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70代の生前整理|体力があるうちに終わらせる進め方

最終更新日:2026年8月6日|監修:司法書士・行政書士 久留慎一郎先生・安心実家じまい事務局

司法書士・行政書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 不動産の名義変更
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理

この記事の結論

  • 70代は、判断力と体力の両方が残っているうちに動ける、いわば最後の年代です。80代以降は体力面の制約が増え、作業のペースを本人の意思だけで決めにくくなる場合があります。
  • 優先すべきは物の量ではなく、通帳・保険証券・実印・不動産関係書類など「なくなると家族が困る物」の整理と保管場所の共有です。
  • 一人暮らしか夫婦二人か、同居予定の子がいるかどうかで進め方の優先順位は変わります。状況別の進め方は本文のケース別シミュレーションを参考にしてください。
  • 財産の整理と並行して、遺言書・任意後見・家族信託など、判断力があるうちにしかできない手続きの検討も視野に入れておくと安心です。
目次

なぜ70代が生前整理の「最後のチャンス」と言われるのか

生前整理という言葉自体には年齢の決まりはなく、30代や40代から少しずつ物を減らしている人もいます。それでも「70代」というキーワードで検索する方が多いのには理由があります。60代までは現役で働いていたり、まだ体力に余裕があったりして、生前整理を先送りにしがちです。一方、80代に入ると、足腰の衰えや通院の増加、判断力の変化などで、大きな物量の片付けや複雑な書類手続きを自分のペースだけで進めるのが難しくなる場面が増えてきます。70代は、この二つの時期に挟まれた、いわば「まだ動けて、まだ自分で決められる」貴重な期間にあたります。

もちろん個人差は大きく、80代でも矍鑠として自分の生前整理を淡々と進める方もいれば、70代の前半ですでに体力面の不安を抱える方もいます。年齢そのものより「今、自分の意思で物事を判断し、実際に体を動かせる状態にあるかどうか」が本質的な目安です。とはいえ、統計的にも70代は健康状態の個人差が大きくなり始める時期とされており、「元気なうちに」という言葉が現実味を帯びてくる年代であることは間違いありません。

60代・70代・80代でできることの違い

年代によって、無理なく取り組める作業の範囲は変わってきます。以下は一般的な傾向を整理した比較表です。あくまで目安であり、実際の体力や判断力には個人差があります。

年代 体力・判断力の傾向 取り組みやすい作業 注意したい点
60代 現役や再雇用で時間的余裕が少ないことが多い。体力は比較的ある 不用品の大まかな仕分け、財産の棚卸し、エンディングノートの下書き 「まだ先でいい」と後回しにしやすい
70代 時間に余裕が出る一方、体力・判断力に個人差が出始める 本格的な物の処分、重要書類の整理、遺言書・任意後見の検討 先延ばしにできる最後の年代と考え、優先順位をつけて着手する
80代以降 身体的な制約が増え、外出や重い物の運搬が難しくなる場合がある やり残した部分の仕上げ、家族への意思の伝達 大きな作業は家族や業者の手を借りる前提で計画する

この表からわかるのは、70代は「体を動かす作業」と「頭を使う手続き」の両方にまだ取り組める、数少ない年代だということです。逆に言えば、70代のうちにこの両方を進めておかないと、80代に入ってから一気に負担が家族側に移ってしまう可能性があります。

「まだ大丈夫」と思っているうちに動くべき理由

生前整理の相談を受けていると、「体が動くうちにと思っていたが、気づけば数年経っていた」という声をよく聞きます。人間はよほどのきっかけがない限り、緊急性の低い作業を後回しにしてしまう傾向があります。転倒や入院、配偶者の他界といった出来事がきっかけで、ようやく重い腰を上げる方も少なくありません。しかし、こうした出来事が起きてからでは、本人の判断力や体力が万全ではない状態で片付けを進めることになり、負担が何倍にも膨らみます。70代のうちに、健康なタイミングで少しずつ着手しておくことが、結果的に一番負担の少ない進め方になります。

