
久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士
東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。
監修の範囲:相続・登記・法務に関する記述(司法書士・行政書士の業務範囲)。片付け・買取・費用相場などの記述は安心実家じまい事務局が編集しています。監修者プロフィール
税金について:税額の計算や特例を使えるかどうかの判断は税理士の業務で、監修の範囲に含みません。申告の前に、税理士または所轄の税務署でご確認ください。
■経歴
- 1966年鹿児島県生まれ
- 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
- 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
- 2013年司法書士試験合格
- 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
- 2017年司法書士法人コスモ退職
- 2018年事務所開設
- 2021年司法書士法人設立
■得意領域
- 相続登記・相続手続き
- 不動産の名義変更
- 相続放棄
- 簡易裁判所の訴訟代理
この記事の結論
- 実家じまいを年末年始に進めるなら、帰省中にやることは「現状把握」と「方針の方向づけ」に絞り、契約や処分は年明け以降に回すのが失敗しない進め方です。
- 相続がすでに発生している場合、相続放棄は3か月・相続登記は3年という法律上の期限があるため、年末年始の家族会議で期限のカレンダーを共有しておく必要があります。
- 「誰が」「いつまでに」「何をするか」を年始のうちに紙1枚の担当表に落とすことが、春までに実家じまいを動かせるかどうかの分かれ目になります。
- 親がまだ健在な場合は、結論を急がず「聞く」ことを目的にするほうが、翌年以降の話し合いがスムーズになります。
なぜ年末年始が実家じまいを進める好機なのか
実家じまいは、平日に何度も実家へ通える人ばかりではありません。きょうだいが遠方に住んでいる、仕事や子育てで時間が取れないといった事情から、「実家のことは気になっているが、話し合う機会が作れない」まま数年が過ぎてしまう家庭は少なくありません。そうした中で年末年始は、帰省という形で家族が一堂に会する、数少ない現実的なタイミングです。
ただし、年末年始は行政機関も不動産会社も業者も休業していることがほとんどで、手続きを「進める」には向かない期間でもあります。この期間にできるのは、実家の現状を目で見て確認すること、家族の意向を聞き合わせること、そして年明け以降の動き方を決めることです。逆にいえば、帰省中に契約や処分まで終わらせようと欲張ると、時間が足りずに中途半端になったり、家族の誰かが置き去りにされたまま話が進んでしまったりする原因になります。年末年始は「実家じまいそのもの」を終わらせる期間ではなく、「実家じまいを始めるための土台をつくる」期間だと捉えるのが、遠回りに見えて一番早い進め方です。
親がまだ健在な場合と、すでに相続が発生している場合で進め方は変わる
一口に「実家じまい」といっても、状況は家庭によって大きく異なります。親が健在で今後の住まいや財産の話をこれから始める段階なのか、すでに相続が発生していて実家が空き家になっているのかによって、年末年始にやるべきことも、注意すべき期限もまったく違います。この記事では、まず全体の進め方を整理したうえで、状況別のケースシミュレーションも用意しています。自分の家庭がどのケースに近いかを確認しながら読み進めてください。
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年末年始にできること・できないこと【比較表】
帰省できる日数は数日〜1週間程度というご家庭がほとんどです。限られた時間を有効に使うために、年末年始という期間中に「できること」と、「この期間には向かないこと」を先に整理しておきます。
| やること | 年末年始向き | 理由・注意点 |
|---|---|---|
| 実家の現状を目で見て確認する(傷み・水回り・庭木など) | ◎ 向いている | 家族が集まっているうちに写真を撮り、後で共有できる状態にしておく |
| 親の意向・今後の希望を聞く | ◎ 向いている | 結論を急がず「聞くだけ」を目的にすると親も話しやすい |
| 重要書類(権利書・保険証券・通帳など)の保管場所の確認 | ◎ 向いている | 実際に処分するのは後日でよいが、場所の把握だけは今のうちに |
