
久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士
東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。
■経歴
- 1966年鹿児島県生まれ
- 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
- 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
- 2013年司法書士試験合格
- 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
- 2017年司法書士法人コスモ退職
- 2018年事務所開設
- 2021年司法書士法人設立
■得意領域
- 相続登記・相続手続き
- 不動産の名義変更
- 相続放棄
- 簡易裁判所の訴訟代理
この記事の結論
- 費用だけで比べると、実家の生前贈与は相続より高くつくことが多いです。登録免許税は贈与2.0%に対し相続0.4%、不動産取得税は贈与に課税され相続は非課税、さらに相続で使える小規模宅地等の特例(330㎡まで評価額80%減額)は生前贈与では使えません。
- 2024年1月から相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除が新設され、この範囲内の贈与は贈与税も相続財産への持ち戻しもなくなりました。ただし特別控除2,500万円を使った部分は将来の相続財産に加算される「精算」のしくみである点に注意が必要です。
- 暦年課税の生前贈与は、相続開始前3〜7年以内の分が相続財産に加算されます。加算対象期間は2024年の改正で段階的に延び、2026年8月現在はまだ相続開始前3年以内です。
- それでも生前贈与に意味があるのは、値上がりが見込める・相続人間のトラブルを避けたい・判断能力が低下する前に整理したいといった事情がある場合です。評価額や家族構成によって損得は変わるため、試算のうえで判断してください。
実家の生前贈与とは―何が起こるのか
「実家の生前贈与」とは、親が元気なうちに、実家の土地・建物の名義を子どもに移す手続きです。相続を待たずに所有権を移すため、法律上は「贈与」として扱われ、相続とは異なる税金と手続きが発生します。親から「そろそろ実家の名義をお前にしておこうか」と切り出されたり、逆に子どもの側から「将来のことを考えて、今のうちに整理しておきたい」と相談を持ちかけたりするケースが増えており、検討そのものは自然な流れです。ただし、良かれと思って進めた生前贈与が、結果的に相続よりも高い費用を招くことも珍しくありません。まずは生前贈与と相続の違いを整理し、そのうえでどれだけの費用差が生まれるのかを具体的に見ていきます。
生前贈与と相続の違い
生前贈与は「贈与者(親)の意思」で、生きている間に財産を移す行為です。契約であるため、贈与者と受贈者(子)の双方の合意が必要で、贈与契約書を交わしたうえで法務局に所有権移転登記を申請します。名義はすぐに変わり、その後の管理・処分の権限も受贈者に移ります。
一方、相続は親が亡くなったときに、法律の定め(法定相続分)や遺言、遺産分割協議に従って自動的に財産が移転するしくみです。名義が確定するのは遺産分割協議がまとまった後になり、相続人が複数いる場合は話し合いに時間がかかることもあります。かかる税金の種類・税率・特例の適用可否も大きく異なるため、「早く名義を確定させたい」というメリットと、「税金・登記費用が高くなりやすい」というデメリットを両方理解したうえで選ぶ必要があります。
実家の生前贈与を検討する主なきっかけ
相談の背景として多いのは、次のような事情です。相続人が複数いて、実家を継ぐ人を早めに決めておきたい場合。親が高齢になり、判断能力が低下する前に不動産の名義を整理しておきたい場合。将来、地価の上昇や再開発で評価額が上がる見込みがあり、評価額が低いうちに贈与しておきたい場合。子がすでに実家の近くに住んでおり、二世帯化や建て替えを見据えて名義を先に移しておきたい場合などです。どの事情も理解できるものですが、税金の面では「相続まで待つ」ほうが有利になりやすいことは、後述の比較表のとおりです。目的と費用を天秤にかけたうえで判断してください。
実家を生前贈与すると発生する税金・費用
実家のような不動産を生前贈与すると、主に4種類の税金・費用がかかります。順番に見ていきます。
贈与税(暦年課税)の計算方法と税率