70代から始める生前整理の進め方

やみくもに物を減らし始めるのではなく、優先順位を決めてから着手すると、途中で疲れて挫折するリスクを減らせます。以下の順番は、重要度と緊急度の両方を踏まえた一般的な進め方です。

  1. 財産と重要書類の棚卸し——通帳、保険証券、年金手帳、不動産の権利証、実印、株式や投資信託の資料など、なくなると家族が困る物の在り処を一覧にします。
  2. デジタル資産の整理——ネット銀行やネット証券の口座、サブスクリプションサービス、パスワード管理の方法を整理します。家族が知らないネット口座は、遺族にとって発見が難しい財産です。
  3. 不用品・大型家具の処分——体力があるうちに、使わなくなった家具や家電、大量の衣類などを処分します。物量が多い場合は、複数回に分けて進めるほうが体への負担が少なくて済みます。
  4. 思い出の品・形見分けの意思確認——写真、着物、趣味の品などについて、誰に何を譲りたいか、どこまで残したいかを自分の言葉で決めておきます。
  5. 医療・介護に関する希望の整理——延命治療の希望、かかりつけ医、持病や服薬の情報を家族と共有できる形にしておきます。
  6. 遺言書・任意後見など法的な備え——財産の分け方や、判断力が低下した場合に備えた制度の利用を検討します。専門家に相談する場合は、この段階で司法書士や弁護士に連絡するのが一般的です。

多くの生前整理ガイドでは「まず不用品を捨てましょう」という順番が紹介されがちですが、70代からの生前整理では、優先順位を逆にすることをおすすめします。物の処分は体力さえあれば何歳からでも取り組めますが、財産の棚卸しや法的な手続きは、判断力がしっかりしているうちにしかできません。時間が限られているからこそ、後回しにできない部分から着手する発想が重要です。

貴重品・重要書類の整理を最優先にする理由

実際に家族が実家じまいや遺品整理で最も苦労するのが、通帳や保険証券、権利証がどこにあるか分からないケースです。タンスの奥や仏壇の引き出し、複数の金融機関に分散した口座など、本人にしか分からない保管場所は少なくありません。本人が元気なうちに一覧表を作り、保管場所を家族の誰か一人にでも共有しておくだけで、万一のときの手続きにかかる時間は大きく変わります。エンディングノートを使う場合も、まずはこの部分から埋めていくことをおすすめします。

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状況別・70代の生前整理の進め方

70代といっても、暮らし方によって優先すべきことは変わります。ここでは代表的な四つの状況ごとに、進め方の考え方を整理します。

一人暮らしの70代の場合

配偶者に先立たれた、あるいは結婚していないなどの理由で一人暮らしをしている場合、生前整理の意思決定はすべて自分一人にかかってきます。急な体調変化があったときに誰が気づけるか、緊急連絡先を誰にしているかという「もしも」の備えを、物の整理と同じくらい重視してください。近隣に頼れる親族がいない場合は、地域包括支援センターや自治体の見守りサービスの利用も選択肢に入れておくと安心です。財産や重要書類の在り処は、遠方に住む子や信頼できる親族の誰か一人には伝えておくことをおすすめします。

夫婦二人暮らしの場合

夫婦のどちらかが先に亡くなった場合、残された側が一人ですべての手続きと片付けを担うことになりがちです。生前整理は夫婦それぞれの持ち物について、お互いが「これは自分の判断で処分してよい」「これは相手に確認してから」を共有しておくと、どちらかが欠けた後の作業がスムーズになります。夫婦で財産の全体像を共有できていないケースは意外に多く、片方しか把握していない口座や保険が後から見つかることもあります。まずはお互いの財産を一緒に棚卸しするところから始めてください。

子と同居予定がない・実家を将来売る予定がある場合

子世代と同居せず、将来的に実家を売却したり、施設への入居を見据えたりしている場合は、生前整理と同時に住まいの将来設計も考えておく必要があります。実家に残す物と、施設や新しい住まいに持っていく物を早い段階で分けておくと、いざ引っ越しとなったときの負担が大きく減ります。不動産の名義や権利関係も、この段階で確認しておくと、将来の売却や解体がスムーズに進みます。実家じまい全体の進め方は実家じまいのチェックリストもあわせてご覧ください。