| 形見分け候補・思い出の品の仕分け | 〇 部分的に向いている | 全部を配り切ろうとせず、候補を取り分けておく程度に留める |
| 役割分担(誰が中心になるか、費用の負担割合)の話し合い | ◎ 向いている | この記事後半の「担当表」を使うと決めやすい |
| 不動産会社・解体業者への正式な依頼・契約 | × 向かない | 年末年始は休業していることが多く、比較検討の時間も取りにくい |
| 相続登記の申請・法務局での手続き | × 向かない | 法務局は年末年始休業。年明けに司法書士へ相談するのが現実的 |
| 大量の家財の搬出・処分 | △ 状況による | ごみ収集も年末年始は休止するため、業者依頼か年明けが基本 |
| 相続放棄の申述(期限が迫っている場合) | △ 期限次第で最優先 | 期限が年始に迫っている場合は、休み明け即日で家庭裁判所・専門家へ連絡する |
この表からも分かるとおり、年末年始に向いているのは「確認」「対話」「役割分担」であり、実際の手続きや処分は年明け以降に持ち越すのが基本です。特に相続登記や不動産の契約に関わる手続きは行政機関・専門家双方が休業しているため、無理に年内に動かそうとすると空振りに終わります。唯一の例外は相続放棄で、期限が年始にかかっている場合は休み明け最初の営業日に動けるよう、年末のうちに相談先を決めておくことが重要です。
年末年始をまたぐ実家じまいのロードマップ【12月〜翌3月】
年末年始だけで完結させようとせず、翌年3月頃までを1つの区切りとして計画すると、無理のないペースで進められます。以下は、一般的な進め方をタイムラインにまとめたものです。個々の家庭の事情によって前後しますが、全体像をつかむ目安としてご活用ください。
| 時期 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 12月中旬〜帰省前 | 話し合いたい項目をリスト化する/重要書類の保管場所を家族に確認しておく | 帰省当日にいきなり切り出さず、事前に「実家のことも少し話したい」と伝えておくと角が立ちにくい |
| 年末年始(帰省中) | 実家の現状確認/親の意向の聞き取り/担当表の作成 | 結論を出す場ではなく、情報を集める場と割り切る |
| 1月(仕事始め〜中旬) | 相続が発生している場合は司法書士・税理士へ相談予約/不動産会社の査定依頼 | 年始は専門家・業者とも予約が集中しやすいため、早めに連絡する |
| 2月 | 遺品整理・家財処分の見積もり取得/方針(売却・賃貸・解体・維持)の決定 | 複数社から見積もりを取り、費用感を家族で共有する |
| 3月〜 | 実務手続き(相続登記の申請、解体や売却の契約など)を本格的に進める | 相続税申告がある場合は10か月以内という期限から逆算してスケジュールを組む |
このロードマップの軸になるのが、相続に関わる法律上の期限です。相続放棄は相続の開始を知った日から3か月以内、相続税の申告は10か月以内、相続登記の申請は2024年4月の法改正により3年以内が義務化され、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり得ます(法務省)。年末年始に家族で話し合う際は、こうした期限をカレンダーに落とし込んでおくと、「いつまでに何をすべきか」が明確になり、先延ばしを防げます。
相続がまだ発生していない場合の期限の考え方
親がまだ健在で相続が発生していない場合、法律上の期限に追われることはありません。ただしこの段階だからこそ、権利書・通帳・保険証券・エンディングノートの保管場所を家族で共有しておく、実家の名義や住宅ローンの有無を確認しておくといった準備を進めやすいという利点があります。相続が発生してから慌てて調べるより、健在なうちに親自身に確認できるほうが、手続きの負担は大きく軽くなります。
帰省中に使える実務チェックリスト
年末年始の限られた時間を有効に使うために、帰省前・帰省中・帰省後(年明け)の3つの場面に分けたチェックリストを用意しました。印刷して、当日の確認用にご活用ください。
①帰省前チェックリスト
| 項目 | 確認のポイント |
|---|---|
| 話し合いたい議題の整理 | 「実家の今後」「親の希望」「費用負担」など、聞きたいことを事前にメモにしておく |
| きょうだい・関係者への事前共有 | 当日いきなり話を切り出すのではなく、事前に「少し実家の話もしたい」と伝えておく |
| 持参する道具の準備 | スマートフォン(写真記録用)、メモ、印刷したチェックリスト |
②帰省中チェックリスト
| 項目 | 確認のポイント |
|---|---|