贈与税は、1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除110万円を差し引き、残りの金額に税率を掛けて計算します(国税庁タックスアンサーNo.4408・2026年8月時点)。親から18歳以上の子への贈与には「特例税率」が適用され、それ以外(夫婦間や、子が18歳未満の場合など)には「一般税率」が適用されます。特例税率の速算表は次のとおりです。
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | ― |
| 400万円以下 | 15% | 10万円 |
| 600万円以下 | 20% | 30万円 |
| 1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
| 1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
| 3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
| 4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
| 4,500万円超 | 55% | 640万円 |
(直系尊属から18歳以上の子・孫への贈与に適用される特例税率。国税庁タックスアンサーNo.4408より・2026年8月時点)実家は評価額が数百万〜数千万円になることが多いため、この速算表に当てはめると税率が30〜45%にまで上がり、贈与税だけで数百万円になるケースも出てきます。具体的な金額は後半のケース別シミュレーションで確認してください。
相続時精算課税制度と2024年の基礎控除110万円
暦年課税とは別に、「相続時精算課税」という制度を選ぶこともできます。原則60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与に使える制度で、2023年度税制改正により、2024年(令和6年)1月1日以後の贈与から、年110万円の基礎控除が新設されました(国税庁タックスアンサーNo.4103より・2026年8月時点)。この基礎控除に加えて、累計2,500万円までの特別控除があり、両方の範囲内であれば贈与税はかかりません。特別控除を超えた部分には一律20%の税率がかかります。
注意したいのは、相続時精算課税は「税金がなくなる」制度ではなく「相続時にまとめて精算する」制度だという点です。基礎控除110万円の部分は将来の相続財産に加算されませんが、特別控除2,500万円を使って贈与税がかからなかった部分は、贈与者が亡くなったときに相続財産へ加算され、そのときの相続税率で改めて課税対象になります(既に納めた贈与税相当額は相続税額から控除されます)。また、一度この制度を選択すると、同じ贈与者からの贈与について暦年課税へ戻すことはできません。実家のような高額な資産を一括で贈与する場合、この「持ち戻し」の性質を理解しておくことが欠かせません。
参考:相続時精算課税制度とは?仕組み・改正ポイント・メリット・デメリットをわかりやすく解説|終活総合サポートセンター
夫婦間で実家を贈与する場合の配偶者控除(おしどり贈与)
「実家」というと親から子への贈与を思い浮かべがちですが、親のどちらかが亡くなった後、残された配偶者が自宅の名義を単独にしておきたいというケースもあります。婚姻期間が20年を過ぎた夫婦の間で居住用不動産(またはその取得資金)を贈与した場合、基礎控除110万円に加えて最高2,000万円までの配偶者控除を受けられる特例があります(国税庁タックスアンサーNo.4452より・2026年8月時点)。基礎控除と合わせると2,110万円まで贈与税がかかりません。ただし、同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか使えず、贈与を受けた翌年3月15日までにその家に実際に住み、その後も住み続ける見込みであることが条件です。この特例を使った場合の金額は、暦年課税の生前贈与加算(持ち戻し)の対象からも除外されます。なお、この特例が使えるのは夫婦間に限られ、親から子への贈与には適用できません。子への贈与の場合に使う「特例贈与財産用」の速算表は前述のとおりですが、それ以外の親族間・夫婦間の贈与(配偶者控除を超える部分を含む)には、次の「一般贈与財産用」の速算表を使います。
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | ― |