認知症の兆候が心配なケース

物をどこに置いたか忘れる、同じ話を繰り返す、日付や場所の感覚があいまいになるといった変化が見え始めた場合は、生前整理の中でも特に法的な手続きを急いだほうがよい段階です。遺言書の作成や任意後見契約、家族信託の設定は、本人に判断能力があることが前提の制度です。判断能力が低下してからでは契約自体が成立しなくなる可能性があるため、少しでも気になる変化があれば、財産の整理よりも先に、これらの法的な備えについて司法書士など専門家に相談することをおすすめします。

70代の生前整理チェックリスト

印刷してそのまま使える形で、70代の生前整理で確認したい項目をまとめました。すべてを一度に終わらせる必要はありません。できたところから進めてください。

分類 確認項目
財産・お金 すべての金融機関の口座と支店を一覧にした
保険証券(生命保険・医療保険・火災保険など)の保管場所を共有した
不動産の権利証・登記簿の内容を確認した
株式・投資信託・ネット証券の口座を整理した
重要書類・印鑑 実印・銀行印・印鑑登録証の保管場所を家族の誰かに伝えた
年金手帳・マイナンバーカードの保管場所を確認した
運転免許証の返納時期について考えを整理した
デジタル資産 スマートフォン・パソコンのロック解除方法を家族が分かる形にした
サブスクリプションサービスの契約状況を確認した
ネット銀行・ネット証券のIDとパスワードの管理方法を決めた
物・生活用品 着物・骨董品・貴金属など価値がありそうな物を把握した
写真・アルバムの扱い方について方針を決めた
大型家具・家電の処分計画を立てた
医療・介護 かかりつけ医と持病・服薬の情報をまとめた
延命治療についての希望を書き残した
介護が必要になった場合の希望(在宅か施設か)を家族に伝えた
法律・意思表示 遺言書の作成を検討した(自筆証書か公正証書か)
任意後見制度・家族信託の利用を検討した
お墓・供養・葬儀についての希望を書き残した

チェックリストの各項目は、一気に終わらせようとすると疲れてしまいます。月に一つの分類だけ進める、週末に30分だけ取り組むなど、自分のペースを決めて取り組むほうが、結果的に最後までやり切れることが多いです。

生前整理にかかる費用の目安とケース別シミュレーション

生前整理は自分で進めれば費用はほとんどかかりませんが、体力的に難しい部分を業者に依頼すると費用が発生します。どこまで自分で行い、どこから業者に頼むかを判断する材料として、間取り別の費用目安と、状況別の概算シミュレーションをまとめました。

間取り 自分で進める場合の目安費用 業者に一部依頼する場合の目安 業者に全面依頼する場合の目安
1R・1K ごみ処理券代など数千円程度 2〜5万円(大型家具のみ搬出依頼) 3〜8万円
2DK〜2LDK 数千円〜1万円程度 5〜15万円(家具・家電の搬出依頼) 9〜30万円
3DK〜3LDK 1〜2万円程度 10〜25万円(大物中心の依頼) 15〜50万円
4LDK以上 2〜3万円程度(複数回の粗大ごみ利用) 15〜35万円 22〜60万円

「自分で進める場合」は、粗大ごみの処理券代や資源ごみ回収など、自治体の制度を使って少しずつ処分した場合の目安です。時間はかかりますが、費用を最小限に抑えられます。「業者に一部依頼」は、判断や仕分けは自分で行い、体力を使う搬出だけを業者に頼む方法で、費用と負担のバランスを取りやすい選択肢です。「全面依頼」は仕分けから搬出、清掃まで一括で任せる方法で、費用は上がりますが、本人や家族の負担は最も軽くなります。

