
久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士
東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。
■経歴
- 1966年鹿児島県生まれ
- 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
- 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
- 2013年司法書士試験合格
- 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
- 2017年司法書士法人コスモ退職
- 2018年事務所開設
- 2021年司法書士法人設立
■得意領域
- 相続登記・相続手続き
- 不動産の名義変更
- 相続放棄
- 簡易裁判所の訴訟代理
この記事の結論
- エンディングノートは「自分について」「医療・介護」「資産・お金」「葬儀・お墓」「家族へのメッセージ」の5分野を、書ける項目から少しずつ埋めていけば十分です。全項目を一度に完成させる必要はありません。
- まず書くべきは資産の一覧と医療・介護の希望です。判断力を失ったときに家族が最も困るのはこの二つで、ここだけでも埋めれば実用性の大半をカバーできます。
- エンディングノートには法的効力がありません。財産の分け方を確定させたい場合は、別途遺言書の作成が必要です。
- 迷ったら、まず自治体の無料配布版か市販の数百円程度のノートで書く習慣をつけ、書き終えたら存在と保管場所だけ家族に伝えるのが実践的な進め方です。
エンディングノートとは何を書くものか
エンディングノートは、判断力を失ったときや、突然のことがあったときに備えて、自分の考えや情報を書き残しておくノートです。決まった様式はなく、市販のノート、自治体が配布する冊子、スマートフォンのアプリなど、形はさまざまです。共通しているのは「残された家族が困らないように、自分の希望を先に言葉にしておく」という役割で、遺産の分け方を法的に確定させる遺言書とは目的が異なります。
「終活ノート」と呼ばれることもありますが、内容は同じものと考えて差し支えありません。年齢や病気の有無に関わらず、誰でも書き始められる点も特徴です。実際には、定年や子の独立をきっかけに60代で書き始める方、入院や手術をきっかけに70代・80代で初めて手に取る方、離れて暮らす親のために子世代が用意して渡す方など、書き始めるきっかけは人それぞれです。
遺言書との違い
エンディングノートと遺言書は混同されやすいものの、法律上の性質はまったく異なります。もっとも大きな違いは法的効力の有無です。次の表で整理します。
| エンディングノート | 遺言書(自筆証書・公正証書など) | |
|---|---|---|
| 法的効力 | なし | あり(民法で定める方式に従った場合) |
| 書ける内容 | 自由(希望・情報・気持ちなど) | 財産の分け方など、法律で定められた事項が中心 |
| 書式 | 自由(手書き・パソコン・アプリいずれも可) | 自筆証書遺言は原則手書き、公正証書遺言は公証役場で作成 |
| 内容の確認 | 死後すぐに家族が確認できる | 自筆証書遺言は家庭裁判所の検認、法務局保管制度利用分は検認不要 |
| 書き直し | いつでも自由に書き直せる | 方式に従って作り直す必要がある |
遺言書には、自分で全文・日付・氏名を手書きして押印する自筆証書遺言、公証役場で公証人が作成する公正証書遺言などの方式があります。2020年7月10日からは、法務局が自筆証書遺言を預かる「自筆証書遺言書保管制度」も始まっており、自宅保管による紛失や改ざんの不安を減らす選択肢として利用が広がっています。エンディングノートに「財産は長男に多く」といった希望を書いても、それだけでは法的な効力を持ちません。財産の分け方を確定させたい場合は、エンディングノートとは別に遺言書の作成を検討してください。
生前整理・実家じまいとの関係
エンディングノートを書く作業は、身の回りの整理そのものではありません。ノートに情報をまとめる作業と、実際に持ち物や家の中を片付ける作業は、似ているようで別の工程です。ノートを書きながら「この着物は誰に譲るか」「この家はどうするか」を考え始めると、そのまま生前整理に進むケースも多く見られます。生前整理全体の進め方は生前整理の完全ガイドで詳しく解説しています。実家の片付けを具体的な手順で確認したい場合は実家じまいのチェックリストもあわせてご覧ください。