| 実家の傷み・設備の状態 | 雨漏り・水回り・庭木・外壁など、気になる箇所を写真に残す |
| 重要書類の保管場所 | 権利書、通帳、保険証券、印鑑、年金関連書類などの場所を家族で共有する |
| 親の意向 | 今後も住み続けたいか、施設や同居を考えているか、実家をどうしたいと思っているかを聞く |
| 形見分け候補の仕分け | 思い出の品のうち、誰が引き取りたいかの希望だけ聞いておく(配り切らなくてよい) |
| 担当と役割の仮決め | 誰が窓口になるか、費用をどう分担するかの方向性を話し合う |
③帰省後(年明け)チェックリスト
| 項目 | 確認のポイント |
|---|---|
| 相談先の選定・予約 | 相続が絡む場合は司法書士・税理士、家財処分は遺品整理業者、売却は不動産会社へ連絡 |
| 期限の確認 | 相続放棄(3か月)、相続税申告(10か月)、相続登記(3年)の起算日を確認する |
| 見積もりの比較 | 複数社から見積もりを取り、費用と対応範囲を家族内で共有する |
| 次回集まる時期の設定 | 次にいつ家族で話し合うか(次の連休・お盆など)を先に決めておく |
このうち、特につまずきやすいのが「帰省中チェックリスト」の担当と役割の仮決めです。ここを曖昧にしたまま帰省を終えてしまうと、「誰も動かないまま1年が過ぎる」という状態に陥りがちです。次の章で紹介する担当表を使い、その場で紙に書き出しておくことをおすすめします。
「担当表」で話し合いを行動に変える
年末年始の話し合いが「話しただけ」で終わってしまう最大の原因は、決めたことを誰も書き留めていないことです。以下のような簡単な担当表を作り、その場で記入することで、話し合いの内容を具体的な行動に変えられます。
| やること | 担当者 | 期限の目安 | 進捗 |
|---|---|---|---|
| 実家の権利書・通帳の保管場所の確認 | (記入欄) | 年内 | 未着手/着手中/完了 |
| 司法書士・税理士への相談予約 | (記入欄) | 1月中 | 未着手/着手中/完了 |
| 遺品整理・家財処分の見積もり依頼 | (記入欄) | 2月中 | 未着手/着手中/完了 |
| 不動産会社への査定依頼 | (記入欄) | 2月中 | 未着手/着手中/完了 |
| 次回家族会議の日程調整 | (記入欄) | 春の連休前 | 未着手/着手中/完了 |
この表のポイントは、「誰が」「いつまでに」を必ず書き込むことです。「そのうちやる」「誰かがやるだろう」という状態のまま話し合いを終えると、次に集まる頃には状況が何も変わっていない、ということが起こりがちです。写真に撮って家族のグループチャットに共有しておくと、進捗の確認もしやすくなります。
ケース別に見る、年末年始の実家じまいの進め方
実家じまいの進め方は、家庭の状況によって大きく変わります。よくあるパターンを4つ挙げて、それぞれの年末年始の過ごし方を整理します。
ケースA:親が健在で、まだ何も決まっていない場合
最も多いのがこのケースです。この段階で急いで結論を出す必要はありません。年末年始は「実家をどうするか」ではなく、「親の今の気持ちを聞く」ことを目的にするのが現実的です。「最近この家、困っていることはない?」「もし将来住めなくなったらどうしたい?」といった、日常の延長のような聞き方から始めると、親も身構えずに話しやすくなります。結論を急がせるような聞き方は、かえって親を頑なにさせることがあるため注意してください。この段階の目標は、次に集まるときまでに「権利書や通帳の場所を教えてもらう」「エンディングノートを書いてもらえるか相談してみる」といった、小さな一歩を決めることです。
ケースB:親が高齢で施設入居を検討している場合
親の施設入居が具体的に検討され始めている場合は、実家じまいのスケジュールがある程度見えてくる段階です。施設入居のタイミングに合わせて、実家をどうするか(空き家として維持する、賃貸に出す、売却する)を決めておくと、後の対応がスムーズになります。ただし、親が認知症などにより判断能力が低下すると、本人名義の不動産の売却や賃貸契約が難しくなることがあります。判断能力があるうちに、今後の方針について本人の意向を確認し、必要であれば任意後見制度や家族信託の活用も選択肢に入れて、専門家に相談しておくことをおすすめします。
ケースC:すでに実家が空き家になっている場合
親がすでに亡くなっている、あるいは既に施設に入居していて実家が空き家になっている場合は、維持管理の負担と実家じまいの必要性がより切実になります。空き家は放置すると老朽化が進むだけでなく、管理不全の状態と自治体に判断されると、固定資産税の住宅用地特例が解除され、税額が大きく増えるケースもあります。年末年始に帰省した際は、まず建物の傷み具合と、庭木・外構の状態を確認し、年明け以降の処分方針(売却・賃貸・解体・活用)を家族で話し合う材料にしてください。
