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車の相続手続き|名義変更の必要書類・処分と売却の選び方【バイクも解説】

最終更新日:2026年8月6日|監修:司法書士・行政書士 久留慎一郎先生・安心実家じまい事務局

司法書士・行政書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続登記や不動産の名義変更など、実家じまいに関わる法律手続きを担当する。安心実家じまいの提携司法書士・行政書士。

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 不動産の名義変更
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理

この記事の結論

  • 車の名義変更(移転登録)は、道路運送車両法により所有者が変わった日から15日以内に運輸支局または軽自動車検査協会で行うのが原則です。
  • 手続き先は車種で異なります。普通自動車は運輸支局、軽自動車は軽自動車検査協会、バイクは排気量によって市区町村役場か運輸支局に分かれます。
  • 普通自動車で査定額が100万円以下なら、遺産分割協議書の代わりに「遺産分割協議成立申立書」という簡易な書式が使え、相続人1人の実印だけで手続きできます。
  • 相続放棄を検討している場合、故人の車を売却・使用すると相続放棄ができなくなるおそれがあるため、車を含めた遺産には手をつけずに専門家へ相談してください。
目次

車を相続したら、まず何をすべきか

親などが亡くなり車が遺された場合、車も預貯金や不動産と同じく相続財産の一つです。故人が長年乗っていた車だからといって、自動的に特定の家族の所有物になるわけではなく、いったん相続人全員の共有財産となります。何から手をつければよいか迷う方が多いところですが、大きく分けると次の3ステップで進みます。

  1. 車検証で所有者を確認する——車検証(自動車検査証)の「所有者」欄を見て、名義が本当に故人になっているかを確認します。
  2. 相続人の中で誰が引き継ぐかを決める——遺言書があればその内容に従い、なければ遺産分割協議で代表相続人を決めます。
  3. 車種に応じた窓口で名義変更(または廃車・売却の手続き)をする——普通自動車・軽自動車・バイクで窓口と必要書類が異なります。

まず車検証の「所有者」欄を見る

亡くなった方が日常的に運転していた車でも、車検証の所有者欄に記載されているのが故人本人とは限りません。よくあるのが、次の3パターンです。

車検証の所有者欄 意味 この記事での扱い
故人本人の氏名 故人が完全に所有していた車 通常の相続手続き(本記事のメインで解説)
信販会社・ローン会社の名称 ローンが残っており、所有権が留保されている 先にローンの完済・所有権解除の手続きが必要
ディーラー・リース会社の名称 ローンまたはリース契約中 ディーラー・リース会社への連絡が先

電子車検証を導入している車の場合は、「車検証閲覧アプリ」や自動車検査証記録事項の確認画面から所有者を確認できます。所有者が信販会社やディーラーになっている場合は、相続による名義変更ではなく、まずローンの完済状況の確認と各社への連絡が最初のステップです。ローンが残っている場合、相続人がその債務を引き継ぐ扱いになるのが一般的で、車に乗り続けるなら審査のうえで契約者変更を認められることがある一方、乗らない場合は信販会社が車を引き取って換価処分し、残債や剰余金を精算する流れになります。

相続開始から名義変更完了までの実務チェックリスト

車の相続手続きは、戸籍の収集から窓口での申請まで工程が多く、抜け漏れが起きやすい分野です。印刷してそのまま使えるよう、実務の順番でチェックリストにまとめました。

順番 やること チェック
1 車検証で所有者名義を確認する(故人本人か、信販会社・ディーラーか)
2 車種を確認する(普通自動車・軽自動車・バイクの別、排気量)
3 遺言書の有無を確認する
4 相続人を確定し、誰が車を引き継ぐか遺産分割協議で決める
5 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本を集める
6 相続人であることが分かる戸籍謄本を集める
7 新所有者(代表相続人)の印鑑証明書を取得する(発行後3か月以内)
8 遺産分割協議書を作成し、相続人全員の実印を押す(車名・登録番号・型式・車台番号を明記)
9 査定額が100万円以下なら、査定書と遺産分割協議成立申立書の利用を検討する
10 保管場所(車庫)が変わる場合は車庫証明書を警察署で取得する
11 管轄の運輸支局・軽自動車検査協会・市区町村役場のいずれかで名義変更を申請する
12 任意保険・自賠責保険の名義(契約者・被保険者)を変更する
13 売却・廃車まで進める場合は、名義変更後に手続きする