エンディングノートでできること・できないこと
法的効力がないと聞くと「書いても意味がないのでは」と感じる方もいますが、実務上の価値は別のところにあります。できることとできないことを整理すると、次のとおりです。
| できること | できないこと |
|---|---|
| 資産や重要書類の在りかを家族に伝える | 財産の分け方を法的に確定させる(遺言書が必要) |
| 医療・介護の希望を家族や医療者に伝える | 本人に代わって医療同意の法的な決定権を第三者に与える |
| 葬儀・お墓の希望を書き残す | 希望どおりの葬儀を法的に義務づける |
| 家族へのメッセージを残す | 相続税や贈与税の申告手続きそのものを代替する |
つまりエンディングノートは、家族が「何が」「どこに」「どういう希望で」あるかを知るための情報源であり、法的な決定を確定させる書類ではありません。この位置づけを理解したうえで書くと、どこまで書けば十分かの判断がしやすくなります。
なぜ今エンディングノートが注目されているか
もともとエンディングノートは、葬儀の生前相談を利用した方向けに、葬儀社や仏壇店が配布していた資料が始まりとされています。核家族化が進み、離れて暮らす家族が増えたこと、単身高齢者の世帯が増えたことなどを背景に、「本人にしか分からない情報」を残しておく必要性が広く意識されるようになりました。書店に専用コーナーが設けられたり、自治体や地域包括支援センターが講座を開いたりする例も増えており、特別な準備というより、家計簿や年賀状の住所録に近い日常的な備えとして扱われるようになってきています。
とはいえ、エンディングノートを一つ持っていれば安心、というものではありません。次章から、実際にどう書き進めるか、何を優先すべきかを具体的に見ていきます。
エンディングノートの書き方・4つのステップ
白紙のノートを前にすると、どこから手をつければよいか迷う方が少なくありません。次の順番で進めると、途中で挫折しにくくなります。
ステップ1:まず「資産」と「医療・介護の希望」から書く
全項目を上から順番に埋めようとすると、家族構成や自分史のあたりで手が止まりがちです。実用性を優先するなら、判断力を失ったときに家族が最も困る「資産・お金」と「医療・介護の希望」から先に書くことをおすすめします。この二つだけでも埋まっていれば、万が一のときに家族が動きやすくなります。
ステップ2:一度に完成させようとしない
エンディングノートは、一度書いたら終わりではありません。書けない項目は空欄のまま飛ばし、後から書き足す前提で進めてください。とくに「葬儀の希望」や「家族へのメッセージ」は、気持ちが定まらないうちに無理に書く必要はありません。空欄が多いことよりも、書いた部分の情報が正確であることのほうが重要です。
ステップ3:書いたら家族に「存在」だけ伝える
内容をすべて説明する必要はありませんが、ノートの存在と保管場所は早めに家族の誰か一人以上に伝えておいてください。存在を知らせないまま亡くなると、せっかく書いた内容が見つからずに終わってしまいます。金庫や仏間の引き出しなど、家族が捜索の過程で自然に開ける場所に保管しておくのも一つの方法です。
ステップ4:年に一度は見直す
資産状況や医療の希望、連絡先は時間とともに変わります。誕生日や年末年始など、決まったタイミングで見直す習慣をつけておくと、内容が古いまま放置されるのを防げます。書き直すたびに日付を記入しておくと、家族が最新の内容かどうかを判断しやすくなります。
エンディングノートに書く項目一覧【保存版チェックリスト】
市販のノートや自治体配布版によって項目の並び方は異なりますが、書く内容は大きく5つの分野に分けられます。印刷してそのまま使えるよう、分野ごとに具体的な項目をまとめました。優先度は、判断力を失ったときや急な入院時にすぐ必要になる度合いで並べています。
| 分野 | 優先度 | 書く項目の例 |
|---|---|---|
| 1. 資産・お金 | 高 | 預貯金口座(金融機関名・支店)、証券口座、保険契約、年金の種類、不動産、負債(ローン・借入)、貸金庫の有無 |
| 2. 医療・介護 | 高 | 持病・アレルギー、かかりつけ医、服用中の薬、延命治療の希望、介護が必要になった場合の希望(在宅か施設か)、判断が難しい場面での代理人 |
| 3. 自分について | 中 | 本籍・生年月日、学歴・職歴の概略、家系図・親族関係、印鑑登録の有無、重要書類(年金手帳・保険証・権利証など)の保管場所 |
| 4. 葬儀・お墓 | 中 | 葬儀の形式の希望(一般葬・家族葬・直葬など)、宗派、菩提寺、喪主に頼みたい人、お墓の所在地・承継の希望、遺影に使ってほしい写真 |
