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空き家を自治体・法人に寄付できる?受け取ってくれない理由と税金|国庫帰属・買取との比較

最終更新日:2026年10月12日|監修:司法書士・行政書士 久留慎一郎先生・安心実家じまい事務局

司法書士・行政書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。

監修の範囲:相続・登記・法務に関する記述(司法書士・行政書士の業務範囲)。片付け・買取・費用相場などの記述は安心実家じまい事務局が編集しています。監修者プロフィール

税金について:税額の計算や特例を使えるかどうかの判断は税理士の業務で、監修の範囲に含みません。申告の前に、税理士または所轄の税務署でご確認ください。

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 不動産の名義変更
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理

この記事の結論

  • 空き家の寄付先として多くの人が最初に考える「自治体」は、活用の見込みがない家屋付き土地はほぼ受け取りません。公共用途に使える土地以外は窓口で断られるのが実情です。
  • 個人がNPOや企業などの法人に空き家を寄付すると、「みなし譲渡所得課税」という所得税がかかることがあります。無償で渡しても税金がゼロになるとは限りません。
  • 建物付きの土地は、国に引き取ってもらう「相続土地国庫帰属制度」の対象外です。解体して更地にする必要があり、その分の費用もかかります。
  • 結論として、空き家は「片付けてから売るか、そのまま買取に出すか、手取りで比べる」ことが現実的な判断軸になります。寄付は制度的なハードルが高く、最後の選択肢と考えるのが実務的です。まずは空き家買取(片付け不要・複数社査定)で手取り額を確認してから、寄付や国庫帰属を検討する順番をおすすめします。
目次

空き家を自治体に寄付できるか|現実はほぼ「受け取り不可」

「使う予定のない実家を、いっそ自治体に寄付してしまいたい」という相談は、空き家を抱える家庭から非常によく聞かれます。しかし結論から言うと、建物が残ったままの空き家を自治体が寄付として受け取るケースは、ごくまれです。多くの自治体は、ホームページの「寄附の受入れについて」といった案内の中で、公共事業や行政目的に活用できる見込みがある土地・建物に限って寄付を検討する、という方針を示しています。老朽化した家屋、接道状況が悪く再建築が難しい土地、山間部の利用見込みのない山林などは、維持管理の負担だけが自治体に残るため、原則として断られます。

自治体が寄付を断る理由は、財政上の負担にあります。土地を受け取れば、その後の固定資産税は自治体自身の所有物になるため発生しませんが、建物の維持管理費・解体費・将来的な売却の手間はすべて自治体側の負担になります。活用計画のない不動産を無条件で受け入れると、他の住民の税金で管理コストを賄うことになるため、多くの自治体が「公共目的に活用できるもの以外は原則お断りしています」という立場を取っています。寄付を申し出る前に、まずは物件所在地の自治体の財産管理担当課(管財課・財産活用課など)に、受入れ基準を問い合わせておくと、無駄な手続きを避けられます。

自治体によっては「条件付き」で受け入れる例もある

すべての自治体が一律に拒否しているわけではなく、道路の一部として使える土地、隣接する公共施設の拡張用地として活用できる土地など、具体的な行政目的に合致する場合は、個別に寄付を受け入れる自治体もあります。ただし、こうした事例は限定的で、「空き家そのもの」を寄付できるケースはさらに少なくなります。建物を解体して更地にすることや、境界確定・測量を済ませることを条件にされる場合もあり、寄付する側にも相応の費用負担が発生する点は押さえておく必要があります。

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法人への寄付は「みなし譲渡所得課税」に注意

自治体に断られた後、NPO法人や社会福祉法人、あるいは民間企業などに空き家を寄付しようと考える人もいます。ここで見落とされがちなのが税金の問題です。国税庁のタックスアンサーによれば、個人が法人に対して財産を贈与または遺贈した場合には、その時の時価で財産の譲渡があったものとみなされます(所得税法第59条に基づく「みなし譲渡課税」)。つまり、無償で渡しているにもかかわらず、所得税法上は「時価で売った」ことにされ、取得時の価格より時価が値上がりしていれば、その値上がり益(譲渡所得)に対して所得税・住民税が課税される可能性があります。

