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海外在住の相続人が実家を売却する方法|サイン証明・在留証明の取り方と必要書類【司法書士監修】

最終更新日:2026年10月11日|監修:司法書士・行政書士 久留慎一郎先生・安心実家じまい事務局

司法書士・行政書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。

監修の範囲:相続・登記・法務に関する記述(司法書士・行政書士の業務範囲)。片付け・買取・費用相場などの記述は安心実家じまい事務局が編集しています。監修者プロフィール

税金について:税額の計算や特例を使えるかどうかの判断は税理士の業務で、監修の範囲に含みません。申告の前に、税理士または所轄の税務署でご確認ください。

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 不動産の名義変更
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理

この記事の結論

  • 海外在住の相続人は印鑑証明書・住民票が取得できないため、代わりに現地の日本領事館・大使館で発行する「サイン証明(署名証明)」と「在留証明」を使って相続登記や売買契約を進めます。
  • サイン証明には単独型(署名そのものを証明)と貼付型(契約書等に直接綴じ込んで証明)の2種類があり、相続登記や不動産売買では貼付型を求められることが多くあります。
  • 判断軸はシンプルです。片付けてから仲介で売るか、そのまま買取に出すか、手取り額で比べて決めるのが現実的です。遠方・海外在住で立会いが難しい場合は、買取のほうがスケジュールを組みやすい傾向があります。実家の売却(片付けから売却まで窓口ひとつ)では、この判断も含めて窓口ひとつで相談できます。
  • 空き家の3,000万円特別控除や取得費加算の特例は、海外在住でも要件を満たせば利用できますが、期限(相続開始から3年、または2027年3月31日・2027年12月31日)があるため、早めの着手が安心です。
目次

海外在住の相続人が実家を売却するとき、何が一番変わるのか

相続人の誰かが海外に生活の拠点を置いている場合、実家の売却に向けた手続きのほとんどは国内に住む相続人と同じです。変わるのは「本人確認・意思確認の方法」です。国内に住民登録があれば、印鑑登録をして印鑑証明書を取得し、実印を押せば済みますが、海外に住んでいると日本の住民票は除票となり、印鑑登録そのものができません。そこで代わりに使うのが、現地の日本国大使館・総領事館(在外公館)で発行してもらう「サイン証明(署名証明)」と「在留証明」です。

この2つの証明書は、相続登記(名義変更)と、売買契約・決済の両方の場面で必要になります。相続登記の前提となる遺産分割協議書には実印の代わりにサイン証明を添付し、登記簿上の住所を日本の住所から海外の住所に書き換える際には在留証明を使います。売買契約の場面でも、契約書への署名や委任状にサイン証明、本人確認書類として在留証明が求められるのが一般的です。取得には現地の在外公館への予約と訪問が必要になることが多く、国や地域によっては数週間先まで予約が埋まっていることもあります。海外在住の相続人がいることが分かった時点で、早めに案内しておくことが、全体のスケジュールを遅らせないための一番のポイントです。実家の相続登記・名義変更の全体的な流れは実家の名義変更手続きでも解説しています。

サイン証明(署名証明)とは|単独型と貼付型の違い

サイン証明(署名証明)は、日本国内の印鑑証明書に代わるものとして、海外在住者向けに在外公館が発行する証明書です。本人が領事の前で書類に署名し、その署名が本人のものであることを領事が証明するという仕組みのため、印鑑証明書のように「あらかじめ登録した印影と照合する」仕組みとは根本的に異なります。

サイン証明には大きく分けて2つの形式があります。

  • 単独型:証明する書類とは別に、署名が本人のものであることだけを証明する証明書を単独で発行してもらう形式です。証明書だけを別の書類として扱えるため、複数の書類に同じ証明書のコピーを添付したい場合などに使われます。
  • 貼付型:遺産分割協議書や委任状など、証明したい書類そのものに証明書を直接つづり込み、契印(割印)をして一体化させる形式です。相続登記や不動産の売買契約では、どの書類に署名したかを明確にする必要があるため、貼付型を指定されることが多くあります。