| 5. 家族へのメッセージ・その他 | 低〜中 | 家族・友人への感謝や思い、ペットの引き取り先の希望、デジタル遺産(SNS・サブスク・暗号資産等)の一覧、緊急連絡先リスト |
重要書類の一覧をまとめておくと役立つ理由
年金手帳・健康保険証・マイナンバーカード・不動産の権利証・保険証券・実印・預金通帳といった重要書類は、多くの家庭でバラバラの場所に保管されています。すべてを1か所にまとめる必要はありませんが、「どの書類が、どこにあるか」の一覧だけをエンディングノートに書いておくと、相続手続きや役所への届出の際に家族が探し回る時間を大幅に減らせます。とくに死亡後は、年金の受給停止手続きや健康保険の資格喪失手続きなど、期限が決まっている手続きが複数同時に発生します。書類の在りかが分かっているだけで、慌ただしい時期の負担はかなり軽くなります。
資産・お金の欄で書き漏らしやすいもの
資産の欄は、預貯金と不動産だけで満足してしまいがちですが、実務でよく見落とされるのは次のような項目です。ネット銀行やネット証券は通帳が発行されないため、家族が存在に気づけないことがあります。金融機関名と支店名、口座の種類(ネット専業か店舗ありか)だけでも書き残しておくと、相続手続きの初動が大きく変わります。生命保険は契約者・被保険者・受取人の関係が複雑になりやすいため、保険会社名と証券番号を控えておくと照会がスムーズです。負債(住宅ローン・カードローン・連帯保証など)も、資産と同様に忘れずに記載してください。負債の有無が分からないまま相続が進むと、後から想定外の借金が見つかり、相続放棄の期限(原則として相続開始を知った日から3か月以内)に間に合わなくなる恐れがあります。
デジタル遺産の欄で書いておきたいこと
近年とくに書き漏れが目立つのがデジタル遺産です。ネット証券・ネット銀行・暗号資産取引所のアカウント、サブスクリプションサービス、SNSアカウント、スマートフォンやパソコンのロック解除方法などが該当します。パスワードそのものを直接書き込むのは避け、「どのサービスを使っているか」の一覧だけをノートに残し、パスワードは別の安全な方法(パスワード管理アプリ、信頼できる家族一人への口頭伝達など)で分けて管理する進め方が安全です。サブスクリプションは解約されないまま引き落としが続くケースが多いため、サービス名だけでも一覧化しておくと家族の手続きが早く済みます。
自分についての欄で書いておきたいこと
本籍地や生年月日、家系図は、相続手続きで戸籍謄本を集める際の手がかりになります。とくに本籍地が結婚や転居で何度も変わっている場合、家族が戸籍を追跡するだけで時間がかかることがあるため、分かる範囲で本籍地の履歴を書いておくと役立ちます。印鑑登録の有無や実印の保管場所、年金手帳・保険証・不動産の権利証といった重要書類の保管場所も、家族が最初に探すことになる情報です。「重要書類はこの引き出しにまとめてある」と一言書いておくだけでも、家中を探し回る手間を減らせます。
葬儀・お墓の欄で書いておきたいこと
葬儀の形式(一般葬・家族葬・直葬など)や宗派、菩提寺の連絡先は、実際に葬儀を手配する家族が最初に迷う項目です。とくに菩提寺との付き合いが薄れている家庭では、寺院名や連絡先が分からず、葬儀のたびに親族間で確認に追われることがあります。お墓が実家から離れた場所にある場合や、承継者が決まっていない場合は、その旨も書き添えておくと、墓じまいや改葬を検討する際の判断材料になります。遺影に使ってほしい写真をあらかじめ指定しておくと、家族が慌てて古いアルバムを探す負担も減らせます。
家族へのメッセージ・ペットの欄で書いておきたいこと
家族へのメッセージは、堅苦しく考える必要はありません。日頃なかなか口に出せない感謝の言葉や、家族との思い出、大切にしてきた考え方などを、思いつくままに書いておくだけで十分です。文章にまとめるのが苦手な場合は、箇条書きでも構いません。ペットを飼っている場合は、引き取り先の希望や、かかりつけの動物病院、普段の食事やケアの方法まで書いておくと、急にペットを預かることになった家族が困らずに済みます。ペットの世話を頼みたい相手がいる場合は、事前に本人の了承を得ておくことも忘れないでください。
医療・介護の欄と「人生会議」の関係