これは直感に反する仕組みのため、「お金をもらっていないのに、なぜ税金がかかるのか」と驚かれる方が多いポイントです。特に昭和の時代に取得した土地は取得費が低く計上されていることが多く、時価との差額(含み益)が大きくなりやすいため、寄付したつもりが思わぬ納税につながることがあります。取得費が不明な場合は、収入金額(時価)の5%を概算取得費とする扱いもあり、この場合は含み益がさらに大きく計算されがちです。寄付を検討する段階で、取得時の契約書や領収書が残っているかを確認し、具体的な税額の見込みは税理士に試算してもらうことを強くおすすめします。

個人への贈与(親族以外)は別の税金がかかる

寄付の相手が法人ではなく个人(親族以外の知人など)の場合は、みなし譲渡課税ではなく、受け取った側に贈与税がかかる仕組みになります。贈与税は受贈者(もらった人)が負担する税金で、基礎控除を超える部分に課税されます。空き家のような高額資産を個人間でやり取りする場合、贈与税の負担が重くなりやすく、結果として「もらった側が困る」という新しい問題が生まれることもあります。誰に・どう渡すかによって課税される税目も納税義務者も変わるため、寄付先を決める前に、必ず専門家に相談する段階を挟んでください。

建物付きの空き家は「国に引き取ってもらう」こともできない

近年、相続した土地を手放す手段として注目されているのが、法務局が窓口となる「相続土地国庫帰属制度」です。相続または相続人への遺贈によって土地を取得した人が、一定の要件を満たす土地について、法務局の審査を経て土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度で、令和5年4月27日より前に相続した土地も対象になります。申請には土地1筆あたり14,000円の審査手数料がかかり(却下・不承認になっても返還されません)、申請先は土地が所在する都道府県の法務局・地方法務局の本局(支局・出張所では受付不可)です。

ただし、この制度には建物がある土地はそもそも対象外という大きな制約があります。担保権が設定されている土地、土壌汚染がある土地、境界が不明確な土地などとあわせて、建物が存在する土地は「通常の管理に過分な費用・労力がかかる土地」として引き取りの対象から外れています。つまり、空き家をそのまま国に引き取ってもらうことはできず、解体して更地にしたうえで申請する必要があります。さらに、承認後には土地の種目に応じて「10年分の標準的な管理費用」を考慮した負担金の納付も必要になるため、解体費用と負担金の両方を見込んでおく必要があります。寄付と同様、国庫帰属も「タダで手放せる」制度ではない点を正しく理解しておくことが重要です。

解体して更地にすると固定資産税が上がることもある

寄付や国庫帰属のために空き家を解体するかどうかを考えるとき、見落としやすいのが固定資産税です。住宅が建っている土地には「住宅用地特例」という軽減措置があり、200㎡以下の小規模住宅用地は課税標準額が6分の1に、200㎡を超える部分は3分の1に軽減されています(地方税法第349条の3の2)。建物を解体して更地にすると、この特例の対象から外れるため、翌年度以降の固定資産税が上がることがあります。寄付や国庫帰属、あるいは更地での売却を検討する際は、解体費用だけでなく、解体後の固定資産税の増加分も含めて、総合的に手取りを比較することが欠かせません。

また、2023年の空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)の改正により、倒壊の危険などが大きい「特定空家等」に加えて、そのまま放置すると特定空家等になるおそれがある「管理不全空家等」という区分が新設されました。自治体から指導・勧告を受けた管理不全空家等は、住宅用地特例の対象から除外される場合があります。寄付先が見つからず空き家を放置してしまうと、特例が外れて固定資産税が上がったうえ、売却も進まないという、最も避けたい状態になりかねません。

