、名義人の中に認知症の方や行方不明の方がいるといった事情がある場合は、放置する時間が長くなるほど手続きが複雑になりやすいため、気づいた時点で早めに動き出すことをおすすめします。「どこから手をつければいいか分からない」という状態そのものが、名義が違う実家でよく見られる最初の壁です。まずは登記簿を取得して現状を正確に把握するところから始めてみてください。それだけでも、次に何をすればよいかが見えてくるはずです。実家の売却全体の進め方については実家の売却(片付けから売却まで窓口ひとつ)もあわせてご覧ください。

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この記事を書いた人

安心実家じまい事務局です。実家の片付けや遺品整理、空き家になった家の処分について、はじめての方にも分かるように記事を書いています。提携している現場の業者や司法書士と一緒に、費用の相場・自治体のごみ出しルール・補助金といった、調べてもなかなか分かりにくいところを一つずつ確かめながらまとめています。「誰に頼めばいいか分からない」という段階のご相談も、LINEやお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
運営は株式会社Sora Capital(東京都渋谷区・安心実家じまい事務局)です。相続・登記・法務に関する記述は、提携の司法書士・行政書士 久留慎一郎が監修しています。税額の計算や申告の判断は、税理士にご確認ください。

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