相続放棄を検討している場合は、このチェックリストの手続きに着手する前に、いったん立ち止まることをおすすめします。詳しくは後述の「相続放棄を考えている場合の注意点」で説明します。実家の家財の片付けとあわせて相続登記の期限も気になる方は、相続登記の義務化とは|期限・過料・実家を相続したらやることもあわせてご確認ください。

普通自動車の名義変更(移転登録)の手続き・必要書類・費用

普通自動車の名義変更は、正式には「移転登録」と呼ばれる手続きです。管轄の運輸支局または自動車検査登録事務所で行います。道路運送車両法第13条には、次のように定められています。

「新規登録を受けた自動車(以下『登録自動車』という。)について所有者の変更があったときは、新所有者は、その事由があった日から十五日以内に、国土交通大臣の行う移転登録の申請をしなければならない。」(道路運送車両法第十三条)

相続のケースで期限を過ぎたことだけを理由に直ちに罰則を科された例は多くありませんが、法律上の申請義務がある点は変わりません。名義変更をしないまま放置すると、売却や廃車の手続きが進められず、任意保険の契約内容が実態と食い違ったままになるおそれもあります。遺産分割協議と並行して、早めに進めることをおすすめします。

単独相続の場合の必要書類

相続人のうち1人が代表して車を引き継ぐ「単独相続」が最も一般的なパターンです。査定額が100万円を超える場合の必要書類は次のとおりです。

必要書類 取得先・備考
自動車検査証(車検証) 有効期限内のもの
被相続人の戸籍謄本または除籍謄本 本籍地の役所。死亡の事実と相続人全員が確認できるもの
相続人であることが分かる戸籍謄本 各相続人の本籍地の役所
遺産分割協議書 相続人全員の実印を押印。車名・登録番号・型式・車台番号を明記
新所有者(代表相続人)の印鑑証明書 発行後3か月以内のもの
車庫証明書 保管場所が変わる場合のみ。管轄警察署で取得(発行後40日以内が目安)
委任状 本人以外が窓口に行く場合のみ、実印を押印して用意

遺産分割協議書に自動車を記載する際は、車名・登録番号・型式・車台番号の4点を明記しておくと、どの車が誰に相続されたかが明確になり、窓口での確認がスムーズになります。車庫証明は、故人と新所有者が同居していて保管場所が変わらない場合は不要になることがあります。

査定額100万円以下なら「遺産分割協議成立申立書」が使える

普通自動車の査定額が100万円以下の場合、通常の遺産分割協議書の代わりに「遺産分割協議成立申立書」という簡易な書式を使えます。この書式は相続人1人の実印だけで手続きができ、相続人全員の署名・押印を集める必要がありません。あわせて、査定額が100万円以下であることを確認できる書類(買取業者などが発行する査定書)の添付が必要です。書式は国土交通省や各地方運輸局のウェブサイトからダウンロードできます。相続する車が古い年式や走行距離の多い車で、査定額が高額にならないと見込まれる場合は、この簡易な方法が使えないか先に確認しておくと、戸籍や実印を集める手間を減らせます。