ケース別の概算シミュレーション

実際の状況に近い三つのケースで、費用と進め方のイメージを示します。あくまで一般的な目安であり、実際の金額は物量や地域によって変わります。

  • ケースA:3LDKの持ち家に一人暮らし、体力に不安はないが時間を優先したい——書類・貴重品の整理は自分で1〜2か月かけて行い、大型家具と使わない家電だけを業者に依頼。目安費用は10〜20万円程度、作業期間は書類整理と合わせて2〜3か月。
  • ケースB:2LDKの分譲マンションに夫婦二人暮らし、どちらも足腰に不安がある——仕分けの判断は夫婦で行うが、搬出作業はすべて業者に依頼。目安費用は15〜25万円程度、作業自体は1〜2日で完了するため身体的な負担を大きく抑えられる。
  • ケースC:4LDKの戸建てで将来的に売却も検討、子は遠方在住——生前整理と並行して不動産の名義や将来の売却方針も確認しておく必要があるため、片付けと合わせて専門家への相談も同時に進める。目安費用は片付けだけで25〜40万円程度、売却まで見据える場合は別途不動産会社への相談が必要。

どのケースでも共通するのは、「判断」と「搬出」を分けて考えることです。判断は本人にしかできない一方、搬出は業者に任せれば体力の消耗を大幅に減らせます。見積もりを取る際は、間取りだけでなく「どこまで自分で仕分け済みか」を伝えると、より実態に近い金額が出やすくなります。

相続・生前贈与・遺言と生前整理の関係

生前整理は「物の片付け」だけでなく、財産をどう引き継ぐかという法律面の準備も含みます。70代は、こうした制度を自分の意思で活用できる貴重な時期でもあります。

生前贈与の基礎控除と2024年からの変更点

贈与税には年間110万円までの基礎控除があり、この範囲内であれば贈与税はかかりません。ただし、2024年1月1日以後の贈与から、相続財産に加算する対象期間が段階的に延長されています。相続開始日が2026年12月31日以前であれば加算対象期間は従来どおり相続開始前3年以内ですが、2027年1月1日以降は段階的に延び、2031年1月1日以降に発生した相続では相続開始前7年以内の贈与が対象になります(国税庁の案内による)。延長された4年分については合計100万円まで加算対象外とする経過措置もあります。まとまった額の生前贈与を検討している場合は、この制度変更を踏まえたうえで、税理士に相談しながら進めることをおすすめします。

相続税の基礎控除の考え方

相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算する基礎控除があります。たとえば法定相続人が配偶者と子2人の合計3人であれば、基礎控除は3,000万円+600万円×3人=4,800万円です。相続財産の総額がこの範囲内に収まれば、相続税の申告や納税は基本的に不要です。実家の不動産評価額によっては基礎控除を超える場合もあるため、財産の総額を把握したうえで、必要であれば税理士に試算してもらうと安心です。

遺言書:自筆証書と公正証書の違い

遺言書には主に自筆証書遺言と公正証書遺言の二つの形式があります。自筆証書遺言は自分で書いて作成できる手軽さがある一方、形式の不備で無効になるリスクや、相続開始後に家庭裁判所での検認が必要になる手間があります。2020年からは法務局に自筆証書遺言を預けられる「自筆証書遺言書保管制度」が始まっており、この制度を利用すれば紛失や改ざんのリスクを減らし、検認も不要になります。公正証書遺言は公証役場で公証人が作成するため、形式の不備による無効リスクが低く、原本が公証役場に保管される安心感がありますが、証人2名の立ち会いと費用がかかります。どちらを選ぶかは、財産の内容や家族関係の複雑さによって変わるため、迷う場合は司法書士に相談してみてください。

任意後見制度と家族信託

将来、判断力が低下した場合に備える制度として、任意後見制度と家族信託があります。任意後見制度は、判断力がしっかりしているうちに、将来自分の財産管理や身上監護を任せる人をあらかじめ決めて契約しておく制度です。家族信託は、信頼できる家族に財産の管理・運用・処分を任せる仕組みで、不動産の売却など柔軟な対応がしやすい特徴があります。これらに対して、すでに判断力が低下した後に家庭裁判所が後見人を選任する「法定後見制度」もあります。三つの制度の違いを整理すると、次のとおりです。