どちらの形式が必要かは、提出先の法務局や、相手方(買主・仲介会社)の求める形式によって異なります。司法書士が遺産分割協議書を作成する場合は、提出先に合わせてあらかじめ必要な形式を案内してくれるため、自己判断で単独型を取得してしまい、後から貼付型を取り直すことにならないよう、作成を依頼する司法書士に先に確認しておくと安心です。

在留証明とは|何のために必要か

在留証明は、海外に住む日本人の「現在の住所(居住地)」を日本国政府として証明する書類です。日本国内の住民票に相当する役割を果たします。相続登記の場面では、被相続人の登記簿上の住所と、相続人の現在の住所をつなげて証明するために使われることがあり、不動産の名義変更や売買契約の決済の際、本人確認書類として求められるのが一般的です。

在留証明の発給には、原則として一定期間以上その国・地域に居住している実績が必要とされ、滞在してすぐの人は発給を受けられない場合があります。また、サイン証明と同様に在外公館への本人出頭が原則で、パスポートなど本人確認書類の提示が必要です。必要書類や取得できる条件は国・地域や在外公館ごとに異なるため、海外在住の相続人がいる場合は、早い段階で最寄りの日本国大使館・総領事館のウェブサイトで案内を確認しておくことをおすすめします。

取得にかかる時間の目安

サイン証明・在留証明とも、多くの在外公館でオンライン予約制を採用しており、予約の空き状況によっては申請から取得まで数週間かかることもあります。日本国内の印鑑証明書のように即日発行とはいかない点を踏まえ、相続登記や売買契約のスケジュールを組む際は、海外在住の相続人の証明書取得期間を最初に織り込んでおくことが、全体を遅らせないコツです。

ここまでで「うちの場合はどう進めればいいか」と思ったら

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相続登記は海外在住でもできる|代理人・郵送対応の実務

相続登記そのものは、海外在住の相続人がいても進められます。登記申請は司法書士が代理人として法務局に提出するのが一般的で、相続人本人が日本に一時帰国しなくても手続きを完了できるケースがほとんどです。必要になるのは、本人の意思確認の代わりとなるサイン証明(多くは貼付型)と、住所証明としての在留証明、それに戸籍謄本・戸籍の附票などの通常の相続人調査書類です。

2024年4月1日に相続登記の申請が義務化され、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記を済ませる必要があります(制度施行前に発生していた相続も対象で、期限は2027年3月31日です)。正当な理由なく期限を過ぎると10万円以下の過料の対象になり得ます(法務省「相続登記の申請義務化について」)。海外在住の相続人がいる家庭では、証明書の取得に時間がかかりやすいことを踏まえ、他の相続人調査や戸籍収集と並行して早めに案内しておくほうが、結果的に期限に間に合いやすくなります。相続登記の費用や自分で行う場合の手順は相続登記の費用と自分でやる方法で詳しく解説しています。

売却の判断軸|片付けてから売る・そのまま買取・有料引き取りを手取りで比較

海外在住の相続人がいる場合、国内に住む相続人だけで現地に何度も足を運んで片付けを進めるのは負担が大きくなりがちです。実家の売却方法は大きく分けて「仲介」「買取」「有料引き取り」の3つがあり、どれを選ぶかは片付けにかけられる時間と手間、そして最終的な手取り額のバランスで決めるのが現実的です。安心実家じまい事務局は宅建業者ではないため、売買契約そのものは提携の宅建業者が担当し、当事務局は窓口の取りまとめと片付けを担当するという役割分担になります。