普通自動車の名義変更にかかる費用の目安

普通自動車の移転登録にかかる費用の内訳は、次のとおりです。地域や車庫証明の有無によって差が出るため、いずれも目安として捉えてください。

項目 費用の目安 備考
検査登録印紙代(手数料納付書) 500円程度 窓口で購入
車庫証明書 2,000〜2,700円程度 申請手数料と標章交付手数料の合計。地域により異なる
ナンバープレート代 1,500〜2,000円前後 管轄の運輸支局が変わる場合のみ
戸籍謄本・除籍謄本 1通450〜750円程度 取得する通数分
印鑑証明書 1通200〜450円程度 市区町村により異なる

これらはすべて自分で手続きした場合の実費です。書類の記入に不安がある場合、窓口近くの代書業者に申請書の作成を1,000〜2,000円程度で依頼できることもあります。行政書士やディーラー、買取業者に一連の手続きを代行してもらう場合は、書類収集の範囲によって数千円から数万円程度の報酬がかかるのが一般的です。依頼する前に、代行してもらえる範囲と金額を見積もりで確認してください。

運輸支局の窓口で行う手続きの流れ

必要書類がそろったら、実際の窓口では次の順番で手続きを進めます。当日の流れをあらかじめ把握しておくと、書類の記入で迷う時間を減らせます。

  1. 書類の事前確認——受付窓口で持参した書類一式を確認してもらいます。不足があるとその場での手続きができません。
  2. 申請書(OCRシート第1号様式)の記入——「登録の種類」は「移転」、「原因」は「相続」と記入します。旧所有者欄には被相続人の氏名・住所を車検証どおりに、新所有者欄には代表相続人の住所・氏名・生年月日を記入します。
  3. 手数料納付書に検査登録印紙を貼付——窓口で500円程度の印紙を購入し、手数料納付書に貼って提出します。
  4. 審査・車検証の交付——提出書類に不備がなければ、その場で新しい所有者名義の車検証が発行されます。

申請書の記入に不安がある場合は、窓口周辺にいる代書業者に有料で作成を依頼することもできます。運輸支局は平日のみの受付で、昼休みを設けている窓口もあるため、事前に受付時間を確認してから出向くとスムーズです。

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軽自動車の名義変更【軽自動車検査協会】

軽自動車の手続き先は、普通自動車の運輸支局とは異なり「軽自動車検査協会」の事務所・支所・分室です。軽自動車は普通自動車と比べて手続きが簡易で、相続に関する書類(遺産分割協議書や遺産分割協議成立申立書)は原則として不要です。

必要書類 備考
車検証(自動車検査証) 有効期限内のもの
被相続人のすべての戸籍 死亡の事実と相続人であることが確認できるもの
新しく使用者になる方の住民票の写しまたは印鑑証明書 発行後3か月以内のもの
申請書(軽第1号様式など) 協会窓口で無料配布、ウェブサイトからダウンロードも可能
車庫証明書 地域や車種によって不要な場合がある
ナンバープレート 管轄が変わる場合のみ返納・再交付

軽自動車の名義変更手続き自体には手数料がかかりません。管轄が変わってナンバープレートを交換する場合のみ、1,500円前後の実費が発生します。普通自動車に比べて必要書類が少なく、費用も抑えられるため、故人が軽自動車に乗っていた場合は手続きの負担が軽くなります。

バイクの相続手続き【排気量で窓口が変わる早見表】

バイクの相続手続きは、車と違って排気量ごとに窓口が分かれる点に注意が必要です。同じ「バイク」でも、原付と大型バイクでは手続きの場所も必要書類も異なります。上位の解説記事では車を中心に扱い、バイクの区分まで整理しているものは多くありません。ここでは排気量別に手続き先を一覧にまとめます。

区分 排気量 手続き窓口 車検 相続に関する書類
原付一種 50cc以下 市区町村役場 なし 不要な場合が多い(自治体により異なる)
原付二種(乙) 51〜90cc 市区町村役場 なし 不要な場合が多い(自治体により異なる)
原付二種(甲) 91〜125cc 市区町村役場 なし 不要な場合が多い(自治体により異なる)
軽二輪 126〜250cc 運輸支局(陸運局) なし(軽自動車届出済証) 原則不要(普通自動車ほど厳密ではない)
小型二輪 251cc以上 運輸支局(陸運局) あり(車検証) 普通自動車に準じた書類を求められることがある