寄付・買取・仲介・有料引き取りの違い【比較表】

空き家を手放す方法は寄付だけではありません。手取り額・スピード・手間という観点で、主な4つの方法を比較しました。印刷してご家族との相談にお使いください。

方法 手取りの目安 スピード 向いているケース
自治体への寄付 0円(受入れ自体が稀) 審査に時間がかかる/断られることが大半 道路拡張など行政目的に合致する特殊な土地
法人・個人への寄付 0円(かつ寄付側に税負担が生じうる) 相手探しに時間がかかる 引き取り希望者が明確にいる場合のみ
買取(宅建業者) 仲介よりやや低いが、片付け・解体なしで即現金化しやすい 最短1〜2週間程度 とにかく早く・手間なく手放したい
仲介(宅建業者) 買取より高くなりやすいが、売れるまで時間がかかる 数か月〜1年以上かかることも 時間に余裕があり、できるだけ高く売りたい
相続土地国庫帰属制度 マイナス(手数料14,000円+負担金+解体費) 審査に数か月〜1年程度 買い手がつかない山林・原野等(建物は解体必須)

こうして並べると、「寄付」は手取りがゼロどころか、税金や手数料の負担が発生し得る選択肢であることが分かります。一方で、片付けや解体をせずに現状のまま相談できる買取であれば、寄付や国庫帰属より先に、まず「いくらで引き取ってもらえるか」を確認したうえで判断するほうが、結果的に手元に残る金額は大きくなりやすい傾向があります。当事務局は宅建業者ではないため、買取・仲介そのものは提携の宅建業者が担当し、当事務局は窓口と片付けのご相談を担当する形でサポートしています。

ケース別シミュレーション|あなたの場合はどうする?

ケースA:遠方の実家が空き家で、建物の傷みが激しい場合

寄付や国庫帰属を検討する前に、解体費用の見積もりと、解体せずそのまま買取に出した場合の査定額の両方を確認することをおすすめします。傷みが激しい家でも、土地としての価値があれば、解体費用を差し引いても買取のほうが手取りが残るケースが多く見られます。片付けが済んでいない場合も、提携の遺品整理・実家じまい代行のサービスとあわせて進められます。

ケースB:山林や原野で、売却の見込みがほとんどない場合

建物がなければ、相続土地国庫帰属制度の対象になり得ます。ただし負担金・手数料がかかる「有料の引き取り」である点は変わらないため、近隣の山林所有者や森林組合への相談、無償の引き取り希望者がいないかを先に確認したうえで、国庫帰属を最終手段として検討する順番が現実的です。

ケースC:再建築不可・接道なしなど、買取先が見つかりにくい場合

通常の仲介では売れにくい土地でも、再建築不可物件を専門に扱う買取業者であれば値段がつくことがあります。寄付先を探すより先に、こうした専門業者への査定依頼を優先したほうが、結果的に早く・確実に手放せる可能性があります。

ケースD:相続人が複数いて、誰も住む予定がない場合

寄付や国庫帰属は手続きが煩雑なうえ、相続人全員の同意や書類が必要になります。相続人が複数いる場合は、まず全員で「売却して現金で分ける」方向を基本線にし、寄付はそれでも手放せなかった場合の最終手段として位置づけると、話し合いがまとまりやすくなります。

空き家を手放す前の実務チェックリスト

寄付・国庫帰属・売却のどれを選ぶ場合でも、着手前に確認しておきたい項目を一覧にしました。

確認項目 チェックのポイント
自治体への事前相談 財産管理担当課に受入れ基準を確認する(多くは断られる前提で進める)
取得費の資料確認 購入時の契約書・領収書の有無を確認し、みなし譲渡課税の試算材料にする
建物の有無の確認 国庫帰属制度は建物付き土地が対象外。解体の要否を判断する
解体費用と固定資産税の試算 解体後は住宅用地特例が外れ、固定資産税が上がる可能性を織り込む
買取査定の取得 寄付・国庫帰属を決める前に、現状のままの買取査定額を確認する
相続人全員の意思確認 寄付・国庫帰属は相続人全員の書類・同意が必要になる場合が多い
専門家への相談 税金の試算は税理士、登記・国庫帰属の手続きは司法書士・法務局へ