任意後見制度 家族信託 法定後見制度
利用できるタイミング 判断力があるうちに契約 判断力があるうちに契約 判断力が低下した後に申立て
財産の柔軟な運用 限定的(家庭裁判所の監督下) 比較的柔軟(不動産の売却なども可能) 限定的(家庭裁判所の監督下)
身上監護(医療・介護の契約等) 対応できる 基本的に対象外 対応できる
始めるための条件 本人の契約締結能力が必要 本人の契約締結能力が必要 判断力低下後でも申立て可能

いずれの制度も、本人に契約締結の判断能力があることが前提のため、認知症などで判断力が低下してからでは任意後見・家族信託は利用できません。70代のうちに検討しておく価値がある制度です。財産に不動産が多い場合は家族信託、身上監護まで含めて任せたい場合は任意後見というように、目的に応じて使い分ける、あるいは両方を組み合わせる方法もあります。制度の選び方に迷う場合は、司法書士に相談すると、家族構成や財産内容に応じた提案を受けられます。

生前整理でよくある失敗パターン

相談の現場で繰り返し見られる失敗パターンを知っておくと、同じつまずきを避けやすくなります。

  • 物の整理から始めて途中で力尽きる——不用品の処分から着手し、大きな達成感のないまま疲れてしまい、肝心の財産・書類整理まで手が回らないケースです。優先順位を財産・書類から始めることで防げます。
  • 本人だけで抱え込み、家族が何も知らないまま進む——本人が一人で黙々と進め、どこに何をまとめたかを誰にも伝えていないケースです。せっかく整理しても、いざというときに家族が場所を把握できなければ意味が薄れてしまいます。
  • デジタル資産の存在を伝え忘れる——ネット銀行やネット証券の口座がある場合、紙の通帳がないため家族が存在に気づけないことがあります。口座名と大まかな金額だけでもメモを残しておくと安心です。
  • 「まだ元気だから」と先延ばしにし続ける——先延ばしにする理由自体は自然な心理ですが、体調の変化は予告なく訪れます。小さな一歩からでも着手しておくことが、結果的に将来の安心につながります。
  • 形見分けの希望を言葉にしないまま進める——「なんとなくこの子に譲りたい」という気持ちがあっても、はっきり伝えていないと、相続時に家族間の認識のずれが生じることがあります。口頭でもよいので、早めに意思を伝えておくことをおすすめします。

体力を消耗させない進め方のコツ

相談を受けていると、生前整理を意気込んで始めたものの、数日で疲れて途中放棄してしまう方を一定数見かけます。70代の生前整理を無理なく続けるには、次のような工夫が役立ちます。

  • 一部屋ずつ、短時間で区切る——一日ですべてを終わらせようとせず、「今日は押し入れの上段だけ」のように範囲を絞ると、体への負担を抑えながら継続できます。
  • 重い物の運搬は無理をしない——家具や大型家電の移動は、無理に一人で行わず、家族や業者に頼む前提で計画を立てます。転倒などの事故が起きやすい作業でもあります。
  • 「迷う物」は保留箱に入れて先送りする——判断に迷う物を無理に決めようとすると疲労が増します。いったん保留箱にまとめ、後日改めて見直す方法が効率的です。
  • 写真・思い出の品は最後に回してよい——思い出の品の整理は精神的な負担が大きい作業です。優先度の高い財産関係の整理を終えてから、時間をかけて向き合うほうが無理がありません。
  • 業者に頼む範囲を早めに見極める——大型家具の処分や大量の不用品の搬出は、業者に依頼したほうが体力の消耗を抑えられます。自分でできる範囲と、頼んだほうがよい範囲を早い段階で切り分けておくと、途中で疲れ果てることを防げます。

生前整理を「一人で全部やりきる」ものだと考えてしまうと、途中で心が折れやすくなります。家族に手伝ってもらう、業者に部分的に依頼するなど、自分の体力と相談しながら進め方を柔軟に変えていくことが、最後までやり切るための現実的な工夫です。