厚生労働省は、人生の最終段階における医療・ケアについて、本人が家族や医療・ケアチームとあらかじめ話し合っておく取り組みを「人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)」として案内しています。エンディングノートの医療・介護欄は、この人生会議で話した内容を書き留めておく場としても活用できます。延命治療の希望は「してほしい」「してほしくない」の二択で終わらせず、「意識がない状態が長期間続く場合は」「回復の見込みが低いと診断された場合は」など、条件をつけて書いておくと、実際の場面で家族や医師が判断しやすくなります。希望は一度書いたら終わりではなく、体調の変化に応じて話し合い、書き直していくことが前提の制度です。
本人が書く場合と、家族がサポートする場合の違い
エンディングノートは本人が自分の言葉で書くのが基本ですが、体力の低下や視力の衰えなどで、家族が聞き取りながら代筆するケースも少なくありません。代筆する場合は、本人の意向を家族の解釈で書き換えないよう注意が必要です。とくに資産の分け方や葬儀の希望など、後で「言った・言わない」が問題になりやすい項目は、本人の言葉をできるだけそのまま書き留め、聞き取った日付と代筆者の名前を添えておくと、後日の食い違いを防ぎやすくなります。判断力の低下が進んでいる場合、本人の意思確認そのものが難しくなることもあるため、迷う場合は早めに医師や専門家に相談してください。
年代・状況別に見る、優先して書くべき項目
エンディングノートは全員が同じ項目を同じ優先度で書く必要はありません。置かれている状況によって、先に埋めておくべき項目は変わります。想定される4つのケースで、優先順位の付け方を整理しました。
| 状況 | 先に書いておきたい項目 | 書き方のポイント |
|---|---|---|
| 60代・持病なし・配偶者と同居 | 資産の一覧、葬儀の希望 | 体力・気力があるうちに、資産と重要書類の保管場所を先に整理しておく。配偶者と一緒に書くと、お互いの希望のすり合わせにもなる |
| 70代以上・持病があり通院中 | 医療・介護の希望、かかりつけ医と服用薬 | 入院時にすぐ提示できるよう、医療情報だけを1枚にまとめたメモを財布や診察券入れに入れておくと、ノート本体と合わせて実用性が高まる |
| 一人暮らしの高齢者 | 緊急連絡先、鍵の保管場所、資産一覧 | 安否確認をする人が限られるため、民生委員や地域包括支援センター、近隣の親族など複数の連絡先を書いておく。ノートの保管場所を遠方の家族にも共有しておく |
| 子世代が親にすすめる場合 | 資産の一覧、医療の希望から声かけ | 「死を意識させる」と身構えず、まず資産の整理から声をかけると受け入れられやすい。親自身の言葉で書いてもらうことを優先し、代筆は最小限にとどめる |
| 単身・子どもがいない方 | 資産の承継先、任意後見・死後事務委任の要否 | 財産を渡す相手が決まっていない場合、法定相続人の範囲(兄弟姉妹・甥姪まで及ぶことがある)を確認したうえで、希望があれば遺言書や任意後見契約とあわせて検討する。葬儀・納骨・各種契約の解約を担う人がいない場合は死後事務委任契約の要否も専門家に相談する |
| 二世帯住宅で親世帯のみ高齢 | 建物・土地の権利関係、同居する子世帯との今後の希望 | 建物の名義や持分が複雑になっているケースが多いため、権利証や登記簿の保管場所を明記する。将来の住み替えや建て替えの希望があれば、同居する家族と早めに共有しておく |
子世代から親にエンディングノートをすすめる場面では、切り出し方に悩む方が多く見られます。いきなり「もしものときのために」と切り出すと、身構えられてしまうことがあります。実家の片付けや相続の話し合いのついでに「こういうノートがあるらしいよ」と資料を渡す程度から始め、本人のペースで書き進めてもらう進め方のほうが、結果的に受け入れられやすい傾向があります。
単身で子どもがいない方の場合、財産を引き継ぐ法定相続人が兄弟姉妹やその子(甥・姪)にまで及ぶことがあり、疎遠になっている親族が相続人になるケースも珍しくありません。希望する相手に財産を残したい場合は、エンディングノートに書くだけでなく遺言書の作成を検討してください。また、判断力が低下したときに備える任意後見契約や、葬儀・納骨・行政手続きなどを代行してもらう死後事務委任契約も、単身の方が検討する選択肢の一つです。これらは専門的な手続きが必要になるため、司法書士や弁護士など専門家への相談が現実的な進め方になります。
夫婦で一緒に書く場合の進め方