原付(125cc以下)は市区町村役場でナンバープレート(標識)の返納と交付を行います。多くの自治体では、いったん廃車の届出をしてから、あらためて新しい使用者名義で登録をし直す形を取ります。必要書類や戸籍の要否は自治体ごとに異なるため、事前に窓口へ電話で確認しておくと二度手間になりません。126cc以上のバイクは運輸支局が窓口になり、251cc以上の小型二輪は車検証があるため、普通自動車の移転登録に近い書類(戸籍謄本・遺産分割協議書など)を求められることがあります。同居していた家族名義への変更であれば書類が簡略化されるケースもあるため、窓口での事前確認が有効です。

自転車についても触れておきます。自転車は道路運送車両法の対象外で、相続による名義変更という法的手続きはありませんが、防犯登録は所有者情報の紐づけであるため、乗り続ける場合は自転車販売店で防犯登録の変更をしておくと、盗難時のトラブルを避けやすくなります。

原付の廃車・名義変更で用意するものの目安

原付の手続きは自治体ごとに書式が異なりますが、共通して求められることが多い持ち物は次のとおりです。窓口へ行く前に、実家がある市区町村のホームページで最新の案内を確認してください。

持ち物 備考
標識交付証明書またはナンバープレート 紛失している場合は窓口で相談。廃車申告受付書の再発行が必要になることがある
新しい所有者の本人確認書類 運転免許証やマイナンバーカードなど
認印 自治体によっては不要な場合もある
故人との関係が分かる戸籍または続柄の分かる書類 自治体によって省略できる場合がある

車・バイクを処分する場合の選択肢

相続した車をそのまま使わず手放す場合、選択肢は大きく4つに分けられます。自治体のごみ・買取・供養・業者依頼という切り口で整理すると、車特有の事情が見えてきます。

処分方法 向いているケース 費用の目安 注意点
自治体ごみ 車体そのものは対象外。廃タイヤ・バッテリーなど一部の部品は自治体や販売店の回収ルートを個別に確認 自動車・バイクは自治体の粗大ごみとして出せない。無許可回収業者への引き渡しは避ける
買取(下取り・買取専門店) 年式が新しい、走行距離が少ない、故障がない 査定額次第(0円〜) 先に名義変更をしてから売却するのが基本。買取業者が古物商許可を持つ事業者かを確認する
廃車(永久抹消登録) 修復困難な故障、事故車、動かない車 登録手数料は数百円程度。レッカー費用が別途かかることがある 相続人のうち1人が「申請相続人」として単独で手続き可能。遺産分割協議書は不要
一時抹消登録(休車) すぐには処分を決められないが、車検・税負担は止めたい 登録手数料は無料程度 保管場所の確保と管理責任は引き続き相続人が負う
業者への廃車代行依頼 手続きに時間を割けない、動かない車の引き取りも同時に頼みたい 引き取り無料〜、業者によっては買取査定と同時対応 契約前に事業者の実在と許可の有無を確認する

「供養」については、車そのものを寺院や神社に納めて供養してもらう慣習は一般的ではありません。ただし、長年連れ添った車を手放す際に、思い入れの強さから近隣の神社で車両のお祓いを受けてから引き渡す方はいます。仏壇や位牌のような正式な供養先があるわけではなく、あくまで気持ちの整理としての位置づけです。神社によって対応が異なるため、希望する場合は事前に電話で確認しておくとよいでしょう。