方法 片付けの要否 売却までの期間 手取りの傾向 向いているケース
仲介(提携宅建業者) 原則必要(残置物を撤去してから売り出す) 数か月〜半年程度 高くなりやすいが、片付け・修繕費用が先に出る 片付けに協力できる相続人が国内にいる、時間に余裕がある場合
買取(提携宅建業者) 残置物があっても相談可能な場合が多い 最短数週間〜1か月程度 仲介より下がる傾向だが、片付け費用と相殺できることがある 海外在住で立会いが難しい、早期に現金化したい場合
有料引き取り 建物の状態により引き取り側が判断 個別相談 売却益はほぼ出ないが、解体・維持コストの負担を避けられる 老朽化が進み、仲介・買取のどちらも難しい場合

この3択を手取りで比較する際は、「売却額そのもの」だけでなく、片付け費用・測量費用・解体費用・譲渡所得税まで含めた最終的な手取り額で考えることが大切です。詳しい手順や費用の内訳は空き家買取のページでも比較しています。海外在住の相続人がいる場合は、現地で売買契約の立会いができないことが多いため、委任状とサイン証明で代理人(他の相続人や司法書士)に手続きを任せられる方法かどうかも、業者選びの判断材料になります。

片付け(残置物の整理)は誰がどう進めるか

実家を売却する前提で進める場合、仲介であれば原則として残置物をすべて撤去してから引き渡すことになります。海外在住の相続人がいると、現地に頻繁に足を運んで片付けを進めるのが難しいため、国内に住む相続人が中心となって進めるか、実家じまい代行のようなサービスに仕分け・搬出・ご供養・買取(査定できる品があれば)までを窓口ひとつで依頼する方法があります。形見分けが必要な品がある場合は、先に候補の品だけを取り分けて保管し、親族間で分ける流れにしておくと、海外在住の相続人が一時帰国するタイミングでまとめて確認してもらうこともできます。片付けから売却まで一括で相談したい場合は実家じまい代行、遺品の仕分け・供養を中心に相談したい場合は遺品整理サービスをご覧ください。

相続人が複数いて一部だけ海外在住の場合の実務

きょうだいのうち一人だけが海外に住んでいる、というケースは珍しくありません。この場合、遺産分割協議そのものは国内の相続人と同じ内容で進められますが、協議書への署名を海外在住の相続人がサイン証明(多くは貼付型)で済ませる形になります。協議書の原本を国際郵便でやり取りする必要があるため、紛失や遅延に備えて、司法書士経由でのやり取りや、追跡可能な方法での郵送を徹底しておくと安心です。

共有名義のまま相続登記をして、将来売却する際にあらためて全員の合意を取る方法もありますが、海外在住の相続人がいる共有名義は、売却時の連絡・書類のやり取りがその都度発生し、手続きが長引きやすい点に注意が必要です。早い段階で「将来的に売却する前提なら、今の遺産分割協議でどちらか一方の単独名義にしておく」といった選択肢も含めて、司法書士に相談しておくと、後の負担を減らせます。共有名義のまま進めた場合の売却手順や注意点は実家売却は兄弟の共有名義でも進められる?で解説しています。

税金の確認:空き家の3,000万円特別控除は海外在住でも使えるか

相続した空き家を売却した際に譲渡所得から最高3,000万円を控除できる「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」は、相続人が海外に住んでいることを理由に使えなくなる制度ではありません。ただし、次のような建物・売却方法の要件を満たす必要があります(国税庁 タックスアンサー No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例)。

  • 昭和56年5月31日以前に建築された建物であること
  • 区分所有建物(マンションなど)ではないこと
  • 相続の直前まで被相続人のみが居住していたこと
  • 家屋と敷地をともに売却する場合は耐震基準に適合させること、または家屋を取り壊して敷地のみを売却すること
  • 売却代金が1億円以下であること

控除額は基本的に最高3,000万円ですが、令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上いる場合は、1人あたり最高2,000万円になります。期限は「相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日」と「2027年12月31日」のいずれか早いほうで、この期限は海外在住かどうかにかかわらず共通です。海外在住の相続人がいる場合は、証明書の取得や書類のやり取りに時間がかかる分、この期限により注意する必要があります。

取得費加算の特例(相続税を払っている場合)

