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親の通帳・保険の場所、帰省時にどう聞く?もしもの時に困らない確認リスト

最終更新日:2026年10月13日|監修:司法書士・行政書士 久留慎一郎先生・安心実家じまい事務局

司法書士・行政書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。

監修の範囲:相続・登記・法務に関する記述(司法書士・行政書士の業務範囲)。片付け・買取・費用相場などの記述は安心実家じまい事務局が編集しています。監修者プロフィール

税金について:税額の計算や特例を使えるかどうかの判断は税理士の業務で、監修の範囲に含みません。申告の前に、税理士または所轄の税務署でご確認ください。

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 不動産の名義変更
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理

この記事の結論

  • 親の通帳・保険証券の場所は、「もしもの時に困らないように」という前向きな理由で切り出すと、身構えられにくくなります。「財産を把握したい」ではなく「必要な手続きをスムーズにしたい」という伝え方が基本です。
  • 親が亡くなると、口座は金融機関に死亡を知られた時点で凍結され、原則として家族でも自由に引き出せなくなります。一定額までは「預貯金の仮払い制度」で払い戻せますが、場所が分からなければ申請すらできません。
  • 生命保険は、契約があること自体を家族が知らず、請求されないまま忘れられるケースがあります。「生命保険契約照会制度」という調べる手段はありますが、有料(6,000円〜)です。
  • 帰省のタイミングで、通帳・保険証券・印鑑・マイナンバーカードの保管場所を、エンディングノートや財産目録の形で確認しておくことが、最も確実な備えです。
目次

なぜ「場所を聞く」ことが重要なのか

親が元気なうちは、通帳や保険証券がどこにあるかを聞くこと自体が「縁起でもない」「財産を狙っていると思われないか」と、切り出しにくいテーマです。しかし、実際に相続が発生した場面で最も時間がかかるのは、財産の金額の多い少ないよりも、「何がどこにあるのか分からない」という状態からのスタートです。通帳が見当たらない、どの銀行と取引があったか分からない、保険に入っていたかどうかも定かでない——こうした状態では、必要な手続きに着手することすらできません。

特に、親と離れて暮らしている場合、帰省できる機会は限られています。年に数回の帰省のタイミングで、少しずつ、通帳・印鑑・保険証券・権利書といった重要書類の保管場所を確認しておくことが、いざというときの負担を大きく減らします。一度にすべてを聞き出そうとせず、「もしもの時に困らないように、場所だけ教えておいてほしい」という範囲に絞ることが、親の心理的なハードルを下げるコツです。

聞き方の工夫|「財産」ではなく「手続き」の話にする

切り出し方としては、「財産がいくらあるか」を聞くのではなく、「何かあったときに、どこに連絡すればいいか」「通帳はどこにあるか」といった、手続き面にフォーカスした質問にすると、親も答えやすくなります。また、自分の話(自分自身もエンディングノートを書いている、自分の通帳の場所も家族に伝えているなど)を先に伝えてから、「お父さん・お母さんのことも教えておいてほしい」と水を向けると、一方的に聞き出す形にならず、自然な会話として進めやすくなります。

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親が亡くなると口座はすぐに凍結される

金融機関は、口座名義人が亡くなったことを知った時点で、その口座を凍結します。凍結は、相続人同士の財産争いを防ぎ、相続財産を保全するための仕組みですが、凍結後は家族であっても原則として自由に引き出しや振込ができなくなります。葬儀費用や当面の生活費を、亡くなった親の口座から支払おうとしていた場合、この凍結によって資金繰りに困るケースは少なくありません。

この問題に対応するため、2019年7月1日に施行された民法の改正により、「預貯金の仮払い制度」(民法第909条の2)が設けられました。この制度により、相続人は家庭裁判所の判断を経ずに、各相続人が単独で、一定の上限額までであれば預貯金の払い戻しを受けられます。上限額は、同一の金融機関ごとに「相続開始時の預金残高×3分の1×その相続人の法定相続分」で計算され、かつ150万円が上限とされています。ただし、この制度を使うには、そもそもどの金融機関に、どの支店に口座があるかが分かっていることが前提です。通帳の保管場所や、取引のある金融機関の一覧が分からなければ、仮払い制度があっても活用のしようがありません。