永久抹消登録と一時抹消登録の違い

「廃車」という言葉は日常的によく使われますが、手続き上は2種類に分かれます。永久抹消登録は車を解体・処分することを前提に登録を完全に抹消する手続きで、相続人のうち誰か1人が「申請相続人」として単独で申請でき、遺産分割協議は不要です。一時抹消登録は、しばらく使わないが処分は決めていない場合の休車手続きで、車検や税負担は止まりますが、車自体は保管しておく必要があります。故人名義のまま一時抹消・永久抹消をすることはできず、いずれの場合も先に相続人へ名義を移してから手続きをする点は共通しています。

売却・譲渡する場合の流れ

車を売却する場合も、いったん故人から相続人へ名義を移してから買取業者や第三者へ譲渡する流れになります。名義人以外の人が勝手に車を処分することはできないためです。相続人ではない第三者(親族以外の知人など)に譲渡・売却する場合も、基本的な流れは同じで、遺産分割協議書に譲渡・売却する旨を記載したうえで、いったん代表相続人へ名義変更をしてから手続きを進めます。

自動車保険・自賠責保険の名義変更と税金の扱い

名義変更と同時に見落とされやすいのが、保険と税金の手続きです。

任意保険の引き継ぎ

車を相続して乗り続ける場合は、任意保険(自動車保険)の名義変更も忘れずに行ってください。保険契約の「所有者」「主な使用者」が実態と異なったままだと、万が一の事故で補償が受けられない、あるいは保険金の受け取りまでに時間がかかる可能性があります。保険会社に連絡し、案内に従って必要書類を提出すれば手続きが可能です。故人が長年の等級(ノンフリート等級)を積み上げていた場合、同居の親族であれば等級を引き継げる場合があるため、解約前に保険会社へ確認しておくと有利に進められることがあります。

自賠責保険はどうなるか

自賠責保険は人ではなく車両に付帯する保険のため、名義人以外が運転して事故を起こした場合でも保険自体は適用されます。ただし、証明書に記載された所有者名が実態と異なったままだと、更新時の案内が届かないなど不便が生じることがあるため、名義変更のタイミングであわせて変更しておくと安心です。

自動車税・軽自動車税の納付

自動車税(種別割)は、原則として毎年4月1日時点の所有者に対して課税され、4〜5月頃に届く納税通知書にもとづいて納付します。名義変更が完了する前に納税通知書が届いた場合、いったん相続人が納付し、翌年度以降は新しい名義人宛てに通知が届く流れになります。軽自動車税も同様の考え方です。

ローンが残っている車・ディーラー名義の車の相続

車検証の所有者欄が信販会社やディーラーになっている場合、通常の相続手続きとは別の対応が必要です。まず信販会社やディーラーに債務者(故人)が亡くなったことを連絡し、ローンの残債状況を確認します。

  • ローンが残っている場合——相続人が債務を引き継ぐのが原則です。一括返済を求められることもありますが、車に乗り続けたい相続人がいる場合、審査のうえで契約者変更が認められることがあります。乗らない場合は信販会社が車を引き取って換価処分し、残債があれば相続人に請求され、剰余金が出れば相続人に支払われます。
  • ローンを完済していた場合——所有者がまだ信販会社やディーラーのままになっていないか確認します。所有権が残っている場合は、各社の指示に従って戸籍謄本や印鑑証明書を提出し、所有権解除の手続きをしてから、あらためて相続人への名義変更に進みます。

ローンや所有権解除の手続きは会社ごとに書式や必要書類が異なるため、まずは電話で連絡し、案内される手順に沿って進めるのが確実です。

相続放棄を考えている場合の注意点

実家の資産価値が低く、車を含めた遺産全体が負担になりそうな場合、相続放棄という選択肢もあります。ここで特に注意したいのが、車の扱いです。故人の車を売却したり、名義変更をして使い続けたりすると、相続財産の一部を処分したとみなされ、相続放棄ができなくなる「法定単純承認」に該当する可能性があります。法定単純承認とは、簡単に言えば「相続する意思があったとみなされ、後から相続放棄を選べなくなること」です。