相続税を納めている相続人が、相続財産である実家を売却した場合は、「相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例」を使える場合があります(国税庁 タックスアンサー No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例)。相続税額のうち、売却した不動産に対応する分を取得費に加算できる制度で、計算式は「相続税額×譲渡資産の相続税評価額÷取得財産総額」です。対象になるのは、相続開始があった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡した場合で、おおむね相続開始から3年10か月以内の売却が目安になります。空き家の3,000万円特別控除とは重複して使えないため、どちらが有利かはケースごとの試算が必要です。判断に迷う場合は税理士に相談してください。

非居住者の確定申告・納税管理人・源泉徴収の注意点

海外に生活の拠点がある相続人が、日本国内の不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、国内に住んでいる人と同じく確定申告が必要です。ただし非居住者(日本国内に住所を有しない人)の場合、確定申告書の提出や納税の窓口になる「納税管理人」を定め、「所得税・消費税の納税管理人の選任・解任届出書」を納税地を所轄する税務署に提出する必要があります(国税庁 タックスアンサー No.1926 海外勤務中に不動産所得などがある場合)。納税管理人は、本人に代わって確定申告書の提出や税金の納付などを行う人で、国内に住む家族や税理士に依頼するのが一般的です。

もう一つ注意したいのが、買主側の源泉徴収です。非居住者から土地・建物を購入する場合、原則として購入者に源泉徴収義務があり、譲渡対価の10.21%を源泉徴収したうえで税務署に納付する必要があります。ただし、譲渡対価が1億円以下で、かつ買主が個人であり、自己または親族の居住用として購入する場合は、源泉徴収が不要になります(国税庁 タックスアンサー No.2884 非居住者等に対する源泉徴収・源泉徴収の税率)。実家の売却では、買主が個人でマイホームとして購入するケースも多く、この免除要件に該当するかどうかで、売主側の手取りの受け取り方(源泉徴収分が引かれた額で受け取るか、満額で受け取るか)が変わるため、契約前に仲介会社・司法書士と確認しておくことが大切です。

ケース別シミュレーション|うちの実家はどのパターンに近いか

制度の説明だけでは判断しにくいため、よくある3つのパターンで考え方を整理します。金額や期間はあくまで一般的な目安で、実際の状況によって変わります。

ケース1:相続人が自分一人で、アメリカ在住の場合

父親が亡くなり、実家(固定資産税評価額1,200万円)を一人っ子の自分だけが相続するケースです。相続人が一人のため遺産分割協議は不要ですが、相続登記の委任状と、登記簿上の住所変更のために在留証明が必要になります。現地の日本国総領事館に予約を取り、サイン証明(貼付型)と在留証明を取得したうえで、司法書士に書類一式を国際郵便で送付し、登記を代理申請してもらう流れが一般的です。売却は、片付けに一時帰国の時間を確保しづらいことから買取を選び、提携の宅建業者に残置物ありのまま査定を依頼する、という進め方も選択肢になります。

ケース2:きょうだい3人のうち1人がシンガポール在住の場合

母親が亡くなり、実家(固定資産税評価額1,800万円)をきょうだい3人で相続するケースです。国内に住む2人で遺産分割協議の内容をまとめ、海外在住のきょうだいにはサイン証明(貼付型)での署名を依頼します。協議がまとまれば、空き家の3,000万円特別控除は相続人が3人のため、1人あたり最高2,000万円の控除が使える可能性があります(令和6年1月1日以後の譲渡の場合)。片付けは国内に住む2人が中心となって進め、実家じまい代行で仕分け・搬出を依頼し、売却は仲介と買取の両方で査定を取ったうえで、手取り額を比較して決める進め方が現実的です。実家が神奈川県にある場合は神奈川県の空き家買取も参考にしてください。