夫婦で一緒に書く場合は、1冊のノートを共有するより、それぞれが自分のノートを持つ進め方をおすすめします。資産状況や医療の希望は本人にしか答えられない項目が多く、1冊にまとめると記入が中途半端になりがちです。それぞれが自分のノートを書いたうえで、保管場所だけをお互いに伝えておけば、どちらかに万が一のことがあっても、もう一方がすぐに内容を確認できます。二人で同じタイミングで書き始めると、片方だけが先延ばしにする事態も防ぎやすくなります。共有の資産(自宅や共同名義の口座など)については、記載内容に食い違いが出ないよう、書く前に軽く話し合っておくと安心です。
無料テンプレの選び方|自治体配布・市販ノート・アプリを比較
エンディングノートの入手方法は、大きく分けて3種類あります。それぞれ向き・不向きがあるため、自分の状況に合わせて選んでください。
| 自治体の無料配布版 | 市販ノート | アプリ・デジタル版 | |
|---|---|---|---|
| 費用 | 無料 | 数百円〜3,000円程度が中心 | 無料〜月額課金制まで幅がある |
| 項目数 | 絞られている(10〜20項目程度が多い) | 幅広い(デジタル遺産まで網羅する冊子も多い) | 製品によって幅がある |
| 書き始めやすさ | ◎ 項目が少なく迷いにくい | ○ 記入例つきが多く参考にしやすい | △ 操作に慣れが必要な場合がある |
| 保管・紛失リスク | 紙のため紛失・劣化のリスクあり | 紙のため紛失・劣化のリスクあり | パスワード忘れ・サービス終了のリスクあり |
| 家族との共有 | 保管場所を口頭で伝える必要がある | 保管場所を口頭で伝える必要がある | 共有機能があれば家族のアカウントに通知できる場合がある |
| 向いている人 | 初めて書く、まず試したい人 | 項目を幅広く網羅したい人 | スマートフォンの操作に慣れている人、家族と離れて暮らす人 |
自治体の無料配布版は、地域包括支援センターや市区町村の高齢福祉担当窓口で配布されている場合があります。取り扱いの有無や配布条件は自治体によって異なるため、お住まいの市区町村の窓口やウェブサイトで確認してください。項目数が少なく作りもシンプルなため、初めてエンディングノートに触れる方が「まず書いてみる」入り口として使いやすい形式です。
市販のノートは書店や文具店、通信販売で購入でき、価格は数百円のものから、記入例や解説が充実した3,000円前後のものまで幅があります。医療・介護からデジタル遺産まで幅広い項目を網羅したい場合は、市販ノートのほうが選択肢が豊富です。表紙や紙質にこだわった製品もあり、日常的に手に取りやすいデザインを選ぶことも、書き続けるモチベーションにつながります。
アプリやデジタル版は、スマートフォンやパソコンで入力・編集できる形式です。書き直しが容易で、家族と情報を共有する機能を持つサービスもあります。一方で、パスワードを忘れてしまう、提供元のサービスが終了してしまうといったリスクもあるため、重要な情報は紙にも控えておくなど、一つの方法に頼りきらない工夫が安心です。
迷ったときの選び方
どれか一つに決めきれない場合は、まず自治体の無料配布版か、数百円程度の市販ノートで「書く習慣」をつけることから始めてください。書き慣れてきた段階で、項目の多い市販ノートに書き写す、あるいはアプリに移行するという二段階の進め方でも問題ありません。大切なのは、どの形式を選ぶかより、実際に手を動かして書き始めることです。
手に取る前に確認しておきたいポイント
ノートやアプリを選ぶ段階で、次の点を確認しておくと、書き始めてから「合わなかった」と感じる失敗を防げます。
- デジタル遺産・SNS・サブスクリプションの記入欄があるか(古い版のノートには項目自体がないことがある)
- 医療・介護の希望を書く欄が、単なるチェック式か、自由記述で細かく書けるか
- 法的効力がないことの注意書きが分かりやすく書かれているか
- 持ち運びやすいサイズか、自宅で保管する前提のサイズか
- アプリの場合、家族と共有する機能があるか、退会・解約時にデータを引き出せるか
無料テンプレをダウンロードするときの注意点
「エンディングノート 無料 テンプレ」で検索すると、PDFやWord形式でダウンロードできるテンプレートが多数見つかります。手軽に始められる一方、いくつか注意したい点があります。ダウンロード時に不必要に細かい個人情報(住所・電話番号・メールアドレスなど)の入力を求めるサイトは避けてください。運営元が明記されていない、あるいは不動産会社・保険会社・葬儀社など特定の業者への問い合わせ誘導が強いサイトも、テンプレートの入手だけが目的であれば距離を置いたほうが無難です。公的機関(自治体・地域包括支援センター)や、運営元・監修者が明記されている事業者が配布するテンプレートを選ぶと、内容の信頼性という面でも安心して使えます。印刷して使うPDF形式であれば、パソコンやスマートフォンにファイルを残さず、印刷後にダウンロードデータを削除しておくと、情報漏えいのリスクをさらに減らせます。