ケースD:すでに相続が発生し、期限が迫っている場合
相続がすでに発生している場合、年末年始はのんびり構えていられません。相続放棄を検討している場合は3か月、相続税の申告が必要な場合は10か月という期限があり、これらは「相続の開始を知った日」から数えます。年始に期限が迫っていることに気づいた場合は、家庭裁判所や税理士・司法書士への相談を、休み明け最初の営業日に行えるよう、年末のうちに連絡先を調べておくことが重要です。判断に迷う場合は、遺品や実家の家財を勝手に処分しないよう注意してください。相続財産の一部でも処分・売却をすると、法定単純承認とみなされ、後から相続放棄ができなくなる可能性があります。
実家じまいにかかる費用の目安と、年末年始に確認しておきたいこと
年末年始の話し合いで意外と後回しにされがちなのが、費用の話です。「誰が中心になるか」だけでなく「誰がどれだけ費用を負担するか」を事前に共有しておかないと、いざ実務が動き出した段階できょうだい間の摩擦につながりやすくなります。費用は実家の広さ・立地・建物の状態によって大きく変わるため、この記事で断定的な金額をお伝えすることは避けますが、大まかな費目の内訳を知っておくだけでも、年始以降の見積もり取得がスムーズになります。
| 費目 | 主な内容 | 年末年始に確認したいこと |
|---|---|---|
| 家財の仕分け・処分費用 | 遺品整理・不用品回収の作業費 | 家財の分量(部屋数・物の多さ)を写真で記録しておくと、後日の見積もりが正確になる |
| 建物の解体費用 | 木造・鉄骨など構造や延床面積による | 建物の築年数・構造(登記簿や固定資産税の通知書に記載)を確認しておく |
| 相続登記・司法書士報酬 | 登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)+司法書士への依頼費用 | 固定資産税の納税通知書を確認し、評価額のおおよその見当をつけておく |
| 相続税 | 基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合に発生 | 法定相続人の人数を確認し、基礎控除額の目安を把握しておく |
| 不動産の売却・仲介手数料 | 売却額に応じた仲介手数料、譲渡所得税 | 空き家の3,000万円特別控除の対象になり得るか、要件(相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡など)を確認しておく |
費用の具体的な金額は、実家の状態や地域によって幅が大きく、この記事で一律の相場を提示することは避けます。年明け以降、遺品整理業者・解体業者・不動産会社からそれぞれ見積もりを取り、複数社を比較したうえで判断することをおすすめします。安心実家じまいでは、写真を送るだけで概算のお見積もりをご案内しており、正式な現地見積もりの前に費用感をつかみたい場合にもご利用いただけます。
空き家のまま放置すると費用負担が増えることもある
実家じまいの方針が決まらないまま実家を空き家として放置すると、維持管理の手間だけでなく、税負担が増える可能性がある点にも注意が必要です。自治体が「管理不全空き家」や「特定空家」と判断した場合、固定資産税の住宅用地特例が解除され、土地の固定資産税が最大で従来の6倍程度になることがあります(総務省・国土交通省の空き家対策関連の制度)。年末年始に実家の状態を確認する際は、庭木の繁茂や外壁の破損など、自治体から指摘を受けやすい箇所も併せてチェックしておくと安心です。
実家の現状確認シート【帰省中の点検用】
帰省中に実家の状態を確認する際、何をどこまで見ればよいか迷う方も多いはずです。以下は、年末年始の限られた時間で確認しておきたい項目をまとめた点検シートです。気になった箇所は写真に残し、後日の見積もり依頼や業者への相談時に活用してください。
| 確認箇所 | チェックポイント |
|---|---|
| 屋根・外壁 | ひび割れ、色あせ、雨どいの詰まりや破損がないか |
| 水回り(台所・浴室・トイレ) | 水漏れ、カビ、給湯器の稼働状況 |
| 庭・外構 | 庭木の繁茂状況、フェンスや門扉の破損、隣地との境界の様子 |
| 室内の家財量 | 各部屋の物の量をおおまかに把握し、処分規模の目安をつける |
| 電気・ガス・水道の契約状況 | 今後も使用するか、空き家になった際に解約するかを確認する |
| 郵便物・回覧板の状況 | 滞留していないか、町内会・自治会への連絡が必要かを確認する |