ケース3:相続税の申告が必要で、海外在住の相続人がいる場合

相続財産の総額が基礎控除を超え、相続税の申告が必要なケースです。海外在住の相続人も相続税を納めている場合、取得費加算の特例の対象になり得るため、相続税の申告期限(原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内)から3年を経過する日までに売却できれば、取得費に加算して譲渡所得税の負担を抑えられる可能性があります。非居住者である相続人が売却益を得た場合は、納税管理人を定めて確定申告する必要があるため、相続税の申告を担当した税理士に、売却後の確定申告まで含めて早めに相談しておくと、手続きの抜け漏れを防げます。

実務チェックリスト(印刷用)

海外在住の相続人がいる実家を売却する際に、着手前から確認しておきたい項目を一覧にしました。印刷して、進捗の確認用にご活用ください。

確認項目 チェックのポイント
海外在住の相続人の居住国・連絡先の確認 どの国の在外公館が管轄になるか、最初に把握する
サイン証明の形式(単独型・貼付型)の確認 提出先(法務局・買主側)がどちらを求めるか司法書士に確認する
在留証明の取得可否の確認 滞在期間の要件を満たしているか、在外公館のウェブサイトで確認する
在外公館への予約状況の確認 予約が数週間先まで埋まっていないか早めに確認する
遺産分割協議書の原本のやり取り方法 国際郵便は追跡可能な方法を選び、司法書士経由も検討する
相続登記の期限(3年・2027年3月31日)の確認 証明書取得に時間がかかる分、逆算してスケジュールを組む
空き家の3,000万円特別控除の要件確認 建築年・居住要件・売却期限を国税庁の情報で確認する
取得費加算の特例の対象可否 相続税を納めているか、申告期限から3年以内の売却かを確認する
納税管理人の要否・選任 非居住者の相続人に売却益が出る場合、届出書の提出を忘れない
源泉徴収の要否(買主側)の確認 譲渡対価1億円以下・個人の居住用購入かどうかで源泉徴収の要否が変わる
片付け・残置物の対応方針 仲介前提で片付けるか、買取で残置物ありのまま進めるか決める

よくあるトラブルと防ぎ方

海外在住の相続人が関わる実家の売却では、国内だけで完結する場合に比べて、進め方次第でつまずきやすいポイントがいくつかあります。

  • 証明書の取得に想定より時間がかかる——在外公館の予約が埋まっていて、サイン証明・在留証明の取得までに数週間かかることがあります。海外在住の相続人がいると分かった時点で、できるだけ早く案内することが防止策になります。
  • サイン証明の形式を取り違える——単独型を取得したものの、提出先が貼付型を求めていて取り直しになるケースです。司法書士や仲介会社に、先にどちらの形式が必要か確認しておくと防げます。
  • 協議書の原本が国際郵便で届かない——追跡できない方法で郵送し、紛失や大幅な遅延が起きるケースです。追跡可能な国際郵便を使い、司法書士に進捗を共有しながら進めると安心です。
  • 売却益が出たのに確定申告を見落とす——海外在住のため日本の確定申告の案内が届きにくく、申告が必要なこと自体に気づかないケースがあります。納税管理人を早めに定め、国内の家族や税理士と連絡を取れる体制にしておくことが防止策です。
  • 片付けが進まないまま売却の話だけが先行する——残置物の整理を後回しにしたまま仲介の売り出しを進めようとして、引き渡し直前に片付けが間に合わなくなるケースです。売却方法を決める段階で、片付けの進め方(誰が・いつ・どのサービスに依頼するか)もあわせて決めておくと、直前の混乱を防げます。

まとめ

海外在住の相続人がいる実家の売却は、国内だけで完結する場合に比べて、証明書の取得や書類のやり取りに時間がかかる点が主な違いです。要点を振り返ります。

  • 印鑑証明書・住民票の代わりに、現地の在外公館で発行する「サイン証明(署名証明)」と「在留証明」を使う
  • サイン証明には単独型と貼付型があり、相続登記や売買契約では貼付型を求められることが多い
  • 相続登記は代理人(司法書士)による申請が可能で、本人が一時帰国しなくても進められる
  • 相続登記義務化の期限(3年以内、既存の相続分は2027年3月31日まで)は海外在住でも共通
  • 売却の判断は「片付けてから仲介」「そのまま買取」「有料引き取り」を手取りで比較して決める
  • 空き家の3,000万円特別控除・取得費加算の特例は要件を満たせば利用できるが、期限に注意する
  • 非居住者が売却益を得た場合は納税管理人を定めて確定申告し、買主側の源泉徴収の要否も確認する