生前整理を手伝ってもらう相手を選ぶときの視点

70代からの生前整理は、家族だけで抱えるより、部分的にプロの手を借りたほうが結果的にスムーズに進むことが多くあります。誰に何を頼むかを整理すると、次のようになります。

頼み先 向いている作業 確認しておきたい点
家族・親族 思い出の品の仕分け、意思確認、書類の保管場所の共有 役割分担を事前に決め、負担が一人に偏らないようにする
生前整理専門の業者 大型家具・家電の搬出、まとまった量の不用品処分 一般廃棄物収集運搬の許可、買取を伴う場合は古物商許可の有無
司法書士・税理士 遺言書の作成支援、相続税の試算、任意後見・家族信託の設計 相続関連の実務経験、初回相談が無料かどうか
自治体・地域包括支援センター 見守りサービスの案内、福祉制度の紹介 お住まいの自治体ごとにサービス内容が異なるため個別に確認

生前整理業者を選ぶ際は、遺品整理業者と同様に、一般廃棄物収集運搬の許可を持っているか、買取を行う場合は古物商許可を得ているかを確認してください。加えて、生前整理では本人が在宅のまま作業を行うことが多いため、対応するスタッフの物腰や、プライバシーへの配慮も判断材料になります。業界団体が認定する生前整理関連の資格を持つスタッフが在籍しているかも、一つの目安です。見積もりの内訳が明確で、追加費用が発生する条件をあらかじめ説明してくれる業者を選ぶという基本は、遺品整理と変わりません。

複数の業者に見積もりを依頼する場合は、同じ条件(間取り・処分したい物のリスト)を伝えたうえで比較すると、金額の妥当性を判断しやすくなります。訪問見積もりの際に、担当者が丁寧にヒアリングを行い、本人の意向を尊重した提案をしてくれるかどうかも、長く付き合える相手かどうかを見極めるポイントです。

生前整理と実家じまい・遺品整理の違いと使い分け

似た言葉に「実家じまい」「遺品整理」があり、混同されがちです。生前整理は本人が元気なうちに自分の意思で進める作業、遺品整理は本人が亡くなった後に遺族が家財を片付ける作業です。実家じまいは、片付けだけでなく、実家という不動産そのものをどうするか(売却・解体・賃貸活用など)まで含めた、より広い意味での整理を指します。

70代で生前整理に取り組む場合、「今の自分の持ち物をどう整理するか」に加えて、「将来、この実家をどうするか」という視点も持っておくと、後の家族の負担を大きく減らせます。実家じまい全体の考え方や進め方は生前整理の完全ガイドで詳しく解説しています。持ち物の整理から実家の売却・解体までを見据えている場合は、あわせてご確認ください。

安心実家じまいでは、生前整理のご相談から、将来的な実家の片付け・売却・解体の手配までを一つの窓口でお受けしています。ご本人だけでなく、離れて暮らすご家族からのご相談も承っています。生前整理サービスの詳細は生前整理サービスのご案内をご覧ください。写真を送っていただくだけで、概算のお見積もりをご案内することも可能です。

家族に頼むべきこと、業者に頼むべきこと

財産の棚卸しや意思決定など、本人にしかできない部分は自分で進めるほかありませんが、大型家具の搬出や大量の不用品処分といった体力を使う作業は、業者に部分的に依頼することで負担を大きく減らせます。全部を一人で抱え込まず、家族に相談しやすい部分は相談し、業者に任せられる部分は早めに見積もりを取っておくと、70代のうちに無理なく生前整理を終えやすくなります。