| 火災保険・地震保険の加入状況 | 証券の保管場所と、空き家になった場合の補償内容の変更要否を確認する |
親が高齢の場合に知っておきたい「判断能力」と実家じまいの関係
年末年始の帰省時に、親の様子がいつもと違うと感じることがあるかもしれません。実家じまいを進めるうえで見落とされがちなのが、不動産の売却や賃貸契約には、名義人本人の判断能力が必要だという点です。認知症などにより判断能力が低下すると、本人名義のままでは実家の売却や大規模なリフォームの契約ができなくなり、家庭裁判所を通じた成年後見制度の利用が必要になる場合があります。成年後見制度は財産の保全を目的とするため、実家の売却などの処分行為には家庭裁判所の許可が必要になるなど、制約が生じることもあります。
判断能力があるうちに、任意後見制度や家族信託といった選択肢を検討しておくと、将来の実家じまいをスムーズに進めやすくなります。ただし、どの制度が適しているかは家族構成や財産状況によって異なるため、具体的な制度選びは司法書士や弁護士など専門家に相談することをおすすめします。年末年始に「親の様子が気になった」ときは、それ自体が実家じまいを検討し始める一つのサインとして捉えてください。
年末年始の話し合いでよくあるトラブルとその防ぎ方
年末年始は家族が集まる貴重な機会である一方、久しぶりに顔を合わせるからこそ、進め方を誤ると気まずい空気で終わってしまうこともあります。事務局として実家じまいのご相談を受ける中でよく耳にするパターンと、その防ぎ方を紹介します。
- いきなり結論を求めてしまう——「実家、どうするの?」と単刀直入に聞くと、親や他のきょうだいが身構えてしまいます。まずは現状の共有と意向の聞き取りに徹し、結論は次回以降に持ち越す前提で話し始めると、対話が続きやすくなります。
- 特定の人だけに負担が偏る——実家の近くに住む人や、長子・長女が一人で背負い込んでしまうケースは少なくありません。担当表を使って役割を可視化し、遠方に住む人にも「情報収集」「費用の一部負担」など、できる範囲の役割を割り振ることが不公平感を防ぎます。
- 「言った言わない」の食い違い——口約束だけで済ませると、後になって「そんな話は聞いていない」という食い違いが起きがちです。話し合った内容は、その場でメモやメッセージに残し、家族全員が見られる形で共有しておくと誤解を防げます。
- 期限に気づかず放置してしまう——相続放棄や相続登記の期限を知らないまま年末年始をやり過ごし、後になって「もう手遅れかもしれない」と焦るケースがあります。相続が発生している家庭は、期限のカレンダーを年始のうちに全員で確認しておくことが防止策になります。
- 親の気持ちを置き去りにしてしまう——子ども世代だけで話を進め、親の意向を確認しないまま方針を決めてしまうと、後で大きな摩擦につながります。実家は親だけのものではなく家族全体に関わるものですが、最終的な決定において親の気持ちを尊重する姿勢を忘れないようにしてください。
こうしたトラブルの多くは、「一度で全部決めようとしない」という心構えと、決めたことを記録に残すという2点で防げます。年末年始はあくまで実家じまいの第一歩と位置づけ、焦らず段階を踏んで進めることが、結果的に一番の近道になります。
実家をどうするか:維持・賃貸・売却・解体の方針比較
年末年始の話し合いでは、「実家を最終的にどうするか」まで結論を出す必要はありませんが、方向性を検討するための材料として、主な選択肢の特徴を整理しておきます。それぞれにメリット・デメリットがあり、家族構成や実家の立地、今後誰かが住む予定があるかによって適した選択肢は変わります。
| 方針 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
| 維持(相続してそのまま所有) | 将来住む可能性がある、思い入れが強く手放したくない | 固定資産税や維持管理の手間・費用が継続的にかかる |
| 賃貸に出す | 立地条件がよく、借り手が見込める | リフォーム費用が必要になる場合がある。管理を委託する費用も検討する |
| 売却する | 誰も住む予定がなく、資産として現金化したい | 空き家の3,000万円特別控除など税制優遇の要件を確認する。相場より早く売りたい場合は買取という選択肢もある |
| 解体して更地にする | 建物の老朽化が進んでいる、売却前に更地化したほうが売りやすい | 解体費用がかかる。更地にすると固定資産税の住宅用地特例が外れ、税額が上がる場合がある |
| 相続土地国庫帰属制度を使う | 売却が難しい土地で、手放すこと自体を優先したい | 建物の解体や一定の要件を満たす必要があり、負担金も発生する |