書いたノートをどう活かすか
エンディングノートは、書いて終わりではなく、書いた後にどう扱うかで実用性が変わります。ここでは、書き終えた後の使い方を整理します。
家族会議で共有する範囲
ノートの内容をすべて家族会議で読み上げる必要はありません。とくに資産の金額や葬儀の細かい希望は、本人が「まだ話したくない」と感じる場合もあります。最低限共有しておきたいのは、ノートの存在と保管場所、そして医療・介護で判断が必要になったときに誰に連絡してほしいかの2点です。資産の詳細や財産の分け方は、遺言書の作成や相続の話し合いのタイミングで、あらためて共有する進め方でも構いません。
専門家に相談すべきタイミング
次のような場合は、エンディングノートを書く段階から専門家に相談しておくと、後の手続きがスムーズになります。相続財産に不動産が複数ある、法定相続人以外に財産を渡したい、家族間で意見の対立が予想される、といった事情があるときは、司法書士や弁護士への相談を検討してください。資産の分け方や税金面まで含めて整理したい場合は、ファイナンシャルプランナーや税理士が窓口になることもあります。エンディングノートに「誰に相談したか」「いつ相談したか」をメモしておくと、家族が同じ専門家に続けて相談しやすくなります。
遺言書に進むときの流れ
エンディングノートを書き進める中で、財産の分け方について明確な希望が固まったら、遺言書の作成を検討する段階です。遺言書には主に自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3方式があり、それぞれ作成方法と特徴が異なります。
| 方式 | 作成方法 | 特徴 |
|---|---|---|
| 自筆証書遺言 | 本人が全文・日付・氏名を自書し、押印する | 費用をかけずに自分だけで作成できるが、方式の不備で無効になるリスクがある。法務局の保管制度を使えば紛失・改ざんの不安を減らせる |
| 公正証書遺言 | 公証人が本人から内容を聞き取り、証人2名の立ち会いのもとで作成する | 方式の不備が起きにくく、原本が公証役場に保管される。証人の手配と公証人への費用がかかる |
| 秘密証書遺言 | 本人が作成した遺言書に封をし、公証役場でその存在のみを証明してもらう | 内容を誰にも知られずに作成できるが、方式の不備で無効になるリスクは自筆証書遺言と同様に残る |
自筆証書遺言は自分だけで作成できる手軽さがある一方、方式の不備で無効になったり、死後に見つからなかったりするリスクがあります。2020年7月10日からは、法務局が自筆証書遺言を預かる自筆証書遺言書保管制度が始まっており、自宅保管の不安を減らす選択肢として利用が広がっています。公正証書遺言は、公証人が関与するため方式の不備が起きにくく、原本が公証役場に保管される安心感がありますが、証人の手配や費用が必要です。どちらの方式を選ぶか迷う場合も、司法書士や公証役場への相談が最初の一歩になります。
エンディングノートに関するよくある誤解
相談の現場では、エンディングノートについて事実と異なる思い込みを持っている方によく出会います。代表的な誤解を整理しておきます。
「一度書いたら書き直せない」という誤解
遺言書とは異なり、エンディングノートには方式の決まりがないため、何度でも自由に書き直せます。修正液やページの差し替えで対応しても問題ありません。完璧な内容を一度で仕上げようとする必要はなく、書き直す前提で気軽に始めるほうが、結果的に長く続けられます。
「持っているだけで安心」という誤解
ノートを購入したり、テンプレートをダウンロードしたりしただけでは、家族の助けにはなりません。実際に情報を書き込み、存在と保管場所を家族に伝えるところまで進んで、初めて役に立ちます。書かないまま何年も置かれているエンディングノートは、相談の現場でも珍しくありません。
「高齢者だけが書くもの」という誤解
持病がなくても、事故や急病はいつでも起こり得ます。資産や医療の希望を整理しておく作業は、年齢を問わず誰にとっても有用です。実際、若いうちに書式だけ準備しておき、親のために書き方を先に理解しておく子世代の方も増えています。
よくあるつまずきと対処法
エンディングノートを配っても、実際に最後まで書き終える方は多くありません。相談の現場でよく聞かれるつまずきのパターンと、その対処法を紹介します。
| つまずきのパターン | 対処法 |
|---|---|