よくある質問

空き家を自治体に寄付することはできますか?
制度上は不可能ではありませんが、実際に受け入れられるケースは非常にまれです。多くの自治体は、道路拡張など具体的な行政目的に活用できる土地・建物に限って寄付を検討する方針を取っており、活用見込みのない家屋付き土地は原則として断られます。寄付を申し出る前に、所在地の自治体の財産管理担当課に受入れ基準を確認することをおすすめします。
空き家を法人に寄付すると税金がかかりますか?
かかる可能性があります。個人が法人に財産を贈与・遺贈した場合、所得税法上はその時の時価で譲渡があったものとみなされ(みなし譲渡課税)、取得時より値上がりしている部分に所得税・住民税が課税されることがあります。無償で渡しても税金がゼロになるとは限らないため、事前に税理士へ相談することをおすすめします。
空き家を国に引き取ってもらうことはできますか?
相続土地国庫帰属制度という制度がありますが、建物がある土地はそもそも対象外です。解体して更地にしたうえで、法務局の審査を受ける必要があり、1筆あたり14,000円の審査手数料と、土地の種目に応じた負担金がかかります。建物付きの空き家をそのまま無償で引き取ってもらう制度ではない点に注意してください。
寄付と買取、結局どちらが得ですか?
多くの場合、買取のほうが手取りは残ります。寄付は受け入れ自体が難しいうえ、法人への寄付は税負担が生じることがあり、国庫帰属は手数料・負担金・解体費用がかかる「有料の引き取り」です。一方、現状のまま買取に出せば、片付けや解体をせずに手取りを得られるケースが多く、まずは買取査定額を確認してから、他の方法と比較することをおすすめします。

まとめ

空き家の寄付は、「厄介な不動産を無償で手放せる方法」として語られがちですが、実際には受け入れ先を見つけること自体が難しく、見つかった場合も税金や手数料の負担が発生することがあります。要点を振り返ります。

  • 自治体は原則として、活用見込みのない空き家の寄付を受け入れない
  • 法人への寄付は「みなし譲渡課税」により、所得税がかかることがある
  • 相続土地国庫帰属制度は建物付き土地が対象外。解体費用も別途かかる
  • 解体して更地にすると、住宅用地特例が外れて固定資産税が上がることがある
  • 寄付・国庫帰属を検討する前に、現状のままの買取査定額を確認するのが現実的
  • 片付けてから売るか、そのまま買取に出すか、手取りで比べることが最も重要な判断軸

判断に迷う場合は、一人で抱え込まず、税金の試算は税理士、登記や国庫帰属の手続きは司法書士や法務局へ相談してください。売却の相談は、提携の宅建業者による空き家買取や実家の売却の窓口から、まずは現状のままの査定額を確認することから始められます。片付けが済んでいない場合は実家じまい代行や遺品整理もあわせてご相談ください。

読むより、聞いたほうが
早いこともあります

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この記事を書いた人

安心実家じまい事務局です。実家の片付けや遺品整理、空き家になった家の処分について、はじめての方にも分かるように記事を書いています。提携している現場の業者や司法書士と一緒に、費用の相場・自治体のごみ出しルール・補助金といった、調べてもなかなか分かりにくいところを一つずつ確かめながらまとめています。「誰に頼めばいいか分からない」という段階のご相談も、LINEやお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
運営は株式会社Sora Capital(東京都渋谷区・安心実家じまい事務局)です。相続・登記・法務に関する記述は、提携の司法書士・行政書士 久留慎一郎が監修しています。税額の計算や申告の判断は、税理士にご確認ください。

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