| 300万円以下 | 15% | 10万円 |
| 400万円以下 | 20% | 25万円 |
| 600万円以下 | 30% | 65万円 |
| 1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
| 1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
| 3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
| 3,000万円超 | 55% | 400万円 |
(一般贈与財産用の速算表。夫婦間の贈与や、子が18歳未満の場合の贈与などに使用します。国税庁タックスアンサーNo.4408より・2026年8月時点)同じ評価額でも、特例税率より一般税率のほうが税負担は重くなります。夫婦間で実家の名義を整理する場合は、配偶者控除の要件を満たせるかどうかを最初に確認してください。
登録免許税―贈与は2.0%、相続は0.4%
不動産の名義変更には、法務局への登記の際に登録免許税がかかります。国税庁の税額表によると、土地・建物ともに、相続(または法人の合併)による所有権移転登記の税率は不動産の価額の1,000分の4(0.4%)であるのに対し、贈与その他(交換・収用・競売等を含む)による移転登記は1,000分の20(2.0%)です(国税庁タックスアンサーNo.7191・2026年8月時点)。同じ評価額の実家でも、贈与で受け取ると相続の5倍の登録免許税がかかる計算になります。
不動産取得税―贈与は課税、相続は非課税
不動産取得税は都道府県税で、相続による取得は非課税とされています。一方、生前贈与による取得は、暦年課税・相続時精算課税のどちらを選んでいても課税対象です(東京都主税局「不動産取得税」Q&A・2026年8月時点)。税率は、土地・住宅用家屋ともに2027年(令和9年)3月31日までの取得について3%(非住宅の家屋は4%)で、宅地および宅地に準ずる土地については、課税標準額を評価額の2分の1に軽減する特例が同じく2027年3月31日まで適用されます(同資料より)。つまり、土地部分の実質税率は評価額の1.5%、建物部分は3%になります。
生前贈与と相続、費用面ではどちらが得か(比較表)
ここまでの内容を制度ごとに一覧化すると、費用面での違いがはっきり見えてきます。
| 項目 | 暦年贈与 | 相続時精算課税 | 相続 |
|---|---|---|---|
| 税額の基本 | 基礎控除110万円超に10〜55%の累進税率 | 基礎控除110万円+特別控除2,500万円まで無税、超過分は一律20%(相続時に精算) | 基礎控除3,000万円+600万円×法定相続人の数を超えた分に10〜55%の累進税率 |
| 登録免許税 | 評価額の2.0% | 評価額の2.0% | 評価額の0.4% |
| 不動産取得税 | 課税(土地は評価額×1/2×3%、住宅家屋は評価額×3%) | 課税(同左) | 非課税 |
| 小規模宅地等の特例 | 使えない | 使えない(国税庁が明記) | 要件を満たせば330㎡まで評価額を80%減額 |
| 相続財産への持ち戻し | 相続開始前3〜7年以内の贈与を加算(加算対象期間は2024年から段階的に延長中) | 基礎控除超過分は年数の制限なく全額を加算 | 該当なし |
| 名義が確定する時期 | 贈与時に確定 | 贈与時に確定 | 遺産分割協議がまとまるまで確定しない |
(登録免許税は国税庁タックスアンサーNo.7191、不動産取得税は東京都主税局資料、小規模宅地等の特例は国税庁タックスアンサーNo.4124、いずれも2026年8月時点の情報にもとづきます)表を見ると、登録免許税・不動産取得税・小規模宅地等の特例のいずれも、費用面では相続のほうが有利に働くことが分かります。生前贈与のメリットは「税金の安さ」ではなく、「早く名義を確定できること」「将来の値上がり分を今の評価額で贈与できること」「認知症などで判断能力が低下する前に手続きを終えられること」にあります。
ケース別シミュレーション―評価額1,000万・2,000万・3,000万円で比較
実際にどれくらいの差になるのか、固定資産税評価額の異なる3つのケースで試算しました。前提は「子1人が実家をまとめて生前贈与で受け取る(特例税率を適用)」「相続の場合は登録免許税と不動産取得税のみを比較し、相続税額は家族構成や他の財産によって変わるため個別には算出しない」というものです。土地と建物の評価額の内訳は目安として仮定しています。実際の金額は固定資産評価証明書の内容や個々の家族構成によって変わるため、あくまで目安としてご覧ください。