通帳がない場合の調べ方

通帳そのものが見当たらない場合でも、相続人であることを証明する戸籍謄本等を用意すれば、心当たりのある金融機関の窓口で、口座の有無を照会できます。ただし、どの金融機関に取引があるかの見当がつかなければ、全国の金融機関を一つずつ当たることになり、時間と手間が大きくかかります。キャッシュカード、通帳、金融機関からのダイレクトメールや年賀状、記帳済みの家計簿など、手がかりになりそうなものを、生前のうちに把握しておくことが、結果的に最も効率的な備えになります。

生命保険は「入っていること自体」を知らないケースがある

通帳以上に見落とされやすいのが生命保険です。保険証券が自宅のどこにあるか分からない、そもそも契約していたことを家族が知らなかった、という理由で、受け取れるはずの保険金が請求されないまま時間が過ぎてしまうケースが実際にあります。生命保険金は、原則として請求しなければ支払われません。契約の存在に気づかなければ、受取人であっても給付を受けられないままになってしまいます。

こうした事態に備える手段として、生命保険協会が2021年7月1日から提供している「生命保険契約照会制度」があります。これは、親族等が死亡した場合や認知判断能力が低下した場合に、その人が契約者・被保険者となっている生命保険契約の有無を、生命保険協会に加盟する各社にまとめて照会できる制度です。照会料はWEB申請で6,000円、書面申請で7,000円(調査対象者1名につき)かかり、戸籍謄本などの必要書類も用意する必要があります。有料かつ手間のかかる制度であるため、本来は「生前に保険証券の保管場所と、契約している保険会社の一覧を聞いておく」ことが、最もコストのかからない備え方です。

エンディングノート・財産目録を使った聞き方【比較表】

口頭で聞くだけでなく、形に残す方法も検討しておくと、後から見返せて安心です。代表的な2つの方法を比較しました。

方法 特徴 向いているケース
エンディングノート 市販品や自治体配布のものがあり、通帳・保険・葬儀の希望など幅広く記録できる。法的効力はない 財産以外の希望(医療・葬儀・連絡先)もまとめて残したい場合
財産目録 預貯金・保険・不動産・負債などを一覧化する書式。相続発生後の遺産分割協議でもそのまま使える 財産の全体像を正確に把握し、相続手続きに直結させたい場合
口頭での確認のみ 手軽だが、聞いた内容を忘れる・記録が残らないリスクがある まずは話のきっかけを作りたい最初の段階

最初は口頭での確認から始め、親が前向きであれば、エンディングノートや財産目録への記入につなげていくという段階的な進め方が、無理なく続けやすい方法です。財産目録の具体的な書式や記載例、エンディングノートのテンプレートについては、それぞれ別記事で詳しく解説しています。

ケース別シミュレーション|あなたの場合はどうする?

ケースA:帰省の回数が年に1〜2回しかない場合

一度にすべてを聞こうとせず、帰省のたびに1〜2項目ずつ(今回は通帳の場所、次回は保険の契約状況など)確認していく進め方が現実的です。電話やビデオ通話でも、簡単な確認であれば十分可能です。

ケースB:親が「まだ元気だから」と話を避ける場合

財産の話ではなく、「自分の分もエンディングノートを書いている」という自分の話から入り、「お互いに、もしものときのために書いておかない?」という提案にすると、親も受け入れやすくなります。

ケースC:きょうだいが複数いて、誰が聞くか決まっていない場合

一人が窓口になって聞き出すより、きょうだい間で役割を分担し(通帳のことは長男が、保険のことは長女が確認するなど)、聞いた内容を家族で共有できる状態にしておくと、後から「自分は聞いていない」という不公平感を防げます。

ケースD:すでに認知機能の低下が見られる場合

財産の場所を聞くだけでなく、家族信託や任意後見制度の利用を検討する段階に入っている可能性があります。司法書士や弁護士に早めに相談し、本人の判断能力があるうちに手続きを進めることが重要です。