| 項目が多すぎて最初のページで手が止まる | 目次を見て、資産と医療・介護の欄だけ先に埋める。他は空欄のまま後回しにしてよいと割り切る |
| 「縁起でもない」と家族に反対される | 財産や書類の置き場所を整理する実務的な作業として説明する。「もしものとき」より「今の整理」という言い方に変える |
| 資産の金額を書くのに抵抗がある | 金額まで書けなくても、口座や証券会社の名前だけ書いておけば、家族が金融機関に照会できる。金額は空欄でも構わない |
| 葬儀やお墓の希望が決められない | 「まだ決めていない」とそのまま書いておく。無理に決めるより、決まっていない事実を伝えるほうが家族の混乱を防げる |
| 書いたまま数年放置してしまう | 誕生日や年末年始など、毎年同じタイミングを見直しの日と決めておく。日付を記入する欄に忘れず記録する |
書くときに注意したいこと
エンディングノートは自由に書けるぶん、注意すべき点もいくつかあります。トラブルを防ぐために、次の点を意識してください。
財産の分け方の希望は「参考」にとどまる
繰り返しになりますが、エンディングノートに「この財産は誰に」と書いても、法的な強制力はありません。相続人全員の合意がなければ、その通りに遺産が分けられるとは限りません。特定の相手に特定の財産を確実に渡したい場合は、遺言書の作成を検討してください。エンディングノートは、遺言書を書くに至った気持ちや背景を補足する役割として活用すると、家族の理解を得やすくなります。
遺言書を作成する場合も、注意しておきたい点があります。配偶者や子、直系尊属(親など)といった一部の法定相続人には、遺言の内容にかかわらず最低限の取り分が民法で保障されており、これを「遺留分」と呼びます。「全財産を長男に」といった内容の遺言書を作成しても、他の相続人から遺留分を主張されると、その分の金銭を支払う必要が生じることがあります。特定の相続人に多く残したい事情がある場合は、遺留分の扱いも含めて司法書士や弁護士に相談しておくと、遺言書が原因で家族間の争いが生じるリスクを減らせます。
パスワード・暗証番号は直接書かない
前述のとおり、ノート自体は紛失・盗難のリスクがあります。金融機関やサービスの一覧は書いても、パスワードや暗証番号そのものは別の方法で管理してください。
保管場所は「見つけやすく、盗まれにくい」場所に
金庫にしまい込みすぎると、いざというときに家族が開けられないことがあります。反対に、リビングに無防備に置いておくと、来客時に個人情報が見えてしまうこともあります。家族が捜索の過程で自然に目にする場所(仏間の引き出し、重要書類をまとめたファイルの中など)に保管し、保管場所そのものを家族の誰か一人に伝えておくのが現実的な落としどころです。
書いた内容は定期的に見直す
資産状況や医療の希望は、時間とともに変わります。年に一度、誕生日や年末年始などのタイミングで見直す習慣をつけておくと、内容が古いまま放置されるのを防げます。決まった周期での見直しに加えて、生活環境が変わったタイミングでも内容を確認しておくと、実態とのずれを防ぎやすくなります。
| 起きた出来事 | 見直しておきたい項目 |
|---|---|
| 引っ越し・住所変更 | 自分について、緊急連絡先、保管場所そのものの見直し |
| 入院・手術・持病の診断 | 医療・介護の希望、かかりつけ医、服用薬 |
| 金融機関の口座の開設・解約 | 資産・お金の一覧 |
| 配偶者や家族との死別・離婚 | 資産の分け方の希望、葬儀の喪主・連絡先、家族へのメッセージ |
| 孫の誕生など家族構成の変化 | 家族へのメッセージ、資産の分け方の希望 |
相続放棄・生前贈与を考えている場合は先に伝える
実家や資産の維持が負担になりそうで相続放棄を考えている、あるいは生前のうちに資産の一部を家族へ贈与するつもりがある場合は、その意向をエンディングノートに書くだけでなく、早めに家族や専門家へ直接伝えておくことをおすすめします。相続放棄には、相続の開始を知った日から原則3か月以内という期限があり、迷っているうちに期限が過ぎてしまうことがあります。また、家財や不動産の一部を処分・売却してしまうと、法律上「相続を単純承認した」とみなされ、後から相続放棄ができなくなる場合があります。生前贈与についても、誰に・いつ・何を贈与したかを記録しておくと、相続が発生した後の遺産分割協議で認識のずれを防ぎやすくなります。金額や税務上の取り扱いに関わる内容は、国税庁の案内や税理士への確認をおすすめします。
記入例つき|項目別の書き方サンプル