| 評価額(内訳の目安) | 暦年贈与(一括)の総費用 | 相続時精算課税を選んだ場合の総費用 | 相続で取得した場合 |
|---|---|---|---|
| 1,000万円 (土地600万円+建物400万円) |
約218万円 (贈与税177万円+登録免許税20万円+不動産取得税21万円) |
約41万円 (贈与税0円+登録免許税20万円+不動産取得税21万円)※890万円は将来の相続財産に加算 |
登録免許税4万円+不動産取得税0円(相続税は基礎控除・特例の範囲内なら0円のケースも) |
| 2,000万円 (土地1,200万円+建物800万円) |
約667.5万円 (贈与税585.5万円+登録免許税40万円+不動産取得税42万円) |
約82万円 (贈与税0円+登録免許税40万円+不動産取得税42万円)※1,890万円は将来の相続財産に加算 |
登録免許税8万円+不動産取得税0円 |
| 3,000万円 (土地1,800万円+建物1,200万円) |
約1,158.5万円 (贈与税1,035.5万円+登録免許税60万円+不動産取得税63万円) |
約201万円 (贈与税78万円+登録免許税60万円+不動産取得税63万円)※2,890万円は将来の相続財産に加算(既に納めた78万円は相続税額から控除) |
登録免許税12万円+不動産取得税0円 |
相続時精算課税を使うと、贈与時点の負担は暦年贈与よりはるかに小さくなります。ただし表の※印のとおり、基礎控除110万円を超える部分は将来の相続財産に加算され、相続時にあらためて相続税が計算される点は変わりません。「今は税金がかからない」だけで、実家全体の評価額が非課税になるわけではないことに注意してください。相続までそのまま待った場合は、登録免許税と不動産取得税だけを見ればどのケースも数万〜十数万円で済み、小規模宅地等の特例が使えれば相続税自体もゼロに近づく可能性があります。評価額が大きい実家ほど、生前贈与と相続の費用差は開いていきます。
生前贈与で見落としがちな2つの落とし穴
小規模宅地等の特例が使えなくなる
小規模宅地等の特例は、被相続人が住んでいた宅地を配偶者や同居していた親族などが相続した場合に、330㎡までの部分について評価額を80%減額できる制度です(特定居住用宅地等・国税庁タックスアンサーNo.4124より)。同居していなくても、一定の要件(持ち家がないなど、いわゆる「家なき子特例」)を満たせば適用できる場合があります。この特例は「相続または遺贈により取得した宅地等」であることが条件のため、生前贈与によって取得した宅地は対象外です。国税庁の解説でも、相続時精算課税に係る贈与によって取得した宅地等はこの特例の適用を受けられないと明記されています。評価額の大きい実家ほど、この特例を使えないことによる相続税への影響は大きくなります。将来その実家に同居する予定がある、あるいは配偶者が住み続ける予定があるなら、特例を使える相続まで名義変更を待ったほうが有利になるケースが多いです。
生前贈与加算(持ち戻し)と2024年以降の経過措置
暦年課税で生前贈与を受けた財産は、贈与者が亡くなったときに、一定期間内の分が相続財産に加算されます(生前贈与加算)。この「加算対象期間」は2023年度税制改正で3年から7年に延長されましたが、2026年8月現在は経過措置の途中で、被相続人の相続開始日によって扱いが異なります(国税庁タックスアンサーNo.4161より・2026年8月時点)。
| 被相続人の相続開始日 | 加算対象期間 |
|---|---|
| 〜令和8年(2026年)12月31日 | 相続開始前3年以内 |
| 令和9年(2027年)1月1日〜令和12年(2030年)12月31日 | 令和6年1月1日から死亡の日までの間 |
| 令和13年(2031年)1月1日〜 | 相続開始前7年以内 |
つまり2026年8月時点でこれから生前贈与を検討する場合、加算対象期間はまだ「相続開始前3年以内」ですが、贈与者が長生きするほど、将来的には7年以内まで持ち戻しの対象期間が延びていく制度設計になっています。なお、延長された4年分(3年超7年以内)については、贈与財産の価額の合計額から総額100万円までは相続財産に加算しない措置もあります。相続直前になって急いで生前贈与をしても、加算対象期間内であれば節税効果は限定的になる点に注意してください。