帰省時に確認しておきたい実務チェックリスト

帰省のタイミングで確認しておきたい項目を一覧にしました。印刷して、帰省時の確認用にご活用ください。

確認項目 チェックのポイント
通帳・キャッシュカードの保管場所 取引のある金融機関・支店の一覧も含めて確認する
印鑑(実印・銀行印)の保管場所 実印の場合は印鑑登録の有無もあわせて確認する
保険証券・契約内容 契約している保険会社・証券番号・受取人を確認する
不動産の権利書・固定資産税の納税通知書 自宅以外に保有している不動産がないかも確認する
マイナンバーカード・年金手帳の保管場所 各種手続きで必要になるため、保管場所を把握しておく
デジタル資産(ネット銀行・証券口座・サブスク) ID・パスワードの管理方法を確認する(本人以外が分かる形で)
エンディングノート・財産目録の有無 すでに作成しているか、一緒に作る予定があるかを確認する
葬儀・納骨に関する希望 希望する形式や、すでに契約している葬儀社がないかを確認する

よくある質問

親に通帳の場所を聞くのは失礼にあたりませんか?
聞き方次第で印象は大きく変わります。「財産がいくらあるか」ではなく「もしものときに困らないように、場所だけ教えておいてほしい」という伝え方にすると、身構えられにくくなります。自分自身もエンディングノートを書いている、といった話から始めると、一方的に聞き出す印象を避けられます。
親が亡くなった後、口座からお金を引き出せますか?
金融機関が死亡を把握すると口座は凍結され、原則として自由な引き出しはできなくなります。ただし、民法第909条の2に基づく「預貯金の仮払い制度」により、家庭裁判所の判断を経ずに、相続人単独で一定額(同一金融機関ごとに相続開始時の残高×3分の1×法定相続分、上限150万円)までの払い戻しを受けられます。利用するには、口座がある金融機関を把握している必要があります。
親が入っていた生命保険が分からない場合はどうすればいいですか?
生命保険協会が提供する「生命保険契約照会制度」を利用すると、加盟する各社に契約の有無をまとめて照会できます。照会料はWEB申請で6,000円、書面申請で7,000円かかり、戸籍謄本などの書類も必要です。費用と手間がかかるため、生前に保険証券の保管場所や契約している保険会社を確認しておくことが、最も確実な備えになります。
エンディングノートと財産目録、どちらを先に用意すべきですか?
決まりはありませんが、まずは口頭での確認から始め、親が前向きであればエンディングノートで幅広い希望を記録し、財産の全体像を正確に残したい場合は財産目録を作成するという段階的な進め方がおすすめです。財産目録は相続発生後の遺産分割協議でもそのまま活用できます。

まとめ

親の通帳・保険の場所を聞くことは、縁起でもない話ではなく、もしものときに家族が困らないための準備です。要点を振り返ります。

  • 「財産」ではなく「手続き」の話として切り出すと、親も答えやすい
  • 口座は死亡を金融機関が把握した時点で凍結され、家族でも自由に引き出せなくなる
  • 預貯金の仮払い制度を使うにも、口座がある金融機関の把握が前提になる
  • 生命保険は契約の存在自体が分からず、請求されないまま忘れられることがある
  • 帰省のたびに1〜2項目ずつ確認し、エンディングノートや財産目録につなげる
  • 認知機能の低下が見られる場合は、早めに家族信託・任意後見の相談を検討する

一度にすべてを聞き出そうとせず、焦らず少しずつ進めることが、親子双方の負担を減らす一番の近道です。判断に迷う場合や、実際にもしものときの片付け・手続きについては、一人で抱え込まず専門家や窓口にご相談ください。

読むより、聞いたほうが
早いこともあります

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この記事を書いた人

安心実家じまい事務局です。実家の片付けや遺品整理、空き家になった家の処分について、はじめての方にも分かるように記事を書いています。提携している現場の業者や司法書士と一緒に、費用の相場・自治体のごみ出しルール・補助金といった、調べてもなかなか分かりにくいところを一つずつ確かめながらまとめています。「誰に頼めばいいか分からない」という段階のご相談も、LINEやお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
運営は株式会社Sora Capital(東京都渋谷区・安心実家じまい事務局)です。相続・登記・法務に関する記述は、提携の司法書士・行政書士 久留慎一郎が監修しています。税額の計算や申告の判断は、税理士にご確認ください。

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