修理費や車検費用を相続財産の中から支払った場合も、財産の処分にあたると判断されることがあります。相続放棄を迷っている段階では、次の行動は避けてください。

  • 故人の車を売却・譲渡する
  • 名義変更をして日常的に使用する
  • 修理費・車検費用などを相続財産から支出する
  • 廃車手続き(永久抹消登録)を進める

相続放棄の期限は、自分が相続人であることを知った時から原則3か月以内です。車を含めた遺産に一切手をつけず、この期間内に司法書士や弁護士へ相談することをおすすめします。実家の片付け全体との順序については、遺品整理とは?いつから・費用・捨ててはいけないものでも解説しています。

ケース別・費用シミュレーション

実際にどの程度の実費がかかるか、車種・査定額別にシミュレーションしました。いずれも自分で手続きした場合の実費の目安で、車庫証明の要否や地域差によって変動します。行政書士や業者への代行を依頼する場合は、別途報酬が加算されます。

ケース 必要な主な書類 実費の目安
普通自動車(査定額100万円超・単独相続・保管場所変更なし) 戸籍謄本一式・印鑑証明書・遺産分割協議書 2,500〜3,500円程度
普通自動車(査定額100万円以下) 戸籍謄本・印鑑証明書・遺産分割協議成立申立書・査定書 2,500〜3,500円程度(査定書取得費を除く)
普通自動車(管轄変更でナンバー交換あり) 上記に加えてナンバープレート代 4,000〜5,500円程度
軽自動車 戸籍・住民票または印鑑証明書 750〜1,200円程度
小型二輪(251cc以上) 戸籍・印鑑証明書に準じた書類 1,500〜2,500円程度
軽二輪(126〜250cc) 自治体・運輸支局の案内による簡易書類 数百円〜1,000円程度
原付(125cc以下) 自治体の案内による申請書・本人確認書類 無料〜数百円程度

戸籍謄本の収集は、被相続人が転籍を重ねている場合、複数の市区町村への請求が必要になり、想像以上に時間がかかることがあります。実家の相続登記など他の相続手続きで戸籍をすでに収集している場合は、そのまま流用できることが多いため、車の手続きだけを別々に進める必要はありません。

自分で手続きするか、業者・行政書士に任せるか

名義変更は自分で行うことも、専門家や販売店に代行してもらうこともできます。それぞれの向き不向きを整理しました。

自分で手続き 行政書士・ディーラー・買取業者への代行
費用 実費のみ(数千円程度) 実費に加えて報酬が発生(数千円〜数万円程度)
時間の負担 平日に窓口へ出向く必要がある 書類の準備から窓口対応まで任せられる
向いているケース 近隣に運輸支局・軽自動車検査協会があり、平日に時間が取れる場合 遠方在住、平日に時間が取れない、書類収集に不安がある場合
注意点 書類の不備で窓口を何度も往復することがある 依頼前に代行範囲と金額を見積もりで確認する

車を売却する予定がある場合、買取業者が名義変更から買取までまとめて代行してくれることもあります。この場合、業者が古物商許可を持つ事業者かどうかを確認しておくと安心です。中古車の買取・販売は古物営業法の対象で、許可のない事業者との取引は避けたほうが無難です。

ナビ・ETC・ドライブレコーダーの個人情報を消してから引き渡す

売却や廃車の際に意外と見落とされがちなのが、車に残る個人情報です。カーナビの目的地履歴や自宅住所の登録、ETCカードの利用履歴、ドライブレコーダーに記録された映像には、故人や家族の生活パターンが残っています。買取業者に引き渡す前に、カーナビの初期化(オールリセット)、ETCカードの抜き取り、ドライブレコーダーのSDカードの取り出しをしておくと安心です。特に車内に貴重品や書類を置き忘れたまま引き渡してしまう例もあるため、グローブボックスやトランクの中身も引き渡し前に確認しておいてください。