方針を決める際は、一つの選択肢に絞り込む前に、複数の選択肢の概算費用を年明け以降に比較しておくと、後悔の少ない判断につながります。特に「維持」を選ぶ場合は、何も決めずに先延ばしにしているだけの状態と区別がつきにくいため、いつまで維持するのか、維持する場合の管理方法(誰が定期的に見に行くか、管理サービスを使うかなど)まで、家族内で合意しておくことをおすすめします。
全国の相談窓口も選択肢に入れる
実家じまいの相談先は司法書士・税理士・不動産会社・遺品整理業者といった民間の専門家だけではありません。多くの自治体では、空き家に関する相談窓口を設けており、解体費用の補助金制度や、空き家バンクへの登録といった情報を無料で案内しています。制度の有無や内容は自治体によって異なるため、実家がある市区町村のホームページで「空き家 相談窓口」「空き家 補助金」といったキーワードで確認することをおすすめします。年末年始の帰省中に実家の所在自治体名を確認しておき、年明けに問い合わせる際の準備としておくとスムーズです。
年明け以降、実務を進めるときの相談先の選び方
年末年始の話し合いを経て方針が固まったら、年明け以降は目的に応じた専門家・業者への相談が中心になります。相談先を迷わないよう、目的別の窓口を整理しておきます。
| 目的 | 主な相談先 | 備考 |
|---|---|---|
| 相続登記・名義変更 | 司法書士 | 2024年4月から相続登記は義務化。3年以内に申請しないと過料の対象になり得る |
| 相続税の申告・節税の相談 | 税理士 | 相続の開始を知った日の翌日から10か月以内が申告期限 |
| 相続放棄・家族間トラブルの相談 | 司法書士・弁護士 | 相続放棄は相続の開始を知った日から3か月以内 |
| 家財の仕分け・遺品整理 | 遺品整理業者 | 形見分け候補の仕分けから、供養・買取まで一括相談できる業者もある |
| 実家の売却・賃貸 | 不動産会社 | 複数社から査定を取り、空き家の3,000万円特別控除の対象になるかも確認する |
| 解体・更地化 | 解体業者・自治体窓口 | 自治体によっては解体費用の補助金制度がある場合がある |
相談先が複数にまたがる場合でも、まずはどれか一つの窓口に相談し、そこから他の専門家を紹介してもらう流れでも問題ありません。安心実家じまいでは、遺品整理・家財処分のご相談を起点に、必要に応じて提携する司法書士・税理士・不動産会社をご案内する対応も行っています。年末年始の話し合いを終えて「まず何から手を付ければよいか分からない」という場合は、写真を送るだけの無料見積もりから、現状の整理も兼ねてご相談いただけます。
よくある質問
実家じまいの話し合いは、年末年始のうちに結論を出すべきですか?
相続がすでに発生している場合、年末年始に気をつけることはありますか?
親がまだ実家じまいに乗り気でない場合、どう話を進めればよいですか?
年末年始に家財の処分まで進めることはできますか?
きょうだいの一人が実家の近くに住んでいる場合、その人にお願いしてよいですか?
実家の名義が祖父母のままになっている場合、どうすればよいですか?
親に実家じまいの話を切り出すと、機嫌を損ねないか心配です
まとめ
年末年始は、家族が実家じまいについて話し合える数少ない機会です。ただし、この期間にできるのは「現状把握」と「方針の方向づけ」までであり、実際の手続きや処分は年明け以降に計画的に進めるのが失敗しない進め方です。振り返ります。
- 年末年始に向いているのは「確認」「対話」「役割分担」。契約・処分・登記は年明け以降に回す
- 相続放棄は3か月、相続税申告は10か月、相続登記は3年(義務化)という法律上の期限を家族で共有する
- 「誰が」「いつまでに」を書き込む担当表を作ると、話し合いを行動に変えやすい
- 親が健在な場合は結論を急がず、「聞く」ことを目的に話を始める
- 相続がすでに発生している場合は、家財を処分する前に専門家へ相談する
- 年明け以降は目的別(登記・税務・家財整理・不動産)に相談先を分けて動くとスムーズ
実家じまいの進め方に一つの正解はありません。家庭の状況や親の気持ちに合わせて、段階を踏みながら進めていただければ十分です。判断に迷う手続きや、家財の仕分け・処分でお困りの場合は、一人で抱え込まず専門家にご相談ください。実家の処分方法の全体像については実家の処分方法5つを比較|売却・買取・解体・国庫帰属・活用の費用と税金【2026年版】もあわせてご覧ください。
早いこともあります
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