何を書けばいいか具体的にイメージが湧かないという声をよく聞きます。分野ごとに、実際の記入イメージに近いサンプルをまとめました。あくまで一例なので、自分の言葉に置き換えて書いてください。
| 分野 | 記入例 |
|---|---|
| 資産・お金 | 「〇〇銀行〇〇支店に普通預金あり。ネット証券〇〇証券にも口座あり(詳細はパスワード管理アプリに記載)。自宅の住宅ローンは〇〇銀行、残債は毎年1月に届く通知書で確認できる」 |
| 医療・介護 | 「延命治療は、回復の見込みが低いと医師から判断された場合は希望しない。判断に迷うことがあれば、長男の〇〇に相談してほしい。かかりつけ医は〇〇クリニックの〇〇先生」 |
| 自分について | 「実印は仏間の茶箪笥の一番上の引き出しにあります。年金手帳と保険証は、寝室のクローゼットにある茶色いファイルにまとめてあります」 |
| 葬儀・お墓 | 「大げさな葬儀は望みません。家族と近しい親戚だけの家族葬で構いません。お墓は〇〇霊園にありますが、承継については家族で話し合って決めてください」 |
| 家族へのメッセージ | 「長い間、家のことを支えてくれてありがとう。喧嘩することもあったけれど、家族みんなで過ごした時間は本当に幸せでした」 |
資産の記入例のように、金額そのものを書かなくても「どの金融機関に何があるか」だけで、家族が手続きの初動を進められます。医療・介護の記入例のように、判断が難しい場面で誰に相談してほしいかまで書いておくと、家族だけで決断を迫られる負担を減らせます。
書き終えたら確認する最終チェックリスト
ひととおり書き終えたら、次の項目を確認してください。内容の正しさだけでなく、「家族が実際に使える状態になっているか」という視点でのチェックです。
| 確認項目 | チェックの視点 |
|---|---|
| 日付の記入 | いつ書いた・見直した内容か、書き込んだページに日付があるか |
| 保管場所の共有 | ノートの存在と保管場所を、家族の誰か一人以上に伝えたか |
| パスワードの分離 | 暗証番号やログインパスワードを直接書いていないか、別の方法で管理しているか |
| 資産・負債の網羅性 | ネット銀行・ネット証券・負債(ローンや保証債務)まで書き漏らしていないか |
| 連絡先の最新性 | かかりつけ医・親族・専門家の連絡先が古くなっていないか |
| 財産の分け方の希望 | 希望を確実に実現したい場合、遺言書の作成を検討したか |
よくある質問
エンディングノートは何歳から書き始めるべきですか?
エンディングノートと遺言書、何が違いますか?両方必要ですか?
無料の自治体配布版と市販のノート、どちらを選べばいいですか?
パスワードや暗証番号もエンディングノートにそのまま書いていいですか?
書いたエンディングノートは家族にいつ、どう伝えればいいですか?
項目が多くて途中で挫折しそうです。全部埋められません。
まとめ
エンディングノートは、完璧に仕上げることよりも、書ける項目から少しずつ埋めていくことに意味があります。要点を振り返ります。
- 優先して書くべきは「資産・お金」と「医療・介護の希望」。この二つだけでも家族の負担を大きく減らせる
- エンディングノートには法的効力がない。財産の分け方を確定させたいなら遺言書を別途用意する
- 資産の欄はネット銀行・ネット証券・負債まで書き漏らさない。デジタル遺産はサービス名だけを一覧化し、パスワードは別管理にする
- 入手方法は自治体の無料配布版・市販ノート・アプリの3種類。迷ったら無料版か数百円のノートで書く習慣から始める
- 書いたら内容の全部を説明する必要はない。存在と保管場所だけを家族の誰か一人に伝えておく
- 年に一度、または引っ越し・入院・家族構成の変化があったタイミングで見直し、資産状況や希望の変化を反映する
- 財産を渡す相手に希望がある場合、遺留分にも配慮したうえで遺言書の作成を検討する
- 相続放棄や生前贈与を考えている場合は、家財の処分に着手する前に専門家へ相談する
エンディングノートは、一度で完成させる書類ではなく、その時々の自分の考えを更新しながら育てていくものです。最初から立派な内容を目指す必要はなく、資産の一覧と医療・介護の希望だけでも書いておけば、それだけで家族の負担は大きく変わります。書きながら気持ちが整理され、実家の片付けや資産の整理そのものに着手したくなった場合は、生前整理の完全ガイドと実家じまいのチェックリストをあわせてご覧ください。ご自身のペースで進める生前整理から、業者に依頼する部分までを整理した生前整理サービスのご案内もございます。
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