遺品整理と車の処分をあわせて進めたい場合は、遺品整理サービスで家財の片付けとあわせてご相談いただけます。貴金属や着物など、車以外の遺品の買取についても遺品整理での買取の仕組みと相場で詳しく紹介しています。

相続税申告における車の評価の考え方

預貯金や不動産と同じく、車も相続税の申告対象になる財産の一つです。財産評価基本通達では、家庭用の自動車は「一般動産」として扱われ、故人が亡くなった日の売買実例価額(同じ状態の車が市場で実際に売買される価格)で評価するのが原則です。中古車市場やインターネットの相場サイトが充実しているため、買取業者に査定を依頼するか、年式・走行距離・グレードが近い車の相場をインターネットで調べれば、比較的容易に評価額の見当をつけられます。

この査定書は、前述した「査定額100万円以下」の判定資料としても使えるため、名義変更の準備をする段階で取得しておくと、相続税申告と名義変更の両方に流用できます。相続財産全体の評価額によっては相続税の申告自体が不要なケースもありますが、不動産や預貯金とあわせて評価額を合算して判断する必要があるため、判断に迷う場合は税理士へ相談してください。

遠方に住む相続人が車の名義変更を進める方法

実家を離れて暮らしている相続人が、帰省のたびに何度も運輸支局へ足を運ぶのは負担が大きいものです。遠方に住みながら手続きを進める場合、現実的な進め方は次の3つです。

  1. 委任状を使って家族や専門家に窓口対応を任せる——実印を押した委任状があれば、本人が窓口に行かなくても、実家近くに住む親族や行政書士が代理で申請できます。委任状の書式は国土交通省のウェブサイトに掲載されており、自由書式でも記載事項を満たしていれば使えます。
  2. 郵送での申請ができるか事前に確認する——運輸支局によっては、書類の郵送受付に対応している場合があります。対応の可否や必要書類は管轄の運輸支局へ電話で確認してください。
  3. 行政書士やディーラー、買取業者に一括で依頼する——戸籍の収集から窓口対応まで任せられるため、平日に休みが取りにくい相続人には現実的な選択肢です。売却まで決めている場合は、買取業者が名義変更の代行込みで査定を出してくれることもあります。

いずれの方法でも、遺産分割協議書や戸籍謄本といった基礎書類は郵送でのやり取りが可能です。実家の片付けと同時並行で車の名義変更を進める場合、片付けを依頼する業者に車の処分まで相談できると、窓口を一本化できて手間が減ります。実家じまい全体の進め方は実家じまい代行パックでご案内しています。

事務局に寄せられる相談でよく見るパターン

相続した車の相談を受ける中で、繰り返し見られるパターンがあります。自分の状況が当てはまらないか確認してみてください。

  • 名義が信販会社やディーラーのままだと気づかず、運輸支局の窓口で「相続の手続きではない」と案内されて出直しになる
  • 軽自動車だから手続きが簡単だと思い込み、保管場所が変わるのに車庫証明の要否を確認しないまま窓口に行ってしまう
  • 相続放棄を検討している段階で、生活に必要だからと故人の車を使い続けてしまい、後から法定単純承認に該当するかもしれないと不安になる
  • 遠方に住んでいて、平日に運輸支局や市区町村役場へ足を運べず、名義変更だけが数か月単位で後回しになる
  • 複数のバイクを所有していた実家で、原付と126cc以上のバイクが混在しており、窓口が違うことに気づかず二度手間になる

これらに共通するのは、車検証の確認と窓口の確認を最初にしていなかったために、後から手戻りが生じている点です。相続が発生した早い段階で、車種・排気量・所有者名義の3点を確認しておくと、こうした手戻りを避けやすくなります。