それでも生前贈与を選ぶ意味があるケース
費用だけを見れば相続を待つほうが有利になりやすいのは事実ですが、次のような事情があれば、コストをかけてでも生前贈与を選ぶ意味があります。
- 将来の評価額上昇が見込める――再開発計画や地価上昇が見込まれる地域では、評価額が低いうちに贈与しておくことで、将来の相続税評価額を抑えられる可能性があります。
- 相続人同士のトラブルを避けたい――相続人が複数いて実家の帰属をめぐる話し合いが難航しそうな場合、親の意思がはっきりしているうちに名義を確定させておくことで、遺産分割協議の負担を減らせます。ただし他の相続人には遺留分があるため、事前の説明と合意形成は欠かせません。
- 判断能力が低下する前に整理したい――認知症などで意思能力が低下すると、贈与契約そのものが結べなくなります。将来の資産凍結リスクを避けたい場合、早めの生前贈与や、成年後見・家族信託といった別の制度もあわせて検討する価値があります。
- 相続時精算課税の基礎控除110万円を計画的に使う――実家の持分を複数年に分けて少しずつ贈与すれば、年110万円の基礎控除の範囲内で贈与税をかけずに名義を移せます。ただし持分ごとに登記が必要になるため、登録免許税や司法書士報酬が複数回発生し、事務の手間も増える点は考慮してください。
逆に、特に事情がなく「なんとなく早めに」という理由だけであれば、相続時までコストと手続きの負担を先送りするほうが合理的なことが多いというのが実務上の傾向です。
実家を生前贈与する前に確認したい実務チェックリスト
生前贈与を具体的に検討する段階になったら、次の項目を確認しておくと、後々のトラブルや手戻りを防ぎやすくなります。契約前のチェックリストとしてご活用ください。
| 確認項目 | ポイント |
|---|---|
| 評価額の把握 | 固定資産評価証明書を取得し、土地・建物それぞれの評価額を確認したか |
| 暦年課税か相続時精算課税かの比較 | 評価額・他の財産・将来の相続財産総額もふまえて、どちらが有利かを試算したか |
| 小規模宅地等の特例の要否 | 将来その宅地に自分や配偶者が住む予定があり、特例を使いたい可能性はないか |
| 他の相続人への説明 | 兄弟姉妹など将来の相続人に一声かけ、遺留分に関する認識をすり合わせたか |
| 相続時精算課税の後戻りできない性質 | 一度選択すると同じ贈与者からの贈与について暦年課税へ戻せない点を理解しているか |
| 実家の将来像 | 住み続けるのか、将来的に売却・解体(実家じまい)する可能性があるのかを話し合ったか |
| 専門家への確認 | 司法書士に登記費用・必要書類・スケジュールを確認したか |
| 申告期限の把握 | 贈与契約書を書面で残し、贈与税の申告期限(贈与を受けた翌年3月15日)を把握しているか |
名義変更の手続きの流れと必要書類
実家を生前贈与する場合の基本的な流れは、次のとおりです。
- 贈与の合意と贈与契約書の作成――誰が、いつ、どの不動産を贈与するかを明確にした贈与契約書を、贈与者・受贈者双方の署名押印のうえ作成します。口頭だけでも贈与は成立しますが、後日の証拠として書面を残すことが重要です。
- 相続時精算課税を使う場合は選択の検討――暦年課税のままにするか相続時精算課税を選ぶかを、この時点で決めておきます。
- 所有権移転登記(名義変更)の申請――法務局に登記を申請します。贈与者の印鑑証明書、登記識別情報(権利証)、受贈者の住民票、固定資産評価証明書、贈与契約書などが必要です。司法書士に依頼するのが一般的です。
- 贈与税の申告・納税――贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までに、受贈者の住所地を管轄する税務署に申告します。相続時精算課税を選ぶ場合は、この期限までに「相続時精算課税選択届出書」もあわせて提出します。
登記費用には登録免許税のほか、司法書士報酬(不動産の評価額や地域によって異なります)がかかります。複数の持分に分けて数年にわたって贈与する場合は、そのたびに登記と司法書士報酬が発生する点も見込んでおく必要があります。
相続登記の義務化と名義を放置するリスク
実家の名義について検討する際は、相続登記の義務化も踏まえておく必要があります。2024年(令和6年)4月1日から、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務化されました(法務省「相続登記の申請義務化」より)。正当な理由なく申請を怠ると、過料の対象になり得ます。生前贈与を選ばず相続まで待つ場合でも、実際に相続が発生した際には、この期限内に名義変更の手続きを進める必要があります。