よくある質問

生前整理は70代からでは遅いですか?
遅くはありません。むしろ判断力と体力の両方が比較的しっかりしている70代は、生前整理を自分の意思で進められる最後の年代とよく言われます。80代以降は身体的な制約や判断力の変化で作業が難しくなる場合があるため、70代のうちに大きな物量の整理と、財産・意思確認の書類整備を終えておくと、その後の負担がぐっと軽くなります。始めるのに遅すぎるということはなく、今日から手をつけられる部分は多くあります。
70代の親に生前整理を勧めても嫌がられます。どうすればいいですか?
「片付けて」ではなく「何かあったときに困らないように、一緒に確認しておきたい」という伝え方に変えると、受け止められ方が変わることがあります。通帳や保険証券、実印の保管場所を家族で共有するところから始めると、本人にとっても心理的な負担が小さく済みます。全部を一度に片付けようとせず、まずは重要書類の場所を確認する、次は着なくなった服を整理する、というように段階を分けて提案する方法もあります。
生前整理と遺品整理はどう違いますか?
生前整理は本人が元気なうちに、自分の意思で身の回りの物や財産を整理する作業です。遺品整理は本人が亡くなった後に、遺族が家財を片付ける作業を指します。生前整理では本人に「これは残したい」「これは処分してよい」を直接確認できるため、形見分けや思い出の品の扱いで遺族が迷う場面を減らせます。判断力があるうちに進められることが、生前整理の最大の利点です。
生前贈与と相続、70代ならどちらを考えるべきですか?
財産の状況や家族構成によって最適な方法は異なるため、一概にどちらが有利とは言えません。年間110万円までの贈与には基礎控除がありますが、2024年1月以降の贈与から相続財産への加算対象期間が段階的に延長されており、2031年1月以降に発生する相続では相続開始前7年以内の贈与が加算対象になります(2026年12月31日以前に発生する相続では従来どおり相続開始前3年以内が対象。国税庁の案内による)。まとまった財産の移転を考えている場合は、税理士や司法書士に早めに相談し、自分の状況に合った方法を確認することをおすすめします。
70代で認知症が心配な場合、生前整理以外に何をしておくべきですか?
判断力が今のうちに、財産管理を任せられる人を決めておく「任意後見制度」や「家族信託」の活用を検討する価値があります。どちらも本人の判断力がしっかりしているうちにしか契約できない制度のため、認知症が心配な場合ほど早めの準備が重要です。あわせて、遺言書を法務局に預ける自筆証書遺言書保管制度や公正証書遺言も、判断力があるうちに済ませておきたい手続きです。司法書士など専門家への相談を早めに検討してください。

まとめ

70代の生前整理は、体力と判断力の両方が残っているうちに動ける、限られた時間の中での作業です。要点を振り返ります。

  • 70代は「体を動かす作業」と「頭を使う手続き」の両方にまだ取り組める、数少ない年代
  • 優先すべきは物の量ではなく、通帳・保険証券・実印など「なくなると家族が困る物」の整理
  • 一人暮らし・夫婦二人・同居予定なし・認知症が心配なケースで、進め方の優先順位は変わる
  • チェックリストは一気に終わらせようとせず、分類ごとに少しずつ進める
  • 生前贈与は年間110万円の基礎控除があるが、2024年から加算対象期間が段階的に延長され、2031年以降の相続では相続開始前7年以内が対象に
  • 相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」
  • 遺言書・任意後見・家族信託は、判断力があるうちにしか活用できない制度
  • 体力を消耗させないコツは、範囲を区切る・迷う物は保留する・業者に頼む範囲を早めに見極めること

生前整理は、一度にすべてを終わらせる必要はありません。70代のうちに優先度の高い部分から着手し、体力を使う作業は家族や業者の力も借りながら、無理のないペースで進めていくことが、結果的に自分自身にとっても家族にとっても負担の少ない選択になります。全体の進め方は生前整理の完全ガイドを、実家全体の片付けを見据えている方は実家じまいのチェックリストもあわせてご覧ください。

読むより、聞いたほうが
早いこともあります

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この記事を書いた人

安心実家じまい事務局です。実家の片付けや遺品整理、空き家になった家の処分について、はじめての方にも分かるように記事を書いています。提携している現場の業者や司法書士と一緒に、費用の相場・自治体のごみ出しルール・補助金といった、調べてもなかなか分かりにくいところを一つずつ確かめながらまとめています。「誰に頼めばいいか分からない」という段階のご相談も、LINEやお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。

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