証明書の取得から片付け、売却の判断まで、海外在住の相続人がいると調整すべきことが増えますが、一つずつ順序立てて進めれば対応できる手続きです。判断に迷う場合は、一人で抱え込まず司法書士や税理士に相談してください。片付けから売却まで窓口ひとつで相談したい場合は実家の売却もあわせてご覧ください。

よくある質問

サイン証明と印鑑証明書は何が違いますか?
印鑑証明書は、あらかじめ役所に登録した印影と照合して本人の押印であることを証明する書類です。サイン証明(署名証明)は、海外在住者が日本の印鑑登録制度を利用できないため、代わりに在外公館(大使館・総領事館)の領事の前で署名し、その署名が本人のものであることを証明してもらう書類です。証明の仕組みが異なるため、相続登記や売買契約では、提出先が印鑑証明書の代わりとしてサイン証明を受け付けるかどうかを事前に確認する必要があります。
サイン証明は単独型と貼付型のどちらを取得すればよいですか?
提出先が求める形式によって異なります。相続登記の遺産分割協議書や不動産の売買契約書など、どの書類に署名したかを明確にする必要がある場面では、書類に直接つづり込む貼付型を求められることが多くあります。自己判断で単独型を取得して後から取り直すことにならないよう、司法書士や仲介会社に先に確認しておくことをおすすめします。
海外在住の相続人がいても、相続登記は自分たちだけでできますか?
サイン証明・在留証明などの必要書類を揃えれば、自分たちで申請すること自体は可能です。ただし、証明書の形式の見極めや、戸籍謄本の収集、登記申請書の作成など専門的な判断が必要な場面も多いため、海外在住の相続人がいるケースでは司法書士に依頼し、代理人として申請してもらう方法が一般的です。
海外在住の相続人が不動産を売却して利益が出た場合、確定申告は必要ですか?
必要です。非居住者であっても、日本国内の不動産を売却して生じた譲渡所得は、国内に住んでいる場合と同様に確定申告の対象になります。非居住者は自分で手続きの窓口に立てないため、納税管理人を定めて「所得税・消費税の納税管理人の選任・解任届出書」を所轄税務署に提出する必要があります(国税庁タックスアンサー No.1926)。
買主側で源泉徴収が必要になるのはどんな場合ですか?
非居住者から土地・建物を購入する場合、買主には原則として譲渡対価の10.21%を源泉徴収する義務があります。ただし、譲渡対価が1億円以下で、買主が個人であり、自己または親族の居住用として購入する場合は源泉徴収が不要になります(国税庁タックスアンサー No.2884)。実家の売却では、買主がマイホームとして個人で購入するケースも多いため、この要件に該当するか契約前に確認しておくと安心です。
読むより、聞いたほうが
早いこともあります

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この記事を書いた人

安心実家じまい事務局です。実家の片付けや遺品整理、空き家になった家の処分について、はじめての方にも分かるように記事を書いています。提携している現場の業者や司法書士と一緒に、費用の相場・自治体のごみ出しルール・補助金といった、調べてもなかなか分かりにくいところを一つずつ確かめながらまとめています。「誰に頼めばいいか分からない」という段階のご相談も、LINEやお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
運営は株式会社Sora Capital(東京都渋谷区・安心実家じまい事務局)です。相続・登記・法務に関する記述は、提携の司法書士・行政書士 久留慎一郎が監修しています。税額の計算や申告の判断は、税理士にご確認ください。

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