逆に、実家の名義が祖父母の代のまま何十年も放置されているようなケースでは、相続人の数が増えて手続きが複雑になっている場合があります。生前贈与を検討するタイミングは、こうした「名義の棚卸し」を行う良い機会でもあります。まずは登記事項証明書を取得し、現在の名義が誰になっているかを確認するところから始めてください。
生前贈与・相続のあと、実家をどうするか
生前贈与にせよ相続にせよ、名義変更はゴールではなく、実家の今後を考える出発点です。名義を引き継いだ後、実際にその家に住み続けるのか、空き家のまま維持するのか、売却や解体を検討するのかによって、必要な準備は大きく変わります。特に、名義変更を終えたものの実家が遠方にあり、日常的な管理が難しいというご相談は少なくありません。空き家として放置すると、雨漏りやシロアリなどによる傷みが進みやすく、自治体から特定空家等に指定されるリスクも高まります。
実家じまい全体の進め方や必要な手順を体系的に知りたい場合は実家じまいの進め方を、片付け・売却・解体にかかる費用感をあらかじめ把握しておきたい場合は実家じまいの費用を、実際の作業手順を具体的にイメージしたい場合は実家じまいの手順をあわせてご覧ください。名義変更が済んだ後の片付け・売却・解体まで見据えて、早めに全体像を把握しておくと、その後の判断がスムーズになります。
安心実家じまいのサービス案内
安心実家じまいは、実家の片付けから家の売却・解体の手配までを一つの窓口でお受けする全国対応のサービスです。生前贈与や相続で実家の名義を引き継いだ後、「このままどう活用すればよいか分からない」「片付けから売却・解体まで一括で相談したい」という段階になったら、実家じまい代行パックをご検討ください。家財の片付けから、必要に応じた解体・売却の手配までを窓口ひとつでご案内します。
相続登記や生前贈与の名義変更そのものについては、提携する司法書士と連携してご案内できる体制を整えています。実家の今後をどうするか迷っている段階でも、まずは状況をお聞かせいただければ、片付け・売却・解体のどの選択肢が現実的かをあわせて整理いたします。名義変更の話と、実家じまいの実務は連続した話であることが多いため、早い段階でぜひご相談ください。
よくある質問
実家を生前贈与すると贈与税はいくらかかりますか?
実家は生前贈与と相続、どちらが得ですか?
相続時精算課税を選ぶとどんなメリット・デメリットがありますか?
実家を生前贈与すると小規模宅地等の特例は使えなくなりますか?
生前贈与した実家の名義変更はどう進めますか?
まとめ
実家の生前贈与は、「名義を早く確定できる」という利点がある一方で、費用の面では相続より不利になりやすい制度です。要点を振り返ります。
- 登録免許税は贈与2.0%・相続0.4%、不動産取得税は贈与に課税・相続は非課税と、費用面では相続のほうが有利になりやすい
- 相続で使える小規模宅地等の特例(330㎡まで評価額80%減額)は、生前贈与で取得した宅地には使えない
- 2024年1月から相続時精算課税に年110万円の基礎控除が新設され、この範囲内なら贈与税・相続財産への加算がなくなった
- 相続時精算課税の特別控除2,500万円を使った部分は、贈与税がかからなくても将来の相続財産に持ち戻される
- 暦年贈与の生前贈与加算(持ち戻し)の対象期間は、2026年8月現在は相続開始前3年以内で、2031年以降は7年以内に延びる予定
- 評価額が大きい実家ほど、生前贈与と相続の費用差は開きやすい
- 値上がり見込み・相続トラブル回避・判断能力低下への備えなど、費用以外の事情があれば生前贈与を選ぶ意味はある
- 2024年4月から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内の申請が必要
実家の生前贈与が得かどうかは、評価額・家族構成・将来その家をどう使うかによって答えが変わります。まずは固定資産評価証明書で評価額を確認し、暦年贈与・相続時精算課税・相続を待つ場合の3パターンで費用を試算したうえで、司法書士など専門家に相談することをおすすめします。名義変更のその先にある片付け・売却・解体まで見据えて検討したい場合は、実家じまいの進め方もあわせてご覧ください。
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