よくある質問

車の相続手続きに期限はありますか?
道路運送車両法第13条では、自動車の所有者が変わった場合、新所有者はその事由があった日から15日以内に移転登録(名義変更)を申請しなければならないと定められています。相続のケースで期限を過ぎても直ちに罰則を受ける例は多くありませんが、法律上の申請義務がある点は変わりません。放置すると売却や廃車ができず、任意保険が実態と合わなくなるため、遺産分割の話し合いと並行して早めに進めることをおすすめします。
軽自動車の名義変更でも遺産分割協議書は必要ですか?
軽自動車は普通自動車と異なり、相続に関する書類(遺産分割協議書や遺産分割協議成立申立書)は原則不要です。車検証、被相続人の戸籍、新しい使用者の住民票または印鑑証明書などをそろえて、管轄の軽自動車検査協会に届け出れば手続きができます。手続き自体の手数料もかからないため、普通自動車より簡易に進められます。
車の名義変更をしないまま乗り続けるとどうなりますか?
故人の名義のまま車検や税金の納付自体は通ってしまうことが多いため、当面の運転に支障が出ないケースもあります。ただし名義変更をしないと車の売却・譲渡・廃車の手続きが進められず、任意保険の契約内容(所有者・主な使用者)が実態と食い違ったままになるため、事故を起こしたときに補償が受けられない可能性があります。相続人の一人が亡くなるなど時間が経つほど必要書類の収集が難しくなるため、早めの名義変更が安心です。
バイクの相続手続きは車と同じ窓口で行えますか?
排気量によって窓口が異なります。125cc以下の原付は市区町村役場、126〜250ccの軽二輪と251cc以上の小型二輪は運輸支局(陸運局)で手続きを行います。普通自動車の運輸支局と同じ建物でも窓口や申請書式が異なる場合があるため、事前に管轄の窓口へ確認しておくとスムーズです。
相続放棄を考えている場合、故人の車を使ってもいいですか?
故人の車を売却したり、名義変更をして使い続けたりすると、相続財産の一部を処分したとみなされ、相続放棄ができなくなる「法定単純承認」に該当する可能性があります。修理費を相続財産から支払った場合も同様に扱われることがあります。相続放棄を迷っている段階では、車を含めた遺産に一切手をつけず、司法書士や弁護士に早めに相談することをおすすめします。

まとめ

車の相続手続きは、車種によって窓口も必要書類も変わる点が最大のポイントです。要点を振り返ります。

  • 車の名義変更(移転登録)は、所有者が変わった日から15日以内に手続きするのが原則
  • 普通自動車は運輸支局、軽自動車は軽自動車検査協会、バイクは排気量により市区町村役場か運輸支局が窓口
  • 普通自動車の査定額が100万円以下なら「遺産分割協議成立申立書」で簡易に手続きできる
  • 軽自動車は相続に関する書類が原則不要で、手続き自体の手数料もかからない
  • ローンが残っている車やディーラー所有の車は、先に信販会社・ディーラーへの連絡が必要
  • 処分の選択肢は買取・廃車(永久抹消登録)・一時抹消登録・業者依頼の4つ。自治体ごみには出せない
  • 相続放棄を検討している場合、車の売却・使用・修理費の支出は法定単純承認に該当するおそれがある
  • 売却・廃車の前に、カーナビやドライブレコーダーの個人情報を消しておくと安心

まずは車検証で所有者名義を確認し、車種・排気量に応じた窓口を調べることが、手続きをスムーズに進める第一歩です。相続放棄を迷っている場合は、車に手をつける前に専門家へ相談することをおすすめします。実家の片付けから車の処分まであわせて進めたい場合は、遺品整理サービス実家じまい代行パックもご検討ください。

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早いこともあります

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この記事を書いた人

安心実家じまい事務局です。実家の片付けや遺品整理、空き家になった家の処分について、はじめての方にも分かるように記事を書いています。提携している現場の業者や司法書士と一緒に、費用の相場・自治体のごみ出しルール・補助金といった、調べてもなかなか分かりにくいところを一つずつ確かめながらまとめています。「誰に頼めばいいか分からない」という段階のご相談も、LINEやお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。

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